JP7074584B2 - フィルムインサート成形体 - Google Patents

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本発明は、機械強度、密着性、外観意匠性に優れ、また塗装工程あるいはめっき工程を排除することによって環境負荷が低減され、工程数を削減することによりコスト合理性が改善された加飾フィルムインサート成形体に関する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐薬品性、耐熱性、機械的特性、電気絶縁性などに優れるエンジニアリングプラスチックである。このため、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、電気電子部品、車両関連部品、航空機部品、住設機器部品として広く利用されている。しかしながら、ポリアリーレンスルフィド樹脂は耐薬品性に優れる反面、金属や無機・有機の各素材との接着性、密着性が低いという欠点を有している。そのため表面にめっきや塗装を行いにくく意匠性に乏しいため、外装部品やランプリフレクター等への用途が限られていた。
一方、めっきや塗装は多量の廃液や有機溶剤を使用するため環境負荷が大きく、環境対策によるコストアップなどの問題もあり代替技術が望まれており、その代替技術として加飾フィルムの使用が提案されている。加飾フィルムの使用は廃液や有機溶剤を使用しないため環境負荷が小さく、代替技術として優れており、この加飾フィルムを使用した意匠性付与にはフィルムインサート成形が適している。加飾フィルムを貼りあわせる場合、一般的には基材の成形品と加飾用フィルムとの密着性が不十分になるため、接着剤等の使用が必要となるが、フィルムインサート成形は、前処理として所望形状に予備賦型された加飾フィルムを用い、基材樹脂と加飾フィルムを熱融着により一体化させた樹脂成形品を製造する方法であり、接着剤等を必要としない。またインモールド転写成形とは異なり、フィルムインサート成形では射出成形により加飾フィルムの裏面と基材樹脂を溶融させて密着させるため、加飾フィルムを基材表面に追従させる必要がなく、シワや破れの発生を抑制できる。また、成形と同時に加飾するため工程数を削減してコストダウンも達成できる利点がある。これらの理由から、樹脂成形品の加飾方法として加飾フィルムを使用したフィルムインサート成形が注目を浴びている。
加飾フィルムは用途に応じて各種フィルムが報告されており、特許文献1~4にはフィルムインサート成形に適した加飾フィルムが提案されている。しかしながら、基材樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂の場合、得られるフィルムインサート成形品のフィルム密着性は十分に満足できるものではない。
一方、ポリアリーレンスルフィド樹脂に繊維状充填材およびカルボジイミド化合物を配合した組成物としては、例えば特許文献5~7が開示されている。特許文献5および6では、特定のサイジング剤で表面処理された炭素繊維を使用する、もしくは特定の溶融混練工程を経ることで、引張強度や伸度といった力学特性と生産性および成形加工性を兼ね備えた繊維強化樹脂組成物が提案されている。また特許文献7では、特定の芳香族ポリカルボジイミド系樹脂を配合することにより、耐湿性および耐薬品性に優れ、成形時のモールドデポジット発生量が低減された樹脂組成物が提案されている。しかしながら、いずれも該樹脂組成物と加飾フィルムとの密着性などフィルムインサート成形品に関しては何ら記載がない。
特開2014-43000号公報 特開2013-49220号公報 特開2011-79273号公報 特開2007-161735号公報 特開2015-110746号公報 WO2015/064484号公報 特開2004-91504号公報
本発明の課題は、優れた機械強度、密着性、外観意匠性に優れたフィルムインサート成形体を提供することである。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂、繊維状充填材およびカルボジイミド化合物からなる樹脂組成物並びに反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムを用いることで、機械強度、密着性、外観意匠性に優れたインサート成形体を形成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、上記課題は、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)繊維状充填材(B成分)10~150重量部および(C)カルボジイミド化合物(C成分)0.001~10重量部を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物並びに反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムよりなるインサート成形体により達成される。
本発明の好適な態様の1つは、(2)A成分が、カルボキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする上記構成1のインサート成形体である。
本発明の好適な態様の1つは、(3)C成分が、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(1)で表される環状構造を含み、環状構造を直接形成する原子数が8~50である化合物であることを特徴とする上記構成1または2のインサート成形体である。
Figure 0007074584000001
(式中、Qは、下記式(1-1)、(1-2)または(1-3)で表される2~4価の結合基である。)
Figure 0007074584000002
(式中、ArおよびArは各々独立に、2~4価の炭素数6~15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2~4価の炭素数6~15の芳香族基の組み合わせである。sは0~10の整数である。kは0~10の整数である。XおよびXは各々独立に、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。Xは、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
本発明の好適な態様の1つは、(4)式(1)中のQが下記式(2-1)、(2-2)または(2-3)で表される2価の結合基であることを特徴とする上記構成3のインサート成形体である。
Figure 0007074584000003
(式中、Ara(aは下付、以下同様)およびAraは各々独立に、2価の炭素数6~15の芳香族基である。RaおよびRaは各々独立に、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2価の炭素数6~15の芳香族基の組み合わせである。sは0~10の整数である。kは0~10の整数である。XaおよびXaは各々独立に、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、2価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。Xaは、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、2価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ara、Ara、Ra、Ra、Xa、XaおよびXaはヘテロ原子を含有していてもよい。)
本発明の好適な態様の1つは、(5)C成分が下記式(3)で表される化合物であることを特徴とする上記構成1または2のインサート成形体である。
Figure 0007074584000004
(式中、Qb(bは下付、以下同様)は下記式(3-1)、(3-2)または(3-3)で表される3価の結合基であり、Yは環状構造を担持する担体であり、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。)
Figure 0007074584000005
(式中、Arb、Arb、Rb、Rb、Xb、Xb、Xb、sおよびkは、各々式(1-1)~(1-3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
本発明の好適な態様の1つは、(6)C成分が下記式(4)で表される化合物であることを特徴とする上記構成1または2のインサート成形体である。
Figure 0007074584000006
(式中、Qc(cは下付、以下同様)は下記式(4-1)、(4-2)または(4-3)で表される4価の結合基であり、ZおよびZは、環状構造を担持する担体であり、各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。)
Figure 0007074584000007
(式中、Arc、Arc、Rc、Rc、Xc、Xc、Xc、sおよびkは、各々式(1-1)~(1-3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
本発明の好適な態様の1つは、(7)B成分が、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種の繊維状充填材であることを特徴とする上記構成1~6のいずれかのインサート成形体である。
本発明の好適な態様の1つは、(8)塗布層が有する反応性官能基がエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であることを特徴とする上記構成1~7のいずれかのインサート成形体である。
以下、本発明の詳細について説明する。
(A成分:ポリアリーレンスルフィド樹脂)
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp-フェニレンスルフィド単位、m-フェニレンスルフィド単位、o-フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができ、その中でも、p-フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらに、ポリ(p-フェニレンスルフィド)がより好ましい。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総塩素含有量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。総塩素含有量が500ppmを超える場合には、発生ガス量が増加しウエルド強度を低下させる場合がある。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総ナトリウム含有量は、好ましくは39ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスの増加によるウエルド強度を低下させるだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性を低下させる場合がある。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される分散度(Mw/Mn)は好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上、さらに好ましくは2.9以上である。分散度が2.7未満の場合は、成形時のバリ発生が多くなる場合がある。なお、分散度(Mw/Mn)の上限は特に規定されないが、10以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出された値である。なお、溶媒には1-クロロナフタレンを使用し、カラム温度は210℃とした。
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、既知の方法で重合されるが、特に好適な重合方法としては、米国登録特許第4,746,758号、第4,786,713号、特表2013-522385、特開2012-233210および特許5167276等に記載された製造方法が挙げられる。これらの製造方法は、ジヨードアリール化合物と固体硫黄を、極性溶媒なしに直接加熱して重合させる方法である。
前記製造方法はヨウ化工程および重合工程を含む。該ヨウ化工程ではアリール化合物をヨードと反応させて、ジヨードアリール化合物を得る。続く重合工程で、重合停止剤を用いてジヨードアリール化合物を固体硫黄と重合反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する。ヨードはこの工程において気体状で発生し、これを回収して再びヨウ化工程に用いられる。実質的にヨードは触媒である。
前記製造方法で用いられる代表的な固体硫黄としては、室温で8個の原子が連結されたシクロオクタ硫黄形態(S)が挙げられる。しかしながら重合反応に用いられる硫黄化合物は限定されるものではなく、常温で固体または液体であればいずれの形態でも使用し得る。
前記製造方法で用いられる代表的なジヨードアリール化合物としては、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、ジヨードビフェニル、ジヨードビスフェノールおよびジヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、またアルキル基やスルホン基が結合していたり、酸素や窒素が導入されたりしているヨードアリール化合物の誘導体も使用される。ヨードアリール化合物はそのヨード原子の結合位置によって異なる異性体に分類され、これらの異性体のうち好ましい例は、p-ジヨードベンゼン、2,6-ジヨードナフタレン、及びp,p’-ジヨードビフェニルのようにヨードがアリール化合物の分子両端に対称的に位置する化合物である。該ヨードアリール化合物の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し500~10,000重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
前記製造方法で用いられる代表的な重合停止剤としては、モノヨードアリール化合物、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバメート類、芳香族スルフィド化合物などが挙げられる。モノヨードアリール化合物のうち好ましい例としては、ヨードビフェニル、ヨードフェノール、ヨードアニリン、ヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾール類のうち好ましい例としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビスベンゾチアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾールスルフェンアミド類のうち好ましい例としては、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール2-スルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-モルホリノチオベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジベンゾチアゾールジスルファイド、N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2-スルフェンアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。チウラム類のうち好ましい例としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ジチオカルバメート類のうち好ましい例としては、ジメチルジチオカルバメート酸亜鉛、ジエチルジチオカルバメート酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。芳香族スルフィド化合物のうち好ましい例としては、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルエーテル、ビフェニル、ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。重合停止剤の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し1~30重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
前記製造方法では重合反応触媒を使用しても良く、代表的な重合反応触媒としては、ニトロベンゼン系触媒が上げられる。ニトロベンゼン系触媒のうち好ましい例としては、1,3-ジヨード-4-ニトロベンゼン、1-ヨード-4-ニトロベンゼン、2,6-ジヨード-4-ニトロフェノール、ヨードニトロベンゼン、2,6-ジヨード-4-ニトロアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。重合反応触媒の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し0.01~20重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
この重合方法を使うことにより、実質的に塩素含有量およびナトリウム含有量を低減させる必要が無く、コストパフォーマンスに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることができる。
また本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂は、その他の重合方法によって得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を含んでいてもよい。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂は、より高いフィルム密着性を得ることができることから、カルボキシル基やカルボキシル基誘導体基、チオール基、スルホン基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基等の反応性官能基を末端に有するポリアリーレンスルフィド樹脂であることが好ましい。該反応性官能基を末端に有するポリアリーレンスルフィド樹脂を用いることで、反応性官能基を有する塗布層との優れた密着性を示し、より向上したフィルム密着性を有する樹脂組成物を得ることができる。該反応性官能基を末端に有するポリアリーレンスルフィド樹脂のうちより好ましい例としては、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂が挙げられる。前記カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂とは、FT-IR分光法のFT-IRスペクトルにて、カルボキシル基由来の約1600~1800cm-1またはアミノ基由来の約3300~3500cm-1のピークを示し、かつ1400~1600cm-1で現れる芳香環伸縮ピークの高さ強度を100%としたとき、前記約1600~1800cm-1または約3300~3500cm-1のピークの相対的高さ強度が0.001~10%であるポリアリーレンスルフィド樹脂である。
前記カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂のうち特に好ましい例としては、カルボキシル基の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂であり、その末端構造は下記一般式(5)で表される構造単位で示される。
Figure 0007074584000008
(式中、Ar基はアリーレン基である。)
ここで、前記アリーレン基は、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、および、置換されたフェニレン基などを使用することができる。具体的に、置換されたフェニレン基は、一つ以上のF、Cl、Br、C1~C3のアルキル基、トリフルオロメチル基、C1~C3のアルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチルチオ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、(C1~C3アルキル)SO-、(C1~C3アルキル)NHSO-、(C1~C3アルキル)2NSO-、NHSO-により任意に置換されたフェニレン基である。
ポリアリーレンスルフィド樹脂に前記反応性官能基を導入する方法としては特に限定されるものではなく、既知の方法で重合されるが、共役芳香環骨格上に一つまたは複数の下記一般式(6)で表される基を有する重合停止剤を使用する方法が挙げられる。前記重合停止剤で用いられる共役芳香環骨格としては、例えば、ジフェニルジスルフィド、モノヨードベンゼン、チオフェノール、2,2’-ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2-(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、N,N’-ジシクロヘキシル-1,3-ベンゾチアゾール-2-スルフェンアミドなどが挙げられる。
Figure 0007074584000009
(式中、Rは水素原子またはアルカリ金属原子である)
カルボキシル基の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法の好適な重合方法としては、ジヨード芳香族化合物と硫黄元素を含む反応物を重合反応させる段階を進行しながら、カルボキシル基を有する化合物を添加してポリアリーレンスルフィド主鎖の末端基中をカルボキシル基で置換する製造方法が挙げられる。前記カルボキシル基を有する化合物としては、2-ヨード安息香酸、3-ヨード安息香酸、4-ヨード安息香酸、および2,2’-ジチオ安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。前記カルボキシル基を有する化合物は、ジヨード芳香族化合物100重量部を基準に約0.0001~5重量部添加することが好ましい。
(B成分:繊維状充填材)
本発明のB成分として用いられる繊維状充填材は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンミルドファイバー、メタルファイバー、アスベスト、ロックウール、セラミックファイバー、スラグファイバー、チタン酸カリウムウィスカー、ボロンウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、ワラストナイト、ゾノトライト、パリゴルスカイト(アタパルジャイト)、およびセピオライトなどの繊維状無機充填材、アラミド繊維、ポリイミド繊維およびポリベンズチアゾール繊維などの耐熱有機繊維に代表される繊維状耐熱有機充填材、並びにこれらの充填材に対して例えば金属や金属酸化物などの異種材料を表面被覆した繊維状充填材などが例示される。異種材料を表面被覆した充填材としては、例えば金属コートガラス繊維および金属コート炭素繊維などが例示される。異種材料の表面被覆の方法としては特に限定されるものではなく、例えば公知の各種メッキ法(例えば、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法(例えば熱CVD、MOCVD、プラズマCVDなど)、PVD法、およびスパッタリング法などを挙げることができる。これら繊維状充填材の中でも、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維が好ましく、ガラス繊維、炭素繊維がより好ましい。繊維状充填材の繊維径の上限は18μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方繊維径の下限は1μmが好ましく、4μmがより好ましい。ここでいう繊維径とは数平均繊維径を指す。尚、かかる数平均繊維径は、成形体の高温灰化、溶剤による溶解、および薬品による分解等の処理で採取される残渣を走査電子顕微鏡観察した画像から算出される値である。また、かかる値の算出に際しては繊維長以下の長さのものはカウントしない方法による値である。
本発明のB成分として用いられる繊維状充填材がガラス繊維である場合、ガラス繊維のガラス組成は、Aガラス、Cガラス、およびEガラス等に代表される各種のガラス組成が適用され、特に限定されない。かかるガラス充填材は、必要に応じてTiO、SO、およびP等の成分を含有するものであってもよい。これらの中でもEガラス(無アルカリガラス)がより好ましい。かかるガラス繊維は、周知の表面処理剤、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、またはアルミネートカップリング剤等で表面処理が施されたものが機械的強度の向上の点から好ましい。また、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂等で集束処理されたものが好ましく、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂が機械的強度の点から特に好ましい。集束処理されたガラス繊維の集束剤付着量は、ガラス繊維100重量%中、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.2~1重量%である。ガラス繊維として、扁平断面ガラス繊維を用いることもできる。この扁平断面ガラス繊維としては、繊維断面の長径の平均値が好ましくは10~50μm、より好ましくは15~40μm、さらに好ましくは20~35μmで、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が好ましくは1.5~8、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2.5~5であるガラス繊維である。長径と短径の比の平均値がこの範囲の扁平断面ガラス繊維を使用した場合、1.5未満の非円形断面繊維を使用した場合に比べ、異方性が大きく改良される。また扁平断面形状としては扁平の他、楕円状、まゆ状、および三つ葉状、あるいはこれに類する形状の非円形断面形状を挙げることができる。なかでも機械的強度、低異方性の改良の点から扁平形状が好ましい。また、扁平断面ガラス繊維の平均繊維長と平均繊維径の比(アスペクト比)は2~120が好ましく、より好ましくは2.5~70、さらに好ましくは3~50であり、繊維長と平均繊維径の比が2未満であると機械的強度の向上効果が小さくなる場合があり、繊維長と平均繊維径の比が120を超えると異方性が大きくなる他、成形体外観も悪化する場合がある。かかる扁平断面ガラス繊維の平均繊維径とは、扁平断面形状を同一面積の真円形に換算したときの数平均繊維径をいう。
本発明のB成分として用いられる繊維状充填材が炭素繊維である場合、具体的な炭素繊維としては、カーボンファイバー、カーボンミルドファイバーおよびカーボンナノチューブ等が挙げられる。カーボンナノチューブは繊維径0.003~0.1μmであることが好ましい。またそれらは単層、2層、および多層のいずれであってもよく、多層(いわゆるMWCNT)が好ましい。カーボンミルドファイバーは平均繊維長0.05~0.2mmであることが好ましい。これらの中でも機械的強度に優れる点において、カーボンファイバーが好ましい。
カーボンファイバーとしては、セルロース系、ポリアクリロニトリル系、およびピッチ系などのいずれも使用可能である。また芳香族スルホン酸類またはそれらの塩のメチレン型結合による重合体と溶媒よりなる原料組成を紡糸または成形し、次いで炭化するなどの方法に代表される不融化工程を経ない紡糸を行う方法により得られたものも使用可能である。これらの中でも特にポリアクリロニトリル系の高弾性率タイプが好ましい。但し、カーボンファイバーの引張弾性率が600GPaを超えるとカーボンファイバーが非常に高価となり、かつ原料供給面から汎用性が低下するため、使用するカーボンファイバーの引張弾性率の好ましい範囲は250~600GPaであり、より好ましくは260~500GPaである。また、JIS R7608により測定されたカーボンファイバーの引張強度は3,000MPa以上が好ましい。但し、カーボンファイバーの引張強度が7,000MPa超えると引張弾性率と同様にカーボンファイバーが非常に高価となり、かつ原料供給面から汎用性が低下するため、使用するカーボンファイバーの引張強度の好ましい範囲は3,000~7,000MPaであり、より好ましくは5,000~6,500MPaである。カーボンファイバーの平均繊維径は特に限定されないが、3~15μmが好ましく、より好ましくは4~13μmである。かかる範囲の平均繊維径を持つカーボンファイバーは、成形体外観を損なうことなく良好な機械的強度および疲労特性を発現することができる。また、カーボンファイバーの好ましい繊維長は、樹脂組成物中における数平均繊維長として60~500μmが好ましく、より好ましくは80~400μm、特に好ましくは100~300μmである。カーボンファイバーは、カーボンファイバーの表面に金属層をコートしてもよい。金属としては、銀、銅、ニッケル、およびアルミニウムなどが挙げられ、ニッケルが金属層の耐腐食性の点から好ましい。金属コートの方法としては、先に異種材料による表面被覆で述べた各種の方法が採用できる。中でもメッキ法が好適に利用される。また、かかる金属コートカーボンファイバーの場合も、元となるカーボンファイバーとしては上記のカーボンファイバーとして挙げたものが使用可能である。金属被覆層の厚みは好ましくは0.1~1μm、より好ましくは0.15~0.5μmである。更に好ましくは0.2~0.35μmである。かかる金属未コートのカーボンファイバー、金属コートカーボンファイバーは、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂等で集束処理されたものが好ましい。特にウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂で処理されたカーボンファイバーは、機械的強度に優れることから本発明において好適である。また金属未コートのカーボンファイバー、金属コートカーボンファイバーの集束剤量に特に限定はないが、ウエルド強度を向上させる点において集束剤量は少ない方が好ましい。好ましい集束剤量は0~4%であり、より好ましくは0.1~3%である。
B成分の含有量はA成分100重量部に対し、10~150重量部であり、好ましくは15~120重量部、さらに好ましくは20~100重量部である。B成分の含有量が10重量部未満では機械強度が劣り、150重量部を超えると、混練押出時にストランド切れやサージングなどが起こり生産性が低下し、最悪の場合押し出しができなくなる。
(C成分:カルボジイミド化合物)
本発明のC成分として使用されるカルボジイミド化合物は、フィルム密着性、アウトガス性に優れることから環状構造を有することが好ましく、環状構造は複数有していてもよい。
環状構造は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有する。環状構造中の原子数は好ましくは8~50であり、より好ましくは10~30、さらに好ましくは10~20、最も好ましいのは10~15である。
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合がある。また反応性の観点よりは原子数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合がある。
環状構造は、下記式(1)で表される構造である。
Figure 0007074584000010
式中、Qは、下記式(1-1)、(1-2)または(1-3)で表される2~4価の結合基である。
Figure 0007074584000011
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数6~15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数6~15のアリーレン基、炭素数6~15のアレーントリイル基、炭素数6~15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2~4価の炭素数6~15の芳香族基の組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のアルカントリイル基、炭素数1~20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルカントリイル基、炭素数3~20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。シクロアルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。シクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数6~15のアリーレン基、炭素数6~15のアレーントリイル基、炭素数6~15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
およびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のアルカントリイル基、炭素数1~20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルカントリイル基、炭素数3~20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数6~15のアリーレン基、炭素数6~15のアレーントリイル基、炭素数6~15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
式(1-1)、(1-2)においてs、kは0~10の整数、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~1の整数である。sおよびkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0~3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のアルカントリイル基、炭素数1~20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルカントリイル基、炭素数3~20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数6~15のアリーレン基、炭素数6~15のアレーントリイル基、炭素数6~15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
<環状カルボジイミド化合物(2)>
Figure 0007074584000012
式中、Qは、下記式(2-1)、(2-2)または(2-3)で表される2価の結合基である。
Figure 0007074584000013
式中、Ara(aは下付、以下同様)およびAraは各々独立に、2価の炭素数6~15の芳香族基である。RaおよびRaは各々独立に、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2価の炭素数6~15の芳香族基の組み合わせである。sは0~10の整数である。kは0~10の整数であるXaおよびXaは各々独立に、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、2価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。Xaは、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、2価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ara、Ara、Ra、Ra、Xa、XaおよびXaはヘテロ原子を含有していてもよい。かかる環状カルボジイミド化合物(2)としては、以下の化合物が挙げられる。
Figure 0007074584000014
Figure 0007074584000015
Figure 0007074584000016
Figure 0007074584000017
Figure 0007074584000018
Figure 0007074584000019
Figure 0007074584000020
Figure 0007074584000021
Figure 0007074584000022
Figure 0007074584000023
Figure 0007074584000024
Figure 0007074584000025
Figure 0007074584000026
Figure 0007074584000027
<環状カルボジイミド化合物(3)>
Figure 0007074584000028
式中、Qb(bは下付、以下同様)は、下記式(3-1)、(3-2)または(3-3)で表される3価の結合基であり、Yは環状構造を担持する担体である。
Figure 0007074584000029
式中、Arb、Arb、Rb、Rb、Xb、Xb、Xb、sおよびkは、各々式(1-1)~(1-3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。かかる環状カルボジイミド化合物(3)としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 0007074584000030
Figure 0007074584000031
Figure 0007074584000032
Figure 0007074584000033
<環状カルボジイミド化合物(4)>
Figure 0007074584000034
式中、Qc(cは下付、以下同様)は、下記式(4-1)、(4-2)または(4-3)で表される4価の結合基であり、ZおよびZは環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
Figure 0007074584000035
Arc、Arc、Rc、Rc、Xc、Xc、Xc、sおよびkは、各々式(1-1)~(1-3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。かかる環状カルボジイミド化合物(4)としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 0007074584000036
Figure 0007074584000037
Figure 0007074584000038
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.001~10重量部であり、好ましくは、0.01~7重量部、より好ましくは、0.1~5重量部である。C成分の含有量が0.001重量部より少ない場合、十分なフィルム密着性の向上効果が得られない。また、C成分の含有量が10重量部よりも多い場合は、生産または成形加工性が低下し、最悪の場合押し出しができなくなる。
<環状カルボジイミド化合物の製造方法>
環状カルボジイミド化合物は従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法を組み合わせ及び改変して製造することができ、製造する化合物によって適切な方法を採用する事が出来る。
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515-5158,1993.
Medium-and Large-Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289-4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X-ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro
Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944-1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates,
Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694-1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,
R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306-7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System Boc2O/DMAP,Pedro Molina etal.
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a-1)で表されるニトロフェノール、下記式(a-2)で表されるニトロフェノールおよび下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
Figure 0007074584000039
(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
Figure 0007074584000040
(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
Figure 0007074584000041
(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させる工程により製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。なお、上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p-ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i-1)~(i-3)の結合基である。
Figure 0007074584000042
(式中、ni-1は1~6の整数である。)
Figure 0007074584000043
(式中、mi-2およびni-2は各々独立に0~3の整数である。)
Figure 0007074584000044
(式中、Ri-3およびR’i-3は各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基を表す。)
(その他の添加剤について)
本発明における樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマー成分を含むことができる。好適なエラストマー成分としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)およびシリコーン・アクリル複合ゴム系グラフト共重合体などのコア-シェルグラフト共重合体樹脂、あるいはシリコーン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
本発明における樹脂組成物中は本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を含むことができる。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂などに代表される汎用プラスチックス、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂(非晶性ポリアリレート、液晶性ポリアリレート)等に代表されるエンジニアリングプラスチックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、などのいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックスと呼ばれるものを挙げることができる。
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(赤燐、リン酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)および他の重合体を添加することができる。
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状充填材以外の充填材を含むことができる。その材料は特に限定されるものではないが、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には例えば、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ-ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムおよびシリカなどの非繊維状充填材が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、およびエポキシ化合物などのカップリング剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物は上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは二軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第二供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
二軸押出機に使用するスクリュは、輸送用順フライトピースの間に多種多様な形状のスクリュピースを挿入して複雑に組合せ、一体化して一本のスクリュとして構成されており、順フライトピース、順ニーディングピース、逆ニーディングピース、逆フライトピース、切り欠きを有する順フライトピース、逆フライトピースなどのスクリュピースを処理対象原材料の特性を考慮して、適宜の順序および位置に配置して組み合わせたものなどを挙げることができる。溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1~5mm、より好ましくは1.5~4mm、さらに好ましくは2~3.5mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1~30mm、より好ましくは2~5mm、さらに好ましくは2.5~4mmである。
(反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルム)
本発明における反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムは、少なくとも基材フィルムと反応性官能基を有する塗布層(以下、易接着層Aと称することがある)とからなり、さらに必要に応じて、さらに基材フィルムの易接着層Aの配されていない表面に、易接着層Bを設けてもよい。以下、本発明における基材フィルム、易接着層A、易接着層Bの好ましい態様について、説明する。
<基材フィルム>
本発明における基材フィルムは、その厚みが25~500μmの範囲であることが好ましい。厚みの上限が超えると、一体成形における加工性が損なわれ、他方下限を下回ると表面を被覆したときの平坦性が損なわれる場合がある。より好ましい基材フィルムの厚みの下限は50μm、さらに75μm、特に100μmである。他方より好ましい基材フィルムの厚みの上限は300μm、さらに250μm、特に188μmである。
本発明における基材フィルムは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを好適に用いることができ、熱可塑性樹脂としてはフィルムやシートに成形できるものであれば特に制限されない。具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリアセタールなどのポリオレフィン樹脂、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体、付加重合体、他のオレフィン類との付加共重合体などのシクロオレフィン、ポリ乳酸・ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6,11,12,66などのポリアミド樹脂、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグリコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合コポリマーなどそれ自体公知のものを用いることができる。これらの中でも、表面を被覆したときに高度の平坦性を発現させやすく、光沢に要求される透明性を付与しやすいことからポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、特に延伸などによってより平坦性を高度に具備させやすいことからポリエステル樹脂が好ましい。これらはホモポリマーでも共重合ポリマー、さらには他の熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。また、各熱可塑性樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などを添加して樹脂組成物として使用されていてもよい。
熱可塑性樹脂として、ポリエステルを使用する場合について、さらに詳述する。本発明におけるポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体の重合により得られるポリエステル樹脂が好ましく挙げられ、それ自体公知のものを使用できる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。
また、脂肪族ジカルボン酸としては、例えばアジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。これらの中でも耐熱性に優れ、一体成形した後の平坦性を高度に具備できることから、芳香族ジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体を用いることが好ましい。これらの酸成分は1種のみを用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらにはヒドロキシ安息香酸のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2―プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2―ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。これらの中でも得られるポリエステル樹脂の耐熱性に優れ、一体成形した後の平坦性を高度に具備できることから、エチレングリコールが好ましい。これらのジオール成分は1種のみで用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明におけるポリエステルは、成形性と平坦性とを両立させる観点から、エチレンテレフタレート、エチレンナフタレンジカルボキシレート、ブチレンテレフタレート、ブチレンナフタレンジカルボキシレート、ヘキサメチレンテレフタレート、ヘキサメチレンナフタレンジカルボキシレート、1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、1,4-シクロヘキサンジメチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルが好ましく、特にエチレンテレフタレートやエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルが好ましい。また本発明におけるポリエステルは、ホモポリマーに限らず、前述の他の酸成分やジオール成分などを共重合体したものであってもよく、特に一体成形時の成形性に優れることから、繰り返し単位のモル数を基準として、エチレンテレフタレートやエチレンナフタレンジカルボキシレートを80モル%以上有し、その他の繰り返し単位を2~20モル%共重合したものが特に好ましい。
本発明における基材フィルムは、一体成形における成形性と平坦性とを両立させる観点から、面内の直交する2方向に延伸などによって分子鎖を配向させた二軸配向フィルムであることが好ましい。
<反応性官能基を有する塗布層:易接着層A>
本発明における易接着層Aは、少なくともエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有することが好ましい。これらの官能基を有しない場合、一体成型後の密着性が低下する。これらの中でも、繊維含浸樹脂との密着性の観点からエポキシ基もしくはオキサゾリン基を含有することが好ましく、特にエポキシ基を含有することが好ましい。この際、官能基の数は特に制限されないが、フィルムに塗工した塗膜の造膜性および成形後の密着性をもとに、塗膜硬化速度を速くする場合は2官能性の架橋剤比率を多くし、硬化速度を遅くする場合は4官能性の架橋剤比率を少なくすることが好ましい。
また、本発明における易接着層Aは、その厚さが10nm~20μmの範囲であることが好ましく、より好ましい厚さの下限は、密着性の観点から15nm、さらに20nm、特に40nmである。他方より好ましい厚さの上限は、15μm、さらに10μm、特に5μmである。
本発明における易接着層Aは、前述の通り、少なくともエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有していることが好ましく、易接着層を形成する樹脂自体は、基材フィルムや繊維強化プリプレグとの密着性に優れるものであれば、それ自体公知のものを採用でき、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。本発明における一体成形は、好ましくは成形温度が150℃程度に至ることから、この温度よりもガラス転移温度が低い状態に設計されていることが好ましく、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましく用いることができる。
<基材フィルムおよび表面被覆フィルムの製造方法>
本発明の反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムに用いる基材フィルムを得る製造方法を概説する。本発明における基材フィルムは、前述の通り、二軸延伸されていることが好ましい。これは、二軸延伸されることにより、耐薬品や耐久性の向上が見込め、膜としての強度を付与できることにある。
そこで、本発明における基材フィルムおよび表面被覆の製造方法の一例として、二軸延伸ポリエステルフィルムを例にとって説明する。まず原料となるポリエステル樹脂は、例えばポリエチレンテレフタレートであれば購入することもでき、それ自体公知の手法で重縮合して得ることが出来る。
続いて、上述のようにして得られたポリエステルを二軸延伸フィルムとするには、まず使用するポリエステル樹脂を計量の上、必要に応じて添加剤や他の樹脂と混合する。次いで、窒素雰囲気、真空雰囲気などで、例えば、160℃で5時間程度の乾燥を行い、ポリエステル中の水分率を好ましくは50ppm以下とする。その後、押出機に供給し溶融押出する。なお、ベント式二軸押出機を用いて溶融押出を行う場合は樹脂の乾燥工程を省略してもよい。次いで、フィルターやギアポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、たとえば、ワイヤー状電極もしくはテープ状電極を使用して静電印加する方法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステルのガラス転移点~(ガラス転移点-20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
次いで、かかる未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行う。かかる延伸方法における延伸倍率としては、樹脂の種類により異なるが、それぞれの方向に、好ましくは、2.5~4.0倍、さらに好ましくは2.8~3.5倍、特に好ましくは3.0~3.4倍が好ましく例示でき、面積倍率として6~20倍が製膜安定性の観点で好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8~20倍が特に好ましく用いられる。また、延伸速度はそれぞれの延伸方向において1,000~200,000%/分であることが望ましい。また延伸温度は、ガラス転移点~(ガラス転移点+120℃)、さらにガラス転移温度+10℃~ガラス転移温度+60℃の温度が好ましく採用でき、例えばポリエチレンテレフタレートの場合、75~130℃、特に長手方向の延伸温度を80~120℃、幅方向の延伸温度を90~110℃とすることが好ましい。なお、延伸は各方向に対して複数回おこなっても良い。延伸方法自体は、それ自体公知の例えばロール延伸やテンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送する延伸方法など、いずれも採用することができる。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うことが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での配向分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。
ところで、本発明における易接着層Aは、前述の官能基としてエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基のうちの1種類の架橋基を含有せしめた塗剤を、溶剤分散もしくは水分散させて塗液とし、それを基材フィルム上に塗工することで形成することが好ましい。その際、塗工は基材フィルムの製膜工程で設ける(以下、インラインコーティングと称することがある。)ことが好ましく、特に未延伸フィルムから延伸が完了するまでの間の製膜中に塗工することが好ましい。
上記塗剤を溶剤に分散させる場合は、一般に使用されているメチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエンなどの溶剤を用いることができるが、基材フィルムの製膜中に塗工を行い、塗膜を形成する場合、フィルムの製膜装置が開放系であることから、水分散体にした塗料を用いることが特に好ましい。塗工はロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、バーコーター、ダイコーター、ディップコーター等の公知の塗工設備・塗工法式を用いることができ、所望の厚みを均一に簡便に形成させる目的で、ロールコーターをリバース法で用いることが好ましい。また本発明の効果を損なわない範囲で、塗剤には易滑性のためのフィラー粒子、紫外線防止剤、酸化防止剤などの添加剤を添加していてもよい。
このようにして塗布された易接着層Aは、前述の熱処理において、乾燥され硬化される。その際、本発明の効果を得るには、塗膜を処理する熱量が重要になる。比熱容量は樹脂が硬化される動的な過程の中で材料によって決定する特性値であり、操作変更するのは困難であるが、一方で、高温で短時間に加熱する方法と、比較的低温で時間をかけて加熱する方法がある。乾燥させる塗膜厚みや、生産速度、塗料に使用している溶媒の乾燥速度によって、適切に選択することが好ましい。高温で短時間に加熱する方法では、180℃~220℃で、1~15秒間加熱することが好ましく、より好ましくは190~215℃で、1~10秒間、さらに好ましくは195~210℃で、1~5秒間の処理がよい。他方、低温で長時間加熱する方法では、75~110℃で15~180秒間加熱することが好ましく、より好ましくは80~100℃で、20~120秒間、さらに好ましくは85~95℃で、25~60秒間の処理がよい。なお、コーティングの前に、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよいし、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。
<反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルム>
本発明における反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムは、前述の方法によって得られるが、以下その好ましい態様について説明する。
まず、本発明の反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムは、150℃の伸度が製膜方向、幅方向ともに100%以上であることが好ましい。これは繊維強化樹脂の形状に追従させるためであり、伸度の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましい。一方で、表面被覆フィルムは、成形などによって伸長されるとともに、引張応力も増加する。引張応力は、成形時の成形力に対する抵抗力となるため、低い方が好ましいが、低すぎると、基材形状の凸部などが過多に延伸されてしまい、厚み斑などの不具合を生じやすい。そのような観点から、150℃における引張応力は3~50MPaであることが好ましく、さらに、5~30MPaが好ましい。引張応力は、伸長と共に単調に増加する傾向であることが好ましい。この場合の伸長と共に単調に増加するとは、伸度を横軸、応力を縦軸とした場合に、破断するまでの段階で、引張応力の増加が0もしくは負、すなわち傾きがゼロ以下になる領域が、破断するまでの伸度において30%以下、さらに20%以下であることを意味する。
また、本発明における反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムに用いる基材フィルムは、上述のようにして得られた結果、150℃における製膜方向の熱収縮をχMD、幅方向の熱収縮をχTDとした場合の熱収縮差の絶対値Δχが下記式(1)を満足することが好ましい。
Δχ=|χMD-χTD|≦3.0 ・・・(1)
Δχが3以上となると、製膜方向、幅方向に熱収縮による差が大きく、例えば、プレス成形などで基材フィルムが被熱した場合、成形で伸ばされるのに打ち勝ってシワが生じうるなどの不具合を生じやすい。基材フィルムの熱収縮差が小さいことで、成形後の外観を良好に保つことができる。
本発明における反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムは、その全光線透過率が80%以上であることが好ましい。全光線透過率が80%以上であることで、深みのある意匠を創ることができ、加飾層などを設ける場合、加飾層の意匠性をより効果的に発現できる。好ましい全光線透過率は、82%以上、特に好ましくは85%以上である。
本発明の表面被覆フィルムは、易接着層Aの反対側に易接着層Bが形成されていることが好ましい。易接着層Bとしては易接着層Aと同様なものを好ましく例示できるが、特にエポキシ基もしくはシラノール基を有することが好ましい。
(フィルムインサート成形体)
本発明のフィルムインサート成形体は、上記の樹脂組成物および上記の反応基を含有する塗布層を設けたフィルムをインサート成形することにより得られる成形体である。以下、インサート成形方法について説明する。
[予備成形工程]
成形体形状に応じて、インサート成形に先立ってフィルムを所望形状に加工する予備成形を実施する工程である。予備成形をすることでフィルムを複雑な立体形状にもインサート成形することができるため、実施することが好ましい。予備成形の方法としては以下の方法が挙げられる。すなわち、先ずフィルムをクランプ等で把持しながら加熱し、当該フィルムを軟化させて塑性変形可能とする。その後、この軟化されたフィルムを真空成形型の複数の真空孔を介して真空吸引し、フィルムを金型表面の形状に沿って密着させる。金型表面に密着させる方法は必ずしも真空吸引である必要はないが、真空吸引が一般的である。そしてフィルムが冷却されて硬化すると、所望の成形体形状が転写されたフィルムが得られる。
[トリミング工程]
予備成形工程で得られたフィルムの金型鏡面部以外の余分な部分を切り取り、所望の形状にトリミングする。レーザー、ダイカット型等を用いてトリミングすることができる。レーザーよりもダイカット(打ち抜き)が一般的である。
[インサート成形工程]
可動側に予備成形及びトリミング工程により所望形状に加工されたフィルムをバッキング層側が基材樹脂と接触するように取り付ける。次に、射出成形機のノズルから基材樹脂を射出し、キャビティ内に導入する。その際、フィルムは基材樹脂から圧力を受け金型に沿って密着する。そして、基材樹脂の熱によってフィルムのバッキング層の一部が溶融して基材樹脂と互いに密着する。
本発明樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂、繊維状充填材およびカルボジイミド化合物からなる樹脂組成物並びに反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムからなるインサート成形体であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂が有する優れた機械強度を保持しつつ、密着性、外観意匠性に優れたフィルムインサート成形体であることから、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根などにおいて幅広く有用であり、かつ金属めっきによって外観を付与していた部品を代替するのにも好適であり、その奏する産業上の効果は格別である。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。なお、評価は下記の方法によって実施した。
(I)樹脂組成物およびフィルムインサート成形体の特性評価
(1)樹脂組成物の引張強度
下記に示した試験片の作製方法に従い、ISO527に準拠した引張り試験片を作製し、23℃、50%RHの条件で48時間調湿したサンプルについて、引張破断強度を、ISO527(測定条件23℃)に準拠して測定した。この数値が大きいほど樹脂組成物の機械強度が優れていることを意味する。
(2)フィルム密着性
下記に示したフィルムインサート成形体の作製方法に従い、長さ150mm×幅150mm×厚み3mmtのフィルムインサート成形体を作製した。得られたインサート成形体に対して、フィルム側より基材まで届くようにしてカッターナイフで1mm間隔の切り込みを入れ、マス目を100個形成した。その後、ニチバン製粘着テープ(商品名“セロテープ(登録商標)”)を、切り込み方向の一方向に平行な方向に、端部を残して貼り付け、その上からこすって十分に接着させ、貼付面に対して60度の角度の方向に瞬間的に引き剥がした。これを3回繰返した後、成形体に残ったフィルムのマス目の数を目視で確認した。判定は下記基準で行った。
○:残ったマス目が100/100~90/100である。
△:残ったマス目が89/100~70/100である。
×:残ったマス目が70/100以下であるかもしくは切り込み段階で剥がれが観察される。
[実施例1~8、比較例1~5]
下記の方法で、試験片およびフィルムインサート成形体を作製し、上記評価を実施した。評価結果を表1に示す。
(I)樹脂組成物の製造
ポリアリーレンスルフィド樹脂、繊維状充填材およびカルボジイミド化合物を表1記載の各配合量で、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX-30XSST(完全かみ合い、同方向回転)を使用した。押出条件は吐出量16kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第一供給口からダイス部分まで320℃とした。なお、繊維状充填材は上記押出機のサイドフィーダーを使用し第二供給口から供給し、ポリアリーレンスルフィド樹脂は第一供給口から押出機に供給した。ここでいう第一供給口とはダイスから最も離れた供給口であり、第二供給口とは押出機のダイスと第一供給口の間に位置する供給口である。
(II)試験片の作製方法
製造したペレットを130℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG-150U)によりシリンダー温度320℃、金型温度140℃の条件で、評価用の試験片を成形した。
(III)フィルムインサート成形体の作製方法
射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG-150U)を使用し、以下の方法でフィルムインサート成形体を作製した。まずフィルムを塗布層側が基材樹脂と接触するように金型可動側のキャビティ内に取り付け、次に130℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した上記ペレットを金型内に射出することにより、フィルムインサート成形体を作製した。なお、成形条件はシリンダー温度320℃、金型温度140℃とした。
なお、表1中の記号表記の各成分は下記の通りである。
<A成分>
PPS-1:製造方法1で得られたカルボキシル基末端ポリフェニレンスルフィド樹脂
[製造方法1]
パラジヨードベンゼン5130g及び硫黄450gに、反応開始剤としてメルカプトベンゾチアゾール4gを含む反応物を180℃に加熱して完全に溶融および混合した後、温度を220℃に昇温し、且つ、圧力を350Torrに降圧した。得られた混合物を、最終温度および圧力が各々300℃および1Torr以下となるように温度及び圧力を段階的に変化させつつ、重合反応を進行した。前記重合反応が80%進行した時(重合反応の進行程度は粘度による相対比率((現在粘度/目標粘度)×100%)の方法で確認した。)、重合停止剤としてメルカプトベンゾチアゾールを25g添加して反応を行った。1時間後、4-ヨード安息香酸51g添加して窒素雰囲気下で10分間反応を行い、0.5Torr以下に徐々に真空度を上げてさらに1時間反応を行った後反応を終了し、カルボキシル基を主鎖末端に含むポリアリーレンスルフィド樹脂を製造した。得られたポリアリーレンスルフィドのFT-IRスペクトルにて、1600~1800cm-1のカルボキシル基ピークの存在を確認した。また、1400~1600cm-1で現れる芳香環伸縮ピークの高さ強度を100%としたとき、前記1600~1800cm-1のピークの相対的高さ強度は3.4%であった。
PPS-2:製造方法2で得られたカルボキシル基末端を有しないポリフェニレンスルフィド樹脂
[製造方法2]
パラジヨードベンゼン300g及び硫黄27gに、重合停止剤としてジフェニルジスルフィド0.6g(最終的に重合されたPPSの重量に基づいて0.65重量%の含量)を投入して180℃に加熱して完全にそれらを溶融及び混合した後、温度を220℃に昇温し、且つ、圧力を200Torrに降圧した。得られた混合物を、最終温度及び圧力が夫々320℃及び1Torrとなるように温度及び圧力を段階的に変化させつつ、8時間重合反応させてポリフェニレンスルフィド樹脂を製造した。
<B成分>
B-1:炭素繊維[IM C702 6mm(東邦テナックス(株)製 長径:5μm、カット長:6mm)]
B-2:円形断面チョップドガラス繊維 [T-732H(日本電気硝子(株)製 直径:10.5μm、カット長:3mm、エポキシ系集束剤)]
<C成分>
C-1:以下の同定方法、製造方法で得られた環状カルボジイミド化合物
[同定方法]
(1)環状カルボジイミド構造のNMRによる同定
合成した環状カルボジイミド化合物のNMRによる同定は、日本電子(株)製JNREX270を使用し、1H-NMR、13C-NMRによって確認した。尚、溶媒は重クロロホルムを用いた。
(2)カルボジイミド骨格のIRによる同定
合成した環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格の同定は、ニコレー(株)製Magna-750を使用し、FT-IRよってカルボジイミド化合物に特徴的な2100~2200cm-1の吸収ピークを確認することで行った。
[製造方法]
o-ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N-ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN2雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2-ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2-ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2-ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、ジ-tert-ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記式の構造を有するC-1成分を得た。C-1成分の構造はNMR、IRにより確認した。
Figure 0007074584000045
C-2:脂肪族カルボジイミド化合物[日清紡(株)製 カルボジライトHMV-8CA]
(II)フィルムの製造
フィルム-1-1:製造方法3-1で得られた反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルム
[製造方法3-1]
カルボン酸成分としてテレフタル酸90部およびイソフタル酸10部、グリコール成分としてエチレングリコールからなるo-クロロフェノール35℃で測定した固有粘度0.8dl/gの共重合ポリエステル樹脂55重量部と、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として1,4-ブタンジオールからなるo-クロロフェノール35℃で測定した固有粘度1.1dl/gのポリエステル樹脂45重量部を押出機に供給し、280℃でダイからシート状に押し出した後、20℃のチルロールで冷却固化せしめたキャストフィルムを、60℃で縦方向に3.0倍延伸し、続いて80℃で横方向に3.5倍延伸せしめ、200℃で5秒間熱処理した後に、ロール状に巻きとることで厚み50μmのフィルムを製造した。
上記フィルムをアンワインドし、塗布層のバインダー樹脂塗料1を、厚み15μmでコーティングし、80℃で30秒加熱乾燥することで、反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルム(フィルム-1-1)とした。
(塗布層のバインダー樹脂塗料1)
下記共重合アクリル塗液1と下記硬化剤塗液1とを重量比85:15で混合した。
<共重合アクリル塗液1>
以下の共重合成分で構成されるアクリル樹脂を、イオン交換水に固形分濃度25重量%で分散させた塗液を用いた。
メチルメタクリレート40モル%
エチルアクリレート45モル%
アクリロニトリル10モル%
N-メチロールアクリルアミド5モル%。
<硬化剤塗液1>
硬化剤として、エポキシ基を有する2官能性のナガセ化成工業株式会社製の商品名「デナコールEX-313」と、エポキシ基を有する4官能性の三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD-X」とを重量比1:4で混合して用いた。
フィルム-1-2:製造方法3-2で得られた反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルム
[製造方法3-2]
カルボン酸成分としてテレフタル酸90部およびイソフタル酸10部、グリコール成分としてエチレングリコールからなるo-クロロフェノール35℃で測定した固有粘度0.8dl/gの共重合ポリエステル樹脂55重量部と、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として1,4-ブタンジオールからなるo-クロロフェノール35℃で測定した固有粘度1.1dl/gのポリエステル樹脂45重量部を押出機に供給し、280℃でダイからシート状に押し出した後、20℃のチルロールで冷却固化せしめたキャストフィルムを、60℃で縦方向に3.0倍延伸し、上記一軸延伸フィルムにロールコーティングにより下記塗布層のバインダー樹脂塗料2を、表面処理層として厚み30nmを積層させ、80℃で横方向に3.5倍延伸せしめ、200℃で熱処理した後に、ロール状に巻きとることで厚み50μmのフィルム(フィルム-1-2)とした。
(塗布層のバインダー樹脂塗料2)
下記共重合アクリル塗液1と下記硬化剤塗液1とを重量比85:15で混合した。
<共重合アクリル塗液2>
以下の共重合成分で構成されるアクリル樹脂を、イオン交換水に固形分濃度3重量%で分散させた塗液を用いた。
メチルメタクリレート40モル%
エチルアクリレート45モル%
アクリロニトリル10モル%
N-メチロールアクリルアミド5モル%。
<硬化剤塗液2>
硬化剤として、2官能性のナガセ化成工業株式会社製の商品名「デナコールEX-313」と、4官能性の三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD-X」とを重量比1:4で混合して用いた。
フィルム-2:製造方法4で得られた反応性官能基を有さない塗布層を設けたフィルム
[製造方法4]
カルボン酸成分としてテレフタル酸90部およびイソフタル酸10部、グリコール成分としてエチレングリコールからなるo-クロロフェノール35℃で測定した固有粘度0.8dl/gの共重合ポリエステル樹脂55重量部と、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として1,4-ブタンジオールからなるo-クロロフェノール35℃で測定した固有粘度1.1dl/gのポリエステル樹脂45重量部を押出機に供給し、280℃でダイからシート状に押し出した後、20℃のチルロールで冷却固化せしめたキャストフィルムを、60℃で縦方向に3.0倍延伸し、上記一軸延伸フィルムにロールコーティングにより下記塗布層のバインダー樹脂塗料3を、表面処理層として厚み30nmを積層させ、80℃で横方向に3.5倍延伸せしめ、200℃で熱処理した後に、ロール状に巻きとることで厚み50μmのフィルム(フィルム-2)とした。
(塗布層のバインダー樹脂塗料3)
下記共重合ポリエステル塗液1と下記フィラー粒子分散液1とを混合し、固形分濃度4%となるようにした。
<共重合ポリエステル塗液1>
共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分がテレフタル酸95モル%/イソフタル酸3モル%/5-ナトリウムスルホイソフタル酸2モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成され、Tg=50℃となる水分散体。
<フィラー粒子分散液1>
シリカフィラー(平均粒子径40nm)(日産化学(株)製、商品名:スノーテックスOL)
Figure 0007074584000046

Claims (5)

  1. (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)繊維状充填材(B成分)10~150重量部および(C)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(1)で表される環状構造を含み、環状構造を直接形成する原子数が8~50である化合物、下記式(3)で表される化合物または下記式(4)で表される化合物であるカルボジイミド化合物(C成分)0.001~10重量部を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物並びに反応性官能基を有する塗布層を設けたフィルムよりなるインサート成形体。
    Figure 0007074584000047
    (式中、Qは、下記式(1-1)、(1-2)または(1-3)で表される2~4価の結合基である。)
    Figure 0007074584000048
    (式中、Ar およびAr は各々独立に、2~4価の炭素数6~15の芳香族基である。R およびR は各々独立に、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2~4価の炭素数6~15の芳香族基の組み合わせである。sは0~10の整数である。kは0~10の整数である。X およびX は各々独立に、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。X は、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar 、Ar 、R 、R 、X 、X およびX はヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar 、Ar 、R 、R 、X 、X およびX は全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar 、Ar 、R 、R 、X 、X およびX の内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar 、Ar 、R 、R 、X 、X およびX の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
    Figure 0007074584000049
    (式中、Qb(bは下付、以下同様)は下記式(3-1)、(3-2)または(3-3)で表される3価の結合基であり、Yは環状構造を担持する担体であり、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。)
    Figure 0007074584000050
    (式中、Arb 、Arb 、Rb 、Rb 、Xb 、Xb 、Xb 、s b およびk は、各々式(1-1)~(1-3)のAr 、Ar 、R 、R 、X 、X 、X 、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
    Figure 0007074584000051
    (式中、Qc(cは下付、以下同様)は下記式(4-1)、(4-2)または(4-3)で表される4価の結合基であり、Z およびZ は、環状構造を担持する担体であり、各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。)
    Figure 0007074584000052
    (式中、Arc 、Arc 、Rc 、Rc 、Xc 、Xc 、Xc 、s c およびk c は、各々式(1-1)~(1-3)の、Ar 、Ar 、R 、R 、X 、X 、X 、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
  2. A成分が、カルボキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のインサート成形体。
  3. 式(1)中のQが下記式(2-1)、(2-2)または(2-3)で表される2価の結合基であることを特徴とする請求項1または2に記載のインサート成形体。
    Figure 0007074584000053
    (式中、Ara(aは下付、以下同様)およびAraは各々独立に、2価の炭素数6~15の芳香族基である。RaおよびRaは各々独立に、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2価の炭素数6~15の芳香族基の組み合わせである。saは0~10の整数である。kaは0~10の整数である。XaおよびXaは各々独立に、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、2価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。Xaは、2価の炭素数1~20の脂肪族基、2価の炭素数3~20の脂環族基、2価の炭素数6~15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ara、Ara、Ra、Ra、Xa、XaおよびXaはヘテロ原子を含有していてもよい。)
  4. B成分が、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種の繊維状充填材であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のインサート成形体。
  5. 塗布層が有する反応性官能基がエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のインサート成形体。
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