JP7476504B2 - 樹脂金属複合体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属を構成部材として有する金属製部材と樹脂製部材とが接合してなる構成を備えた樹脂金属複合体及びその製造方法に関する。
近年、自動車部品や民生部品などの分野では、軽量化やリサイクル等の環境面などを考慮して、金属製品を樹脂製品に変更する方向性で開発が進められている。樹脂製品の中でも、ポリエステル製品は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、各種の機器部品に広く用いられている。特にポリブチレンテレフタレートに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は機械的強度や成形性に優れ、また難燃化が可能であることから、火災安全性の必要とされる電気電子機器部品等に広く使用されている。
しかし、樹脂製品の場合には放熱性が劣るため、電気電子機器部品や自動車部品等の分野では、アルミニウムや鉄などの金属製部材と、樹脂製部材とが接合した樹脂金属複合体の開発が進められている。この種の樹脂金属複合体は一般的に、樹脂製品に比べて、強度、静電防止性、熱伝導性、放熱性及び電磁波シールド性の観点において優れたものとすることができる。
このような樹脂金属複合体に関して、例えば特許文献1において、金属基体上に熱可塑性樹脂をインモールド成形することにより、金属と熱可塑性樹脂を一体成形する方法が開示されている。
また、特許文献2には、樹脂部材と金属部材との複合体を製造する別の方法として、化学エッチングによる表面処理を金属部品に施した部品に射出成形により樹脂を接合する方法が開示されている。
特開平6-29669号公報 特開2008-173967号公報
従来知られている樹脂金属複合体に関しては、金属製部材と樹脂製部材との接合状態が耐久後に十分に安定していなかったため、その用途を広げることが困難であった。特に自動車用途に用いられるには課題を抱えていた。
そこで本発明は、金属製部材と樹脂製部材とが接合してなる構成を備えた樹脂金属複合体に関し、その接合状態が耐久後も十分に安定したものであり、その用途を広げることができる、特に自動車用途に広げることができる、新たな樹脂金属複合体を提供せんとするものである。
本発明は、上記課題を解決すべく、金属基体の片面側又は両面側に、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂層(A)を最表層として具備する金属積層体(X)と、ポリエステル(b)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂組成物(B)からなる樹脂部材(Y)とを備え、
金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合してなる構成を備えた樹脂金属複合体であって、
樹脂金属複合体が、121℃、100%、2atm下で50時間処理するプレッシャークッカー試験後に0.25MPa以上の気密性を有することを特徴とする樹脂金属複合体を提案する。
本発明はまた、金属基体の片面側又は両面側に、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂層(A)を最表層として具備する金属積層体(X)と、
ポリエステル(b)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂組成物(B)からなる樹脂部材(Y)とを備え、金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合してなる構成を備えた樹脂金属複合体であって、
ポリエステル樹脂層(A)及びポリエステル樹脂組成物(B)の少なくとも一方が、ポリエステルの末端と反応可能な反応性化合物(「ポリエステル末端反応性化合物」と称する)を含むことを特徴とする樹脂金属複合体を提案する。
本発明は、金属積層体(X)の最表層に、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂層(A)を設けると共に、当該ポリエステル樹脂層(A)と樹脂部材(Y)におけるポリエステル樹脂組成物(B)とを接合する構成とし、且つ、その接合状態を十分に安定したものとして、樹脂金属複合体の気密性を優れたものとすることができるため、その用途を広げることができ、特に気密性が要求される自動車用途に好適に用いることができる。
本発明の一例に係る樹脂金属複合体の部分断面斜視図である。 図1の要部拡大図である。 (a)~(e)はいずれも、金属積層体(X)と樹脂部材(Y)との接合様式を例示した断面図である。 車輌用電装部品の筐体の一部として本樹脂金属複合体を適用した例を示した断面図である。 実施例で作製した金属積層体の上面斜視図である。 実施例で作製した樹脂金属複合体、すなわち気密性評価の試験体としての樹脂金属複合体の図であり、左図がその上面斜視図、右図が断面図である。 上記気密性評価に用いた圧力容器の分解斜視図である。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<<<本樹脂金属複合体>>>
本発明の実施形態の一例に係る樹脂金属複合体(「本樹脂金属複合体」と称する)は、金属基体の片面側又は両面側に、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂層(A)を最表層として具備する金属積層体(X)と、
ポリエステル(b)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂組成物(B)からなる樹脂部材(Y)とを備え、
金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)、詳しくは樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合してなる構成を備えた樹脂金属複合体である。
本樹脂金属複合体においては、ポリエステル樹脂層(A)又はポリエステル樹脂組成物(B)又はこれらの両方が、ポリエステルの末端と反応可能な反応性化合物(「ポリエステル末端反応性化合物」と称する)(c)を含有するのが好ましい。
中でも、ポリエステル樹脂層(A)を形成する樹脂組成物が、ポリエステル末端反応性化合物(c1)を含有するのが好ましい。
さらに、ポリエステル樹脂層(A)を形成する樹脂組成物が、ポリエステル末端反応性化合物(c1)を含有し、且つ、ポリエステル樹脂組成物(B)が、ポリエステル末端反応性化合物(c2)を含有するのが特に好ましい。
ここで、「ポリエステルの末端」とは、カルボン酸官能基(-COOH)又はアルコール性官能基(OH基)である。
本樹脂金属複合体において、上記のように反応性化合物(c1)及び/又は(c2)を配合すると、ポリエステル樹脂層(A)、ポリエステル樹脂組成物(B)、及びこれらポリエステル樹脂間の接合界面のうちのいずれか又はこれらのうちの2つ以上に、前記ポリエステル(b)と前記ポリエステル末端反応性化合物(c1)とが反応して生成した化合物(これを「反応後化合物(d1)」と称する)、又は、前記ポリエステル(a)と前記ポリエステル末端反応性化合物(c2)とが反応して生成した化合物(これを「反応後化合物(d2)」と称する)が存在すると共に、ポリエステル樹脂層(A)及びポリエステル樹脂組成物(B)の少なくとも一方には、未反応物としてポリエステル末端反応性化合物(c1)又は(c2)が含まれることとなるから、それによって金属積層体(X)と樹脂部材(Y)との接合強度をより一層高くすることができる。
接合強度を更に高める観点からは、ポリエステル樹脂層(A)に反応性化合物(c1)を含ませる一方、ポリエステル樹脂組成物(B)には反応性化合物(c2)を含ませ、すなわち、両方にそれぞれ反応性化合物(c1)(c2)を存在させることが好ましい。これによって、反応後化合物(d1)又は反応後化合物(d2)又はこれら両方の存在量が接合界面に増えることになり、接合強度が更に高まるものと推測される。
<<金属積層体(X)>>
金属積層体(X)は、金属基体の片面側又は両面側に、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂層(A)を最表層として具備する構成を備えた積層体である。
当該「主成分樹脂」とは、ポリエステル樹脂層(A)を構成する樹脂の中で最も含有質量の割合の大きな樹脂又は樹脂群の意味であり、ポリエステル樹脂層(A)を構成する樹脂のうちポリエステル(a)が50質量%以上、中でも75質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を包含する。但し、ポリエステル(a)は2種類以上のポリエステル(樹脂群)である場合もある。
金属積層体(X)は、金属基体の両面側の最表層として、ポリエステル樹脂層(A)を備えているのが、耐久性の観点から特に好ましい。
金属基体とポリエステル樹脂層(A)との間には後述するように他の層、例えば化成処理層、シランカップリング剤処理層、接着剤層などのうちの何れか又はこれらの組み合わせからなる複数の層が介在してもよい。但し、金属基体上にポリエステル樹脂層(A)が直接積層されていてもよい。
<金属基体>
金属基体の金属としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、鉄、チタニウム等の各種金属、及びこれらの金属を含む合金を挙げることができる。この中でもアルミニウム、ステンレス鋼が好ましく、その中でもアルミニウムがより好ましい。
アルミニウムとしては、純Al及び各種のAl合金、アルミダイカスト(鋳造アルミニウム)各種を挙げることができる。
鉄としては、鉄及び、鉄合金を挙げることができる。
鋼としては、各種ステンレス鋼が挙げられ、鋼板としては、ステンレス鋼板、亜鉛メッキ鋼板を挙げることができる。
チタニウムとしては、純チタニウム及び、チタニウム合金を挙げることができる。
金属基体の形状は、特に制限するものではない。例えば板状、ロール状、シート状、フィルム等を好ましく挙げることができる。
金属基体の厚さとしては、0.05mm~10mmの範囲であることが好ましく、中でも0.1mm以上或いは5mm以下、その中でも0.12mm以上或いは2mm以下、その中でも0.2mm以上或いは1.6mm以下であるのがさらに好ましい。
アルミニウム板、ステンレス鋼板の場合の厚みは、0.1mm~3mmの範囲であることが好ましく、中でも0.2mm以上或いは1.6mm以下であるのがさらに好ましい。
<化成処理層>
金属基体の表面は、化成処理が為されていてもよい。すなわち、金属基体の表面は、化成処理層を備えていてもよい。
かかる処理を施すことにより、金属基体と樹脂層との密着性(接着性または接着強度)を向上させることができる。
アルミニウム基体の場合の好ましい化成処理としては、リン酸クロメート等による化成処理、陽極酸化処理等を挙げることができる。
上記陽極酸化処理としては、例えば、電解液としてリン酸、リン酸-硫酸、リン酸-シュウ酸、リン酸-クロム酸を用いる処理薄膜等を挙げることができる。この中でも、リン酸アルマイト処理によるのが好ましい。
上記化成処理により形成される層すなわち化成処理層の厚みは、特に限定するものではない。例えば5nm~300nmがよい。化成処理層の厚みが5nm以上であれば、加工性を良好に維持することができ、300nm以下であれば、薄膜形成が困難となることもない。
なお、陽極酸化処理により化成処理層が形成される場合は、その厚みは0.05μm~2μmの範囲が好ましく、中でも0.1μm以上或いは2μm以下であるのがより好ましい。陽極酸化処理による化成処理層の厚さが0.05μm以上であれば、密着性をより効果的に向上させることができる。陽極酸化処理による化成処理層の厚さは、処理条件、特に通電条件と通電時間を調節することによって、上記範囲の厚さに調整することができる。
<メッキ層>
金属基体の表面の処理としては、化成処理以外に、単層メッキ、複層メッキまたは合金メッキなどのメッキ処理によってメッキ層を形成する処理を施すこともできる。なお、これらメッキ処理する前に、浸漬クロム酸処理、リン酸クロム酸処理を施してもよい。
メッキ処理の方法としては、電気メッキ、無電解メッキのいずれでもよい。例えば金属基体が鉄の場合、亜鉛、スズ、ニッケル、銅メッキが好ましく、亜鉛メッキがより好ましい。
<シランカップリング剤処理層>
上記の如く化成処理が施された金属基体の表面、特にアルミニウム基体や鉄基体の表面側には、シランカップリング剤による処理を施してシランカップリング剤処理層を形成するのが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定するものではない。例えばメトキシ基、エトキシ基、シラノール基等を有する化合物を挙げることができ、シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ウレイドアミノプロピルエトキシシランなどを好ましく挙げることができる。特に、アルミニウム基体又は鉄基体とシランカップリング剤は、Al-O-SiやFe-O-Siの結合を形成して強固に結合し、また、ポリエステル樹脂層(A)のポリエステル(a)とシランカップリング剤の有機官能基が反応して強固に結合し、より強固な結合が達成できる。
<接着剤層>
金属基体上には、上記した化成処理、メッキ処理及びシランカップリング剤処理の有無によらず、接着剤層を設けることが好ましい。
この接着剤層に用いる接着剤としては、例えばアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等を挙げることができる。中でも、アルミニウム基体又は鉄基体とポリエステル樹脂層(A)との組み合わせによる積層体の場合は、熱硬化型ポリエステル系接着剤を用いることが特に好ましい。
<ポリエステル樹脂層(A)>
金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)は、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含み、必要に応じて、樹脂部材(Y)のポリエステル(b)の末端と反応可能なポリエステル末端反応性化合物(c1)を含むのが好ましい。
金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)が、接合する相手方である樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)に含まれるポリエステル(b)の末端と反応可能なポリエステル末端反応性化合物(c1)を含んでいれば、ポリエステル樹脂層(A)とポリエステル樹脂組成物(B)との接合界面において、ポリエステル樹脂層(A)中のポリエステル末端反応性化合物(c1)と、ポリエステル樹脂組成物(B)中のポリエステル(b)とが結合反応して反応後化合物(d1)を生成し、より強固な接合面とすることができる。
(ポリエステル末端反応性化合物(c1))
前記ポリエステル末端反応性化合物(c1)としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基(環)を有する化合物、オキサジン基(環)を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、及びアミド基を有する化合物からなる群から選ばれた1種以上であるのが好ましく、特にカルボジイミド化合物であるのが好ましい。
[カルボジイミド化合物]
上記カルボジイミド化合物は、分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を含有する化合物である。
カルボジイミド化合物としては、主鎖が脂肪族の脂肪族カルボジイミド化合物、主鎖が脂環式の脂環式カルボジイミド化合物、主鎖が芳香族の芳香族カルボジイミド化合物の何れも使用することができる。中でも、本樹脂金属複合体の耐加水分解性をより良好にすることができる点で、脂環式カルボジイミド化合物の使用が好ましい。
カルボジイミド化合物のタイプとして、モノマー型であっても、ポリマー型であってもよいが、本発明においてはポリマー型が好ましい。
ポリマー型のカルボジイミドの場合の好ましい数平均分子量は、10000以下であるのが好ましく、より好ましくは4000以下であり、下限としては100以上であるのが好ましく、より好ましくは500以上である。
カルボジイミド化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、100~1000(g/1mol)であるのが好ましく、中でも200(g/1mol)以上或いは800(g/1mol)以下、その中でも235(g/1mol)以上或いは650(g/1mol)以下であるのがさらに好ましい。上記範囲で使用することで、塗膜の耐久性を向上させることができる。
上記脂肪族カルボジイミド化合物としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド等を挙げることができる。
上記脂環式カルボジイミド化合物としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、等を挙げることができ、特にポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)が好ましい。
市販のものとしては、「カルボジライト」(商品名;日清紡ケミカル社製)等を挙げることができる。
上記芳香族カルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロルフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トリイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物及びポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミド化合物が挙げられ、これらは2種以上併用することもできる。これらの中でも特にジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(フェニレンカルボジイミド)およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)が好適に使用される。
市販のものとしては、「スタバクゾールP」(商品名;BASF社製)等を挙げることができる。
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物としては、多官能エポキシ化合物が好ましい。
多官能エポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環化合物型ジエポキシ化合物、グリシジルエーテル類、エポキシ化ポリブタジエン、更に具体的には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシドなどの脂環化合物型エポキシ化合物をいずれも好ましく用いることができる。
[オキサゾリン基(環)を有する化合物]
上記オキサゾリン基(環)を有する化合物としては、例えばオキサゾリン、アルキルオキサゾリン(2-メチルオキサゾリン、2-エチルオキサゾリン等のC1-4アルキルオキサゾリン)やビスオキサゾリン化合物等を挙げることができる。
上記ビスオキサゾリン化合物としては、例えば2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(アルキル-2-オキサゾリン)[2,2’-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)等の2,2’-ビス(C1-6アルキル-2-オキサゾリン)など]、2,2’-ビス(アリール-2-オキサゾリン)[2,2’-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)など]、2,2’-ビス(シクロアルキル-2-オキサゾリン)[2,2’-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)など]、2,2’-ビス(アラルキル-2-オキサゾリン)[2,2’-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)など]、2,2’-アルキレンビス(2-オキサゾリン)[2,2’-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)等の2,2’-C1-10アルキレンビス(2-オキサゾリン)等]、2,2’-アルキレンビス(アルキル-2-オキサゾリン)[2,2’-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)等の2,2’-C1-10アルキレンビス(C1-6アルキル-2-オキサゾリン)等]、2,2’-アリーレンビス(2-オキサゾリン)[2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-(1,4-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-(1,2-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等]、2,2’-アリーレンビス(アルキル-2-オキサゾリン)[2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-(1,4-フェニレン)-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)等の2,2’-フェニレン-ビス(C1-6アルキル-2-オキサゾリン)等]、2,2’-アリーロキシアルカンビス(2-オキサゾリン)[2,2’-9,9’-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)など]、2,2’-シクロアルキレンビス(2-オキサゾリン)[2,2’-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)など]、N,N’-アルキレンビス(2-カルバモイル-2-オキサゾリン)[N,N’-エチレンビス(2-カルバモイル-2-オキサゾリン)、N,N’-テトラメチレンビス(2-カルバモイル-2-オキサゾリン)等のN,N’-C1-10アルキレンビス(2-カルバモイル-2-オキサゾリン)等]、N,N’-アルキレンビス(2-カルバモイル-アルキル-2-オキサゾリン)[N,N’-エチレンビス(2-カルバモイル-4-メチル-2-オキサゾリン)、N,N’-テトラメチレンビス(2-カルバモイル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)等のN,N’-C1-10アルキレンビス(2-カルバモイル-C1-6アルキル-2-オキサゾリン)等]、N,N’-アリーレンビス(2-カルバモイル-2-オキサゾリン)[N,N’-フェニレンビス(2-カルバモイル-オキサゾリン)など]等を挙げることができる。
また、オキサゾリン基を有する化合物には、オキサゾリン基を含有するビニルポリマー[日本触媒社製,エポクロスRPSシリーズ、RASシリーズ及びRMSシリーズなど]なども含まれる。これらのオキサゾリン化合物のうちビスオキサゾリン化合物が好ましい。
[オキサジン基(環)を有する化合物]
上記オキサジン基(環)を有する化合物として、オキサジンやビスオキサジン化合物等を用いることができる。
上記ビスオキサジン化合物としては、例えば2,2’-ビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-ビス(アルキル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)[2,2’-ビス(4-メチル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-ビス(4,4-ジメチル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-ビス(4,5-ジメチル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)等の2,2’-ビス(C1-6アルキル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)など]、2,2’-アルキレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)[2,2’-メチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-エチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-ヘキサンメチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)等の2,2’-C1-10アルキレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)等]、2,2’-アリーレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)[2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-(1,4-フェニレン)-ビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-(1,2-フェニレン)-ビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-ナフチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2’-ジフェニレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)等]、N,N’-アルキレンビス(2-カルバモイル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)[N,N’-エチレンビス(2-カルバモイル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、N,N’-テトラメチレンビス(2-カルバモイル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)等のN,N’-C1-10アルキレンビス(2-カルバモイル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)等]、N,N’-アルキレンビス(2-カルバモイル-アルキル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)[N,N’-エチレンビス(2-カルバモイル-4-メチル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、N,N’-ヘキサメチレンビス(2-カルバモイル-4,4-ジメチル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)等のN,N’-C1-10アルキレンビス(2-カルバモイル-C1-6アルキル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)等]、N,N’-アリーレンビス(2-カルバモイル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)[N,N’-フェニレンビス(2-カルバモイル-オキサジン)など]等を挙げることができる。これらのオキサジン化合物のうち、ビスオキサジン化合物が好ましい。
[カルボン酸を有する化合物]
上記カルボン酸を有する化合物としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、ジフェノール酸ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、シアノベンゼンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ニトロベンゼンカルボン酸、シアノベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシ酢酸及びその塩などを挙げることができる。
[アミド基を有する化合物]
上記アミド基を有する化合物としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、β-ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレート等を挙げることができる。
(ポリエステル末端反応性化合物(c1)の含有量)
ポリエステル末端反応性化合物(c1)は、その含有量が少ないと、十分に効果を得ることができないため、ある程度の量を含有させるのが好ましい。よって、ポリエステル末端反応性化合物(c1)は、ポリエステル樹脂層(A)100質量部に対し、0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。
他方、これらの化合物は反応性があるため、含有量が多すぎると増粘などが生じ、取り扱いが難しくなることがある。よって、ポリエステル末端反応性化合物(c1)は、ポリエステル樹脂層(A)100質量部に対し、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。
(ポリエステル(a))
ポリエステル樹脂層(A)の主成分樹脂としてのポリエステル(a)としては、後述するポリエステル樹脂組成物(B)のポリエステル(b)と同様のポリエステルを用いることができる。
中でもポリエステル(a)として、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、又は、ポリ-1,4-シクロヘキサジメチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」とも称する)で変性されたポリエチレンテレフタレート(CHDM変性ポリエチレンテレフタレート)、又は、これらの共重合ポリエステル、又は、これらのうちの2種類以上の組合せからなる混合物などが好ましく、特に、ポリブチレンテレフタレート、CHDM変性ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの混合物が好ましい。
中でも、ポリエステル樹脂層(A)とポリエステル樹脂組成物(B)の接合強度を高める観点から、両者は相溶する樹脂同士であるのが好ましく、同観点から、ポリエステル(a)とポリエステル(b)のSP値の差は2以下、中でも1以下、その中でも0.5以下であるのが好ましい。なお、ポリエステル(a)又はポリエステル(b)のそれぞれが、複数のポリエステル樹脂を含有する場合には、そのSP値は各ポリエステル樹脂の質量平均とする。
中でも、ポリエステル(a)の中でも最も質量割合の大きなポリエステルと、ポリエステル(b)の中で最も質量割合の大きなポリエステルとが、同じ基本構造を有するポリエステルであるのが特に好ましい。
ちなみに、ポリブチレンテレフタレート樹脂の溶解度パラメータ(「SP値」とも称する)は12.1(cal/cm3)、ポリエチレンテレフタレート樹脂のSP値は11.5(cal/cm3)、CHDM変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(ジオール成分に占めるCHDM比率=30モル%)のSP値は11.5(cal/cm3)であり、ポリカーボネート樹脂のSP値は11.6(cal/cm3)である。
なお、本発明におけるSP値は、FEDORSの方法(R.FEDORS,POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,FEBRUARY,1974,Vol14,No.2)に従って計算して求めることができる値である。
相溶する樹脂同士の場合、ブレンド樹脂のSP値は、それぞれの樹脂の比率によって線形的に求める事ができる。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂/CHDM変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(ジオール成分に占めるCHDM比率=30モル%)=90/10質量部のブレンド系樹脂のSP値は、12.1×0.9+11.5×0.1=12.0(cal/cm3)となる。
ポリエステル(a)の好ましい一例として、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートを含む樹脂を挙げることができる。その場合、ポリブチレンテレフタレートの含有量が、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートの合計100質量%に対して50~95質量%であることが好ましく、中でも55質量%以上或いは93質量%以下、その中でも60質量%以上或いは90質量%以下であるのがさらに好ましい。
ポリエステル(a)の固有粘度(「IV値」とも称する)は0.5~2dl/gであるのが好ましく、中でも0.6dl/g以上或いは1.5dl/g以下であるのがより好ましい。
ポリエステル(a)がポリブチレンテレフタレートである場合には、その固有粘度(IV値)は0.7~1.8dl/gであるのが好ましく、より好ましくは0.8dl/g以上或いは1.5dl/g以下であり、更に好ましくは0.9dl/g以上或いは1.15dl/g以下である。
他方、ポリエステル(a)がポリエチレンテレフタレートである場合には、その固有粘度(IV値)は0.5~1.5dl/gであるのが好ましく、より好ましくは0.6dl/g以上或いは1.3dl/g以下であり、更に好ましくは0.7dl/g以上或いは1.0dl/g以下である。
このような範囲とすることで、前記したポリエステル末端反応性化合物(c1)を用いた場合にも、増粘はするものの、樹脂シートの押出しが可能な範囲に制御することができる。
なお、ポリエステル(a)の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
(その他の成分)
ポリエステル樹脂層(A)は、必要に応じて各種の樹脂添加剤や他の樹脂を配合することができ、後述するポリエステル樹脂組成物(B)が含有できると説明する各種の成分等を同様に使用することができる。
中でも、ポリエステル樹脂層(A)は、後述する着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックを含有するのが好ましい。
ポリエステル樹脂層(A)が所定量の着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックを含有することにより、輻射率(「放射率」とも称する。すなわち、物体が熱放射で放出する光のエネルギーを、同温の黒体が放出する光のエネルギーを1としたときの比。)を高めることができ、それによる効果をさらに得ることができる。
着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの詳細については、ポリエステル樹脂組成物(B)が含有できると説明する着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックと同様である。
着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの含有量は、輻射率向上の観点から、ポリエステル樹脂層(A)100質量部に対して0.05質量部以上であるのが好ましく、中でも0.1質量部以上であるのがさらに好ましい。その一方、成形体の表面外観や接合強度の観点から、8質量部以下であるのが好ましく、中でも6質量部以下、その中でも4質量部以下、その中でも1質量部以下であるのがさらに好ましい。
(ポリエステル樹脂層(A)の層構成)
ポリエステル樹脂層(A)は、単層構造であっても、多層構造であってもよい。
多層構造の場合は、予め用意しておいた多層フィルムを金属基体上へ積層してもよく、単層フィルムを複数回にわたり金属基体上に積層してもよい。また、多層フィルムを得る方法としては多層ダイスにより積層フィルムを得る方法、ラミネートにより複数のフィルムを積層する方法などがあるがいずれの方法でもよい。
最初のポリエステル樹脂層を金属基体上に積層した後、さらに次のポリエステル樹脂層を形成する方法は特に制限されるものでない。例えば、各種の接着剤を塗布した上で積層することが好ましい。この際の接着剤としては、例えばアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、また熱硬化型のものや紫外線等のエネルギー線硬化型等の各種接着剤等を挙げることができる。
(ポリエステル樹脂層(A)の層厚)
ポリエステル樹脂層(A)の厚さは、3μm~1000μmであるのが好ましく、中でも5μm以上或いは800μm以下、その中でも7μm以上或いは600μm以下、その中でも10μm以上或いは400μm以下であるのが特に好ましい。
<金属積層体(X)の作製方法>
金属基体上にポリエステル樹脂層(A)を設ける方法は、特に制限するものではない。例えば、製膜されたポリエステル樹脂層(A)を備えたフィルムを、金属基体上に積層してもよいし、また、T-ダイで押出したポリエステル樹脂層を直接金属基体上にラミネートしてもよい。
製膜されたポリエステル樹脂層(A)を備えたフィルムを、金属基体上に積層する場合、フィルムを製膜する方法としてコートハンガーダイ、T-ダイ、I-ダイ、インフレーションダイなどを使用しての押出成形法、カレンダー成形法など、従来から知られている方法によって製造することができる。
ポリエステル樹脂層(A)を備えたフィルムは、未延伸でも、二軸延伸されていてもよい。
また、該フィルムの積層方法に際しては、例えば、ポリエステル樹脂層(A)を備えたフィルムを、ポリエステル(a)の融点以下に加熱したニップロール等によって加圧積層し、積層後、直ちに空冷又は水冷によって冷却すればよい。
さらに、ポリエステル樹脂組成物(B)との密着性を向上させる目的で、コロナ処理、火炎処理などの表面処理を施すことも好ましい。
また、ポリエステル樹脂層(A)の表面にエンボスを設けてもよい。巻き取り性の観点から、表面粗さが0~400μmのエンボスを設けることが好ましい。
<<樹脂部材(Y)>>
樹脂部材(Y)は、ポリエステル(b)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂組成物(B)からなる部材である。
当該「主成分樹脂」とは、ポリエステル樹脂組成物(B)を構成する樹脂の中で最も含有質量の割合の大きな樹脂又は樹脂群の意味であり、ポリエステル樹脂組成物(B)を構成する樹脂のうちポリエステル(b)が50質量%以上、中でも75質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を包含する。但し、ポリエステル(b)は2種類以上のポリエステル(樹脂群)である場合もある。
樹脂部材(Y)は、ポリエステル樹脂組成物(B)からなり、ポリエステル樹脂組成物(B)のみからなる構造であってもよいし、ポリエステル樹脂組成物(B)からなる部材乃至層の裏面側(金属積層体(X)と接合しない部位)に他の樹脂層等を接合した複数材料からなる構造であってもよい。
樹脂部材(Y)は、大きさ、形状、厚み等は特に限定されるものではなく、板状(円板、多角形など)、柱状、箱形状、椀形状、トレイ状などいずれであってもよい。樹脂部材(Y)を任意の形状に成形可能である点は本樹脂金属複合体の特徴の一つである。
樹脂部材(Y)は、全ての部分の厚みが均一である必要はなく、また、必要に応じて補強リブなどの任意形状の部分が設けられていてもよい。
<ポリエステル樹脂組成物(B)>
ポリエステル樹脂組成物(B)は、ポリエステル(b)を主成分樹脂として含み、必要に応じて、金属積層体(X)のポリエステル(a)の末端と反応可能なポリエステル末端反応性化合物(c2)を含むのが好ましい。
樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)が、接合する相手方である金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)に含まれるポリエステル(a)の末端と反応可能なポリエステル末端反応性化合物(c2)を含んでいれば、ポリエステル樹脂層(A)とポリエステル樹脂組成物(B)との接合界面において、ポリエステル樹脂組成物(B)中のポリエステル末端反応性化合物(c2)と、ポリエステル樹脂層(A)中のポリエステル(a)とが結合反応して反応後化合物(d2)を生成し、より強固な接合面とすることができる。
(ポリエステル末端反応性化合物(c2))
前記ポリエステル末端反応性化合物(c2)としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基(環)を有する化合物、オキサジン基(環)を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、及びアミド基を有する化合物からなる群から選ばれた1種以上であるのが好ましく、特にエポキシ化合物であるのが好ましい。
これらの各材料については、前記ポリエステル末端反応性化合物(c1)において前述したとおりである。
(ポリエステル末端反応性化合物(c2)の含有量)
ポリエステル末端反応性化合物(c2)は、その含有量が少ないと、十分に効果を得ることができないため、ある程度の量を含有させるのが好ましい。よって、ポリエステル末端反応性化合物(c2)は、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対し、0.05質量部以上であるのが好ましく、中でも0.07質量部以上、その中でも0.1質量部以上であるのがさらに好ましい。
他方、これらの化合物は反応性があるため、含有量が多すぎると増粘などが生じ、取り扱いが難しくなることがある。よって、ポリエステル末端反応性化合物(c2)は、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対し、5質量部以下であるのが好ましく、中でも3質量部以下、その中でも2質量部以下であるのがさらに好ましい。
(ポリエステル(b))
ポリエステル樹脂組成物(B)の主成分樹脂としてのポリエステル(b)としては、好ましくはジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られる熱可塑性ポリエステル樹脂であり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであってもよい。
ポリエステル(b)を構成する上記ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましい。
上記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン-4,4’-ジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、アントラセン-2,5-ジカルボン酸、アントラセン-2,6-ジカルボン酸、p-ターフェニレン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸等を挙げることができ、テレフタル酸が好ましい。
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用してもよい。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等をエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
ポリエステル(b)を構成する上記ジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等の脂環式ジオール等、およびそれらの混合物等を挙げることができる。
なお、少量であれば、分子量400~6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
ポリエステル(b)としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体すなわちポリエステル(b)の50質量%以上、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
中でも好ましいのは、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートである。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4-ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
ポリエステル(b)の固有粘度は、0.5~1.5dl/gであるのが好ましい。中でも、成形性及び機械的特性の点からすると、0.6dl/g以上或いは1.3dl/g以下の範囲の固有粘度を有するものが好ましい。
ポリエステル(b)の固有粘度が0.5dl/g以上であれば、ポリエステル樹脂組成物(B)の機械的強度を維持することができる。また、1.5dl/g以下であれば、ポリエステル樹脂組成物(B)の流動性を維持することができ、良好な成形性を維持することができ、得られる樹脂金属複合体の接合強度を維持することができる。
なお、ポリエステルの固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
ポリエステル(b)の末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよく、60eq/ton以下であるのが好ましく、50eq/ton以下であるのがさらに好ましく、中でも30eq/ton以下であるのがさらに好ましい。当該末端カルボキシル基量が50eq/ton以下であれば、樹脂組成物の溶融成形時にガスの発生を抑制することができる。また、末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではなく、3eq/ton以上であるのが好ましい。
なお、ポリエステル(b)の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリエステル樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
ポリエステル(b)の1つの代表的な樹脂であるポリブチレンテレフタレートは、さらに樹脂金属複合体の接合強度の観点から、ブチレンテレフタレートに由来する繰り返し単位を主成分としてなり、共重合可能なモノマーに由来する繰り返し単位を、後述する割合で有するコポリエステル(ブチレンテレフタレート共重合体又はポリブチレンテレフタレートコポリエステル)等が好ましい。
当該コポリエステル(ブチレンテレフタレート共重合体又は変性PBT樹脂)における上記共重合可能なモノマー(以下、単に共重合性モノマーと称する場合がある)としては、テレフタル酸を除くジカルボン酸成分、1,4-ブタンジオールを除くジオール、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等を挙げることができる。共重合性モノマーは、1種で又は2種以上組み合わせて使用できる。
上記コポリエステルの共重合性モノマーとしての上記ジカルボン酸(又はジカルボン酸成分又はジカルボン酸類)としては、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等のC4~40ジカルボン酸、好ましくはC4~14ジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸成分(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等のC8~12ジカルボン酸)、テレフタル酸を除く芳香族ジカルボン酸成分(例えば、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸等のC8~16ジカルボン酸)、又はこれらの反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル(ジメチルフタル酸、ジメチルイソフタル酸(DMI)等のフタル酸又はイソフタル酸のC1~4アルキルエステル等)、酸クロライド、酸無水物等のエステル形成可能な誘導体)等を挙げることができる。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体(アルコールエステル等)等を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
上記コポリエステルの共重合性モノマーとしての上記ジオール(又はジオール成分又はジオール類)には、例えば1,4-ブタンジオールを除く脂肪族アルカンジオール[例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール(1,6-ヘキサンジオール等)、オクタンジオール(1,3-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール等)、デカンジオール等の低級アルカンジオール、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2~12アルカンジオール、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2~10アルカンジオール等);(ポリ)オキシアルキレングリコール(例えば、複数のオキシC2~4アルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)等]、脂環族ジオール(例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等)、芳香族ジオール[例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール等のジヒドキシC6~14アレーン;ビフェノール(4,4’-ジヒドキシビフェニル等);ビスフェノール類;キシリレングリコール等]、及びこれらの反応性誘導体(例えば、アルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等のエステル形成性誘導体等)等を挙げることができる。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等のポリオール又はそのエステル形成性誘導体を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
上記ビスフェノール類としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン等のビス(ヒドロキシアリール)C1~6アルカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)C4~10シクロアルカン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、及びこれらのアルキレンオキサイド付加体が例示できる。アルキレンオキサイド付加体としては、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールF)のC2~3アルキレンオキサイド付加体、例えば、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールA(EBPA)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ジプロポキシ化ビスフェノールA等を挙げることができる。アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のC2~3アルキレンオキサイド)の付加モル数は、各ヒドロキシ基に対して1~10モル、好ましくは1~5モル程度である。
上記コポリエステルの共重合性モノマーとしての上記オキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸成分又はオキシカルボン酸類)には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はこれらの誘導体等が含まれる。
上記コポリエステルの共重合性モノマーとしての上記ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε-カプロラクトン等)等のC3~12ラクトン等が含まれる。
上記共重合性モノマーのうち、好ましくはジオール類[C2~6アルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状アルキレングリコール等)、繰り返し数が2~4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシC2~4アルキレングリコール(ジエチレングリコール等)、ビスフェノール類(ビスフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加体等)]、ジカルボン酸類[C6~12脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)、カルボキシル基がアレーン環の非対称位置に置換した非対称芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジメタノール等]等を挙げることができる。
ポリエステル(b)として用いるポリブチレンテレフタレート樹脂としては、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)及び/又は共重合体(ポリブチレンテレフタレートコポリエステル)が好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、共重合性モノマーの割合(変性量)が、通常、45モル%以下(例えば、0モル%以上45モル%以下程度)、好ましくは35モル%以下(例えば、0モル%以上35モル%以下程度)、さらに好ましくは30モル%以下(例えば、0モル%以上30モル%以下程度)のコポリエステルであってもよい。
なお、上記コポリエステルにおいて、共重合性モノマーの割合は、適宜0.01モル%以上30モル%以下程度の範囲から適宜選択すればよい。通常は、1モル%以上30モル%以下程度の範囲で選択すればよく、中でも3モル%以上或いは25モル%以下、その中でも5モル%以上或いは20モル%以下の範囲で選択するのがさらに好ましい。
また、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)と共重合体(コポリエステル)とを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの割合は、共重合性モノマーの割合が、全単量体に対して0.1モル%以上30モル%以下であるのが好ましく、中でも1モル%以上或いは25モル%以下、その中でも5モル%以上或いは20モル%以下であるのがさらに好ましい。通常、前者/後者=99/1~1/99(質量比)、好ましくは95/5~5/95(質量比)、さらに好ましくは90/10~10/90(質量比)程度の範囲から選択できる。
ポリエステル(b)として用いるポリエチレンテレフタレートは、全構成繰り返し単位に対するテレフタル酸及びエチレングリコールからなるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位を主たる構成単位とする樹脂であり、オキシエチレンオキシテレフタロイル単位以外の構成繰り返し単位を含んでいてもよい。
ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとを主たる原料として製造されるが、他の酸成分及び/又は他のグリコール成分を併せて原料として用いてもよい。
上記テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸又はその誘導体を挙げることができる。
また、上記エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等を挙げることができる。例えば1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエチレンテレフタレート(PETG)を挙げることができる。
ポリエステル(b)は、ポリエステル(b)中の50質量%以上がポリブチレンテレフタレートであることが好ましく、より好ましくは60質量%以上がポリブチレンテレフタレートであり、100質量%ポリブチレンテレフタレートであってもよい。
ポリブチレンテレフタレートと他の熱可塑性樹脂を混合して用いる場合の混合形態(以下、アロイ形態と称する)としては、特に次の4種類の形態が望ましい。
アロイ形態(1):ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート
アロイ形態(2):ポリブチレンテレフタレート及びスチレン系樹脂
アロイ形態(3):ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネート
アロイ形態(4):ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、及び、スチレン系樹脂
アロイとして用いる場合、その最終用途に求められる性能によるが、接合強度が特に求められる場合には、アロイ形態(1)が好ましく、低反り性、接合強度が求められる場合には、アロイ形態(2)が好ましい。
(アロイ形態(1))
アロイ形態として最も好ましいアロイ形態(1)は、前述したポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートを含有する場合である。この場合、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートの含有量は、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートの合計100質量%に対して、ポリエチレンテレフタレートの含有量が5~50質量%であるのが好ましく、中でも10質量%以上或いは45質量%以下、その中でも15質量%以上或いは40質量%以下であるのがさらに好ましい。ポリエチレンテレフタレートの含有量が5質量%以上であれば、金属と樹脂組成物との接合強度をより維持することができ、50質量%以下であれば、成形性をより維持することができる。
(アロイ形態(2))
ポリエステル(b)としては、ポリブチレンテレフタレートとスチレン系樹脂とを含有するアロイ形態(2)も、本樹脂金属複合体の接合性の観点から好ましい。
スチレン系樹脂の好ましい例は、ポリスチレン及び/又はブタジエンゴム含有ポリスチレンである。
上記ポリスチレンとしては、スチレンの単独重合体、あるいは他の芳香族ビニルモノマー、例えばα-メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等を、例えば50質量%以下の範囲で共重合したものであってもよい。
上記ブタジエンゴム含有ポリスチレンとしては、ブタジエン系ゴム成分を共重合またはブレンドしたものであり、ブタジエン系ゴム成分の量は、通常1質量%以上50質量%未満であり、好ましくは3質量%以上或いは40質量%質量%以下、より好ましくは5質量%以上或いは30質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上或いは20質量%以下である。ゴム成分としてアクリル系のゴム成分を含有するポリスチレンも考えられるが、靱性面にて乏しくなるので、ブタジエン系ゴム成分を含有するポリスチレンの方がより好ましい。ブタジエンゴム含有ポリスチレンとしては、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)が特に好ましい。
上記のスチレン系樹脂の中では、ブタジエンゴム含有ポリスチレンが好ましく、特にハイインパクトポリスチレン(HIPS)が好ましい。
スチレン系樹脂としては、質量平均分子量が50,000~500,000であることが好ましく、中でも100,000以上或いは400,000以下、その中でも150,000以上或いは300,000以下であるのがさらに好ましい。分子量が50,000以上であれば、成形品のブリードアウトを抑制できたり、成形時に分解ガスが発生するのをより抑制できたりすることができる。他方、分子量が500,000以下であれば、十分な流動性や本樹脂金属複合体の接合・溶着強度の向上を図ることができる。
上記のスチレン系樹脂は、200℃、98Nで測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.1~50g/10分であることが好ましく、中でも0.5g/10分以上或いは30g/10分以下、その中でも1g/10分以上或いは20g/10分以下であるのがさらに好ましい。MFRが0.1g/10分以上であれば、ポリエステル樹脂と相溶性がより十分となり、射出成形時に層剥離の外観不良をより無くすことができる。また、MFRが50g/10分以下であれば、耐衝撃性をより維持することができる。
特に、ポリスチレンである場合は、MFRは1~50g/10分であることが好ましく、中でも3g/10分以上或いは35g/10分以下、その中でも5g/10分以上或いは20g/10分以下であるのがさらに好ましい。
ブタジエンゴム含有ポリスチレンである場合は、MFRは0.1~40g/10分であることが好ましく、中でも0.5g/10分以上或いは30g/10分以下、その中でも1g/10分以上或いは20g/10分以下であるのがさらに好ましい。
ポリブチレンテレフタレートとスチレン系樹脂とを含有する場合の含有量は、ポリブチレンテレフタレートとスチレン系樹脂との合計100質量%に対して、スチレン系樹脂の含有量が、10~50質量%であるのが好ましく、中でも15質量%以上或いは45質量%以下、その中でも20質量%以上或いは40質量%以下であるのがさらに好ましい。スチレン系樹脂の含有量が10質量%以上であれば、樹脂金属複合体の接合強度を良好に維持することができる傾向にあり、50質量%以下であれば、成形時に層剥離することがなく、外観を良好に維持することができるから好ましい。
(アロイ形態(3))
ポリエステル(b)として、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネートを含有するポリエステルも好ましい一例である(アロイ形態(3))。
ポリカーボネートを特定量含有することにより、樹脂金属複合体の接合性が向上しやすくなり好ましい。
上記ポリカーボネートは、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。
ポリカーボネートの原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4-ジヒドロキシジフェニル等を挙げることができ、好ましくはビスフェノールAを挙げることができる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
上記ポリカーボネートとしては、上述した中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート、又は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネートを主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネートの2種以上を混合して用いてもよい。
上記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、5,000~30,000であることが好ましく、中でも10,000以上或いは28,000以下、その中でも14,000以上或いは24,000以下であることがさらに好ましい。
当該粘度平均分子量が5,000以上であれば、得られる接合・溶着用部材の機械的強度を好適に維持することができる。また30,000以下であれば、樹脂組成物の流動性を維持することができ、成形性や、樹脂金属複合体の接合性を維持することができる。
なお、ポリカーボネートの粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される粘度平均分子量[Mv]である。
ポリカーボネートの、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)は、2~5であることが好ましく、中でも2.5以上或いは4以下であるのがより好ましい。Mw/Mnが過度に小さいと、溶融状態での流動性が増大し成形性が低下する傾向にある。一方、Mw/Mnが過度に大きいと、溶融粘度が増大し成形困難となる傾向がある。
上記ポリカーボネートの末端ヒドロキシ基量は、熱安定性、加水分解安定性、色調等の点から、100質量ppm以上であることが好ましく、より好ましくは200質量ppm以上、さらに好ましくは400質量ppm以上、最も好ましくは500質量ppm以上である。但し、通常1,500質量ppm以下、好ましくは1,300質量ppm以下、さらに好ましくは1,200質量ppm以下、最も好ましくは1,000質量ppm以下である。ポリカーボネートの末端ヒドロキシ基量が過度に小さいと、樹脂金属複合体の接合性が低下しやすい傾向にあり、また、成形時の初期色相が悪化する場合がある。末端ヒドロキシ基量が過度に大きいと、滞留熱安定性や耐湿熱性が低下する傾向がある。
ポリエステル(b)として、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネートを含有する場合の含有量は、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネートの合計100質量%に対して、ポリカーボネートの含有量が10~50質量%であるの好ましく、中でも15質量%以上或いは45質量%以下、その中でも20質量%以上或いは40質量%以下であるのがさらに好ましい。ポリカーボネートの含有量が10質量%以上であれば、本樹脂金属複合体の接合強度を維持することができる傾向にあり、50質量%以下であれば、成形性を維持することができるから好ましい。
(アロイ形態(4))
ポリエステル(b)として、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、及び、スチレン系樹脂を含有するポリエステルも、本樹脂金属複合体の接合性を高める観点から好ましい。(アロイ形態(4))
上記ポリカーボネート及び上記スチレン系樹脂は、それぞれ前述の通りである。
ポリエステル(b)が、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びスチレン系樹脂を含む場合、当該ポリエステル(b)の結晶化温度(Tc)は200℃以下であることが好ましい。
すなわち、ポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートとのエステル交換反応を適度に抑制し、結晶化温度を適度に低下させることにより、樹脂金属複合体の接合性をより向上させることができる。結晶化温度(Tc)はより好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。また、その下限は、通常160℃以上、好ましくは165℃以上である。
なお、結晶化温度(Tc)は示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。具体的には、示差走査熱量測定(DSC)機を用い、30~300℃まで昇温速度20℃/minで昇温し、300℃で3分保持した後、降温速度20℃/minにて降温した際に観測される発熱ピークのピークトップ温度として測定することができる。
ポリエステル(b)が、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びスチレン系樹脂を含む場合の含有量は、以下の通りである。
上記ポリブチレンテレフタレートの含有量は、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びスチレン系樹脂の合計100質量%基準で、30~90質量%であることが好ましく、中でも40質量%以上或いは80質量%以下、その中でも50質量%以上或いは70質量%以下であるのがさらに好ましい。当該含有量が30質量%以上であれば、耐熱性を良好に維持することができ、90質量%以上であれば、良好な接合性を維持することができて好ましい。
上記スチレン系樹脂の含有量は、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びスチレン系樹脂の合計100質量%基準で、1~50質量%であることが好ましく、中でも3質量%以上或いは45質量%以下、その中でも5質量%以上或いは40質量%以下であるのがさらに好ましい。当該含有量が1質量%以上であれば、接合性、靱性をより維持することができ、50質量%以下であれば、耐熱性をより維持することができる。
上記ポリカーボネートの含有量は、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びスチレン系樹脂の合計100質量%基準で、1~50質量%であることが好ましく、中でも3質量%以上或いは45質量%以下、その中でも5質量%以上或いは40質量%以下であるのがさらに好ましい。当該含有量が1質量%以上であれば、接合性を維持することができ、スチレン系樹脂の分散性をより良好に維持することができ、成形品の表面外観を良好に維持することができる。50質量%以下であれば、ポリブチレンテレフタレートとのエステル交換を抑えることができ、滞留熱安定性を維持することができる。
また、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びスチレン系樹脂の合計100質量%中、ポリカーボネートとスチレン系樹脂との合計含有量は10~55質量%であることが好ましく、中でも20質量%以上或いは50質量%以下、その中でも25質量%以上或いは45質量%以下であるのがより好ましい。このような含有量とすることにより、耐熱性と接合性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
さらに、上記ポリカーボネート成分とスチレン系樹脂の含有割合は、質量比で5:1~1:5であることが好ましく、4:1~1:4であることがより好ましい。このような含有割合とすることにより、耐熱性と樹脂金属複合体の接合性のバランスに優れる傾向にあり好ましい。
なお、ポリエステル(b)が、上記したアロイ形態(1)~(4)のように、2種以上の樹脂成分のブレンド物である場合は、当該2種以上の樹脂成分が互いに相溶する相溶系であることが好ましい。相溶系とすることにより、本樹脂金属複合体の接合性がより向上する傾向にある。
本発明において「相溶系」とは、実用的に相溶状態であればよく、具体的には射出成型時に目視により剥離が生じない組成であることをいう。
(安定剤)
ポリエステル樹脂組成物(B)は、安定剤を含有することができる。
安定剤としては、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、硫黄系安定剤等、種々の安定剤を挙げることができる。特に好ましいのはヒンダードフェノール系安定剤やリン系安定剤である。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等を挙げることができる。
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製、商品名(以下同じ)「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等を挙げることができる。
ヒンダードフェノール系安定剤の含有量は、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対して好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下である。
リン系安定剤としては、例えば亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等を挙げることができ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましく、特には有機ホスフェート化合物が好ましい。
有機ホスフェート化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
O=P(OH)n(OR1)3-n…(1)
(一般式(1)中、R1はアルキル基又はアリール基を表す。nは0~2の整数を表す。なお、nが0のとき、2つのR1は同一でも異なっていてもよく、nが1のとき、2つのR1は同一でも異なっていてもよい。)
上記一般式(1)において、R1はアルキル基又はアリール基を表す。R1は、炭素数が1以上、好ましくは2以上であり、通常30以下、好ましくは25以下のアルキル基、又は、炭素数が6以上、通常30以下のアリール基であることがより好ましい。中でもR1は、アリール基よりもアルキル基が好ましい。なお、R1が2以上存在する場合、R1同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)で示されるリン系安定剤として、より好ましくは、R1が炭素原子数8~30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物を挙げることができる。炭素原子数8~30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等を挙げることができる。
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えばオクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等を挙げることができる。
これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社製の商品名「アデカスタブAX-71」として、市販されている。
上記一般式(1)で表されるリン系安定剤の含有量は、好ましくは、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対し、0.001~1質量部である。当該含有量が0.001質量部以上であれば、接合・溶着用部材の熱安定性や相溶性の改良をより期待することができ、成形時の分子量の低下や色相悪化を抑えることができる。当該含有量が1質量部以下であれば、シルバーの発生や色相悪化を抑えることができる。より好ましい含有量は、0.01~0.6質量部であり、中でも0.05質量部以上或いは0.4質量部以下であるのがさらに好ましい。
(離型剤)
ポリエステル樹脂組成物(B)は、離型剤を含有することもできる。
離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物を挙げることができ、中でも、質量平均分子量が、700~10,000であるのが好ましく、中でも900以上或いは8,000以下のものがさらに好ましい。また、側鎖に水酸基、カルボキシル基、無水酸基、エポキシ基などを導入した変性ポリオレフィン系化合物も特に好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等を挙げることができ、中でも、炭素原子数11~28、好ましくは炭素原子数17以上或いは21以下の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン-12-ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等を挙げることができる。
また、シリコーン系化合物としては、樹脂との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。
変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等を挙げることができる。
導入される有機基としては、例えばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等を挙げることができ、好ましくはエポキシ基を挙げることができる。
変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
離型剤の含有量は、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対し、0.05~2質量部であることが好ましい。当該含有量が0.05質量部以上であれば、溶融成形時の離型不良を抑えることができ、表面性をより維持することができる。一方、当該含有量が2質量部以下であれば、樹脂組成物の練り込み作業性を維持することができ、また成形品表面に曇りが生じるのを抑えることができる。離型剤の含有量は、0.07質量部以上或いは1.5質量部以下であるのがさらに好ましく、中でも0.1質量部以上或いは1.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
(強化充填材)
ポリエステル樹脂組成物(B)は、強化充填材を含有することもできる。
強化充填材としては、常用のプラスチック用無機充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維などの繊維状の充填材を用いることができる。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズなどの粒状または無定形の充填材;タルクなどの板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイトなどの鱗片状の充填材を用いることもできる。
中でも、樹脂金属複合体の接合性、機械的強度、剛性および耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
強化充填材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えばアミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤などを好ましく挙げることができる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には、例えばγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどを好ましい例として挙げることができる。
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げることができる。中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
ガラス繊維は、樹脂金属複合体の接合性の点から、断面における長径と短径の比が1.5~10である異方断面形状を有するガラス繊維であることも好ましい。
断面形状は、断面が長円形、楕円形、まゆ型形状のものが好ましく、特に長円形断面が好ましい。また、長径/短径比が2.5~8、更には3以上或いは6以下の範囲にあるものが好ましい。さらに、成形品中のガラス繊維断面の長径をD2、短径をD1、平均繊維長をLとするとき、アスペクト比((L×2)/(D2+D1))が10以上であることが好ましい。このような扁平状のガラス繊維を使用すると、成形品の反りが抑制され、特に箱型の接合体を製造する場合に効果的である。
強化充填材の含有量は、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対し、0~100質量部であるのが好ましい。強化充填材の含有量が100質量部以下であれば、流動性や樹脂金属複合体の接合性をより維持することができるので好ましい。強化充填材のより好ましい含有量は、5~90質量部であり、中でも15質量部以上或いは80質量部以下、その中でも30質量部以上或いは70質量部以下、その中でも特に35質量部以上或いは60質量部以下であるのがさらに好ましい。
(着色剤)
ポリエステル樹脂組成物(B)は、着色剤を含有することができる。着色剤としては、限定されるものではない。中でも、黒色着色剤、例えばカーボンブラックを用いることが好ましい。
本発明における着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックは、その製造方法、原料種等に制限はなく、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には例えば、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができる。これらの中でも着色性とコストの点から、オイルファーネスブラックが好ましい。
着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの平均粒子径は適宜選択して決定すればよい。中でも5~60nmが好ましく、更には7nm以上或いは55nm以下、特に10nm以上或いは50nm以下であることが好ましい。平均粒子径を前記範囲とすることで、着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの凝集を抑制し、漆黒性を向上させ外観が向上する傾向にある。
なお、着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法-電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して求めることができる。
本発明で用いる着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの窒素吸着比表面積は、通常1000m2/g未満が好ましく、中でも50m2/g以上或いは400m2/g以下であることが好ましい。
当該窒素吸着比表面積を1000m2/g未満にすることで、ポリエステル樹脂組成物(B)の流動性や成形体の外観が向上する傾向にあり好ましい。なお、窒素吸着比表面積は、JIS K6217に準拠して測定することができる(単位はm2/g)。
また、着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックのDBP吸収量は、300cm3/100g未満であることが好ましく、中でも30cm3/100g以上或いは200cm3/100g以下であることがさらに好ましい。
当該DBP吸収量を300cm3/100g未満にすることで、ポリエステル樹脂組成物(B)の流動性や成形体の外観が向上する傾向にあり好ましい。
なお、DBP吸収量はJIS K6217に準拠して測定することができる(単位はcm3/100g)。
また、着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックは、そのpHについても特に制限はない。2~10であるのが好ましく、中でも3以上或いは9以下、その中でも4以上或いは8以下であることがさらに好ましい。
着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの含有量は、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対して0.01質量部以上であるのが好ましく、中でも0.05質量部以上、その中でも0.1質量部以上であるのがさらに好ましい。その一方、8質量部以下であるのが好ましく、中でも6質量部以下、その中でも4質量部以下、その中でも3.5質量部以下、その中でも1質量部以下であるのがさらに好ましい。着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの含有量が多すぎると、成形体の表面性や成形収縮率を悪くするおそれがあり、また、製造工程に於いて金型汚染を引き起こす場合がある。
着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックは、単独で又は二種以上併用して使用することができる。更に着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックは、バインダーを用いて顆粒化することも可能であり、樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチでの使用も可能である。溶融混練したマスターバッチを使用することによって、押出時のハンドリング性や樹脂組成物中への分散性が良好となる傾向にある。上記樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、特には、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル-スチレン系樹脂を使用することが好ましい。
マスターバッチ中の着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの含有量は5~80質量%であることが好ましく、中でも10質量%以上或いは70質量%以下がより好ましく、中でも15質量%以上或いは60質量%以下、その中でも18質量%以上或いは40質量%以下であるのが特に好ましい。マスターバッチ中の着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの含有量が80質量%を超えると、着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックの分散不良が発生する場合があり好ましくない。また、着色剤、例えば黒色着色剤、例えばカーボンブラックマスターバッチの使用量は適宜選択して決定すればよいが、通常、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対して0.5~10質量部であり、中でも1質量部以上或いは8質量部以下、その中でも1.5質量部以上或いは5質量部以下であることがさらに好ましい。
(エラストマー)
ポリエステル樹脂組成物(B)は、エラストマーを含有することもできる。
エラストマーとしては、ポリエステル樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いる。
エラストマーの具体例としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
また、エラストマーの他の例としては、ゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体を挙げることができる。この単量体化合物としては、例えば芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等を挙げることができる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)なども挙げることができる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
中でもエラストマーは、アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーが好ましく、ブタジエン系及び/又はアクリル系ゴム性重合体にこれと反応する単量体化合物を共重合させたものが好ましい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーの具体例としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム、また、これらゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体を挙げることができる。
この単量体化合物としては、例えば芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等を挙げることができる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げることができる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーは、耐衝撃性改良の点から、コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましく、ブタジエン成分含有ゴム及び/又はアクリル成分含有ゴム性重合体をコア層とし、その周囲にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選ばれる単量体を共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
コア/シェル型グラフト共重合体の例としては、ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン-メチルメタクリレート・スチレン共重合体、シリコーン・アクリル-メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレート-アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート-アクリル・ブタジエンゴム-スチレン共重合体等を挙げることができる。これらのゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コア、シェルともにアクリル酸エステルであるアクリル系コア/シェル型のエラストマーが、耐衝撃性、耐熱老化性、耐光性の点から好ましい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマー中のアクリル及び/又はブタジエン成分の含有量は、50~95質量%であるのが好ましく、中でも60質量%以上或いは90質量%以下、その中でも70質量%以上或いは85質量%以下であるのがさらに好ましい。アクリル及び/又はブタジエン成分の含有量が50質量%以上であれば、耐衝撃性を維持することができ、90質量%以下であれば、難燃性や耐候性を良好に維持することができるから、好ましい。
エラストマーの平均粒子径は、3μm以下であることが好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、800nm以下が特に好ましい。また、下限は通常50nm以上であり、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上、さらに好ましくは200nm以上、特に好ましくは300nm以上、最も好ましくは400nm以上、特に500nm以上である。このような粒子径のエラストマーを使用することにより、面衝撃性等の耐衝撃性、耐湿熱性、離型性等の成形性が良好となる傾向にあり好ましい。
なお、エラストマーの平均粒子径は、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)等により、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体断面のモルフォロジーを観察することで測定できる。
具体的には、SEM、STEM、TEM分析装置を用い、成形体断面のコア部(深さ20μm未満の表層部を除く部分で、断面の中心部、樹脂組成物流動方向に平行な断面。)を、20kVの加速電圧下で、倍率3,000~100,000倍の倍率により観察される。
エラストマーのガラス転移温度は、-30℃以下であることが好ましく、-35℃以下であることがより好ましく、-40℃以下であることがさらに好ましく、-50℃以下であることが特に好ましい。このようなガラス転移温度を有するエラストマー原料を使用することにより、成形体の表層部において、エラストマーの配向によりエラストマーの扁平度(後述のエラストマーの長径と短径の比)が向上しやすく、耐衝撃特性が大幅に良好となる傾向にあり好ましい。
なお、エラストマーのガラス転移温度は、動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)のピーク温度を求めることにより測定することができる。具体的には、200℃で加熱した熱プレス機を用いて、エラストマー原料を、0.7mm厚×10cm×10cmの型枠にて3分間プレス成形し、水冷後に0.7mm厚×5.5mm×25mmの測定用試験片を切り出し、50~-100℃の温度範囲で、昇温速度3℃/min、周波数110Hzの条件で動的粘弾性測定を行い、得られるtanδのピーク温度を求め、ガラス転移温度とする。
好ましいアクリル系コア/シェル型エラストマーは、例えば、種(seed)を重合し、コア成分単量体を2~4回に分けて重合してコアゴム粒子を成長させた後、シェル成分単量体を投入してシェルでコア表面を囲うことによって製造される、粒径が400~900nmの大粒径エラストマーである。
このために前記大粒径エラストマーは、それらの各々のコアが、i)アルキル基の炭素数が2~8であるアクリル酸エステル95~99.999質量部と、ii)架橋剤0.001~5.0質量部とを含むことが好ましい。
前記i)のアクリル酸エステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択される1種以上の単量体、及びこれら単量体のホモ重合体または共重合体を含むことが好ましく、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、又はこれらの混合物を含むアクリル酸エステルであることがさらに好ましい。
また、前記ii)の架橋剤は、例えば1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及びジビニルベンゼンからなる群より選択される1種以上の単量体、及びこれら単量体のホモ重合体または共重合体を用いることが好ましい。中でも、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート又はこれらの混合物を含むことがより好ましい。
前記架橋剤は、本発明の各々のエラストマーで全単量体に対して0.001~5質量部を用いることが好ましい。
架橋剤の含有量は、全単量体に対して0.001質量部以上であれば、加工中のハンドリング性を良好に維持することができ、5質量部以下であれば、エラストマーのコアが脆性を示すことを抑制し、衝撃補強効果を維持することができる。
また、前記大粒径エラストマーは、シェルが、i)アルキル基の炭素数が1~4であるメタクリル酸エステル80~100質量部を含み、ii)シェル成分のガラス転移温度を調整するために、さらにエチルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレートを10質量部以下の割合で添加することができ、iii)マトリックスとシェルとの相溶性を増加させるために、さらにアクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなニトリル化合物を10質量部以下の割合で添加することもできる。
また、好ましいアクリル系コア/シェル型エラストマー(大粒径エラストマー)のコアは、全単量体に対して70~95質量%のゴム成分単量体を含むことが好ましい。70質量%以上であれば、ゴム含有量が小さくて耐衝撃補強性が低下するのを抑えることができ、95質量%以下であれば、シェル成分がコアを完全に囲うことができるから、マトリックス中のゴムの分散を良好に維持することができ、耐衝撃性を良好に維持することができる。
上記エラストマーの含有量は、ポリエステル樹脂組成物(B)100質量部に対し、5~20質量部であることが好ましい。エラストマーの含有量が5質量部以上であれば、耐衝撃性の改良効果を得ることができ、20質量部以下であれば、耐熱老化性や剛性、さらには流動性、難燃性を良好に維持することができる。エラストマーのより好ましい含有量は、7質量部以上或いは16質量部以下であり、さらには13質量部以下である。
(その他の成分)
ポリエステル樹脂組成物(B)は、上記した以外の他の添加剤あるいは他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を挙げることができる。
上記の他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。ポリエステル樹脂組成物(B)における、その他の熱可塑性樹脂の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
<樹脂部材(Y)の厚み>
樹脂部材(Y)の厚みは、流動性の観点から、1000μm以上であるのが好ましく、中でも1100μm以上、その中でも1200μm以上であるのがさらに好ましい。他方、成形性の観点から、15000μm以下であるのが好ましく、中でも14000μm以下、その中でも13000μm以下であるのがさらに好ましい。
樹脂部材(Y)とポリエステル樹脂層(A)の厚み比(樹脂部材(Y)/ポリエステル樹脂層(A))は、樹脂部材(Y)の強度の観点から、10以上であるのが好ましく、中でも12以上、その中でも15以上であるのがさらに好ましい。他方、接合強度の観点から、500以下であるのが好ましく、中でも400以下、その中でも300以下であるのがさらに好ましい。
<<本樹脂金属複合体の製造方法>>
次に本樹脂金属複合体の製造方法について説明する。
本樹脂金属複合体は、金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)との接合方法は、限定されるものではない。例えばインサート成形、レーザー溶着、熱板溶着、超音波溶着、又は振動溶着により行うことができる。特に、本発明においては、工程が簡略化でき、また強度が高まるため、インサート成形により接合するのが好ましい。
<インサート成形>
上記のようにインサート成形する場合には、金属基体上にポリエステル樹脂層(A)を最表層として有する金属積層体(X)を成形用金型内に予め装着しておき、ポリエステル樹脂組成物(B)を当該成形用金型内に充填すればよい。
このようにインサート成形すれば、樹脂部材(Y)の成形と同時に、強固な接合・溶着が困難であった金属製部材としての金属積層体(X)と、樹脂製部材としての樹脂部材(Y)とを強固かつ安定して接合することができる。
ポリエスル樹脂組成物(B)の調製方法は、常法に従って樹脂組成物を調製すればよい。通常は、各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にして混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また、各成分を予め混合することなく、或は、その一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
ポリエステル樹脂組成物(B)の溶融温度、言い換えれば溶融混練に際しての加熱温度(射出成形の場合は、射出成形機のシリンダー温度)は、通常220~300℃の範囲から適宜選択するのが好ましい。この温度は、240℃以上であるのが好ましく、その中でも245℃以上、その中でも250℃以上であるのがさらに好ましい。また、樹脂温度は、300℃以下であるのが好ましく、中でも290℃以下、その中でも280℃以下であるのがさらに好ましい。この温度が高すぎると、分解ガスが発生しやすく、それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。
ポリエステル樹脂組成物(B)を金型内に充填するための成形法としては、例えば射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等を挙げることができる。中でも射出成形法が一般的である。
他方、金型内に装着する金属積層体(X)の大きさ及び形状は、本樹脂金属複合体の大きさ、構造等によって、適宜決めればよい。
本樹脂金属複合体の大きさ、形状、厚み等は特に限定されるものではなく、板状(円板、多角形など)、柱状、箱形状、椀形状、トレイ状などいずれでもよい。これらの形状は、金属積層体(X)を成形用金型内に予め装着する前に、プレス成型等より賦形した後に装着してもよく、複合化後に賦形してもよい。または、プレス機能を備えた複合成形機により射出成形と同時もしくは、直前に金型内で賦形してもよい。大型複合体、複雑な複合体の場合は、複合体の全ての部分の厚みが均一である必要はなく、また、複合体に補強リブが設けられていてもよい。
なお、金属積層体(X)は、本樹脂金属複合体の全体にわたる必要はなく、その一部分であってもよい。
インサート成形する際、溶融したポリエスル樹脂組成物(B)の温度と、金属積層体(X)の温度を組み合わせにより最適にすることが、接合強度を向上させる上で有用である。
その方法としては、金型内に装着する金属積層体(X)を予め加熱しておく方法や金型を加熱する方法を挙げることができる。
金型内に装着する金属積層体(X)を予め加熱しておく方法としては、金属積層体(X)をインサート成形する前に誘導加熱する方法、IHヒーター、ホットプレート、加熱炉等で加熱する方法、金属積層体(X)を金型にインサート後、ポリエステル樹脂組成物(B)との接合領域付近をハロゲンランプ、ドライヤー等で外部から加熱する方法、金属積層体(X)を金型にインサート後、金型内部においてカートリッジヒーター等で加熱する方法等を挙げることができる。中でも、ポリエステル樹脂組成物(B)温度が高すぎる場合には、樹脂が分解し、複合体として良好なものが得られない可能性があるため、ポリエステル樹脂組成物(B)との接合領域のみを局所的に加熱することが最も有用である。なお、「局所的に加熱」とは、加熱手段によっては、接合領域を含んだ周辺まで加熱されるが、金属積層体(X)の接合領域より遠い部分は加熱しないことを含む。
他方、金型を加熱する場合、金型の温度が低すぎると、インサートした金属積層体(X)が十分に加熱されないため、十分な気密性と接合強度が出ない可能性がある。他方、当該温度が高すぎる場合には、樹脂自体に対する影響により、複合体として良好なものが得られない可能性がある。
よって、かかる観点から、金型を加熱して金属積層体(X)を加熱する際の加熱温度は、60℃以上であるのが好ましく、中でも80℃以上、その中でも100℃以上、その中でも120℃以上、その中でも130℃以上であるのがさらに好ましい。また、金型の加熱温度は、150℃以下であるのが好ましく、中でも140℃以下であるのがさらに好ましい。
インサート成形を行う場合、射出率が低すぎると、射出する樹脂が金属積層体(X)表面の樹脂と相溶し辛く、十分な気密性と接合強度が出ない可能性がある。他方、当該の射出率が高すぎる場合には、樹脂自体に対する影響により、複合体として良好なものが得られない可能性がある。
よって、かかる観点から、樹脂金属複合体を作成する際の樹脂部材(Y)用の樹脂射出率は、6.15cm3/秒以上であるのが好ましく、その中でも10cm3/秒以上、その中でも15cm3/秒以上、その中でも16cm3/秒以上であるのがさらに好ましい。また、射出率は、61.5cm3/秒以下であるのが好ましく、中でも50cm3/秒以下、その中でも40cm3/秒以下であるのがさらに好ましい。
インサート成形を行う場合、保圧が低すぎると、射出する樹脂が金属積層体(X)表面の樹脂と相溶し辛く、十分な気密性と接合強度が出ない可能性がある。
よって、かかる観点から、樹脂金属複合体を作成する際の保圧は、射出ピーク圧の50%以上であることが好ましく、樹脂の組成に適した保圧を選択することが好ましい。
インサート成形を行う場合、保圧時間が短すぎると、圧力が樹脂に伝わり辛く、十分な気密性と接合強度が出ない可能性がある。他方、当該保圧時間が長すぎる場合には、樹脂自体に対する影響により、複合体として良好なものが得られない可能性がある。
よって、かかる観点から、樹脂金属複合体を作成する際の保圧時間は、3秒以上であることが好ましく、中でも4秒以上であることが好ましい。また、保圧時間は30秒以下であることが好ましく、中でも25秒以下、その中でも20秒以下であるのが更に好ましい。
インサート成形を行う場合、冷却時間が短すぎると、射出する樹脂が十分に固化せず、充分な気密性と接合強度が出ない可能性がある。他方、当該冷却時間が長すぎる場合には、樹脂自体に対する影響により、複合体として良好なものが得られない可能性がある。
よって、かかる観点から、樹脂金属複合体を作成する際の冷却時間は、10秒以上であるのが好ましく、その中でも12秒以上、その中でも15秒以上であるのがさらに好ましい。また、冷却時間は、100秒以下であるのが好ましく、中でも90秒以下、その中でも80秒以下であるのがさらに好ましい。
<<本樹脂金属複合体の形態>>
本樹脂金属複合体は任意の形態に形成することが可能である。
本樹脂金属複合体の形態の一例として、図1及び図2に示すように、車載部品としての形状を備えた樹脂部材(Y)は、板状を呈する金属積層体(X)の周縁端部を囲むように、周壁部Y1を設けてなる形態を備えている。
金属積層体(X)は、板状を呈する金属基体(M)の両面にポリエステル樹脂層(A)(A)を備えており、図2に示すように、該金属積層体(X)の周縁端部において、樹脂部材(Y)が、当該金属積層体(X)の表面側の端縁部から端面を介して裏面側の端縁部を覆い、且つ、金属積層体(X)の表面側の端縁部及び裏面側の端縁部において、金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合して接合部(J)(J)を形成している。
なお、図1及び図2に示した形態はあくまでも例示である。金属積層体(X)の形状及び樹脂部材(Y)の形状は任意に変更可能である。また、様々な形態の金属積層体(X)と、様々な形態の樹脂部材(Y)とを組み合わせて、本樹脂金属複合体を形成することができる。
また、図3(a)~(e)に例示するように、金属積層体(X)を構成するポリエステル樹脂層(A)の設け方、並びに、金属積層体(X)と樹脂部材(Y)の接合状態などについても、任意に変更可能である。
例えば図3(a)に示すように、金属積層体(X)として、金属基体(M)の片面にポリエステル樹脂層(A)を形成してなるものを使用し、該金属積層体(X)の周縁端部において、樹脂部材(Y)が、当該金属積層体(X)の表面側の端縁部から端面を介して裏面側の端縁部を覆い、且つ、金属積層体(X)の端縁部の片面側のみにおいて、金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合して接合部(J)を形成するようにしてもよい。
図3(b)に示すように、金属積層体(X)として、金属基体(M)の片面にポリエステル樹脂層(A)を形成してなるものを使用し、該金属積層体(X)の周縁端部において、樹脂部材(Y)が、当該金属積層体(X)の表面側の端縁部から端面までを覆い、且つ、金属積層体(X)の端縁部の片面側のみにおいて、金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合して接合部(J)を形成するようにしてもよい。
図3(c)に示すように、金属積層体(X)として、金属基体(M)の片面にポリエステル樹脂層(A)を形成してなるものを使用し、該金属積層体(X)の片側表面の端縁部と、樹脂部材(Y)の片側表面の端縁部とが適宜幅を有するように重なり、この部分で樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合して接合部(J)を形成するようにしてもよい。
図3(d)に示すように、金属積層体(X)として、金属基体(M)の両面にポリエステル樹脂層(A)(A)を形成してなるものを使用し、該金属積層体(X)の周縁端部において、樹脂部材(Y)が、当該金属積層体(X)の表面側の端縁部から端面までを覆い、且つ、金属積層体(X)の端縁部の片面側のみにおいて、金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合して接合部(J)を形成するようにしてもよい。
図3(e)に示すように、金属積層体(X)として、金属基体(M)の両面にポリエステル樹脂層(A)(A)を形成してなるものを使用し、該金属積層体(X)の片側表面の端縁部と、樹脂部材(Y)の片側表面の端縁部とが適宜幅を有するように重なり、この部分で樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合して接合部(J)を形成するようにしてもよい。
樹脂部材(Y)で覆われずに露出する金属積層体(X)の面積(S2)に対する、金属積層体(X)と樹脂部材(Y)との接合面積(S1)の比率(S1/S2)は、大きい方が密着が安定し、気密性を高めることができるので好ましい。かかる観点から、当該比率(S1/S2)は0.01以上であるのが好ましく、中でも0.1以上、その中でも0.5以上であるのがさらに好ましい。
また、金属の露出部分からの放熱性を確保するためには、当該比率(S1/S2)はある程度小さい方が好ましい。かかる観点から、当該比率(S1/S2)は8以下であるのが好ましく、中でも4以下、その中でも2以下、その中でも1以下であるのがさらに好ましい。
S1/S2の比率をこのようにして接合することにより、より接合強度や、気密性を高め、また筐体の部材として使用した場合にも筐体中にこもる熱を十分に逃がして、放熱性を確保することができる。
なお、ポリエステル樹脂層(A)を両面に設ける場合、ポリエステル樹脂層(A)と樹脂部材(Y)との接合面積すなわち接合部(J)(J)の面積は、両面で同じである必要はない。
<<本樹脂金属複合体>>
本樹脂金属複合体は、金属基体の最表層としてポリエステル樹脂層(A)を形成しておき、このポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とを接合する構成とすることにより、優れた気密性を有することができる。具体的には、121℃、100%、2atm下で50時間処理するプレッシャークッカー試験後に0.25MPa以上、好ましくは0.35MPa以上、さらに好ましくは0.5MPa以上、最も好ましくは0.75MPa以上の気密性を実現することができる。
本樹脂金属複合体に関して、この気密性を達成する手段としては、限定されるものではない。例えばポリエステル樹脂層(A)のポリエステル(a)と、ポリエステル樹脂組成物(B)のポリエステル(b)との間でより多くのエステル交換反応を生じさせる方法(具体的には、各ポリエステルの濃度を高くする等)、反応性化合物(c1)及び/又は(c2)をポリエステル樹脂層(A)やポリエステル樹脂組成物(B)に配合する方法、金属積層体(X)の両面にポリエステル樹脂層(A)を設ける方法、金属積層体(X)と樹脂部材(Y)との接合面積と、樹脂部材(Y)で覆われずに露出する金属積層体(X)の面積との割合を適度に保つ方法等を挙げることができる。
このような方法により、金属積層体(X)と樹脂部材(Y)との接合状態を十分に安定したものとして、樹脂金属複合体の気密性を優れたものとすることができる。
<本樹脂金属複合体の気密性>
本発明において気密性とは、実施例記載の形状の気密性試験用試験片を作成し、樹脂金属複合体を製造するための接合条件を用いて、金属積層体(X)と樹脂部材(Y)を接合し、得られた複合体に対して、実施例記載のプレッシャークッカー試験を実施した前後に気密性評価用圧力容器に装着し、測定して得た値を意味する。
気密性の値を得るための具体的な条件は、ISO19095-3:2015の5.6気密性試験に準拠した。但し、実施例記載の試験用試験片(樹脂金属複合体)の形状はISO19095-2のAnnexAのタイプD.2.2を用い、試験方法はISO19095-3のAnnexBのベル・ジャー法を選択し、ヘリウムの代わりに水を使用して、ポンプで試験容器(ベル・ジャー)内に水を送水して内部圧力を昇圧して、接合部から圧力が抜けた時点の圧力を測定した。
本発明の気密性に該当するか否かを検証する際は、実製品の樹脂金属複合体を形成するための金属積層体(X)と樹脂部材(Y)それぞれと同じ材料を用いて、上記試験用試験片を形成する。金属積層体(X)と樹脂部材(Y)を接合する条件としては、種々のパラメーターが存在するため、その主要な条件は、実製品の樹脂金属複合体を接合する条件に揃える。例えば、インサート成形法では、気密性に大きく影響する条件は、金型温度、樹脂温度、射出率、保圧、保圧時間、冷却時間等が挙げられるため、少なくとも、特に主要な条件である金型温度、樹脂温度及び射出率を、実製品製造時と同じ条件として、上記試験用試験片を成形する。
尚、もし条件を実製品と同一に出来ない場合には、前記した≪本樹脂金属複合体の製造方法≫の項に記載した条件を適用するものとする。
<<本樹脂金属複合体の用途>>
本樹脂金属複合体は、金属製部材と樹脂製部材とを強固かつ安定して接合させることができ、優れた気密性を得ることができ、しかも両者の性質、例えば放熱性、耐熱性、絶縁性、帯電防止性、を兼ね備えることができるから、各種用途に好適に使用することができる。中でも、気密性及び放熱性を特に要求される自動車用途に好適に使用することができる。
具体的には、本樹脂金属複合体を用いて容器を形成すれば、このような容器は、気密性、放熱性、耐熱性、絶縁性、帯電防止性、などに優れた容器とすることができるから、一般家電製品を始め、OA機器に組み込まれる電気電子部品(ハウジング、ケース、カバー等)、機械機構部品、筐体用部材、車両用部材、電装部品例えば車輛用電装部品(各種コントロールユニット、イグニッションコイル部品、センサー部品、モーター部品、パワーモジュール、昇圧型DC/DCコンバータ、降圧型DC/DCコンバータ、コンデンサー、インシュレーター、モーター端子台、バッテリー、電動コンプレッサー、バッテリー電流センサー及びジャンクションブロック等)の筐体の一部又は全部を構成する部材など、機能として気密性を必要とする用途に、好適に用いることができる。
図4に、車輌用電装部品の筐体の一部として本樹脂金属複合体を適用した例を示した。
本樹脂金属複合体が、製品の一部として使われる場合、即ち、他の部材(Z)(樹脂成形体やアルミダイキャスト、金属など)と組み合わせて使われる場合には、他の部材(Z)と本樹脂金属複合体の接合方法、例えば樹脂部材(Y)と当該他の部材(Z)との接合方法は任意の方法を用いることができる。例えば、レーザー溶着、超音波溶着、振動溶着、熱溶着、ボルトやタッピングネジを用いた機械的接合、接着剤等を挙げることができる。
<<語句の説明>>
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(ポリエステル樹脂層(A)を形成するためのフィルムα1の作製)
ポリエステル(a)としての、IV値が1.00のポリブチレンテレフタレート90質量部、及び、IV値が0.82のCHDM変性ポリエチレンテレフタレート10質量部と、ポリエステル末端反応性化合物(c1)としての脂環式カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製、商品名;カルボジライト)1質量部と、を混合し、2軸押出機を使用し、バレル及びダイス温度240℃にてTダイ製膜により100μmのフィルムα1を作製した。なお、ポリエステル(a)全体としてのSP値は12.0であった。
(ポリエステル樹脂層(A)を形成するためのフィルムα2の作製)
ポリエステル(a)として、IV値が1.20のポリブチレンテレフタレート90質量部、及び、IV値が0.82のCHDM変性ポリエチレンテレフタレート10質量部を混合し、2軸押出機を使用し、バレル及びダイス温度240℃にてTダイ製膜により100μmのフィルムα2を作製した。なお、ポリエステル(a)全体としてのSP値は12.0であった。
(ポリエステル樹脂層(A)を形成するためのフィルムα3の作製)
ポリエステル(a)としての、IV値が1.00のポリブチレンテレフタレート90質量部、及び、IV値が0.82のCHDM変性ポリエチレンテレフタレート10質量部と、ポリエステル末端反応性化合物(c1)としての脂環式カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製、商品名;カルボジライト)1質量部と、カーボンブラック0.8質量部と、を混合し、2軸押出機を使用し、バレル及びダイス温度240℃にてTダイ製膜により100μmのフィルムα3を作製した。なお、ポリエステル(a)全体としてのSP値は12.0であった。
(ポリエステル樹脂層(A)を形成するためのフィルムα4の作製)
ポリエステル(a)としての、IV値が1.00のポリブチレンテレフタレート90質量部、及び、IV値が0.82のCHDM変性ポリエチレンテレフタレート10質量部と、ポリエステル末端反応性化合物(c1)としての脂環式カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製、商品名;カルボジライト)1質量部と、カーボンブラック5.3質量部と、を混合し、2軸押出機を使用し、バレル及びダイス温度240℃にてTダイ製膜により100μmのフィルムα4を作製した。なお、ポリエステル(a)全体としてのSP値は12.0であった。
(金属積層体(X1)(X2)(X3)(X4)の作製)
リン酸クロメート処理を施した厚さが1mmのアルミニウム板に、ポリエステル系接着剤を塗布し、接着剤層に上記フィルムα1、α2、α3又はα4を重ねて、一対の加圧ロールによって加圧した後、冷却して、金属基体の片面側にポリエステル樹脂層(A)を備えた金属積層体(X1)(X2)(X3)又は(X4)を作製した。
なお、上記フィルムα1を積層したものを金属積層体(X1)、上記フィルムα2を積層したものを金属積層体(X2)、上記フィルムα3を積層したものを金属積層体(X3)、上記フィルムα4を積層したものを金属積層体(X4)と称する。
上記金属積層体(X1)(X2)(X3)又は(X4)を、図5に示すように、直径55mmの円盤状に切り取り、中央に直径20mmの穴をあけた。
(ポリエステル樹脂組成物β1の調製:ポリエステル樹脂組成物(B))
ポリエステル(b)としての「ノバデュラン(登録商標)5008」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリブチレンテレフタレート、固有粘度0.85、末端カルボキシル基量12eq/t、SP値12.1)を100質量部、ポリエステル末端反応性化合物(c2)としてのビスフェノールA型エポキシ化合物(ADEKA社製、商品名:EP-17、エポキシ当量180)を0.6質量部、安定剤としての「イルガノックス1010」(BASF社製)を0.3質量部、着色剤としてのカーボンブラック(三菱ケミカル社製#650B、平均粒子径22nm、窒素吸着比表面積124m2/g、DBP吸収量114cm3/100g、pH7.5)を0.38質量部、強化充填材としてのガラス繊維「T-127」(日本電気硝子社製、平均繊維径:13.5μm)を43質量部、を混合し、この混合物を30mmのベントタイプ2軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機TEX30α)を使用して、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給し、バレル温度270℃にて溶融混練してストランド状に押し出した後、ストランドカッターによりペレット化し、ポリエステル樹脂組成物β1のペレットを得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物β1のペレットを、120℃で5時間乾燥した後、インサート成形に使用した。
(ポリエステル樹脂組成物β2の調製:ポリエステル樹脂組成物(B))
ポリエステル(b)としての「ノバデュラン(登録商標)5008」を100質量部、安定剤としての「イルガノックス1010」を0.3質量部、着色剤としてのカーボンブラック(三菱ケミカル社製#650B)を0.38質量部、強化充填材としての強化充填材としてのガラス繊維「T-187」(日本電気硝子社製、平均繊維径:13.5μm)を43質量部混合し、この混合物を30mmのベントタイプ2軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機TEX30α)を使用して、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給し、バレル温度270℃にて溶融混練してストランド状に押し出した後、ストランドカッターによりペレット化し、ポリエステル樹脂組成物β2のペレットを得た。
<実施例1~6>
上記のように作製した金属積層体(X1)、(X2)、(X3)又は(X4)を金型キャビティ内に装着し、上記で得られたポリエステル樹脂組成物β1又はβ2のペレットを以下に示す条件で射出成形して、図6に示すように、直径24mm、厚さ2mmの円盤状を呈し、且つ、金属積層体(X1)、(X2)、(X3)又は(X4)上に一部重なり、当該金属積層体(X1)、(X2)、(X3)又は(X4)の中央の穴を覆うようにポリエステル樹脂組成物(B)を配し、金属積層体(X1)、(X2)、(X3)又は(X4)とポリエステル樹脂組成物(B)からなる樹脂部材(Y)とが接合した樹脂金属複合体(評価サンプル)を得た。この際、金属積層体(X1)、(X2)、(X3)又は(X4)と樹脂部材(Y)との接合幅は2mm、接合面積は0.00013816m2であった。
射出成形条件:射出成形機としてファナック社製「ファナックα-100」を用い、シリンダー温度270℃、金型温度80℃又は130℃、射出率19cm3/秒、充填時間0.44秒、保圧100MPa、保圧時間6秒、冷却時間20秒の条件で行った。
<比較例1>
金属積層体(X1)の代わりに、アルミニウム板の表面を化学エッチングしただけの金属基体を用いた以外、実施例1と同様に、樹脂金属複合体(評価サンプル)を作製した。
<比較例2>
金属積層体(X1)の代わりに金属積層体(X2)を用いた以外、実施例2と同様に、樹脂金属複合体(評価サンプル)を作製した。
<評価・測定方法>
実施例・比較例で得られた樹脂金属複合体(評価サンプル)について、次の方法で測定及び評価を行った。
(気密性試験)
実施例・比較例で得られた樹脂金属複合体(評価サンプル)を用い、気密性試験を行った。
図7に示す評価用圧力容器を使用して試験を行った。評価用圧力装置は以下の形状にて作成した。直径90mmのSUS304製金属を使用し、中心部に直径30mm、深さ20mmの穴をあけ水で満たした。更に周辺部に直径56mm、深さ0.5mmの穴をあけ、バイトン製のOリングを介して、実施例・比較例で得られた円盤状の樹脂金属複合体(評価サンプル)を装着し、SUS304製で直径90mm、厚み8mmの抑え板を用いてボルトで固定し、25℃の水中に浸漬させた。次に、溶着体内部にテストポンプ(アサダ株式会社製TP50N)を使用して16mL/5秒で送水を開始し、溶着体内部圧力を徐々に昇圧し、接合部から圧力が抜けた時点(圧力低下した時点)の水の圧力を、圧力センサ(キーエンス株式会社製GP-M025)を使用して測定した。得られた圧力は、耐久性評価を実施する前の気密性として、表1の「0hr」の欄に記載した。
(耐久性評価)
(1)加水分解処理
実施例・比較例で得られた円盤状の樹脂金属複合体(評価サンプル)を、プレッシャークッカー試験機で121℃、100%RH、2気圧の条件で50hr及び100hr暴露し、暴露後のサンプルで上記と同様の気密性試験を実施した。接合部から圧力が抜けた時点の水の最大圧力を測定した。50hr後、100hr後それぞれの水の最大圧力を、表1に記載した。
(2)耐ヒートショック性
実施例・比較例で得られた円盤状の樹脂金属複合体(評価サンプル)について、冷熱衝撃試験機(エスペック株式会社製TSA-103ES-W)を用いて150℃にて1時間加熱後、-40℃に降温して1時間冷却後、さらに150℃に昇温する過程を1サイクルとする耐ヒートショック試験を60サイクル及び100サイクル実施し、それぞれの暴露後のサンプルで気密性(接合部から圧力が抜けた時点の水の最大圧力)を測定した。結果を表1に記載した。
(3)輻射率
実施例1、5及び6で得られた円盤状の樹脂金属複合体(評価サンプル)について、FTIR IRTracer-100(島津製作所製)を用いて、以下の測定条件で、試料及び黒体の分光放射強度を測定し、試料の分光放射強度を黒体の分光放射強度で除して分光放射率を求め、輻射率を算出した。
輻射率の測定条件
分解能:16cm-1
積算回数:100回
測定温度:125℃
測定範囲:2.50~24.92μm
結果を表2に記載した。
Figure 0007476504000001
Figure 0007476504000002
気密性の評価に於いて、実施例1~4はいずれも、比較例よりもはるかに高い気密性を示した。このように、接合強度が同等程度にもかかわらず、気密性が抜群に優れる結果が得られた理由は、比較例1がポリエステル樹脂組成物(B)と金属積層体(X)との接合界面が単なるアンカー効果による接合であることに対し、実施例1~4では、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)と、金属積層体(X)表面のポリエステル樹脂層(A)とが熱融着しているため、気密性に優れていると考えられる。
さらに、実施例が耐久性に優れるのは、金属と樹脂の界面の熱融着層が緩衝層となり、温度変化による金属と樹脂の熱膨張差の影響が小さいためと考えられ、比較例においては、単に金属と樹脂が直接接合しているために、熱膨張差の影響が大きいものと考えられる。
中でも実施例1は、実施例2~4よりも高い破壊最大水圧を示した。これは、ポリエステル樹脂層(A)中の化合物(c1)と、ポリエステル樹脂組成物(B)中のポリエステル(b)の末端が、熱融着時に化学結合反応し、また、ポリエステル樹脂組成物(B)中の化合物(c2)と、ポリエステル樹脂層(A)中のポリエステル(a)の末端が、熱融着時に化学結合反応したため、より高い気密性が得られたと考えられる。
表2より、実施例1と実施例5及び6とを比較すると、ポリエステル樹脂層(A)が黒色着色剤(カーボンブラック)を含有することにより、耐久処理後の気密性がさらに高まり、輻射率も高まることを確認することができた。
(Y)・・樹脂部材
Y1・・周壁部
(X)・・金属積層体
(A)・・ポリエステル樹脂層
(B)・・ポリエステル樹脂組成物(B)
(J)・・接合部
(M)・・金属基体
(Z)・・他の部材

Claims (16)

  1. 金属基体の片面側又は両面側に、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂層(A)を最表層として具備する金属積層体(X)と、
    ポリエステル(b)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂組成物(B)からなる樹脂部材(Y)とを備え、
    金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合してなる構成を備えた樹脂金属複合体であって、
    前記ポリエステル樹脂層(A)は着色剤を含み、
    樹脂金属複合体が、121℃、100%、2atm下で50時間処理するプレッシャークッカー試験後に0.25MPa以上の気密性を有し、
    樹脂部材(Y)とポリエステル樹脂層(A)の厚み比(樹脂部材(Y)/ポリエステル樹脂層(A))が10~500であることを特徴とする樹脂金属複合体。
  2. 金属基体の片面側又は両面側に、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂層(A)を最表層として具備する金属積層体(X)と、
    ポリエステル(b)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂組成物(B)からなる樹脂部材(Y)とを備え、
    金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合してなる構成を備えた樹脂金属複合体であって、
    ポリエステル樹脂層(A)及びポリエステル樹脂組成物(B)の少なくとも一方が、ポリエステルの末端と反応可能な反応性化合物(「ポリエステル末端反応性化合物」と称する)を含み、
    前記ポリエステル樹脂層(A)は着色剤を含み
    樹脂部材(Y)とポリエステル樹脂層(A)の厚み比(樹脂部材(Y)/ポリエステル樹脂層(A))が10~500であることを特徴とする樹脂金属複合体。
  3. ポリエステル樹脂層(A)及びポリエステル樹脂組成物(B)が、ポリエステル末端反応性化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂金属複合体。
  4. 前記ポリエステル末端反応性化合物が、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基(環)を有する化合物、オキサジン基(環)を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、及びアミド基を有する化合物からなる群から選ばれた1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする請求項2又は3に記載の樹脂金属複合体。
  5. ポリエステル樹脂層(A)は、ポリエステル(a)として、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の樹脂金属複合体。
  6. ポリエステル樹脂層(A)の厚みが、3μm~1000μmであることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の樹脂金属複合体。
  7. 樹脂部材(Y)の厚みが、1000μm~15000μmであることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の樹脂金属複合体。
  8. 金属積層体(X)は、板状の金属基体の両面側に、ポリエステル(a)を主成分樹脂として含むポリエステル樹脂層(A)を最表層として具備しており、
    樹脂部材(Y)は、金属積層体(X)の表面側の周縁端部から側端面を介して裏面側の周縁端部を覆い、且つ、金属積層体(X)の表面側の周縁端部及び裏面側の周縁端部において、金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と樹脂部材(Y)のポリエステル樹脂組成物(B)とが接合してなる構成を備えた請求項1~の何れかに記載の樹脂金属複合体。
  9. 前記着色剤がカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項1~の何れかに記載の樹脂金属複合体。
  10. 着色剤の含有量が、ポリエステル樹脂層(A)100質量部に対し0.05~8質量部である請求項1~の何れかに記載の樹脂金属複合体。
  11. 樹脂部材(Y)がさらに着色剤を含有することを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の樹脂金属複合体。
  12. 請求項1~11の何れかに記載の樹脂金属複合体の製造方法であって、
    ポリエステル樹脂層(A)を最表層として有する金属積層体(X)を成形用金型に予め装着しておき、次いでポリエステル樹脂組成物(B)を該金型内に充填することにより金属積層体(X)のポリエステル樹脂層(A)と、ポリエステル樹脂組成物(B)とを接合することを特徴とする、樹脂金属複合体の製造方法。
  13. 請求項1~11の何れかに記載の樹脂金属複合体からなる、車輛用部材。
  14. 請求項1~11の何れかに記載の樹脂金属複合体からなる、電装部品。
  15. 請求項1~11の何れかに記載の樹脂金属複合体からなる、筐体用部材。
  16. 請求項1~11の何れかに記載の樹脂金属複合体からなる、車輛用電装部品の筐体用部材。
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