JP7066427B2 - フィルム延伸装置および延伸フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルム延伸装置および延伸フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置において、表示特性の向上や反射防止を目的として円偏光板が用いられている。円偏光板は、代表的には、偏光子と位相差フィルム(代表的にはλ/4板)とが、偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが45°の角度をなすようにして積層されている。従来、位相差フィルムは、代表的には、縦方向および/または横方向に一軸延伸または二軸延伸することにより作製されているので、その遅相軸は、多くの場合、フィルム原反の横方向(幅方向)または縦方向(長尺方向)に発現する。結果として、円偏光板を作製するには、位相差フィルムを幅方向または長尺方向に対して45°の角度をなすように裁断し、1枚ずつ貼り合わせる必要があった。
このような問題を解決するために、長尺状のフィルムの左右端部(幅方向の端部)をそれぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持し、該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、斜め方向に延伸することにより、位相差フィルムの遅相軸を斜め方向に発現させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このような斜め延伸技術によれば、延伸倍率の増大に伴って、フィルムが破断する等の問題が生じ得る。
特許第4845619号
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、延伸倍率の増大に起因するフィルムの破断を抑制することにある。
本発明の1つの局面によれば、クリップ式フィルム延伸装置が提供される。該クリップ式フィルム延伸装置は、延伸対象のフィルムの左右端部を把持して延伸ゾーンを通過走行するとともに、該通過走行に伴って縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップを有し、該クリップが、該フィルムの左右の端辺から20mm以上の距離の位置を把持する。
1つの実施形態において、上記クリップが、上記フィルムを上方から挟み込む上側把持部材と下方から挟み込む下側把持部材とを有し、該上側把持部材の下面および該下側把持部材の上面との重なりによって規定されるフィルム把持面の該クリップの走行方向と直交する方向における長さが、15mm以上である。
1つの実施形態において、上記クリップが、上記フィルムを上方から挟み込む上側把持部材と下方から挟み込む下側把持部材とを有し、該上側把持部材の下面および該下側把持部材の上面との重なりによって規定されるフィルム把持面の該クリップの走行方向における長さが、30mm以上である。
本発明の別の局面によれば、位相差フィルムの製造方法が提供される。該位相差フィルムの製造方法は、延伸対象のフィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること、該フィルムを予熱すること、該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、該フィルムを斜め延伸すること、および、該フィルムを把持するクリップを開放すること、を含み、該フィルムの左右の端辺から20mm以上の距離の位置を該左右のクリップによって把持する。
1つの実施形態において、上記斜め延伸が、横延伸を含む。
1つの実施形態において、上記位相差フィルムの製造方法は、上記クリップ式フィルム延伸装置を用いて行われる。
本発明の位相差フィルムの製造方法によれば、長尺状のフィルムの左右の端辺(幅方向の端辺)から所定以上の距離の位置をクリップで把持して延伸を行う。これにより、フィルムの破断を抑制することができる。さらには、ネックイン量を低減して、得られた位相差フィルムの有効幅を向上することができる。当該効果は、フィルム把持面の幅や長さを所定の値以上として、広面積化することにより、さらに向上し得る。
本発明の1つの実施形態による延伸装置の全体構成を説明する概略平面図である。 図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、クリップピッチが最小の状態を示す。 図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、クリップピッチが最大の状態を示す。 クリップの構成および開状態を説明する要部概略側面図である。 クリップの構成および閉状態を説明する要部概略側面図である。 フィルム把持面の掴み代および掴み長さ、クリップ位置、クリップピッチ等を説明する概略図である。 斜め延伸の一例を説明する模式図である。 図7に示す斜め延伸の各工程とクリップピッチとの関係を示すグラフである。 斜め延伸の一例と式(1)との関係を説明する概略図である。 斜め延伸の一例における左右それぞれのクリップ移動速度および式(1)を説明する概略図である。 斜め延伸の別の例における左右それぞれのクリップ移動速度および式(1)を説明する概略図である。 ネックイン量の測定方法を説明するためにフィルム端部を拡大した概略図である。 クリップによるフィルム端部の把持状態を水平方向から見た概略図である。
A.フィルム延伸装置
本発明の1つの局面によれば、延伸対象のフィルムの左右端部(幅方向の端部)を把持して延伸ゾーンを通過走行するとともに、該通過走行に伴って少なくとも一方の縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップを有し、該クリップが該フィルムの左右の端辺から20mm以上の距離の位置を把持する、クリップ式フィルム延伸装置が提供される。以下、本発明のフィルム延伸装置の1つの実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
図1~図5を参照して、本発明のフィルム延伸装置の1つの実施形態について説明する。図1は、本発明のフィルム延伸装置の一例の全体構成を説明する概略平面図である。図2および図3は、それぞれ、図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、図2はクリップピッチが最小の状態を示し、図3はクリップピッチが最大の状態を示す。また、図4および図5は、クリップの構成および開閉状態を説明する要部概略側面図である。
図1に示すとおり、延伸装置100は、平面視で、左右両側に、フィルム把持用の多数のクリップ20を有する無端ループ10Lと無端ループ10Rとを左右対称に有する。なお、本明細書においては、フィルムの入口側から見て左側の無端ループを左側の無端ループ10L、右側の無端ループを右側の無端ループ10Rと称する。左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20は、それぞれ、基準レール70に案内されてループ状に巡回移動する。左側の無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。延伸装置においては、シートの入口側から出口側へ向けて、把持ゾーンA、予熱ゾーンB、延伸ゾーンC、および開放ゾーンDが順に設けられている。なお、これらのそれぞれのゾーンは、延伸対象となるフィルムが実質的に把持、予熱、延伸、およびクリップから開放されるゾーンを意味し、機械的、構造的に独立した区画を意味するものではない。また、それぞれのゾーンの長さの比率は、実際の長さの比率と異なることに留意されたい。さらに、図示しないが、延伸ゾーンCと開放ゾーンDとの間には、必要に応じて任意の適切な処理をするためのゾーンが設けられてもよい。このような処理としては、縦収縮処理、横延伸処理等が挙げられる。
把持ゾーンAおよび予熱ゾーンBでは、左右の無端ループ10L、10Rは、延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。延伸ゾーンCでは、予熱ゾーンBの側から開放ゾーンDに向かうに従って左右の無端ループ10L、10Rの離間距離が上記フィルムの延伸後の幅に対応するまで徐々に拡大する構成とされている。開放ゾーンDでは、左右の無端ループ10L、10Rは、上記フィルムの延伸後の幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。
左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ独立して巡回移動し得る。例えば、左側の無端ループ10Lの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって反時計廻り方向に回転駆動され、右側の無端ループ10Rの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって時計廻り方向に回転駆動される。その結果、これら駆動用スプロケット11、12に係合している駆動ローラ(図示せず)のクリップ担持部材30に走行力が与えられる。これにより、左側の無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。左側の電動モータおよび右側の電動モータを、それぞれ独立して駆動させることにより、左側の無端ループ10Lおよび右側の無端ループ10Rをそれぞれ独立して巡回移動させることができる。
さらに、左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ可変ピッチ型である。すなわち、左右のクリップ20、20は、それぞれ独立して、移動に伴って縦方向のクリップピッチが変化し得る。可変ピッチ型の構成は、パンタグラフ方式、リニアモーター方式、モーター・チェーン方式等の公知の駆動方式を採用することにより実現され得る。以下、一例として、リンク機構(パンタグラフ機構)について説明する。
図2および図3に示すように、クリップ20を個々に担持する平面視横方向に細長矩形状のクリップ担持部材30が設けられている。図示しないが、クリップ担持部材30は、上梁、下梁、前壁(クリップ側の壁)、および後壁(クリップと反対側の壁)により閉じ断面の強固なフレーム構造に形成されている。クリップ担持部材30は、その両端の走行輪38により走行路面81、82上を転動するよう設けられている。なお、図2および図3では、前壁側の走行輪(走行路面81上を転動する走行輪)は図示されない。走行路面81、82は、全域に亘って基準レール70に並行している。クリップ担持部材30の上梁と下梁の後側(クリップと反対側)には、クリップ担持部材の長手方向に沿って長孔31が形成され、スライダ32が長孔31の長手方向にスライド可能に係合している。クリップ担持部材30のクリップ20側端部の近傍には、上梁および下梁を貫通して一本の第1の軸部材33が垂直に設けられている。一方、クリップ担持部材30のスライダ32には一本の第2の軸部材34が垂直に貫通して設けられている。各クリップ担持部材30の第1の軸部材33には主リンク部材35の一端が枢動連結されている。主リンク部材35は、他端を隣接するクリップ担持部材30の第2の軸部材34に枢動連結されている。各クリップ担持部材30の第1の軸部材33には、主リンク部材35に加えて、副リンク部材36の一端が枢動連結されている。副リンク部材36は、他端を主リンク部材35の中間部に枢軸37によって枢動連結されている。主リンク部材35、副リンク部材36によるリンク機構により、図2に示すように、スライダ32がクリップ担持部材30の後側(クリップ側の反対側)に移動しているほど、縦方向に隣接するクリップ担持部材30同士のピッチ(結果として、担持されているクリップ同士のピッチ)が小さくなり、図3に示すように、スライダ32がクリップ担持部材30の前側(クリップ側)に移動しているほど、当該ピッチが大きくなる。スライダ32の位置決めは、ピッチ設定レール90により行われる。図2および図3に示すように、当該ピッチが大きいほど、基準レール70とピッチ設定レール90との離間距離が小さくなる。なお、リンク機構は当業界において周知であるので、より詳細な説明は省略する。
クリップ20は、フィルム200を係脱可能に把持する。図4および図5に例示する実施形態において、クリップ20は、略コの字型の縦断面形状を有するクリップ本体21と、クリップ本体21に装着された下側把持部材22と、取付軸部材23によってクリップ本体21に回動可能に取り付けられた昇降レバー24と、昇降レバー24の下端に取付軸部材25によって揺動可能に取り付けられた上側把持部材26と、を有する。
下側把持部材22は、ネジ装着、接着、溶着等の任意の固定方法よってクリップ本体21に固定されている。
上側把持部材26は、昇降レバー24の回動に伴って昇降移動する。具体的には、上側把持部材26は、昇降レバー24が垂直方向へ起立するに伴ってフィルムの幅方向外方に向かって斜めに持ち上げられる。このとき、クリップは開いており、フィルムを把持しない(図4)。一方、昇降レバー24が取付軸部材23を中心として斜め方向に回動すると、上側把持部材26もフィルム幅方向内方に向かって斜めに降下して、下側把持部材22とともにフィルム200の端部を挟み込んで把持する(図5)。なお、図4および図5は、いわゆるスライドイン方式でフィルムを把持するクリップを図示するが、図示例とは異なり、上側把持部材が垂直方向に降下することによりフィルムを把持する方式であってもよい。また、上側把持部材26は、昇降レバーと別個の部材である必要はなく、昇降レバーの下端に一体的に形成されてもよい。
フィルムを把持する際、クリップ(具体的には、上側把持部材および下側把持部材)は、長尺状のフィルムの左右の端辺(幅方向の端辺)から20mm以上、好ましくは25mm以上の距離の位置を把持する。図6を参照しながらより詳細に説明すると、フィルム200の端辺からフィルム把持面28のフィルム幅方向最内部(以下、「クリップ位置」とも称する)までの距離Dが20mm以上となるようにフィルムを把持する。このような位置をクリップで把持することにより、フィルムの破断が抑制される。また、ネックインも抑制される結果、均一に延伸された領域が広がるので、有効面積が広くなるという効果が得られ得る。フィルムの端辺からクリップ位置までの距離の上限は、例えば、60mmとすることができる。なお、本明細書において、フィルム把持面とは、上側把持部材と下側把持部材とに挟まれるフィルム面を意味し、フィルム把持時の上側把持部材の下面と下側把持部材の上面との重なりによって規定される。クリップ位置は、例えば、基準レールの離間距離を調整することによって制御することができる。
上側把持部材26の下面と下側把持部材22の上面とは、互いに同一の形状であってもよく、異なる形状であってもよい。また、フィルムを把持した際に、上側把持部材26の下面と下側把持部材22の上面とは、完全に重なっていてもよく、重なっていない部分があってもよい。重なっていない部分がある場合、上側把持部材26の下面のフィルム幅方向最内部と下側把持部材22の上面のフィルム幅方向最内部が同じ位置になるように重なること(換言すれば、これらの面のフィルム幅方向最内部が、クリップ位置となること)が好ましい。
図6に示すように、クリップの走行方向(基準レールの延びる方向)におけるフィルム把持面28の長さを掴み長さ(L)とし、クリップの走行方向と直交する方向におけるフィルム把持面28の長さを掴み代(W)としたとき、掴み代(W)は、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは25mm以上である。掴み代(W)は、例えば、60mm以下とすることができる。一方、掴み長さ(L)は、例えば20mm以上、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上である。掴み長さ(L)は、例えば、80mm以下とすることができる。掴み代または掴み長さをこのような範囲とすることにより、フィルム把持面が広面となるので、クリップ周縁への応力集中が緩和されてフィルムの破断が抑制される。また、クリップ(具体的には、上側把持部材および下側把持部材)がフィルムの変形を阻止する壁のように作用して、ネックインを抑制することができる。
また、下記式で表される把持比率が、50%以上であることが好ましい。把持比率は、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上である。把持比率がこのような範囲内であれば、フィルムの破断およびネックインを抑制することができる。さらには、クリップ開放時にフィルムがクリップに引っかかって変形または破断することを防止し得る。
把持比率(%)= 掴み代/フィルム端辺からクリップ位置までの距離×100
B.位相差フィルムの製造方法
本発明の別の局面によれば、延伸対象のフィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること(把持工程)、該フィルムを予熱すること(予熱工程)、該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、該フィルムを斜め延伸すること(斜め延伸工程)、および該フィルムを把持するクリップを開放すること(開放工程)、を含み、該把持工程において、該左右のクリップによってそれぞれ、該フィルムの左右の端辺から20mm以上の距離の位置を把持する、位相差フィルムの製造方法が提供される。当該位相差フィルムの製造方法は、上記A項に記載の延伸装置を用いることにより、好適に行われる。また、当該位相差フィルムの製造方法によれば、斜め方向(例えば、縦方向に対して45°の方向)に遅相軸を有する位相差フィルムを、フィルムの破断およびネックインを抑制しつつ効率よく作製することができる。以下、各工程について詳細に説明する。なお、本明細書において、「縦方向のクリップピッチ」(単に「クリップピッチ」と称される場合がある)とは、縦方向に隣接するクリップの走行方向における中央間距離(より具体的には、フィルム把持面の走行方向における中央間距離)を意味し、図6のPで表される距離である。
[B-1.把持工程]
延伸対象となるフィルムは、まず、把持ゾーンA(延伸装置100のフィルム取り込みの入り口)において、左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20によって、その両端部を互いに等しい一定のクリップピッチ、あるいは、互いに異なるクリップピッチで把持される。把持工程における左右のクリップのクリップピッチは、所望の位相差、軸角度等に応じて適切に設定され得る。該クリップピッチは、例えば50mm~180mmであり得る。なお、本明細書において、フィルムの端部とは、フィルム端辺からフィルム全幅の1割の領域を意味する。
把持工程におけるクリップ位置は、フィルムの左右の端辺から20mm以上、好ましくは25mm以上の距離の位置である。フィルムの端辺からクリップ位置までの距離は、例えば、60mm以下とすることができる。このような位置をクリップで把持することにより、フィルムの破断が抑制される。また、ネックインが抑制される結果、均一に延伸された領域が広がるので、有効面積が広くなるという効果が得られ得る。
また、フィルム把持面が広面であることが好ましい。フィルム把持面を広面とすることにより、クリップへの応力集中が緩和されてフィルムの破断が抑制される。また、クリップがフィルムの変形を阻止する壁のように作用して、ネックインを抑制することができる。具体的には、上記A項に記載したとおり、クリップによる掴み代(W)は、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは25mm以上であり、例えば60mm以下とすることができる。また、掴み長さ(L)は、例えば20mm以上、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上であり、例えば、80mm以下とすることができる。
フィルムは、クリップに把持された状態で、横延伸も縦延伸も行われることなく、左右の無端ループ10L、10Rの移動(実質的には、基準レール70に案内された各クリップ担持部材の移動)により、予熱ゾーンBに送られる。
[B-2.予熱工程]
予熱ゾーンBにおいては、左右の無端ループ10L、10Rは、上記のとおり延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されているので、基本的には横延伸も縦延伸も行わず、フィルムが加熱される。ただし、予熱によりフィルムのたわみが起こり、オーブン内のノズルに接触するなどの不具合を回避するために、わずかに左右クリップ間の距離(幅方向の距離)を広げてもよい。
予熱においては、フィルムを温度T1(℃)まで加熱する。温度T1は、フィルムのガラス転移温度(Tg)以上であることが好ましく、より好ましくはTg+2℃以上、さらに好ましくはTg+5℃以上である。一方、加熱温度T1は、好ましくはTg+40℃以下、より好ましくはTg+30℃以下である。用いるフィルムにより異なるが、温度T1は、例えば70℃~190℃であり、好ましくは80℃~180℃である。
上記温度T1までの昇温時間および温度T1での保持時間は、フィルムの構成材料や製造条件(例えば、フィルムの搬送速度)に応じて適切に設定され得る。これらの昇温時間および保持時間は、クリップ20の移動速度、予熱ゾーンの長さ、予熱ゾーンの温度等を調整することにより制御され得る。
[斜め延伸工程]
延伸ゾーンCにおいては、左右のクリップ20の少なくとも一方の縦方向のクリップピッチを変化させて、フィルムを斜め延伸する。斜め延伸は、横延伸を含んでもよく、含まなくてもよい。例えば、図示例のように、左右のクリップ間の距離(幅方向の距離)を拡大させながら行われてもよく、あるいは、図示例とは異なり、左右のクリップ間の距離を維持したまま行われてもよい。好ましくは、斜め延伸は、横延伸を含む。
斜め延伸が横延伸を含む場合、横方向(TD)の延伸倍率(フィルムの初期幅Winitialに対する斜め延伸後のフィルムの幅Wfinalの比(Wfinal/Winitial)は、好ましくは1.05~6.00であり、より好ましくは1.10~5.00である。
1つの実施形態において、斜め延伸は、上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチが増大または減少し始める位置と他方のクリップのクリップピッチが増大または減少し始める位置とを縦方向における異なる位置とした状態で、それぞれのクリップのクリップピッチを所定のピッチまで増大または減少することによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特許文献1、特開2014-238524号公報等の記載を参照することができる。
別の実施形態において、斜め延伸は、上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチを固定したまま、他方のクリップのクリップピッチを所定のピッチまで増大または減少させた後、当初のクリップピッチまで戻すことによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特開2013-54338号公報、特開2014-194482号公報等の記載を参照することができる。
さらに別の実施形態において、斜め延伸は、(i)上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチを増大させつつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させること、および、(ii)該減少したクリップピッチと該拡大したクリップピッチとが所定の等しいピッチとなるように、それぞれのクリップのクリップピッチを変化させることによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特開2014-194484号公報等の記載を参照することができる。当該実施形態の斜め延伸は、左右のクリップ間の距離を拡大させながら、一方のクリップのクリップピッチを増大させつつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させて、該フィルムを斜め延伸すること(第1の斜め延伸工程)、および、該左右のクリップ間の距離を拡大させながら、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように該一方のクリップのクリップピッチを維持または減少させ、かつ、該他方のクリップのクリップピッチを増大させて、該フィルムを斜め延伸すること(第2の斜め延伸工程)を含み得る。
上記第1の斜め延伸工程においては、フィルムの一方の側縁部を長手方向に伸長させつつ、他方の側縁部を長手方向に収縮させながら斜め延伸を行うことにより、所望の方向(例えば、長手方向に対して45°の方向)に高い一軸性および面内配向性で遅相軸を発現させることができる。また、第2の斜め延伸工程においては、左右のクリップピッチの差を縮小しながら斜め延伸を行うことにより、余分な応力を緩和しつつ、斜め方向に十分に延伸することができる。さらに、左右のクリップの移動速度が等しくなった状態でフィルムを開放工程に供することができるので、左右のクリップの開放時にフィルムの搬送速度等のバラつきが生じ難く、その後のフィルムの巻き取りが好適に行われ得る。
以下、当該実施形態の斜め延伸の一例を、図7および図8を参照しながら具体的に説明する。まず、予熱ゾーンBにおいては、左右のクリップピッチはともにPとされている。Pは、代表的にはフィルムを把持した際のクリップピッチである。次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンC1に入ると同時に、一方の(図示例では右側)クリップのクリップピッチの増大を開始し、かつ、他方の(図示例では左側)クリップのクリップピッチの減少を開始する。第1の斜め延伸ゾーンC1においては、右側クリップのクリップピッチをPまで増大させ、左側クリップのクリップピッチをPまで減少させる。したがって、第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部(第2の斜め延伸ゾーンC2の開始部)において、左側クリップはクリップピッチPで移動し、右側クリップはクリップピッチPで移動することとされている。なお、クリップピッチの比はクリップの移動速度の比に概ね対応し得る。よって、左右のクリップのクリップピッチの比は、フィルムの右側側縁部と左側側縁部の縦方向(MD方向)の延伸倍率の比に概ね対応し得る。
図7および図8では、右側クリップのクリップピッチが増大し始める位置および左側クリップのクリップピッチが減少し始める位置をともに第1の斜め延伸ゾーンC1の開始部としているが、図示例とは異なり、右側クリップのクリップピッチが増大し始めた後に左側クリップのクリップピッチが減少し始めてもよく、左側クリップのクリップピッチが減少し始めた後に右側クリップのクリップピッチが増大し始めてもよい(図示せず)。1つの好ましい実施形態においては、一方の側のクリップのクリップピッチが増大し始めた後に他方の側のクリップのクリップピッチが減少し始める。このような実施形態によれば、既にフィルムが幅方向に一定程度(好ましくは1.2倍~2.0倍程度)延伸されていることから該他方の側のクリップピッチを大きく減少させてもシワが発生しにくい。よって、より鋭角な斜め延伸が可能となり、一軸性および面内配向性の高い位相差フィルムが好適に得られ得る。
同様に、図7および図8では、第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部(第2の斜め延伸ゾーンC2の開始部)まで右側クリップのクリップピッチの増大および左側クリップのクリップピッチの減少が続いているが、図示例とは異なり、クリップピッチの増大または減少のいずれか一方が第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部よりも前に終了し、第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部までクリップピッチがそのまま維持されてもよい。
上記増大するクリップピッチの変化率(P/P)は、好ましくは1.05~1.75、より好ましくは1.10~1.70、さらに好ましくは1.15~1.65である。また、減少するクリップピッチの変化率(P/P)は、例えば0.50以上1未満、好ましくは0.50~0.95、より好ましくは0.55~0.93、さらに好ましくは0.55~0.90である。クリップピッチの変化率がこのような範囲内であれば、フィルムの長手方向に対して概ね45度の方向に高い一軸性および面内配向性で遅相軸を発現させることができる。
クリップピッチは、上記のとおり、延伸装置のピッチ設定レールと基準レールとの離間距離を調整してスライダを位置決めすることにより、調整され得る。
第1の斜め延伸工程におけるフィルムの幅方向の延伸倍率(W/W)は、好ましくは1.05倍~3.0倍、より好ましくは1.1倍~2.5倍、さらに好ましくは1.15倍~2.0倍である。当該延伸倍率が1.05倍未満であると、収縮させた側の側縁部にトタン状のシワが生じる場合がある。また、当該延伸倍率が3.0倍を超えると、得られる位相差フィルムの二軸性が高くなってしまい、円偏光板等に適用した場合に視野角特性が低下する場合がある。
1つの実施形態において、第1の斜め延伸は、一方のクリップのクリップピッチの変化率と他方のクリップのクリップピッチの変化率との積が、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.8~1.45、さらに好ましくは0.85~1.40となるように行われる。変化率の積がこのような範囲内であれば、一軸性および面内配向性の高い位相差フィルムが得られ得る。
続いて、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンC2に入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始する。第2の斜め延伸ゾーンC2においては、左側クリップのクリップピッチをPまで増大させる。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンC2においてPのまま維持される。したがって、第2の斜め延伸ゾーンC2の終端部(開放ゾーンDの開始部)において、左側クリップおよび右側クリップはともに、クリップピッチPで移動することとされている。
上記増大するクリップピッチの変化率(P/P)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて制限はない。該変化率(P/P)は、例えば1.1~4.0、好ましくは1.2~3.0である。
1つの実施形態において、第1の斜め延伸および第2の斜め延伸は、以下の式(1)から求められる斜め延伸倍率Sが、例えば1.5以上、好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.0~4.0、さらに好ましくは2.5~3.5となるように行われる。当該斜め延伸倍率が1.5未満であると、二軸性が高くなる場合や面内配向性が低くなる場合がある。
Figure 0007066427000001
(式中、
は、第1の斜め延伸前のフィルム幅、
は、第2の斜め延伸後のフィルム幅、
v3’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第2の斜め延伸工程で所定のクリップピッチに変化した際のクリップ移動速度、
t3は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップが、予熱ゾーンに入ってから、第2の斜め延伸工程が終了するまでの時間、
t3’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップが、予熱ゾーンに入ってから、第2の斜め延伸工程が終了するまでの時間
を表す。)
上記v3’に関して、所定のクリップピッチとは、第1の斜め延伸工程において増大が完了したクリップピッチが第2の斜め延伸工程で維持された場合のクリップピッチ(図7および図8を用いた説明におけるPに対応する)あるいは減少した後のクリップピッチを意味する。また、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第1の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図7および図8を用いた説明におけるPに対応する)に変化された際の該クリップの移動速度をv2’とすると、
v2’=v3’の場合は、上記t3は下記式(2)、上記t’3は下記式(3)で表され、
v2’>v3’の場合は、上記t3は下記式(4)、上記t’3は下記式(5)で表される。
以下、式(2)~(5)について説明する。式中の各記号の説明おいては、図9~11を参考とすることができる。なお、式(1)~(5)中のアスタリスクマーク(*)は乗算記号である。また、フィルム幅の単位はm、速度の単位はm/sec、距離の単位はm、時間の単位はsecである。
Figure 0007066427000002
(式中、
a1=(v2-v3)/(L2-L3)、
b1=v3-a1*L3、
a=(v1-v2)/(L1-L2)、
b=v2-a*L2であり、
v1は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップが予熱ゾーンを通過する際のクリップ移動速度、
v2は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第1の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図7および図8を用いた説明におけるPに対応する)に減少した際のクリップ移動速度、
v3は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第2の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図7および図8を用いた説明におけるPに対応する)に増大した際のクリップ移動速度であり、
L1は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップがクリップピッチを減少し始めるまでの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から予熱ゾーン出口までの距離)、
L2は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップがクリップピッチを増大し始める箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第1の斜め延伸ゾーン出口までの距離)、
L3は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップがクリップピッチを増大し終わる箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第2の斜め延伸ゾーン出口までの距離)
である。)
Figure 0007066427000003
(式中、
a’=(v1’-v2’)/(L1’-L2’)、
b’=v3’-a’*L2’であり、
v1’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップが予熱ゾーンを通過する際のクリップ移動速度、
v2’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第1の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図7および図8を用いた説明におけるPに対応する)に増大した際のクリップ移動速度、
v3’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップが第2の斜め延伸ゾーンを通過する際のクリップ移動速度であり、
L1’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップがクリップピッチを増大し始めるまでの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から予熱ゾーン出口までの距離)、
L2’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップがクリップピッチを増大し終わる箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第1の斜め延伸ゾーン出口までの距離)、
L3’は、予熱ゾーン入口から、第2の斜め延伸ゾーン出口までの距離
である。)
Figure 0007066427000004
(式中、a1、b1、a、b、v1、v2、v3、L1、L2およびL3は、式(2)に関して定義したとおりである。)
Figure 0007066427000005
(式中、
a’=(v1’-v2’)/(L1’-L2’)、
b’=v2’-a’*L2’、
a’’=(v2’-v3’)/(L2’-L3’)、
b’’=v3’-a’’*L3’であり、
v1’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップが予熱ゾーンを通過する際のクリップ移動速度、
v2’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第1の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図7および図8を用いた説明におけるPに対応する)に増大した際のクリップ移動速度、
v3’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第2の斜め延伸工程で所定のクリップピッチに減少した際のクリップ移動速度であり、
L1’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップがクリップピッチを増大し始める箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から予熱ゾーン出口までの距離)、
L2’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップがクリップピッチを増大し終わる箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第1の斜め延伸ゾーン出口までの距離)、
L3’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップが第2の斜め延伸工程でクリップピッチを所定のクリップピッチに減少し終わる箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第2の斜め延伸ゾーン出口までの距離)である。)
斜め延伸は、代表的には、温度T2で行われ得る。温度T2は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg-20℃~Tg+30℃であることが好ましく、さらに好ましくはTg-10℃~Tg+20℃、特に好ましくはTg程度である。用いる樹脂フィルムにより異なるが、温度T2は、例えば70℃~180℃であり、好ましくは80℃~170℃である。上記温度T1と温度T2との差(T1-T2)は、好ましくは±2℃以上であり、より好ましくは±5℃以上である。1つの実施形態においては、T1>T2であり、したがって、予熱ゾーンで温度T1まで加熱されたフィルムは温度T2まで冷却され得る。
上記縦収縮処理および横延伸処理は、斜め延伸後に行われる。斜め延伸後のこれらの処理については、特開2014-194483号公報の0029~0032段落を参照することができる。
[開放工程]
最後に、フィルムを把持するクリップを開放して、位相差フィルムが得られる。通常、フィルムをTg以下まで冷却した後にクリップを開放する。必要に応じて、フィルムを熱処理して延伸状態を固定し、冷却した後にクリップを開放する。
熱処理は、代表的には、温度T3で行われ得る。温度T3は、延伸されるフィルムによって異なり、T2≧T3の場合も、T2<T3の場合もあり得る。一般的に、フィルムが非晶性材料である場合はT2≧T3であり、結晶性材料である場合はT2<T3にすることで結晶化処理を行う場合もある。T2≧T3の場合、温度T2とT3の差(T2-T3)は好ましくは0℃~50℃である。熱処理時間は、代表的には10秒~10分である。
クリップを開放後、フィルムは、両端のクリップ把持部分がカットされ、ロール状に巻き取られ得る。
C.延伸対象のフィルムおよび延伸により得られる位相差フィルム
本発明の製造方法に好適に用いられるフィルムとしては、位相差フィルムとして用いられ得る任意の適切な長尺状のフィルムが挙げられる。延伸対象のフィルムの幅は、例えば300mm以上、好ましくは500mm以上、より好ましくは500mm~2000mmである。
上記フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂である。これらの樹脂であれば、いわゆる逆分散の波長依存性を示す位相差フィルムが得られ得るからである。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、所望の特性に応じて組み合わせて用いてもよい。
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂が用いられる。例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。ジヒドロキシ化合物の具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
上記のようなポリカーボネート樹脂の詳細は、例えば特開2012-67300号公報および特許第3325560号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、110℃以上250℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上230℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
上記ポリビニルアセタール樹脂としては、任意の適切なポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。代表的には、ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも2種類のアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物と、ポリビニルアルコール系樹脂とを縮合反応させて得ることができる。ポリビニルアセタール樹脂の具体例および詳細な製造方法は、例えば、特開2007-161994号公報に記載されている。当該記載は、本明細書に参考として援用される。
上記延伸対象のフィルムを延伸して得られる位相差フィルムは、好ましくは、屈折率特性がnx>nyの関係を示す。さらに、位相差フィルムは、好ましくはλ/4板として機能し得る。位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm~180nm、より好ましくは135nm~155nmである。なお、本明細書において、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。また、Re(λ)は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。したがって、Re(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、斜め延伸条件を適切に設定することにより所望の範囲とすることができる。例えば、斜め延伸によって100nm~180nmの面内位相差Re(550)を有する位相差フィルムを製造する方法は、特開2013-54338号公報、特開2014-194482号公報、特開2014-238524号公報、特開2014-194484号公報等に詳細に開示されている。よって、当業者は、当該開示に基づいて適切な斜め延伸条件を設定することができる。
位相差フィルムは、別の光学フィルムと貼り合わせられて光学積層体として用いられ得る。例えば、本発明の製造方法によって得られた位相差フィルムは、偏光板と貼り合わせられて、円偏光板として好適に用いられ得る。偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とのなす角度は、好ましくは30°~60°、より好ましくは38°~52°、さらに好ましくは43°~47°、特に好ましくは45°程度である。
本発明の製造方法により得られた位相差フィルムは、長尺状であり、かつ、斜め方向(長尺方向に対して例えば45°の方向)に遅相軸を有する。また、多くの場合、長尺状の偏光子は長尺方向または幅方向に吸収軸を有する。よって、本発明の製造方法により得られた位相差フィルムを用いれば、いわゆるロールトゥロールを利用することができ、きわめて優れた製造効率で円偏光板を作製することができる。なお、ロールトゥロールとは、長尺状のフィルム同士をロール搬送しながら、その長尺方向を揃えて連続的に貼り合わせる方法をいう。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における測定および評価方法は下記のとおりである。
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG-205 type pds-2」)を用いて測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準じて測定した。
(3)ネックイン量
図12に示すように、クリップ位置からネックインの谷部分までの距離(mm)を、左右の端辺においてそれぞれ5箇所ずつ測定し、その平均値をネックイン量とした。
<実施例1>
(ポリエステルカーボネート樹脂フィルムの作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン 29.60質量部(0.046mol)、ISB 29.21質量部(0.200mol)、SPG 42.28質量部(0.139mol)、DPC 63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂のTgは、140℃であった。
得られたポリエステルカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、長尺状のポリエステルカーボネート樹脂フィルムを作製した。
(延伸)
上記のようにして得られたポリエステルカーボネート樹脂フィルムを、図1~図5に示すような装置を用い、図8に示すようなクリップピッチのプロファイルで、予熱処理、第1の斜め延伸および第2の斜め延伸を行った。具体的には、以下のとおりである。なお、該延伸装置に取り付けられたクリップの上側把持部材の下面および下側把持部材の上面はそれぞれ、45mm×30mmサイズの長方形であった。
まず、ポリエステルカーボネート樹脂フィルム(幅:765mm)を延伸装置の取り込み口(把持ゾーン)でフィルムの左右の端辺からクリップ位置までの距離(D)が30mmとなるようにクリップで把持した。このとき、掴み長さ(L)および掴み代(W)がそれぞれ、45mmおよび30mmの長方形となるように、図13(a)に示すように、クリップの上側把持部材の下面と下側把持部材の上面とが完全に重なるようにフィルムを把持した。
次いで、ポリエステルカーボネート樹脂フィルム(厚み150μm、幅(W)765mm)を予熱ゾーンBで145℃に予熱した。予熱ゾーンBにおいては、左右のクリップのクリップピッチ(P)は150mmであった。次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンC1に入ると同時に、右側クリップのクリップピッチの増大および左側クリップのクリップピッチの減少を開始した。第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部における右側クリップのクリップピッチの変化率(P/P)は1.42であり、左側クリップのクリップピッチの変化率(P/P)は0.72であった。第1の斜め延伸後のフィルム幅(W)は1092mmであった(TD延伸倍率(W/W)=1.45倍)。
次に、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンC2に入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始し、PからPまで増大させるべく、第2の斜め延伸ゾーンC2における左側クリップのクリップピッチの変化率(P2/P3)を1.97と設定した。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンC2においてP2のまま維持した。また、上記第1の斜め延伸工程および第2の斜め延伸工程における幅方向への延伸倍率(W/W)は、1.9倍と設定した。
しかし、第2の斜め延伸工程の途中でフィルムが破断した。延伸機出口より、フィルムの様子を観察し、破断が生じた位置に基づいて破断した箇所のMD倍率、TD倍率を特定した。破断した箇所のMD倍率およびTD倍率に基づいて、かつ、上記式(1)を用いて破断時の斜め延伸倍率を算出したところ、2.55倍であった。なお、第1の斜め延伸および第2の斜め延伸はともに、142℃で行った。
次に、以下のようにして破断直前のネックイン量を求めた。
斜め延伸工程終了時の斜め延伸倍率が上記破断時の斜め延伸倍率よりも0.01倍小さくなるように(すなわち、2.54倍になるように)、第1の斜め延伸ゾーンC1における右側クリップのクリップピッチPおよび第2の斜め延伸ゾーンC2における左側クリップのクリップピッチPを調整したこと以外は上記と同様にして斜め延伸を行った(すなわち、P、P、および、第1または第2の斜め延伸における幅方向の延伸倍率に変更はない)。その結果、破断を生じさせることなく斜め延伸フィルムを得た。得られた斜め延伸フィルムを破断直前のフィルムとし、そのネックイン量を破断直前のネックイン量として測定した。
<実施例2>
上側把持部材の下面が、45mm×25mmサイズの長方形であるクリップを用いたこと、および、図13(b)に示すように、フィルム端辺からクリップ位置までの距離(D)が25mmとなるようにフィルムをクリップで把持したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムが破断するまで斜め延伸を行って破断時の斜め延伸倍率を算出するとともに、該破断時の斜め延伸倍率に基づいて破断直前のフィルムを作成して破断直前のネックイン量を求めた。掴み長さ(L)および掴み代(W)はそれぞれ、45mmおよび25mmであった。
<実施例3>
上側把持部材の下面が、45mm×20mmサイズの長方形であるクリップを用いたこと、および、図13(b)に示すように、フィルム端辺からクリップ位置までの距離(D)が20mmとなるようにフィルムをクリップで把持したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムが破断するまで斜め延伸を行って破断時の斜め延伸倍率を算出するとともに、該破断時の斜め延伸倍率に基づいて破断直前のフィルムを作成して破断直前のネックイン量を求めた。掴み長さ(L)および掴み代(W)はそれぞれ、45mmおよび20mmであった。
<実施例4>
上側把持部材の下面が、45mm×15mmサイズの長方形であるクリップを用いたこと、および、図13(c)に示すように、フィルム端辺からクリップ位置までの距離(D)が30mmとなるようにフィルムをクリップで把持したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムが破断するまで斜め延伸を行って破断時の斜め延伸倍率を算出するとともに、該破断時の斜め延伸倍率に基づいて破断直前のフィルムを作成して破断直前のネックイン量を求めた。掴み長さ(L)および掴み代(W)はそれぞれ、45mmおよび15mmであった。
<実施例5>
上側把持部材の下面が、21.5mm×2mmサイズの長方形であるクリップを用いたこと、および、図13(c)に示すように、フィルム端辺からクリップ位置までの距離(D)が30mmとなるようにフィルムをクリップで把持したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムが破断するまで斜め延伸を行って破断時の斜め延伸倍率を算出するとともに、該破断時の斜め延伸倍率に基づいて破断直前のフィルムを作成して破断直前のネックイン量を求めた。掴み長さ(L)および掴み代(W)はそれぞれ、21.5mmおよび2mmであった。
<実施例6>
上側把持部材の下面が、21.5mm×2mmサイズの長方形であるクリップを用いたこと、および、図13(c)に示すように、フィルム端辺からクリップ位置までの距離(D)が25mmとなるようにフィルムをクリップで把持したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムが破断するまで斜め延伸を行って破断時の斜め延伸倍率を算出するとともに、該破断時の斜め延伸倍率に基づいて破断直前のフィルムを作成して破断直前のネックイン量を求めた。掴み長さ(L)および掴み代(W)はそれぞれ、21.5mmおよび2mmであった。
<比較例1>
上側把持部材の下面が、45mm×2mmサイズの長方形であるクリップを用いたこと、および、図13(c)に示すように、フィルム端辺からクリップ位置までの距離(D)が15mmとなるようにフィルムをクリップで把持したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムが破断するまで斜め延伸を行って破断時の斜め延伸倍率を算出するとともに、該破断時の斜め延伸倍率に基づいて破断直前のフィルムを作成して破断直前のネックイン量を求めた。掴み長さ(L)および掴み代(W)はそれぞれ、45mmおよび2mmであった。
<比較例2>
上側把持部材の下面が、21.5mm×2mmサイズの長方形であるクリップを用いたこと、および、図13(c)に示すように、フィルム端辺からクリップ位置までの距離(D)が15mmとなるようにフィルムをクリップで把持したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムが破断するまで斜め延伸を行って破断時の斜め延伸倍率を算出するとともに、該破断時の斜め延伸倍率に基づいて破断直前のフィルムを作成して破断直前のネックイン量を求めた。掴み長さ(L)および掴み代(W)はそれぞれ、21.5mmおよび2mmであった。
上記実施例および比較例において測定した破断時の斜め延伸倍率および破断直前のネックイン量を表1に示す。
Figure 0007066427000006
<評価>
表1に示されるとおり、フィルムの左右の端辺から20mm以上の距離の位置をそれぞれ把持して延伸を行った実施例においては、斜め延伸倍率が2.0倍を超えても樹脂フィルムは破断しなかった。これに対し、フィルムの左右の端辺から15mmの距離の位置をそれぞれ把持して延伸を行った比較例においては、2.0倍未満の斜め延伸倍率で樹脂フィルムが破断した。さらに、掴み長さおよび/または掴み代を大きく設定することにより、フィルムの破断がより好適に抑制されることがわかる。また、掴み代を大きく設定することにより、ネックイン量を低減できることが分かる。
本発明の延伸フィルムの製造方法は、位相差フィルムの製造に好適に用いられ、結果として、液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置の製造に寄与し得る。
10L 無端ループ
10R 無端ループ
20 クリップ
22 下側把持部材
26 上側把持部材
28 フィルム把持面
30 クリップ担持部材
70 基準レール
90 ピッチ設定レール
100 延伸装置
200 フィルム

Claims (4)

  1. 延伸対象のフィルムの左右端部を把持して延伸ゾーンを通過走行するとともに、該通過走行に伴って縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップを有し、
    該クリップが、該フィルムの左右の端辺から30mm以上の距離の位置を把持する、クリップ式フィルム延伸装置であって、
    該クリップが、該フィルムを上方から挟み込む上側把持部材と下方から挟み込む下側把持部材とを有し、
    該上側把持部材の下面と該下側把持部材の上面との重なりによって規定されるフィルム把持面の該クリップの走行方向と直交する方向における長さが、30mm~60mmであり、
    該フィルム把持面の該クリップの走行方向における長さが、35mm~80mmである、クリップ式フィルム延伸装置。
  2. 延伸対象のフィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること、
    該フィルムを予熱すること、
    該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、該フィルムを斜め延伸すること、および
    該フィルムを把持するクリップを開放すること、を含み、
    該フィルムの左右の端辺から30mm以上の距離の位置を該左右のクリップによって把持し、
    該クリップが、該フィルムを上方から挟み込む上側把持部材と下方から挟み込む下側把持部材とを有し、
    該上側把持部材の下面と該下側把持部材の上面との重なりによって規定されるフィルム把持面の該クリップの走行方向と直交する方向における長さが、30mm~60mmであり、
    該フィルム把持面の該クリップの走行方向における長さが、35mm~80mmである、位相差フィルムの製造方法。
  3. 前記斜め延伸が、横延伸を含む、請求項2に記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. 請求項1に記載のクリップ式フィルム延伸装置を用いて行われる、請求項2または3に記載の位相差フィルムの製造方法。
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