JP5090056B2 - 核酸結合性磁性担体分散体およびそれを用いた核酸単離方法 - Google Patents
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Description
磁性担体(C)は、活性剤(A)が環状4級アンモニウム基(a)を有することにより、核酸結合性を有し、かつ、水性分散媒(S)中に分散することができる。
酸化鉄微粒子(P)の数平均粒子径は、好ましくは磁性の観点から0.005〜15μm、より好ましくは0.01〜1μmである。
活性剤(A)の重量は、(C)の重量に基づいて、1〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜80重量%である。
他の成分(A)以外の活性剤は、(C)の重量に基づいて、0〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜50重量%である。(A)以外の活性剤は、活性剤(A)と同じく、酸化鉄微粒子(P)の表面に、物理的または化学的な結合により吸着している。
まず、酸化鉄微粒子(P)のみからなる水性ゾルを調製する。この水性ゾルの調製法は、アルカリ共沈法やイオン交換樹脂法などを例示することができる。アルカリ共沈法では、例えば塩化鉄(III)と塩化鉄(II)とをモル比で1:3〜2:1程度の比率で含む約0.1〜2モルの水溶液と、NaOH,KOH,NH4OH等の塩基とをpHが約7〜12になるように混合し、必要に応じて加熱熟成し、酸化鉄微粒子(P)を得る。精製が必要な場合は、生成した酸化鉄微粒子(P)を分離、水洗した後、水性溶媒に再分散する。酸化鉄微粒子(P)、および活性剤(A)、必要により(A)以外の活性剤を水性分散媒(S)中で混合し、活性剤(A)と酸化鉄表面との反応を行うことで、活性剤(A)に被覆された酸化鉄微粒子を得る。この水性ゾルは、必要に応じて透析、限外ろ過、遠心分離などにより精製または濃縮してもよい。
活性剤(A)は前述の観点から酸化鉄微粒子(P)表面の官能基と反応により共有結合を形成する官能基を分子内に1つ以上含有しているものである。酸化鉄微粒子(P)表面の官能基としては例えば水酸基等が挙げられる。
また、酸化鉄微粒子(P)の表面と反応する官能基として例えばエポキシ基、アミノ基、スルホン基、スルホニル基、ホスホリル基、アルコキシシラン基、カルボキシル基、イソシアネート基などが好ましい。これらの中で、エポキシ基、及びアルコキシシラン基がより好ましく、アルコキシシラン基がさらに好ましい。
活性剤(A)の分子量は、好ましくは50〜5000、さらに好ましくは100〜1000、より好ましくは200〜500である。
本発明の核酸結合性磁性担体分散体(L)中の核酸結合性磁性担体(C)の濃度(重量%)は、分散体(L)の重量に基づいて、好ましくは0.1〜50、より好ましくは1〜10である。
(a)核酸結合性磁性担体分散体(L)を、核酸を含有する試料と混合して、核酸を核酸結合性磁性担体に結合させる工程(吸着工程)
(b)核酸が結合した核酸結合性磁性担体を液体から分離し、必要により洗浄する工程(分離工程)
および(c)核酸結合性磁性担体−核酸複合体から核酸を溶出する工程(溶出工程)
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」、%は重量%を意味する。
酸化鉄(II)4水和物0.398gと酸化鉄(III)6水和物1.081gを150mlの蒸留水中に溶解させ、メカニカルスターラーで攪拌した。完全に溶解したところで、激しく攪拌(およそ1000rpm)しながら15mlの30%アンモニア水溶液を一気に加えた。攪拌スピードをやや緩めたのち、大気下40℃で30分攪拌した。攪拌を止めた後、生じた粒子を磁石で集めて上澄みを除去し、20mlの蒸留水で2回、20mlのエタノールで2回洗浄した。数平均粒子径は12.5nmであった。
N2雰囲気下で以下の操作を行った。
1−メチルイミダゾールを60.4mmolと3−クロロプロピルトリメトキシシラン54.9mmolを混合し、90℃で72時間反応させた。酢酸エチルで数回洗浄した後、酢酸エチルを減圧で除去し、53.1mmolの1−メチル−3−(3−トリメトキシシリル)プロピルイミダゾリウムクロライド(A−1)を得た。(A−1)は下記化学式(2)で示される。
ピリジン(60.4mmol)と3−クロロプロピルトリメトキシシラン(54.9mmol)を混合し、90℃で72時間反応させた。酢酸エチルで数回洗浄した後、酢酸エチルを減圧で除去し、53.1mmolの下記分子式(4)で示されるN−トリメトキシシランプロピルピリジニウムクロライド(A−3)を得た。
1−メチルイミダゾールを60.4mmolとエピクロロヒドリンを54.9mmolを混合し、50℃で72時間反応させた。酢酸エチルで数回洗浄した後、酢酸エチルを減圧で除去し、53.1mmolの下記分子式(5)で示される1−メチル−3−グリシジルイミダゾリウムクロライド(A−4)を得た。
活性剤(A−5’)として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン (ワコーケミカル品)を、そのまま使用した。(A−5’)は下記化学式(6)で示される。
作成した酸化鉄ナノ粒子(P−1)300mgを、エタノール150ml中に蒸留水1mlを加えた混合液に加え、メカニカルスターラーで攪拌した。その中に10mlの脱水エタノールに溶解させた(A−1)を加え、70℃で6時間攪拌した。スターラーを止めた後、溶液を室温に戻し、濃茶〜黒色の粒子を磁石で集め、上澄みを除去した。粒子は20mlのメタノールで5回洗浄した後室温、減圧下で乾燥させることで、核酸結合性磁性担体(C−1)を得た。速やかに(L−1)中の(C−1)の濃度が5重量%となるように蒸留水に分散させ、核酸結合性磁性担体分散体(L−1)を得た。(C−1)の数平均粒子径は21.0nmであった。
核酸結合性磁性担体分散体(L−1)1mlに2mlの0.5M ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドカリウム水溶液を加え、超音波槽で分散させた。粒子を磁石で集めて上澄みを除去し、蒸留水2mlで6回洗浄し、速やかに5重量%となるように蒸留水に分散させ、減圧下で乾燥させた。これにより、核酸結合性磁性担体(C−1)のアニオン交換が起こり、上記化学式(3)で示される活性剤(A−2)が表面に吸着した核酸結合性磁性担体(C−2)を得た。速やかに(L−2)中の(C−2)の濃度が5重量%となるように蒸留水に分散させ、核酸結合性磁性担体分散体(L−2)を得た。(C−2)の数平均粒子径は28.5nmであった。
作製した酸化鉄ナノ粒子(P)300mgを、エタノール150ml中に蒸留水1mlを加えた混合液に加え、メカニカルスターラーで攪拌した。その中に10mlの脱水エタノールに溶解させた(A−3)を加え、70℃で6時間攪拌した。スターラーを止めた後、溶液を室温に戻し、濃茶〜黒色の粒子を磁石で集め、上澄みを除去した。粒子は20mlのメタノールで5回洗浄した後室温、減圧下で乾燥させることで、核酸結合性磁性担体(C−3)を得た。速やかに(L−3)中の(C−3)の濃度が5重量%となるように蒸留水に分散させ、核酸結合性磁性担体分散体(L−3)を得た。(C−3)の数平均粒子径は20.0nmであった。
作製した酸化鉄ナノ粒子(P)300mgを、エタノール150ml中に蒸留水1mlを加えた混合液に加え、メカニカルスターラーで攪拌した。その中に10mlの脱水エタノールに溶解させた(A−4)を加え、70℃で6時間攪拌した。スターラーを止めた後、溶液を室温に戻し、濃茶〜黒色の粒子を磁石で集め、上澄みを除去した。粒子は20mlのメタノールで5回洗浄した後室温、減圧下で乾燥させることで、核酸結合性磁性担体(C−4)を得た。速やかに(L−4)中の(C−4)の濃度が5重量%となるように蒸留水に分散させ、核酸結合性磁性担体分散体(L−4)を得た。(C−4)の数平均粒子径は18.5nmであった。
活性剤(A−1)200mgの代わりに活性剤(A−5’)200mgを使用した以外は、実施例1と同様にして比較の核酸結合性磁性担体分散体(L−1’)を得た。(C−1’)の数平均粒子径は15nmであった。
100gの硫酸第一鉄 (FeSO4・7H2O)を1000ccの純水に溶解した。この硫酸第一鉄 と等倍モルになるように、28.8gの水酸化 ナトリウムを500ccの純水に溶解して、硫酸第一鉄 水溶液を調製した。次に、上記硫酸第一鉄 水溶液を攪拌しながら、1時間かけて水酸化 ナトリウム水溶液を滴下し、水酸化 第一鉄 の沈殿物を生成させた。滴下終了後、攪拌しながら、水酸化第一鉄 の沈殿物を含む懸濁液の温度を85℃まで昇温した。懸濁液の温度が85℃に達した後、200L/hrの速度で、エアーポンプを使用して空気を吹き込みながら、8時間酸化 して、酸化鉄微粒子を生成させた。さらに、酸化鉄微粒子懸濁液を、純水を用いて十分に水洗した後、乾燥させることなくこの懸濁液の全重量が468gになるように純水を加えた。この分散液に、70gのケイ酸ナトリウムを溶解した。ケイ酸ナトリウム溶解酸化鉄微粒子分散液とは別に、界面活性剤として22.5gのソルビタンモノラウレートを溶解した1500ccのヘキサン溶液を、上記懸濁液へ投入して混合液とした。この混合液をホモミキサ(特殊機化工業社製)を使用して、10分間攪拌分散し、エマルジョン分散液を作製した。次に、1000gの硫酸アンモニウムを4500ccの純水に溶解した。この硫酸アンモニウム溶解液を攪拌しながら、上記エマルジョン分散液を、約1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌することで中和反応を行った。この硫酸アンモニウムによる中和反応により、シリカに表面を被覆された比較の核酸結合性磁性担体(C−2’)を得た。速やかに(L−2’)中の(C−2’)の濃度が5重量%となるように蒸留水に分散させ、比較の核酸結合性磁性担体分散体(L−2’)を得た。(C−2’)の数平均粒子径は120μmであった。
透過型電子顕微鏡(日立製作所、H−7100)で観察を行い100個の粒子の粒子径を測定した結果から計算により算出した。測定サンプルはコロジオン膜処理した銅メッシュ上に、酸化鉄微粒子(P)または核酸結合性磁性担体(C)を含有する分散液をスポイトで一滴垂らし、そのまま風乾することで調製した。
(1)回収速度
DNA(pBR322, 2.84×106 Da)の1 mg / ml TE8溶液を、0.05mlを、核酸結合性磁性担体分散体(L−1)〜(L−4)、及び(L−1‘)、(L−2‘)それぞれと混合後、ネオジム磁石により、核酸結合性磁性担体が沈殿し、上澄み液が透明になる時間を計測した結果、(L−1)〜(L−4)、及び(L−1‘)、(L−2‘)いずれも、1分以内で沈降し、回収することができた。
(2)回収効率
DNA(pBR322, 2.84×106 Da)の1 mg / ml TE8溶液を、0.05ml / ml となるように蒸留水で希釈した溶液100μlに5 mg / ml の核酸結合性磁性担体分散体(L−1)〜(L−4)、及び(L−1‘)、(L−2‘)を30, 20, 10, 5 μl づつ加え、蒸留水ですべてを同じ量にした後に攪拌した。攪拌後すぐに核酸結合性磁性担体(C)を磁石で回収し、上澄み液のアガロースゲル電気泳動を行った。
コントラスト比=蛍光部分明度/ブランク部分明度
コントラスト比が1に近いほど、上澄み液中のDNAの量が少ない。
Claims (6)
- 4級アンモニウム基を構成する窒素原子を環の構成原子とする環状4級アンモニウム基(a)を有し、酸化鉄微粒子(P)の表面と共有結合(c)で結合した活性剤(A)を有する核酸結合性磁性担体分散体(L)であって、該活性剤(A)で被覆された該酸化鉄微粒子(P)からなる核酸結合性磁性担体(C)が、水性分散媒(S)中に分散されてなることを特徴とする核酸結合性磁性担体分散体(L)。
- 共有結合(c)がSi−O−Fe結合である請求項1に記載の核酸結合性磁性担体分散体(L)。
- 環状4級アンモニウム基(a)が、イミダゾリウム基である請求項1または2に記載の核酸結合性磁性担体分散体(L)。
- 酸化鉄微粒子(P)が0.005〜15μmの数平均粒子径を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸結合性磁性担体分散体(L)。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載される核酸結合性磁性担体分散体(L)、洗浄用緩衝液、および核酸を核酸結合性磁性担体(C)から分離する溶離液を含む核酸単離用試薬キット。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載される核酸結合性磁性担体分散体(L)を、核酸を含有する試料と混合し、該混合物から核酸と核酸結合性磁性担体(C)の複合体を磁力により回収する工程を含む核酸単離方法。
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