以下に本発明の好適な実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
以下、本実施形態に係るインク組成物、記録方法およびインクジェット記録装置について、インク組成物、インクセットおよびこれを使用可能なインクジェット記録装置の構成、記録方法の順に説明する。
1.インク組成物
本発明の一実施形態に係るインク組成物は、染料として、380nm以上780nm以
下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が50nm以下である染料Aと、前記半値幅が70nm以上である染料Bと、を含み、前記染料の全質量に対する前記染料Aの含有量が、40質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。
ここで、本明細書において、「染料の吸収スペクトル」とは、紫外可視分光光度計で測定して得られた紫外可視吸収スペクトルを意味する。
また、本明細書において、「吸収スペクトルの最大ピーク」とは、紫外可視分光光度計で測定して得られた紫外可視吸収スペクトルにおいて、測定した波長域において1つのピーク(極大値)のみを有する場合にはそのピークを意味し、複数のピークを有する場合には、複数のピークの中でピーク頂点の吸光度(Abs)が最も高いピークを意味する。
したがって、本明細書において、「380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピーク」とは、紫外可視分光光度計で測定して得られた紫外可視吸収スペクトルにおいて、380nm以上780nm以下の波長域に紫外可視吸収スペクトルの最大ピークがあることを意味し、更に詳しくは、380nm以上780nm以下の波長域に紫外可視吸収スペクトルの最大ピークのピーク頂点があることを意味する。そして、ピーク頂点の波長を、その物質の「極大吸収波長」または「最大吸収波長」と呼び、「λmax」とも呼ぶ。さらに、本明細書において、紫外可視吸収スペクトルが複数のピークを有する場合には、複数のピークの中でピーク頂点の吸光度が最も高いピークの波長を、その物質の「最大吸収波長」とも呼ぶ。
また、本明細書において、「吸収スペクトルの最大ピークの半値幅」とは、最大ピークの極大吸収波長(λmax)における、ベースラインから最大吸光度の1/2の吸光度の高さにおけるピーク幅(nm)を意味する。
以下、本実施形態に係るインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)について、インク組成物をインクジェット記録用インク組成物として用いる例を挙げ、インク組成物に含まれる成分、および含まれ得る成分について説明する。
1.1.染料A
本実施形態に係るインク組成物は、染料として、380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が50nm以下である染料Aを含む。380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が50nm以下である染料Aは、半値幅が50nm以下であることにより、特に明度が高い波長域において、彩度が高く発色性に優れる。また、染料Aは、半値幅が50nm以下であることにより、最大ピークの吸光度が大きい傾向にあるため、従来の染料に比べて、発色の低下が抑制される傾向にあり、耐ガス性に優れる傾向がある。したがって、染料Aを後述する染料Bと組み合わせて用い、更に、インク組成物中における含有量を調整することによって、発色性と暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られるインク組成物を提供することができる。つまり、本実施形態に係るインク組成物を用いて記録される画像は、染料Aおよび染料Bの相補的な作用よって、発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れるものとなる。
本実施形態に係るインク組成物において、染料の全質量(100質量%)に対する染料Aの含有量は40質量%以上であり、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、本実施形態に係るインク組成物において、染料の全質量(100質量%)に対する染料Aの含有量は、90質量%以下であり、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。染料Aの含有量が前記範囲にあることにより、発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れた画像が得ら
れるインク組成物となる。
また、本実施形態に係るインク組成物において、染料Aの含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、0.6質量%以上であることがより好ましく、1.2質量%以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態に係るインク組成物において、染料Aの含有量は、インク組成物の全質量に対して、3.0質量%以下であることが好ましく、2.4質量%以下であることがより好ましく、1.8質量%以下であることがさらに好ましい。染料Aの含有量が上記範囲内であることにより、より発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れた画像が得られるインク組成物となる。
さらに、本実施形態に係るインク組成物において、染料Aと染料Bとの合計の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態に係るインク組成物において、染料Aと染料Bとの合計の含有量は、インク組成物の全質量に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。染料Aと染料Bとの合計の含有量が上記範囲内であることにより、より発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れた画像が得られるインク組成物となる。
なお、染料Aの最大ピークの最大吸収波長は、500nm以上600nm以下の波長域にあることが好ましい。つまり、染料Aの最大ピークのピーク頂点が500nm以上600nm以下の波長域にあることが好ましい。そのような特徴を有する染料Aを、後述する染料Bと一定の割合で組み合わせて用いることにより、特に、発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れた画像が得られるインク組成物とすることができる。
本実施形態に係るインク組成物で用いられる、380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が50nm以下である染料Aは、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(1)中、R
1、R
3、R
4、R
5、R
6、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R
101及びR
102は各々独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、又は置換若しくは無置換のアルキルアリールアミノカルボニル基を表す。
本実施形態に係るインク組成物で用いられる染料Aは、上記一般式(1)で表される化合物であることにより、より発色性および耐ガス性に優れたインク組成物となる。
以下、上記一般式(1)で表される化合物について説明する。なお、一般式(1)で表される化合物については、特開2016-41801号公報の段落番号0015-0084の記載を引用している。
まず、一般式(1)で表される化合物で用いられる置換基の具体例を、置換基群Aとして定義する。
<置換基群A>
ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、イオン性親水性基が例として挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。
アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、エイコシル基、2-クロロエチル基、2-シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4-n-ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン-3-イル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7~30のアラルキル基が好ましい。例えばベンジル基及び2-フェネチル基を挙げられる。
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。
アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル
基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-1-イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト-2-エン-4-イル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p-トリル基、ナフチル基、m-クロロフェニル基、o-ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
ヘテロ環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基、例えば、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピリミジニル基、2-ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。非芳香族のヘテロ環基の例としては、モルホリニル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-メトキシエトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-t-ブチルフェノキシ基、3-ニトロフェノキシ基、2-テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1-フェニルテトラゾール-5-オキシ基、2-テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N-ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N-ジ-n-オクチ
ルアミノカルボニルオキシ基、N-n-オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p-メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p-n-ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基、トリアジニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5-トリ-n-オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N-メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m-n-オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N-n-オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5-トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p-メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基等が挙げら
れる。
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p-クロロフェニルチオ基、m-メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
ヘテロ環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2-ベンゾチアゾリルチオ基、1-フェニルテトラゾール-5-イルチオ基等が挙げられる。
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N-エチルスルファモイル基、N-(3-ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N-アセチルスルファモイル基、N-ベンゾイルスルファモイル基、N-(N’-フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p-メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p-メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2-クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p-n-オクチルオキシフェニルカルボニル基、2-ピリジルカルボニル基、2-フリルカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o-クロロフェノキシカルボニル基、m-ニトロフェノキシカルボニル基、p-t-ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジ-n-オクチルカルバモイル基、N-(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
アリール又はヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p-クロロフェニルアゾ基、5-エチルチオ-1,3,4-チアジ
アゾール-2-イルアゾ基等が挙げられる。
イミド基としては、好ましくは、N-スクシンイミド基、N-フタルイミド基等が挙げられる。
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
イオン性親水性基としては、スルホ基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、スルフィノ基、ホスホノ基、ジヒドロキシホスフィノ基、4級アンモニウム基などが挙げられる。特に好ましくはスルホ基、カルボキシル基である。またカルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対カチオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩又はナトリウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。
なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、水溶性インク中では塩はイオンに解離して存在している。
<一般式(1)で表される化合物>
下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1)中、R1、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R101及びR102は各々独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、又は置換若しくは無置換のアルキルアリールアミノカルボニル基を表す。
一般式(1)で表される化合物は、特定の置換基を有するアミノ基を有する。作用機構は不明であるが、一般式(1)で表される化合物がこのような構造を有することによって高い彩度、優れた印画濃度、耐光性、及び耐ガス性を示すものと考えられる。
一般式(1)中、R1、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は各々独立に水素原子又は置換基を表す。R1、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20が置換基で表される場合、置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
一般式(1)中、R1、R5、R6及びR10は、原材料の入手性と合成の容易性の観点から、各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、カルボキシル基、又はハロゲン原子を表すことが好ましく、より好ましくは置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基であり、特に好ましくは置換若しくは無置換のアルキル基である。アルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。また、各基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
一般式(1)中、R4及びR9は、原材料の入手性と合成の容易性、耐光性、耐ガス性、印画濃度、及び彩度の観点から、各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、
置換若しくは無置換のアルキルウレイド基、置換若しくは無置換のアリールウレイド基、スルホ基、カルボキシル基、又はハロゲン原子を表すことが好ましく、より好ましくは水素原子、置換若しくは無置換のアシルアミノ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルウレイド基、置換若しくは無置換のアリールウレイド基、又はスルホ基であり、特に好ましくは水素原子又はスルホ基である。また、各基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
一般式(1)中、R3及びR8は、原材料の入手性と合成の容易性の観点から、各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルウレイド基、置換若しくは無置換のアリールウレイド基、スルホ基、カルボキシル基、又はハロゲン原子を表すことが好ましく、より好ましくは水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又はスルホ基であり、特に好ましくは置換若しくは無置換のアルキル基である。アルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。また、各基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
一般式(1)中、R11、R14、R13、R16、R17、R18、R19及びR20は、原材料の入手性と合成の容易性の観点から、各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はスルホ基を表すことが好ましく、より好ましくは水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はスルホ基であり、特に好ましくは水素原子である。また、各基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
一般式(1)中、R12及びR15は、原材料の入手性と合成の容易性の観点から、各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、ハロゲン原子、又はスルホ基が好ましく、より好ましくは水素原子又はスルホ基である。また各基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
また、溶解性の観点からは、一般式(1)中のR1、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20の少なくとも1つはカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノ基などのイオン性親水性基を有することが好ましい。これらのイオン性親水性基の対カチオンとしては、水素原子(プロトン)、アルカリ金属カチオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオン)、アンモニウムイオンなどが挙げられるが、合成の容易性(染料粉末としての取り扱いの容易さ)の観点からアルカリ金属カチオンであることが好ましい。
一般式(1)中、R101及びR102は各々独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカル
ボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、又は置換若しくは無置換のアルキルアリールアミノカルボニル基を表す。
R101及びR102が置換若しくは無置換のアルキル基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。また、アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、アリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
R101及びR102が置換若しくは無置換のアリール基を表す場合のアリール基としては、炭素数6~14のアリール基が好ましく、炭素数6~10のアリール基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。また、アリール基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
R101及びR102が置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す場合のヘテロ環基としてはトリアジン基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、又はチアジアゾリル基が好ましい。また、ヘテロ環基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のスルファモイル基が好ましい。
R101及びR102が置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基を表す場合のアルキルスルホニル基としては、炭素数1~6のアルキルスルホニル基が好ましく、炭素数1~3のアルキルスルホニル基がより好ましく、メチルスルホニル基が更に好ましい。また、アルキルスルホニル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
R101及びR102が置換若しくは無置換のアリールスルホニル基を表す場合のアリールスルホニル基としては、炭素数6~14のアリールスルホニル基が好ましく、炭素数6~10のアリールスルホニル基がより好ましく、フェニルスルホニル基が更に好ましい。また、アリールスルホニル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、カルボキシル基が特に好ましい。
R101及びR102が置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基を表す場合のアルコキシカルボニル基としては、-COOR201で表されることが好ましい。ここでR201は炭素数1~6のアルキル基を表し、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。また、アルコキシカルボニル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
R101及びR102が置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基を表す場合のアリールオキシカルボニル基としては、-COOR202で表されることが好ましい。ここでR202は炭素数6~14のアリール基を表し、炭素数6~10のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。また、アリールオキシカルボニル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、ニトロ基が特に好ましい。
R101及びR102が置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基を表す場合のモノアルキルアミノカルボニル基としては、-CONHR203で表されることが好ましい。ここでR203は炭素数1~12のアルキル基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基が更に好ましく、イソプロピル基が特に好ましい。また、モノアルキルアミノカルボニル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、フェニル基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ヒドロキシル基が特に好ましい。
R101及びR102が置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基を表す場合のジアルキルアミノカルボニル基としては、-CONR204R205で表されることが好ましい。ここでR204及びR205は各々独立に炭素数1~10のアルキル基を表
し、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、イソプロピル基がより好ましい。
また、ジアルキルアミノカルボニル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~6のアルキルオキシカルボニル基であり、より好ましくはエチルオキシカルボニル基)が特に好ましい。
R101及びR102が置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基を表す場合のモノアリールアミノカルボニル基としては、-CONHR206で表されることが好ましい。ここでR206は炭素数6~14のアリール基を表し、炭素数6~12のアリール基が好ましく、炭素数6~10のアリール基がより好ましい。具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。また、モノアリールアミノカルボニル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくはシクロヘキシルオキシ基)が特に好ましい。
R101及びR102が置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基を表す場合のジアリールアミノカルボニル基としては、-CONR207R208で表されることが好ましい。ここでR207及びR208は各々独立に炭素数6~14のアリール基を表し、炭素数6~10のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。また、ジアリールアミノカルボニル基が置換基を有する場合の置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
R101及びR102は、彩度、耐光性及び耐ガス性の観点から、好ましくは置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、又は置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基であり、より好ましくは置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、又は置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基であり、特に好ましくは置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、又は置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基である。
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。下記具体的化合物の構造式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、i-Prはイソプロピル基を表し、n-Buはn-ブチル基を表す。また、R及びMにおける比はモル比である。
1.2.染料B
本実施形態に係るインク組成物は、染料として、380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が70nm以上である染料Bを含む。380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が70nm以上である染料は、半値幅が70nm以上であることにより、発色性や耐ガス性は染料Aよりも劣るものの、暗部の階調性(粒状性)に優れた性質を有する。このため、染料を上述の染料Aと組み合わせて用い、更に、インク組成物中における含有量を調整することによって、得られる記録物の発色性、暗部の階調性および耐ガス性の向上が可能となる。
本実施形態に係るインク組成物において、染料の全質量(100質量%)に対する染料
Bの含有量は10質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、本実施形態に係るインク組成物において、染料の全質量(100質量%)に対する染料Bの含有量は、60質量%以下であり、50質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。染料Bの含有量が前記範囲にあることにより、得られる記録物の発色性、暗部の階調性および耐ガス性の向上が可能となる。
また、本実施形態に係るインク組成物において、染料Bの含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、0.6質量%以上であることがより好ましく、1.2質量%以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態に係るインク組成物において、染料Aの含有量は、インク組成物の全質量に対して、3.0質量%以下であることが好ましく、2.4質量%以下であることがより好ましく、1.8質量%以下であることがさらに好ましい。染料Bの含有量が上記範囲内であることにより、得られる記録物の発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れたインク組成物が得られる。
染料Bの最大ピークの最大吸収波長は、500nm以上600nm以下の波長域にあることが好ましい。そのような特徴を有する染料Bを、上記の染料Aと一定の割合で組み合わせて用いることにより、特に、発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れた画像が得られるインク組成物を提供することができる。
本実施形態に係るインク組成物で用いられる染料Bは、アントラピリドン系染料、反応性染料及びアゾ系染料から選ばれる1種以上であることが好ましい。染料Bがアントラピリドン系染料、反応性染料及びアゾ系染料から選ばれる1種以上であることにより、発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れたインク組成物となる。
380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が70nm以上であるアントラピリドン系染料としては、下記式(M-1)で表される染料が好ましい。本実施形態に係るインク組成物が、下記式(M-1)表される染料を含むことにより、より暗部の階調性及び耐ガス性に優れる画像が得られ、耐湿性も向上する。
<一般式(M-1)で表される染料>
以下、一般式(M-1)で表される染料について詳細に説明する。なお、一般式(M-1)で表される染料は、塩を形成していてもよい。
一般式(M-1)中、A
M1は、炭素数1もしくは2のアルキレン基、フェニレン基を含有する炭素数1もしくは2のアルキレン基又は下記式(M-1-1)で表される基を表し、X
M1は、アミノ基、ヒドロキシ基、塩素原子、又はスルホ基もしくはカルボキシ基で置換されたフェノキシ基を表す。
一般式(M-1-1)中、R
M1は、水素原子又はアルキル基を表す。
上記一般式(M-1)中、AM1は、炭素数1又は2のアルキレン基が好ましく、炭素数2のアルキレン基であることがより好ましい。
一般式(M-1)中、XM1は、アミノ基、ヒドロキシ基、塩素原子、又はスルホ基もしくはカルボキシ基で置換されたフェノキシ基を表す。これらの中でもスルホ基又はカルボキシ基で置換されたフェノキシ基が好ましく、カルボキシ基で置換されたフェノキシ基がより好ましい。カルボキシ基で置換されたフェノキシ基は、良好な耐湿性の改善効果を備え、2つのカルボキシ基で置換されたフェノキシ基は、より良好な耐湿性を有しているため、特に好ましい。
一般式(M-1)中、スルホ基又はカルボキシ基で置換されたフェノキシ基の具体例としては、4-スルホフェノキシ、2,4-ジスルホフェノキシ、4-カルボキシフェノキシ、3,5-ジカルボキシフェノキシであり、より好ましくは、4-カルボキシフェノキシ、3,5-ジカルボキシフェノキシであり、さらに好ましくは3,5-ジカルボキシフェノキシである。
一般式(M-1)で表される化合物の塩としては、アンモニウム塩又はアルカリ金属塩が挙げられる。
一般式(M-1)で表される染料の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましく、0.8質量%以上であることがさらに好ましい。また、一般式(M-1)で表される染料の含有量は、インク組成物の全質量に対して、3.0質量%以下であることが好ましく、2.4質量%以下であることがより好ましく、1.6質量%以下であることがさらに好ましい。式(M-1)で表される染料の含有量が上記範囲内であることにより、発色性及び耐ガス性に優れる画像が得られる。
<一般式(M-2)で表される染料>
380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が70nm以上であるアゾ系染料としては、例えば、下記一般式(M-2)で表される染料が好ましい。本実施形態に係るインク組成物が、下記一般式(M-2)表される染料を含むことにより、より発色性及び耐ガス性に優れる画像が得られる。
一般式(M-2)で表される染料は、塩を形成していてもよい。
上記一般式(M-2)中、A
M2は、5員複素環基を表し、
B
M21及びB
M22は、各々-CR
M21=、-CR
M22=を表すか、あるいはい
ずれか一方が窒素原子,他方が-CR
M21=又は-CR
M22=を表し、
R
M23、R
M24は、各々独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表わし、R
M23,R
M24は更に置換基を有していてもよく、
G
M2、R
M21、R
M22は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基又はアリール基又は複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキル及びアリールチオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、又はヘテロ環チオ基を表し、G
M2、R
M21、R
M22は、更に置換されていてもよく、
R
M21とR
M23、あるいはR
M23とR
M24が結合して5~6員環を形成してもよい。
一般式(M-2)中、5員複素環基としては、例えば、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げることができ、各複素環基は更に置換基を有していてもよい。また、複素環の中でも、ピラゾール環が好ましい。
一般式(M-2)中、RM21において、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
一般式(M-2)中、RM22において、脂肪族基が好ましく、メチル基、エチル基、分岐していてもよいプロピル基、又は分岐していてもよいブチル基がより好ましい。
一般式(M-2)中、RM23、RM24は、各々独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表わす。RM23、RM24は、更に置換基を有していてもよい。
一般式(M-2)中、RM23において、芳香族基が好ましく、具体的には、ベンゼン環基又はナフタレン環基が挙げられる。上記のRM24において、複素環基が好ましく、具体的には、ベンゾチアゾール環基が挙げられる。
一般式(M-2)中、GM2、RM21、RM23は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基又はアリール基又は複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキル及びアリールチオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、又はヘテロ環チオ基を表す。RM23,RM24は、更に置換されていてもよい。また、RM21と
RM23、あるいはRM23,RM24が結合して5~6員環を形成してもよい。
一般式(M-2)で表される染料の中でも、下記一般式(M-21)で表される化合物が好ましい。
一般式(M-21)中、R
M25、R
M26、R
M27、R
M28、R
M29は、水素原子、アルキル基、スルホ基又はその塩を表す。一般式(M-21)において、R
M25、R
M29は、共にアルキルであるときは、該アルキル基を構成する炭素数の合計が3以上であって、それらに置換基を有していてもよい。X
M2は水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表し、Y
M2及びZ
M2は各々独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。また、R
M25~R
M29にスルホ基が含まれる場合には-SO
3Mの形となっている。その場合、Mとしては、アルカリ金属原子が好ましく、より好ましくはLi及びNaの少なくとも1種である。
一般式(M-21)中、XM2において、特に芳香族基、脂環式基、複素環基が好ましく、具体例としては、例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサン環、スルホラン環及びチアン環等が挙げられる。これらの中でも、複素環がより好ましい。
一般式(M-21)中、YM2及びZM2の好ましい具体例は、染料(M-2)におけるRM23及びRM24の好ましい具体例と同様である。
一般式(M-21)で表される化合物の中でも、優れた発色性と耐ガス性を有していることから、下記一般式(M-22)で表される化合物が特に好ましい。
一般式(M-22)中、R
M25、R
M26、R
M27、R
M28、R
M29、R
M210、R
M211、R
M212、R
M213、R
M214は、水素原子、アルキル基、ス
ルホ基又はその塩を表し、M
M2は、水素原子又はアルカリ金属原子を表す。また、R
M25及びR
M29が共にアルキル基である場合には、そのアルキル基を構成する炭素数の合計が3以上であって、それらはさらに置換基を有してもよく、R
M210及びR
M214が共にアルキル基である場合には、そのアルキル基を構成する炭素数の合計が3以上であって、それらはさらに置換基を有してもよい。
上記一般式(M-22)で表される化合物の中でも下記一般式(M-23)で表される化合物が特に好ましい。
また、本実施形態に係るインク組成物において、一般式(M-1)で表される染料と一般式(M-2)で表される染料とを併用する場合には、一般式(M-1)で表される染料と一般式(M-2)で表される染料との含有比率は、好ましくは1:2~15:1であり、より好ましくは5:1~13:1である。両染料をこのような比率で含有させることにより、耐湿性、耐ガス性を高次元で満足させることができる。
380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が70nm以上である反応性染料としては、例えば、下記一般式(M-3)で表されるC.I.リアクティブレッド 141が挙げられる。本実施形態に係るインク組成物が、下記一般式(M-3)表される染料を含むことにより、より暗部の階調性が向上する。
本実施形態に係るインク組成物は、色調などの調整のため、発色性、暗部の階調性、耐ガス性をはじめとする各特性を大きく損ねない範囲で、上記以外の染料を含有してもよい。
<染料Aおよび染料Bの吸収スペクトルおよび半値幅の測定>
本実施形態に係るインク組成物で用いられる上記の染料Aおよび染料Bの吸収スペクトルおよび半値幅の測定は、紫外可視分光光度計を用いて行うことができ、例えば、以下に示す条件で行うことができる。
まず、測定するサンプルは、染料固形分が100ppm(wt/vol)となるように、メスフラスコにて測定する染料をマイクロピペットを用いて超純水で希釈する。次に、得られたサンプルを、以下に示す条件で測定する。
装置:紫外可視分光光度計 V-770 series(日本分光株式会社製)
パラメーターファイル
測光モード:Abs
測定範囲:800-300nm
データ取込間隔:0.5nm
UV/Visバンド幅:2.0nm
NIRバンド幅:8.0nm
UV/Visレスポンス:0.06sec
NIRレスポンス:0.06sec
走査速度:400nm/min
光源切換:340nm
回折格子切換:850nm
光源:D2/WI
フィルター切換:ステップ
補正:ベースライン
図1、2に、上記の条件で測定して得られた染料の吸収スペクトルを示す。
図1は染料Aとしての上記一般式(1-20)で表される化合物(固形分換算 100ppm)の吸収スペクトルである。図1において、縦軸は吸光度(Abs)を、横軸は波長λ(nm)を表す。また、符号1-20で示されているのが一般式(1-20)で表される化合物の吸収スペクトルであり、矢印Pmaxで示されているのが一般式(1-20)で表される化合物の吸収スペクトルのピーク頂点である。ピーク頂点の波長、つまり極大吸収波長(λmax)は533nmであり、極大吸収波長(λmax)の吸光度(Abs)は7.01である。したがって、一般式(1-20)で表される化合物の吸収スペクトルの最大ピークの半値幅は、極大吸収波長(λmax)533nmにおける、ベースラインを示す横線Bから最大吸光度7.01の1/2の吸光度の高さにおけるピーク幅(nm)となり、その値は39.0nmとなり、この半値幅は50nm以下である。
図2は上記一般式(M-1)で表される化合物(固形分換算 100ppm)の吸収スペクトルである。図1と同様に計算すると、極大吸収波長(λmax)は511nmであり、極大吸収波長(λmax)の吸光度(Abs)は1.31である。したがって、一般式(M-1)で表される化合物の吸収スペクトルの最大ピークの半値幅は、極大吸収波長(λmax)511nmにおける、ベースラインを示す横線Bから最大吸光度1.31の1/2の吸光度の高さにおけるピーク幅(nm)となり、その値は88.5nmとなり、半値幅が70nm以上である。
なお、図示しないが、上記一般式(M-23)で表される化合物の、380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅は87.0nmとなり、上記一般式(M-3)で表される化合物の380nm以上780nm以下の波長域に
おける吸収スペクトルの最大ピークの半値幅は85.5nmとなり、いずれも半値幅が70nm以上である。
<染料Aおよび染料Bの同定>
なお、インク組成物中に含まれている上記の染料Aおよび染料Bの同定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で得られた各ピークの保持時間(リテンションタイム)と、各ピークについての吸光度と吸収波長を得ることにより行うことができる。
HPLCを用いた同定は、例えば、以下に示す条件で行うことができる。先ず、メタノールで約1000倍に希釈した液体(インク組成物)を調製し、測定用サンプルとする。そして、下記の条件でHPLCによる分析を行い、フォトダイオードアレイ検出器(PDA:Photodiode Array Detector)を用いて、ピークの保持時間(リテンションタイム)と、そのピークの吸光度及び吸収波長を測定する。また、事前に用意した検量線を用いて、HPLCのピーク面積から各染料の含有率を算出し、含有率が100ppm(wt/vol)となるよう比例換算した吸収スペクトルから、各ピークの半値幅を算出することができる。
・HPLCによる測定条件
装置:Waters ACQUITY UPLC SYSTEM(Waters社製)
カラム:ODSカラム(ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm)
移動相組成
溶剤A:超純水(市販品:LC-MSグレード)
溶剤B:アセトニトリル(HPLCグレード)
溶剤C:アセトニトリル(HPLCグレード)
溶剤D:100mM重炭酸アンモニウム水溶液
移動相のグラジエント条件:表1
流速:0.1mL/min
注入量:1.0μL
温度:40℃
検出器:PDA(210nm-800nm)
各染料の保持時間と最大吸収波長:表2
以上の条件でインク組成物を測定することにより、インク組成物中に含まれている染料
Aおよび染料Bの同定とその含有率を得ることができる。
1.3.水溶性有機溶剤
本実施形態に係るインク組成物は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、揮発性の水溶性有機溶剤が好ましく用いられる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルキルベタイン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及びtert-ペンタノール等のアルコール類又はグリコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル2-ピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、及び1,1,3,3-テトラメチル尿素が挙げられる。
上記の水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶性有機溶剤の含有量は特に制限されず、必要に応じて適宜決定することができる。例えば、記録媒体へのインクの浸透性、保湿性、連続印字安定性を優れたものとする場合には、アルキルベタイン、グリセリン、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエタノールアミンを用いることが好ましい。
アルキルベタインとしては、下記一般式(B-1)の化合物や、その塩が挙げられる。
(R)p-N-[L-(COOM)q]r・・・・式(B-1)
上記一般式(B-1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Lは2価以上の連結基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基、プロトン化された有機アミンもしくは含窒素へテロ環基、4級アンモニウムイオン基を表し、一般式(B-1)中のN原子からなるアンモニウムイオンの対イオンとなる場合は、カチオンとして存在しない基を表す。qは1以上の整数を表し、rは1以上4以下の整数を表す。pは0以上4以下の整数を表し、p+rは3もしくは4である。p+rが4である場合Nは4級アミンを構成する窒素原子となる。pが2以上の時はRは同じでも異なっていてもよい。qが2以上の時COOMは同じでも異なっていてもよい。rが2以上の時はL-(COOM)qは同じでも異なっていてもよい。
アルキルベタインとしては、インク組成物の記録媒体への定着性向上の点から、下記一般式(B-2)、(B-3)で表される化合物を用いることが好ましく、一般式(B-3)で表される化合物を用いることがより好ましい。下記一般式(B-2)、(B-3)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
一般式(B-2)中、R
1~R
3は、炭素数が1~20のアルキル基を表し、Xは、2価の連結基を表す。なお、当該一般式(B-2)中のR
1及びR
3は、上述した一般式(1)中のR
1、R
2、及びRとは関係のないものである。
上記水溶性有機溶剤のうち、アルキルベタインの含有量は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、アルキルベタインの含有量は、インクの全質量に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。前記の範囲にあることにより、気液界面異物の発生を抑制して連続印字安定製が向上すると共に、得られた印刷物の画像堅牢性、例えば耐湿性が向上する。
また、上記水溶性有機溶剤の含有量の合計は、インクの全質量に対して、好ましくは5質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは7.5質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上15質量%以下である。
1.4.界面活性剤
本実施形態に係るインク組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。本実施形態に係るインク組成物が界面活性剤を含むことにより、インクの動的表面張力や濡れ性を調整し、吐出安定性を向上させることができる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、インクの動的表面張力や濡れ性を調整し、吐出安定性を向上させる点で、HLB値が4以下のアセチレングリコール系界面活性剤、主鎖の炭素数が12以上であるアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物、主鎖の炭素数が10以上であるアセチレングリコール等のアセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。
<HLB値が4以下のアセチレングリコール系界面活性剤>
本実施形態に係るインク組成物は、界面活性剤として、HLB値が4以下のアセチレングリコール系界面活性剤を含むことが好ましい。HLB値が4以下のアセチレングリコール系界面活性剤(以下、「アセチレングリコールA」ともいう。)は疎水性が高く、消泡
性があることから、他の界面活性剤と組み合わせて用いることにより、インクの動的表面張力や濡れ性を調整し、吐出安定性を向上させることができる。
ここで、界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、グリフィン法により算出される値である。具体的には、下記式(H)にしたがって界面活性剤のHLB値を算出することができる。
HLB値=20×(親水基の質量%) ・・・(H)
アセチレングリコールAとしては、特に限定されないが、例えば、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールが挙げられる。また、市販品としては、例えば、エアープロダクツジャパン株式会社製の、サーフィノール104S(HLB4)、サーフィノール104PG50(HLB4)、サーフィノール420(HLB4)、サーフィノール82(HLB4)、サーフィノールDF110D(HLB3)、サーフィノールMD-20(HLB4)等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アセチレングリコールAの含有量は、インクの全質量に対して、好ましくは0.050質量%以上1.0質量%以下であり、より好ましくは0.075質量%以上0.50質量%以下であり、さらに好ましくは0.10質量%以上0.30質量%以下である。アセチレングリコールAの含有量が0.050質量%以上であることにより、疎水面への濡れ性が上がり充填性がより向上する傾向にある。また、アセチレングリコールAの含有量が0.30質量%以下であることにより、溶解安定性がより向上する。
<主鎖の炭素数が12以上であるアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物>
本実施形態に係るインク組成物は、界面活性剤として、主鎖の炭素数が12以上であるアセチレングリコールアルキレンオキサイド付加物を含むことが好ましい。本実施形態に係るインク組成物が主鎖の炭素数が12以上であるアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物を含むことにより、初期充填性が向上し、色再現性、ブリードが抑制され、画質がより向上する。
主鎖の炭素数が12以上であるアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物(以下、「アセチレングリコールB」ともいう。)は、後述する主鎖の炭素数が10以上であるアセチレングリコールとともに、アセチレングリコール系界面活性剤(ノニオン系界面活性剤)に含まれるものである。ノニオン系界面活性剤は、記録媒体上でインクを均一に拡げる作用がある。そのため、ノニオン系界面活性剤を含むインクを用いてインクジェット記録を行った場合、滲みの少ない比較的高精細な画像が得られる。なお、本明細書における「主鎖」とは、IUPAC命名法に基づく主鎖を意味する。
特に、アセチレングリコールBは、主鎖の炭素数12以上であることにより、インク流路を構成するゴムやプラスチック等の高分子部材及びインクにおける気泡発生の一因となり得る異物に対する濡れ性に優れる。そのため、アセチレングリコールBを用いることにより、インクタンクからヘッドまでの高分子部材の流路面に、発生した気泡が残留することを抑制することができる。また、これにより、初期充填性が優れるとともに、残留した気泡の成長、及び流路面に付着していた気泡の離脱に起因するドット抜けを共に防止できることから、連続印刷安定性が良好となる。さらに、アセチレングリコールBは、アルキレンオキサイド付加物であることによりインク組成物中における溶解性が優れたものとなる。
アセチレングリコールBのHLB値は、上記の濡れ性が一層優れたものとなるため、好
ましくは4以上15以下であり、より好ましくは8以上15以下である。なお、ここにおいても、HLB値は、グリフィン法で定義されるHLB値とする。
アセチレングリコールBとしては、以下に限定されないが、例えば、下記一般式(A-1)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(A-1)中、R
1、R
1’、R
2、及びR
2’は互いに独立して炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、主鎖の炭素数は12以上であり、-OR
3は-OH又は-O(C
2H
4O)
mHを表し、-OR
3’は-OH又は-O(C
2H
4O)
nHを表す。その際、m及びnは互いに独立して0.5以上25以下の小数を含む値であり、m+nは1以上40以下の小数を含む値である(ただし、-OR
3及び-OR
3’が共に-OHである場合を除く。)。なお、当該一般式(A-1)中のR
1及びR
2は、上述した一般式(1)、(B-2)中のR
1及びR
2とは関係のないものである。
アセチレングリコールBの具体例としては、特に限定されないが、例えば、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールのエトキシル化物及び5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールのエトキシル化物が挙げられる。上記アセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物の中でもアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物及びアセチレングリコールのプロピレンオキサイド付加物が好ましく、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
アセチレングリコール中のアルキレンオキサイド単位の付加モル数は、R3及びR3’それぞれにおいて、好ましくは1モル以上20モル以下である。また、当該付加モル数の総数(R3及びR3’の合計)は、好ましくは2モル以上40モル以下である。アルキレンオキサイドの付加モル数の総数が40モル以下であると、静的及び動的表面張力を小さくすることができ、インクの吸収性能が良好となる。
アセチレングリコールBの市販品としては、以下に限定されないが、例えば、オルフィンEXP4300(商品名、日信化学工業株式会社製、炭素数12-エチレンオキサイド付加物)が挙げられる。
アセチレングリコールBは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アセチレングリコールBの含有量は、インクの全質量に対して、好ましくは0.050質量%以上1.0質量%以下であり、より好ましくは0.075質量%以上0.50質量%以下であり、さらに好ましくは0.10質量%以上0.30質量%以下である。アセチレングリコールBの含有量が0.050質量%以上であることにより、疎水面への濡れ性が上がり充填性がより向上する傾向にある。また、アセチレングリコールBの含有量が0.30質量%以下であることにより、溶解安定性がより向上する。
<主鎖の炭素数が10以上であるアセチレングリコール>
本実施形態に係るインク組成物は、主鎖の炭素数が10以上であるアセチレングリコールを含むことが好ましい。主鎖の炭素数10以上であるアセチレングリコール(以下、「
アセチレングリコールC」ともいう。)は、消泡性に優れ、インク収容容器等へのインク導入中に発生した気泡を効果的に消泡させることができる。これにより、初期充填性及び連続印刷安定性が向上する。
アセチレングリコールCのHLB値は、消泡性に優れるため、7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。また下限値としては3以上であることが好ましい。HLB値が上記範囲であることにより、消泡性により優れる傾向にある。
アセチレングリコールCとしては、特に限定されないが、具体的には、下記一般式(A-2)で表されるアセチレングリコールが挙げられる。
上記一般式(A-2)中、R
1、R
1’、R
2、及びR
2’は互いに独立して炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、主鎖の炭素数は10以上である。なお、当該一般式(A-2)中のR
1、R
1’、R
2、及びR
2’は、上述した一般式(1)、(B-2)、(A-2)中のR
1、R
1’、R
2、及びR
2’とは関係のないものである。
アセチレングリコールCの具体例としては、以下に限定されないが、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオールが好ましく挙げられる。
アセチレングリコールCの市販品としては、以下に限定されないが、例えば、サーフィノール104PG50(2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール)、サーフィノールDF110D(2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール)(以上、エアプロダクツ社製商品名)が挙げられる。
アセチレングリコールCは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アセチレングリコールCの含有量は、インクの全質量に対して、好ましくは0.050質量%以上1.0質量%以下であり、より好ましくは0.075質量%以上0.50質量%以下であり、さらに好ましくは0.10質量%以上0.30質量%以下である。アセチレングリコールCの含有量が0.050質量%以上であることにより、抑泡性が上がり、充填性がより向上する。また、アセチレングリコールCの含有量が0.30質量%以下であることにより、溶解安定性がより向上する。
アセチレングリコールC及び上述したアセチレングリコールA、B(以下、まとめて「アセチレングリコール系化合物」ともいう。)の総含有量は、インクの全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.4質量%以上0.7質量%以下である。アセチレングリコールA~Cの含有量が前記範囲内にあることにより、インクに対する溶解性が良好となり、これらのアセチレングリコールを配合した際に凝集物が発生するのを効果的に防止できる。
また、アセチレングリコールCの含有量と、上述したアセチレングリコールBの含有量
との質量比は、アルキレンオキサイド付加物の含有量1に対し、主鎖の炭素数10以上であるアセチレングリコールの含有量が0.5以上2.5以下であることが好ましく、0.5以上2.0以下であることがより好ましく、0.5以上1.5以下であることがさらに好ましい。質量比が上記範囲であることにより、初期充填性及び連続印刷安定性により優れる。
<ポリオキシアルキレンアルキルエーテル>
本実施形態に係るインク組成物は、上述したアセチレングリコールBを含む場合には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むことが好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むことにより、上述したアセチレングリコールBの溶解性、分散性がより向上し、初期充填性が向上する。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、上述したアセチレングリコールBの有する低い動的表面張力に影響を及ぼしにくい。
ところで、後述する、インク連続供給システム(CISS)は、疎水性の材料からなるインク流路やインクタンクが使用されることが多いため、インク連続供給システムに用いるインク組成物は比較的疎水性の界面活性剤を使用することが効果的である。この観点から、アセチレングリコールBを用いることが有効であるが、アセチレングリコールBの効果を得つつ、さらに、溶解安定性、初期充填性、連続印刷安定性を向上させる観点から、特に、本実施形態に係るインク組成物を、インク連続供給システム(CISS)を備える記録装置に対して用いる場合には、インクがポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むことが好ましい。
ここで、「インク供給システム」とは、空気導入口を有するインク収容容器(インクタンク)と、インク収容容器内の上記液体を吐出するノズルを有するプリントヘッドと、上記インク収容容器及び上記プリントヘッドを接続し、上記インク収容容器から上記プリントヘッドへ上記液体を供給するインク供給路と、を備えるものをいう。
また、「インク流路」とは、インクジェット記録装置において、インクを流通させるための流路をいう。インク流路としては、例えば、インクを貯留するインク収容容器からインクジェット式記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給路や、インクジェット式記録ヘッド内においてインクをノズル開口部まで流通させるための流路が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値は、好ましくは11以上16以下であり、より好ましくは12以上15以下である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値が上記範囲内であることにより、初期充填性及び連続印刷安定性がより向上する傾向にある。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、以下に限定されないが、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。このようなポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることにより、保存安定性及び連続印刷安定性がより向上する傾向にある。
R6O(C2H4O)w(C3H6O)x(C2H4O)y(C3H6O)zH・・・(2)
上記式(2)中、R6は、炭素数1以上20以下のアルキル基を表し、好ましくは炭素数5以上15以下のアルキル基を表し、より好ましくは炭素数10以上15以下のアルキル基を表す。また、wは1以上20以下の値であり、x、y、及びzは互いに独立して0又は1以上20以下の値である。さらに、w、x、y、及びzは、5≦w+x+y+z≦30を満たし、好ましくは5≦w+x+y+z≦25を満たす。上記のようなポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることにより、保存安定性及び連続印刷安定性により優れる傾向にある。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、具体的には、
C12H25O(C2H4O)6(C3H6O)2(C2H4O)6(C3H6O)8H、
C13H27O(C2H4O)6(C3H6O)2(C2H4O)6(C3H6O)8H、
C12H25O(C2H4O)w(C3H6O)x(C2H4O)y(C3H6O)zH、
(ここで、w+y=15、x+z=4)、
C13H27O(C2H4O)w(C3H6O)x(C2H4O)y(C3H6O)zH、
(ここで、w+y=15、x+z=4)、
C12H25O(C2H4O)8(C3H6O)2(C2H4O)6H、
C13H27O(C2H4O)8(C3H6O)2(C2H4O)6H、
C12H25O(C2H4O)12(C3H6O)2(C2H4O)12H、
C13H27O(C2H4O)12(C3H6O)2(C2H4O)12H、
CH3(CH2)9(CH3)CHO(C2H4O)7(C3H6O)4.5H、
CH3(CH2)11(CH3)CHO(C2H4O)7(C3H6O)4.5H、
CH3(CH2)9(CH3)CHO(C2H4O)5(C3H6O)3.5H、
CH3(CH2)11(CH3)CHO(C2H4O)5(C3H6O)3.5H、
C14H29O(C2H4O)14(C3H6O)2H、
C11H23O(C2H4O)8H、
C10H21O(C2H4O)11H、及び
C12H25O(C2H4O)15Hが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの市販品としては、特に限定されないが、具体的には、
ノイゲンDL-0415(R6O(C2H4O)W(C3H6O)x(C2H4O)y(C3H6O)zH、「R6」:炭素数12,13のアルキル、w+y=15、x+z=4、HLB値15.0)、
ノイゲンET-116B(R6O(C2H4O)7(C3H6O)4.5H、「R6」:炭素数12,14のアルキル、HLB値12.0)、
ノイゲンET-106A(R6O(C2H4O)5(C3H6O)3.5H、「R6」:炭素数12,14のアルキル、HLB値10.9)、
ノイゲンDH-0300(R6O(C2H4O)2H、「R6」:炭素数14のアルキル、HLB値4.0)、
ノイゲンYX-400(R6O(C2H4O)40H、「R6」:炭素数12のアルキル、HLB値18.1)、
ノイゲンEA-160(C9H19C6H4O(C2H4O)16.8H、HLB値15.4)(以上、第一工業製薬社製)、及び
エマルゲン1108(花王社製商品名、R6O(C2H4O)8H、「R6」:炭素数11のアルキル、HLB値13.4)が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係るインク組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量は、インクの全質量に対し、好ましくは0.10質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.50質量%以上7.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量が上記範囲であることにより、保存安定性及び連続印刷安定性がより向上する。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量は、アセチレングリコールBの含有量1.0質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは1.5質量部以上3.0質量部以下である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの添加量が上記範囲内であることにより、アセチレングリコールBが十分に可溶化し、水溶性が良好となる傾向にある。そのため、配合した際に凝集物が発生したりインクの吸収性にバラツキが発生したりすることを抑制できる。
<上記以外の界面活性剤>
本実施形態に係るインク組成物は、上記以外の界面活性剤を含んでもよい。当該界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤のうち少なくともいずれかが好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S-144、S-145(旭硝子株式会社製);FC-170C、FC-430、フロラード-FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO-100、FSN、FSN-100、FS-300(Dupont社製);FT-250、251(株式会社ネオス製)などが挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
1.5.水
本実施形態に係るインク組成物は、水をさらに含んでもよい。
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。これにより貯蔵安定性がより向上する。
水の含有量は、インク組成物の全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。水の含有量が前記範囲にある場合には、さらに吐出特性と画質が向上する。
1.6.pH調整剤
本実施形態で用いるインク組成物は、pH調整剤を含んでもよい。pH調整剤は、インクのpH値の調整を容易にすることができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム
、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。pH調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
1.7.その他の成分
本実施形態に係るインク組成物は、その保存安定性及びヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
1.8.インク組成物の調製方法
本実施形態に係るインク組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.9.インク組成物の物性
本実施形態に係るインク組成物は、記録品質とインクジェット用インクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上50mN/mであることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態に係るインク組成物の20℃における粘度は、1mPa・s以上8mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度は、振動式粘度計VM-100AL(山一電機株式会社製)を用いて測定できる。
なお、上記したように、本実施形態に係るインク組成物を、上述の<染料Aおよび染料Bの同定>に記載の方法で測定すると、インク組成物中に含まれている染料Aおよび染料Bの各ピークの保持時間(リテンションタイム)と、各ピークについての吸光度と吸収波長を得ることができ、これらの結果より、各ピークの半値幅や各染料の含有率を算出することができる。
1.10.用途
本実施形態に係るインク組成物は、染料として、半値幅が50nm以下であり、彩度が高い染料Aと、半値幅がブロードで暗部の階調性に優れた染料Bという、異なる分布をもつ2種類の染料を一定の割合で組み合わせることにより、発色性、暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られるインク組成物を提供することができ、連続供給型のインク収容容器を用いた長期印刷時においても、発色性、暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られる。これにより、インクジェット記録装置だけでなく、連続供給型のインク収容容器を用いた長期印刷が可能なインクジェット記録装置においても好適に用いることができる。
また、インク組成物中に含まれる溶剤や界面活性剤の選択により、本実施形態に係るインク組成物は、連続供給型のインク収容容器を用いた長期印刷時において、初期の充填性
や連続印字安定性に優れると共に、画像堅牢性に優れた印刷物が得られるインク組成物であり、印刷対象となる記録媒体は特に制限されるものではない。
2.インクセット
本実施形態に係るインク組成物は、シアンインクやイエローインクとのインクセットとして好適に用いることができ、さらに、これら以外のインクを有してもよい。このインクセットを用いて記録することにより、発色性、暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られる。また、連続供給型のインク収容容器を用いた長期印刷時においても、発色性、暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られる。
以下、本発明の一実施形態に係るインクセットについて説明する。
本発明の一実施形態に係るインクセットは、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクを含むインクセットであって、前記シアンインクが、染料として、下記一般式(C-1)で表される第1のシアン染料、下記一般式(C-2)で表される第2のシアン染料、下記一般式(C-3)で表される第3のシアン染料、C.I.ダイレクトブルー199およびC.I.ダイレクトブルー86から選択される1種以上を含み、前記マゼンタインクが本発明の一実施形態に係るインク組成物であり、前記イエローインクが、染料として、下記一般式(Y-1)で表される第1のイエロー染料、下記一般式(Y-2)で表される第2のイエロー染料、C.I.ダイレクトイエロー86およびC.I.ダイレクトイエロー132から選択される1種以上を含むことを特徴とする。
一般式(C-1)中、RはSO
2(CH
2)
3SO
3Naを表す。
一般式(C-2)中、Rのいずれか2つはSO
2(CH
2)
3SO
3Liを表し、残りの2つはSO
2(CH
2)
3SO
2NHCH
2(OH)CH
3を表す。
一般式(C-3)中、
破線で表される環A
1乃至A
3は、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、前記含窒素複素芳香環の個数は、平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
かつb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。
2.1.シアンインク
本実施形態に係るインクセットを構成するシアンインは、染料として、フタロシアニン骨格を有する化合物であることが好ましく、上記一般式(C-1)で表される第1のシアン染料、上記一般式(C-2)で表される第2のシアン染料、上記一般式(C-3)で表される第3のシアン染料、C.I.ダイレクトブルー199およびC.I.ダイレクトブルー86から選択される1種以上を含む。本実施形態に係るインクセットが、前記の少なくともいずれかのシアンインクを上記のインク組成物と共に含むことにより、発色性、暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られる。また、連続供給型のインク収容容器を用いた長期印刷時においても、発色性、暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られる。
なお、上記一般式(C-2)で表される第2のシアン染料において、Rのいずれか2つはSO
2(CH
2)
3SO
3Liを表し、残りの2つはSO
2(CH
2)
3SO
2NHCH
2(OH)CH
3を表すものであり、次の2つの構造の混合物であることが好ましい。
また、上記一般式(C-3)中、破線で表される環A1乃至A3は、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、前記含窒素複素芳香環の個数は、平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
かつb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。
前記一般式(C-3)中、破線で表される環A1乃至A3(環A1、A2及びA3の3つの環)における含窒素複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環及びピリダジン環等の窒素原子を1又は2個含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではピリジン環又はピラジン環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。含窒素複素芳香環の個数が増えるにしたがって、耐ガス性が向上する。
含窒素複素芳香環の個数は複素環の種類にもよるので一概には言えないが、通常平均値で、0.00を超えて3.00以下であり、好ましくは0.20以上2.00以下、より好ましくは0.50以上1.75以下、更に好ましくは0.75以上1.50以下の範囲である。
なお、本明細書においては、b、c及び、b及びcの和は、いずれも小数点以下3桁日を四捨五入して、2桁目までを記載する。
前記一般式(C-1)で表される第1のシアン染料、前記一般式(C-2)で表される
第2のシアン染料、前記一般式(C-3)で表される第3のシアン染料は、それぞれ塩を形成することも可能であり、このとき、そのカウンターカチオンは、無機金属、アンモニア(NH3)又は有機塩基の各カチオンと塩を形成するのが好ましい。
無機金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
有機塩基としては、特に有機アミンが挙げられ、例えばメチルアミン、エチルアミン等のC1-C3アルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノノールアミン等のモノ-、ジ-又はトリ-C1-C4アルカノールアミン類が挙げられる。
上記のもののカウンターカチオンを利用した塩のうち、好ましいものとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ-、ジ-又はトリ-C1-C4アルカノールアミンとの塩、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、一般式(C-1)で表される第1のシアン染料、一般式(C-2)で表される第2のシアン染料、一般式(C-3)で表される第3のシアン染料の塩は、それぞれその塩の種類により溶解性等の物理的な性質、あるいはインクとして用いた場合のインクの性能、特に耐ガス性に関する性能等が変化する場合もある。このため目的とするインクの性能等に応じて、塩の種類を選択することも好ましく行われる。
シアンインクは、上記いずれかの染料を1種又は2種以上を使用することができ、2種以上混合して用いることが好ましい。また、上記以外の染料をさらにイエローインクに含有させてもよい。また、本実施形態に係るインクセットにおいて、シアンインクが上記の染料のいずれかを含有し、さらに、下記のいずれかのイエローインクと共にインクセットとすることにより、混色部分の画像の耐ガス性をバランスよく向上させることができる。このため、優れた色バランスを有する画像を得ることができると共に、退色バランスが優れたものになるため、いっそう長期にわたって印刷物の画質を良好に保つことができる。
シアンインク中の染料の含有量は、シアンインクの全質量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
2.2.イエローインク
本実施形態に係るインクセットは、上記一般式(Y-1)で表される第1のイエロー染料、上記一般式(Y-2)で表される第2のイエロー染料、C.I.ダイレクトイエロー86およびC.I.ダイレクトイエロー132から選択される1種以上を含む。本実施形態に係るインクセットが、前記の少なくともいずれかのイエローインクを上記のインク組成物と共に含むことにより、発色性、暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られる。また、連続供給型のインク収容容器を用いた長期印刷時においても、発色性、暗部の階調性(粒状性)および耐ガス性に優れた画像が得られる。
また、イエローインクが上記の二量体ジスアゾ構造を有するいずれかの化合物であり、さらに上記のインクと共にインクセットとすることにより、混色部分の画像の耐ガス性をバランスよく向上させることができる。このため、優れた色バランスを有する画像を得ることができると共に、退色バランスが優れたものになるため、いっそう長期にわたって印
刷物の画質を良好に保つことができる。
前記一般式(Y-1)で表される第1のイエロー染料、前記一般式(Y-2)で表される第2のイエロー染料は、それぞれ塩を形成することも可能であり、このとき、そのカウンターカチオンは、無機金属、アンモニア(NH3)又は有機塩基の各カチオンと塩を形成するのが好ましい。
無機金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
有機塩基としては、特に有機アミンが挙げられ、例えばメチルアミン、エチルアミン等のC1-C3アルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノノールアミン等のモノ-、ジ-又はトリ-C1-C4アルカノールアミン類が挙げられる。
上記のもののカウンターカチオンを利用した塩のうち、好ましいものとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ-、ジ-又はトリ-C1-C4アルカノールアミンとの塩、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、一般式(Y-1)で表される第1のイエロー染料の塩、一般式(Y-2)で表される第2のイエロー染料の塩は、その塩の種類により溶解性等の物理的な性質、あるいはインクとして用いた場合のインクの性能、特に耐ガス性に関する性能等が変化する場合もある。このため目的とするインクの性能等に応じて、塩の種類を選択することも好ましく行われる。
イエローインクは、上記いずれかの染料を1種又は2種以上を使用することができ、2種以上混合して用いることが好ましい。また、上記以外の染料をさらにイエローインクに含有させてもよい。イエローインク中の染料の含有量は、イエローインクの全質量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
3.インクジェット記録装置
次に、本実施形態に係るインク組成物が実施されるインクジェット記録装置の一例について、図面を参照しながら説明する。本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の一例としては、例えば、図3~9に示すような、インクジェット式のプリントヘッドを有し、インク収容容器からプリントヘッドへインク組成物を供給するインク供給流路を備える、連続供給型のインク収容容器を用いたプリンターが挙げられるが、本実施形態に係るインク組成物が適用可能なインクジェット記録装置は、以下の態様に限定されるものではない。
つまり、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、上記の本実施形態に係るインク組成物を収容するインク収容容器と、前記インク組成物を吐出するプリントヘッドと、前記インク収容容器から前記プリントヘッドへ前記インク組成物を供給するインク供給流路と、を備えることを特徴とする。
以下、本実施形態に係るインクジェット記録装置を、図面を参照しながら詳細に説明す
る。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構造の理解を容易にするために、尺度を適宜変更している場合がある。
3.1.外観
図3は、インクジェット記録装置1を模式的に示す斜視図である。具体的には、図3は、インク収容容器30(図5参照)が容器収容ケース51に収容された状態を示すものである。図4は、容器収容ケース51が取り外された状態を示すものである。図1および2には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。図3のXYZ軸は、他の図のXYZ軸に対応しており、これ以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸を付している。本実施形態においては、X軸は、キャリッジ16の移動方向に対応しており、Y軸は、使用状態において複数のインク収容容器30が並ぶ方向に対応している。Z軸は、鉛直方向(重力方向)に対応している。
図5、6は、インクジェット記録装置1の記録ユニット12が記録ユニット収容ケース10に収納された状態を模式的に示す斜視図である。具体的には、図5は、インクジェット記録装置1の使用状態(後述)を示すものであり、図6は、インクジェット記録装置1の注入状態(後述)を示すものである。
図3~図6に示すように、インクジェット記録装置1は、記録媒体(図示せず)上に画像を記録する記録ユニット12と、インク供給管(インク供給流路)24を介して記録ユニット12のサブタンク20にインクを供給するインク収容ユニット50と、を有する。
3.2.記録ユニット
記録ユニット12は、上述のインク組成物の液滴を吐出して記録媒体上に画像を記録するプリントヘッド17と、インク供給管を介して供給されたインクを一時的に貯留するサブタンク20と、サブタンク20およびプリントヘッド17を搭載してX軸方向に往復動可能なキャリッジ16と、記録媒体を給紙する給紙口13と、記録媒体を排紙する排紙口14と、を有する。記録ユニット12は、図5、6に示すように、記録ユニット収容ケース10に収容される。
プリントヘッド17は、記録媒体の記録面と対向する位置に設けられたノズル面(図示せず)を有し、当該ノズル面に設けられた複数のノズル(図示せず)から液滴状にしたインクを吐出して、記録媒体の記録面に付着させる。
インクジェット記録方式としては、次に説明するように様々なものがあるが、いずれの方式を用いてもよい。例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に吐出させ、インクの液滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインクの液滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して吐出させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインクの液滴を吐出させる方式、インクに圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インクの液滴を吐出・記録させる方式(ピエゾ方式)、インクを印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を吐出・記録させる方式(サーマルジェット方式)等を用いることができる。
サブタンク20は、インク供給管24を介して、インク収容容器30と接続されており、インク収容容器30内に収容されたインクを一時的に貯留して、プリントヘッド17に供給する。図4、5の例では、サブタンク20は、インク収容容器30に収容される各色のインクに対応するように、色毎に4つのサブタンク20Bk、20Cn、20Ma、20Ywが設けられている。サブタンク20を構成する材料としては、特に限定されないが
、例えば、ポリスチレンやポリエチレン等の合成樹脂が挙げられる。また、本実施形態では、サブタンク20を有するインクジェット記録装置1を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。例えば、サブタンク20を有さずにプリントヘッド17とインク収容容器30がインク供給管24を介して直接接続された態様であってもよい。
キャリッジ16は、プリントヘッド17およびサブタンク20を搭載し、モーターやタイミングベルト等からなるキャリッジ移動機構(図示せず)により、X軸に沿って往復動するものである。このようなキャリッジ16の移動に伴って、プリントヘッド17もX軸方向に沿って往復動するので、記録媒体へのX軸方向への画像の記録は、キャリッジ16の移動に伴うプリントヘッド17のインクの吐出により行われる。本実施形態では、いわゆるシリアルヘッドタイプのインクジェット記録装置を例として挙げているが、インク収容容器はこれに限定されず、いわゆるラインヘッドタイプのインクジェット記録装置にも適用できる。
排紙口14は、インクジェット記録装置1の前面に設けられている。また、給紙口13は、インクジェット記録装置1の背面側に設けられている。給紙口13に記録媒体をセットして記録動作を実行することで給紙口13から記録媒体が給紙され、内部で画像等が記録された後、排紙口14から印刷用紙が排出される。記録媒体の搬送は、Y軸方向に紙送りするための紙送り機構(図示せず)によって行うことができる。このように、記録媒体へのY軸方向への画像の記録は、紙送り機構による記録媒体の移動に伴うプリントヘッド17のインクの吐出により行うことができる。
記録ユニット12は、インクジェット記録装置1の全体の動作を制御する制御部(図示せず)を有する。制御部は、例えば、CPUとROMとRAMとを備えていてもよい。制御部は、キャリッジ16を往復動させる動作や、記録媒体を紙送りする動作、プリントヘッド17からインクを吐出する動作、インク収容容器30からサブタンク20(プリントヘッド17)にインクを供給する動作等の全ての動作を制御する。
3.3.インク収容ユニットおよびインク供給管
インク収容ユニット50は、複数のインク収容容器30と、インク収容容器30を収容する容器収容ケース51と容器を有する。インク収容ユニット50は、記録ユニット収容ケース10の外側に設けられる。容器収容ケース51は、インク収容容器30を保持したまま、記録ユニット収容ケース10の側面から取り外すことができる。また、容器収容ケース51は、開閉可能な上面ケース54を備えている。
インク収容ユニット50は、インクジェット記録装置1を正面から(-Y軸方向から+Y軸方向に)みた場合に、記録ユニット収容ケース10の左側面に隣接して(記録ユニット収容ケース10の-X軸方向側)に設けられている。このように、インク収容ユニット50が記録ユニット収容ケース10の外側に設けられることで、記録ユニット12と一緒に収容ケース10の内部に設けられる場合と比べて、空間的な制約が少なくなる。よって、より連続供給型のインク収容容器30を設けることが可能となる。インク収容容器30は、サブタンク20に比べて多くの量のインクを収容できる。
インク供給管24は、複数のインク収容容器30毎に設けられており、各インク収容容器30と各サブタンク20(プリントヘッド17)を接続して、各インク収容容器30内のインクを各サブタンク20(プリントヘッド17)に供給するインク流路の一部を構成する。インク供給管24としては、例えば、チューブ状の可撓性の部材(例えば、ゴム、エラストマー等)を用いることができる。プリントヘッド17からインクが吐出されてサブタンク20のインクが消費されると、インク供給管24を介してインク収容容器30内のインクがサブタンク20に供給される。よって、インクジェット記録装置1は、長時間
にわたって記録を継続することができる。
インク供給管24内には、フィルター(図示せず)が設けられていてもよい。インク供給管24内に設けられたフィルターは、インク室340(図5参照)で生じた凝集物を捕捉して、プリントヘッド17に凝集物が流入することを抑制する。
インク収容容器30は、インクの組成や色毎に複数設けられている。図3~6の例では、上述したサブタンク20Bk、20Cn、20Ma、20Ywに対応して4つのインク収容容器30が設けられている。本実施形態では、色毎に4つのインク収容容器30が設けられているが、1つのインク収容容器の内部を壁で仕切ることによって、複数のインク収容部を設けるようにしても良い。インク収容容器30には、例えば、前述のインク収容容器を充填することが可能である。以下、インク収容容器30の構成について、詳細に説明する。
3.4.インク収容容器の構成
<インク収容容器の姿勢>
インク収容容器30の構成を具体的に説明するにあたって、まず、インク収容容器30の姿勢について説明する。
インク収容容器30の姿勢には、使用状態と注入状態とがある。「使用状態」とは、プリントヘッド17(サブタンク20)にインクを供給する際のインク収容容器30の姿勢のことをいう。供給可能な姿勢が複数ある場合において、マニュアルや説明図でインクを供給する際の推奨された姿勢がある場合には、その姿勢が使用状態となり、インクジェット記録装置にインク収容容器30を固定する部材がある場合には、固定された際のインク収容容器30の姿勢が使用状態となる。図5は、インク収容容器30の使用状態の一例を示すものである。図5には表れていないが、インク収容容器30の使用状態において、インク注入口304(図6参照)は、記録ユニット収容ケース10の側面と向かい合っている。つまり、インク注入口304の軸は水平方向(具体的には+X軸方向)を向いている。また、このとき、インク注入口304は栓部材302(図6参照)によって塞がれている。
「注入状態」とは、インク収容容器30内(インク室340)にインクを注入(充填あるいは補充等ともいう。)する際のインク収容容器30の姿勢のことをいう。図6は、インク収容容器30の注入状態を示すものである。インク収容容器30にインクを注入する際に、利用者は、容器収容ケース51を記録ユニット収容ケース10の側面から取り外し、上面ケース54を開けて、インク収容容器30を図6に示す注入状態にする。注入状態において、インク注入口304の軸は、鉛直方向(具体的には+Z方向)を向いている。利用者は、インク収容容器30を図6に示す注入状態にした後、インク注入口304を塞いでいた栓部材302を取り外して、インクを注入する。インクを注入し終えた後、利用者は、インク注入口304を栓部材302で塞ぐ。その後、利用者は、容器収容ケース51を記録ユニット収容ケース10の側面に装着して、図5の使用状態に戻す。
<状態識別部>
図5に示す使用状態において、インク収容容器30内のインク室340を区画する壁370(後述)のうち第3側面372Cは、外部から視認可能となっている。図6に示す使用状態において、第3側面372Cは、水平な(XY平面に平行な)設置面に対して垂直となる。一方、図6に示す注入状態において、第3側面372Cは、設置面に対して平行となる。すなわち、注入状態において、第3側面372Cは、インク収容容器30(インク室340)の底面を構成する。
図5に示すように、第3側面372Cには、第1の状態識別部LB1(「補充開始識別部LB1」ともいう。)が設けられている。第1の状態識別部LB1は、使用状態において、インク収容容器30が内部にインクを補充すべき第1の状態であることを利用者に識別させるために用いられる。詳細には、第1の状態識別部LB1は、使用状態において、内部のインクが消費され、内部のインク液面が第1の高さになったことを識別するために設けられている。第1の状態識別部LB1は、使用状態において水平となる(XY平面に平行となる)直線LM1(「第1の状態表示線LM1」又は「補充開始表示線LM1」ともいう。)を含む。利用者は、インク液面が第1の状態表示線LM1の近傍に到達した場合に、インクをインク収容容器30内(インク室340)に補充する。
図6に示す注入状態において、利用者が上面ケース54を開けると、インク室340を区画する壁370(後述)のうち、第3側面372Cとは異なる上面371(図8参照)が外部から視認可能となる。上面371は、注入状態において、XY平面に平行な設置面に対して垂直となる壁である。一方、図5に示す使用状態において、上面371は、インク室340(図7、8参照)の上面を構成する。
上面371には、第2の状態識別部LB2(「補充完了識別部LB2」ともいう。)が設けられている。第2の状態識別部LB2は、注入状態において、インク収容容器30の内部へのインクの注入が完了した第2の状態であることを利用者に識別させるために用いられる。詳細には、第2の状態識別部LB2は、注入状態において、内部にインクが補充され、内部のインク液面が第2の高さになったことを識別するために設けられている。第2の状態識別部LB2は注入状態において水平となる直線LM2(「第2の状態表示線LM2」又は「第2の状態表示線LM2」ともいう。)を含む。利用者は、インク液面が第2の状態表示線LM2の近傍に到達した場合に、インクの補充を停止する。
本実施形態では、図5および図6に示すように、インク収容容器30の姿勢が使用状態と注入状態とで異なる場合を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、インク収容容器30の姿勢を使用状態と注入状態で同じにしてもよい。これにより、インクに起因する凝集物の発生を一層抑制できる。すなわち、インク収容容器30の姿勢を使用状態と注入状態で変化させた場合、インク室340のインクが、これまで接していなかった箇所(例えば、インク室340を区画する壁370の一部等)に付着することがある。当該箇所に付着したインクが大気と接触して気液界面を形成した場合、凝集物の発生の原因となる。これに対して、インク収容容器30の姿勢を使用状態と注入状態で変化させないことにより、これまでインクが接触していない箇所に新たにインクが付着することを低減できるので、インク室340における凝集物の発生を抑制できる傾向にある。
インク収容容器30の姿勢を使用状態と注入状態で同じにする場合には、例えば、図5に示すインク収容容器30の姿勢で、使用状態と注入状態にすればよい。この場合には、注入状態においてインクが漏れ出さない位置にインク注入口304を設ければよく、例えば、インク収容容器30の上方(例えば、後述する壁370の上面371)において鉛直方向の上向きに開口したインク注入口304を設ければ、注入時のインクの漏れを防止できる。
<インクおよび空気の流通経路>
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置1におけるインクの供給経路について説明する。図7は、大気開放口317からインク導出部306に至る経路を概念的に示す図である。
大気開放口317からインク導出部306に至る経路(流路)は、大気開放流路300と、インク室340とに大きく分けられる。大気開放流路300は、上流から順に第1の
流路310と、空気室330と、インク室連通路350とから構成される。大気開放流路300は、一端である空気導入口352がインク室340で開口し、他端である大気開放口317が外部に向かって開口する。すなわち、大気開放口317は大気に連通している。使用状態において、インク室連通路350(詳細には、空気導入口352近傍)には、大気と直接に接する液面が形成され、空気導入口352からインク室340のインク中に空気(気泡)を導入することでインク室340に空気を導入する。
第1の流路310は、一端である大気導入口318(「空気室開口318」ともいう。)が空気室330で開口し、他端である大気開放口317が外部に向かって開口することで、空気室330と外部とを連通させる。第1の流路310は、連通流路320、気液分離室312、連通流路314と、を有する。連通流路320は、一端が大気開放口317に接続され、他端が気液分離室312に接続されている。連通流路320の一部は細長い流路であり、インク室340に貯留されたインクの水分が拡散により大気開放流路300から外部に蒸発することを抑制する。気液分離室312の上流から下流に向かう間には流路を塞ぐようにシート部材(フィルム部材)316が配置されている。このシート部材316は、気体を透過すると共に液体を透過しにくい性質を有する。シート部材316には、例えば、ゴアテックス(登録商標)等を用いることができる。このシート部材316を大気導入口318から大気開放口317に至る経路(流路)の途中を塞ぐように配置することで、インク室340から逆流してきたインクがシート部材316より上流側に流入することを抑制している。このシート部材316は、気液分離膜として機能する。
連通流路314は、気液分離室312と空気室330とを連通させる。ここで、連通流路314の一端は大気導入口318である。空気室330は、インク室連通路350よりも流路断面積が大きく、所定の容積を有する。これにより、インク室340から逆流してきたインクを貯留し、空気室330よりも上流側にインクが流入することを抑制できる。
インク室連通路350は、一端である空気室側開口351が空気室330で開口し、他端である空気導入口352がインク室340で開口することで、空気室330とインク室340とを連通させる。また、インク室連通路350は、メニスカス(液面架橋)を形成可能な程度に流路断面積が小さいことが好ましい。
インク室340はインクを収容し、インク導出部306のインク出口349からインク供給管24を介してサブタンク20(図3、4参照)にインクを流通させる。
次に、インク収容容器30からサブタンク20(プリントヘッド17)にインクを供給する原理について、図8を用いて説明する。図8は、インクジェット記録装置1の内部構造の一部を模式的に示す図である。本実施形態のインク収容容器30は、マリオットの瓶の原理を利用してインクを記録ユニット12に供給する。
図8の例では、インクジェット記録装置1は、水平面sf(XY平面)上に設置されている。インク収容容器30のインク導出部306と、サブタンク20のインク受入部202は、インク供給管24を介して接続されている。
図8の例では、サブタンク20は、インク貯留室204と、インク流動路208と、フィルター206と、を備える。インク流動路208には、キャリッジ16のインク供給針16aが挿入されている。フィルター206は、インクに混入する場合のある凝集物を捕捉して、凝集物がプリントヘッド17に流入することを防止する。インク貯留室204のインクは、プリントヘッド17からの吸引によって、インク流動路208、インク供給針16aを流通して、プリントヘッド17に供給される。プリントヘッド17に供給されたインクは、ノズル(図示せず)を介して外部(記録媒体)へ向かって吐出される。
注入状態(図6参照)でインク注入口304からインク室340にインクを注入した後に、インク注入口304を栓部材302で密封し使用状態にした場合、インク室340内の空気が膨張して、インク室340が負圧になる。さらに、インク室340のインクがプリントヘッド17から吸引されることで、インク室340は負圧に維持されている。
空気導入口352は、使用状態において、第1の状態表示線LM1よりも下側に位置する。図6の例では、空気導入口352は、インク室340を区画する壁370のうち、使用状態におけるインク室340の底面373に形成されている。こうすることで、インク室340のインクが消費され、インク室340の液面が低下しても、大気と直接に接触する液面(大気接触液面)LAが長時間(インク液面が第1の状態表示線LM1に達する程度の時間)に亘り一定の高さに維持される。また、使用状態において、空気導入口352は、プリントヘッド17よりも低い位置になるように配置される。これにより、水頭差d1が発生する。なお、使用状態において、インク室連通路350の空気導入口352近傍にメニスカスである大気接触液面LAが形成された状態での水頭差d1を「定常時水頭差d1」とも呼ぶ。
インク貯留室204のインクがプリントヘッド17によって吸引されることで、インク貯留室204は所定の負圧以上となる。インク貯留室204が所定の負圧以上になると、インク室340のインクがインク供給管24を介してインク貯留室204に供給される。すなわち、インク貯留室204には、プリントヘッド17に流出した量のインクがインク室340から自動的に補充されることになる。言い換えれば、大気接触液面LAと、プリントヘッド17(詳細にはノズル)との鉛直方向の高さの差によって発生する水頭差d1よりも、プリンター側からの吸引力(負圧)がある程度大きくなることで、インクがインク室340からインク貯留室204へ供給される。
インク室340のインクが消費されると、空気室330の空気がインク室連通路350を介してインク室340に気泡Gとして導入される。これによりインク室340の液面LF(インクの液面LF)は低下する。一方で、大気と直接に接する大気接触液面LAの高さは一定に維持されていることから、水頭差d1は一定に維持される。すなわち、プリントヘッド17の所定の吸引力により、インク収容容器30からプリントヘッド17に安定してインクを供給することができる。
図8において、インクの液面LFと、インク室340を区画する壁370の内側と、が接触する境界部分は、インクの薄膜が形成されやすい。境界部分に形成されたインクの薄膜は、乾燥しやすいため、壁面から剥がれ落ちた場合に凝集物の発生原因となる。
<インク収容容器の構造>
図9は、本発明に係るインク収容容器の一例を模式的に示す外観斜視図である。
図9に記載の例では、インク収容容器30は、略柱体形状(詳細には略直角柱形状)であるがこれに限定されず、いずれの形状であってもよい。インク収容容器30は、主として合成樹脂(ポリプロピレン等)からなるプラスチック板からなり、その一部が可撓性の部材(例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリアミド、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ビニル系共重合体(例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル)、および金属または金属酸化物(例えば、アルミニウム、アルミナ)等の材料を単独または併用して形成されたフィルム)により形成されている場合がある。具体的には、図9に記載のインク収容容器30は、合成樹脂により成型されたプラスチック容器の一面にフィルム34が接着されてなる。また、インク収容容器30の少なくとも一部は、透明または半透明であることが好ましい。これにより、インク収容容器3
0内のインクの状態(インクの水位等)を確認することができる。
通常使用されるインク組成物には、界面活性剤等の濡れ性の高い溶剤が含まれているため、インク室を区画する壁の内側を構成する部材に対するインク組成物の濡れ性が高い傾向にある。そのため、壁370の内側にはインク組成物の薄膜が形成されやすく、形成された薄膜が凝集物の発生原因となることがある。このような薄膜の発生を抑制するために、壁370の内側を構成する部材には、インク組成物に対する撥液性が高いものを用いることが好ましい。特に、フッ素化合物、シリコーン樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等)等を用いることが好ましく、これらの材料は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの材料の中でも、フッ素化合物、シリコーン樹脂等の撥インク材料を用いることがより好ましい。
なお、本実施形態において、「ポリ(メタ)アクリル酸エステル」とは、ポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステルの両方を指し、「ポリ(メタ)アクリル酸メチル」とは、ポリアクリル酸メチルおよびポリメタクリル酸メチルの両方を指すものとする。
フッ素化合物としては、フッ素原子を有する有機化合物や、フッ素樹脂等が挙げられる。フッ素原子を有する有機化合物としては、フルオロアルキルシラン、フルオロアルキル基を有するアルカン、カンボン酸、アルコール、アミン等が好適に使用される。フルオロアルキルシランとしては、例えば、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラハイドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラハイドロトリクロオシラン;フルオロアルキル基を有するアルカンとしては、オクタフルオロシクロブタン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ-n-ヘキサン、パーフルオロ-n-ヘプタン、テトラデカフルオロ-2-メチルペンタン、パーフルオロドデカン、パーフルオロオイコサン;フルオロオアルキル基を有するカルボン酸としては、パーフルオロデカン酸、パーフルオロオクタン酸;フルオロアルキル基を有するアルコールとしては、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-2-ペンタノール;フルオロアルキル基を有するアミンとしては、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラハイドロデシルアミン等が挙げられる。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、アルキル基等の有機基で置換されたシロキサン構造単位を有するポリマーが挙げられ、例えば、α,w-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,w-ビス(3-グリシドキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,w-ビス(ビニル)ポリジメチルシロキサン等のジメチルシロキサン骨格を有するポリマーを用いることができる。
インク室340を区画する壁370の内側には、撥液層が設けられていてもよい。撥液層は、例えば、撥液剤(例えば、上述のフッ素化合物やシリコーン樹脂)等を塗布することにより形成される。なお、壁370の内側に撥液層が設けられている場合には、壁370の内側を構成する部材は、撥液層を指す。撥液剤には、市販品を用いることができ、例えば、HC303VP(商品名、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、シリコーン樹脂)や、エスエフコート(商品名、AGCセイミケミカル株式会社製、フッ素化合物)等が
挙げられる。
インク室340を区画する壁370の内側を構成する部材の表面には、微細周期構造が設けられていてもよい。微細周期構造は、例えば、特開2012-66417号公報に記載されている樹脂成形体の製造方法により形成できる。微細周期構造とは、例えば、角錐体(三角錐、四角錐、六角錐等)が連続して設けられており、隣り合う錐体の頂点間の距離が1.0μm~100μm程度であるものをいう。これにより、壁370の内側を構成する部材と、インク組成物との撥液性を高めることができる。
使用状態においてインク収容容器30の側面を構成する側面壁には、第1の流路310が形成されている。第1の流路310は、大気開放口317、連通流路320、フィルム316、気液分離室312、連通流路314を有する。気液分離室312は、凹状形状であり、凹状の底面には開口が形成されている。底面の開口を介して、気液分離室312と連通流路314とが連通する。連通流路314の末端は大気導入口318(図5参照)である。気液分離室312の底面を囲む内壁の全周には土手313が形成されている。フィルム部材316は、土手313に接着されている。また、フィルム部材322は、第1の流路310のうちインク収容容器30の外面に形成された流路を覆うようにインク収容容器30に接着されている。これにより、連通流路320を形成すると共に、インク収容容器30内部のインクが外部へ漏れ出すことを防止している。なお、連通流路320の一部分は、大気開放口317から気液分離室312までの距離を長くするために、気液分離室312の外周に沿って形成されている。これにより、インク収容容器30内部のインク中の水分が大気導入口318から外部へ蒸発することを抑制できる。
第1の流路310を流れる空気は、その途中で土手313に接着された気液分離膜としてのフィルム部材316を通過することになる。これにより、インク収容容器30内部に収容されるインクが外部へ漏れ出すことをより抑制できる。
インク導出部306は筒状であり、その内部に流路を有する。このインク導出部306にインク供給管24が接続される。また、インク導出部306の他端348は外部に向かって開口している。
インク収容容器30には、インク室340内で発生した凝集物や、インク注入時に混入する異物等を捕捉するために、フィルター(図示せず)が設けられていてもよい。当該フィルターは、例えば、インク収容容器30内におけるインク出口349やインク導出部306に設けることができる。
インク室340は、壁370の内側に接続され、壁370を支持する支持体(図示せず)を備える構成としてもよい。
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、上記の本実施形態に係るインク組成物を用いることにより、発色性と暗部の階調性(粒状性)に優れた画像が得られるインクジェット記録装置を提供することができる。また、上記本実施形態に係るインク組成物を用いることにより、連続供給型のインク収容容器を用いた長期印刷時においても、発色性と暗部の階調性に優れた画像が得られるインクジェット記録装置を提供することができる。
ここで、インクの初期充填(例えば、インク収容容器の出荷時等にインク室の容量の90%程度までインクを充填すること)をした後、インクの気液界面と、インク室を区画する壁のうち特定の箇所とが、長時間接触した状態に置かれることがある。こうした場合、インクの気液界面と接触する壁において、インクに起因する凝集物が発生しやすくなることがある。しかし、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、上記の本実施形態に係
るインク組成物において、インク組成物中に含まれる溶剤や界面活性剤を適宜選択することにより、連続供給型のインク収容容器を用いた長期印刷時において、初期の充填性や連続印字安定性に優れると共に、発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れた印刷物が得られるインクジェット記録装置を提供することができる。
なお、本実施形態に係るインク組成物を上記のインクジェット記録装置に適用して記録を行う、本発明の一実施形態に係る記録方法は、本実施形態に係るインク組成物をプリントヘッドから吐出する吐出工程と、前記インク組成物を記録媒体に付着させて記録する記録工程と、を有することを特徴とする。
本実施形態に係る記録方法によれば、本実施形態に係るインク組成物を用いて記録することにより、発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れた画像が得られる記録方法を提供することができる。なお、本実施形態に係る記録方法は、上記の本実施形態に係るインクジェット記録装置に適用することに限られず、他の記録方式の記録装置にも適用可能である。この場合にも、本実施形態に係るインク組成物を用いて記録することにより、発色性、暗部で階調性および耐ガス性に優れた画像が得られる記録方法を提供することができる。
4.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、インク組成物単独の評価を行った。
4.1.インク組成物の調製
表3および4に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径10μmのメンブレンフィルターで加圧濾過を行って、各インク組成物を得た。なお、表3および4中の数値は、インク中での含有量(質量%)を表し、水はインク組成物の全質量が100質量%となるように添加した。なお、染料については、固形分換算した値を示す。
表3および4で使用した成分のうち、商品名で記載した成分は、以下の通りである。
・サーフィノール104PG50(商品名、エアープロダクツジャパン株式会社製、主鎖の炭素数が10であるアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物がない、アセチレングリコール系界面活性剤)
・サーフィノールMD-20(商品名、エアープロダクツジャパン株式会社製、HLBが4以下のアセチレングリコール系界面活性剤)
・オルフィンE1010(商品名、日信化学工業株式会社製、主鎖の炭素数が10であるアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物を有する界面活性剤)
・オルフィンEXP4300(商品名、日信化学工業株式会社製、主鎖の炭素数が12以上であるアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物を有する界面活性剤)
また、表3および4で使用した成分のうち、染料AおよびB成分は、以下の通りである。
・A1:上記の例示化合物(1-20)、λmax533nm、半値幅39.0
・A2:上記の例示化合物(1-27)、λmax533nm、半値幅39.0
・B1:下記の例示化合物(M-1)、λmax511nm、半値幅88.5
・B2:下記の例示化合物(M-23)、λmax555nm、半値幅87.0
・B3:下記の例示化合物(M-3)、λmax544nm、半値幅85.5
なお、例示化合物(1-20)および例示化合物(1-27)は、特開2016-41801号公報の段落番号0136-0161記載の方法を参考にして、次のようにして合成した。
<中間体(B)の合成>
中間体(A)23.0g(特開2011-148973号公報の第17頁の段落番号0065記載の方法で合成)を、10%発煙硫酸420gに添加して、室温にて48時間反応させた。反応液を大過剰の酢酸エチルに注ぎ入れ、析出した結晶をろ別した。ろ別した結晶を500mLのメタノールに溶解させ、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を用いてpH7に調整し、析出した硫酸ナトリウムをろ過により取り除いた。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィ(充填剤:セファデックスLH-20(ファルマシア製)、展開溶媒:メタノール)で精製し、中間体(B)の結晶を得た。収量21.0g、収率68%、MS(m/z)=793([M-2Na+H]-、100%)。
得られた中間体(B)4gを、メタンスルホニルクロリド2.0gを加えた後に、ピリジン8mLをゆっくりと滴下し、室温で3時間反応させた。反応液を大過剰の酢酸エチルに加え、析出した結晶をろ別した。得られた結晶を水50mLに溶解させ、希水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、得られた水溶液をカラムクロマトグラフィ(充填剤:セファデックスLH-20(ファルマシア製)展開溶媒:水/メタノール)で精製し、例示化合物(1-20)の緑色光沢結晶を得た。収量3.0g、収率63%。MS(m/z)=993([M-1]-、100%)。例示化合物(1-20)の希薄水溶液中での吸収スペクトルの極大吸収波長は533nm、モル吸光係数は54000であった。
上記の中間体(B)20gをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)120mLに溶解させ、内温を0℃まで冷却した。ここにクロロぎ酸フェニル(東京化成製)10mLを内温を5℃以下に保ちながら滴下した後に、0~5℃で90分反応させた。得られた反応液を酢酸エチル1500mLに注ぎ入れ、析出した結晶をろ別した後に水200mLに溶解させ、希水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整し、得られた水溶液をカラムクロマトグラフィ(充填剤:セファデックスLH-20(ファルマシア製)、展開溶媒:水/メタノール)で精製した。ロータリーエバポレーターで濃縮したのちに、再度水に溶解させ、強酸性イオン交換樹脂(アンバーライトIR124-H(商品名)、オレガノ社製)を通液させた後に、希水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7に調整し、メンブレンフィルターを用いて除塵ろ過を行ったのちに、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固して、例示化合物(1-5)の緑色光沢固体を得た。収量24g、収率93%。MS(m/z)=1054([M-Na]-、100%)。例示化合物(1-5)の希薄水溶液中での吸収スペクトルの極大吸収波長は531nmであった。
例示化合物(1-5)5.4gを、水20mL、メタノール40mLに溶解させ、m-アミノ安息香酸(東京化成製)2.0g、炭酸水素ナトリウム2.0gを加え、内温80℃で6時間反応させた。得られた反応液を2-プロパノール500mLに注ぎ入れ、析出した結晶をろ別した後に、水100mLに溶解させ、希水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整し、得られた水溶液をカラムクロマトグラフィ(充填剤:セファデックスLH-20(ファルマシア製)、展開溶媒:水/メタノール)で精製した。ロータリーエバポレーターで濃縮したのちに、再度水に溶解させ、強酸性イオン交換樹脂(アンバーライトIR124-H(商品名)、オレガノ社製)を通液させた後に、希水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7に調整し、メンブレンフィルターを用いて除塵ろ過を行ったのちに、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固して、例示化合物(1-27)の緑色光沢固体を得た。収量2.5g、収率41%。MS(m/z)=1183([M-Na]-、100%)。例示化合物(1-27)の希薄水溶液中での吸収スペクトルの極大吸収波長は533nmであった。
なお、例示化合物(M-1)、(M-23)および(M-3)は、特開2016-29148号公報に記載の方法を参考にして合成した。
4.2.インク組成物についての評価試験
4.2.1.発色性の評価(OD値の測定)
インク連続供給システム(CISS)型のインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型式「EW-M660FT」)のインク収容容器にインクを充填後、以下の条件でパターンを印刷し、得られた印刷物のOD値を測色して、以下の基準で発色性を評価した。
(印刷条件)
記録媒体:セイコーエプソン株式会社製、写真用紙<光沢>
印刷解像度:600×1200dpi
印刷環境:25℃、40%RH
印刷パターン:打ち込み量2mg/cm2の単色ベタパターン
OD値の測定:分光測色計;X-Rite i1(X-Rite社製)、
光源フィルターなし、光源:D50、視野角2度
(評価基準)
A:OD値が2.2以上。
B:OD値が2.2未満2.0以上。
C:OD値が2.0未満1.5以上。
D:OD値が1.5未満。
4.2.2.暗部の階調性(粒状性)の評価
上記のCISS型のインクジェットプリンターのインク収容容器のマゼンタ列にインク
を充填後、さらに、シアン列、イエロー列には、表5に記載のインクC、インクYをそれぞれ充填し、以下の条件で、18階調パターンを印刷し、得られた画像を目視で観察して、以下の基準で暗部の階調性(粒状性)を評価した。
(印刷条件)
記録媒体:セイコーエプソン株式会社製、写真用紙<光沢>
印刷設定:標準モード(600×1200dpi)
印刷環境:25℃、40%RH
(印刷パターン)
18階調パターン:RGB入力画像が以下の18パターンである
RGB(255,0,255)、RGB(240,0,240)、…、RGB(255-15x,0,255-15x)、RGB(0,0,0)、但し、0≦x≦18
(評価基準)
A:印字物から30cm離れたところから観察しても、
目視で画像にざらつき感が見られない。
B:印字物から20cm離れたところから観察しても、
目視で画像にざらつき感が見られない。
C:印字物から10cm離れたところから観察しても、
目視で画像にざらつき感が見られない。
D:印字物から10cm離れたところから観察しても、
目視で画像にざらつき感が見られる。
なお、表5において、インクCの染料として用いたDB199はC.I.ダイレクトブルー199を表し、インクYの染料として用いたDY86はC.I.ダイレクトイエロー86を表す。
4.2.3.耐ガス性の評価
上記のCISS型のインクジェットプリンターのインク収容容器に実施例のインクを充填後、以下の条件でパターンを印刷し、以下の基準で耐ガス性を評価した。
(印刷条件)
記録媒体:セイコーエプソン株式会社製、写真用紙<光沢>
印刷解像度:600×1200dpi
印刷環境:25℃、40%RH
印刷パターン:打ち込み量2mg/cm2の単色ベタパターンと、
OD値が約0.5となるパターン
OD値の測定:分光測色計;X-Rite i1(X-Rite社製)、
光源フィルターなし、光源:D50、視野角2度
常温で24時間乾燥後、記録物をオゾンウェザーメーター(商品名「OMS―L」、スガ試験機株式会社製)を使用し、23℃℃、50%RH、オゾン濃度5ppmの条件下で、最大16時間曝露した。このとき、暴露4時間毎の記録物のOD値(D)を、分光測色計で測定し、次式により各インクの光学濃度残存率(ROD)を求め、以下の基準で耐ガス性を評価した。
ROD(%)=(D/D0)×100
(評価基準)
A:ベタパターン及びOD0.5パターンの両方が、
暴露16時間経過しても、RODが70%以上である。
B:ベタパターン或いはOD0.5パターンの何れか一方が、
RODが70%に達するのが、暴露12~16時間後である。
C:ベタパターン或いはOD0.5パターンの何れか一方が、
RODが70%に達するのが、暴露8~12時間後である。
D:ベタパターン或いはOD0.5パターンの何れか一方が、
暴露8時間未満で、RODが70%以下となる。
4.2.4.耐湿性の評価
上記のCISS型のインクジェットプリンターのインク収容容器にインクを充填後、セイコーエプソン株式会社製 写真用紙<光沢>に、6ポイントの白抜き文字のあるベタパターンを印刷し、(40℃、85%RH)×3日の環境に放置し、目視にて白抜き文字の滲みを確認し、以下の基準で耐湿性を評価した。
(評価基準)
A:滲みがなく、白抜き文字が認識できる。
B:やや滲みがあるものの、白抜き文字が認識できる。
C:滲みがあるが、白抜き文字が辛うじて認識できる。
D:滲みがひどく、文字として認識できない。
4.2.5.充填性の評価
上記のCISS型のインクジェットプリンターのインク収容容器に、プリンター標準の初期充填シーケンスを用いて、インクを充填した。その後、ノズルチェックパターンを印字し、充填成功率(=インク充填できたノズル数/全ノズル数)を算出した。上記評価を5回実施し、5回平均を算出して、以下の基準で充填性を評価した。
(評価基準)
A:成功率が90%以上。
B:成功率が80%以上、90%未満。
C:成功率が70%以上、80%未満。
D:成功率が70%未満。
4.3.インク組成物についての評価結果
まず、表4に示す比較例1より、染料として染料Aのみを含むインクでは、発色性や耐ガス性には優れているものの、暗部の階調性が劣っていた。また、比較例6、7より、染料として染料Bのみを含むインクでは、発色性が悪化し、暗部の階調性も比較例1ほどではないが、実施例よりも劣る結果となった。また、比較例6、7のうち、比較例6は、染料として反応性染料であるB1を用いており、耐ガス性に劣る傾向にあった。比較例7は、染料としてアントラピリドン系染料であるB3を用いており、耐ガス性には優れているものの、発色性に劣る傾向にあった。
また、表4に示す比較例2より、インク組成物に含まれる染料の全質量に対する染料Aの含有量が40質量%未満のインクでは、発色性には優れているものの、暗部の階調性がやや劣り、耐ガス性が劣っていた。これに対し、比較例3―5より、インク組成物に含ま
れる染料の全質量に対する染料Aの含有量が90質量%を越えるインクでは、発色性や耐ガス性には優れているものの、暗部の階調性が劣っていた。
比較例に対し、表3、4に示す実施例では、いずれも発色性、暗部の階調性および耐ガス性を満たす結果となった。まず、表3に示す実施例1-8より、インク組成物に含まれる染料の全質量に対する染料Aの含有量が40質量%以上90質量%以下であることにより、比較例1、2と比べて暗部の階調性と耐ガス性が向上した。また、インク組成物に含まれる染料の全質量に対する染料Aの含有量が60質量%である実施例5では高い結果となったが、実施例3、4より、染料Aの含有量が低くなると、発色性が低くなる傾向にあった。実施例1-8のうち、インク組成物中における染料Aと染料Bとの含有量の合計が、0.5質量%以上4.0質量%以下である場合には、その範囲から外れる実施例3、7と比較して、発色性や暗部の階調性が向上した。また、実施例8より、染料AとしてA2を用いた例でも、A1を用いた実施例5と同様に、いずれの評価も高い結果となった。
また、表3に示す実施例9-11は、染料Bとしてアゾ系染料を用いている例であり、比較例4と比較して暗部の階調性が向上し、特に、インク組成物に含まれる染料の全質量に対する染料Aの含有量が60質量%である実施例10では高い結果となった。また、染料Bとして反応性染料を使用している実施例1-8と比較して、発色性と耐湿性はやや低下するものの、耐ガス性が高くなる傾向にあった。表3に示す実施例12-14は、染料Bとしてアントラピリドン系染料を用いている例であり、比較例5と比較して暗部の階調性が向上し、特に、インク組成物に含まれる染料の全質量に対する染料Aの含有量が60質量%である実施例13では高い結果となった。また、染料Bとして反応性染料を使用している実施例1-8と比較して、耐湿性がやや高くなる傾向にあった。
表4に示す実施例15は、溶剤としてアルキルベタインを含まないため、実施例5と比較して耐湿性と連続印字安定性が低下する傾向にあった。また、実施例16は、HLB値が4以下のアセチレングリコール系界面活性剤を含まないため、実施例5と比較して充填性と連続印字安定性がやや低下する傾向にあった。さらに、実施例17は、主鎖の炭素数が10以上であるアセチレングリコールと主鎖の炭素数が12以上のアセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物を含まないため、実施例5と比較して充填性と連続印字安定性がやや低下する傾向にあった。実施例18は、染料Bとして2種の染料を使用している例であり、実施例5と比較して耐湿性がやや低下する傾向にあった。
以上示したように、染料として、380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が50nm以下である染料Aと、半値幅が70nm以上である染料Bと、を含み、インク組成物に含まれる染料の全質量に対する染料Aの含有量が、40質量%以上90質量%以下である実施例では、いずれも発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れる結果となった。さらに、水溶性有機溶剤や界面活性剤を選択することにより、耐湿性、充填性、連続印字安定性が向上した。
次に、インクセットの評価を行った。
4.4.インク組成物の調製
表6および7に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径10μmのメンブレンフィルターで加圧濾過を行って、各インク組成物を得た。なお、表6および7中の数値は、インク中での含有量(質量%)を表し、水はインク組成物の全質量が100質量%となるように添加した。なお、染料については、固形分換算した値を示す。
表6および7で使用した成分のうち、染料以外の商品名で記載した成分は、上記4.1.と同様である。また、染料について、マゼンタ染料である染料A1、B1およびB2成
分は上記4.1.と同様であり、シアン染料である染料C-1、C-2およびC-3と、イエロー染料である染料Y-1および染料Y-2については、上記に記載の通りである。さらに、インクCの染料として用いたDB199はC.I.ダイレクトブルー199を表し、インクYの染料として用いたDY89はC.I.ダイレクトイエロー86を、DY132はC.I.ダイレクトイエロー132をそれぞれ表す。
4.5.インクセットについての評価試験
各インセットについての評価を行った。発色性および耐ガス性の評価試験については、上記4.2.1.および4.2.3.と同様に行った。暗部の階調性についての評価については、下記の通りとした。
<暗部の階調性の評価>
上記のCISS型のインクジェットプリンターのインク収容容器のマゼンタ列にインクを充填後、さらに、シアン列、イエロー列には、表6および7に記載のインクをそれぞれ充填し、以下の条件で、18階調パターンを印刷し、得られた画像を目視で観察して、以下の基準で暗部の階調性(粒状性)を評価した。
(印刷条件)
記録媒体:セイコーエプソン株式会社製、写真用紙<光沢>
印刷設定:標準モード(600×1200dpi)
印刷環境:25℃、40%RH
(印刷パターン)
赤階調:RGB(255-x,0,0)、但し、0≦x≦18
青階調:RGB(0,0,255-x)、但し、0≦x≦18
緑階調:RGB(0,255-x,0)但し、0≦x≦18
グレー階調:RGB(255-x,255-x,255-x)、但し、0≦x≦18
(評価基準)
A:印字物から30cm離れたところから観察しても、
目視で画像にざらつき感が見られない。
B:印字物から20cm離れたところから観察しても、
目視で画像にざらつき感が見られない。
C:印字物から10cm離れたところから観察しても、
目視で画像にざらつき感が見られない。
D:印字物から10cm離れたところから観察しても、
目視で画像にざらつき感が見られる。
4.6.インクセットについての評価結果
インクセットについての評価結果を表8に示す。
比較例8より、染料として染料Aのみを含むマゼンタインクを含むインクセットでは、発色性や耐ガス性には優れているものの、暗部の階調性が劣っていた。また、比較例9より、染料として染料B1のみを含むマゼンタインクを含むインクセットでは、発色性が悪化し、耐ガス性は比較例8よりも悪化し、暗部の階調性も劣っていた。
比較例に対し、実施例では、いずれも発色性、暗部の階調性および耐ガス性を満たす結果となった。特に、シアンインクおよびイエローインクが2種以上の染料を含む実施例19-25では、いずれの評価も向上し、インクセットとしての性能に優れていた。
以上示したように、染料として、380nm以上780nm以下の波長域における吸収スペクトルの最大ピークの半値幅が50nm以下である染料Aと、半値幅が70nm以上である染料Bと、を含み、インク組成物に含まれる染料の全質量に対する染料Aの含有量が、40質量%以上90質量%以下であるマゼンタインクを含む実施例では、いずれも発色性、暗部の階調性および耐ガス性に優れる結果となった。さらに、シアンインクおよびイエローインクが2種以上の染料を含む場合には、さらに発色性、暗部の階調性および耐ガス性が向上した。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。