ところで、特許文献1には、一次コイルの中間タップに電気エネルギを投入するエネルギ投入ラインをON-OFFするエネルギ投入用スイッチング素子が備わっている。このエネルギ投入用スイッチング素子がONされる毎に、中間タップを介して第二巻線に一次電流が追加して流れることになる。一方で、エネルギ投入用スイッチング素子をオフすることでエネルギ投入を停止させる。この制御を繰り返しながら二次電流を所定の値に保持し着火性を高めている。しかし、発明者達はエネルギ投入用スイッチング素子をオフにしたときの一次電流の低下が比較的大きく、二次電流が急激に低下することで、二次電流を所定の値に保持させることが容易ではないことを見いだした。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、放電維持制御期間中に二次電流が急激に小さくなることを抑制する事が可能な内燃機関用点火システムを提供することにある。
第1の発明は、内燃機関用点火システムであって、内燃機関の燃焼室内の可燃混合気に点火するための火花放電を発生する点火プラグと、一次コイル及び二次コイルを具備し、前記二次コイルにより前記点火プラグに電圧を印加する点火コイルと、所定の電圧を前記一次コイルに印加する電圧印加部と、前記一次コイルを成す巻線の途中には中間タップが設けられており、前記電圧印加部から前記中間タップへと流れる一次電流の通電と遮断を行う第三スイッチング素子と、前記一次コイルを成す巻線のうち前記中間タップから一端までの巻線である第一巻線側の一端と接地側との間に接続される第一スイッチング素子と、前記一次コイルを成す巻線のうち前記中間タップから他端までの巻線である第二巻線側の一端と接地側との間に接続される第二スイッチング素子と、前記第一スイッチング素子の開閉状態と、前記第二スイッチング素子の開閉状態と、前記第三スイッチング素子の開閉状態と、をそれぞれ制御することで、前記第一巻線へ流れる前記一次電流の通電と遮断を行い前記点火プラグに前記火花放電を発生させる放電発生制御と、前記第二巻線へ流れる前記一次電流の通電と遮断を行い前記点火プラグに生じている前記火花放電を維持する放電維持制御と、を行なう点火制御回路と、前記第二巻線から前記第二スイッチング素子へと流れる電流を還流させる電流還流経路と、を備える。
放電発生制御では、第一スイッチング素子の開閉状態と、第二スイッチング素子の開閉状態と、第三スイッチング素子の開閉状態と、がそれぞれ制御され、第一巻線へ流れる一次電流の導通と遮断が行われることで、点火プラグに火花放電を発生させる。また、放電維持制御では、第一スイッチング素子の開閉状態と、第二スイッチング素子の開閉状態と、第三スイッチング素子の開閉状態と、がそれぞれ制御され、第二巻線へ流れる一次電流の導通と遮断が行われることで、点火プラグに生じている火花放電が維持される。このとき、仮に電流還流経路がなければ、放電維持制御中に第一スイッチング素子と第三スイッチング素子とが開状態となると、第二巻線に流れる一次電流が流れず遮断され、その期間、点火プラグに流れる二次電流がステップ的に大きく低下する懸念がある。この点、本内燃機関用点火システムは、電流還流経路が設けられているため、放電維持制御中に第一スイッチング素子と第三スイッチング素子とが開状態となっても、電流還流経路から第二巻線に一次電流が流れながら緩やかに減衰することになる。これにより、点火プラグに流れる二次電流がステップ的に急激に小さくなることを抑制することができる。また、第一スイッチング素子に逆方向ダイオードが備えられている場合には、逆方向ダイオード、第一巻線12Bを経由して第二巻線12Cの電流還流経路が存在するが、第一巻線12Bに発生する電圧の影響を受け、第二巻線12Cの還流電流は少なくなり、やはり二次電流が急激に小さくなる。
第2の発明は、第1の発明において、前記電流還流経路は第一ダイオードを備え、前記第一ダイオードのカソード側は前記中間タップに接続されており、前記第一ダイオードのアノード側は接地側に接続されている。
これにより、放電維持制御期間中、電流還流部を流れる一次電流は第一巻線に流れず、直接第二巻線に流れることとなるため、第一巻線の影響を受けることなく一次電流を精度高く制御することが可能となる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記点火制御回路は、前記第二スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第一スイッチング素子及び前記第三スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第一スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第一巻線へ流れる前記一次電流の導通と遮断を行い、前記第一スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第二スイッチング素子及び前記第三スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第三スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第二巻線へ流れる前記一次電流の導通と還流を行う。
上記構成とすることで、第一巻線に流れる一次電流の導通と遮断は、第二スイッチング素子を開状態に制御し、第三スイッチング素子を閉状態に制御した上で、第一スイッチング素子を切替ることにより実施することができる。また、第二巻線に流れる一次電流の導通と還流は、第一スイッチング素子を開状態に制御し、第二スイッチング素子を閉状態に制御した上で、第三スイッチング素子を切替ることにより実施することができる。
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記点火制御回路は、前記第二スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第一スイッチング素子及び前記第三スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第一スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第一巻線へ流れる前記一次電流の導通と遮断を行い、前記第一スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第二スイッチング素子及び前記第三スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第二スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第二巻線へ流れる前記一次電流の導通と遮断を行う。
第5の発明は、内燃機関用点火システムであって、内燃機関の燃焼室内の可燃混合気に点火するための火花放電を発生する点火プラグと、一次コイル及び二次コイルを具備し、前記二次コイルにより前記点火プラグに電圧を印加する点火コイルと、前記一次コイルを成す巻線の途中には中間タップが設けられており、所定の電圧を前記中間タップに印加する電圧印加部と、前記一次コイルを成す巻線のうち前記中間タップから一端までの巻線である第一巻線側の一端と接地側との間に接続される第一スイッチング素子と、前記一次コイルを成す巻線のうち前記中間タップから他端までの巻線である第二巻線側の一端と接地側との間に接続される第二スイッチング素子と、前記第一スイッチング素子の開閉状態と、前記第二スイッチング素子の開閉状態と、をそれぞれ制御することで、前記第一巻線へ流れる前記一次電流の導通と遮断を行い前記点火プラグに前記火花放電を発生させる放電発生制御と、前記第二巻線へ流れる前記一次電流の導通と遮断を行い前記点火プラグに生じている前記火花放電を維持する放電維持制御と、を行なう点火制御回路と、前記第二スイッチング素子で第二巻線の電流を遮断したときに第二巻線の流れる電流を還流させる電流還流経路と、を備える。
放電発生制御では、第一スイッチング素子の開閉状態と、第二スイッチング素子の開閉状態と、がそれぞれ制御され、第一巻線へ流れる一次電流の導通と遮断が行われることで、点火プラグに火花放電を発生させる。また、放電維持制御では、第一スイッチング素子の開閉状態と、第二スイッチング素子の開閉状態と、がそれぞれ制御され、第二巻線へ流れる一次電流の導通と遮断が行われることで、点火プラグに生じている火花放電が維持される。このとき、仮に電流還流経路がなければ、放電維持制御中に第一スイッチング素子と第二スイッチング素子とが開状態となると、第二巻線に流れる一次電流が流れず遮断され、その期間、点火プラグに流れる二次電流がステップ的に大きく低下する懸念がある。この点、本内燃機関用点火システムは、電流還流経路が設けられているため、放電維持制御中に第一スイッチング素子と第二スイッチング素子とが開状態となっても、電流還流経路から第二巻線に一次電流が減衰しながら流れることになる。これにより、点火プラグに流れる二次電流がステップ的に急激に小さくなることを抑制することができる。
第6の発明は、第5の発明において、前記電流還流経路は第二ダイオードを備え、前記第二ダイオードのカソード側は前記電圧印加部と前記中間タップとの間の電流経路に接続されており、前記第二ダイオードのアノード側は前記第二巻線と前記第二スイッチング素子との間の電流経路に接続されている。
これにより、放電維持制御期間中、電流還流部を流れる一次電流は第一巻線に流れず、第二巻線に減衰しながら流れることとなるため、第一巻線の影響を受けることなく一次電流を精度高く制御することが可能となる。
第7の発明は、第5又は6の発明において、前記点火制御回路は、前記放電発生制御として、前記第二スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第一スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第一スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第一巻線へ流れる一次電流の導通と遮断を行い、前記放電維持制御として、前記第一スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第二スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第二スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第二巻線へ流れる前記一次電流の導通と還流を行う。
上記構成とすることで、第一巻線に流れる一次電流の導通と遮断は、第二スイッチング素子を開状態に制御した上で、第一スイッチング素子を切替ることにより実施することができる。また、第二巻線に流れる一次電流の導通と還流は、第一スイッチング素子を開状態に制御した上で、第二スイッチング素子を切替ることにより実施することができる。
第8の発明は、第1乃至7のいずれか1つの発明において、カソード側は前記第二スイッチング素子に接続されており、アノード側は前記中間タップ側とは反対側の端部に接続されている第三ダイオードを備える。
仮に第三ダイオードが設けられていない場合、放電開始制御を実施することで、第二スイッチング素子から第二巻線を介して電圧印加部へと流れる電流が発生する可能性がある。つまり、第一巻線の遮断電流によって発生する磁束が第二巻線に鎖交することで、第二巻線の端部に電圧が発生し前記電流が発生する可能性がある。この場合、第ニスイッチング素子から電圧印加部へと流れる電流により相殺され、一次電流は相殺された分だけ小さくなることになる。この対策として、カソード側が第二スイッチング素子に接続されており、アノード側が第二巻線における第二スイッチング素子側の端部に接続されている第三ダイオードを設けることで、前記電流が生じるような電圧が発生しても第二スイッチング素子から電圧印加部へと流れることを抑制する事が可能となる。
第9の発明は、第1乃至7のいずれか1つの発明において、カソード側は前記中間タップに接続されており、アノード側は前記電圧印加部に接続されている第三ダイオードを備える。
このことから、放電開始制御によって第二スイッチング素子から第二巻線を介して電圧印加部へと電流が流れようとする電圧が発生しても、第二スイッチング素子から電圧印加部へと電流が流れることを抑制する事が可能となる。
第10の発明は、内燃機関用点火システムであって、内燃機関の燃焼室内の可燃混合気に点火するための火花放電を発生する点火プラグと、一次コイル及び二次コイルを具備し、前記二次コイルにより前記点火プラグに電圧を印加する点火コイルと、前記一次コイルを成す巻線の途中には中間タップが設けられており、所定の電圧を前記中間タップに印加する電圧印加部と、前記一次コイルを成す巻線のうち前記中間タップから一端までの巻線である第一巻線側の一端と接地側との間に接続される第一スイッチング素子と、前記中間タップと、前記中間タップから他端までの巻線である第二巻線と、の間に接続される第三スイッチング素子と、前記第一スイッチング素子の開閉状態と、前記第三スイッチング素子の開閉状態と、をそれぞれ制御することで、前記点火プラグに前記火花放電を発生させる放電発生制御と、前記点火プラグに生じている前記火花放電を維持する放電維持制御と、を行なう点火制御回路と、前記第二巻線から接地側へと流れる電流を還流させる電流還流経路と、を備える。
放電発生制御では、第一スイッチング素子の開閉状態と、第三スイッチング素子の開閉状態と、がそれぞれ制御され、第一巻線へ流れる一次電流の導通と遮断が行われることで、点火プラグに火花放電を発生させる。また、放電維持制御では、第一スイッチング素子の開閉状態と、第三スイッチング素子の開閉状態と、がそれぞれ制御され、第二巻線へ流れる一次電流の導通と遮断が行われることで、点火プラグに生じている火花放電が維持される。このとき、仮に電流還流経路がなければ、放電維持制御中に第一スイッチング素子と第三スイッチング素子とが開状態となると、第二巻線に流れる一次電流が流れず遮断され、その期間、点火プラグに流れる二次電流がステップ的に大きく低下する懸念がある。この点、本内燃機関用点火システムは、電流還流経路が設けられているため、放電維持制御中に第一スイッチング素子と第三スイッチング素子とが開状態となっても、第二巻線のインダクタンス成分により電流還流経路から第二巻線に一次電流が緩やかに減衰しながら流れることになる。これにより、点火プラグに流れる二次電流がステップ的かつ、急激に小さくなることを抑制することができる。
第11の発明は、第10の発明において、前記電流還流経路は第四ダイオードを備え、前記第四ダイオードのカソード側は前記第三スイッチング素子と前記第二巻線との間の電流経路に接続されており、前記第四ダイオードのアノード側は接地側に接続されている。
これにより、放電維持制御期間中、電流還流部を流れる一次電流は第一巻線に流れず、直接第二巻線に流れることとなるため、第一巻線の影響を受けることなく一次電流は、ステップ的に小さくならず、緩やかに減衰していく。一次電流が所定の値に達したら、再度第三スイッチング素子から電流を投入する。再度所定の値に達したら第三スイッチング素子をオフさせる制御を繰り返すので一次電流を精度良く所定の値に制御することが可能となる。
第12の発明は、第10又は11の発明において、カソード側は接地側に接続されており、アノード側は前記第二巻線における前記中間タップ側とは反対側の端部に接続されている第三ダイオードを備える。
仮に第三ダイオードが設けられていない場合、放電開始制御を実施することで、第二巻線から第三スイッチング素子を介して電圧印加部へと流れる電流が発生する可能性がある。この場合、第一巻線の遮断電流によって発生する磁束が第二スイッチング素子から電圧印加部へと流れる電流により相殺され、一次電流は相殺された分だけ小さくなることになる。この対策として、カソード側が第二スイッチング素子に接続されており、アノード側が第二巻線における第二スイッチング素子側の端部に接続されている第三ダイオードを設けることで、前記電流が生じるような電圧が放電開始制御で発生しても第三スイッチング素子から電圧印加部へと流れることを抑制する事が可能となる。
第13の発明は、第10又は11の発明において、カソード側は前記第二巻線における前記中間タップ側の端部に接続されており、アノード側は前記第三スイッチング素子に接続されている第三ダイオードを備える。
この構成によっても、放電開始制御時に第二巻線から第三スイッチング素子を介して電圧印加部へと流れる電流が生じるような電圧が発生しても、第三ダイオードにより第二巻線から第三スイッチング素子へと流れることを抑制する事が可能となる。
第14の発明は、第10乃至13のいずれか1つの発明において、前記点火制御回路は、前記放電発生制御として、前記第三スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第一スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第一スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第一巻線へ流れる一次電流の導通と遮断を行い放電を開始させ、前記放電維持制御として、前記第一スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第三スイッチング素子を状態に制御し、そのあと前記第三スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第二巻線へ流れる前記一次電流の導通と還流を行う。
上記構成とすることで、第一巻線に流れる一次電流の導通と遮断は、第三スイッチング素子を開状態に制御した上で、第一スイッチング素子を切替ることにより実施することができる。また、第二巻線に流れる一次電流の導通と還流を、第一スイッチング素子を開状態に制御した上で、第三スイッチング素子を切替ることにより実施することができる。
第15の発明は、第10乃至13のいずれか1つの発明において、前記点火制御回路は、前記放電発生制御として、前記第一スイッチング素子及び前記第三スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第一スイッチング素子及び前記第三スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第一巻線及び前記第二巻線へと流れる一次電流の導通と遮断を行い放電を開始させ、前記放電維持制御として、前記第一スイッチング素子を開状態に制御した上で、前記第三スイッチング素子を閉状態に制御し、そのあと前記第三スイッチング素子を開状態に制御することで、前記第二巻線へ流れる前記一次電流の導通と還流を行う。
放電発生制御時に、第一スイッチング素子及び第三スイッチング素子を閉状態に制御することで、第二巻線にも一次電流が流れることになり、その結果、第一巻線と第二巻線とにそれぞれ、互いの磁束を打ち消し合う方向の磁束が発生することになる。これにより、放電発生制御の通電で二次側に発生する所謂オン電圧を抑えることができ、オン電圧飛び火防止ダイオードを削除したり、低電圧化して安価なダイオードを採用したりすることができる。
第16の発明は、第1乃至15のいずれか1つの発明において、前記第一巻線の巻数は、前記第二巻線の巻数よりも多い。
放電維持制御時において、点火プラグに生じている放電を維持するための電圧は、放電発生制御時において、点火プラグに放電を発生させるために必要な電圧よりも低い。これを考慮し、第一巻線の巻数を、第二巻線の巻数よりも多くすることで、第二巻線に一次電圧を印加した場合に二次コイルに発生する二次電圧を、第一巻線に一次電圧を印加した場合に二次コイルに発生する二次電圧よりも低くすることができる。
第17の発明は、第1乃至16のいずれか1つの発明において、前記二次コイルの巻数を前記第二巻線の巻数で割った値である巻数比が、前記放電発生制御により前記点火プラグに発生させた前記火花放電を維持するために必要な電圧としての放電維持電圧を、前記電圧印加部が印加する前記電圧で割った値である電圧比よりも大きくなるように構成される。
巻数比は、二次コイルの巻数を第二巻線の巻数で割ることで算出される。つまり、二次巻線の巻数が少なくなるほど、巻数比は大きくなる。このとき、電源電圧と放電維持電圧との比よりも巻数比が大きくなるように二次巻線の巻数を少なくすると、放電維持制御期間中に第二巻線に印加される電圧は電圧印加部が印加する電圧よりも低くなるように設定できる。これにより、放電維持制御の実施期間中、二次巻線に電圧印加部から一次電流を繰り返し流すことができ、そのたび点火プラグに二次電流が流れ、その結果として点火プラグに発生している火花放電を維持することができる。
第18の発明は、第3,14,15のいずれか1つの発明において、前記点火プラグに流れる二次電流を検出する二次電流検出部を備え、前記点火制御回路は、前記放電維持制御を実施している期間中、前記二次電流検出部により検出された前記二次電流の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合に、前記第三スイッチング素子を閉状態に制御し、前記二次電流検出部により検出された前記二次電流の絶対値が前記第一閾値よりも大きく設定された第二閾値よりも大きくなった場合に、前記第三スイッチング素子を開状態に制御する。
第19の発明は、第4又は7の発明において、前記点火プラグに流れる二次電流を検出する二次電流検出部を備え、前記点火制御回路は、前記放電維持制御を実施している期間中、前記二次電流検出部により検出された前記二次電流の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合に、前記第二スイッチング素子を閉状態に制御し、前記二次電流検出部により検出された前記二次電流の絶対値が前記第一閾値よりも大きく設定された第二閾値よりも大きくなった場合に、前記第二スイッチング素子を開状態に制御する。
電流還流経路を設けることで、第18の発明に係る制御も第19の発明に係る制御のどちらも、一次電流遮断時の二次電流の低下を緩やかにすることができるので、二次電流の絶対値を第一閾値から第二閾値までの範囲内に収めることが容易にできる。つまり、上述の二次電流でのフィードバック制御を行なうことで二次電流を所望とする範囲内に精度良く制御することができるとともに、二次電流の急激な変化を低減することができ、二次電流の急激な低下による放電火花の吹き消え現象などを低減することができる。
第20の発明は、第1乃至4のいずれか1つの発明において、前記第一スイッチング素子と、前記第二スイッチング素子と、前記第三スイッチング素子と、前記点火制御回路と、前記電流還流経路とは、前記点火コイルが収納されているケース内に収容される。
点火プラグのうち点火コイルが収納されている空間内に、第一スイッチング素子と、第二スイッチング素子と、第三スイッチング素子と、点火制御回路と、電流還流部とが収容される。つまり、点火プラグのうち点火コイルが収納されている空間内に本内燃機関用点火システムを収容することができる。これにより、配線を削減することができ、また本内燃機関用点火システムの肥大化を抑えることができるので、車両への搭載性向上を図ることができる。
第21の発明は、第5乃至7のいずれか1つの発明において、前記第一スイッチング素子と、前記第二スイッチング素子と、前記点火制御回路と、前記電流還流経路とは、前記点火コイルが収納されているケース内に収容される。
点火プラグのうち点火コイルが収納されている空間内に、第一スイッチング素子と、第二スイッチング素子と、点火制御回路と、電流還流部とが収容される。つまり、点火プラグのうち点火コイルが収納されている空間内に本内燃機関用点火システムを収容することができる。これにより、配線を削減することができ、また本内燃機関用点火システムの肥大化を抑えることができるので、車両への搭載性向上を図ることができる。
第22の発明は、第10乃至15のいずれか1つの発明において、前記第一スイッチング素子と、前記第三スイッチング素子と、前記点火制御回路と、前記電流還流経路とは、前記点火コイルが収納されているケース内に収容される。
点火プラグのうち点火コイルが収納されている空間内に、第一スイッチング素子と、第三スイッチング素子と、点火制御回路と、電流還流部とが収容される。つまり、点火プラグのうち点火コイルが収納されている空間内に本内燃機関用点火システムを収容することができる。これにより、配線を削減することができ、また本内燃機関用点火システムの肥大化を抑えることができるので、車両への搭載性向上を図ることができる。
第23の発明は、第1乃至22のいずれか1つの発明において、前記第一スイッチング素子には、第五ダイオードが逆並列に接続されている。
第1乃至22のいずれか1つの点火システムにおいて、仮に電流還流経路がない状態で放電維持制御を実施した場合、第二巻線へ流れる一次電流が第一スイッチング素子に逆並列に接続される第五ダイオードと、第一巻線と、を介して第二巻線から第二スイッチング素子へと流れる電流が還流することになる。この場合、還流する電流は第一巻線の影響を受けることでその電流の大きさが小さくなり、それに伴って二次コイルに生じる二次電流が小さくなるなど、その制御性が低下するおそれがある。この点、第1乃至22のいずれか1つの発明に係る内燃機関用点火システムでは、電流還流経路が設けられているため、放電維持制御中に電流還流経路を介して第二巻線へと電流が第一巻線を介することなく還流することになる。これにより、点火プラグに流れる二次電流が急激に小さくなることを抑制することができるため、第一スイッチング素子に第五ダイオードが逆並列に接続される構成に対しても本点火システムは好適な構成といえる。
第24の発明では、第1乃至23のいずれか1つの発明において、前記内燃機関は、多気筒内燃機関であり、前記点火制御回路は、前記内燃機関の各気筒に設けられており、前記放電維持制御において前記二次コイルに流れる電流を制御する電流制御信号を出力する制御装置を備え、前記制御装置には、前記電流制御信号を伝達する第一共通信号線及び第二共通信号線が接続されており、前記第一共通信号線から分岐した各信号線が、前記点火プラグによる点火が連続しない気筒の集まりである第一気筒群の各気筒の前記点火制御回路に接続され、前記第二共通信号線から分岐した各信号線が、前記点火プラグによる点火が連続しない気筒の集まりであり且つ前記第一気筒群に含まれない気筒の集まりである第二気筒群の各気筒の前記点火制御回路に接続されている。
内燃機関が多気筒内燃機関(例えば5気筒以上の内燃機関)である場合、二次コイルに流れる電流を制御する電流制御信号を全気筒で共通にすると、点火プラグによる点火が連続する気筒において電流制御信号の一部が重複するおそれがある。
この点、上記構成では、制御装置により、放電維持制御において二次コイルに流れる電流を制御する電流制御信号が出力される。制御装置には、電流制御信号を伝達する第一共通信号線及び第二共通信号線が接続されている。第一共通信号線から分岐した各信号線が、点火プラグによる点火が連続しない気筒の集まりである第一気筒群の各気筒の点火制御回路に接続されている。このため、第一気筒群の気筒の点火は連続しておらず、第一気筒群の気筒に伝達される電流制御信号の一部が重複することを抑制することができる。また、第二共通信号線から分岐した各信号線が、点火プラグによる点火が連続しない気筒の集まりであり且つ第一気筒群に含まれない気筒の集まりである第二気筒群の各気筒の点火制御回路に接続されている。このため、第二気筒群の気筒の点火は連続しておらず、第二気筒群の気筒に伝達される電流制御信号の一部が重複することを抑制することができる。したがって、内燃機関が多気筒内燃機関であっても、二次コイルに流れる電流を電流制御信号により制御することができる。
具体的には、第25の発明では、前記第一気筒群に含まれる2つの気筒で相前後して前記点火が行われる間に、前記第二気筒群に含まれる1つの気筒で前記点火が行われる。
第一気筒群に含まれる2つの気筒で相前後して点火が行われる間に、第二気筒群に含まれる1つの気筒で点火が行われることで、第一気筒群の気筒の点火が連続せず、且つ第二気筒群の気筒の点火が連続しないようにすることができる。
<第1実施形態>
第一実施形態を、図面を参照して説明する。本点火システム10は、内燃機関(以下、エンジンと呼称)60に搭載されるものである(図8参照)。点火システム10の構成を、図1を参照して説明する。点火システム10は、点火プラグ20と、点火コイル11と、第三スイッチング素子14と、第一スイッチング素子15と、第二スイッチング素子16と、電源部(電圧印加部に該当)17と、点火制御回路30と、が設けられている。
点火コイル11は、一次コイル12、二次コイル13及び鉄心23を備えている。一次コイル12を成す巻線の途中には中間タップ12Aが設けられており、中間タップ12Aは、第三スイッチング素子14を介して電源部17に接続されている。このため、第三スイッチング素子14が閉状態となった場合には、電源部17から所定の電圧が中間タップ12Aに印加されることになる。また、一次コイル12を成す巻線のうち中間タップ12Aから一端までの巻数がより多い側の巻線である第一巻線12B側の一端は、第一スイッチング素子15に接続されている。一次コイル12を成す巻線のうち中間タップ12Aから一端までの巻数がより少ない側の巻線である第二巻線12C側の一端は、第三ダイオード19を介して第二スイッチング素子16に接続されている。
第三スイッチング素子14は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であって、第三制御端子14Gと、第三電源側端子14Dと、第三接地側端子14Sと、を有している。この第三スイッチング素子14は、第三制御端子14Gに入力された第三制御信号に基づいて、第三電源側端子14Dと第三接地側端子14Sとの間の通電のオンオフを制御するように構成されている。本実施形態において、第三接地側端子14Sは中間タップ12Aに接続されており、第三電源側端子14Dは電源部17に接続されている。
第一スイッチング素子15は、MOSゲート構造トランジスタであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であって、第一制御端子15Gと、第一電源側端子15Cと、第一接地側端子15Eと、を有している。この第一スイッチング素子15は、第一制御端子15Gに入力された第一制御信号に基づいて、第一電源側端子15Cと第一接地側端子15Eとの間の通電のオンオフを制御するように構成されている。本実施形態において、第一電源側端子15Cは第一巻線12Bに接続されている。また、第一接地側端子15Eは接地されている。
第二スイッチング素子16は、MOSFETであって、第二制御端子16Gと、第二電源側端子16Dと、第二接地側端子16Sと、を有している。この第二スイッチング素子16は、第二制御端子16Gに入力された第二制御信号に基づいて、第二電源側端子16Dと第二接地側端子16Sとの間の通電のオンオフを制御するように構成されている。本実施形態において、第二電源側端子16Dは第三ダイオード19を介して第二巻線12Cに接続されており、第二接地側端子16Sは接地されている。第三ダイオード19についての詳細は、後述する。
中間タップ12Aは、第三スイッチング素子14に接続されるほか、電流還流経路L1とも接続されている。電流還流経路L1は、第一ダイオード18を備えている。第一ダイオード18のカソード側は中間タップ12Aに接続されており、第一ダイオード18のアノード側は接地されている。
二次コイル13の第一端は、一次コイル通電時の飛び火防止ダイオード21(以降、防止ダイオードと呼称)を介して、電流検出用経路L2と接続されている。この電流検出用経路L2には、二次電流検出用の抵抗体22が設けられている。抵抗体22の第一端は防止ダイオード21を介して二次コイル13の第一端と接続され、抵抗体22の第二端は接地側に接続されている。防止ダイオード21は、第一巻線12Bに通電するときに発生する、接地側から抵抗体22を介して二次コイル13における第二端側に向かう方向の電流の通流を防止する。これにより一次コイル12に通電するときに発生する一次コイル12のオン電圧での飛び火を防止するとともに、二次電流(放電電流)I2を点火プラグ20から二次コイル13に向かう方向に規定すべく、そのアノードが二次コイル13における第一端側に接続されている。
点火制御回路30は、図示しないエンジンECU(制御装置)より出力された点火信号IGtを受信するように、エンジンECUに接続されている。かかる点火信号IGtは、エンジン60の燃焼室内におけるガスの状態及び必要とされるエンジン60の出力に応じた、最適な点火時期及び二次電流(放電電流)を規定するものである。また、点火制御回路30は、第三スイッチング素子14、第一スイッチング素子15、及び第二スイッチング素子16の開閉動作を制御するように、第三制御端子14G、第一制御端子15G及び第二制御端子16Gに接続されている。
点火制御回路30は、エンジンECUから受信した点火信号IGtに基づいて、第三スイッチング素子14が有する第三制御端子14Gと、第一スイッチング素子15が有する第一制御端子15Gと、第二スイッチング素子16が有する第二制御端子16Gと、のそれぞれに対して開閉制御を行なうための駆動信号IG1,IG2,IG3を出力する。
これにより、まず電源部17から第一巻線12Bへと流れる経路(図2参照)を形成し、その上で第一巻線12Bに流れる一次電流I1の導通と遮断を制御することで点火プラグ20に火花放電を生じさせる放電開始制御を実施する。放電開始制御の実施後、電源部17から第二巻線12Cへと流れる経路(図3参照)を形成し、その上で第二巻線12Cに流れる一次電流I1の導通と遮断を制御することで点火プラグ20に生じている火花放電を維持させる放電維持制御を実施する。このとき、電流検出用経路L2に流れる二次電流I2を検出することから、電流検出用経路L2と、点火制御回路30とは、二次電流検出部に該当する。
放電開始制御の制御内容を説明する。放電開始制御を実施している期間中、第二スイッチング素子16を常に開状態に制御する。その上で、第三スイッチング素子14及び第一スイッチング素子15を閉状態に制御することで、図2に示されるように、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1が流れる。そして、第一所定時間の経過後に第一スイッチング素子15を開状態に制御する。これにより、電源部17から第一巻線12Bへ流れる一次電流I1の導通が遮断され、二次コイル13に高電圧が誘起し、点火プラグ20の火花ギャップ部の気体が絶縁破壊することで、点火プラグ20で火花放電が生じる。
ここで、第三ダイオード19が設けられていない状態で、上記の放電開始制御を実施した場合を想定する。この場合、電源部17から第一巻線12Bに一次電流I1が流れる一方で、第二スイッチング素子16から第二巻線12Cを介して電源部17へと流れる電流が発生する場合がある。つまり、第一巻線12Bと第二巻線12Cとで磁気回路が構成されていたり、漏洩磁束が鎖交したりすることにより、第一スイッチング素子15で第一巻線12Bに流れる一次電流I1を遮断したときに、第二巻線12Cに負の電圧が発生し、接地側から電源部17へと電流が流れる場合がある。仮に第二スイッチング素子16から第二巻線12Cを介して電源部17へと流れる電流が発生した場合、発生した前記電流と、電源部17から第一巻線12Bに流れる一次電流I1とが互いに相殺されることで、一次電流I1は相殺された分だけ小さくなることになる。この対策として、カソード側が第二スイッチング素子16に接続されており、アノード側が第二巻線12Cにおける第二スイッチング素子16側の端部に接続されている第三ダイオード19を設けている。これにより、第二スイッチング素子16から第二巻線12Cを介して電源部17へと電流が流れることを抑制する事が可能となり放電開始制御の発生電圧の低下を防止することができる。
放電開始制御を実施後、放電維持制御を実施する。放電維持制御を実施している期間中は、第一スイッチング素子15を常に開状態に制御する。この状態で、第三スイッチング素子14及び第二スイッチング素子16を閉状態に制御することで、図3に示されるように、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れることになる。そして、第三スイッチング素子14を開状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通を遮断する。
仮に、点火システム10に電流還流経路L1が設けられていなかった場合、第三スイッチング素子14を開状態に制御することで第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通を遮断すると、第二巻線12Cに流れていた一次電流I1が遮断され、一次電流I1がステップ的に0になる。その結果、図4に示されるように、第三スイッチング素子14が開状態に制御されるたび二次電流I2の絶対値もステップ的にかつ急激に小さくなり、それに伴って例えば、放電火花が気流などで吹き消されて点火プラグ20に生じた火花放電が維持できなくなるおそれがある。
この点、本点火システム10には電流還流経路L1が設けられているため、第三スイッチング素子14を開状態に制御すると、図5に示されるように、第三スイッチング素子14で遮断したあとも、第二巻線12Cのインダクタンスにより電流還流経路L1を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流することとなる。これにより一次電流I1は緩やかに減衰し、点火プラグ20に流れる二次電流I2の絶対値がステップ的に、かつ急激に小さくなることを抑制することができる。
加えて、電流還流経路L1が中間タップ12Aに接続されることで、放電維持制御を実施している期間中、電流還流経路L1を流れる一次電流I1は第一巻線12Bを流れず、第二巻線12Cに直接流れることとなる。これにより、第一巻線12Bの影響を受けることがなくなるため、一次電流I1を精度よく、かつ応答性よく制御することが可能となる。
ところで、放電維持制御を実施している期間中、電源部17から第二巻線12Cに一次電流I1が繰り返し流れることになるが、二次コイル13の巻数を第二巻線12Cで割った値である巻数比の設定次第では、第二巻線12Cに印加する必要のある電圧が、電源部17が印加できる所定の電圧よりも高くなるおそれがある。この場合、電源部17から第二巻線12Cに一次電流I1を流すことができず、その結果として点火プラグ20で生じている火花放電を維持することができない懸念がある。
この対策として、本実施形態では、電源部17が印加する所定の電圧で放電維持電圧を割った値としての電圧比よりも、上記巻数比が大きくなるように点火コイル11が構成される。放電維持電圧は、放電発生制御により点火プラグ20に発生させた火花放電が維持されているときの電圧である。
放電維持電圧はエンジンECUの運転環境によって変化するが、平均すると2~3kVの範囲内で点火プラグ20に発生させた火花放電を維持できていることから、放電維持電圧は2~3kVの範囲内で固定の値として設定される。つまり、電圧比は固定値となるため、第二巻線12Cの巻数が少なくなるほど、巻数比は大きくなることになる。これにより、電圧比よりも巻数比が大きくなるように第二巻線12Cの巻数を少なくすることで、放電維持制御を実施している期間中において、第二巻線12Cに印加する必要のある電圧が、電源部17が印加できる電圧よりも低くなるように設定することができる。これにより、放電維持制御を実施している期間中、第二巻線12Cに電源部17から一次電流I1を繰り返し流すことができ、そのたび点火プラグ20に二次電流I2が流れ、その結果として点火プラグ20に発生している火花放電を維持することができる。ひいては、電源部17にDC-DCコンバータ等の電圧昇圧回路を設ける必要がなく、点火システム10の簡素化を図ることが出来る。
本実施形態では、放電維持制御を実施している期間中、点火制御回路30は電流検出用経路L2に流れる二次電流I2を逐次検出している、そして、検出した二次電流I2に基づいて図6に示す制御を実施する。図6において、「二次電流I2」は、電流検出用経路L2に流れる二次電流I2の値を表すものである。「第三制御信号」は、第三スイッチング素子14の第三制御端子14Gへ第三制御信号が出力されたか否かをハイ/ローで表すものである。具体的には、第三スイッチング素子14の第三制御端子14Gへ第三制御信号が出力された場合に(図6の「第三制御信号」においてハイとなった場合に)、第三スイッチング素子14は閉状態に制御される。また、第三スイッチング素子14の第三制御端子14Gへ第三制御信号が出力されていない場合に(図2の「第三制御信号」においてローとなった場合に)、第三スイッチング素子14は開状態に制御される。「第二制御信号」は、第二スイッチング素子16の第二制御端子16Gへ第二制御信号が出力されたか否かをハイ/ローで表すものである。
図6に示すように、放電維持制御を実施している期間中検出した二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、第三スイッチング素子14及び第二スイッチング素子16を閉状態に制御する。これにより、第二巻線12Cに電源部17から一次電流I1を流すことができ、それに伴って点火プラグ20に流れる二次電流I2の絶対値が大きくなる。検出した二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも大きく設定された第二閾値よりも大きくなった場合には、第三スイッチング素子14を開状態に制御する。これにより、電源部17から第二巻線12Cに流れる一次電流I1が遮断され、点火プラグ20に流れる二次電流I2の絶対値が小さくなる。一次電流I1を第三スイッチング素子14で遮断したときに第二巻線12Cの一次電流I1は、電流還流経路L1で還流しながら流れ、小さくなっていくので二次電流I2は緩やかに減衰していく。このように、上記制御を実施することで、二次電流I2は緩やかな変化とすることができ、第一閾値から第二閾値までの範囲内に容易に収めることができる。また急激な二次電流I2の低下を防止できるので、放電火花の吹き消えを防止することが可能な放電制御を実施することができる。
次に、図7を参照して、本実施形態にかかる放電制御の態様を説明する。
図7において、「第一巻線を流れる一次電流I1」は、第一巻線12Bを流れる一次電流I1を表すものである。同様に「第二巻線を流れる一次電流I1」は、第二巻線12Cを流れる一次電流I1を表すものである。また、「二次電圧V2」は、点火プラグ20に印加される二次電圧V2の値を表すものである。「第一制御信号」は、第一スイッチング素子15の第一制御端子15Gへ第一制御信号が出力されたか否かをハイ/ローで表すものである。
エンジンECUより出力された点火信号IGtに基づいて、点火制御回路30により放電発生制御が実施される。放電発生制御では、第三制御信号が第三スイッチング素子14の第三制御端子14Gに送信されるとともに、第一制御信号が第一スイッチング素子15の第一制御端子15Gに送信される(時間t1参照)。これにより、第二スイッチング素子16は開状態のまま、第三スイッチング素子14及び第一スイッチング素子15が閉状態に制御される。その結果、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1が流れることになり、第一巻線12Bを流れる一次電流I1は大きくなっていく。
そして、第一所定時間の経過後に、第三制御信号が第三スイッチング素子14の第三制御端子14Gに送信された状態を維持したままの状態で、第一制御信号の出力が停止される(時間t2参照)。これにより、第一スイッチング素子15が開状態に制御されることになり、第一巻線12Bへ流れる一次電流I1の電流が遮断され、二次コイル13に高電圧が誘起し、点火プラグ20で火花放電が生じる。
そして、点火制御回路30により放電維持制御が実施される。放電維持制御では、電流検出用経路L2に流れる二次電流I2が点火制御回路30により逐次検出されている。そして、検出された二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、点火プラグ20で生じた火花放電が消失しないように、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れる制御が行われる。図7の時間t3の時点では、第三スイッチング素子14が閉状態に制御されており、第二スイッチング素子16が開状態に制御されている状態であるため、第二制御信号が第二スイッチング素子16の第二制御端子16Gに送信される。これにより、第二スイッチング素子16が閉状態に制御され、第二巻線12Cに一次電流I1が流れ二次電流I2が増加することになる。
検出された二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合には、第三制御信号の出力が停止される(時間t4参照)。これにより、第三スイッチング素子14が開状態に制御されることになり、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1が遮断され、電流還流経路L1を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流することとなる。以降は、電流検出用経路L2にて検出される二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも大きく、且つ、第二閾値よりも小さくなるように、第三スイッチング素子14の開閉動作が制御されることで、放電期間が終了するまで点火プラグ20で火花放電が継続して生じ続けることになる(時間t3-5参照)。
なお、図7は、燃焼室内の流速が刻々と変化する運転状況下を想定している。放電維持制御を実施している期間中、二次電圧V2は気流などで放電火花長さが引き延ばされたり短くなったりして安定していない(時間t3-5参照)。しかし、その一方で、二次電流I2を安定して第一閾値から第二閾値の範囲内に制御することができることから、二次電圧V2が安定しない運転状態であっても、本点火システム10は点火プラグ20で生じている火花放電が吹き消えることを抑えることができるので安定して火花放電を維持させることができる。
本点火システム10を構築する多くの構成は、点火コイル11が収容されているケース50内に収容される。図8を用いてケース50内の構成を説明する。
図8は、特にケース50周辺の構造を示したものである。ケース50内には、点火コイル11が備わっており、内側から外側へ一次コイル12と、二次コイル13と、上下に積層した鉄心23とが装着される。また、鉄心23とケース50との間には所定の空間が形成されており、この所定の空間内に、第三スイッチング素子14と、第一スイッチング素子15と、第二スイッチング素子16と、電流還流経路L1と、電流検出用経路L2と、点火制御回路30と、が設けられる。
二次コイル13とケース50との間には防止ダイオード21が設けられており、防止ダイオード21のアノード側は二次コイル13の第一端と配線により電気的に接続されている。また、防止ダイオード21のカソード側は上記所定の空間内に設けられた電流検出用経路L2と接続されている。
以上の通り、ケース50内に電源部17や点火プラグ20を除く点火システム10を構築する他の構成を収容することができる。これにより、配線を削減することができ、また本点火システム10の肥大化を抑えることができるので、車両への搭載性向上を図ることができる。
なお、第一実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
・第一実施形態に係る放電制御の態様を、図7を参照して説明していた。この図7では、エンジンECUより出力された点火信号IGtに基づいて、点火制御回路30により放電発生制御が実施されてから、点火プラグ20で火花放電が生じ、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなるまでの期間(時間t1-t3参照)、第二スイッチング素子16は開状態に、第三スイッチング素子14は閉状態に制御されていた。このことについて、図9に記載されるように、第一スイッチング素子15が開状態に制御されることで、二次コイル13に高電圧が誘起して以降、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなるまでの間に、第二制御信号を出力した上で、第三制御信号の出力を停止する構成としてもよい(時間t8参照)。かかる構成によっても、上記実施形態に準じた作用・効果が奏される。
・第一実施形態では、放電維持制御を実施している期間中、検出した二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には第三スイッチング素子14が閉状態に制御され、検出した二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合には第三スイッチング素子14が開状態に制御されていた。このことについて、第三スイッチング素子14の開閉制御を二次電流I2の値に関わらず所定の時間で制御してもよい。例えば、放電維持制御を実施している期間中、第二所定時間の経過毎に、第三スイッチング素子14の開閉状態を切替えてもよい。この場合、放電維持制御を実施している期間中に二次電流I2を検出する必要がなくなるため、電流検出用経路L2を形成する必要がなくなり、点火システム10のコスト削減を図ることが可能となる。
・第一実施形態では、放電維持制御を実施している期間中、第一スイッチング素子15を常に開状態に制御する。この状態で、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さい場合には、第三スイッチング素子14及び第二スイッチング素子16を閉状態に制御し、二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合には、第二スイッチング素子16は閉状態のまま第三スイッチング素子14を開状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通と還流を行っていた。この放電維持制御に代えて、放電維持制御を実施している期間中は、第一スイッチング素子15を常に開状態に制御する。この状態で、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さい場合には、第三スイッチング素子14及び第二スイッチング素子16を閉状態に制御し、二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合には、第三スイッチング素子14は閉状態のまま第二スイッチング素子16を開状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通と遮断を行ってもよい。これによっても、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
・第一実施形態では、カソード側が第二スイッチング素子16に接続されており、アノード側が第二巻線12Cにおける第二スイッチング素子16側の端部に接続されている第三ダイオード19が設けられていた。このことについて、図10に示されるように、第三ダイオード19は、カソード側が中間タップ12Aに接続され、アノード側が第三スイッチング素子14の第三接地側端子14Sに接続されるように構成されてもよい。これにより、第三ダイオード19は、誤って電源部17を逆極性で組み付けたときの電流の逆流を防止することができる。本別例に係る構成では、電流還流経路L1に備わる第一ダイオード18のカソード側が中間タップ12Aと第三ダイオード19との間の電流経路に接続されており、第一ダイオード18のアノード側が接地されていてもよい。
・この場合に、図11に示すように、点火制御回路30は、図示しないエンジンECUより出力された点火信号IGt及びエネルギ投入信号IGwを受信するように、エンジンECUに接続されていてもよい。点火信号IGt(放電開始信号)は、放電開始制御(放電発生制御)において、第一巻線12Bへの通電期間を設定する。エネルギ投入信号IGw(電流制御信号)は、放電維持制御において、二次電流I2の指令値及び放電維持制御の終了時期を設定する。また、点火制御回路30は、第一スイッチング素子15、第二スイッチング素子16、及び第三スイッチング素子14の開閉動作を制御するように、第一制御端子15G、第二制御端子16G、及び第三制御端子14Gに接続されている。なお、第三ダイオード19と第三スイッチング素子14とを逆に配置してもよい。
例えば、図12~14に示すように、点火信号IGt及びエネルギ投入信号IGwにより、第一巻線12Bへの通電期間、及び放電維持制御における二次電流I2の指令値を設定する。すなわち、点火信号IGtがハイの期間に第一巻線12Bへ通電する。また、点火信号IGtの立ち上がり時期とエネルギ投入信号IGwとの立ち上がり時期とに時間差を設け、この時間差の長さに基づいて二次電流I2の指令値を設定する。
例えば、時間差が0msの場合に二次電流I2の指令値を100msに設定し、時間差が1msの場合に二次電流I2の指令値を50msに設定し、時間差が2msの場合に二次電流I2の指令値を20msに設定する。そして、二次電流I2の指令値を上記第一閾値とし、二次電流I2の指令値に所定値を加えた値を上記第二閾値とすればよい。なお、この時間差と二次電流I2の指令値との組み合わせは、任意に変更可能である。また、エネルギ投入信号IGwの立ち下がり時期により、放電維持制御の終了時期を設定する。上記点火信号IGtに基づく第一巻線12Bへの通電期間の設定、並びにエネルギ投入信号IGwに基づく二次電流I2の指令値及び放電維持制御の終了時期の設定は、他の実施形態及びそれらの変更例にも適用することができる。
図15に示すように、放電開始制御を実施している期間中、第二制御信号により、第二スイッチング素子16を開状態に制御する。その上で、点火信号IGtが立ち上がることで、第一制御信号及び第三制御信号により第一スイッチング素子15及び第三スイッチング素子14を閉状態に制御し、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1が流れる。そして、点火信号IGtが立ち下がることで、第一制御信号及び第三制御信号により第一スイッチング素子15及び第三スイッチング素子14を開状態に制御する。これにより、電源部17から第一巻線12Bへ流れる一次電流I1の導通が遮断され、二次コイル13に高電圧が誘起し、点火プラグ20の火花ギャップ部の気体が絶縁破壊することで、点火プラグ20で火花放電が生じる。
そして、放電開始制御を実施後、放電維持制御を実施する。放電維持制御を実施している期間中は、第一スイッチング素子15を第一制御信号により開状態に制御する。この状態で、第二制御信号及び第三制御信号により、第二スイッチング素子16と第三スイッチング素子14とを閉状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れることになる。そして、二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合に、第三制御信号により第三スイッチング素子14を開状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通を遮断する。これにより、電流還流経路L1を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流することとなり緩やかに第二巻線12Cの電流は減衰していき、二次電流I2も低下していく。そして、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、再度、第三制御信号により第三スイッチング素子14が閉状態に制御される。
・あるいは、図16に示されるように、電流還流経路L1に代えて、電流還流経路L4を備えてもよい。電流還流経路L4は第二ダイオード41を備えており、第二ダイオード41のカソード側は、第二巻線12Cと第二スイッチング素子16との間の電流経路L5に接続され、第二ダイオード41のアノード側は第三ダイオード19と中間タップ12Aとの間の電流経路L6に接続される。
・この場合に、図17に示すように、点火制御回路30は、図示しないエンジンECUより出力された点火信号IGt及びエネルギ投入信号IGwを受信するように、エンジンECUに接続されていてもよい。そして、点火制御回路30は、上記点火信号IGtに基づいて第一巻線12Bへの通電期間を設定し、エネルギ投入信号IGwに基づいて二次電流I2の指令値及び放電維持制御の終了時期を設定する。
図18に示すように、放電開始制御の態様は図15と同様である。そして、放電開始制御を実施後、放電維持制御を実施する。
放電維持制御を実施している期間中は、第一スイッチング素子15を第一制御信号により開状態に制御する。この状態で、第二制御信号及び第三制御信号により、第二スイッチング素子16と第三スイッチング素子14とを閉状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れることになる。そして、二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合に、第二制御信号により第二スイッチング素子16を開状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通を遮断する。これにより、電流還流経路L4を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流することとなり緩やかに第二巻線12Cの電流は減衰していき、二次電流I2も低下していく。そして、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、再度、第二制御信号により第二スイッチング素子16が閉状態に制御される。
図16の構成では、第二ダイオード41を備えた電流還流経路L4が備わっていた。このことについて、図19に示すように、電流還流経路L4において、第二ダイオード41のアノード側には第四スイッチング素子43が備わっていてもよい。第四スイッチング素子43は、半導体スイッチング素子であって、第四制御端子43Gと、第四電源側端子43Dと、第四接地側端子43Sと、を有している。この第四スイッチング素子43は、第四制御端子43Gに入力された第四制御信号に基づいて、第四電源側端子43Dと第四接地側端子43Sとの間の通電のオンオフを制御するように構成されている。第四スイッチング素子43は、第四電源側端子43Dは第二ダイオード41に接続されており、第四接地側端子43Sは電流経路L5に接続されている。
図19の構成における放電開始制御の態様を説明する。
放電開始制御を実施している期間中、第二スイッチング素子16と第四スイッチング素子43を常に開状態に制御する。その上で、第三スイッチング素子14及び第一スイッチング素子15を閉状態に制御することで、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1が流れる。そして、第一所定時間の経過後に第一スイッチング素子15を開状態に制御する。これにより、電源部17から第一巻線12Bへ流れる一次電流I1の導通が遮断され、二次コイル13に高電圧が誘起し、点火プラグ20の火花ギャップ部の気体が絶縁破壊することで、点火プラグ20で火花放電が生じる。
図19の構成における放電維持制御の態様を説明する。
放電開始制御を実施後、放電維持制御を実施する。放電維持制御を実施している期間中は、第一スイッチング素子15を常に開状態に制御する。この状態で、第三スイッチング素子14と、第二スイッチング素子16と、第四スイッチング素子43と、を閉状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れることになる。そして、二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合に、第二スイッチング素子16を開状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通を遮断する。これにより、電流還流経路L4を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流することとなり緩やかに第二巻線12Cの電流は減衰していき、二次電流I2も低下していく。そして、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、再度、第二スイッチング素子16が閉状態に制御される。
図19のように、電流還流経路L4に第四スイッチング素子43を設けることで、放電発生時に第一巻線12Bから第二巻線12Cに鎖交する磁束により発生する電圧で還流電流が流れ、二次電圧V2が低下することを抑制することができる。
<第二実施形態>
以下、第二実施形態について、第一実施形態との相違点を中心に説明する。
第一実施形態において、中間タップ12Aは、第三スイッチング素子14を介して電源部17に接続されていた。このことについて、図20に記載されるように、第三スイッチング素子14を削除することで、中間タップ12Aが直接電源部17に接続される構成とする。また、第二実施形態に係る点火システム10は、電流還流経路L1に代えて、電流還流経路L4を備えている。電流還流経路L4は第二ダイオード41を備えており、第二ダイオード41のカソード側は、第二巻線12Cと第三ダイオード19との間の電流経路L5に接続され、第二ダイオード41のアノード側は電源部17と中間タップ12Aとの間の電流経路L6に接続される。
なお、第二実施形態に係る第三ダイオード19は、第一実施形態同様、カソード側が第二スイッチング素子16に接続されており、アノード側は第二巻線12Cにおける第二スイッチング素子16側の端部に接続されている。これにより、放電開始制御時に第二スイッチング素子16から第二巻線12Cを介して電源部17へと電流が流れることを抑制する事が可能となり放電開始制御の発生電圧の低下を防止することができる。
上記構成とすることで、第三スイッチング素子14を設ける必要がなくなる分、放電制御の簡便化を図ることができる。加えて、点火システム10のコスト削減を図ることができる。以下、図20及び図21を参照して、第二実施形態に係る放電制御の態様を説明する。
エンジンECUより出力された点火信号IGtに基づいて、点火制御回路30により放電発生制御が実施される。放電発生制御では、第一制御信号が第一スイッチング素子15の第一制御端子15Gに送信される(時間t11参照)。これにより、第二スイッチング素子16は開状態のまま、第一スイッチング素子15が閉状態に制御される。その結果、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1が流れることになり、第一巻線12Bを流れる一次電流I1は大きくなる。
そして、第一所定時間の経過後に、第一制御信号の出力が停止される(時間t12参照)。これにより、第一スイッチング素子15が開状態に制御されることになり、第一巻線12Bへ流れる一次電流I1の導通が遮断され、二次コイル13に高電圧が誘起し、点火プラグ20で火花放電が生じる。
そして、点火制御回路30により放電維持制御が実施される。放電維持制御では、電流検出用経路L2に流れる二次電流I2が点火制御回路30により逐次検出されている。検出された二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、第二制御信号が第二スイッチング素子16の第二制御端子16Gに送信される(時間t13参照)。これにより、第二スイッチング素子16が閉状態に制御され、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れる。
検出された二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合には、第二制御信号の出力が停止される(時間t14参照)。これにより、第二スイッチング素子16が開状態に制御されることになり、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1が遮断され、電流還流経路L4を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流することとなり緩やかに第二巻線12Cの電流は減衰していき、二次電流I2も低下していく。そして、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、再度、第二スイッチング素子16が閉状態に制御される。このように放電維持制御期間中は、電流検出用経路L2にて検出される二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも大きく、且つ、第二閾値よりも小さくなるように、第二スイッチング素子16の開閉動作が制御されることで、放電期間が終了するまで点火プラグ20で火花放電が継続して生じ続けることになる(時間t13-15参照)。
このように、第一巻線12Bに流れる一次電流I1の導通と遮断は、第二スイッチング素子16を開状態に制御した上で、第一スイッチング素子15を切替ることにより実施することができる。また、第二巻線12Cに流れる一次電流I1の導通と還流は、第一スイッチング素子15を開状態に制御した上で、第二スイッチング素子16を切替ることにより実施することができる。
また、電流還流経路L4を設けることで、放電維持制御期間中に電流還流経路L4を流れる一次電流I1は第一巻線12Bに流れず、第二巻線12Cに流れることとなるため、第一巻線12Bの影響を受けることなく一次電流I1を精度高く制御することが可能となる。ひいては、二次電流I2の制御性を高めることができ、その結果として、失火しにくい点火装置を提供することができる。
ところで、点火システム10を構築する多くの構成は、点火コイル11が収容されているケース50内に収容される。第二実施形態においても、鉄心23とケース50との間には所定の空間が形成されており、この所定の空間内に、第一スイッチング素子15と、第二スイッチング素子16と、電流還流経路L7と、電流検出用経路L2と、点火制御回路30と、が設けられる。
つまり、点火プラグ20のうち点火コイル11が収納されている空間内に本内燃機関用点火システムを収容することができる。これにより、配線を削減することができ、また本内燃機関用点火システムの肥大化を抑えることができるので、車両への搭載性向上を図ることができる。
なお、第二実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
・第二実施形態に適用される別例として、図22に示されるように、第三ダイオード19は、カソード側が中間タップ12Aに接続され、アノード側が電源部17に接続されるように構成されてもよい。これにより、誤って電源部17を逆極性で組み付けたときの逆流を防止することができる。
・第二実施形態では、放電維持制御を実施している期間中、検出した二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には第二スイッチング素子16が閉状態に制御され、検出した二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合には第二スイッチング素子16が開状態に制御されていた。このことについて、第二スイッチング素子16の開閉制御を二次電流I2の値に関わらず所定の時間で制御してもよい。例えば、放電維持制御を実施している期間中、第二所定時間の経過毎に、第二スイッチング素子16の開閉状態を切替えてもよい。この場合、放電維持制御を実施している期間中に二次電流I2を検出する必要がなくなるため、電流検出用経路L2を形成する必要がなくなり、点火システム10の小型化やコスト削減を図ることが可能となる。
・第二実施形態では、電流還流経路L4に第二ダイオード41を設けていた。このことについて、図19に示す電流還流経路L4と同様の構成を適用してもよい。具体的には、図23に示すように、第二実施形態においても、電流還流経路L4における第二ダイオード41のアノード側に第四スイッチング素子43が備わっていてもよい。この場合、図19に示す別例に準じた作用及び効果を奏することができる。
・この場合に、図23に示すように、点火制御回路30は、図示しないエンジンECUより出力された点火信号IGt及びエネルギ投入信号IGwを受信するように、エンジンECUに接続されていてもよい。そして、点火制御回路30は、上記点火信号IGtに基づいて第一巻線12Bへの通電期間を設定し、エネルギ投入信号IGwに基づいて二次電流I2の指令値及び放電維持制御の終了時期を設定する。また、点火制御回路30は、第一スイッチング素子15、第二スイッチング素子16、及び第四スイッチング素子43の開閉動作を制御するように、第一制御端子15G、第二制御端子16G、及び第四制御端子43Gに接続されている。なお、第二ダイオード41と第四スイッチング素子43とを逆に配置してもよい。
図24に示すように、放電開始制御を実施している期間中、第二制御信号及び第四制御信号により、第二スイッチング素子16と第四スイッチング素子43を開状態に制御する。その上で、点火信号IGtが立ち上がることで、第一制御信号により第一スイッチング素子15を閉状態に制御し、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1が流れる。そして、点火信号IGtが立ち下がることで、第一制御信号により第一スイッチング素子15を開状態に制御する。これにより、電源部17から第一巻線12Bへ流れる一次電流I1の導通が遮断され、二次コイル13に高電圧が誘起し、点火プラグ20の火花ギャップ部の気体が絶縁破壊することで、点火プラグ20で火花放電が生じる。
そして、放電開始制御を実施後、放電維持制御を実施する。放電維持制御を実施している期間中は、第一制御信号により、第一スイッチング素子15を開状態に制御する。この状態で、第二制御信号及び第四制御信号により、第二スイッチング素子16と第四スイッチング素子43とを閉状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れることになる。そして、二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合に、第二制御信号により第二スイッチング素子16を開状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通を遮断する。これにより、電流還流経路L4を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流することとなり緩やかに第二巻線12Cの電流は減衰していき、二次電流I2も低下していく。そして、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、再度、第二制御信号により第二スイッチング素子16が閉状態に制御される。
・第三ダイオード19の位置を、図23に示す位置から図25に示す位置に変更することもできる。すなわち、第三ダイオード19は、第一実施形態同様、カソード側が第二スイッチング素子16に接続されており、アノード側が第二巻線12Cにおける第二スイッチング素子16側の端部に接続されている。なお、第三ダイオード19と第二スイッチング素子16とを逆に配置してもよい。
<第三実施形態>
以下、第三実施形態について、上述の第二実施形態との相違点を中心に説明する。
第二実施形態において、第二スイッチング素子16の第二電源側端子16Dは第三ダイオード19を介して第二巻線12Cに接続されており、第二接地側端子16Sは接地されていた。この点、図26に記載されるように、第二スイッチング素子16を削除し、第三スイッチング素子14を追加する。この第三スイッチング素子14は、第三電源側端子14Dが中間タップ12Aに接続されており、第三スイッチング素子14の第三接地側端子14Sが第二巻線12Cに接続されている。そして、電流還流経路L7に備わる第四ダイオード42のカソード側は、第三スイッチング素子14と第二巻線12Cとの間の電流経路L8に接続され、第四ダイオード42のアノード側は接地される。これにより、放電維持制御期間中、電流還流経路L7を流れる一次電流I1は第一巻線12Bに流れず、直接第二巻線12Cに流れることとなるため、第一巻線12Bの影響を受けることなく一次電流I1を精度高く制御することが可能となる。
第三ダイオード19は、カソード側が接地側に接続されており、アノード側が第二巻線12Cにおける中間タップ12A側とは反対側の端部に接続されている。これにより、放電開始制御時に第二スイッチング素子16から第二巻線12Cを介して電源部17へと電流が流れることを抑制する事が可能となり放電開始制御の発生電圧の低下を防止することができる。
図26および図27を参照して、本実施形態に係る放電制御の態様を説明する。
エンジンECUより出力された点火信号IGtに基づいて、点火制御回路30により放電発生制御が実施される。放電発生制御では、第一制御信号が第一スイッチング素子15の第一制御端子15Gに送信される(時間t21参照)。これにより、第三スイッチング素子14は開状態のまま、第一スイッチング素子15が閉状態に制御される。その結果、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1が流れることになり、第一巻線12Bを流れる一次電流I1は大きくなる。
そして、第一所定時間の経過後に、第一制御信号の出力が停止される(時間t22参照)。これにより、第一スイッチング素子15が開状態に制御されることになり、第一巻線12Bへ流れる一次電流I1の導通が遮断され、二次コイル13に高電圧が誘起し、点火プラグ20で火花放電が生じる。
そして、点火制御回路30により放電維持制御が実施される。放電維持制御では、電流検出用経路L2に流れる二次電流I2が点火制御回路30により逐次検出されている。検出された二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、第三制御信号が第三スイッチング素子14の第三制御端子14Gに送信される(時間t23参照)。これにより、第三スイッチング素子14が閉状態に制御され、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れる。
検出された二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合には、第三制御信号の出力が停止される(時間t24参照)。これにより、第三スイッチング素子14が開状態に制御されることになり、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1が遮断され、電流還流経路L7を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流して減衰することとなる。以降は、電流検出用経路L2にて検出される二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも大きく、且つ、第二閾値よりも小さくなるように、第三スイッチング素子14の開閉動作が制御されることで、放電期間が終了するまで点火プラグ20で火花放電が継続して生じ続けることになる(時間t23-25参照)。
このように、第一巻線12Bに流れる一次電流I1の導通と遮断は、第三スイッチング素子14を開状態に制御した上で、第一スイッチング素子15を切替ることにより実施することができる。また、第二巻線12Cに流れる一次電流I1の導通と還流は、第一スイッチング素子15を開状態に制御した上で、第三スイッチング素子14を切替ることにより実施することができる。また、上記構成では、電源部17から中間タップ12Aまでの通電経路から第三スイッチング素子14が除かれている。このため、電源部17から第一巻線12Bへ一次電流I1が流れる際に第三スイッチング素子14を介すことで生じる損失をなくすことができ、放電発生制御の効率を高めることができる。
ところで、点火システム10を構築する多くの構成は、点火コイル11が収容されているケース50内に収容される。第三実施形態においても、鉄心23とケース50との間には所定の空間が形成されており、この所定の空間内に、第一スイッチング素子15と、第三スイッチング素子14と、電流還流経路L7と、電流検出用経路L2と、点火制御回路30と、が設けられる。
つまり、点火プラグ20のうち点火コイル11が収納されている空間内に本内燃機関用点火システムを収容することができる。これにより、配線を削減することができ、また本内燃機関用点火システムの肥大化を抑えることができるので、車両への搭載性向上を図ることができる。
第三実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
・第三実施形態において、第三ダイオード19は、カソード側が接地側に接続されており、アノード側が第二巻線12Cにおける中間タップ12A側とは反対側の端部に接続されていた。このことについて、図28に示されるように、第三ダイオード19は、カソード側が第二巻線12Cにおける中間タップ12A側の端部に接続されており、アノード側が第三スイッチング素子14に接続される構成であってもよい。
・この場合に、図29に示すように、点火制御回路30は、図示しないエンジンECUより出力された点火信号IGt及びエネルギ投入信号IGwを受信するように、エンジンECUに接続されていてもよい。そして、点火制御回路30は、上記点火信号IGtに基づいて第一巻線12Bへの通電期間を設定し、エネルギ投入信号IGwに基づいて二次電流I2の指令値及び放電維持制御の終了時期を設定する。また、点火制御回路30は、第三スイッチング素子14の開閉動作を制御するように、第三制御端子14Gに接続されている。なお、第三ダイオード19と第三スイッチング素子14とを逆に配置してもよい。
図30に示すように、放電開始制御を実施している期間中、第三制御信号により、第三スイッチング素子14を開状態に制御する。その上で、点火信号IGtが立ち上がることで、第一制御信号により第一スイッチング素子15を閉状態に制御し、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1が流れる。そして、点火信号IGtが立ち下がることで、第一制御信号により第一スイッチング素子15を開状態に制御する。これにより、電源部17から第一巻線12Bへ流れる一次電流I1の導通が遮断され、二次コイル13に高電圧が誘起し、点火プラグ20の火花ギャップ部の気体が絶縁破壊することで、点火プラグ20で火花放電が生じる。
そして、放電開始制御を実施後、放電維持制御を実施する。放電維持制御を実施している期間中は、第一制御信号により、第一スイッチング素子15を開状態に制御する。この状態で、第三制御信号により、第三スイッチング素子14を閉状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと一次電流I1が流れることになる。そして、二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合に、第三制御信号により第三スイッチング素子14を開状態に制御することで、電源部17から第二巻線12Cへと流れる一次電流I1の導通を遮断する。これにより、電流還流経路L7を経由して第二巻線12Cに一次電流I1が還流することとなり緩やかに第二巻線12Cの電流は減衰していき、二次電流I2も低下していく。そして、二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には、再度、第三制御信号により第三スイッチング素子14が閉状態に制御される。
・第三実施形態では、放電維持制御を実施している期間中、検出した二次電流I2の絶対値が第一閾値よりも小さくなった場合には第三スイッチング素子14が閉状態に制御され、検出した二次電流I2の絶対値が第二閾値よりも大きくなった場合には第三スイッチング素子14が開状態に制御されていた。このことについて、第三スイッチング素子14の開閉制御を二次電流I2の値に関わらず所定の時間で制御してもよい。例えば、放電維持制御を実施している期間中、第二所定時間の経過毎に、第三スイッチング素子14の開閉状態を切替えてもよい。この場合、放電維持制御を実施している期間中に二次電流I2を検出する必要がなくなるため、電流検出用経路L2を形成する必要がなくなり、点火システム10の小型化やコスト削減を図ることが可能となる。
・第三実施形態に係る放電発生制御では、第三スイッチング素子14は開状態のまま、第一スイッチング素子15が閉状態に制御され、第一所定時間の経過後に、第一スイッチング素子15が開状態に制御される制御が実施されていた。
この点、放電発生制御時において、第一スイッチング素子15が閉状態に制御することで、電源部17から第一巻線12Bへと一次電流I1を流す一方で、第三スイッチング素子14を閉状態に制御する構成としてもよい。これにより、第二巻線12Cにも一次電流I1が流れることになり、その結果、第一巻線12Bと第二巻線12Cとにそれぞれ、互いの磁束を打ち消し合う方向の磁束が発生することになる。これにより、図31に記載されるように、放電発生制御を実施することで生じる二次電圧V2は、従来の放電発生制御を実施することで生じる所謂オン電圧も低く抑えることができる。ひいては、防止ダイオード21に印加される電圧を低くすることができ、防止ダイオード21の低耐圧化、もしくは防止ダイオード21を削除した構成とすることができ、点火システム10のコスト削減を図ることができる。
なお、上記各実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
・上記各実施形態では、点火コイル11に対して点火信号IGtを伝達する信号線及びエネルギ投入信号IGwを伝達する信号線は、図示しないエンジンECUから、それぞれ独立して接続されていた。これに対して、図32に示すように、エネルギ投入信号IGwを伝達する共通の信号線51を、エンジンECU61(制御装置)に接続してもよい。そして、信号線51から分岐した信号線51a~51dを、各気筒の点火制御回路30に接続してもよい。すなわち、エネルギ投入信号IGwは、全ての気筒#1~#4において共通であってもよい。なお、点火信号IGtは、各気筒に応じた個別の信号になっている。
・図12~15,18、24,30に示すように、例えばエネルギ投入信号IGwのハイ期間は、点火信号IGtがハイである期間から放電維持制御が終了する時期まで継続する。このため、エンジン60が多気筒エンジン(例えばV型6気筒エンジン)である場合、図33に示すように、エネルギ投入信号IGwを共通にすると、エネルギ投入信号IGwが常にハイになるおそれがある。すなわち、点火プラグ20による点火が連続する気筒において、エネルギ投入信号IGwのハイ期間同士が重複するおそれがある。
そこで、図34に示すように、エネルギ投入信号IGw1を伝達する共通の信号線52と、エネルギ投入信号IGw2を伝達する共通の信号線53とを、エンジンECU61に接続してもよい。すなわち、エネルギ投入信号IGw1は、一部の気筒#1,#3,#5(一方のバンク)において共通であってもよい。エネルギ投入信号IGw2は、一部の気筒#2,#4,#6(他方のバンク)において共通であってもよい。なお、点火信号IGtは、各気筒に応じた個別の信号になっている。
そして、信号線52(第一共通信号線)から分岐した信号線52a~52cを、第1気筒#1,第3気筒#3,第5気筒#5の点火制御回路30にそれぞれ接続してもよい。第1気筒#1,第3気筒#3,第5気筒#5(第一気筒群)は、点火プラグ20による点火が連続しない気筒の集まりである。また、信号線53(第二共通信号線)から分岐した信号線53a~53cを、第2気筒#2,第4気筒#4,第6気筒#6の点火制御回路30にそれぞれ接続してもよい。第2気筒#2,第4気筒#4,第6気筒#6(第二気筒群)は、点火プラグ20による点火が連続しない気筒の集まりであり、且つ第一気筒群に含まれない気筒の集まりである。すなわち、第一気筒群に含まれる2つの気筒(例えば第1気筒#1,第3気筒#3)で相前後して点火が行われる間に、第二気筒群に含まれる1つの気筒(例えば第2気筒#2)で点火が行われる。
こうした構成によれば、図35に示すように、エネルギ投入信号IGw1,IGw2が常にハイになることを避けることができる。すなわち、第一気筒群の第1気筒#1,第3気筒#3,第5気筒#5の点火は連続しておらず、第一気筒群の第1気筒#1,第3気筒#3,第5気筒#5に伝達されるエネルギ投入信号IGw1のハイ期間同士が重複することを抑制することができる。また、第二気筒群の第2気筒#2,第4気筒#4,第6気筒#6の点火は連続しておらず、第二気筒群の第2気筒#2,第4気筒#4,第6気筒#6に伝達されるエネルギ投入信号IGw2のハイ期間同士が重複することを抑制することができる。したがって、エンジン60が多気筒エンジンであっても、エネルギ投入信号IGw1,IGw2に基づいて、二次電流I2の指令値及び放電維持制御の終了時期を設定することができる。
なお、エンジン60は、6気筒エンジンに限らず、8気筒エンジンや、10気筒エンジン等であってもよい。また、エンジン60の気筒を、3つ以上の気筒群に分けてもよい。そして、各気筒群の気筒が、点火プラグ20による点火が連続しない気筒の集まりであればよい。具体的には、各気筒群(例えば第一気筒群)に含まれる2つの気筒で相前後して点火が行われる間に、他の気筒群(例えば第二気筒群)に含まれる気筒で点火が行われればよい。
・図1,16,19,20,26のように点火信号IGtを伝達する信号線1本でエネルギ投入制御を行う場合は、図36に示すように、上記点火信号IGtを及び上記エネルギ投入信号IGwに含まれる情報を、点火信号IGtのみに重畳させることもできる。すなわち、放電開始制御を開始してから、点火信号IGtの1回目の立ち上がりで第一制御信号により第一巻線12Bへの通電を開始し、2回目の立ち上がりで第一巻線12Bへの通電を終了する。そして、点火信号IGtの2回目の立ち下がりで放電維持制御を終了する。
具体的には、図37に示すように、点火制御回路30は、信号情報切り分け回路30a、第一制御部30b、エネルギ重畳制御部30c、第二制御部30d、第四制御部30e等を備えている。信号情報切り分け回路30aは、点火信号IGtの立ち上がり時期及び立下がり時期を検出し、立ち上がり回数及び立下がり回数をカウントする。第一制御部30b及び第四制御部30eは、信号情報切り分け回路30aからの情報に基づいて、それぞれ第一制御信号及び第四制御信号を作成する。エネルギ重畳制御部30c及び第二制御部30dは、信号情報切り分け回路30aからの情報及び検出した二次電流I2に基づいて、第二制御信号を作成する。詳しくは、日本国特許第4736942号公報に記載された構成を採用することができる。なお、上記点火信号IGtに基づく第一巻線12Bへの通電期間の設定、並びに二次電流I2の指令値及び放電維持制御の終了時期の設定は、他の実施形態及びそれらの変更例にも適用することができる。
・上記各実施形態において、MOSFETを想定していたスイッチング素子(第三スイッチング素子14や第二スイッチング素子16)は、MOSFETに代わり、IGBTやパワートランジスタ、サイリスタ、トライアックなどを用いてもよい。同様に、IGBTを想定していたスイッチング素子(第一スイッチング素子15)は、MOSFETやパワートランジスタ、サイリスタ、トライアックなどを用いてもよい。
・上記各実施形態において、第一スイッチング素子15には、第五ダイオード15D(図1に点線で例示)が逆並列に接続されていてもよい。仮に第一実施形態において、電流還流経路L1がない状態で放電維持制御を実施した場合、第二巻線12Cへ流れる一次電流I1が第一スイッチング素子15に逆並列に接続される第五ダイオード15Dと、第一巻線12Bと、を介して第二巻線12Cから第二スイッチング素子16へと流れる電流が還流することになる。この場合、還流する電流は第一巻線12Bの影響を受けることでその電流の大きさが小さくなり、それに伴って二次コイル13に生じる二次電流I2が小さくなるなど、その制御性が低下するおそれがある。この点、電流還流経路L1が設けられることで、放電維持制御中に電流還流経路L1を介して第二巻線12Cへと電流が還流することになる。これにより、点火プラグ20に流れる二次電流I2が小さくなることを抑制することができるため、第一スイッチング素子15に第五ダイオード15Dが逆並列に接続される構成に対して本点火システム10は好適な構成といえる。
・上記各実施形態では、2~3kVの範囲内で放電維持電圧を設定していた。このことについて、例えば放電維持電圧をエンジン60の燃焼状態に合わせて、3kVよりも大きな値、又は2kVよりも小さい値に設定してもよい。
・第一実施形態及び第二実施形態では、カソード側が第二スイッチング素子16に接続されており、アノード側が第二巻線12Cにおける第二スイッチング素子16側の端部に接続されている第三ダイオード19が設けられていた。また、第三実施形態では、カソード側が接地側に接続されており、アノード側が第二巻線12Cにおける中間タップ12A側とは反対側の端部に接続されている第三ダイオード19が設けられていた。このことについて、第三ダイオード19を設けない構成として、第二スイッチング素子16や第三スイッチング素子14に逆流防止機能を備えた素子(ダイオード)が備わっていてもよい。
・上記各実施形態では、点火制御回路30は、エンジンECUから受信した点火信号IGtに基づいて各制御信号を生成して制御していたが、これに限定されるものではなく、各制御信号の内の任意の制御信号を個別にエンジンECUから受信して制御するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、ケース50内に電源部17や点火プラグ20を除く点火システム10を収容していた。このことについて、ケース50内に収容する点火システム10の構成を減らしてもよい。例えば、点火制御回路30を削除し、点火制御回路30が実施する制御を、ケース50の外部に存在するエンジンECUに実施させる構成としてもよい。この場合、エンジンECUが点火制御回路に該当することとなる。
・上記各実施形態では、電流還流経路にダイオードを設ける例(第一実施形態における電流還流経路L1の第一ダイオード18などが該当)で説明したが、これに限定されるものではなく、例えば半導体スイッチ素子を設けて、還流動作のときに閉じるような開閉制御を実施してもよい。