JP6398601B2 - 内燃機関用点火装置 - Google Patents
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Description
2つの点火コイルを交互に作動させて点火プラグに生じた火花放電の継続動作を行う点火装置として、特許文献1に開示される技術が知られている。
特許文献1に開示される点火装置を図4に基づき説明する。なお、図4に用いる符合は、後述する「実施例」と同一機能物に同一符合を付したものである。
・対を成す第1、第2点火コイル4_1、4_2と、
・車載バッテリ2から第1、第2一次コイル4a_1、4a_2へ印加する電圧を昇圧する昇圧回路3と、
・第1、第2一次コイル4a_1、4a_2の通電状態を切り替える第1、第2点火用スイッチ5_1、5_2と、
を備える。
そして、第1、第2点火用スイッチ5_1、5_2は、ECU10(エンジン・コントロール・ユニット)によってON−OFF制御される。
作動は、先ず、主点火の発生動作(以下、主点火動作)を行う。具体的には、第1点火用スイッチ5_1をONして第1一次コイル4b_1のプラス側からマイナス側へ向けて1次電流を流し、第1点火用スイッチ5_1をOFFして点火プラグ1に主点火(最初の火花放電)を生じさせる。
続いて、主点火による火花放電中に、第1、第2点火用スイッチ5_1、5_2を交互に切り替えることで第1、第2点火コイル4_1、4_2を交互に作動させる。この動作により、主点火と同一方向の放電電流を点火プラグ1に継続して流して火花放電の継続動作を行う。
点火プラグ1で主点火を生じさせるには、第1二次コイル4b_1に40kV程の高電圧を生じさせる必要がある。
このため、主点火を行う際、第1一次コイル4a_1には、第1二次コイル4b_1に40kV程の高電圧を発生させるための入力エネルギー1/2LI2 が必要になる。
即ち、放電継続動作中は、極めて短い時間域で第1、第2一次コイル4a_1、4a_2にエネルギーを蓄積する必要がある。
すると、主点火動作中は、第1一次コイル4a_1に大電流が流れることになり、点火装置の電流負担が大きくなってしまう。
具体的には、第1点火用スイッチ5_1に、高コストで体格の大きい20A〜30A等の大電流用を用いる必要があり、コストアップを招いてしまう。
また、第1一次コイル4a_1の通電経路も、太い大電流用を用いる必要があり、コストアップの要因になってしまう。
一方、放電継続動作中は、第1一次コイルのインダクタンスを小さくする手段として、第1一次コイルを成す巻線の一部のみに電流を流す。これにより、放電継続動作中は、極めて短い時間域で第1、第2一次コイルにエネルギーを蓄積させることができる。
このように、本発明の内燃機関用点火装置は、点火装置の電流負担を軽減しつつ、DCO点火方式によって火花放電の継続作動を実施できる。
図1、図2を参照して実施例1を説明する。
この実施例の点火装置は、車両走行用の火花点火エンジンに用いられるものであり、燃焼室内の混合気に点火を行うものである。
なお、エンジンの具体的な一例を開示すると(もちろん、限定するものではない)、この実施例のエンジンは、ガソリンを燃料とする希薄燃焼(リーンバーン燃焼)が可能な直噴式エンジンであり、排気ガスの一部をEGRガスとしてエンジン吸気側へ戻すEGR装置を搭載し、さらに気筒内に混合気の旋回流(タンブル流やスワール流等)を生じさせる旋回流コントロール手段を備える。
即ち、この実施例のエンジンは、混合気の着火性が低下する運転領域が存在するものである。
・混合気の着火性が低下する運転領域の有無に関わらず、点火時期に点火プラグ1において主点火を生じさせ主点火動作と、
・混合気の着火性が低下する運転領域の時に、点火プラグ1に生じた火花放電の継続動作を行う放電継続動作とを実施可能なものである。
・火花放電を行う点火プラグ1の他に、
・車載バッテリ2から供給されるバッテリ電圧を昇圧する昇圧回路3(図中、DC−DC昇圧)と、
・第1一次コイル4a_1及び第1二次コイル4b_1を有する第1点火コイル4_1と、
・第2一次コイル4a_2及び第2二次コイル4b_2を有する第2点火コイル4_2と、
・第1一次コイル4a_1の通電状態を切り替える第1点火用スイッチ5_1と、
・第2一次コイル4a_2の通電状態を切り替える第2点火用スイッチ5_2と、
を備えて構成される。
第1二次コイル4b_1の一端(図1の下側)と、第2二次コイル4b_2の一端(図1の下側)は、結合部Xを介して電気的に結線されており、この結合部Xが点火プラグ1の中心電極側に電気的に接続される。この実施例の点火プラグ1は、外側電極から中心電極に向かって電流が流れて火花放電を発生させる「−放電プラグ」として機能する。
一方、第1二次コイル4b_1の他端(図1の上側)と、第2二次コイル4b_2の他端(図1の上側)は、アース接地される。
同様に、第2点火用スイッチ5_2は、第2一次コイル4a_2の通電状態を切り替える例えば、IGBT、パワートランジスタ、MOS型FET、サイリスタ等である。
昇圧回路3の具体的な構成は限定するものでなく、車載バッテリ2が出力するバッテリ電圧(例えば、12V)を、バッテリ電圧より高い電圧(例えば、40〜50Vなど)に昇圧するDC/DCコンバータである。
・バッテリ電圧が印加されるチョークコイルと、
・このチョークコイルの通電状態を断続する昇圧用スイッチ(例えば、MOS型FET、パワートランジスタ等)と、
・この昇圧用スイッチを繰り返しON−OFFさせる昇圧用発振回路と、
・チョークコイルの断続によって昇圧させた電気エネルギを平滑化して蓄える蓄電手段(コンデンサ等)と、
・蓄電手段に蓄えた電気エネルギがチョークコイル側へ逆流するのを防ぐダイオードと、を備えて構成される。
なお、昇圧回路3は、ECU10から指示信号を受けると一定の出力電圧を発生するものであっても良いし、車両の運転状態に応じた指示信号を受けると出力電圧が可変するものであっても良い。
また、上述した放電継続動作は、主点火中に第1、第2点火用スイッチ5_1、5_2を交互にON−OFFさせることで、点火プラグ1に生じた火花放電の継続動作を行うものである。
(i)主点火動作を行う際に、第1一次コイル4a_1を成す巻線の全てに電流を流し、
(ii)火花放電の継続動作を行う際に、第1一次コイル4a_1を成す巻線の一部のみに電流を流す切替手段Aを備える。
第1一次コイル4a_1は、一次コイルを成す巻線の一端(図1上側)に接続される第1プラスタップと、巻端の他端(図1下側)に接続される第1マイナスタップと、巻線の途中に接続される第1中間タップを備える。
同様に、第2一次コイル4a_2は、1次コイルを成す巻線の一端(図1上側)に接続される第2プラスタップと、巻端の他端(図1下側)に接続される第2マイナスタップと、巻線の途中に接続される第2中間タップを備える。
なお、タップは、電気的な接続ポイントである。
・第1プラスタップから第1中間タップまでの巻数を第1プラス側巻線La_1、
・第1中間タップから第1マイナスタップまでの巻数を第1マイナス側巻線Lb_1、
・第2プラスタップから第2中間タップまでの巻数を第2プラス側巻線La_2、
・第2中間タップから第2マイナスタップまでの巻数を第2マイナス側巻線Lb_2、
と称する。
なお、第1、第2マイナス側巻線Lb_1、Lb_2の巻数は、限定するものではなく、放電継続作動時に第1、第2一次コイル4a_1、4a_2に求められるインダクタンス等に基づいて設定されるものである。
・昇圧回路3で昇圧した電力を第1プラスタップへ供給する第1プラス経路α_1と、
・この第1プラス経路α_1を断続する第1プラス経路スイッチ6_1(MOS型トランジスタ、パワートランジスタ等)と、
・昇圧回路3で昇圧した電力を第1中間タップへ供給する第1中間経路β_1と、
・この第1中間経路β_1を断続する第1中間経路スイッチ7_1(MOS型トランジスタ、パワートランジスタ等)と、
・昇圧回路3で昇圧した電力を第2プラスタップへ供給する第2プラス経路α_2と、
・この第2プラス経路α_2を断続する第2プラス経路スイッチ6_2(MOS型トランジスタ、パワートランジスタ等)と、
・昇圧回路3で昇圧した電力を第2中間タップへ供給する第2中間経路β_2と、
・この第2中間経路β_2を断続する第2中間経路スイッチ7_2(MOS型トランジスタ、パワートランジスタ等)と、
・第1、第2プラス経路スイッチ6_1、6_2、第1、第2中間経路スイッチ7_1、7_2をON−OFF制御する切替制御回路8と、
を具備する。
なお、第1点火信号IGT_1は主点火動作を行うための指示信号であり、第2点火信号IGT_2は放電継続動作時に第2点火コイル4_2を起動させるための指示信号であり、放電継続信号IGWは放電継続時間の設定信号である。
同様に、切替制御回路8は、第2点火信号IGT_2の出力(ハイ信号)を受けると第2点火用スイッチ5_2をONし、第2点火信号IGT_2が停止(ロー信号)すると第2点火用スイッチ5_2をOFFする。この動作により、第2二次コイル4b_2に高電圧が生じる。
切替制御回路8は、放電継続信号IGWを受けると、放電継続動作を行うものであり、第1、第2点火用スイッチ5_1、5_2を交互にON−OFFさせることで、点火プラグ1に生じた火花放電の継続動作を行う。
これにより、主点火動作中は、昇圧回路3から第1、第2一次コイル4a_1、4a_2を成す巻線の全て(即ち、「第1プラス側巻線La_1と第1マイナス側巻線Lb_1」及び「第2プラス側巻線La_2と第2マイナス側巻線Lb_2」)に電流を流すことができるため、第1、第2一次コイル4a_1、4a_2のインダクタンスを大きくできる。
これにより、放電継続動作中は、昇圧回路3から第1、第2一次コイル4a_1、4a_2の一部のみ(即ち、第1、第2マイナス側巻線Lb_1、Lb_2のみ)に電流を流すことができるため、第1、第2一次コイル4a_1、4a_2のインダクタンスを小さくできる。
(a)点火プラグ1が着火タイミングになる直前に、ECU10から第1点火信号IGT_1が出力(ハイ信号)され、第1点火信号IGT_1の出力期間に亘って第1点火用スイッチ5_1がONされる。
この時(放電継続信号IGWの停止中)、第1プラス経路スイッチ6_1がONされ、第1中間経路スイッチ7_1がOFFされるため、昇圧回路3から第1一次コイル4a_1を成す巻線の全てに電流が流れる。具体的には、第1プラス側巻線La_1と第1マイナス側巻線Lb_1を直列に電流が流れるため、第1一次コイル4a_1のインダクタンスを大きくすることができ、第1一次コイル4a_1の電圧上昇勾配の傾きを小さくすることができる。
この時、第2プラス経路スイッチ6_2がONされ、第2中間経路スイッチ7_2がOFFされるため、昇圧回路3から第2一次コイル4a_2を成す巻線の全てに電流が流れる。具体的には、第2プラス側巻線La_2と第2マイナス側巻線Lb_2を直列に電流が流れるため、第2一次コイル4a_2のインダクタンスを大きくすることができ、第2一次コイル4a_2の電圧上昇勾配の傾きを小さくすることができる。
そして、二次電流i2が所定の下限電流値(火花放電を維持するための電流値)に低下する前に、第2点火用スイッチ5_2をOFFする。すると、第2一次コイル4a_2の通電状態が遮断され、第2一次電流i1_2が停止すると同時に、二次電流i2が増大し、点火プラグ1の火花放電が継続される。
これにより、第1一次コイル4a_1のうち、第1マイナス側巻線Lb_1のみに電流が流れるため、第1一次コイル4a_1のインダクタンスを小さくすることができ、第1一次コイル4a_1の電圧上昇勾配の傾きを大きくできる。その結果、例えば0.1msなど極めて短い時間域で第1一次コイル4a_1に放電継続に必要なエネルギーを蓄積することができる。
そして、二次電流i2が所定の下限電流値に低下する前に、第1点火用スイッチ5_1をOFFする。すると、第1一次コイル4a_1の通電状態が遮断され、第1一次電流i1_1が停止すると同時に、二次電流i2が増大し、点火プラグ1の火花放電が継続される。
これにより、第2一次コイル4a_2のうち、第2マイナス側巻線Lb_2のみに電流が流れるため、第2一次コイル4a_2のインダクタンスを小さくすることができ、第2一次コイル4a_2の電圧上昇勾配の傾きを大きくできる。その結果、例えば0.1msなど極めて短い時間域で第2一次コイル4a_2に放電継続に必要なエネルギーを蓄積することができる。
主点火動作中は、第1一次コイル4a_1を成す巻線の全て(第1プラス側巻線La_1と第1マイナス側巻線Lb_1)に電流を流す。これにより、主点火動作中における第1一次コイル4a_1のインダクタンスを大きくできる。
具体的に、最初の火花放電である主点火動作では、第1一次コイル4a_1の通電時間を長く設定しても、主点火に必要となる入力エネルギー1/2LI2 を得ることができる。このため、主点火動作中は、入力エネルギー1/2LI2 のうち、インダクタンス(L分)を大きくしたことで、電流(I分)を小さくすることができる。
このように、主点火動作中に第1一次コイル4a_1に大電流が流れる不具合を回避することができ、点火装置の電流負担を軽減できる。
また、第1一次コイル4a_1の通電経路も太い大電流用を用いる必要がなく、一般的に点火装置に用いられる配線を用いることができる。
具体的に、火花放電の継続を行う放電継続動作中は、極めて短い時間域で放電継続に必要な入力エネルギー1/2LI2 を第1一次コイル4a_1と第2一次コイル4a_2に蓄えさせる必要がある。このため、放電継続動作中は、入力エネルギー1/2LI2 のうち、インダクタンス(L分)を小さくしたことで、限られた短い時間域で電流(I分)の到達値を大きくすることができ、短い時間域で放電継続に求められる入力エネルギー1/2LI2 を得ることができる。即ち、放電継続動作中は、極めて短い時間域で第1、第2一次コイル4a_1、4a_2にエネルギーの蓄積を行うことができる。
図3を参照して実施例2を説明する。なお、実施例2において上記実施例1と同一符合は同一機能物を示すものである。
上記実施例1では、第2一次コイル4a_2に第2中間タップを設け、第2一次コイル4a_2をインダクタンスの大きい状態と、インダクタンスが小さい状態とを切替可能に設ける例を示した。
これに対し、この実施例2の第2一次コイル4a_2は、インダクタンスの小さい第2マイナス側巻線Lb_2のみで設けられるものである。
このように設けても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
同様に、着火性が低下するエンジン低温時に火花放電の継続動作を実施して、エンジン低温時における着火性の向上を図っても良い。
2・・車載バッテリ2
3・・昇圧回路3
4_1・・第1点火コイル 4_2・・第2点火コイル
4a_1・・第1一次コイル 4b_1・・第1二次コイル
4a_2・・第2一次コイル 4b_2・・第2二次コイル
5_1・・第1点火用スイッチ 5_2・・第2点火用スイッチ
Lb_1・・第1マイナス側巻線(第1一次コイルを成す巻線の一部)
A・・切替手段
Claims (3)
- 火花放電を行う点火プラグ(1)と、
車載バッテリ(2)の電圧を昇圧する昇圧回路(3)と、
この昇圧回路(3)から電力供給を受ける第1一次コイル(4a_1)を備えるとともに、前記点火プラグ(1)に二次電流を付与する第1二次コイル(4b_1)を備える第1点火コイル(4_1)と、
前記昇圧回路(3)から電力供給を受ける第2一次コイル(4a_2)を備えるとともに、前記点火プラグ(1)に二次電流を付与する第2二次コイル(4b_2)を備える第2点火コイル(4_2)と、
前記第1一次コイル(4a_1)の通電状態を切り替える第1点火用スイッチ(5_1)と、
前記第2一次コイル(4a_2)の通電状態を切り替える第2点火用スイッチ(5_2)とを具備し、
前記第1点火用スイッチ(5_1)の切替制御により前記点火プラグ(1)に主点火を生じさせ、この主点火中に前記第1、第2点火用スイッチ(5_1、5_2)を交互に断続することで、前記点火プラグ(1)に火花放電の継続動作を行う内燃機関用点火装置において、
この内燃機関用点火装置は、
主点火の発生動作を行う際に前記第1一次コイル(4a_1)を成す巻線の全てに電流を流し、
火花放電の継続動作を行う際に前記第1一次コイル(4a_1)を成す巻線の一部のみに電流を流す切替手段(A)を備え、
前記第1一次コイル(4a_1)は、巻線の一端に接続される第1プラスタップと、巻端の他端に接続される第1マイナスタップと、巻線の途中に接続される第1中間タップを備え、
前記切替手段(A)は、火花放電の継続動作を行う際に、前記昇圧回路(3)で昇圧した電力を前記第1中間タップへ供給することを特徴とする内燃機関用点火装置。 - 請求項1に記載の内燃機関用点火装置において、
前記切替手段(A)は、
前記昇圧回路(3)で昇圧した電力を前記第1中間タップへ供給する第1中間経路(β_1)と、
この第1中間経路(β_1)を断続する第1中間経路スイッチ(7_1)と、
主点火の発生動作を行う際に前記第1中間経路スイッチ(7_1)をオフし、火花放電の継続動作を行う際に前記第1中間経路スイッチ(7_1)をオンする切替制御回路8と、
を具備することを特徴とする内燃機関用点火装置。 - 請求項2に記載の内燃機関用点火装置において、
前記切替手段(A)は、前記第1中間経路(β_1)、前記第1中間経路スイッチ(7_1)の他に、
前記昇圧回路(3)で昇圧した電力を前記第1プラスタップへ供給する第1プラス経路(α_1)と、
前記第1プラス経路(α_1)を断続する第1プラス経路スイッチ(6_1)とを備え、
前記切替制御回路8は、
主点火の発生動作を行う際に、前記第1プラス経路スイッチ(6_1)をオンするとともに前記第1中間経路スイッチ(7_1)をオフし、
火花放電の継続動作を行う際に、前記第1プラス経路スイッチ(6_1)をオフするとともに前記第1中間経路スイッチ(7_1)をオンすることを特徴とする内燃機関用点火装置。
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