JP6551477B2 - 点火装置 - Google Patents
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Description
しかし、特許文献1の技術によれば、第1、第2スイッチング手段のオン期間が重なると、放電電流が急激に減少して火花放電が維持できなくなり、逆に、第1、第2スイッチング手段のオフ期間が重なると、放電タイミングが重なり、放電電流が急激に増加して点火プラグにおいて電極に大きなダメージを与えてしまう。このため、第1、第2スイッチング手段のオンオフ制御を、個々の部品ばらつきや内燃機関の運転状態の違いによる火花タイミングの変化等に追従するために、高精度に行う必要があるので、特許文献1の技術は、制御ロジックの構築が煩雑になり、実運転における演算負荷が大きいものと考えられる。
まず、第1スイッチング手段(8)は、車載バッテリ(17)から、複数の1次コイル(5A、5B)の内の特定の1次コイル(5A)への通電をオンした後、オフすることで、点火プラグ(2)の電極間に電圧を印加して火花放電を開始させる。また、第2スイッチング手段(10)は、車載バッテリ(17)から、特定の1次コイル(5A)以外の他の1次コイル(5B)に電気エネルギーを投入することで、点火プラグ(2)の電極間に、第1スイッチング手段(8)のオフにより発生した火花放電と同一方向の電流を重畳する。
これにより、まず、第1スイッチング手段(8)のオフによるフルトラ点火に基づく動作により点火プラグ(2)の電極間に火花放電を開始させることができる。その後、この火花放電が消える前に、第2スイッチング手段(10)のオンオフを繰り返して車載バッテリの電気エネルギーを他の1次コイル(5B)に逐次投入することで、火花放電を同じ極性のまま任意の期間にわたり継続させることができる。
以下の説明では、第1スイッチング手段(8)のオンオフにより生じる火花放電を主点火と呼び、第2スイッチング手段(10)のオンオフにより継続させる火花放電、つまり、主点火に続く火花放電を継続火花放電と呼ぶ。
例えば、特定の1次コイル(5A)は、最初に主点火を発生させるために大きな電圧をプラグの電極間に印加する必要性から、巻き数比を大きくするのが好ましく、他の1次コイル(5B)は、放電電流を維持する必要性から、インダクタンスを大きくするのが好ましい。したがって、これら要請に応じて1次コイル(5A、5B)それぞれの仕様を設定することで、着火性確保、放電電流の安定維持およびプラグ電極の消耗抑制の効果を高めることができる。
本願の第2発明によれば、ダイオード(15)のカソードは、他の1次コイル(5B)の2つの端子の内、第2スイッチング手段(10)のオンにより他の1次コイル(5B)に流れる電流の方向で考えたときの高電位側の端子に接続されている。
すなわち、一方側の磁石(26A)は、特定の1次コイル(5A)への通電により発生する磁束を通す磁路に組み入れられ、磁路をなすコア(27A)を、逆バイアスする。
これにより、コア(27A)で磁気飽和が発生しにくくなり、1次コイル(5A)に蓄えることができるエネルギーを増やすことができるので、主点火を強化することができる。
すなわち、他方側の磁石(26B)は、一方側の磁石(26A)とは別体として設けられるとともに、他の1次コイル(5B)への通電により発生する磁束を通す磁路に組み入れられ、磁路をなすコア(27B)を逆バイアスする。
これにより、コア(27B)で磁気飽和が発生しにくくなり、1次コイル(5B)に蓄えることができるエネルギーを増やすことができるので、継続火花放電を強化することができる。
図1を参照して実施例1の点火装置1を説明する。
点火装置1は、車両走行用の火花点火エンジンに搭載されるものであり、所定の点火時期に燃焼室内の混合気に点火するものである。なお、エンジンの一例は、ガソリンを燃料とする希薄燃焼(リーンバーン)が可能な直噴式エンジンであり、気筒内にタンブル流やスワール流等の混合気の旋回流を生じさせる旋回流コントロール手段を備える。そして、リーンバーンのように気筒内のガス流速が高く火花放電の吹き消え発生の可能性がある運転状態において、点火装置1は、主点火に加えて継続火花放電を行うように制御される。
さらに、点火装置1は、エンジン制御の中枢を成す電子制御ユニット(以下、ECU4と呼ぶ。)から与えられる点火信号IGtや放電継続信号IGw等の信号に基づいて点火コイル3A、3Bそれぞれの1次コイル5A、5Bを通電制御するものである。そして、点火装置1は、1次コイル5A、5Bを通電制御することで点火コイル2のそれぞれの2次コイル6A、6Bに生じる電気エネルギーを操作して、点火プラグ2の火花放電を制御する。
まず、点火プラグ2は、周知構造を有するものであり、2次コイル6A、6Bそれぞれの一方の端子に接続される中心電極と、エンジンのシリンダヘッド等を介してアース接地される接地電極とを備える。そして、2次コイル6A、6Bに生じる電気エネルギーにより中心電極と接地電極との間に電圧が印加されて火花放電が発生する。
また、ダイオード22は、コンデンサ18に蓄えた電気エネルギーがチョークコイル19側へ逆流するのを防ぐものである。
より具体的に、第2スイッチング手段10は、ドライバ回路24から与えられる制御信号によりオンするものであり、次のエネルギー投入ラインγに設けられている。
なお、第2スイッチング手段10は、パワートランジスタ、MOS型トランジスタ、サイリスタ等である。
さらに、第4ダイオード15は、接地ラインβにおいてエネルギー投入ラインγとの接続点よりもアース側に設けられ、第2スイッチング手段10をオンからオフに切り替えたときに還流ダイオードとして動作する。つまり、第4ダイオード15は、1次コイル5Bへの電気エネルギー投入箇所にカソードが接続されるとともに、アノードがアース側に接続されている。このため、第2スイッチング手段10のオフ時に1次コイル5Bにおいて発生する起電力を、1次コイル5B→車載バッテリ17→アース→第4ダイオード15→1次コイル5Bの経路で還流する。
なお、図2において、「IGt」は点火信号IGtの入力状態をハイ/ローで表すものであり、「IGw」は放電継続信号IGwのハイ/ローの入力状態をハイ/ローで表すものである。また、「投入スイッチ」は、第2スイッチング手段10のオンオフを表し、「I11」、「I12」はそれぞれ1次コイル5A、5Bに流れる1次電流の値、「I2」は放電電流の値を表す。
点火プラグ2において主点火が開始された後、放電電流は略三角波形状で減衰する。そして、放電電流が所定の下限閾値(火花放電を維持するために必要な電流値の下限)に到達する前に、放電継続信号IGwがローからハイへ切り替わる(時間t03参照。)。
そして、1次電流が1次コイル5Bに追加される毎に、2次コイル6Bに2次電流が順次追加され、放電電流は主点火時と同じ方向に略一定の値に維持される。この結果、主点火として生じた火花放電が継続火花放電として継続する。
実施例1の点火装置1は、1つの点火プラグ2に対して2つの点火コイル3A、3Bから電気エネルギーを与えるものであり、次の第1、第2スイッチング手段8、10を備える。まず、第1スイッチング手段8は、車載バッテリ17から1次コイル5Aへの通電をオンオフすることで点火プラグ2の電極間に電圧を印加する。また、第2スイッチング手段10は、昇圧回路9に蓄えた電気エネルギーを1次コイル5Bに投入することで、点火プラグ2の電極間に、第1スイッチング手段8のオンオフにより発生するのと同一方向の電圧を印加する。
また、点火信号IGtをハイからローに切り替える時間t02と、放電継続信号IGwをローからハイに切り替える時間t03とを一致させることで、より早期に、着火に必要なレベルまで2次電流を高めることができるので、着火性を更に高めることができる。
さらに、エンジンの運転状態に応じて、主点火のみを発生させるのか、または、主点火に継続火花放電を継続させるのかを選択することができる。このため、エンジンの運転状態に応じて、最適な点火の態様を選択することができる。
例えば、点火コイル3Aは、最初に主点火を発生させるために大きな電圧をプラグの電極間に印加する必要性から、巻き数比を大きくするのが好ましく、点火コイル3Bは、放電電流を維持する必要性から、インダクタンスを大きくするのが好ましい。
したがって、これら要請に応じて点火コイル3A、3Bの仕様を設定することで、着火性確保、放電電流の安定維持および点火プラグ2の電極の消耗抑制の効果を高めることができる。
これにより、第2スイッチング手段10をオンからオフに切り替えたときに1次コイル5Bに発生する起電力を緩和することができる。つまり、第2スイッチング手段10のオフ時に1次コイル5Bにおいて発生する起電力を、1次コイル5B→車載バッテリ17→アース→還流ダイオード15→1次コイル5Bの経路で還流することができる。このため、2次電流の瞬断を回避して継続火花放電を安定的に継続させることができる。
実施例2の点火装置1は、以下に説明する逆バイアス極性の磁石26A、26Bを備える(図3および図4参照。)。まず、磁石26Aは、1次コイル5Aへの通電により発生する磁束を通すコア27Aに組み入れられ、コア27Aを逆バイアスする。また、磁石26Bは、磁石26Aとは別体として設けられるとともに、1次コイル5Bへの通電により発生する磁束を通すコア27Bに組み入れられ、コア27Bを逆バイアスする。
実施例3の点火装置1によれば、図6に示すように、1次コイル5Bの2つの端子の内、第4ダイオード15のカソードが接続される端子以外の端子はアースに接続されている。
これにより、第2スイッチング手段10のオンオフに伴う起電力の還流の経路に関し、1次コイル5Bから向う先の電位を実施例1に比べて下げることができる。このため、昇圧回路9による昇圧幅を下げることができるので、昇圧回路9に用いる各種素子(コンデンサ18、昇圧用スイッチング手段20およびダイオード22等)、ならびに、エネルギー投入ラインγに用いる第2スイッチング手段10に、耐圧が低いものを採用することができる。この結果、点火装置1のコスト低減および体格低減、ならびに、昇圧回路9における電気エネルギーの蓄積効率の向上を達成することができる。
上記の実施例では、磁石26A、26Bをコア27A、27Bのそれぞれに組み入れて主点火、継続火花放電の両方を強化していたが、例えば、コア27Bが磁気飽和しないように1次コイル5Bへの通電量を制限することで、磁石26Bの組み入れを省略してコストダウンしてもよい。
Claims (6)
- 1つの点火プラグ(2)に対して複数の1次コイル(5A、5B)から電気エネルギーを与える内燃機関用の点火装置(1)において、
車載バッテリ(17)から、前記複数の1次コイル(5A、5B)の内の特定の1次コイル(5A)への通電をオンした後、オフすることで、前記点火プラグ(2)の電極間に電圧を印加して火花放電を開始させる第1スイッチング手段(8)と、
前記車載バッテリ(17)から、前記特定の1次コイル(5A)以外の他の1次コイル(5B)に電気エネルギーを投入することで、前記点火プラグ(2)の電極間に、前記第1スイッチング手段(8)のオフにより発生した火花放電と同一方向の電流を重畳する第2スイッチング手段(10)とを備え、
前記第2スイッチング手段(10)のオンオフを繰り返すことにより、前記他の1次コイル(5B)に電気エネルギーを、逐次、投入することで、前記点火プラグ(2)の電極間に、前記第1スイッチング手段(8)のオフにより発生した火花放電と同一方向の火花放電を継続させ、
前記他の1次コイル(5B)の2つの端子の内、一方の端子にカソードが接続されるとともにアノードがアース側に接続され、前記第2スイッチング手段(10)がオンからオフに切り替わったときに前記他の1次コイル(5B)に発生する起電力を、前記他の1次コイル(5B)において前記第2スイッチング手段(10)がオンのときと同じ方向に還流させるダイオード(15)を有することを特徴とする点火装置(1)。 - 請求項1に記載の点火装置(1)において、
前記ダイオード(15)のカソードは、前記他の1次コイル(5B)の2つの端子の内、前記第2スイッチング手段(10)のオンにより前記他の1次コイル(5B)に流れる電流の方向で考えたときの高電位側の端子に接続されていることを特徴とする点火装置(1)。 - 請求項1または請求項2に記載の点火装置(1)において、
前記他の1次コイル(5B)の2つの端子の内、前記ダイオード(15)のカソードが接続される端子以外の端子はアースに接続されていることを特徴とする点火装置(1)。 - 請求項1ないし請求項3の内のいずれか1つに記載の点火装置(1)において、
前記特定の1次コイル(5A)への通電により発生する磁束を通す磁路(27A)に組み入れられる逆バイアス極性の一方側の磁石(26A)を備えることを特徴とする点火装置(1)。 - 請求項4に記載の点火装置(1)において、
前記一方側の磁石(26A)とは別体として設けられるとともに、前記他の1次コイル(5B)への通電により発生する磁束を通す磁路(27B)に組み入れられる逆バイアス極性の他方側の磁石(26B)を備えることを特徴とする点火装置(1)。 - 請求項1ないし請求項5の内のいずれか1つに記載の点火装置(1)において、
前記他の1次コイル(5B)の巻き数比は、前記特定の1次コイル(5A)の巻き数比よりも小さいことを特徴とする点火装置(1)。
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