JP7068768B2 - 劣化診断装置、劣化診断方法および劣化診断システム - Google Patents

劣化診断装置、劣化診断方法および劣化診断システム Download PDF

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Description

本発明は、劣化診断装置、劣化診断方法および劣化診断システムに関する。
特許文献1には、構造物の劣化を診断するための装置の一例が記載されている。特許文献1に記載されている劣化診断装置は、新築時に測定した建物の固有振動数を記憶し、所定期間後あるいは地震等の災害発生後に建物の固有振動数を測定して、記憶した固有振動数と、測定した固有振動数との差に基づいて壁の劣化や損傷の診断を行う。
特開2011-084877号公報
特許文献1に記載されている劣化診断装置では、建物の固有振動数の変化に基づいて構造物の劣化が診断される。しかしながら、本願発明者による検討において、固有振動数の変化のみに基づく劣化診断には次のような場合があることが判明した。すなわち、構造物において比較的大きな劣化が発生したときには固有振動数が比較的大きく変化する場合がある一方、劣化が比較的大きくないときには固有振動数が大きく変化しない場合がある。このような場合、固有振動数の変化のみに基づく劣化診断では、比較的大きくない劣化を診断することができないことがあるという課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、構造物の劣化を劣化の程度の広い範囲で診断することができる劣化診断装置、劣化診断方法および劣化診断システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、複数の子器によって構造物の振動波形を計測し、かつ、前記複数の子器によってその計測した振動波形に対して所定の波形解析処理を行った波形解析結果を入力する入力部と、前記構造物の固有振動数の基準値と前記構造物の振動増幅率の基準値とを記憶する記憶部と、前記波形解析結果に基づく前記構造物の固有振動数の前記固有振動数の基準値に対する変化率を算出するとともに、前記波形解析結果に基づく前記構造物の振動増幅率の前記振動増幅率の基準値に対する変化率とを算出する変化率算出部と、前記変化率算出部が算出した前記固有振動数の変化率と前記振動増幅率の変化率とに基づき前記構造物の劣化の度合いを判定する判定部とを備える劣化診断装置である。
また、本発明の一態様は、上記劣化診断装置であって、前記入力部が、前記複数の子器が前記振動波形に基づいて算出した前記構造物の減衰性に応じた値を前記波形解析結果としてさらに入力し、前記記憶部が、前記構造物の減衰性に応じた値の基準値をさらに記憶し、前記変化率算出部が、前記波形解析結果に基づく前記構造物の減衰性に応じた値と前記減衰性に応じた値の基準値に対する変化率をさらに算出し、前記判定部が、前記変化率算出部が算出した前記固有振動数の変化率と前記振動増幅率の変化率と前記減衰性に応じた値の変化率とに基づき前記構造物の劣化の度合いを判定する。
また、本発明の一態様は、上記劣化診断装置であって、前記複数の子器が、所定のレベル以上の振動波形を検出した場合に、前記構造物の振動波形を所定時間計測し、かつ、その計測した振動波形に対して前記所定の波形解析処理を行った前記波形解析結果を前記所定の記憶装置に記憶する。
また、本発明の一態様は、上記劣化診断装置であって、前記複数の子器が、前記構造物の固定部に設置された1台と、前記構造物の揺れ部に設置された1台との合計2台である。
また、本発明の一態様は、複数の子器によって構造物の振動波形を計測し、かつ、前記複数の子器によってその計測した振動波形に対して所定の波形解析処理を行った波形解析結果を入力する入力部と、前記構造物の固有振動数の基準値と前記構造物の振動増幅率の基準値とを記憶する記憶部と、前記波形解析結果に基づく前記構造物の固有振動数の前記固有振動数の基準値に対する変化率を算出するとともに、前記波形解析結果に基づく前記構造物の振動増幅率の前記振動増幅率の基準値に対する変化率とを算出する変化率算出部とを用い、判定部によって、前記変化率算出部が算出した前記固有振動数の変化率と前記振動増幅率の変化率とに基づき前記構造物の劣化の度合いを判定する劣化診断方法である。
また、本発明の一態様は、構造物の振動波形を計測し、かつ、計測した振動波形に対して所定の波形解析処理を行った結果を波形解析結果として所定の記憶装置に記憶する複数の子器と、前記複数の子器が記憶した前記波形解析結果を入力する入力部と、前記構造物の固有振動数の基準値と前記構造物の振動増幅率の基準値とを記憶する記憶部と、前記波形解析結果に基づく前記構造物の固有振動数の前記固有振動数の基準値に対する変化率を算出するとともに、前記波形解析結果に基づく前記構造物の振動増幅率の前記振動増幅率の基準値に対する変化率とを算出する変化率算出部と、前記変化率算出部が算出した前記固有振動数の変化率と前記振動増幅率の変化率とに基づき前記構造物の劣化の度合いを判定する判定部とを備える劣化診断システムである。
本発明によれば、構造物の劣化を劣化の程度の広い範囲で診断することができる。
本発明の一実施形態に係る劣化診断システムの構成例を示すブロック図である。 図1に示す子器1の建築物への配置例を示す模式図である。 図1に示す子器1の建築物への他の配置例を示す模式図である。 図1に示す子器1の構成例を示すブロック図である。 図1に示すPC2の構成例を示すブロック図である。 建築物の劣化過程における固有振動数の変化の一例を示す図である。 建築物の劣化過程における固有振動数の変化の一例を示す図である。 建築物の劣化過程における振動モードの変化の一例を示す図である。 建築物の劣化過程における振動モードの変化の一例を示す図である。 図1に示す子器1の動作例を示すフローチャートである。 図1に示す子器1の動作例を示すフローチャートである。 図1に示すPC2の動作例を示すフローチャートである。 本発明の他の実施形態に係る劣化診断システムの構成例を示すブロック図である。 図13に示す子器1の構造物への配置例を示す模式図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る劣化診断システム100の構成例を示すブロック図である。図1に示す劣化診断システム100は、複数の子器1と、PC(パーソナルコンピュータ)2(劣化診断装置)とを備える。本実施形態の劣化診断システム100は、図示していない1または複数の構造物を劣化診断の対象とし、子器1は構造物毎に少なくとも2台設置される。
図1に示す劣化診断システム100では、複数の子器1がLAN(ローカルエリアネットワーク)31を介してデータサーバ32、ルータ33およびPC34に接続される。ただし、図1に示す構成は一例であって、例えば子器1が図示していない移動体通信網等の通信回線に無線で接続されていてもよい。この場合には、LAN31、データサーバ32、ルータ33、PC34等は省略することができる。データサーバ32は、例えば、子器1による計測結果等を記憶したり、記憶した情報をインターネット35を介してクラウド36に構築されたサーバ群に対して送信したりする。ただし、子器1が直接、クラウド36に構築されたサーバ群あるいはPC2に対して計測結果等をデータサーバ32を介さず送信するようにしてもよい。ルータ33は、LAN31をインターネット35に接続する。PC34は、後述するPC2と同等の機能を有するコンピュータであり、PC34でもPC2と同様に劣化診断を行うことができる。ただし、このPC34は省略することができる。
ルータ38は、クラウド36に構築されたサーバ群とサーバ39とをインターネット37を介して接続する。サーバ39は、例えばクラウド36に構築された所定のサーバにアクセスすることで複数の子器1による計測結果等の情報を受信して記憶する。また、サーバ39は、記憶した情報をPC2に対して提供したり、PC2による劣化診断処理の結果を所定の通知先へ通知したりする。
ここで、図2および図3を参照して、構造物の一例である建築物に対する子器1の設置例について説明する。図2は建築物の一例である住宅への子器1の設置例を示す模式図であり、図3は建築物の他の例である複合建築物への子器1の設置例を示す模式図である。図2に示す住宅400は3階建て住宅である。図2に示す住宅400では、図1に示す子器1に対応する2台の子器1aおよび子器1bが、住宅400の1階部分401および3階部分402に設置されている。この場合、子器1aが設置されている1階部分401は1階の床(あるいは住宅400の基礎)に近い領域であり、3階部分402は3階の天井に近い領域である。一方、図3に示す複合建築物500は地下1階地上7階建て建築物である。図3に示す複合建築物500では、図1に示す子器1に対応する2台の子器1gおよび子器1hが、複合建築物500の地下1階部分501および屋上部分502に設置されている。この場合、子器1gが設置されている地下1階部分501は地下1階の床(あるいは基礎)に近い領域である。図2および図3に示す設置例では、1階、地下1階等の建築物の固定部と、3階、屋上等の最上階近傍の揺れ部の2箇所に設置箇所を限定することで、子器1の設置を簡素化している。ここで揺れ部とは固定部と比較して地震や風による振動が概ね大きくなる部分である。なお、構造物が複雑系の場合あるいは動的設計資料がない場合、初期に少なくとも1次~3次の固有周振動数(あるいは固有周期)とモード値が把握できるような多点計測を行い、劣化診断の支援資料とすることが望ましい。特に固有モード形は1度計測しておくと以後の変化に対処できる。なお、図2および図3は、建築物等の構造物への子器1の設置の一例を示すものであり、例えば同一の階に複数の子器1を設置したり、3以上の階に子器1を設置したりしてもよい。
図1に示す子器1は、図4に示すように、振動センサ11と、処理部12と、記憶部13(記憶装置)と、通信部14を有する。振動センサ11は、例えば加速度センサであり、一方向または複数方向の加速度を検知した結果を出力する。ただし、振動センサ11は、振動レベルを検知するセンサであればよく、加速度センサに限らず、変位センサ、速度センサ等であってもよい。振動センサ11は、子器1が設置された位置の振動レベルを示すアナログあるいはデジタルの信号を出力する。なお、本実施形態において振動レベルとは、振動の加速度、速度または変位の大きさを意味する。
図4に示す処理部12は、判定部121と、波形解析部122を有する。判定部121は、振動センサ11の出力信号に基づき、振動センサ11によって所定のレベル以上の振動波形が検出されたか否かを判定する。判定部121は、例えば、振動センサ11の出力信号のピーク値、実効値等と所定の閾値(計測開始閾値)とを比較することで、所定のレベル以上の振動波形が検出されたか否かを判定することができる。処理部12は、判定部121が振動センサ11によって所定のレベル以上の振動波形が検知されたと判定した場合、所定時間、振動センサ11の出力信号を所定のサンプリング周期で繰り返し取り込み、計測値131として記憶部13に記憶する。本実施形態ではこの判定部121を設けることで、計測トリガー設定し、振動波形の収録回数を必要最小限に減じることができる。計測は強風や地震外力により構造物の振動量がある程度以上大きくなった時に自動計測を開始し、一定時間後に終了する。例えば建物の場合は部材損傷などの不具合が発生する恐れのある100Gal応答前後にトリガーをかけ数分間記録することができる。
波形解析部122は、記憶部13に計測値131として記憶されている所定時間分すなわち複数サンプリング分の振動センサ11の出力信号に対して所定の波形解析処理を行い、処理した結果を波形解析結果132として記憶部13に記憶する。なお、本実施形態では複数サンプリング分の振動センサ11の出力信号を振動波形ともいう。所定の波形解析処理とは、例えば固有値解析であり、構造物の固有振動数と振動モードを求める処理である。固有値解析は既知の手法で行うことができる。あるいは、所定の波形解析処理とは、例えば、時刻歴振動波形を周波軸上の波形に変換する処理である周波数分析処理(スペクトル分析処理)である。この場合、構造物の固有振動数は、例えばPC2において算出することになる。波形解析部122は、例えば、記憶部13に記憶されている振動波形を複数の周波数成分に分解し、周波数成分毎のレベルを算出する。あるいは所定の波形解析処理とは、例えば固有振動数毎に構造物の減衰性に応じた値を求める処理である。減衰性に応じた値は、例えば、対数減衰率や減衰比である。波形解析部122は、例えば、記憶部13に記憶されている振動波形に対して自己相関解析を行って、対数減衰率や減衰比を算出する。そして、波形解析部122は、算出した固有値解析の結果や周波数分析結果、または固有値解析の結果や周波数分析結果と減衰性に応じた値の算出結果を、波形解析結果132として記憶部13に記憶する。
本実施形態では、波形解析部122を設けることで、子器1(あるいはデータサーバ32)は、振動波形そのものを記憶するのではなく、振動波形に対して固有値解析、周波数分析等の所定の一次処理を施した解析結果を記憶する。これによれば、子器1側において記憶する保存データ数の容量を少なくし子器1等を容易に簡素化することができる。従来、地震の場合、時刻歴データの観測は膨大である。概算であるが時刻歴データ数=(100~1000個)/秒×(数十分)×(地震回数)を保存しているが、現在、真に知りたいのは最大値である。一方、固有値特性が地震強風等の外乱に対する構造物の挙動を決定付けるという観点から、周波数分析という1次処理を行うとデータ数=(約百個/回)×(回数)程度に縮減され、この縮減データのみを保存するとメモリ容量を大幅に減じることが出来る。すなわち、本実施形態では、1次処理して縮減した固有値データを蓄積し、劣化状況を固有値の変化として捕らえる手法が採用されている。
記憶部13は、例えば、書き換え可能な不揮発性メモリや揮発性メモリから構成されていて、計測値131と波形解析結果132とを記憶する。
通信部14は、有線または無線の通信装置であり、例えば外部のコンピュータや通信装置に対してLAN31等を介して記憶部13に記憶されている波形解析結果132を送信する。
一方、PC2は、図5に示すように、入力部21と、処理部22と、出力部23と、記憶部24を有する。入力部21は、子器1の通信部14から送信された波形解析結果を、通信回線、通信装置やサーバ39等の他のコンピュータを介して受信し、受信した波形解析結果を、処理部22を介して波形解析結果242として記憶部24に記憶する。ただし、入力部21は、着脱自在な記憶媒体を接続してその記憶媒体から波形解析結果を読み込んだり、子器1と無線あるいは有線で直接接続して波形解析結果を読み込んだりする構成であってもよい。
処理部22は、変化率算出部221と、判定部222と、判定結果出力部223を有する。変化率算出部221は、まず、記憶部24に記憶されている波形解析結果242と基準値241を参照する。ここで、基準値241は、診断対象とする構造物の新築時(あるいは一定の基準時)における所定次数分の固有振動数と、所定次数分の振動増幅率(モード値)と、所定次数分の減衰性に応じた値とを、1または複数の構造物分各子器1に対応させて含むデータである。以下、固有振動数の基準値と振動増幅率の基準値と減衰性に応じた値の基準値をまとめて表すときには単に基準値241といい、個別に表すときには、固有振動数の基準値241、振動増幅率の基準値241、あるいは減衰性に応じた値の基準値241という。基準値241は、設計時における計算上の値、竣工時に計測した値、竣工後一定期間経過後に計測した値に経年変化を顧慮した値等に基づいて設定することができる。
次に、変化率算出部221は、記憶部24に記憶されている波形解析結果242に含まれている周波数分析結果等のデータに基づいて、当該構造物に設置されている複数の子器1を対象として当該構造物の固有振動数を所定の次数分求めるとともに、当該構造物の振動増幅率を所定の次数分求める。ただし、子器1によって固有振動数や振動増幅率が算出されている場合には変化率算出部221は、それらの値を波形解析結果242から取得することができる。なお、同一計測機会において1つの構造物に設置されている複数の子器1が計測した振動波形に基づく各次数の各固有振動数が異なる場合には、例えば周波数分析において最も周波数成分のレベルが大きいデータに基づく固有振動数を採用することができる。さらに、変化率算出部221は、波形解析結果242から、各子器1において算出された当該構造物の減衰性に応じた値を取得する。なお、振動増幅率は、構造物における2以上の異なる地点間(階層間)の振動ピーク値間の比の値であり、例えば固定部を基準にした同構造物における揺れ部の振動ピーク値間の比の値である。この振動増幅率は、振動固有モード(あるいは振動モード)の各点における振動振幅の割合に対応する値である。なお、振動固有モードは、固有振動数で単振動している系の各点(各質点あるいは振動センサの設置点)における例えば振動振幅の分布を示す振動様式であり、構造物における振動の現れ方を表す。
次に、変化率算出部221は、波形解析結果242に基づく各次数の固有振動数を、次数毎に固有振動数の基準値241と比較して、固有振動数の基準値241からの変化率を算出する。また、変化率算出部221は、波形解析結果242に基づく各次数の振動増幅率を、次数毎に振動増幅率の基準値241と比較して、振動増幅率の基準値241からの変化率を算出する。さらに、変化率算出部221は、波形解析結果242に基づく構造物の減衰性に応じた値を次数毎に減衰性に応じた値の基準値241と比較して、減衰性に応じた値の基準値241からの変化率を算出する。
そして、判定部222は、変化率算出部221が算出した固有振動数の変化率および振動増幅率の変化率と、記憶部24に記憶されている所定の判定値244とを比較することで、当該構造物の劣化の度合いを判定する。あるいは、判定部222が、変化率算出部221が算出した固有振動数の変化率、振動増幅率の変化率および減衰性に応じた値の変化率と、記憶部24に記憶されている所定の判定値244とを比較することで、当該構造物の劣化の度合いを判定する。ここで、判定値244は、変化率算出部221が算出した各変化率と比較される基準となる値であって、変化率毎に1または複数段階分用意される。判定値244は各変化率と比較される複数の判定値と各判定値に対応する判断の内容を示す情報とを含む。判定値244は、例えば、変化率算出部221が算出した変化率が、ある判定値244より大きい場合には異常であるとか、ある判定値244より小さい場合には正常であるとかという情報を対応づけて構成されている。
判定結果出力部223は、判定部222による判定結果を、例えば構造物単位で所定形式で記憶部24に判定結果243として記憶するとともに、例えば構造物単位で所定形式で出力部23から出力する。出力部23は、画像表示装置、印刷装置、通信装置等を有していて、判定結果出力部223の指示に応じて例えば構造物単位で所定形式で判定部222による判定結果を出力する。
ここで、変化率算出部221による変化率の算出手法の一例について詳細に説明する。この例では、基準値(初期値等)とその後の計測値との関係を評価するための評価式を、(1)固有周期、(2)振動増幅率(モード値)、および(3)減衰性に応じた値についてそれぞれ下式のように設定する。変化率算出部221は、各評価式を用いて、周期変化率(α)、振動増幅率変化率(モード振幅変化率)(β)、および減衰比変化率(h)を算出する。この各変化率が、判定部222における判断の評価指標(判定値244と比較される値)となる。
(1)固有周期の変化については、基準値の固有周期(Toi)に対するn回目の計測固有周期(Tni)の変化率(αni)を評価指標にする。この場合、評価式は次式のようにすることができる。
Figure 0007068768000001
ここで、nは子器1の判定部121における判定条件を満たした計測の回数(n回目)を表し、iは固有振動の次数を表す。Tniはn回目i次固有周期であり、αniはn回目i次固有周期の基準値のi次固有周期に対する変化率(評価指標)であり、Toiは基準値(初期値o(1回目))のi次固有周期である。
(2)振動増幅率の変化については、基準値の振動増幅率(Xoir)に対するn回目計測の振動増幅率(Xnir)の変化率(βnir)を評価指標にする。この振動増幅率は各階の質量と剛性の分布連成系で決まるので、いずれかの階が損傷するとその階のモード振幅が変化する。
Figure 0007068768000002
ここで、変化率(βnir)が評価指標となる。Xnirはn回目i次r階の振動増幅率、βnirはn回目i次r階の振動増幅率の変化率(評価指標)、Xoirは基準値(初期値o(1回目))のi次r階の振動増幅率である。
(3)減衰性に応じた値の変化については例えば減衰比の変化率(hni)を評価指標とする。設計時にはRC造(鉄筋コンクリート造)、鉄骨造、木造など構造種別より減衰比(h=C/Cc)を想定して地震応答解析が行われるので、概算的な減衰比は予め取得することができる。ここで、Cは粘性減衰係数、Ccは臨界減衰係数である。なお、詳細には、観測波形の自己相関解析法を用いて評価する理論がある。そこで基準値(初期値)を定めこれを基準にして判定することが可能である。なお、減衰性に応じた値の変化については、一例として、基準値の減衰比(Hoi)に対するn回目計測の減衰比(Hni)の変化率(hni)を評価指標にする。
Figure 0007068768000003
ここで、変化率(hni)が評価指標となる。Hniはn回目i次の減衰比、hniはn回目i次の減衰比の変化率(評価指標)、Hoiは基準値(初期値o(1回目))のi次の減衰比である。
上述したように、判定部222は、変化率算出部221が算出した固有振動数の変化率と振動増幅率の変化率とに基づき当該構造物の劣化の度合いを判定する。あるいは、判定部222は、変化率算出部221が算出した固有振動数の変化率と振動増幅率の変化率と減衰性に応じた値の変化率とに基づき当該構造物の劣化の度合いを判定する。判定の際、判定部222は、記憶部24に記憶されている判定値244を呼び出し、判定値244と各変化率を比較することで劣化の度合いを判定する。判定部222は、例えば、各変化率に基づき最も劣化の度合いが大きいと判定された診断結果を該構造物の診断結果とすることができる。
上述した変化率(αni、βnir、hni)の算出方法を用いる場合、判定部222は、変化率(αni、βnir、hni)が許容される範囲内か否かを判定することで、劣化診断結果を決定する。この変化率が許容範囲内か否かの判定は、構造物の種類(建物、防音壁、設備機械など)、構造種別(RC造、S造(鉄骨造)、軽量鉄骨造、木造等)と、高さ(高層、中低層、平屋)等によりそれぞれ異なるので、それぞれに定義する必要がある。例えばRC造10階建物の場合、実験結果から、固有振動数の変化率は概略、αni>0.9(正常)、0.9>αni>0.8(要注意、耐力詳細検討)、0.8>αni(設計管理機関に連絡)とすることができる。
ここで、図6~図9を参照して、本実施形態において、判定部222によって変化率算出部221が算出した固有振動数の変化率と振動増幅率の変化率とに基づき構造物の劣化の度合いを判定する構成が奏する効果について説明する。図6~図9は、大型振動台による実大建物の破壊加振実験において計測された固有振動数の変化または振動モード形の変化を表す図である。この加振実験では、RC造10階建物において、レベルを10%、25%、50%、100%に変化させた所定の地震波に基づき建物を加振した直後に、50Galの地震波を入力して1階~R階まで1階おきに配置した加速度センサにてXおよびY方向の加速度を計測した。そして、計測された時刻暦データから周波数分析を行い、分析結果から固有振動数と振動モード形を既知の理論から算出した。
図6および図7は、横軸に初期値、10%、25%、50%、および100%加振の区分と、縦軸に固有振動数の変化の関係を示す。図6はX方向の1次~3次の固有振動数の変化を示し、図7はY方向の1次~4次の固有振動数の変化を示す。図6および図7に示すように、1)地震力が増加すると、XY方向共に、1次、2次および3次の固有振動数が低下する。また、2)10%、25%地震後の変化率と比べて、50%程度を超えると変化率が大きい傾向が分かる。
図8および図9は、初期値と、25%、50%、および100%加振後の1次と2次の固有モード形を示す。図8はX方向の1次と2次の固有モード形を示し、図9はY方向の1次と2次の固有モード形を示す。図8および図9では、周波数分析結果から劣化過程のモード振幅をR階振幅を基準(=1.0)とし、1次と2次の固有振動の振動増幅率を示す。図8および図9に示すように、初期値(健全状態)モードと比較して、1)地震力が大きくなるにつれてモードが変化していく様子が分かる。また、2)概略的に見ると、初期値に対して地震力10%から25%までで若干変化した。目視では微細なひび割れが進行している状況であった。3)50%でかなり変化している。目視では上部階の柱梁接合部や耐震壁のひび割れが本格化した。4)100%でモードが更に大きく変化している。目視では同部近傍のコンクリート一部が剥がれて落下するなどの崩壊が近いと観察された。
図6~図9に示す特性によれば、固有振動数については50%加振後に大きな変化が見られるが、25%以下の加振後にには大きな変化は見られない。一方、固有モード形(振動増幅率)については、25%の加振後であっても、50%加振後と同等の変化がみられる場合がある。したがって、本実施形態によれば、振動変化率(モード値)に応じた評価を行うことができるので、適切に基準値を設定することで、固有振動数の変化のみに基づく劣化診断では診断することができない比較的大きくはない劣化を診断することができることが分かる。すなわち、本実施形態によれば、固有振動数(あるいは固有周期)の変化のみに基づいて診断する場合と比較して、構造物の劣化を劣化の程度の広い範囲で診断することが可能である。
次に、図10~図12を参照して図1に示す子器1の動作例およびPC2の動作例について概略を説明する。図10は、子器1が振動波形を計測する際の処理の流れを示すフローチャートである。図10に示す処理は、例えば所定の時間間隔で繰り返し実行される。図10に示す処理が開始すると、まず、判定部121は振動センサ11の出力信号を入力し、振動センサ11が検知した振動レベルを取得する(ステップS101)。次に判定部121は、ステップS101で取得した振動レベルと所定の計測開始閾値を比較し、振動レベルが計測開始閾値より大きいか否かを判定する(ステップS102)。判定部121は、ステップS102で振動レベルが計測開始閾値より大きくないと判定した場合(ステップS102で「NO」の場合)、処理を終了する。一方、判定部121は、ステップS102で振動レベルが計測開始閾値より大きいと判定した場合(ステップS102で「YES」の場合)、所定のサンプリング周期で振動レベルを取得する(ステップS103)。次に、判定部121は、ステップS103で取得した振動レベルを記憶部13に計測値131としてサンプリング時刻に対応するように記憶する(ステップS104)。
次に判定部121は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS105)。判定部121は、所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS105で「NO」の場合)、ステップS103~ステップS105の処理を繰り返し実行する。一方、判定部121は、ステップS102で所定時間が経過したと判定した場合(ステップS105で「YES」の場合)、所定の時間間隔で振動レベルを取得する(ステップS106)。次に判定部121は、ステップS106で取得した振動レベルと所定の計測終了閾値を比較し、振動レベルが計測終了閾値より小さいか否かを判定する(ステップS107)。判定部121は、ステップS107で振動レベルが計測終了閾値より小さくないと判定した場合(ステップS107で「NO」の場合)、ステップS106~ステップS107の処理を繰り返し実行する。
判定部121がステップS107で振動レベルが計測終了閾値より小さいと判定した場合(ステップS107で「YES」の場合)、波形解析部122が記憶部13に記憶されている所定時間分の計測値131に対して周波数分析処理を実行する(ステップS108)。次に波形解析部122は、ステップS108での周波数分析結果を記憶部13に対して波形解析結果132として記憶する(ステップS109)。次に波形解析部122は、記憶部13に記憶されている所定時間分の計測値131に基づいて減衰性に応じた値を算出する(ステップS110)。次に波形解析部122は、ステップS110での減衰性に応じた値の算出結果を記憶部13に対して波形解析結果132として記憶する(ステップS111)。
以上の処理を実行することで子器1は計測開始閾値を越える振動レベルを検出した場合に、所定時間、所定のサンプリング周期で振動波形を取り込み、取り込んだ結果を計測値131として記憶部13に記憶するとともに、記憶した振動波形に基づく周波数分析処理と減衰性に応じた値を算出する処理とを実行する。そして、子器1は、周波数分析処理結果と減衰性に応じた値の算出結果を波形解析結果132として記憶部13に記憶する。その際、計測値131は、ステップS108の周波数分析とステップS110の減衰性に応じた値の算出が終了した後は、消去(あるいは上書き)が可能となる。
次に、図11を参照して子器1が記憶部13に記憶した波形解析結果132を通信部14から送信する際の処理の流れについて説明する。図11に示す処理は、例えば所定の時間間隔で繰り返し実行される。まず、子器1では処理部12が所定の送信条件が成立したか否かを判定する(ステップS201)。所定の送信条件とは、例えば記憶部13に未送信の波形解析結果132が記憶されているという場合、記憶部13に未送信の波形解析結果132が記憶されているととともに、データサーバ32やクラウド36内のサーバに対して波形解析結果132を送信可能な状態となった場合や、データサーバ32やクラウド36内のサーバから送信要求を受信した場合等である。処理部12は、ステップS201で所定の送信条件が成立したと判定した場合(ステップS201で「YES」の場合)、通信部14を制御して所定の送信先へ記憶部13に記憶されている波形解析結果132を送信する(ステップS202)。ここで所定の送信先とは、データサーバ32、クラウド36内のサーバ、サーバ39等である。また、その際、送信される波形解析結果132には、子器1の識別符号、振動波形の計測時刻等の情報が添付される。
次に、図12を参照してPC2が、子器1から送信された波形解析結果132に基づいて構造物の劣化を診断する際の処理の流れについて説明する。図12に示す処理は、例えばサーバ39が子器1から送信された新たな波形解析結果132を受信した場合に実行される。まず、入力部21が、子器1から受信した新たな波形解析結果132をサーバ39から入力して、記憶部24に波形解析結果242として記憶し、さらに、変化率算出部221が、診断対象の構造物単位で記憶部24が記憶する波形解析結果242を処理部22内の図示していないワーキングメモリ等の記憶領域に読み込む(ステップS301)。次に、変化率算出部221が、記憶部24が記憶する当該子器1に対応する各次数の基準値241を処理部22内の図示していないワーキングメモリ等の記憶領域に読み込む(ステップS302)。次に、変化率算出部221が、記憶部24が記憶する当該子器1に対応する各次数の判定値244を処理部22内の図示していないワーキングメモリ等の記憶領域に読み込む(ステップS303)。
次に、変化率算出部221が、ステップS301で読み込んだ波形解析結果242に基づき所定次数の固有周期を算出する(あるいは波形解析結果242から所定次数の固有周期を取得する)(ステップS304)。次に、変化率算出部221が、ステップS304で算出した各次数の固有周期とステップS302で読み込んだ各次数の固有周期の基準値241とに基づいて各次数の固有周期の変化率を算出する(ステップS305)。次に、判定部222が、ステップS305で算出した固有周期の変化率とステップS303で読み込んだ判定値244を次数毎に比較する(ステップS306)。
次に、変化率算出部221が、ステップS301で読み込んだ波形解析結果242に基づき所定次数の振動増幅率を算出する(あるいは波形解析結果242から所定次数の振動増幅率を取得する)(ステップS307)。次に、変化率算出部221が、ステップS307で算出した各次数の振動増幅率とステップS302で読み込んだ各次数の振動増幅率の基準値241とに基づいて各次数の振動増幅率の変化率を算出する(ステップS308)。次に、判定部222が、ステップS308で算出した振動増幅率の変化率とステップS303で読み込んだ判定値244を次数毎に比較する(ステップS309)。
次に、変化率算出部221が、ステップS301で読み込んだ波形解析結果242に含まれている各次数の減衰性に応じた値とステップS302で読み込んだ各次数の減衰性に応じた値の基準値241とに基づいて減衰性に応じた値の変化率を算出する(ステップS310)。次に、判定部222が、ステップS310で算出した減衰性に応じた値の変化率とステップS303で読み込んだ判定値244を次数毎に比較する(ステップS311)。
次に、判定部222が、ステップS306、S309およびS311で求めた各比較結果を判定結果243として記憶部24に記憶する(ステップS312)。次に、判定結果出力部223が、記憶した判定結果243を構造物単位で所定形式で出力部23から出力する(ステップS313)。
以上のように、本実施形態では、入力部21が、複数の子器1によって構造物の振動波形を計測し、かつ、複数の子器1によってその計測した振動波形に対して所定の波形解析処理を行った波形解析結果132を入力する。また、入力部21は、入力した波形解析結果132を波形解析結果242として記憶部24に記憶する。また、記憶部24が、構造物の固有振動数の基準値241と構造物の振動増幅率の基準値241とを記憶する。また、変化率算出部221が、波形解析結果242に基づく構造物の固有振動数の固有振動数の基準値241に対する変化率を算出するとともに、波形解析結果242に基づく構造物の振動増幅率の振動増幅率の基準値241に対する変化率とを算出する。そして、判定部222が、変化率算出部221が算出した固有振動数の変化率と動増幅率の変化率とに基づき構造物の劣化の度合いを判定する。この構成によれば、構造物の劣化を劣化の程度の広い範囲で診断することができる。
また、本実施形態では、入力部21が、複数の子器1が振動波形に基づいて算出した構造物の減衰性に応じた値を波形解析結果132としてさらに入力して波形解析結果242として記憶する。また、記憶部24が、構造物の減衰性に応じた値の基準値241をさらに記憶する。また、変化率算出部221が、波形解析結果242に基づく前記構造物の減衰性に応じた値と前記減衰性に応じた値の基準値に対する変化率をさらに算出する。また、判定部222が、変化率算出部221が算出した固有振動数の変化率と振動増幅率の変化率と減衰性に応じた値の変化率とに基づき前記構造物の劣化の度合いを判定する。この構成によれば、より詳細に劣化の度合いを診断することが期待できる。
また、本実施形態では、複数の子器1が、所定のレベル以上の振動波形を検出した場合に、構造物の振動波形を所定時間計測し、かつ、その計測した振動波形に対して所定の波形解析処理を行った波形解析結果132を記憶部13等(所定の記憶装置)に記憶する。この構成によれば、記憶容量や通信容量の縮小等、子器1の構成を簡素化することができる。
また、本実施形態では、複数の子器1を、構造物の固定部に設置された1台と、構造物の揺れ部に設置された1台との合計2台に限定することができる。この場合、劣化診断システム100の簡素化を図ることができる。
長年供用されている構築物の使用者は地震あるいは強風のたびに安全性に不安を感じるのが常である。構築物の経年変化状況が簡便な方法で長期に渡り把握し続け、その劣化状況が分かることは居住者や使用者の共通の願いであろう。従来の耐震診断や被災度判定システムなどは、供用後何年か経た時に大地震に遭遇したとき、その時点での揺れ最大値と耐震設計値との比較評価であるが、本実施形態によれば、構築後から揺れを頻繁に経験し構築部に蓄えられる振動エネルギー累積損傷するという観点から、経年劣化の進行状況が評価できる動的固有値観測を容易に実現することができる。
本実施形態の適用例としては、例えば、マンション居住者に大地震後にその都度、適切な様式で診断結果を出力し、報告することができる。都内湾岸高層マンションでも地震経験の少ない外国人居住者は地震のたびに不安に駆られるというが、建物の安全性を伝えるのに役立つであろう。その他、構築物全般にわたり大地震に対する安全性の不安感が付きまとっている場合が多数ある。簡便で安価な方法により実施可能であれば、その劣化状況を見て必要な耐震改修も事前に計画的に行われるであろう。この理論構築において、本実施形態によれば、構築物本来の性能を表す固有値特性に着目することで、劣化の進捗度合いを固有値の変動具合として把握し、安全安心性の評価を行うことができる。
次に、図13および図14を参照して本発明の他の実施形態について説明する。図13は、本発明の他の実施形態に係る劣化診断システム100aの構成例を示すブロック図である。なお、図13において図1に示した構成と同一または対応する構成には同一の符号を付けて説明を適宜省略する。また、図14は、図13に示す子器1の構造物への配置例を示す模式図である。
図13に示す劣化診断システム100aは、複数の子器1およびPC2と、車載PC4と記憶媒体5とを備える。この場合、子器1は車載PC4との間で無線通信を行い、図4に示す波形解析結果132を車載PC4に対して送信する。車載PC4は、自動車に搭載されているPCであり、子器1から波形解析結果132を受信し、受信した波形解析結果132を記憶媒体5に記憶する。記憶媒体5は、メモリカード、汎用バス仕様のメモリ等の着脱自在で書き換え可能な不揮発性記憶装置である。PC2は、図5に示す入力部21に記憶媒体5を接続し、記憶媒体5に記憶されている波形解析結果132を入力し、波形解析結果242として記憶部24に記憶する。子器1およびPC2の他の構成および動作は図1~図12を参照して説明した上記実施形態と同一である。
図13に示す劣化診断システム100aは、例えば子器1を図14に示すような高架道路6の防音壁等の構造物に設置して劣化診断を行うのに適した構成を有している。この場合、高架道路6の橋脚61上の道路壁62に1台の子器1sが設置され、防音壁63の上部にもう1台の子器1tが設置されている。子器1sおよび子器1tは図1および図4に示す子器1に対応する。また、子器1sおよび子器1tからの波形解析結果132の収集は、自動車8に搭載されている車載PC4を用いて無線接続にて行うことができる。
本実施形態においても図1等を参照して説明した上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明の実施の形態は上記のものに限定されない。例えば、地震、台風等の後、対象建物等に出かけて人手でデータを回収する方法を採用あるいは併用することもできる。この場合、例えば、大きな振動を記録した後、技術員が現場に出かけてデータ回収する。原始的方法ではあるが、対象構造物によってはシステム経費削減に寄与し取り扱いやすい場合がある。また、上記各実施形態において、同一の構造物あるいは同一の構造物の一定の領域内に設置された複数の子器1について、複数の判定部121のいずれかが振動波形の記録開始を判定した場合に、すべての子器1で振動波形の記録を開始するようにしてもよい。また、各子器1に各子器1間で時刻合わせ可能な時計機能を設けることで、各子器1における振動波形の計測を同期させるようにしてもよい。
100、100a 劣化診断システム
1、1a、1b、1g、1h、1s、1t 子器
11 振動センサ
12 処理部
121 判定部
122 波形解析部
13 記憶部
132 波形解析結果
2 PC
22 処理部
221 変化率算出部
222 判定部
223 判定結果出力部
24 記憶部
241 基準値
242 波形解析結果
243 判定結果
244 判定値
4 車載PC
5 記憶媒体

Claims (5)

  1. 構造物へ設置される複数の子器と劣化診断装置とを備えた劣化診断システムであって、
    前記子器は、振動センサと、第1処理部と、第1記憶部と、通信部とを有し、
    前記振動センサは、前記構造物の振動の振動レベルを検知し、検知結果の振動レベルを示す出力信号として出力し、
    前記第1処理部は、
    前記振動センサからの前記出力信号に基づき、所定のレベル以上の振動波形が検出されたか否かを判定し、所定のレベル以上の振動波形が検知されたと判断した場合に、前記出力信号を所定のサンプリング周期で繰り返し取り込み、取り込んだ前記出力信号を計測値として前記第1記憶部に記憶する第1判定部と、
    前記第1記憶部に記憶された前記計測値を所定の波形解析処理を行い、前記波形解析処理により得られた波形解析結果を前記第1記憶部に記憶する波形処理部と
    を有し、
    前記劣化診断装置は、入力部と、第2処理部と、出力部と、第2記憶部とを有し、
    前記入力部は、前記子器の前記通信部から送信された前記波形解析結果を受信し、受信した前記波形解析結果を前記第2記憶部に記憶し、
    前記第2処理部は、
    前記第2記憶部に記憶されている前記波形解析結果と基準値とを参照して、前記基準値からの前記波形解析結果の変化率を算出する変化率算出部と、
    前記変化率と前記第2記憶部に記憶されている判定値とを比較して、前記構造物の劣化度を判定する第2判定部と、
    前記第2判定部による判定結果を出力する判定結果出力部と
    を有し、
    前記変化率算出部は、前記波形解析結果に基づく前記構造物の固有振動数と、前記固有振動数の前記基準値における第1基準値とにより前記変化率として第1変化率を算出するとともに、前記波形解析結果に基づく前記構造物の振動増幅率と、前記振動増幅率の前記基準値における第2基準値とにより前記変化率として第2変化率を算出し、
    前記第2判定部は、前記第1変化率及び前記第2変化率に基づいて前記構造物の劣化の度合を判定し、
    前記基準値を健全状態に応じた値である初期値として、1次の固有モードと当該初期値とを比較するとともに、2次の固有モードと前記基準値とを比較することで、目視での微細なひび割れが進行している状況の構造物の劣化の度合いを判定する、
    構造物劣化診断システム。
  2. 前記子器は、
    前記第1判定部に前記出力信号を前記サンプリング周期で取り込んだ前記出力信号を前記第1記憶部に記憶する自動計測を開始する計測トリガーを備えており、前記構造物の前記振動レベルが前記所定のレベル以上となった場合に前記自動計測を開始し、一定時間経過後に前記自動計測を終了するようにされた、
    請求項1に記載の構造物劣化診断システム。
  3. 前記子器は、インターネットを介してクラウドに構築されたデータサーバに接続され、
    前記劣化診断装置は、前記インターネットを介して前記データサーバから前記波形解析結果を受信する、
    請求項1または請求項2に記載の構造物劣化診断システム。
  4. 前記子器は、前記構造物である高架道路の構造物に設置された、
    請求項1から請求項3のいずれかに記載の構造物劣化診断システム。
  5. 前記子器は、前記高架道路の橋脚上の道路壁と防音壁の上部とに設置された、請求項4に記載の構造物劣化診断システム。
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