以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。また、以下の説明において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各図において矢印で示した方向を基準として用いる。但し、各構成の向きは、一例にすぎず、任意の向きに変更することができる。
図1は、実施の形態に係る把持機構を上方から見た概略斜視図である。図2は、実施の形態に係る把持機構を下方から見た概略斜視図である。図1及び図2に示すように、把持機構1は、上部把持部10と、高さ位置検出部20と、下部把持部30と、引っ掛け部40とを備えて構成され、上部把持部10と下部把持部30とで物品Wを鉛直方向から挟み込んで把持するものである(図17参照)。
上部把持部10は、概略長方形の板状をなして水平方向に向けられるベースプレート11と、ベースプレート11の面内中央領域にて貫通する複数(本実施の形態では8体)の吸着部12とを備えている。ベースプレート11は、本実施の形態では、長辺が前後両側に形成され、短辺が左右両側に形成される。
ベースプレート11の上面における左右両端に沿う位置には、ブラケット13、14が起立して設けられ、左側のブラケット13の方が右側のブラケット14より高さが高くなっている。右側のブラケット14の上端側から左側のブラケット13の高さ方向中間部には、水平方向に向けられた板状のロボット接続部15が連結されている。ロボット接続部15は、不図示の多関節アーム等のロボットアームや2軸或いは3軸の移動機構等に接続される部分であり、接続対象に応じて締結具等を装着するための開口や穴が形成されている。
吸着部12は、ベースプレート11の下方に設けられて吸盤状に形成される吸着パッド12aと、吸着パッド12aを上方から支持するとともにベースプレート11を上下に貫通して設けられるホルダ12bとを備えている。ホルダ12bの上端部には、真空ポンプ等の吸引源に連通するホース(何れも不図示)が接続され、これらを通じた吸引によって吸着パッド12aの下面となる吸着面に負圧を生じさせて物品W(図10参照)を吸着保持できるようになる。ベースプレート11において吸着部12が設置される領域には、高さ位置検出部20も設けられる。
高さ位置検出部20はポテンションメータ21を備え、ポテンションメータ21は、メータ本体21aと、メータ本体21aによって鉛直方向に直線的に移動可能に支持される移動子21bとを有している。ポテンションメータ21は、移動子21bの上下位置に対応する位置信号、或いは、所定の上下位置を閾値として移動子21bが閾値より上下の何れかに位置するかの信号を出力する機能を備えている。なお、ポテンションメータ21は、移動子21bの移動による力を検出するようにしてもよく、ポテンションメータ21に替えて他のセンサ等を用いてもよい。
ポテンションメータ21において、メータ本体21aは、ベースプレート11上に設けられる一方、移動子21bは、ベースプレート11を貫通して先端がベースプレート11の下面から突出するよう設けられる。ここで、高さ位置検出部20は、移動子21bの先端(下端)に連結される長方形の板状部材23と、板状部材23の左右両側にそれぞれ設けられた案内部24とを更に備えている。
板状部材23は、ベースプレート11の下方にて水平に設けられており、上面中央部にて移動子21bの先端が連結されている。板状部材23の面内には、吸着パッド12aと接触しないように吸着パッド12aが挿通される穴23aが複数形成されている。また、板状部材23の下面中央部には、合成樹脂等の弾性体からなる突起25(図1では不図示)が下方に突出して設けられている。突起25の先端は半球状に形成されている。
案内部24は、下端側が板状部材23に固定されてベースプレート11を貫通する丸軸状の軸部24aと、ベースプレート11に設けられて軸部24aが挿通されるガイド部24bとを備えている。案内部24では、軸部24aがガイド部24bに挿通されることで軸部24a及び板状部材23の鉛直方向の移動を案内し、且つ、それらの水平方向の移動を規制している。板状部材23には移動子21bが連結されるので、かかる移動子21bにおいても、案内部24により鉛直方向の移動が案内され且つ水平方向の移動が規制される。これにより、移動子21bに水平方向等の鉛直方向とは異なる方向の力が加わることを防ぐことができる。軸部24aの上端には、軸部24aの外径及びガイド部24bの内径より大径となる抜け止め部24c(図2では不図示)が形成される。抜け止め部24cがガイド部24bの上端面に載置されることで、軸部24a及び板状部材23の下方移動が規制される。つまり、抜け止め部24cがガイド部24bの上端面に載置されたときの板状部材23の位置が下降限となる。
下部把持部30は、水平方向に延びて細長い片状をなす2体の受け部材31a、31bと、下端部に受け部材31a、31bが固定されて鉛直方向に延びる2本の長尺部材32a、32bと、各長尺部材32a、32bを支持するためのリフタプレート33とを備えている。更に、下部把持部30は、各長尺部材32a、32bを鉛直方向に駆動させる駆動部34と、リフタプレート33上に設けられた変位部35(図2では不図示)とを備えている。本実施の形態では、左側の受け部材に符号「31a」を付し、左側の長尺部材に符号「32a」を付す。また、右側の受け部材に符号「31b」を付し、右側の長尺部材に符号「32b」を付す。
図3は、実施の形態に係る把持機構を後方から見た概略斜視図である。図3に示すように、長尺部材32a、32bの上端は、変位部35を介してリフタプレート33に支持されている。また、長尺部材32a、32bは、長手方向中間部にてベースプレート11上の軸受36に挿通され、鉛直方向に移動可能とされつつ軸線周りに回転変位可能に設けられている。リフタプレート33は、表裏が水平方向に向けられて左右に細長い板状に形成されている。
駆動部34は、ベースプレート11上に設けられた駆動用モータ34aと、駆動用モータ34aの出力軸に接続された駆動プーリ34bと、駆動プーリ34bの上方にてブラケット13にアングル部材を介して回転可能に支持される従動プーリ34cとを備えている。更に、駆動部34は、駆動プーリ34b及び従動プーリ34cに掛け回される無端ベルト34dと、リフタプレート33に固定されて無端ベルト34dを挟み込むクランプ部材34eとを備えている。駆動部34では、駆動用モータ34aの駆動によって駆動プーリ34b及び従動プーリ34cを介して無端ベルト34dを回動させる。この回動によって、駆動プーリ34b及び従動プーリ34cの間の無端ベルト34dは上下動するので、クランプ部材34eも無端ベルト34dと共に上下動する。これにより、クランプ部材34eが固定されるリフタプレート33及びこれに支持される長尺部材32a、32bが鉛直方向に駆動され、この駆動によって受け部材31a、31bが鉛直方向に変位する。かかる変位により、受け部材31a、31bが上部把持部10の吸着部12(図2参照)と相対的に離間接近可能になる。
ここで、ベースプレート11の左右両側には、リフタプレート33を貫通するガイドシャフト37がそれぞれ起立して設けられている。また、リフタプレート33の左右両側には、ガイドシャフト37が挿通される案内支持部38が設けられている。リフタプレート33を含む下部把持部30が鉛直方向に動作するときに、ガイドシャフト37に沿って案内支持部38が鉛直方向に動作することとなる。これにより、左右に案内支持部38が設けられるリフタプレート33が水平方向に移動したり水平方向から傾いたりすることを規制しつつ、リフタプレート33及び長尺部材32a、32bの鉛直方向の移動を円滑に案内する。
変位部35は、リフタプレート33の上面側に設けられた変位用モータ35aと、変位用モータ35aの出力軸に接続される駆動ギヤ35bと、2本の長尺部材32a、32bの上端側にそれぞれ設けられた従動ギヤ35c、35dと、2体の従動ギヤ35c、35dと駆動ギヤ35bとの間に設けられた中間ギヤ35e、35f、35gとを備えている。なお、本件図面においては、中間ギヤ35e、35f、35gの歯の図示を省略している。各中間ギヤ35e、35f、35gの回転軸及び長尺部材32a、32bの上端側は、リフタプレート33と、その上方に位置する軸受プレート39とにより回転可能に支持される。
左側の長尺部材32aに設けられた従動ギヤ35cと駆動ギヤ35bとの間には、1枚の中間ギヤ35eが噛み合うように設けられている。右側の長尺部材32bに設けられた従動ギヤ35dと駆動ギヤ35bとの間には、2枚の中間ギヤ35f、35gが左右に並んで噛み合うように設けられている。従って、駆動ギヤ35bを回転させたときに、左側の従動ギヤ35c及び長尺部材32aと、右側の従動ギヤ35d及び長尺部材32bとでは、中間ギヤ35e、35f、35gの枚数の相違によって回転方向が反対方向となる。これにより、駆動ギヤ35bをR1方向に回転することで、各長尺部材32a、32bがr1方向に回転して各受け部材31a、31bが前方に突出する方向に変位する(図4Aも参照)。一方、駆動ギヤ35bをR2方向に回転することで、各長尺部材32a、32bがr2方向に回転し、各受け部材31a、31bが長尺部材32a、32bの前後位置まで後退する方向に回転変位する(図4B参照)。
ここで、受け部材31a、31bは、図4Bに示す位置が最も後退した位置となり、この位置において、長尺部材32a、32b間で左右方向に略平行となるように向けられる。このとき、受け部材31a、31bにて対向する端縁を双方とも傾斜縁とすることで、受け部材31a、31bを同じ高さ位置としても、相互に当接しないようにしている。
また、駆動ギヤ35bにあっては、周方向にて一部の歯を非形成とするよう切欠35baが形成されている。従って、駆動ギヤ35bに隣り合う中間ギヤ35e、35fでは、切欠35baの形成領域が対向する際に、駆動ギヤ35bからの回転駆動力が伝達されずに中間ギヤ35e、35fが回転停止した状態となる。よって、切欠35baの形成領域を調整することによって、受け部材31a、31bの回転するタイミングを変えることができる。具体的には、受け部材31a、31bが図4Bに示す最後方位置から前方に回転変位するときに、後方に位置する受け部材31bが前方に位置する受け部材31aより遅れて回転変位する。一方、受け部材31a、31bが図4Aに示す前方に突出した位置から後方に回転変位するときに、前方に位置するようになる受け部材31aが後方に位置するようになる受け部材31bより遅れて回転変位する。
図5は、一部構成を省略した把持機構を上方から見た概略斜視図である。図5に示すように、引っ掛け部40は、リフタプレート33に支持されるモータ41と、リフタプレート33に連結されて下方に延在する可動フック42とを備えている。モータ41の出力軸には、カップリング43を介して左右に延びるシャフト44の一端(右端)が連結され、シャフト44の他端(左端)側は軸受45に回転可能に支持されている。シャフト44の延在方向中間部には、2体のプーリ46が所定間隔を隔てて設けられ、各プーリ46には図5にて二点鎖線で示すワイヤ47が巻き掛けられている。従って、引っ掛け部40では、モータ41の駆動によってプーリ46を介してワイヤ47を巻き取り及び繰り出し可能となっている。ワイヤ47は、プーリ46から後方に延びてから不図示の滑車等を通過し、可動フック42の前面に沿って下方に延びるように配設される。
可動フック42は、リフタプレート33から下方に延びるフック本体部42aと、フック本体部42aの下端側に中間部42bを介して配設される先端部42cとを備えている。フック本体部42aと中間部42bとは左右2体のヒンジ42dで回転可能に連結されている。中間部42bと先端部42cとは、上記左右2体のヒンジ42dの間に配置されたヒンジ42eで回転可能に連結されている。各ヒンジ42d、42eには、戻しばね(付勢手段)42fが設けられ、ワイヤ47による力が加わっていないときには、各ヒンジ42d、42e及び戻しばね42fによって中間部42b及び先端部42cの前後両面が鉛直方向に向けられた姿勢に保たれる。また、ワイヤ47が巻き上げられることで、戻しばね42fの力に抗しつつ各ヒンジ42d、42eを介して中間部42b及び先端部42cが横向きや上向きとなるように変位する。かかる変位については、図6を参照して以下に説明する。
図6A〜図6Cは、可動フックを側方からみた説明用模式図である。図6Aに示すように、可動フック42の前面側において、フック本体部42aの下端側と、中間部42bとには、ワイヤ47が挿通される鞘部材48が設けられている。そして、鞘部材48を通過するように上方から下方に延びるワイヤ47の下端は先端部42cに固定されている。可動フック42では、ワイヤ47が巻き上げられることで、ワイヤ47によって中間部42b及び先端部42cに引っ張り力が作用する。この引っ張り力によって、図6B及び図6Cに示すように、ヒンジ42dを介して中間部42bが横向きに回転変位し、先端部42cの先端がヒンジ42eを介して上向きになるよう回転変位する。一方、ワイヤ47による引っ張り力が解除されると、戻しばね42f(図5参照)の力によって、中間部42b及び先端部42cの前後両面が鉛直方向に向けられた姿勢に復帰される。
図3に戻り、可動フック42は、ベースプレート11の後端側に形成された凹部11a内に配置され、長尺部材32a、32bの前後幅に収まるように配置されている。また、長尺部材32a、32bは、ベースプレート11及びリフタプレート33の後端近傍に貫通して配置されている。従って、把持機構1の最後方位置近傍に、長尺部材32a、32bが配置され、把持機構1にて長尺部材32a、32bから後方に大きく突出する部分がないように構成されている。
ここで、把持機構1は、中央処理装置(CPU)等からなる制御部2(図1参照)によって駆動制御される。制御部2は、ポテンションメータ21の出力信号や、予め記憶されたデータ、各種プログラムの演算結果に基づき、各モータ34a、35a、41や把持機構1を移動するロボットアーム等の駆動量、駆動タイミング等を制御する。
続いて、本実施の形態の把持機構1が物品を把持する際の動作及び把持機構1を用いた搬送方法について説明する。かかる搬送方法として、先ず、番重Bから物品Wを取り出す搬出方法を図7から図17を参照して説明し、その後、番重Bに物品Wを収納する搬入方法を図18から図26を参照して説明する。搬出方法は、位置決め工程、高さ位置検出工程、吸着工程、上昇工程、下降工程、リフト工程、挿入工程、把持工程、搬出工程の順に実施される。
図7は、搬出方法の位置決め工程を示す説明用背面図であり、図8は、搬出方法の位置決め工程を示す説明用側面図である。図7及び図8に示すように、搬出方法を実施する前においては、下部把持部30は上限位置又はこれに近い位置まで上昇された位置に保たれ、受け部材31a、31bが板状部材23より高い位置に設定される。また、受け部材31a、31bは、左右方向に略平行に向けられて前後方向の幅が最小限となるような角度に設定される。
ここで、本実施の形態の把持機構1で把持する物品Wは、弁当容器であり、鉛直方向に複数(本実施の形態では3つ)積み重ねられている。以下の説明では、先ず、3つ積み重ねた状態の物品Wを把持機構1で把持して搬送する方法について説明する。本実施の形態の物品Wは、下部のトレイ部Waと、トレイ部Waの上方を閉塞する蓋部Wbとを備えている。物品Wの側面におけるトレイ部Waと蓋部Wbとの接続部分には、つば部(被引っ掛け部)Wcが外方に突出するように形成される。つば部Wcは、物品Wの底面より高い位置に形成されている。
位置決め工程では、予め、図7及び図8に示す番重Bの内部に配置される物品Wの前後及び左右方向の座標値を画像処理等の手段を介して取得しておく。そして、この座標値に基づき、不図示のロボットアーム等によって把持機構1が物品Wの上方に移動されてから位置決めされる。この位置決めによって、物品Wの上面側中央領域に吸着部12が配置され、物品Wの後端より僅かに後方に、受け部材31a、31b及び可動フック42が配置される。
位置決め工程が実施された後に、図9に示すように、高さ位置検出工程が実施される。図9は、搬出方法の高さ位置検出工程を示す説明用側面図である。高さ位置検出工程では、最上段の物品Wに突起25が接触するまでロボットアーム等を介して把持機構1が下降される。そして、突起25が物品Wの上面に接触され、板状部材23及び案内部24を介して上昇されると、この上昇がポテンションメータ21にて検知され、当該検知のタイミングでの把持機構1の高さ方向の座標値が取得される。この座標値に基づき、制御部(図1参照)を介して最上段の物品Wにおける上面位置が演算されて記憶される。また、ポテンションメータ21の検知のタイミングに応じ、吸着部12の吸着パッド12aが接触しないようにロボットアーム等による把持機構1の下降が停止される。
高さ位置検出工程が実施された後に、図10に示すように、吸着工程が実施される。図10は、搬出方法の吸着工程を示す説明用側面図である。吸着工程では、高さ位置検出工程にて演算された最上段の物品Wの上面に、吸着部12の吸着パッド12aが接触するよう把持機構1がロボットアーム等によって下降移動されてから位置決めされる。この下降移動中、突起25が最上段の物品Wに当接すると、板状部材23の上下移動は停止された状態となり、この状態から把持機構1の下降移動に応じ板状部材23の穴23aを通じて吸着パッド12aが板状部材23より下方に突出するようになる。吸着パッド12aが物品Wの上面に接触されると、不図示の吸引源と吸着部12とが連通した状態とされ、吸着パッド12aにて負圧を生じさせて最上段の物品Wの上面が吸着保持される。
吸着工程が実施された後に、図11に示すように、上昇工程が実施される。図11は、搬出方法の上昇工程を示す説明用側面図である。上昇工程では、吸着工程による最上段の物品Wの吸着保持を維持しつつ、把持機構1がロボットアーム等によって上方に移動される。これにより、複数の物品Wのうち最上段の物品Wだけが吸着部12で吸着されて上昇される。そして、最上段の物品Wの下面側と上から2段目の物品Wの上面側との間に隙間S1を形成した状態で把持機構1が位置決めされる。
上昇工程が実施された後に、図12に示すように、下降工程が実施される。図12は、搬出方法の下降工程を示す説明用側面図である。下降工程では、上昇工程により隙間S1が形成された状態を維持しつつ、駆動部34の無端ベルト34dが回動され、下部把持部30と引っ掛け部40とが下降される。具体的には、下部把持部30の長尺部材32a、32b及び受け部材31a、31bと、引っ掛け部40の可動フック42とが、積み重なった物品Wと番重Bの内面との間に入り込むように下降される。
下降工程が実施された後に、図13に示すように、リフト工程が実施される。図13は、搬出方法のリフト工程を示す説明用側面図である。リフト工程では、引っ掛け部40のモータ41が駆動され、積み重ねた物品Wのうちの最下段の物品W、言い換えると、番重B内の底面となる載置面上に載置された物品Wに可動フック42の先端(下端)側が引っ掛けられる。具体的には、図6Cで示したように、可動フック42の中間部42bが横向きに、先端部42cの先端が上向きに回転変位する動作がなされ、当該先端が上方に変位することで引っ掛け箇所となる物品Wのつば部Wcが下方から持ち上げられる。この持ち上げによって、最上段の物品Wを除いた全ての物品Wが前方より後方の方が高くなるよう傾けられ、最下段の物品Wとその載置面となる番重Bの底面との間に隙間S2が形成される。
リフト工程が実施された後に、図14に示すように、挿入工程が実施される。図14は、搬出方法の挿入工程を示す説明用側面図である。挿入工程では、リフト工程により隙間S2が形成された状態を維持しつつ、変位部35の変位用モータ35aが駆動され、受け部材31a、31bが前方に突出する方向に回転変位される。具体的には、長尺部材32a、32bが軸回りに回転されて受け部材31a、31bが長尺部材32a、32b間で左右方向に略平行に向けられた状態から前方に突出するよう回転変位される。これにより、受け部材31a、31bが隙間S2内に挿入され、受け部材31a、31bが最下段の物品Wの下方に重なる位置に配置される。ここで、図14においては、物品Wの下面と受け部材31a、31bの先端とが当接するように見えるが、受け部材31a、31bの先端は物品W下面の中央に位置し、当該中央は凹んでいるので、挿入工程において、それらは非接触となる。後述する図20についても同様である。
挿入工程が実施された後に、把持工程が実施される。図15及び図16は、搬出方法の把持工程を示す説明用側面図である。把持工程では、先ず、図15に示すように、リフト工程とは反対方向に引っ掛け部40のモータ41が駆動され、可動フック42の先端が下向きになるように動作されて最下段の物品Wとの引っ掛けが解除される。これにより、最下段の物品Wの下面が受け部材31a、31bの上面に載置(当接)され、物品Wの下面が番重Bの載置面と非接触となって隙間S2aが形成される。その後、駆動部34の無端ベルト34dが回動され、図16に示すように、下部把持部30における受け部材31a、31bが上昇されて上から2段目の物品Wの上面が最上段の物品Wの下面に当接される。受け部材31a、31bの上昇によって受け部材31a、31bが上部保持部10の吸着部12に相対的に接近され、それらによって積み重ねた物品Wが鉛直方向から挟み込まれて把持される。
把持工程が実施された後に、図17に示すように、搬出工程が実施される。図17は、搬出方法の搬出工程を示す説明用側面図である。搬出工程では、把持工程によって積み重ねた物品Wが把持された状態を維持しつつ、ロボットアーム等の駆動によって把持機構1が上昇され、番重Bの内部から積み重ねた物品Wが取り出される。この取り出し後、ロボットアーム等が更に駆動されることで他の番重等の所定の搬送位置まで物品Wが搬送される。
ここで、複数の物品Wを積み重ねた状態で搬出した場合を説明したが、単一の物品Wを把持して搬出することもできる。この場合、例えば、積み重ねた物品Wの最上段の物品Wだけ搬出する際には、位置決め工程から上昇工程までは上記と同様に実施される。その後、下降工程で隙間S1に対応する高さに受け部材31a、31bが位置するように下部把持部30が下降される。下降工程の実施後、受け部材31a、31bが回転変位して隙間S1内に挿入される挿入工程が実施される。挿入工程の実施後は、受け部材31a、31bの上昇によって受け部材31a、31bが上部保持部10の吸着部12に相対的に接近され、それらによって単一の物品Wが鉛直方向から挟み込まれる把持工程が実施される。そして、上記と同様に搬出工程が実施される。従って、単一の物品Wを把持する場合には、上述したリフト工程が省略されることとなる。
なお、単一の物品Wを把持して搬出する場合は、番重Bの内部に積み重ねずに収容された物品Wを搬送することもできる。この場合、番重Bにおける側壁の高さによっては、当該側壁よりベースプレート11やリフタプレート33の方が低い位置まで移動される。このとき、把持機構1にて受け部材31a、31bや可動フック42から後方に大きく突出する部分がないので、番重Bの側壁付近に物品Wが収容されていても、かかる側壁に把持機構1が接触することを抑制することができる。
次いで、番重Bに物品Wを収納する搬入方法を説明する。搬入方法は、把持工程、位置決め工程、搬入工程、下降工程、リフト工程、退避工程、第1載置工程、上昇工程、第2載置工程、吸着解除工程の順に実施される。
図18は、搬入方法の把持工程及び位置決め工程を示す説明用側面図である。図18に示すように、搬入方法の把持工程では、上述した搬出方法と同様の要領にて受け部材31a、31bと吸着部12とを相対的に接近させて積み重ねた物品Wが鉛直方向から挟み込んだ状態とされる。このとき、積み重ねた物品Wの最上段の物品Wにおける上面が吸着部12にて吸着保持される。これにより、積み重ねた物品Wが把持機構1にて把持された状態とされる。
把持工程が実施された後に、位置決め工程が実施される。位置決め工程では、予め、番重Bの内部に物品Wを収容する予定位置として、物品Wの前後及び左右方向の座標値を取得しておく。そして、この座標値に基づき、不図示のロボットアーム等を介し、把持機構1が物品Wを収容する予定位置の上方に移動されて位置決めされる。
位置決め工程が実施された後に、図19に示すように、搬入工程が実施される。図19は、搬入方法の搬入工程を示す説明用側面図である。搬入工程では、番重B内の底面となる載置面から最下段の物品Wの下面の間に隙間S3が形成されるよう、ロボットアーム等を介して把持機構1が下降移動されてから位置決めされる。隙間S3は、物品Wの下面が番重Bの載置面と非接触となって形成され、その上下幅は後述する隙間S4(図20参照)に応じて決定される。
搬入工程が実施された後に、図20に示すように、下降工程が実施される。図20は、搬入方法の下降工程を示す説明用側面図である。下降工程では、ロボットアーム等による把持機構1の高さ位置を維持しつつ駆動部34の無端ベルト34dが回動され、下部把持部30と引っ掛け部40とが下降される。この下降によって、上部把持部10の吸着部12から受け部材31a、31bが離間するように下降され、吸着部12で吸着された最上段の物品Wは移動せずに、上から2段目の物品W以下の物品Wが受け部材31a、31bに載置された状態で下降される。これにより、最下段の物品Wが番重B内の載置面に接近され、最上段の物品Wの底面側と上から2段目の物品Wの上面側との間に隙間S4が形成される。言い換えると、上述の位置決め工程での隙間S3の幅は、番重B内の載置面と受け部材31a、31bとが接触せずに隙間S4を形成し得るように設定される。
下降工程が実施された後に、図21に示すように、リフト工程が実施される。図21は、搬入方法のリフト工程を示す説明用側面図である。リフト工程では、上から2段目の物品W以下の物品Wが受け部材31a、31bに載置された状態を維持しつつ引っ掛け部40のモータ41が駆動され、最下段の物品Wに可動フック42の先端(下端)側が引っ掛けられる。具体的には、図6Cを用いて上述したように、可動フック42の先端が上方に変位することで物品Wのつば部Wcが下方から持ち上げられる。この持ち上げによって、最上段の物品Wを除いた全ての物品Wが前方より後方の方が高くなるよう傾けられ、最下段の物品Wの下面前端側が番重Bの載置面に接触される。そして、受け部材31a、31bから最下段の物品Wの下面が離れるように配置され、物品Wの下面と番重Bの載置面との間に隙間S3aが形成される。
リフト工程が実施された後に、図22に示すように、退避工程が実施される。図22は、搬入方法の退避工程を示す説明用側面図である。退避工程では、リフト工程により隙間S3aが形成された状態を維持しつつ、変位部35の変位用モータ35aが駆動され、長尺部材32a、32bが軸回りに回転される。すると、受け部材31a、31bが最下段の物品Wの下方に重なる位置から後方に退避する方向に回転変位され、長尺部材32a、32b間で左右方向に略平行に位置するように配置される。
退避工程が実施された後に、図23に示すように、第1載置工程が実施される。図23は、搬入方法の第1載置工程を示す説明用側面図である。第1載置工程では、リフト工程とは反対方向に引っ掛け部40のモータ41が駆動され、可動フック42の先端が下向きになるように動作されて最下段の物品Wとの引っ掛けが解除される。これにより、可動フック42によって持ち上げられた状態でなくなり、最下段の物品Wの下面が番重Bの載置面に載置される。
第1載置工程が実施された後に、図24に示すように、上昇工程が実施される。図24は、搬入方法の上昇工程を示す説明用側面図である。上昇工程では、駆動部34の無端ベルト34dが回動され、下部把持部30と引っ掛け部40とが上限位置まで上昇される。これにより、下部把持部30の長尺部材32a、32b及び受け部材31a、31bと、引っ掛け部40の可動フック42とが、積み重なった物品Wと番重Bの内面との間を通過して番重Bより上方に配置される。
上昇工程が実施された後に、図25に示すように、第2載置工程が実施される。図25は、搬入方法の第2載置工程を示す説明用側面図である。第2載置工程では、ロボットアーム等によって把持機構1が下方に移動され、上から2段目の物品Wの上面側に吸着部12で吸着保持する最上段の物品Wが載置される。これにより、番重Bの内部にて全ての物品Wが鉛直方向に積み重なった状態とされる。
第2載置工程が実施された後に、図26に示すように、吸着解除工程が実施される。図26は、搬入方法の吸着解除工程を示す説明用側面図である。吸着解除工程では、吸着パッド12aにおける負圧の発生が停止され、吸着部12による最上段の物品Wの吸着保持が解除される。その後、ロボットアーム等によって把持機構1が上方に移動され、次の搬送に対する待機状態とされる。
ここで、複数の物品Wを積み重ねた状態で搬入した場合を説明したが、単一の物品Wを把持して搬入することもできる。この場合、先ず、把持工程、位置決め工程、搬入工程の順で上記と同様に実施される。その後、下降工程として、下部把持部30が下降され、吸着パッド12aで吸着保持される物品Wの下面から受け部材31a、31bが離間される。下降工程の実施後、受け部材31a、31bが回転変位して物品Wの下方から退避される退避工程が実施される。退避工程の実施後は、上記と同様に上昇工程が実施された後、載置工程(第2載置工程)として、把持機構1が下方に移動されて吸着保持された物品Wが番重Bの載置面に載置される。そして、上記と同様に吸着解除工程が実施される。従って、単一の物品Wの把持を解除する場合には、上述したリフト工程及び第1載置工程が省略されることとなる。
なお、単一の物品Wを把持して搬入する場合は、番重Bの載置面に載置するだけでなく、既に番重Bに収容された物品W上に載置させてもよい。
以上のように、本実施の形態においては、吸着部12で物品Wの上面を吸着しつつ、吸着部12と受け部材31a、31bと鉛直方向から物品Wを挟み込むので、吸着部12の吸引力が弱まっても挟み込み力の作用によって物品Wを保持した状態を維持することができる。これにより、把持機構1による物品Wの搬送中に物品Wの保持が解除されて落下することを防止することができる。なお、吸引力が弱まる要因としては、物品W上面の凹凸や、シート等で包装した際の皺、搬送時の移動による慣性力が考えられるが、かかる要因があっても落下防止を実現することができる。
また、複数の物品Wを積み重ねた状態で鉛直方向から把持できるので、従来の吸着のみで保持する保持機構に比べ、ロボットアーム等による把持機構1の移動距離を短縮することができる。詳述すると、従来の保持機構では物品を1つずつ搬送するため、例えば、物品が3つになると、保持機構の移動距離が1つの場合の約3倍になる。この点、本実施の形態では、把持機構1で把持できる限りにおいて物品Wを複数としても、物品Wを1つ把持する場合と把持機構1の移動距離を同じにすることができる。これにより、物品Wの単位時間当たりの搬送効率を高めることができる。
また、引っ掛け部40で最下段の物品Wを引っ掛けて持ち上げるので、当該物品Wの下方に受け部材31a、31bを挿入したり、物品Wの下方から受け部材31a、31bを退避したりするよう変位することができる。このとき、受け部材31a、31bから物品Wの下面が離れるように持ち上げることで、受け部材31a、31bが物品Wの下面に擦れて損傷等が発生することを回避することができる。
また、図4Bに示す状態で、受け部材31a、31b及び長尺部材32a、32bの前後幅が小さくなるような形態とし、それらの前後幅内に可動フック42が収まる板状としたので、これらを狭い隙間に挿入することができる。これにより、番重Bの側壁に物品Wを近付けても物品Wを把持できるようになり、番重B内での物品Wのレイアウトの自由度を高めることができる。
また、本実施の形態では、可動フック42で持ち上げて複数の物品Wを傾ける前に、最上段の物品Wを吸着保持して、当該物品Wより下の物品Wと離しておくことができる。これにより、可動フック42による引っ掛け動作で傾斜する物品Wの数を1つ減らすことができる。この結果、傾斜による横方向(本実施の形態では前方向)への最大変位量を小さくすることができ、物品Wの積み重ねが傾斜によって崩れることを防ぐことができる。また、傾斜によって前方に隣接して配置される物品Wに寄り掛からないようにすることもできる。更に、傾斜する物品Wが減ることで、可動フック42が引っ掛かるつば部Wcに加わる物品Wの総重量を軽くすることができ、引っ掛け部40の構造の簡略化を図りつつ、つば部Wcの変形等を未然に防ぐことができる。
また、板状部材23の下面中央一箇所位置に弾性体からなる突起25を設けたので、物品Wの上面高さ位置を精度良く検出できるようにしつつ、物品Wに加えられる負荷を小さく保つことができる。
また、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
上記実施の形態において、受け部材31a、31bの長さや、物品Wを把持するときの受け部材31a、31bの前方への突出量は物品Wの大きさ等に応じて適宜変更してもよい。但し、受け部材31a、31bの先端が物品Wの前後方向中央に位置させると、鉛直方向からの挟み込み力を安定して付与でき、且つ、傾けて持ち上げられた物品Wの下面に接触しないように受け部材31a、31bを挿入及び退避し易くなる。
また、可動フック42における可動構造は、物品Wを持ち上げて傾けることができる限りにおいて、他の関節構造としたり、下端が鉤状となる部材を前後及び上下方向に駆動する構造等を採用してもよい。他には、可動フック42の先端部42cを横向きとして物品Wの一部に引っ掛けたり、中間部42bを省略して回転する部分を一箇所に変更したりしてもよい。
また、下部把持部30において、受け部材31a、31bを前後に変位させる構成は、種々の変更が可能であり、以下に述べる構成に代替してもよい。かかる構成としては、受け部材31a、31bの各先端を相互に角度変位可能に連結するとともに、各長尺部材32a、32bをラックピニオン構造等とした変位部によって相互に離間接近移動可能に設けたものを例示できる。このとき、各長尺部材32a、32bが軸回りに回転可能にラックに支持される。
このような構成においては、各長尺部材32a、32bの接近移動によって、各長尺部材32a、32bが回転しつつ受け部材31a、31bが物品Wの下方に突出する方向に角度変位するようにする。一方、各長尺部材32a、32bの離間移動で、受け部材31a、31bが物品Wの下方から退避する方向に角度変位するようにする。このように長尺部材32a、32bを移動させる場合、長尺部材32a、32bが物品Wの一辺に沿って配置され、接近移動時に当該一辺の中央に向かって移動させるとよい。
また、上記実施の形態では、把持する物品Wを弁当容器としたが、把持機構1によって把持できる物品であれば何ら限定されるものでない。例えば、サンドイッチやパン、弁当等の他の食品、各種の電気機器、装置、それらの部品としたり、弁当容器以外の箱やトレイによって梱包されたものとしたりしてもよい。更に、物品Wにおいて、引っ掛け部40による引っ掛け箇所となる被引っ掛け部は、上記のようなつば部Wcに限られず、物品Wの側面や、下面から側面に亘って形成される凹凸部分、傾斜部分、突出部分等とすることができる。かかる被引っ掛け部が物品Wに形成されると、把持機構1において、物品Wを水平な載置面で載置された状態から把持したり、把持した物品Wを水平な載置面に載置したりする際に、物品Wを容易に持ち上げて傾けることができる。
また、把持機構1を用いて物品Wを搬送する場合、下部把持部30で物品Wを下方から支持せずに吸着部12だけで単一の物品を吸着保持したり、かかる吸着保持を行わずに、下部把持部30の受け部材31a、31bに少なくとも1個の物品Wを載せて支持することを妨げるものでない。但し、上記実施の形態のように、上部把持部10及び下部把持部30にて少なくとも1個の物品Wを挟み込んだ方が物品Wを安定して支持することができる。