以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[第1の実施形態]
先ず、図1を参照しながら、本発明の静電スクリーン印刷装置の好適な実施形態(第1の実施形態)について説明する。図1は、本発明の静電スクリーン印刷装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
図1に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置は、基本的に、基材ホルダ10と、所定形状のパターンPが形成された導電性スクリーン11と、粉体供給手段12と、電圧印加手段13と、導電性スクリーン11に超音波振動を付与するための超音波振動子14とを備えるものである。なお、図1に示す実施形態において、基材ホルダ10上に基材20が配置(載置)されて保持されている。また、図1では、原料である粉体15が粉体供給手段12に導入されている状態を模式的に示している。更に、図1中の矢印A1は粉体供給手段12から導電性スクリーン11上に供給される粉体の状態を概念的に示し、矢印A2は導電性スクリーン11のパターンPを介して導電性スクリーン11と基材20との間の空間に導入されて静電的に基材20上に印刷(塗布)される粉体の状態を概念的に示すものである。
このような基材ホルダ10は、基材20を配置することが可能なものであればよく、特に制限されず、固定式のものであっても、可動式のものであっても、あるいは、ロール状基材対応型のものであってもよく、静電印刷の際に基材20を配置することが可能なものであれば適宜利用できる。このような基材ホルダ10は、例えば、固定式の台座であってもよい。
また、図1に示す実施形態においては、基材ホルダ10が電圧印加手段13に接続されており、基材ホルダ10上に配置された基材20と導電性スクリーン11との間に電圧を印加することが可能な構成となっている。このように、基材ホルダ10上の基材20と導電性スクリーン11との間に電圧を印加するといった観点からは、基材ホルダ10は、基材ホルダ10上の基材20に導通することが可能なものとすることが好ましく、導電性の材料から形成されたものを好適に利用することができる(例えば、ステンレス鋼、鉄、アルミ、銅等によって製造されたものを利用してもよい)。
導電性スクリーン11は、パターンPが形成されたものであればよく、特に制限されず、公知の導電性スクリーン(いわゆるスクリーンメッシュであって導電性のもの)を適宜利用できる。このように、導電性スクリーン11としては、パターンPの部分がメッシュ材料により形成されたスクリーンメッシュ(スクリーン印刷用のメッシュ)を適宜用いることができる。このように、メッシュ材料によりパターンPが形成された導電性スクリーン11(いわゆるメッシュスクリーン)を用いることで、パターンPの部分を通過させた粉体を基材20上に塗布することが可能となり、パターンPの形状に由来した所望のパターンで基材上に粉体を印刷(塗布)することが可能となる。
このようなメッシュ材料としては、導電性のものであればよく、特に制限されず、公知のものを適宜利用でき、例えば、公知の金属(例えば鉄(Fe)を主成分とするステンレス鋼、亜鉛メッキした鉄、真鍮、銅等)の線材からなるもの等を適宜利用できる。また、このようなパターンPの形状は特に制限されず、用途に応じて適宜その形状を設計できる。なお、このようなメッシュ材料により形成されたパターン部に粉体を通過させることで、該パターン部Pがふるいとして働くことから、十分に均一な粉体粒子を通過させることが可能となる。また、メッシュ部分を粉体が通過する際にメッシュと粉体が接触することにより、粉体15を帯電させることが可能である。
このようなメッシュ材料(ふるい)の目開きの大きさ等、その好適な条件は、印刷(塗布)する粉体(原料)15の粘弾性、付着力などの特性により最適大きさが変わるため、一概に言えるものではないが、かかるメッシュ材料としては、印刷(塗布)する粉体15の平均粒子径の3倍~10倍(より好ましくは3~5倍)の目開きのものを用いることが好ましい。このような目開きの大きさが前記下限未満では粉体がメッシュ間で目詰まりし、印刷面内の厚みのばらつきが生じ易くなってしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると超音波印加時(振動印加時)に、一度に多量の粉体粒子がふるい落とされ、印刷膜の膜厚制御が困難となる傾向にある。なお、目開きの範囲が前記範囲内にある場合には、静電界への粉体のより均一な供給(落下)と、メッシュ部での粉体の帯電をより効率よく行うことができる。すなわち、メッシュ材料の目開きの範囲を前記範囲内となるように設計(選択)することで、メッシュ部分(パターン部分)が、粉体のより均一な供給と、粉体の帯電といった2つの役割を、より効率よく果たすことが可能なものとなる。
基材ホルダ10と、パターンP(好ましくはメッシュ材料により形成されたパターンP:ふるい)を有する導電性スクリーン11との間の距離(なお、基材ホルダ10及び/又は導電性スクリーン11のパターン部位が平面上ではない場合、これらの最近接点間の距離とする)は、特に制限されるものではないが、1~10mm(より好ましくは1~5mm)とすることが好ましい。このような距離が前記下限未満では、空気中に放電して短絡し易くなるため、正常な静電界を形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、空気層(電極間の距離)が広がり、均一な静電界を形成することが困難となる傾向にある。
粉体供給手段12は、導電性スクリーン11のパターンP上に粉体を供給するために利用するものである。このような粉体供給手段12は、導電性スクリーン11のパターンP上に粉体を供給することが可能なものであればよく、その構造等は特に制限されず、公知の粉体の供給手段を適宜利用することができる。例えば、図1に示す実施形態においては、粉体供給手段12として好適に利用可能なホッパを備える装置の状態を模式的に示している。
電圧印加手段13としては特に制限されず、静電スクリーン印刷が可能となるような電圧を印加することが可能な公知の電源(例えば直流電源)を適宜利用できる。なお、このような電圧印加手段13は、基材ホルダ10と導電性スクリーン11とに接続されている。そして、電圧印加手段13として直流電源(DC電源)を利用する場合、基材ホルダ10側にプラス極を接続し、導電性スクリーン11側にマイナス極を接続することが好ましい。このように電圧印加手段13に対して、基材ホルダ10と導電性スクリーン11とを電気的に接続することで、基材ホルダ10及び導電性スクリーン11に直流高電圧を印加することが可能となり、これにより、基材ホルダ10上の基材20と導電性スクリーン11との間に静電界を形成せしめて、より効率よく静電スクリーン印刷を施すことが可能となる。なお、電圧印加手段13は、基材ホルダ10上の基材20と導電性スクリーン11との間の印加電圧(電位差)が0.5kV~5kV(より好ましくは1kV~3kV)となるように電圧を印加することが可能なものを用いることが好ましい。このような電圧が前記下限未満では、静電力が弱く、粉体粒子が十分に加速されず、粉体15を基材20上に固定化することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、空気中に放電して短絡し易くなるため、正常な静電界を形成することが困難となる傾向にある。
超音波振動子14は、導電性スクリーン11に超音波振動を付与するためのものであり、導電性スクリーン11に接続されている。このような超音波振動子としては特に制限されず、公知の超音波振動子(例えば、フェライト振動子等の電歪型の振動子や、BL振動子やPZT振動子等の磁歪型の振動子等)を適宜利用できる。また、このような超音波振動子は、周波数を導電性スクリーン11(ふるい本体)の共振周波数(例えば、ステンレス鋼製のメッシュ材料(ふるい)を利用する場合には、30000~38000Hz)の範囲内の周波数とした超音波を印加することが可能なものであることが好ましい。このような超音波の周波数が、導電性スクリーン11(ふるい本体)の共振周波数の範囲の下限未満となる場合、超音波を印加して導電性スクリーン11に超音波振動を付与しても、前記パターンP部分(メッシュ部分:ふるい部分)においてブリッジを形成した粉体がふるい落とされず、供給不足や、面内の厚みのばらつきが生じ易くなる傾向にあり、他方、導電性スクリーン11(ふるい本体)の共振周波数の範囲の上限を超えると、超音波を印加して導電性スクリーン11に超音波振動を付与した場合に、一度に多量の粉体が静電界に供給されて印刷膜の制御が困難となるだけではなく、エネルギーの散逸により導電性スクリーン11(ふるい本体)が加熱されてしまう傾向にある。
本発明においては、このような超音波振動子14により、超音波の印加時(振動付与時)にのみ、導電性スクリーン11のパターン部分から粉体を静電界に供給することが可能となるばかりか、連続使用時にも導電性スクリーン11のパターン部の目詰まりを防止することができ、繰り返し再現性よく粉体を静電界に供給すること(落下させること)が可能となる。
また、粉体供給手段12に導入する粉体15としては、特に制限されず、静電スクリーン印刷に利用される公知の原料(印刷用粉体)を適宜利用することができ、塗布目的(印刷目的)に応じて様々な粉体を適宜利用することができる。このような粉体15としては、例えば、樹脂粉体(ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、PET系樹脂等の樹脂の粉体)、無機粉体(酸化亜鉛、酸化鉄等の金属系の粉体)、各種顔料(カーボンブラック、ゼオライト、マイカ、カオリン、セピライト等の鉱物など)、シリカゲル、シリカゾル、各種色素、粉体塗料、これらを混合したもの等、静電力を作用させてパターン印刷することが可能なものであれば、電子伝導性に依らず、適宜用いることができる。また、静電スクリーン印刷装置を電極材料等を製造するために利用する場合には、粉体15として、いわゆる正極・負極材料からなる粉体等を利用してもよい。
以上説明したように、図1に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置は、基本的に、基材ホルダ10と、所定形状のパターンPが形成された導電性スクリーン11と、粉体供給手段12と、電圧印加手段13と、導電性スクリーン11に超音波振動を付与するための超音波振動子14とを備えるものである。なお、図1に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置では、導電性スクリーン11には負電圧が印加されるように負の電源が接続されており、かつ、基材20に正電圧が印加されるように基材ホルダ10には正の電源が接続されているが、これにより、電圧印加手段13により電圧を印加することで、導電性スクリーン11と基材20(基材ホルダ10)との間に直線状の電界(矢印A2で示す方向と同じ方向の電界)を生じさせることが可能となる。このような図1に示す静電スクリーン印刷装置を用いた静電スクリーン印刷の方法としては、例えば、以下のような方法を採用できる。
すなわち、先ず、図1に示すように、基材ホルダ10上に基材20を配置する。次に、粉体15をホッパ(粉体供給手段12)に導入する。次いで、ホッパ(粉体供給手段12)の粉体出口から導電性スクリーン11のメッシュにより形成されたパターンP上に粉体を供給(矢印A1参照)するとともに、超音波振動子14を作動させることにより、導電性スクリーン11に超音波を印加する(このような超音波の印加の際には、超音波の周波数を、導電性スクリーン11(ふるい本体)の共振周波数の範囲内の周波数とすることが好ましい)。これにより、超音波振動している導電性スクリーン11の該パターンPのメッシュ部分に粉体を供給しつつ、該パターン部を介して(パターン部をふるいのように利用して)、基材20と導電性スクリーン11との間の領域に粉体を供給(導入)できる(矢印A2参照)。なお、超音波振動の印加により、粉体粒子が落下して基材20と導電性スクリーン11との間の領域(静電界)に粉体をふるい落として供給(導入)できるが、仮に振動を与えなかった場合には、粉体の粒子によりブリッジが形成されて、静電界へ粉体を供給すること(落下させること)が困難となる。すなわち、超音波振動を付与せずに、単に重力で基材上に粉体を落下させようとした場合、粉体の粒子によりブリッジが形成されて静電界へ粉体を供給することが困難となり、塗布量のムラが発生してしまう(なお、このような粒子によるブリッジの形成により落下した粉体のみを利用してパターンを維持させることも困難である)。そのため、仮に振動を与えなかった場合には、所望のパターンで均一な膜厚を有する塗膜を形成することはできない。また、パターンPを通過させて粉体が導入される領域(基材20と導電性スクリーン11との間の領域:粉体の落下する領域)には、粉体15の導入前に予め電圧印加手段13により電圧(好ましくは0.5kV~5kVの電圧、より好ましくは0.5kV~3kVの電圧)を印加する。これにより粉体が所望のパターンに印刷(塗布)される。なお、パターンPを通過させる際に粒子とパターンPのメッシュ部分との摩擦により粉体15は負に帯電され、また、前記電圧の印加により基材20と導電性スクリーン11との間の領域には、直線状の電界(静電界)が生じることから、パターンPを通過(パターンPから落下)した粉体15は、電界により加速させることが可能であり、これによりパターンPの形状を十分に維持しながら、基材20上に粉体15を付着させることができる。そのため、上記方法によって、静電界に落下した粉体15を静電力によって所望のパターンに十分に均一に印刷(塗布)することが可能となる。
また、上記静電スクリーン印刷の方法においては、導電性スクリーン11のパターンPの部分から基材20と導電性スクリーン11との間の領域に対して粉体をより均一に供給するために、超音波振動子14により導電性スクリーン11に超音波を印加(発振)して導電性スクリーン11を振動させている。これによりパターンP上に供給される粉体15を、パターンP上においてより均一に分散させながら、パターンPの部分を通過させることが可能となる。
また、このような超音波の印加により、パターンPを形成するメッシュの目詰まりを、より十分に防止しながら、該パターンPの部分に対して粉体15をより均一に通過させることも可能となる。また、超音波振動子の出力を適宜設定することにより、ふるいの振幅を容易に制御できるため、出力および印加時間の制御により再現性良く粉体を塗布することも可能となる。そのため、超音波振動子14を用いた上記静電スクリーン印刷の方法によれば、粉体をより均一に印刷(塗布)することが可能である。
以上、本発明の静電スクリーン印刷装置の好適な第1の実施形態について図1を参照しながら説明したが、本発明の静電スクリーン印刷装置は上記実施形態に限定されるものではない。以下、本発明の静電スクリーン印刷装置として好適に利用可能な他の実施形態を、図2及び3を参照しながら更に説明する(なお、以下の他の実施形態の説明において、図1に記載の実施形態のものと同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する)。
[第2の実施形態]
以下、図2を参照しながら、本発明の静電スクリーン印刷装置の好適な他の実施形態(第2の実施形態)について説明する。図2に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置は、粉体供給手段12として、容器を傾けることによりパターンP上に粉体15を供給する手段を備える装置である。なお、図2に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置においては、粉体供給手段12以外の構成は図1に示す静電スクリーン印刷装置と同様である。
このような図2に示す実施形態においては、所定の容器を粉体供給手段12として用いて、容器を傾けて粉体を重力により導電性スクリーン11のパターンP上に供給する以外は、図1に示す実施形態と同様にして静電スクリーン印刷を行うことができる。なお、このような図2に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置においても、導電性スクリーン11に対して超音波振動子14により超音波を印加(発振)して超音波振動を付与することで、パターンP上に供給された粉体が十分に均一にパターンP(メッシュ)部分を通過するため、図1に示す実施形態と同様に粉体を十分に均一に印刷(塗布)することが可能である。
(第3の実施形態)
以下、図3を参照しながら、本発明の静電スクリーン印刷装置の好適な他の実施形態(第3の実施形態)について説明する。図3に示す静電スクリーン印刷装置は、粉体供給手段12の粉体出口(粉体供給手段12から導電性スクリーン11上に粉体を供給するための出口)にふるいSが備えられており、かつ、該ふるいSに超音波振動を付与するための超音波振動子16を更に備えるものである。このように、粉体出口(粉体供給手段12から導電性スクリーン11上に粉体を供給するための出口)にふるいSを備える粉体供給手段12を用い、かつ、そのふるいSに超音波振動を付与するための超音波振動子16を更に備えることで、粉体の供給量の制御がより容易となり、更に均一な塗膜の形成が可能となる。
このような図3に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置は、上述のように、粉体供給手段12の粉体出口(粉体供給手段12から導電性スクリーン11上に粉体を供給するための出口)にふるいSが備えられている。また、図3に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置は、ふるいSに超音波振動を付与するための超音波振動子16を更に備ており、該超音波振動子16は粉体供給手段12に超音波を印加することが可能となるように接続されている。なお、図3に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置は、粉体供給手段12としてホッパの代わりに粉体出口にふるいSを備えるもの(ふるいSを備える容器)を用いるとともに、その粉体供給手段12に超音波振動を付与するための超音波振動子16を更に備える構成としている以外は、図1に示す静電スクリーン印刷装置と基本的に同様の構成のものである。
このような図3に示す実施形態において用いるふるいSとしては、特に制限されないが、前述の導電性スクリーン11のパターンPにおいて説明したメッシュ材料と同様のものを好適に利用することができる。このような粉体出口に備えるふるいSを形成するメッシュ材料としては、印刷(塗布)する粉体15の平均粒子径の3倍~10倍(より好ましくは3~5倍)の目開きのものを用いることが好ましい。このような粉体出口に備えるふるいSを形成するメッシュ材料の目開きが前記下限未満では、メッシュに粉体が目詰まりして粉体を均一に供給することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとパターンP上に供給する粉体が過多となり、印刷時の厚みの制御が困難となる傾向にある。なお、このような粉体出口に備えるふるいSをメッシュ材料で形成する場合、そのメッシュ材料は、導電性の材料であっても、非導電性の材料であってもよく、メッシュ状のふるいとして利用可能なものであれば適宜利用できる。
また、このようなふるいSを備える粉体供給手段12の構成は、粉体出口にふるいSの構造部分を有していればよく、他の構造部分の形状や材料等は特に制限されず、ふるいSを介して、粉体15をパターンP上に供給できるようなものとすればよい。
また、このようなふるいSに対して超音波振動を付与するための超音波振動子16としては、前述の超音波振動子14において説明したものと同様の超音波振動子を利用することができる(その好適なものも同様のものを利用できる)。このような超音波振動子16を備えることで、粉体供給手段12に超音波振動を付与することができ、これにより、粉体供給手段12の粉体出口からパターンP上に粉体15をより均一にふるい落として供給することができる(ふるいSを、超音波ふるいとして利用することができる)。
なお、このように、粉体供給手段12(一段目のふるい)と、導電性スクリーン11(二段目のふるい)とに超音波振動子を備える場合には、一段目の粉体供給手段12のふるいSに対して超音波振動子16により超音波を間欠的に印加(間欠的に発振)することで、ふるいSの部分で粉体の供給量や供給される粉体の粒子径を制御しながらパターンPに向かって、より均一に粉体を供給できる傾向にある。また、二段目の導電性スクリーン11のパターンP(メッシュ:ふるい)部分に対して超音波振動子14により超音波を連続的に印加(連続発振)することで、パターンP(メッシュ)部分で粉体(粒子)を帯電させた後、帯電した粉体を、パターンP部分を介して静電界により効率よくふるい落とすことができる傾向にある。このような観点から、超音波振動子16により超音波を間欠的に印加しつつ、超音波振動子14により超音波を連続的に印加することがより好ましい。また、このように、超音波振動子16により超音波を間欠的に印加する場合には、パターンP(メッシュ)部分への粉体の供給量が一定となるように、粉体供給手段12中の粉体量を計量しながら超音波振動子16により超音波の印加を行って、粉体量のデータに基づいて、超音波の印加時間と静止する(印加を止める)時間の間隔を設定することが好ましい。このように超音波振動子16により超音波を間欠的に印加する場合、その方法は、粉体の種類によっても好適な条件が異なり、特に制限されるものではない。
また、このように、粉体供給手段12(一段目のふるい:超音波ふるい)と、導電性スクリーン11(二段目のふるい:超音波ふるい)とに、それぞれ超音波振動子を接続している場合、超音波振動子14により印加する周波数は、導電性スクリーン11(ふるい本体)の共振周波数の範囲内の周波数とすることが好ましい。また、超音波振動子14により印加する超音波の出力は、1~100W(より好ましくは1~50W)であることが好ましい。
また、超音波振動子16により印加する超音波の周波数は、一段目のふるい本体(ふるいS)の共振周波数の範囲内の周波数とすることが好ましい。超音波振動子16により印加する超音波の出力は、1~100W(より好ましくは1~50W)であることが好ましい。
なお、図3に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置を用いた静電スクリーン印刷の方法としては、例えば、以下のような方法を採用することが好ましい。すなわち、先ず、図3に示すように、基材ホルダ10上に基材20を配置する。次に、粉体出口にふるいSを備える粉体供給手段12に粉体15を導入し、超音波振動子16により粉体供給手段12(一段目)に対して超音波振動を付与(好ましくは間欠的に超音波振動を付与)することで、粉体供給手段12の粉体出口のふるいSを介して、導電性スクリーン11のパターンP上に粉体15を供給する(矢印A1参照)。次いで、超音波振動子14により導電性スクリーン11(二段目)に超音波を印加(好ましくは超音波を連続的に印加)して、超音波振動を付与する。これにより、超音波振動している導電性スクリーン11の該パターンPのメッシュ部分から、基材20と導電性スクリーン11との間の領域に粉体を供給(導入)できる(矢印A2参照)。そして、パターンPを通過させて粉体が導入される領域(基材20と導電性スクリーン11との間の領域)には、粉体15の導入前に予め電圧印加手段13により電圧を印加しておき、これにより静電力で粉体を所望のパターンに印刷(塗布)する。このようにして、図3に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置を用いた場合、粉体供給手段12(一段目)と導電性スクリーン11(二段目)との2段のふるい効果(2段の超音波ふるいの効果)により、より均一に粉体を印刷(塗布)することが可能となる。このような図3に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置は、粉体供給のための超音波ふるい(一段目:粉体供給手段12:超音波振動子を接続したふるい)と、粉体を静電界に押し込む(落下させる)ための超音波ふるい(二段目:導電性スクリーン11:超音波振動子を接続したふるい)とを備える装置であるといえる。また、このような超音波ふるいを利用することで、目詰まりを十分に防止しながら、静電界に粉体を導入することが可能となる。なお、このような超音波ふるい(超音波振動子を接続したふるい)を用いることで、振動の印加時にのみ粉体を供給することも可能となり、また、連続使用時には目詰まりを十分に防止できるため、供給量を制御しつつ、繰り返し再現性よく粉体を静電界に供給することも可能となり、所望のパターンで、より均一な膜厚の塗膜を形成することも可能となる。
以上、本発明の静電スクリーン印刷装置の好適な実施形態について、図面(図1~3)を参照しながらそれぞれ説明したが、本発明の静電スクリーン印刷装置は上記実施形態(第1~第3の実施形態)に限定されるものではなく、導電性の基材を配置するための基材ホルダと;パターン形成された導電性スクリーンと;前記導電性スクリーンのパターン上に粉体を供給するための粉体供給手段と;前記基材ホルダ上に配置される導電性の基材と前記導電性スクリーンとの間に電圧を印加するための電圧印加手段と;前記導電性スクリーンに超音波振動を付与するための超音波振動子と;を備えるものであれば、他の形態のものであってもよい。例えば、図1~3に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置においては、特にアース線を接続していないが、本発明の静電スクリーン印刷装置においては、例えば、基材ホルダ10にアース線を接続して、基材20を基材ホルダ10を通じて、アースさせてもよい。また、図3に示す実施形態においては、導電性スクリーンと粉体供給手段とに超音波を印加するために超音波振動子14及び16をそれぞれ接続しているが、そのような2つの超音波振動子を利用せずに1つの超音波振動子に導電性スクリーンと粉体供給手段との双方を接続して、1つの超音波振動子より超音波振動を導電性スクリーンと粉体供給手段とに付与してもよい。また、図1~3に示す実施形態においては、一度の印刷で一つのパターン(一枚)を印刷する形式(枚葉印刷の形式)となっているが、本発明の静電スクリーン印刷装置においては、その構成は特に制限されず、ロール送り装置を用いた輪転印刷の形式となっていもよい。
なお、このような本発明の静電スクリーン印刷装置により本発明の効果が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、先ず、本発明者らが検討したところ、上記特許文献1~2に記載のような従来の静電スクリーン印刷装置においては、導電性スクリーンのパターン部に粉体を通過させる際に、例えば、特許文献1においてはスクリーンに粉体を擦り込むローラー(特許文献1)を利用し、特許文献2においてゃ押圧部材としてのスキージ(同文献の段落[0020]参照)等を利用しており、導電性スクリーンのパターン部に粉体を通過させる際に、パターン部に粉体を押し込む(擦り込む)方法を利用しているが、これに起因して十分に均一に粉体を塗布することができないことを見出した。ここで、パターン部に粉体を押し込む(擦り込む)方法に関して、スキージを利用した場合を例に挙げて簡単に説明する。図4は、スキージを利用して粉体を印刷する場合の一例を模式的に示す図面である。図4に示すように、スキージ30を利用する場合、先ず、スキージ30を矢印A3に示す方向(X方向)に動かして、スキージ30により粉体15を導電性スクリーン(メッシュスクリーン)11のパターン部分(メッシュ部分)に擦り込むと、スキージ30がメッシュスクリーン11のパターン部上の最初に接触する部分(パターン部分の左端部分)及びその近傍では比較的多くの粉体がパターン部に押付けられ、より多くの粉体15の粒子が基材20とメッシュスクリーン11との間の領域に落下する。しかしながら、スキージ30がX方向(矢印A3に示す方向)に移動していくに従って、徐々に粉体15の量が少なくなっていくことから、スキージ30を用いた場合、パターン部のXY平面内(なお、紙面奥に向かう方向をY方向とする)において、粉体15を均一に供給できず、これによりパターン部から静電界中に均一に粉体を供給できない。このように、スキージ30を用いた場合、パターン部のXY平面内において、粉体の散布量にばらつきが生じ、図4に示すように、z方向(矢印A2で示す方向)の厚みも不均一となる。また、スキージ30を用いた場合、メッシュ部分に粒子が刷り込まれるため、粒子の凝集物の粒子径にもばらつきが生じる。このように、粉体の散布量のXY平面内におけるばらつき、メッシュ部分を通過する粉体の粒子径のばらつきが生じることから、スキージ30を用いた場合、粉体を十分に均一に印刷(塗布)することができない。この点はローラーを用いて粉体を押し込む(擦り込む)場合も同様である。このように、上記特許文献1~2に記載のような従来の静電スクリーン印刷装置においては、粉体のパターン部(メッシュ部分)の通過のために、パターン部に粉体を押し込む(擦り込む)方法を採用しているため、粉体15を十分に均一に塗布することができないということを本発明者らが見出した。そして、このような問題点を解決すべく、本発明者らが更に検討を進めたところ、上述のように、導電性スクリーン11に超音波振動を付与するための超音波振動子14を備えることで、パターンPの部分から静電界中に粉体15をより均一に供給することが可能となり、これにより粉体を十分に均一に塗布(より均一な膜厚で塗布)することが可能となることを見出した。すなわち、このような超音波振動子14を接続した導電性スクリーン11を備えることで、パターン部がふるい(超音波ふるい)のような役割を果たし、超音波振動により、より均一に粉体15がパターンP部から、導電性スクリーン11と基材20との間の領域(静電界中)に導入され、上記電圧印加手段13により形成された静電界により、パターンPの形状を保持して、粉体15を基材20上に印刷(塗布)することが可能となる。なお、静電スクリーン印刷を行わずに、単に超音波を印加してパターン部から粉体を落下させて印刷した場合には、十分にパターン形状を維持できないが、静電スクリーン印刷した場合には、ふるいとなる導電性スクリーン11を通過した段階から静電的に粉体15が基材側に引き寄せられて加速して基材20上に印刷(塗布)されることとなるため、十分にパターン形状を維持できるものと本発明者らは推察する。また、本発明のように、超音波振動子14により導電性スクリーン11に超音波振動を付与可能とすることで、超音波によりパターン部への粉体15の目詰まりも十分に抑制しながら、パターン部から粉体を静電界中に導入できるため、このような観点からも、パターン部の形状を十分に維持して粉体をより均一に塗布することが可能となるものと本発明者らは推察する。特に、前記粉体供給手段の粉体出口にふるいSが備えられており、かつ、該ふるいSに超音波振動を付与するための超音波振動子16が更に備えられている本発明の静電スクリーン印刷装置の好適な実施形態(例えば図3に示す実施形態)の場合には、そもそも導電性スクリーン11のパターンP部に供給する段階から粉体15の供給量がより均一なものとなり、続く導電性スクリーン11のパターンP部においても、超音波振動により粉体が均一に静電界中に導入されるため、より均一に粉体15を塗布(印刷)することが可能であるものと本発明者らは推察する。そのため、本発明によれば、粉体を十分に均一に塗布することが可能となるものと本発明者らは推察する。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置を用いて、静電スクリーン印刷を行った。なお、基材ホルダ10としてはステンレス鋼製の支持台を用い、導電性スクリーン11としてはステンレス鋼製のメッシュ材料(目開き:53μm、線径:36μm)により直径45mmの円形のパターンPが形成された導電性スクリーン(外径が50mmのふるい)を利用し、粉体供給手段12としては、傾けることで粉体を供給することが可能な容器を利用し、電圧印加手段13としては2kVの電圧を印加可能な直流電源(DC電源)を利用し、導電性スクリーン11に超音波振動を付与するための超音波振動子14としてはArtech Systems社製の商品名「超音波ふるい機DGSモデル」を利用し、粉体15としてはカーボンブラック(平均粒子径:10μm)を利用し、基材20としては厚さ15μmのアルミ箔を利用した。なお、基材20と導電性スクリーン11との間の距離は2mmとした。そして、静電スクリーン印刷に際しては、先ず、電圧印加手段13により基材20と導電性スクリーン11との間に2kVの電圧を連続的に印加しつつ、更に、超音波振動子14により、導電性スクリーン11(ふるい本体)の共振周波数(ステンレス鋼の共振周波数)の範囲内の周波数の超音波を出力が1Wとなる条件で印加(発振)して、導電性スクリーン11に超音波振動を連続的に付与した。このような電圧の印加と超音波振動の付与と同時に、粉体供給手段12を傾けてカーボンブラック(粉体15)を導電性スクリーン11の円形のパターンP上に一気に供給した。このようにしてカーボンブラック(粉体15)をパターンP上に供給した後においても、電圧の印加と超音波の印加(超音波振動の付与)を連続的に2秒間続けて、超音波振動によりカーボンブラック(粉体15)を導電性スクリーン11のパターンPを介して静電界中(基材20と導電性スクリーン11との間の領域中)に導入し、アルミ箔(基材20)上にカーボンブラック(粉体15)を印刷(塗布)した。
このような静電スクリーン印刷により形成されたカーボンブラックの薄膜(基板上のパターン)の写真を図5に示す。図5に示す結果からも明らかなように、かかる静電スクリーン印刷により円形のパターン(直径45mm)の塗膜(薄膜)が形成され、パターンPの形状を十分に維持しながらスクリーン印刷することが可能であることが確認された。
また、このような塗膜(カーボンブラックの薄膜)の厚みを、二次元走査ステージを用いて1mmピッチでレーザー変位計(コムス株式会社製の商品名「高精度3次元形状測定システム」)により計測(スキャン)することにより、カーボンブラックの膜厚(塗布厚み)の面内分布(ばらつき)を測定した。このような測定結果として、膜厚の分布を濃淡で表す二次元図を図6に示し、また、膜厚のヒストグラムを図7に示す。なお、ヒストグラムは、縦20mm及び横20mmの正方形状の領域(図6に示す直径45mmの円形の塗膜形状の中心と該正方形状の領域の中心が重なるように領域を設定した)内の測定データに基づいて求めた。また、ヒストグラムは、正規分布(ガウス関数)でフィッティングした。このようにして求められたヒストグラムから半値全幅(FWHM:full-width half maximum)を求め、また、前記正方形状の領域の全測定点の膜厚のデータから平均厚み(Ave)を求めて、半値全幅を平均厚みで割った値(FWHM/Ave)を求めた。このような結果、該正方形状の領域(測定領域中の一部の領域)の平均厚みは295.04μmであり、半値全幅を平均厚みで割った値は0.68であった。なお、このような平均厚みは、レーザー変位計の1mmピッチの測定データの平均値を計算することにより求めた。
(実施例2)
図3に示す実施形態の静電スクリーン印刷装置を用いて、静電スクリーン印刷を行った。なお、基材ホルダ10としてはステンレス鋼製の支持台を用い、導電性スクリーン11としてはステンレス鋼製のメッシュ材料(目開き:53μm、線径:36μm)により外径50mmの円形のパターンPが形成された導電性スクリーンを利用し、粉体供給手段12としてはステンレス鋼製のメッシュ材料(目開き:106μm、線径:71μm)により形成されたふるいS(外径200mmの円形のメッシュからなるふるい)を粉体出口に備える容器を用い、電圧印加手段13としては2kVの電圧を印加可能な直流電源(DC電源)を利用し、導電性スクリーン11に超音波振動を付与するための超音波振動子14としてはArtech Systems社製の商品名「超音波ふるい機DGSモデル」を利用し、粉体15としてはカーボンブラック(平均粒子径:10μm)を利用し、粉体供給手段12に超音波振動を付与するための超音波振動子16としてはArtech Systems社製の商品名「超音波ふるい機DGSモデル」を利用し、基材20としては、厚さ15μmのアルミ箔を利用した。なお、基材20と導電性スクリーン11との間の距離は2mmとした。そして、静電スクリーン印刷に際しては、電圧印加手段13により基材20と導電性スクリーン11との間に2kVの電圧を連続的に印加しつつ、超音波振動子16により、前記ふるいSの共振周波数(ステンレス鋼の共振周波数)の範囲内の周波数の超音波を出力が10Wとなる条件で印加(発振)して粉体供給手段12に超音波振動を付与し、更に、超音波振動子14により、導電性スクリーン11(ふるい本体)の共振周波数(ステンレス鋼の共振周波数)の範囲内の周波数の超音波を出力が2Wとなる条件で印加して導電性スクリーン11に超音波振動を付与した。なお、超音波振動子16による粉体供給手段12への超音波の印加は、印加時間を5秒間とした。一方、超音波振動子14による導電性スクリーン11への超音波の印加は、導電性スクリーン11に十分に粉体が供給されたタイミングから2.5秒間連続的に行った。このようにして、粉体供給手段12の粉体出口のふるいSの部分から超音波振動によりカーボンブラック(粉体15)を導電性スクリーン11の円形のパターンP上に供給しながら、超音波振動によりカーボンブラック(粉体15)を導電性スクリーン11のパターンPを介して静電界中(基材20と導電性スクリーン11との間の領域中)に導入して、アルミ箔(基材20)上にカーボンブラック(粉体15)を印刷(塗布)した。
このような静電スクリーン印刷により形成されたカーボンブラックの薄膜(基板上のパターン)の写真を図8に示す。図8に示す結果からも明らかなように、かかる静電スクリーン印刷により円形のパターン(直径50mm)の塗膜(薄膜)が形成され、パターンPの形状を十分に維持しながらスクリーン印刷することが可能であることが確認された。また、このような塗膜(カーボンブラックの薄膜)の厚みを、二次元走査ステージを用いて1mmピッチでレーザー変位計(コムス株式会社製の商品名「高精度3次元形状測定システム」)により計測(スキャン)することにより、カーボンブラックの膜厚(塗布厚み)の面内分布(ばらつき)を測定し、実施例1と同様にしてヒストグラムを求めた。このような測定の結果、実施例2においては、ヒストグラムを求めた正方形状の領域の平均厚みは122.94μmであり、半値全幅を平均厚みで割った値は0.59であった。なお、このような平均厚みは、レーザー変位計の1mmピッチの測定データの平均値を計算することにより求めた。
(比較例1)
図2に示す装置から粉体供給手段12及び超音波振動子14を取り除いた装置構成とし、導電性スクリーン11としてはステンレス鋼製のメッシュ材料(目開き:53μm、線径:36μm)により正方形状(縦:50mm、横:50mm)のパターンPが形成された導電性スクリーンを利用し、更に、粉体15(カーボンブラック)を静電界に供給するために超音波を印加する代わりに、パターンPの部分にスキージ(スポンジ)により手動で粉体15を塗布した(手動でスクリーン上に擦り込んだ)以外は、実施例1と同様にして、静電スクリーン印刷を行った。このような静電スクリーン印刷は基材を2枚準備して2回行った。
このような静電スクリーン印刷により得られた塗膜(カーボンブラックの薄膜)の厚みを、それぞれ、二次元走査ステージを用いて1mmピッチでレーザー変位計(コムス株式会社製の商品名「高精度3次元形状測定システム」)により計測(スキャン)することにより、各回の静電スクリーン印刷で得られたカーボンブラックの膜厚(塗布厚み)の面内分布(ばらつき)をそれぞれ測定した。
1回目の静電スクリーン印刷の結果として、膜厚の分布を濃淡で表す二次元図を図9に示し、また、膜厚のヒストグラムを図10に示す。なお、ヒストグラムは、縦25mm及び横25mmの正方形状の領域(図9に示す塗膜形状の中心と該正方形状の領域の中心が重なるように領域を設定した)内の測定データに基づいて求めた。このような測定結果から、1回目の静電スクリーン印刷において、該正方形状の領域(測定領域中の一部の領域)の平均厚みは203.16μmであり、半値全幅を平均厚みで割った値は0.93であった。なお、このような平均厚みは、レーザー変位計の1mmピッチの測定データの平均値を計算することにより求めた。
また、2回目の静電スクリーン印刷の結果として、膜厚の分布を濃淡で表す二次元図を図11に示し、また、膜厚のヒストグラムを図12に示す。なお、ヒストグラムは、縦25mm及び横25mmの正方形状の領域(図11に示す塗膜形状の中心と該正方形状の領域の中心が重なるように領域を設定した)内の測定データに基づいて求めた。このような測定結果から、2回目の静電スクリーン印刷において、該正方形状の領域(測定領域中の一部の領域)の平均厚みは171.86μmであり、半値全幅を平均厚みで割った値は1.41μmであった。
実施例1~2並びに比較例1(1回目及び2回目)において行った静電スクリーン印刷により形成された塗膜に関して、上記ヒストグラムのデータに基づいて求められる、平均厚み、及び、半値全幅を平均厚みで割った値を表1に示す。なお、半値全幅を平均厚みで割った値(FWHM/Ave)がより小さいほど、膜厚のばらつきが小さいものと判断できるため、以下、かかる値を評価値として利用する。
表1に示す結果からも明らかなように、静電界に粉体を導入するために、導電性スクリーンに超音波振動を付与した場合、すなわち、導電性スクリーンに超音波振動を付与するための超音波振動子14を備える装置を用いた場合(実施例1~2)には、半値全幅を平均厚みで割った値(FWHM/Ave)が0.7以下となっているのに対して、静電界に粉体を導入するためにスキージによる刷り込みを行った場合(比較例1の1~2回目)には、半値全幅を平均厚みで割った値(FWHM/Ave)が0.93以上となっており、導電性スクリーンに超音波振動を付与することで、より均一な粉体の印刷(塗布)を行うことが可能であることが分かった。また、粉体供給手段12の粉体出口にふるいSが備えられており、かつ、ふるいSに超音波振動を付与するための超音波振動子16が更に備えられている装置を用いた場合(実施例2)には、半値全幅を平均厚みで割った値(FWHM/Ave)が0.59となっており、粉体を更に均一に塗布することが可能となることが分かった。なお、比較例1の1回目及び2回目の静電スクリーン印刷の結果(表1及び図9~12参照)から、スキージにつける粉体の量や、スキージを擦る回数、更には、スキージを擦る方向等の要因によって、大きく面内ばらつきが発生することが確認された。このような比較例1で行った2回の静電スクリーン印刷の結果から、スキージを利用した場合には回数ごとの塗膜の再現性が低く、粉体を十分に均一に印刷(塗布)することができないことが分かった。
また、図5及び図8に示す結果からも明らかなように、導電性スクリーンに超音波振動を付与して静電スクリーン印刷を行った場合、すなわち、導電性スクリーンに超音波振動を付与するための超音波振動子14を備える装置を用いた場合(実施例1~2)には、導電性スクリーンのパターン形状を十分に維持しながら粉体の印刷(塗布)を行うことが可能であることも分かった。
このような結果から、導電性スクリーン11に超音波振動を付与するための超音波振動子14を備える本発明の静電スクリーン印刷装置を用いた場合(実施例1~2)には、所望のパターンで粉体を十分に均一に塗布することを可能となることが分かった。