JP6363539B2 - 建物の損傷部位の推定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、地震後の建物において損傷部位が存在するか否かを推定する、建物の損傷部位の推定方法に関するものである。
地震国であるわが国においては、ビルや橋梁、高架道路、戸建の住宅といった様々な構造物に対して、地震力に抗する技術、構造物に入る地震力を低減する技術など、様々な耐震技術、免震技術、制震技術が開発され、各種構造物に適用されている。
たとえば免震技術を概説すると、下部構造物である基礎と上部構造物との間に免震装置を介在させ、地震による基礎の振動の上部構造物への伝達を低減し、上部構造物の振動を低減して構造安定性を保証するものである。なお、この免震装置は、地震時のみならず、構造物に対して常時作用する交通振動の上部構造物への影響低減にも効果を発揮するものであり、免震装置には鉛プラグ入り積層ゴム支承装置や高減衰積層ゴム支承装置、積層ゴム支承とダンパーを組み合わせた装置、滑り免震装置など、様々な形態の装置が存在している。
一方、制震技術を代表するものとして、建物の壁内もしくは壁外に設置される制震ブレスが挙げられる。制震ブレスにも多様な形態が存在するが、本出願人等によって発案され、商品化されている、アンボンドブレス(UBB)は、芯となる中心鋼材を鋼管とコンクリートで拘束し、座屈させずに安定的に塑性化するようにした、高品質かつ高性能なブレスである。このアンボンドブレスは、中心鋼材とコンクリートの間に特殊な緩衝材(アンボンド材)を用いており、鋼管とコンクリートには軸力が加わらないようになっており、この組み合せによって、引張、圧縮ともに同性状の安定した履歴特性をもつ制振ダンパーとして利用できるものである。
このように、地震時の振動を抑制し、地震時における建物振動を低減することは、建物内に居る人々に安心感を与え、建物自身の破壊や破損を防止できることから重要な技術であるものの、地震を受けた建物が実際に被害を受けていないかを精緻に判断すること、すなわち精緻に建物の損傷の有無や損傷部位を推定することもまた、建物の継続的な使用や補修の要否を知る上で極めて重要な要素である。
従来の建物、特に多層階のビルや大規模な公共施設、物流施設などにおける損傷部位の推定においては、各層に加速度計等の地震計を設置しておき、地震後に各層の地震計の計測データを分析し、各層ごとに閾値となる加速度以上の大きさの地震加速度を受けたか否かを検証し、破損の有無を特定する方法が一般に採用されている。
しかし、この推定方法では、建物の高層化や大型化に応じて設置される地震計の基数が増加し、設置コストが嵩むとともに、各層ごとに各層に固有の地震計測結果に応じて梁や柱といった構造部材の破損の有無を検証する必要があることから、検証に手間と時間を要するといった課題があった。
ここで、特許文献1には、耐震診断の対象となる建物を微少変形レベルで振動させ、その振動を計測することで建物のX、Y方向における固有振動数を経年固有振動数fzx、fzyとしてそれぞれ算出する一方、建物が健全な状態にあるときのX、Y方向における固有振動数を初期固有振動数f1x,f1yとしてそれぞれ評価し、次に、経年固有振動数fzx,fzyを初期固有振動数f1z,f1yで除した値fzx/f1x、fzy/f1yを建物固有振動数低下率として各方向ごとに算出し、次に、建物固有振動数低下率fzx/f1x、fzy/f1yから建物の損傷状況をX、Y方向ごとにそれぞれ推定する、建物の耐震診断方法が開示されている。すなわち、この方法は、固有振動数の低減率によって損傷の有無を判断するものである。
一方、特許文献2には、地震後に、観測記録から地動加速度と相対速度を算出し、相対速度を各次成分svに分解し、地動加速度から各次の入力エネルギsL(t)、各次成分svから各次の減衰消費エネルギsD(t)を算出し、その差分から各次の塑性吸収エネルギsWDを算出し、最適降伏せん断力と、損傷分布則を用いて、各層の塑性吸収エネルギ量Wpiを求め、建物の被災の有無を判定する、建物の被災の有無の判定方法が開示されている。すなわち、この方法は、地震時の建物波形記録から入力エネルギ量を求め、この入力エネルギ量に基づいて被災の有無を判定するものである。
一方、特許文献3には、建物の複数の構面の層毎に健全時及び評価時での計測の結果得られた建物の常時微動記録の中の任意の一つの基準信号と残りの参照信号とのクロススペクトルをARMAモデルに移動平均項を付加したモデルを用いて求め、これら基準信号及び参照信号の相関成分と無相関部分とを分離して建物全体の振動成分のみを抽出する第一の方法と、第一の方法による結果に基づいて健全時及び評価時毎に建物の固有振動数及び複数の構面別の層毎の数値を成分とするベクトルである固有モードを計算する第二の方法と、第一の方法による結果及び第二の方法による結果に基づき、建物の各層の質量を全て一定として健全時及び評価時毎に複数の構面別の層毎にモード層剛性を計算する第三の方法とからなる、常時微動計測に基づく建物の健全性診断法が開示されている。すなわち、この方法は、常時微動を計測し、この常時微動に基づいて建物の固有モードや剛性を求め、健全時との比較によって損傷診断をおこなうものである。
さらに、特許文献4には、多層構造の建物の健全性を確認するための方法であって、任意に設定した建物の観測層にセンサを設置し、地震時にセンサで取得した観測層の応答情報に基づき、ベイズの定理を用いて建物の設計モデルの情報を学習的に更新するようにし、後に発生した地震時に取得した観測層の応答情報と、学習的に更新した建物の設計モデルの情報に基づいて、建物の各層の応答を推定するようにした、建物の健全性確認方法が開示されている。すなわち、この方法は、多層構造の各層にセンサを取り付け、その応答から建物モデルを更新し、健全性を確認するものである。
このように、特許文献1〜4で開示される方法を適用した場合、たとえば建物の固有値やエネルギ量、常時微動によって健全性を診断する方法では建物の各構成部材の損傷までを判断するのは難しく、また、多層構造の各層にセンサを取り付ける方法では既述するようにセンサ設置コストが嵩んでしまう。
特開2004−027762号公報 特開2009−098101号公報 特開2010−261754号公報 特開2013−195354号公報
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、多層構造の建物であっても各層にセンサを取り付けることを不要としながら、各層の構造部材の損傷の有無を精度よく特定することのできる、建物の損傷部位の推定方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による建物の損傷部位の推定方法は、少なくとも一階に制震ブレスが設置されている建物Aの制震ブレス取付け箇所に変形量記録装置を設置しておく第1のステップ、変形量記録装置で取得された変形量に基づいて前記一階の制震ブレス取付け箇所の水平変位を算定し、建物の一次固有モードを求める第2のステップ、建物の一次固有モードから一階の水平変位と該一階の水平変位に対する各階の水平変位の比率を特定し、第2のステップで算定されている一階の制震ブレス取付け箇所の水平変位と前記比率から各階の水平変位を算定する第3のステップ、第3のステップで算定された建物の各階に固有の水平変位を各階に付与し、静的弾塑性解析にて各階の各部材の応力を計算し、計算された応力と各部材の降伏応力との比較をおこなって建物の損傷部位の推定をおこなう第4のステップからなるものである。
本発明の建物の損傷部位の推定方法は、その推定対象が、少なくとも一階に制震ブレスが設置されている建物Aであり、大型施設である物流施設等が具体例として挙げられる。
ここで、「少なくとも一階に制震ブレスが設置されている」とは、一階にのみ制震ブレスが設置されている建物、複数階の建物において一階以外の任意階(全階を含む)にも制震ブレスが設置されている建物などを包含する意味である。
少なくとも一階に制震ブレスが設置されている建物Aに対し、第1のステップでは、変形量記録装置(もしくは地震計)をこの一階にのみ設置しておく。なお、制震ブレスには予め変形量記録装置が内蔵されたものもあり、たとえば既述するアンボンドブレスには変位センサや検知センサなどが内蔵されていることから、これらセンサ内蔵型の制震ブレスを設置することもこの第1のステップに含まれるものである。ここで、変形量記録装置を一階にのみ設置することに関し、他階での変形量記録装置の設置を完全に排除する趣旨ではないが、本発明の推定方法では一階以外の階に装置を設置する必要性がないことを意味している。
建物Aが地震を受けた際には、変形量記録装置にてたとえば地震の変形量や加速度の時刻歴波形が記録され、加速度波形は積分されて速度波形(速度の時刻歴波形)に変換され、さらにこれが積分されて変位波形(変形量の時刻歴波形)に変換される。
次に、第2のステップでは、変形量記録装置で取得された変形量に基づいて一階の制震ブレス取付け箇所の水平変位を算定する。具体的には、変形量記録装置で取得された水平変位の時刻歴波形から、たとえば水平変位の最大値を取得することで一階の水平変位とすることができる。
また、第2のステップではさらに、建物の一次固有モードを求める。この一次固有モードの算定は、一般の固有値解析にて一次固有モード、二次固有モードと、その構造モデルに応じた次数の固有モードを求め、本発明ではそのうちの一次固有モードのみを使用するものである。なお、構造モデルが決定されれば、建物の一次固有モードは第2のステップ以外の任意のステップにて実行することができるが、本発明では一応、第2のステップにこの操作を含めることとする。
次に、第3のステップでは、建物の一次固有モードから一階の水平変位と、該一階の水平変位に対する各階の水平変位の比率を特定する。ここで、コンピュータ内で固有値解析によって一次固有モードを求めた際に、各階の水平変位の比率も算定されることから、一次固有モードの一階の水平変位を基準とすれば、各階の水平変位の基準値に対する比率は容易に特定することができる。
一次固有モードの一階の水平変位(基準値)に対する各階の水平変位の比率が特定されたら、第2のステップで算定されている一階の制震ブレス取付け箇所の水平変位を一次固有モードの基準値に適用することで、各階の比率に応じて各階の水平変位が算定される。
このように、本発明の推定方法は、一階のみに変形量記録装置を設置しておき、固有値解析にて特定された一次固有モードから一階の水平変位に対する各階の水平変位の比率を算定し、制震ブレス取付け箇所の水平変位から各階の水平変位を特定することより、多層階の建物であっても設置される変形量記録装置(地震計)は一基のみでよい。
次に、第4のステップでは、第3のステップで算定された建物の各階に固有の水平変位を、コンピュータ内で構築された二次元もしくは三次元のフレーム解析モデルを構成する各階(の各部材)に付与し、静的弾塑性解析を実行して各階の各部材の応力を計算する。ここで、「静的弾塑性解析」には、静的弾塑性増分解析なども含まれる。
コンピュータ内で構築された建物Aのフレームモデルを構成する柱部材や梁部材には、それぞれに固有の剛性や荷重−変形量特性もしくは荷重−モーメント特性などが割り当てられている。解析にて算定された応力と各部材の降伏応力との比較をおこない、たとえば部材が弾性域を超えて塑性域(降伏域)に達している場合は当該部材が損傷していると判断し、部材が弾性域にある場合は損傷していないと判断する、といった具合で、建物を構成する各階の各部材の損傷の有無、言い換えれば損傷部位を推定することができる。
また、本発明による建物の損傷部位の推定方法の他の実施の形態は、一階下の基礎に免震装置が設置されている建物Bの該基礎に変形量記録装置を設置しておく第1のステップ、変形量記録装置で取得された変形量の最大値を用いて、前記基礎の等価剛性を算定し、さらに、変形量記録装置で取得された変形量に基づいて基礎の水平変位を算定し、建物の一次固有モードを求める第2のステップ、建物の一次固有モードから基礎の水平変位と該基礎の水平変位に対する各階の水平変位の比率を特定し、第2のステップで算定されている基礎の水平変位と前記比率から各階の水平変位を算定する第3のステップ、第3のステップで算定された建物の各階に固有の水平変位を各階に付与し、静的弾塑性解析にて各階の各部材の応力を計算し、計算された応力と各部材の降伏応力との比較をおこなって建物の損傷部位の推定をおこなう第4のステップからなるものである。
本実施の形態の推定方法は、その推定対象が、少なくとも一階下の基礎に免震装置が設置されている建物Bであり、高層のオフィスビルやマンションなどが具体例として挙げられる。
免震装置は一階下の基礎に設置されることから、ここでは、建物Bの基礎に変形量記録装置を設置しておく。すなわち、この実施の形態でも、設置される変形量記録装置は一基のみでよい。
また、免震装置が設置された建物の場合、免震層の水平変位−せん断力グラフにおける建物の剛性を示すグラフは一般に、水平変位ゼロの前後で勾配が急なバイリニア型のグラフとなる。そこで、第2のステップでは、このバイリニアグラフに変形量記録装置で取得された変形量の最大値をプロットし、この点と水平変位ゼロの点を繋いでできる等価剛性直線を作成し、算定された等価剛性を用いて建物モデルを作成し、固有値解析を実施して一次固有モードを特定する。
ここでは、基礎の水平変位を一次固有モードの基準とし、この基準に対する各階の水平変位の比率を算定する。
以後、第3、第4のステップは、制震ブレスを具備する建物Aを対象とした推定方法の場合と同様である。
本発明者等による検証の結果、本発明による推定方法と、従来から実施されている地震応答解析の結果の誤差率がわずかであることが実証されており、本発明による推定方法が高い推定精度を有していることが確認されている。
以上の説明から理解できるように、本発明の建物の損傷部位の推定方法によれば、少なくとも一階に制震ブレスを備えた建物、もしくは基礎に免震装置を備えた建物に関し、一階もしくは基礎にのみに変形量記録装置を設置しておき、固有値解析にて一次固有モードから一階もしくは基礎の水平変位に対する各階の水平変位の比率を算定し、制震ブレス取付け箇所の水平変位もしくは免震装置取り付け箇所の水平変位から各階の水平変位を特定し、静的弾塑性解析にて建物の各階の各部材の応力を計算して損傷の有無を特定することから、たとえば一基の変形量記録装置(地震計)のみを使用して、簡易な方法にて、高精度に損傷部位の有無を推定することが可能になる。
(a)は本発明の損傷部位の推定方法の推定対象の建物Aのモデル図であり、(b)は本発明の損傷部位の推定方法の推定対象の建物Bのモデル図である。 本発明の損傷部位の推定方法の実施の形態1のフロー図である。 本発明の損傷部位の推定方法の実施の形態2のフロー図である。 推定方法の実施の形態2において、基礎の等価剛性の算定を説明した変形−層せん断力グラフを示した図である。 変形量記録装置で取得された水平変位の時刻歴波形を示した図である。 固有値解析にて特定された建物の一次固有モードを示した図である。 地震応答解析によって推定された建物損傷部位を示した図である。 本発明の推定方法によって推定された建物損傷部位を示した図である。 図7,8の結果をまとめたテーブルである。 基礎階の地震応答解析と本発明の推定方法による層間変形角−層せん断力関係図を示した図である。 一階の地震応答解析と本発明の推定方法による層間変形角−層せん断力関係図を示した図である。 五階の地震応答解析と本発明の推定方法による層間変形角−層せん断力関係図を示した図である。 最上階(十階)の地震応答解析と本発明の推定方法による層間変形角−層せん断力関係図を示した図である。
以下、図面を参照して本発明の損傷部位の推定方法の実施の形態1,2を説明する。
(損傷部位の推定方法の実施の形態1,2)
図1(a)は本発明の損傷部位の推定方法の推定対象の建物Aのモデル図であり、図1(b)は本発明の損傷部位の推定方法の推定対象の建物Bのモデル図である。また、図2,3はそれぞれ、本発明の損傷部位の推定方法の実施の形態1、実施の形態2のフロー図である。
本発明の建物の損傷部位の推定方法は、主として、少なくとも一階に制震ブレスが設置されている建物Aと、一階下の基礎に免震装置が設置されている建物Bを推定対象とする。
図1(a)で示す建物AのモデルM1は、三次元構造の建物Aを二次元で示したものであり、柱Cと梁Beが格子状に組み付けられてフレーム構造を形成し、各階の適宜の格子内に制震ブレスBrが配設されてその全体が構成されている。ここで、制震ブレスBrの実施例としてはアンボンドブレス(UBB)が挙げられる。
建物Aにおいて、一階の任意の制震ブレスBrの取り付け箇所には変形量記録装置Sが設置されている。なお、変形量記録装置Sの実施例である変位センサや検知センサなどが内蔵されているアンボンドブレスを適用してもよい。
なお、二階以上の制震ブレスBrの取り付け箇所にも変形量記録装置Sを設置してもよいが、本発明の推定方法では、一階の任意の制震ブレスBrの取り付け箇所に変形量記録装置Sを一基設置しておけばよい。
一方、図1(b)で示す建物BのモデルM2は、柱Cと梁Beが格子状に組み付けられてフレーム構造を形成し、基礎に免震装置ISが設置されている。なお、各格子内には一般の鋼製ブレスなどが配設されていてもよい。
次に、建物AのモデルM1を推定対象とした場合の損傷部位の推定方法(推定方法の実施の形態1)を図2を用いて、建物BのモデルM2を推定対象とした場合の損傷部位の推定方法(推定方法の実施の形態2)を図3を用いてそれぞれ説明する。
まず、図2で示す推定方法の実施の形態1に関し、第1のステップS1として、建物Aの一階の制震ブレス取付け箇所に変形量記録装置を設置する。
次に、第2のステップS2として、地震発生後、変形量記録装置で取得された変形量に基づいて一階の制震ブレス取付け箇所の水平変位を算定する。
具体的には、変形量記録装置にて水平変位の時刻歴波形が記録されており、この波形の中から水平変位の最大値を選択し、一階の水平変位とすることができる。
第2のステップS2ではさらに、建物の一次固有モードの算定もおこなう。
具体的には、コンピュータ内で建物モデルを構築し、固有値解析を実行することで、一次固有モード、二次固有モードと、構造モデルに応じた次数の固有モードを特定し、その中から影響度の高い一次固有モードのみを抽出する。
次に、第3のステップS3として、建物の一次固有モードから一階の水平変位と、該一階の水平変位に対する各階の水平変位の比率を特定し、第2のステップS2で算定されている一階の制震ブレス取付け箇所の水平変位と一次固有モードにて特定されている水平変位の比率(一階の水平変位を基準とした際の各階の水平変位の比率)から各階の水平変位を算定する。
なお、第2のステップS2では、一次固有モードの特定の他にも各階の水平変位の比率が自動的にコンピュータ内にて特定されており、この比率を使用することができる。
最後に、第4のステップS4として、コンピュータ内における建物モデルに対し、静的弾塑性解析を実行し、各層の各部材の損傷の有無を判断する。
ここで、コンピュータ内で構築された建物モデルを構成する柱部材や梁部材には、それぞれに固有の剛性や荷重−変形量特性もしくは荷重−モーメント特性などが割り当てられている。
静的弾塑性解析では、第3のステップで算定された各層の水平変位をコンピュータ内の建物モデルの各層に強制的に付与し、その際に各層の各部材に発生する応力(せん断応力、曲げ応力、引張応力、圧縮応力等)を算定する。
静的弾塑性解析にて算定された各部材における発生応力と各部材の具備する降伏応力との比較がおこなわれ、たとえば部材が弾性域を超えて塑性域に達している場合は当該部材が損傷していると判断し、部材が弾性域にある場合は損傷していないと判断することにより、建物モデルにおける損傷部位が推定される。
次に、図3で示す推定方法の実施の形態2に関し、第1のステップS1’として、建物Bの基礎(基礎階)の免震装置取付け箇所に変形量記録装置を設置する。
次に、第2のステップS2’として、地震発生後、基礎の等価剛性の算定をおこなう。
具体的には、図4で示すように、免震層(基礎階)の変形−層せん断力関係グラフにおいて、変形ゼロ−層せん断力ゼロの中心点と変形量最大値の点を結んで等価剛性を算定する。この等価剛性は、一次固有モードを算定する固有値解析に適用される。
第2のステップS2’ではさらに、変形量記録装置で取得された変形量に基づいて基礎階の免震装置取付け箇所の水平変位を算定し、さらに、建物の一次固有モードの算定もおこなう。
ここで、基礎階の水平変位の特定方法の一例として、図5で示すように、変形量記録装置で取得された水平変位の時刻歴波形の中から水平変位の最大値を特定し、基礎階の水平変位とする。
また、固有値解析にて特定される一次固有モードは、図6で示すようなモード図としてコンピュータ画面上に表示される。
第3のステップS3’では、建物の一次固有モードから基礎階の水平変位と、該基礎階の水平変位に対する各階の水平変位の比率を特定し、第2のステップS2’で算定されている基礎階の免震装置取付け箇所の水平変位と一次固有モードにて特定されている水平変位の比率(基礎階の水平変位を基準とした際の各階の水平変位の比率)から各階の水平変位を算定する。なお、図6で示すコンピュータ内では、基礎階の水平変位を基準として、各階の水平変位の比率が自動計算されている。
最後に、第4のステップS4’として、コンピュータ内における建物モデルに対し、静的弾塑性解析を実行し、各層の各部材の損傷の有無を判断する。
このように、図2,3で示す本発明の建物の損傷部位の推定方法によれば、少なくとも一階に制震ブレスを備えた建物A、もしくは基礎に免震装置を備えた建物Bに関し、一階もしくは基礎にのみに変形量記録装置を設置しておき、固有値解析にて一次固有モードから一階もしくは基礎の水平変位に対する各階の水平変位の比率を算定し、制震ブレス取付け箇所の水平変位もしくは免震装置取り付け箇所の水平変位から各階の水平変位を特定し、静的弾塑性解析にて建物A,Bの各階の各部材の応力を計算して損傷の有無を特定することより、たとえば一基の変形量記録装置(地震計)のみを使用して、簡易な方法にて、高精度に損傷部位の有無を推定することが可能になる。
(本発明の推定方法の精度を検証した解析とその結果)
本発明者等は、本発明の推定方法の精度を検証する解析をおこなった。具体的には、10階の建物モデルをコンピュータ内に構築し、上部構造の降伏応力度を235N/mm2とし、従来の地震応答解析と本発明の推定方法に基づく解析をそれぞれ実行し、各解析での損傷部位を特定し、比較したものである。
図7は地震応答解析によって推定された建物損傷部位を示した図であり、図8は本発明の推定方法によって推定された建物損傷部位を示した図である。また、図9は図7,8の結果をまとめたテーブルである。なお、図7,8において、黒塗り箇所は部材が塑性域に達し、損傷していると判断された箇所である。また、図8において、丸で囲んだ箇所は図7,8の結果に齟齬がある箇所を示している。たとえば、図8で丸のみが記載されている箇所は、図7で示す地震応答解析では損傷と判断されたにもかかわらず、図8で示す本発明の推定方法では損傷していないと判断された箇所であり、丸と黒塗りがともに記載されている箇所は、図7で示す地震応答解析では損傷なしと判断されたにもかかわらず、図8で示す本発明の推定方法では損傷ありと判断された箇所である。さらに、図10〜13にはそれぞれ、基礎階、一階、五階および最上階(十階)の地震応答解析と本発明の推定方法による層間変形角−層せん断力関係図を示している。
図7〜9より、解析に時間を要し、解析精度が極めて高い従来から適用されている地震応答解析の結果を正とした場合に、本発明の推定方法の誤診率は柱で33%、梁で18%と極めて低い結果となっており、推定方法の簡便性、変形量記録装置の設置基数の少なさ等を総合勘案すれば、簡易かつ安価な方法で、精度よく建物部位の損傷有無を特定できることが検証されている。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
M1…建物Aのモデル、M2…建物Bのモデル、C…柱、Be…梁、Br…制震ブレス、IS…免震装置、S…変形量記録装置

Claims (2)

  1. 少なくとも一階に制震ブレスが設置されている建物Aの制震ブレス取付け箇所に変形量記録装置を設置しておく第1のステップ、
    変形量記録装置で取得された変形量に基づいて前記一階の制震ブレス取付け箇所の水平変位を算定し、建物の一次固有モードを求める第2のステップ、
    建物の一次固有モードから一階の水平変位と該一階の水平変位に対する各階の水平変位の比率を特定し、第2のステップで算定されている一階の制震ブレス取付け箇所の水平変位と前記比率から各階の水平変位を算定する第3のステップ、
    第3のステップで算定された建物の各階に固有の水平変位を各階に付与し、静的弾塑性解析にて各階の各部材の応力を計算し、計算された応力と各部材の降伏応力との比較をおこなって建物の損傷部位の推定をおこなう第4のステップからなる、建物の損傷部位の推定方法。
  2. 一階下の基礎に免震装置が設置されている建物Bの該基礎に変形量記録装置を設置しておく第1のステップ、
    変形量記録装置で取得された変形量の最大値を用いて、前記基礎の等価剛性を算定し、さらに、変形量記録装置で取得された変形量に基づいて基礎の水平変位を算定し、建物の一次固有モードを求める第2のステップ、
    建物の一次固有モードから基礎の水平変位と該基礎の水平変位に対する各階の水平変位の比率を特定し、第2のステップで算定されている基礎の水平変位と前記比率から各階の水平変位を算定する第3のステップ、
    第3のステップで算定された建物の各階に固有の水平変位を各階に付与し、静的弾塑性解析にて各階の各部材の応力を計算し、計算された応力と各部材の降伏応力との比較をおこなって建物の損傷部位の推定をおこなう第4のステップからなる、建物の損傷部位の推定方法。
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