以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例1の振動情報提供システムの構成を示すブロック図である。
本実施例の振動情報提供システムは、ネットワーク103を介して相互に通信可能に接続されたサーバ101、クライアント端末102及び複数の計測器106を有する。
サーバ101は、計測器106等によって計測された輸送環境情報(例えば振動値)及び輸送振動係数を記憶し、それらを用いて所望の移動条件における振動値を推定して、その結果をネットワーク103経由でクライアント端末102に送信する。サーバ101の構成、それが記憶する情報及び実行する処理の詳細については後述する。
なお、上記の振動値の推定はクライアント端末102が行ってもよい。その場合は、サーバ101が推定の処理に必要な情報をクライアント端末102に送信する。
クライアント端末102は、ネットワーク103を介してサーバ101と接続され、サーバ101に対して振動値を推定する処理の実行の指示及びその結果の表示等を行う。クライアント端末102が推定の処理を行う場合には、そのために必要な情報をサーバ101から取得して実行する。
本実施例の振動情報提供システムは、複数のクライアント端末102を有してもよい。例えば、複数のクライアント端末102が、それぞれ、複数のトラック104及び複数の鉄道車両105等に搭載されてもよい。クライアント端末102は、ネットワーク103経由でサーバ101に接続するための通信機能を有する装置であり、例えばPC(Personal Computer)、ノートPC、スマートフォン、タブレット端末又はカーナビゲーション装置等であってもよい。クライアント端末102の構成の詳細については後述する。
計測器106は、輸送環境を計測する各種センサを有する。具体的には、計測器106は、振動値を計測するセンサ(例えば加速度センサ)及び位置情報センサ(例えばGPS受信機)等を含む。計測器106は、これらのセンサによって、計測器106が搭載された輸送手段(例えばトラック104又は鉄道車両105)が物体を輸送する際の振動値及び位置情報を計測する。ここで、物体とは、例えば物品又は人員など、いかなる種類のものであってもよい。また、図1には輸送手段の例としてトラック104及び鉄道車両105を示しているが、輸送手段は物体を積載して移動する移動体である限り、例えば人員を輸送するバスなど、いかなる種類のものであってもよい。
計測器106は、さらに、計測された情報をネットワーク103経由でサーバ101に送信する機能を有する。あるいは、計測器106は、計測された情報を蓄積して、適切なタイミングで(例えば1回の輸送が終了した後で)、記憶媒体を介してそれらの情報をサーバ101にコピーしてもよいし、ネットワーク103を介さずに直接サーバ101に接続してそれらの情報をサーバ101にコピーしてもよい。
なお、図1では、計測器106が搭載される輸送手段として、道路上を走行するトラック104及び鉄道上を走行する鉄道車両105を示しているが、これら以外の輸送手段(例えば飛行機又は船等)に搭載されてもよい。また、計測器106は、トラック104等に直接取り付けられてもよいし、トラック104等によって輸送される物体又はその物体を内包するコンテナ等に取り付けられてもよい。
ネットワーク103は、サーバ101、クライアント端末102及び計測器106の間の通信を可能とするものである限り、例えばインターネット又はローカルエリアネットワークなど、いかなる種類のものであってもよい。
図2は、本発明の実施例1のサーバ101の構成を示すブロック図である。
サーバ101は、相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)201、通信部202及びメモリ203を有する。
CPU201は、通信部202から振動値を推定する処理の実行の指示を受け、メモリ203に格納された情報にアクセスして処理を実行し、通信部202から処理の結果を出力する。
メモリ203は、計測輸送環境情報テーブル211、輸送振動係数テーブル212、シミュレーションプログラム213及びシミュレーション結果管理テーブル214を記憶する。各テーブルの詳細については後述する。シミュレーションプログラム213は、CPU201が振動値の推定及びそれに基づく許容速度の算出等の処理のために実行するプログラムである。なお、この処理は、サーバ101ではなくクライアント端末102が実行してもよい。その場合は、クライアント端末102がシミュレーションプログラム213と同等のプログラムを保持する。シミュレーション結果管理テーブル214は、CPU201がシミュレーションプログラム213に基づいて振動値の推定等の処理を実行した後に、その処理の結果を含むように作成され、メモリ203に記憶される。
通信部202は、直接、又はネットワーク103を介してクライアント端末102に接続され、処理の実行の指示及びその結果等を通信する。
図3は、本発明の実施例1のクライアント端末102の構成を示すブロック図である。
図1を参照して説明したように、クライアント端末102は、通常のPC等であってもよいが、図3にはクライアント端末102がトラック104等に搭載されるナビゲーション端末である例を示す。
クライアント端末102は、相互に接続されたCPU301、通信部302、ディスプレイ303、音声出力部304、入力部305、メモリ306及びセンサ部307を有する。
CPU301は、通信部302を経由してサーバ101へ振動値を推定する処理の実行の指示を送信し、その処理の結果を通信部302から受信してメモリ306に記録し、その内容をディスプレイ303に表示する。さらに、CPU301は、処理の結果に応じた音声信号を音声出力部304に出力してもよい。
メモリ306は、CPU301が受信した処理の結果及びその他の情報を記録する。詳細には、メモリ306は、ナビゲーションプログラム311、シミュレーションプログラム312、許容速度テーブル313、シミュレーション結果管理テーブル314及び出力音声テーブル315を記録する。
ナビゲーションプログラム311は、CPU301が、推定された振動値(以下、推定振動値とも記載する)に基づく輸送経路の決定、決定した輸送経路に沿った輸送手段(例えばトラック104)の誘導(すなわちナビゲーション)、及び、所定の場合の輸送経路の再決定等を行うために実行するプログラムである。
シミュレーションプログラム312は、サーバ101のシミュレーションプログラム213と同様のものであり、サーバ101が振動値の推定等の処理を実行する場合には、メモリ306はシミュレーションプログラム312を記憶しなくてもよい。クライアント端末102が振動値の推定等の処理を実行する場合には、CPU301がシミュレーションプログラム312に従ってそれらの処理を実行する。この場合、メモリ306は、計測輸送環境情報テーブル211及び輸送振動係数テーブル212と同等のテーブルを記録してもよいし、CPU301がシミュレーションプログラム312に従って処理を実行する際に必要な情報をネットワーク103経由で計測輸送環境情報テーブル211及び輸送振動係数テーブル212から読み出してもよい。
許容速度テーブル313及びシミュレーション結果管理テーブル314は、CPU301がシミュレーションプログラム312に基づいて振動値の推定等の処理を実行した後に、その処理の結果に基づいて作成され、メモリ306に記憶される。ただし、振動値の推定等の処理がサーバ101で行われる場合には、これらのテーブルの情報がサーバ101から取得され、メモリ306に記憶される。
出力音声テーブル315は、CPU301がナビゲーションプログラム311に従ってナビゲーションを実行するときに出力する音声情報を記憶する。この音声情報は、音声出力部304から出力される。
ディスプレイ303は、振動値の推定等の処理の結果及びナビゲーションの画面等を出力する。
通信部302は、直接、又はネットワーク103を介してサーバ101に接続され、処理の実行の指示及びその結果等を通信する。
音声出力部304は、音声を出力するスピーカ等を含み、CPU301から出力音声テーブル315に基づく音声情報を入力されると、それを音声に変換して出力する。
入力部305は、振動値の推定等の処理を実行する指示及びその処理の条件等を入力する装置である。クライアント端末102が通常のPC等である場合には、入力部305はキーボード及びマウス等であってもよいし、クライアント端末102がナビゲーション端末である場合には、入力部305はディスプレイ303と一体に形成されたタッチパネル等であってもよい。
センサ部307は、位置センサ321及び速度センサ322を有する。位置センサ321は、クライアント端末102の(言い換えるとそれを搭載しているトラック104等の輸送手段の)位置、例えば緯度及び経度を計測する。速度センサ322は、クライアント端末102を搭載している輸送手段の速度を計測する。以下に説明する処理において利用される輸送手段の現在の位置及び速度は、位置センサ321及び速度センサ322によって計測されたものである。
図4は、本発明の実施例1のサーバ101が保持する輸送振動係数テーブル212の説明図である。
サーバ101は、移動条件ごとに予め設定した輸送振動係数テーブル212を保持する。サーバ101のCPU201は、シミュレーションプログラム213に従って、計測輸送環境情報テーブル211からある地点で実際に計測された振動値及びその振動値が計測されたときの移動条件を抽出する。そして、CPU201は、抽出した移動条件と、これから振動値を推定しようとする移動条件との差分から、適用する輸送振動係数を輸送振動係数テーブル212から選択し、後述する算出式を用いて振動値を推定する。具体的には、輸送振動係数は、後述するように、過去に輸送を行った輸送手段において計測された振動値(以下、計測振動値とも記載する)から、予定される移動条件下の推定振動値を算出する場合において、計測振動値が計測されたときの移動条件が予定される移動条件と異なる場合に、それらの相違に応じて計測振動値に乗じる係数である。
輸送振動係数の値は、物理シミュレーションによって算出された値であってもよいし、実験による経験則によって設定された値(例えば実測値に基づいて算出された値等)であってもよいし、機械学習によって最適化された値であってもよい。
また、移動条件が同じであっても、輸送モード(例えば、一般道路、高速道路、鉄道又はフェリー等)及び振動方向によって振動値への影響が異なることがあるため、輸送振動係数テーブルを輸送モードごと及び振動方向ごとに作成して、適切なものを選択してもよい。
ここで、図4に示す輸送振動係数テーブル212の具体例について説明する。図4には、例として、輸送モードが一般道路、振動方向が垂直方向の輸送振動係数テーブル212(図4(a)~図4(f))、及び、輸送モードが一般道路、振動方向が横方向の輸送振動係数テーブル212(図4(g)~図4(l))を示す。
図4(a)は、輸送手段の種類に関する輸送振動係数w1の例を示す。この例では、輸送手段が4tトラックである場合の輸送振動係数w1が1.0、10tトラックの場合の輸送振動係数w1が2.0に設定されている。これは、4tトラックで計測された振動値に基づいて、10tトラックで計測される振動値(すなわち10tトラックで輸送される物体に加わるであろう振動の大きさ)を後述する計算式によって推定するときに、係数2.0を使用することを示している。
このように、図4(a)には4tトラックで計測された振動値に基づいてそれとは異なる種類のトラックにおける振動値を推定するための係数を示しているが、輸送振動係数テーブル212は、さらに、他の種類のトラックで計測された振動値に基づいてそれとは異なる種類のトラックにおける振動値を推定するための係数も含む。例えば、輸送振動係数テーブル212は、4tトラックで計測された振動値に基づいてそれとは異なる種類のトラックにおける振動値を推定するための係数をさらに含んでもよく、その場合、10tトラックに関する輸送振動係数w1が1.0であり、それとは種類のトラックに関する輸送振動係数w1が1.0以外の値となる。後述する図4(b)~図4(l)についても同様である。
図4(b)は、振動箇所に関する輸送振動係数w2の例を示す。この例では、荷台中央における輸送振動係数w2が1.0、荷台後方における輸送振動係数w2が2.0に設定されている。これは、輸送手段(例えばトラック)の荷台中央で計測された振動値に基づいて、荷台後方における振動値(すなわち荷台後方に積載されて輸送される物体に加わるであろう振動の大きさ)を推定するときに、係数2.0を使用することを示している。
図4(c)~図4(f)は、それぞれ、輸送手段のサスペンションの種類に関する輸送振動係数w3、輸送手段の積載率に関する輸送振動係数w4、輸送手段の移動速度に関する輸送振動係数w5、及び、輸送手段のタイヤの空気圧に関する輸送振動係数w6の例を示す。さらに、図4(g)~図4(l)は、横方向の振動に関する輸送振動係数w1~w6の例を示す。それぞれの係数の値の意味及びその使用方法は、上記の輸送振動係数w1及びw2の例に準じたものであるため、それらに関する詳細な説明を省略する。
図5は、本発明の実施例1のサーバ101が保持する計測輸送環境情報テーブル211の説明図である。
例えば、過去に輸送手段が実際に行った輸送において計測された振動値及びそのときの移動条件が計測輸送環境情報テーブル211に格納される。
計測輸送環境情報テーブル211の各レコードには、所定の長さの期間(図5の例では5秒間)に計測された振動値と、その計測が行われた時の移動条件とが格納される。具体的には、計測輸送環境情報テーブル211の各レコードは、日時501、緯度502、経度503、輸送速度504、輸送手段505、サスペンション506、積載率507、振動箇所508、タイヤ空気圧509、振動値X軸510、振動値Y軸511及び振動値Z軸512を含む。
日時501は、振動値が計測された期間の始点の日時を示す。緯度502及び経度503は、当該日時における輸送手段の位置を示す座標である。輸送速度504は、当該日時における輸送手段の速度を示す。輸送手段505は、使用された輸送手段の種類(例えばトラックの種類)を示す。サスペンション506は、使用された輸送手段が備えるサスペンションの種類を示す。積載率80%は、振動値が計測された時点における輸送手段の積載率を示す。振動箇所508は、輸送手段において振動値が計測された位置を示す。タイヤ空気圧509は、振動値が計測された時点における輸送手段のタイヤの空気圧を示す。振動値X軸510、振動値Y軸511及び振動値Z軸512は、それぞれ、当該日時を始点とする所定の長さの期間に所定の間隔で計測されたX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の振動の大きさを示す値である。この例において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、それぞれ、輸送手段の移動方向を前方とした場合の左右方向、前後方向及び上下方向に相当する。なお、本実施例において振動値は加速度であり、その単位はGである。
図5には、緯度502、経度503及び輸送速度504の計測間隔が5秒であり、振動値の計測間隔が1ミリ秒である例を示している。すなわち、図5の例において、上記の所定の長さの期間とは5秒間であり、計測輸送環境情報テーブル211の1レコードの振動値X軸510、振動値Y軸511及び振動値Z軸512には、それぞれ、5000サンプルの振動値(例えば加速度の値)が格納される。
また、図5の例において、輸送速度504~タイヤ空気圧509が移動条件であり、振動値X軸510、振動値Y軸511及び振動値Z軸512が後述する計算式における計測振動値a0である。このような移動条件及び計測振動値は一例であり、計測輸送環境情報テーブル211は、上記以外の移動条件(例えば気象条件等)をさらに含んでもよいし、上記の移動条件の一部を含まなくてもよい。また、計測輸送環境情報テーブル211は、上記以外の振動値を含んでもよい。例えば、計測輸送環境情報テーブル211は、上記のように計測された複数の振動値を統計処理することによって得られた統計値(例えば平均値等)を振動値として含んでもよい。
なお、計測輸送環境情報テーブル211に格納された振動値は、それぞれが計測されたときに行われていた輸送の出発地(すなわち経路の始点)と目的地(すなわち経路の終点)との組合せ及びそれらの間の経路ごとに管理されてもよい。例えば、出発地Aから目的地Bまで経路1を経由して輸送した輸送手段で計測された振動値のグループ、同じ経路1を経由して輸送した別の輸送手段で計測された(すなわち上記のグループとは異なる移動条件下で計測された)振動値のグループ、出発地Aから目的地Bまで経路1とは異なる経路2を経由して輸送した輸送手段で計測された振動値のグループ、さらに、出発地及び目的地の少なくとも一方が上記と異なる輸送において計測された振動値のグループ、等が管理されてもよい。
具体的には、例えば、ある出発地からある目的地までの1回の輸送に一つの識別情報を付与して識別する場合に、計測輸送環境情報テーブル211は、各レコードの振動値が計測された輸送の識別情報、その輸送における出発地、目的地及び経路等を示す情報をさらに含んでもよい。
図6は、本発明の実施例1のサーバ101が振動値を推定する処理を示すフローチャートである。
図6には、サーバ101のCPU201がシミュレーションプログラム213に従って実行する処理を示す。なお、クライアント端末102のCPU301がシミュレーションプログラム312に従って同様の処理を実行してもよい。
最初に、サーバ101は、過去に輸送を行った輸送手段の計測振動値a0及びそれが計測されたときの移動条件の入力を受け付ける(ステップ601)。さらに、サーバ101は、これから推定しようとする振動値の移動条件の入力を受け付ける(ステップ602)。これから推定しようとする振動値の移動条件とは、例えば輸送手段が輸送を行うことを予定している場合の、当該輸送において予定される移動条件である。すなわち、その移動条件下での当該輸送手段の振動値が以下の処理によって推定される。ステップ601及び602は、どちらが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
例えば、ユーザがクライアント端末102の入力部305を操作して、これから行おうとする輸送における移動条件と、その輸送のために輸送手段が通過する経路上の少なくとも1点を指定する情報と、を入力してもよい。サーバ101は、ネットワーク103を経由してそれらの情報を受信すると、受信した情報に含まれる移動条件をこれから推定しようとする振動値の移動条件として受け付けてもよい(ステップ602)。さらに、サーバ101は、計測輸送環境情報テーブル211から、緯度502及び経度503が示す座標値が、受信した情報において指定されている地点の座標値と一致するレコードを抽出し、そのレコードの振動値X軸510~振動値Z軸512の値を計測振動値a0として、そのレコードの輸送速度504~タイヤ空気圧509の値を移動条件としてそれぞれ受け付けてもよい(ステップ601)。
なお、上記の処理において座標値が一致するとは、完全に一致する場合だけでなく、実質的に同一地点であるとみなせる程度に近い場合(例えば両者の距離が所定の値より小さい場合)を含んでもよい。また、計測輸送環境情報テーブル211から座標値が一致するレコードが複数抽出された場合には、それらのうち移動条件が一致するものを選択してもよいし、一致するものがない場合には最も近いものを選択してもよい。あるいは、これから行おうとする輸送の出発地、目的地及び経路と一致する出発地、目的地及び経路に対応するレコードが含まれる場合にはそれを選択してもよい。
次に、サーバ101は、ステップ601及びステップ602で入力された移動条件を比較し(ステップ603)、両者が異なるか否かを判定する(ステップ604)。
ステップ604において、移動条件が異なると判定された場合、サーバ101は、異なると判定された移動条件に対応する輸送振動係数wxを輸送振動係数テーブル212から取得する(ステップ605)。次に、サーバ101は、ステップ601で入力された計測振動値a0と、ステップ605で取得した輸送振動係数wxと、に基づいて、後述する算出式を用いて推定振動値aを算出する(ステップ606)。そして、サーバ101は、算出した推定振動値aを出力する(ステップ607)。
一方、ステップ604において、移動条件が同一であると判定された場合、サーバ101は、計測振動値a0を推定振動値aとして出力する(ステップ608)。
以上で振動値を推定する処理が終了する。
ここで、ステップ606における推定振動値aの算出方法の一例を説明する。
例えば、輸送振動係数がwx(すなわちw1、w2、w3、・・・)であるときの推定振動値aは、次の算出式(1)によって計算される。
ここで、a0は計測振動値であり、例えば計測輸送環境情報テーブル211の振動値X軸510~振動値Z軸512の値である。wx(すなわちw1、w2、w3、・・・)は推定振動値aに対応する輸送振動係数であり、例えば輸送振動係数テーブル212の輸送手段の種類に関する輸送振動係数w1~タイヤ空気圧に関する輸送振動係数w6である。w0x(すなわちw01、w02、w03、・・・)は計測振動値a0が計測されたときの輸送振動係数であり、例えば、それぞれ計測振動値a0が計測されたときの条件に対応する輸送振動係数w1~輸送振動係数w6である。具体的には、例えば、積載率に関する輸送振動係数が図4(d)のように定められている場合において、積載率が20%のときの計測振動値a0に基づいて、積載率が80%のときの推定振動値aを算出する場合、W4は積載率80%に対応する1.0、W04は積載率20%に対応する1.5となる。このように種々の移動条件の値に基づいて推定振動値aを算出することによって、精度の高い推定が可能となる。
続いて、算出式(1)を用いた推定振動値aの算出の具体例を説明する。例えば、ステップ601で入力された緯度X及び経度Yにおける移動条件が、輸送手段:4tトラック、振動箇所:荷台中央、サスペンション:エアサスペンション、積載率:80%であり、このときの計測振動値a0:1.2[G](垂直方向)であるとする。ただし、ここでは説明を簡単にするために、移動速度、タイヤ空気圧、前後方向の振動値及び左右方向の振動値は考慮しないものとする。
一方、ステップ602では、移動条件として、輸送手段:4tトラック、振動箇所:荷台後方、サスペンション:エアサスペンション、積載率:20%が入力される。すなわち、輸送手段とサスペンションは計測振動値a0に対応する移動条件と同じであり、振動箇所と積載率は異なる。この場合、サーバ101は、値が同一である輸送手段及びサスペンションに関する輸送振動係数w1/w01及びw3/w03を「0」とし、値が異なる振動箇所及び積載率に関する輸送振動係数w2/w02及びw4/w04をそれぞれ図4(b)及び図4(d)のテーブルから読み取った「2.0/1.0」及び「1.5/1.0」とし、a0を1.2[G]として算出式(1)を計算すると、下記の通り、推定振動値aは4.55[G]と算出される。
a=(0+2.0/1.0+0+1.5/1.0)×1.2=4.55[G]
なお、上記のような輸送振動係数及び算出式を用いた推定方法は、計測振動値と、それが計測されたときの移動条件と、所望の移動条件と、に基づいて、当該所望の移動条件における振動値を推定する方法の一例であり、他の方法によって推定が行われてもよい。例えば、計測輸送環境情報テーブル211に蓄積された計測振動値及び移動条件に基づく機械学習等によって、計測振動値と、それが計測されたときの移動条件と、所望の移動条件と、が入力されると当該所望の移動条件における振動値を出力するモデルを作成し、それによって推定振動値を算出してもよい。上記の算出式(1)及び輸送振動係数テーブル212は、そのようなモデルとして作成されたものであってもよい。
上記の実施例1によれば、計測された振動値に基づいて、計測時とは異なる移動条件下の振動値が推定される。これによって、例えば、許容値を超える振動値が発生し得る地点を回避した輸送を計画するなど、将来行われる輸送における移動条件の計画、又は梱包設計の改善検討等に役立てることができる。これによって、輸送品質の向上に寄与することができる。
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。実施例2の振動情報提供システムは、物体の輸送が実行される前に、実施例1の方法で算出した推定振動値に基づいて輸送計画を作成する。そして、作成した輸送計画に従って輸送が開始されると、輸送状況を監視し、輸送を支援する情報を出力する。以下に説明する相違点を除き、実施例2のシステムの各部は、図1~図6に示された実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
図7は、本発明の実施例2のサーバ101が輸送計画を作成する処理を示すフローチャートである。
図7には、実施例2のサーバ101のCPU201が、将来行われる輸送の計画(輸送計画)を作成するために、シミュレーションプログラム213等に従って実行する処理を示す。なお、クライアント端末102のCPU301がシミュレーションプログラム312等に従って同様の処理を実行してもよい。
最初に、サーバ101は、作成する輸送計画の出発地、目的地及び許容振動値の入力を受け付ける(ステップ701)。具体的には、例えば、クライアント端末102のディスプレイ303が輸送計画実施画面を表示し、ユーザが入力部305を操作して出発地(A)、目的地(B)及び許容振動値を入力し、クライアント端末102がネットワーク103を介して入力された情報をサーバ101に送信してもよい。表示される輸送計画実施画面の内容及びそれに基づくデータの入力等の詳細については、図8等を参照して後述する。
次に、サーバ101は、計測輸送環境情報テーブル211から、ステップ701で入力された内容に該当する計測振動値及びそれに対応する移動条件を検索し、その結果を輸送計画実施画面に出力する(ステップ702)。具体的には、サーバ101が検索結果をクライアント端末102に送信し、クライアント端末102のディスプレイ303が受信した検索結果を表示してもよい。
ここで、ステップ702における検索の例をいくつか説明する。例えば、計測輸送環境情報テーブル211において、過去に実際に輸送手段が移動した移動経路ごとに計測振動値が管理されている場合、サーバ101は、入力された出発地から入力された目的地に至る経路に対応する計測振動値が計測輸送環境情報テーブル211に格納されているか否かを判定し、格納されている場合にはその経路を輸送計画における移動経路の候補として特定し、その経路に対応する(すなわちその経路上の複数の地点における)計測振動値及びそれに対応する移動条件を検索してもよい。入力された出発地から入力された目的地に至る複数の異なる経路に対応する計測振動値が格納されている場合には、サーバ101は、それらの複数の経路を移動経路の候補として特定し、それぞれの経路に対応する計測振動値等を検索してもよい。このように、過去に実際に出発地から目的地まで通して走行された経路上の一連の計測振動値を利用することによって、実際の輸送に即した適切な輸送計画を生成できる。
一方、入力された出発地から入力された目的地に至る経路に対応する計測振動値が計測輸送環境情報テーブル211に格納されていない場合、サーバ101は、入力された出発地から入力された目的地に至る経路を取得して、その経路上の複数の地点のそれぞれと同一の(又は十分に近い)座標値に対応する計測振動値及び移動条件を計測輸送環境情報テーブル211から検索してもよい。より詳細には、例えばクライアント端末102がナビゲーションプログラム311の機能によって入力された出発地から入力された目的地に至る経路を検索し、その経路の情報をサーバ101に送信し、サーバ101がその経路について上記の処理を行ってもよい。このとき、クライアント端末102が複数の経路を検索し、サーバ101がそれらの経路について上記の処理を行ってもよい。計測輸送環境情報テーブル211において、過去に実際に輸送手段が移動した移動経路ごとに計測振動値が管理されていない場合も同様である。
なお、計測輸送環境情報テーブル211に格納されているデータの量が膨大である場合、ステップ702の検索によって得られる計測振動値の量も膨大になる可能性がある。その場合、サーバ101は、移動条件によって検索対象を絞り込んでもよい。例えば、サーバ101は、次のステップ703を先に実行し、入力された移動条件にから遠い移動条件に対応する計測振動値を検索対象から除外してもよい。あるいは、サーバ101は、検索結果を移動条件の類似度によってランク付けして表示し、ユーザに検索結果を選択させてもよい。
次に、サーバ101は、シミュレーション対象の移動条件の入力を受け付ける(ステップ703)。具体的には、例えば、ユーザがステップ702までの処理によって表示された輸送計画実施画面を参照して、入力部305を操作して、作成する輸送計画における移動条件を入力し、クライアント端末102がネットワーク103を介して入力された情報をサーバ101に送信してもよい。
なお、例えばユーザが熟練者である場合など、検索結果を参照しなくても移動条件を容易に入力できる場合がある。このような場合には、ステップ703の前に検索結果の表示を行わなくてもよい。
次に、サーバ101は、シミュレーションプログラム213によって推定振動値を算出し、その結果をシミュレーション結果管理テーブル214に記録する(ステップ704)。例えば、サーバ101は、出発地(A)から目的地(B)までの経路上の各地点について図6に示した方法で推定振動値を算出してその結果を計画IDと対応付けて記録する。このとき、ステップ601で入力される計測振動値a0及び移動条件は、ステップ702で検索された、出発地(A)から目的地(B)までの経路上の各地点に対応する値である。また、ステップ602で入力される移動条件は、ステップ703で入力されたものである。
出発地(A)から目的地(B)までの経路の複数の候補が得られている場合には、サーバ101は、それぞれの経路上の地点について推定振動値を算出し、それぞれの結果をそれぞれ異なる計画IDと対応付けて記録してもよい。あるいは、サーバ101は、経路の複数の候補のうち選択された一つについて上記の処理を実行してもよい。具体的には、ユーザがいずれか一つを選択してもよいし、移動条件以外の何らかの条件を設定して、その条件を満たすものを選択してもよい。
次に、サーバ101は、推定振動値を算出した結果を輸送計画実施画面に出力する(ステップ705)。具体的には、サーバ101が算出結果をクライアント端末102に送信し、クライアント端末102のディスプレイ303が受信した算出結果を表示してもよい。
サーバ101は、さらに、ステップ701で入力された許容振動値と、ステップ704で算出された推定振動値と、に基づいて、各地点における許容速度を算出してもよい(ステップ706)。例えば、サーバ101は、ある地点について算出された推定振動値が許容振動値と一致する場合、ステップ703で移動条件として入力されたその地点の移動速度をその地点の許容速度として記録してもよい。また、サーバ101は、ある地点について算出された推定振動値が許容振動値と一致しない場合、ステップ703で移動条件として入力されたその地点の移動速度を、算出された推定振動値が許容振動値と一致するように変更し、変更された移動速度をその地点の許容速度として記録してもよい。
サーバ101は、算出した各地点における許容速度をメモリ203内に記録してもよいし、ネットワーク103を介してクライアント端末102に送信してもよい。
次に、サーバ101は、算出した許容速度を輸送計画実施画面に出力する(ステップ707)。例えば、サーバ101が許容速度の算出結果をクライアント端末102に送信し、クライアント端末102は、受信した算出結果を許容速度テーブル313に記録するとともに、ディスプレイ303に表示してもよい。許容速度の表示及び許容速度テーブル313の例については、それぞれ、図9及び図10を参照して後述する。
図8は、本発明の実施例2のクライアント端末102が出力する輸送計画実施画面の第1の例の説明図である。
図8に示す輸送計画実施画面800は、経路表示部801、輸送計画入力部802、計測振動値表示部803、計測振動値の移動条件表示部804、推定結果表示部805、移動条件入力部806、表示内容選択部807及び経路自動選択指示部808を含む。
経路表示部801には、例えば、作成される輸送計画における出発地(A)及び目的地(B)を含む地域の地図が表示される。ユーザは、例えば、地図上の地点を指定することによって出発地(A)及び目的地(B)を指定してもよい。経路表示部801には、さらに、出発地(A)から目的地(B)までの輸送のための移動経路が表示される。例えば、クライアント端末102のCPU301がナビゲーションプログラム311を実行することによって出発地(A)から目的地(B)までの一つ以上の経路を探索し、それらの経路について図7の処理によって推定振動値を算出し、推定振動値が算出された経路をディスプレイ303に出力してもよい。あるいは、図7のステップ702においてサーバ101が計測輸送環境情報テーブル211を参照して一つ以上の経路を取得した場合には、サーバ101がそれらの経路の情報をクライアント端末102に送信する。図8の例では、三つの経路が表示されている。これらの経路が、実際の輸送に使用される経路の候補となる。
経路表示部801に複数の経路の候補が表示された場合、ユーザがそれらの一つを選択することができる。その場合、選択された経路に関する計測振動値及び推定振動値がそれぞれ計測振動値表示部803及び推定結果表示部805に表示される。図8の例では、三つの経路の候補のうち、一番上の経路が選択され、二重線で表示されている。
輸送計画入力部802は、出発地、目的地及び許容振動値の入力欄を含む。ユーザが経路表示部801を介して出発地及び目的地を指定した場合には、それらを識別する情報(上記の例では「A」及び「B」)が出発地及び目的地の入力欄に表示されてもよい。あるいは、ユーザは、経路表示部801を介さずに、輸送計画入力部802に出発地及び目的地を直接入力してもよい。その場合、ユーザは、出発地及び目的地の位置を示す座標値を入力してもよいが、出発地及び目的地の施設名又は番地等を入力し、クライアント端末102が保持する地図情報(図示省略)に基づいてそれらの上方から出発地及び目的地の位置を特定してもよい。
さらに、ユーザは、輸送計画入力部802内の許容振動値の入力欄に、作成する輸送計画における許容振動値を入力する。これは、輸送される物体の性質等に応じて決定される。
輸送計画入力部802は、さらに、輸送管理番号入力欄を含んでもよい。輸送管理番号とは、輸送計画を識別する番号である。例えば、輸送計画を作成するときにユーザが適切な輸送管理番号を入力してもよいし、作成される輸送計画を一意に識別する番号が自動的に生成されて入力されてもよい。あるいは、作成される輸送計画における出発地、目的地及び許容振動値と、その輸送計画を識別する輸送管理番号とが対応付けて管理されている場合、ユーザが輸送管理番号を輸送計画入力部802に入力することによって、それに対応する出発地、目的地及び許容振動値が自動的に入力されてもよい。
計測振動値表示部803及び計測振動値の移動条件表示部804には、それぞれ、図7のステップ702で検索された計測振動値及びその移動条件が表示される。例えば、経路表示部801に表示された複数の経路のうち一つが選択された場合、過去にその経路を使って実際に行われた輸送における計測振動値及びその移動条件がそれぞれ計測振動値表示部803及び計測振動値の移動条件表示部804に表示される。図8の例では、計測振動値表示部803に、縦軸を経路上の各地点で計測された振動値、横軸を出発地から各地点までの移動距離としたグラフ(実線)が表示される。このグラフでは、さらに、許容振動値(破線)及び各地点で計測された移動速度(一点鎖線)が重畳表示されている。
なお、図8の例では、上記のとおり、選択された経路を使って実際に行われた輸送における計測振動値等が表示されている。ここで、仮に、その経路を使って過去に複数回の輸送が行われていた場合、それらの輸送から、作成される輸送計画の移動条件(すなわち移動条件入力部806に入力された移動条件)に最も近い移動条件下で行われた輸送が特定され、その輸送における計測振動値及び移動条件が表示されてもよい。
また、指定された出発地から指定された目的地まで、選択された経路を経由して行われた輸送の情報が計測輸送環境情報テーブル211に記録されていない場合であって、記録されている複数の輸送のそれぞれの経路の一部をつなぎ合わせることによって上記の選択された経路を生成できる場合には、それらの輸送において計測された計測振動値及び移動条件を表示してもよい。
また、図8の例では経路表示部801に表示された複数の経路のうち選択された一つに関する計測振動値等が表示されているが、全ての経路に関する計測振動値等が並べて表示されてもよい。
ユーザは、移動条件入力部806に、作成される輸送計画における移動条件を入力する。図8の例では、輸送手段であるトラックの種類、振動箇所、サスペンションの種類及びトラックの積載率が入力される。これらの移動条件がステップ703においてサーバ101に入力される。
表示内容選択部807には、推定結果表示部805に表示される内容を選択するためにユーザが操作するラジオボタンが表示される。図8には、「同速度での補正振動値」又は「許容振動値を満たす速度算出」のいずれかが選択可能であり、ユーザが前者を選択した例を示している。このため、推定結果表示部805には、計測振動値表示部803に表示された計測振動値と、移動条件入力部806に入力された移動条件とに基づいて算出された推定振動値がステップ705において表示される。この例において重畳表示されている許容振動値(破線)及び移動速度(一点鎖線)は計測振動値表示部803に表示されているものと同一である。
なお、表示内容選択部807において、「許容振動値を満たす速度算出」が選択されなかった場合、図7の処理のうちステップ706及び707は実行されなくてもよい(実行されたとしてもその結果は表示されない)。許容振動値を満たす速度が算出されない場合、その速度を用いた最短時間経路の選択もできないため、図8の例では、経路自動選択指示部808は、例えばいわゆるグレイアウトのような、ユーザからの入力を受け付けない状態となっている。
図9は、本発明の実施例2のクライアント端末102が出力する輸送計画実施画面の第2の例の説明図である。
図9の例は、図8に示したものと同様の輸送計画を作成する場合に、表示内容選択部807にて「許容振動値を満たす速度算出」が選択され、さらに、経路自動選択指示部808において経路を自動選択する指示が入力された例を示している。以下、図8と相違する部分について説明する。
「許容振動値を満たす速度算出」が選択されているため、サーバ101は、図7のステップ706及び707を実行し、その結果が推定結果表示部805に表示される。例えば、経路表示部801で選択された経路上の各地点について計算された許容速度が図9の推定結果表示部805の一点鎖線のように表示されてもよい。
ただし、図9の例では、経路自動選択指示部808において経路を自動選択する指示が入力されている。この場合、サーバ101は、ステップ706において、候補として生成された全ての経路上の各地点について許容速度を計算し、その結果をクライアント端末102に送信する。クライアント端末102は、ナビゲーションプログラム311の機能によって、輸送手段が計算された許容速度を超えないようにそれぞれの経路を走行した場合の出発地から目的地までの所要時間を計算し、その所要時間が最短となる経路(すなわち最短時間経路)を自動的に選択する。
このようにして選択された経路は、経路表示部801において、他の経路とは異なる形態・色彩又は太さの線によって強調表示されてもよい。図9の例では、経路表示部801に表示された三つの経路のうち上から二つ目の経路が選択され、その経路が二重線によって強調表示されている。
図8及び図9に示すようなインターフェースを提供することによって、ユーザによる移動条件等の入力、経路の候補それぞれの性質の把握、及び実際に輸送に使用する経路の選択等が容易になる。
なお、上記の「最短時間経路」は一例であり、輸送手段が計算された許容速度を超えない範囲で所定の条件を満たす経路を最適な経路として選択することができる。例えば、許容速度が所定の速度以下となる地点を含む経路を選択の対象から除外してもよい。上記のような処理によって、経路の選択が自動化され、ユーザの負担が軽減される。
図10は、本発明の実施例2のクライアント端末102が保持する許容速度テーブル313の説明図である。
許容速度テーブル313には、図7のステップ706で算出された許容速度が格納される。具体的には、許容速度テーブル313は、各地点の位置の座標を示す経度1001及び緯度1002と、算出された各地点の許容毒度1003とを含む。
なお、許容速度テーブル313は、後述するシミュレーション結果ファイルに含まれてもよい(図11参照)。
図11は、本発明の実施例2のサーバ101が保持するシミュレーション結果管理テーブル214の説明図である。
サーバ101がシミュレーションプログラム312に従って図6及び図7に示した処理を実行した場合、その結果を管理するためにシミュレーション結果管理テーブル214が生成され、メモリ203に記録される。一方、クライアント端末102がシミュレーションプログラム312に従って図6及び図7に示した処理を実行した場合、その結果を管理するためにシミュレーション結果管理テーブル314が生成され、メモリ306に格納される。サーバ101が図6等の処理を実行した場合であっても、サーバ101がシミュレーション結果管理テーブル214の内容をクライアント端末102に送信し、クライアント端末102が受信した情報をシミュレーション結果管理テーブル314として記録してもよい。いずれの場合も、シミュレーション結果管理テーブル314はシミュレーション結果管理テーブル214と同様であるため、説明を省略する。
シミュレーション結果管理テーブル214は、計画ID1101、計画条件データ1102及びシミュレーション結果ファイル名1103を含む。計画ID1101は、作成された輸送計画の識別情報である。例えばある物体をある出発地からある目的地まで輸送する計画が作成された場合、その計画が計画ID1101によって識別される。
計画条件データ1102は、輸送計画を作成する際に設定される条件であり、例えば図8の輸送計画入力部802及び移動条件入力部806に入力された情報を含んでもよい。図11の例では、計画条件データ1102は、輸送管理番号1102A、計画実施日1102B、出発地1102C、目的地1102D、許容振動値1102E、輸送手段1102F、振動箇所1102G、サスペンション1102H、積載率1102I及び荷物種別1102Jを含む。計画実施日1102Bは計画された輸送が実行される日を示す。荷物種別1102Jはそれぞれの輸送計画において輸送される荷物の種別を示す。
シミュレーション結果ファイル名1103は、図6及び図7の処理の結果を記録したファイル(すなわちシミュレーション結果ファイル)の名称を示す。各シミュレーション結果ファイルには、例えば、各輸送計画における出発地から目的地までの経路上の各地点の座標値、それぞれの地点における推定振動値、及びそれぞれの地点における許容速度等が格納される。
なお、例えば図8に示すように、ある物体を出発地からある目的地まで輸送する1回の輸送について、複数の経路の候補が提示された場合、経路の候補ごとに輸送計画が作成されてもよい。その場合、同一の輸送管理番号を有する複数の輸送計画が作成され、それぞれ輸送計画IDで識別される。あるいは、上記のような1回の輸送の途中で移動条件が変化する場合に、その変化の前後をそれぞれ一つの輸送計画として扱ってもよい。
図11に例示する計画ID「1」及び「2」の輸送計画は、いずれも輸送管理番号「X1234」に対応する。この例は、機械部品を10tトラックの荷台後方に積載して地点Aから地点Bまで輸送し、地点Bにおいて同じトラックにさらに別の荷物を積み込んで、地点Bから地点Cまで輸送する例を示している。このため、地点Bまでは積載率が50%であったが、地点Bから先では積載率が70%に増えている。このような場合に、上記の一連の輸送を、地点Aを出発地、地点Bを目的地とする輸送と、地点Bを出発地、地点Cを目的地とする輸送とに分けて、それぞれに異なる計画IDを付して管理することができる。
図11に例示するシミュレーション結果ファイル名(例えば「X1234_1.csv」)は、輸送管理番号(X1234)と計画ID(1)とを組み合わせたものであるが、一つの輸送管理番号に対応する複数の輸送計画を区別できる名前である限り、これ以外の命名規則に従ってファイル名が決定されてもよい。
図12は、本発明の実施例2のクライアント端末102が出力する輸送計画情報リスト選択画面の説明図である。
輸送計画情報リスト選択画面は、図6及び図7に示す処理が終了し、輸送計画が作成された後、輸送が開始される前に、クライアント端末102のディスプレイ303によって表示される。ユーザがこの画面を参照してこれから実行しようとする輸送計画を選択すると、それに従うナビゲーションが開始される。このとき、クライアント端末102は、通常と同様のナビゲーションに加えて、輸送状況の監視を開始する。輸送状況の監視については後述する。
図12に例示する輸送計画情報リスト選択画面1200は、輸送計画情報リスト1210、運搬開始ボタン1222及びキャンセルボタン1223を含む。輸送計画情報リスト1210は、作成された輸送計画のリストであり、それぞれの輸送計画について、選択1211、計画ID1212、輸送管理番号1213、計画実施日1214、出発地1215、目的地1216、許容加速度1217、輸送手段1218、振動箇所1219、サスペンション1220及び積載率1221を含む。これらのうち、計画ID1212から積載率1221には、シミュレーション結果管理テーブル214の計画ID1101及び計画条件データ1102の内容が表示される。輸送計画情報リスト1210には、計画条件データ1102に含まれる全ての項目が表示されてもよいが、一部が省略されてもよい。図12の例では荷物種別1102Jが省略されている。
選択1211は、リストに含まれる輸送計画のいずれかを選択するためのボタンである。例えば、ユーザがこれから実行しようとする輸送計画に対応するボタンを選択して、さらに運搬開始ボタン1222を操作すると、クライアント端末102は、ナビゲーションプログラム311に従って、選択した輸送計画の経路に沿ったナビゲーションを開始する。一方、ユーザがキャンセルボタン1223を操作すると、それまでに入力された選択が取り消される。
図13は、本発明の実施例2のクライアント端末102が出力する輸送計画読み込み画面の説明図である。
クライアント端末102は、図12に示すような輸送計画情報リスト選択画面の代わりに、図13に示すような輸送計画読み込み画面を表示して、ユーザからの入力を受け付けてもよい。
図13に例示する輸送計画読み込み画面1300は、輸送管理番号入力部1301、運搬開始ボタン1302及びキャンセルボタン1303を含む。輸送管理番号入力部1301には、ユーザがこれから実行しようとする輸送計画を識別する輸送管理番号が入力される。図11の例のように一つの輸送管理番号に対応する複数の輸送計画が作成されている場合には、計画IDが入力されてもよい。その後、ユーザが運搬開始ボタン1302を操作すると、クライアント端末102は、ナビゲーションプログラム311に従って、選択した輸送計画の経路に沿ったナビゲーションを開始する。一方、ユーザがキャンセルボタン1303を操作すると、それまでの輸送管理番号入力部1301への入力が取り消される。
図14は、本発明の実施例2のクライアント端末102が保持する出力音声テーブル315の説明図である。
出力音声テーブル315は、輸送計画に従う輸送が開始された後で、必要に応じて音声出力部304から出力される音声の情報を含む。具体的には、出力音声テーブル315は、出力される音声のテキストを示す音声テキスト1403と、それぞれの音声がどのような場合に出力されるかを示す種別1402と、それぞれの音声を識別する音声ID1401と、を含む。
例えば、音声ID1401が「1」、種別1402が「運搬開始」である音声テキスト1403は、「運搬を開始します。許容速度を遵守して運転して下さい。」である。これは、輸送計画に従う輸送が開始されるときに、「運搬を開始します。許容速度を遵守して運転して下さい。」というテキストを読み上げる音声が音声出力部304から出力されることを示している。同様に、ユーザに速度を通知するとき、速度を警告するとき、速度に関する注意を喚起するとき等に出力される音声が出力音声テーブル315内に保持される。
次に、輸送計画に従って輸送が実行されるときに、本実施例の振動情報提供システムが輸送状況を監視する処理、及びその際に輸送を支援するために出力する情報について説明する。
クライアント端末102は、輸送計画に従う輸送が開始されると、当該輸送計画において定められた経路を案内するための情報を出力する。このとき、クライアント端末102は、出力音声テーブル315に保持された音声ID「1」に対応する「運搬を開始します。許容速度を遵守して運転して下さい。」のような音声メッセージを出力してもよい。
さらに、クライアント端末102は、輸送手段(例えば当該クライアント端末102を搭載しているトラック)の現在位置を定期的に計測し、経路を案内するために出力される情報を計測された位置に応じて更新するとともに、現在位置における許容速度と、現在の実際の移動速度とを比較する。現在の実際の移動速度が現在位置における許容速度を超過していない場合、クライアント端末102は、これから走行する経路上の各地点の許容速度と現在位置の許容速度とを比較し、許容速度が変化する位置を特定する。
そして、現在位置から許容速度が変化する位置までの距離が十分に大きい場合(例えばその距離が所定の値より大きい場合、又は、その位置までの推定到達時間が所定の値より大きい場合等)、クライアント端末102は、当面は現状維持でよく、特別な注意喚起の必要がないと判定する。このような場合に出力される画面の例を図15に示す。
図15は、本発明の実施例2のクライアント端末102が出力するナビゲーション画面の第1の例の説明図である。
図15に例示するナビゲーション画面は、一般的なナビゲーション装置の出力と同様に、輸送手段の現在位置を含む地域の地図1501、その地図上の輸送手段の現在位置1502、輸送手段の今後の走行経路1503、及び、輸送手段の今後の進行方向の指示(例えば100m先を左折する指示)1504等を含む。さらに、本実施例のナビゲーション画面は、現在の許容速度1505(例えば80km/h)、及び、これから通過する進路上の、許容速度が変更される地点までの距離1506(例えば3km)、及びその地点からの許容速度1507(例えば50km/h)が表示される。変更後の許容速度1508が、地図上の当該許容速度の適用が開始される地点に表示されてもよい。
なお、図15では省略されているが、ナビゲーション画面は、これから通過する進路上の任意の地点における推定振動値の表示をさらに含んでもよい。後述する図16及び図17についても同様である。
図15の例では、現状維持のため、特別な注意情報及び警告等は表示されない。このとき、クライアント端末102は、出力音声テーブル315に保持された音声ID「2」又は「3」に対応する「3km先の許容速度は50km/hです。」又は「ここから3km先までの許容速度は80km/hです。」のような音声メッセージを出力してもよい。
現在の移動速度が許容速度を超過していない場合であっても、現在位置から許容速度が変更される位置までの距離が近い場合(例えばその距離が所定の値より小さい場合、又は、その位置までの推定到達時間が所定の値より小さい場合等)、クライアント端末102は、速度について注意を促す情報を出力する。その例を図16に示す。
図16は、本発明の実施例2のクライアント端末102が出力するナビゲーション画面の第2の例の説明図である。
図16の例では、許容速度が変更される地点までの距離1601として「200m」が表示されている。この距離が所定の基準より小さいため、さらに「減速準備」が表示され、さらに、「速度超過に注意して下さい。」という注意メッセージ1602が表示される。このとき、クライアント端末102は、出力音声テーブル315に保持された音声ID「4」に対応する「200m先の許容速度は50km/hです。減速して下さい。」のような音声メッセージを出力してもよい。
現在の移動速度が現在位置における許容速度を超過している場合、クライアント端末102は、減速を指示する情報を出力する。その例を図17に示す。
図17は、本発明の実施例2のクライアント端末102が出力するナビゲーション画面の第3の例の説明図である。
この例では、既に移動速度が許容速度を超過しているため、許容速度が変更されるまでの距離の代わりに、速度が超過していることを示すメッセージ1701及び減速を指示するメッセージ1702が表示される。このとき、クライアント端末102は、出力音声テーブル315に保持された音声ID「5」に対応する「許容速度をオーバしています。80km/hまで減速して下さい。」のような音声メッセージを出力してもよい。
上記の実施例2によれば、推定された振動値に基づいて、物体を安全に輸送するための輸送計画が作成され、さらに、その輸送計画に従う輸送の実行を支援する情報(例えば推定振動値、許容速度及び許容速度が変化する地点までの距離等)が出力される。これによって、輸送品質の向上に寄与することができる。