JP7037950B2 - フィルム延伸装置および位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

フィルム延伸装置および位相差フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フィルム延伸装置および位相差フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置において、表示特性の向上や反射防止を目的として円偏光板が用いられている。円偏光板は、代表的には、偏光子と位相差フィルム(代表的にはλ/4板)とが、偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが45°の角度をなすようにして積層されている。従来、位相差フィルムは、代表的には、縦方向および/または横方向に一軸延伸または二軸延伸することにより作製されているので、その遅相軸は、多くの場合、フィルム原反の横方向(幅方向)または縦方向(長尺方向)に発現する。結果として、円偏光板を作製するには、位相差フィルムを幅方向または長尺方向に対して45°の角度をなすように裁断し、1枚ずつ貼り合わせる必要があった。
このような問題を解決するために、長尺状のフィルムの左右端部(幅方向の端部)をそれぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持し、該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、斜め方向に延伸することにより、位相差フィルムの遅相軸を斜め方向に発現させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このような斜め延伸技術においては、延伸倍率の増大にしたがって、フィルムを把持するクリップ周縁部を起点としてフィルムが破断する場合がある。
特許第4845619号
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、クリップ周縁部を起点としたフィルムの破断を抑制することにある。
本発明の1つの局面によれば、延伸対象のフィルムの左右端部を把持して延伸ゾーンを通過走行するとともに、該通過走行に伴って少なくとも一方の縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップを有する、クリップ式フィルム延伸装置が提供される。該クリップ式フィルム延伸装置において、該クリップは、該フィルムの端部を挟み込んで把持する上側把持部材と下側把持部材とを有し、該上側把持部材の底面および該下側把持部材の上面が、該フィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転可能に構成されている。
1つの実施形態において、上記フィルムの端辺から20mm以上離間した箇所を上記クリップで把持する。
1つの実施形態において、上記上側把持部材の底面および上記下側把持部材の上面との重なりによって規定されるフィルム把持面の上記クリップの走行方向と直交する方向における長さが、15mm以上である。
1つの実施形態において、上記上側把持部材の底面および上記下側把持部材の上面との重なりによって規定されるフィルム把持面の上記クリップの走行方向における長さが、20mm以上である。
1つの実施形態において、上記上側把持部材の底面および上記下側把持部材の上面の形状が、円形である。
本発明の別の局面によれば、延伸対象のフィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること、該フィルムを予熱すること、該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、該フィルムを斜め延伸すること、および該フィルムを把持するクリップを開放すること、を含む、位相差フィルムの製造方法が提供される。該製造方法において、該クリップは、該フィルムの端部を挟み込んで把持する上側把持部材と下側把持部材とを有し、該斜め延伸時に、該上側把持部材の底面および該下側把持部材の上面を延伸方向に追従するように回転させる。
1つの実施形態において、上記製造方法は、上記クリップ式フィルム延伸装置を用いて行われる。
1つの実施形態において、上記斜め延伸が、横延伸を含む。
本発明の別の局面によれば、クリップ本体と、該クリップ本体に装着され、把持対象のフィルムをそれぞれ上側および下側から把持する上側把持部材および下側把持部材と、を有し、該上側把持部材の底面および該下側把持部材の上面がそれぞれ、該フィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転可能に構成されている、クリップが提供される。
本発明のフィルム延伸装置または位相差フィルムの製造方法においては、フィルムを把持するクリップとして、上側把持部材と下側把持部材とを有するクリップを用い、該上側把持部材の底面および該下側把持部材の上面をフィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転可能に構成する。これにより、斜め延伸の際に、クリップが延伸方向に追従するように回転できるので、クリップ周縁部における応力の集中が低減できる。その結果、クリップ周縁部を起点としたフィルムの破断が抑制されると考えられる。
本発明の1つの実施形態による延伸装置の全体構成を説明する概略平面図である。 図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、クリップピッチが最小の状態を示す。 図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、クリップピッチが最大の状態を示す。 クリップの構成および開状態を説明する要部概略側面図である。 クリップの構成および閉状態を説明する要部概略側面図である。 (a)は、上側把持部材の概略断面図であり、(b)は、下側把持部材の概略断面図である。 (a)および(b)はそれぞれ、従来のクリップ式フィルム延伸装置および本発明のクリップ式フィルム延伸装置を用いて同条件で斜め延伸した際のフィルム端部における応力の発生状況をシミュレーションした結果を示す図である。 フィルム把持面の掴み代および掴み長さ、クリップ位置およびクリップピッチを説明する概略図である。 斜め延伸の一例を説明する模式図である。 図9に示す斜め延伸の各工程とクリップピッチとの関係を示すグラフである。 斜め延伸の一例と式(1)との関係を説明する概略図である。 斜め延伸の一例における左右それぞれのクリップ移動速度および式(1)を説明する概略図である。 斜め延伸の別の例における左右それぞれのクリップ移動速度および式(1)を説明する概略図である。
[A.フィルム延伸装置]
本発明の1つの局面によれば、延伸対象のフィルムの左右端部(幅方向の端部)を把持して延伸ゾーンを通過走行するとともに、該通過走行に伴って少なくとも一方の縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップを有する、クリップ式フィルム延伸装置が提供される。以下、本発明のフィルム延伸装置の1つ実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
図1~図5を参照して、本発明のフィルム延伸装置の1つ実施形態について説明する。図1は、本発明のフィルム延伸装置の一例の全体構成を説明する概略平面図である。図2および図3は、それぞれ、図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、図2はクリップピッチが最小の状態を示し、図3はクリップピッチが最大の状態を示す。図4および図5は、クリップの構成および開閉状態を説明する要部概略側面図である。
図1に示すとおり、延伸装置100は、平面視で、左右両側に、フィルム把持用の多数のクリップ20を有する無端ループ10Lと無端ループ10Rとを左右対称に有する。なお、本明細書においては、フィルムの入口側から見て左側の無端ループを左側の無端ループ10L、右側の無端ループを右側の無端ループ10Rと称する。左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20は、それぞれ、基準レール70に案内されてループ状に巡回移動する。左側の無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。延伸装置においては、シートの入口側から出口側へ向けて、把持ゾーンA、予熱ゾーンB、延伸ゾーンC、および開放ゾーンDが順に設けられている。なお、これらのそれぞれのゾーンは、延伸対象となるフィルムが実質的に把持、予熱、延伸、およびクリップから開放されるゾーンを意味し、機械的、構造的に独立した区画を意味するものではない。また、それぞれのゾーンの長さの比率は、実際の長さの比率と異なることに留意されたい。さらに、図示しないが、延伸ゾーンCと開放ゾーンDとの間には、必要に応じて任意の適切な処理をするためのゾーンが設けられてもよい。このような処理としては、縦収縮処理、横延伸処理等が挙げられる。
把持ゾーンAおよび予熱ゾーンBでは、左右の無端ループ10L、10Rは、延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。延伸ゾーンCでは、予熱ゾーンBの側から開放ゾーンDに向かうに従って左右の無端ループ10L、10Rの離間距離が上記フィルムの延伸後の幅に対応するまで徐々に拡大する構成とされている。開放ゾーンDでは、左右の無端ループ10L、10Rは、上記フィルムの延伸後の幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。
左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ独立して巡回移動し得る。例えば、左側の無端ループ10Lの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって反時計廻り方向に回転駆動され、右側の無端ループ10Rの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって時計廻り方向に回転駆動される。その結果、これら駆動用スプロケット11、12に係合している駆動ローラ(図示せず)のクリップ担持部材30に走行力が与えられる。これにより、左側の無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。左側の電動モータおよび右側の電動モータを、それぞれ独立して駆動させることにより、左側の無端ループ10Lおよび右側の無端ループ10Rをそれぞれ独立して巡回移動させることができる。
さらに、左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ可変ピッチ型である。すなわち、左右のクリップ20、20は、それぞれ独立して、移動に伴って縦方向のクリップピッチが変化し得る。可変ピッチ型の構成は、パンタグラフ方式、リニアモーター方式、モーター・チェーン方式等の公知の駆動方式を採用することにより実現され得る。以下、一例として、リンク機構(パンタグラフ機構)について説明する。
図2および図3に示すように、クリップ20を個々に担持する平面視横方向に細長矩形状のクリップ担持部材30が設けられている。図示しないが、クリップ担持部材30は、上梁、下梁、前壁(クリップ側の壁)、および後壁(クリップと反対側の壁)により閉じ断面の強固なフレーム構造に形成されている。クリップ担持部材30は、その両端の走行輪38により走行路面81、82上を転動するよう設けられている。なお、図2および図3では、前壁側の走行輪(走行路面81上を転動する走行輪)は図示されない。走行路面81、82は、全域に亘って基準レール70に並行している。クリップ担持部材30の上梁と下梁の後側(クリップと反対側)には、クリップ担持部材の長手方向に沿って長孔31が形成され、スライダ32が長孔31の長手方向にスライド可能に係合している。クリップ担持部材30のクリップ20側端部の近傍には、上梁および下梁を貫通して一本の第1の軸部材33が垂直に設けられている。一方、クリップ担持部材30のスライダ32には一本の第2の軸部材34が垂直に貫通して設けられている。各クリップ担持部材30の第1の軸部材33には主リンク部材35の一端が枢動連結されている。主リンク部材35は、他端を隣接するクリップ担持部材30の第2の軸部材34に枢動連結されている。各クリップ担持部材30の第1の軸部材33には、主リンク部材35に加えて、副リンク部材36の一端が枢動連結されている。副リンク部材36は、他端を主リンク部材35の中間部に枢軸37によって枢動連結されている。主リンク部材35、副リンク部材36によるリンク機構により、図2に示すように、スライダ32がクリップ担持部材30の後側(クリップ側の反対側)に移動しているほど、縦方向に隣接するクリップ担持部材30同士のピッチ(結果として、担持されているクリップ同士のピッチ)が小さくなり、図3に示すように、スライダ32がクリップ担持部材30の前側(クリップ側)に移動しているほど、当該ピッチが大きくなる。スライダ32の位置決めは、ピッチ設定レール90により行われる。図2および図3に示すように、当該ピッチが大きいほど、基準レール70とピッチ設定レール90との離間距離が小さくなる。なお、リンク機構は当業界において周知であるので、より詳細な説明は省略する。
クリップ20は、フィルム200を係脱可能に把持する。図4および図5に例示する実施形態において、クリップ20は、略コの字型の縦断面形状を有するクリップ本体21と、クリップ本体21に装着された下側把持部材22と、取付軸部材23によってクリップ本体21に回動可能に取り付けられた昇降レバー24と、昇降レバー24の下端に取付軸部材25によって揺動可能に取り付けられた上側把持部材26と、を有する。
上側把持部材26は、昇降レバー24の回動に伴って昇降移動する。具体的には、上側把持部材26は、昇降レバー24が垂直方向へ起立するに伴ってフィルムの幅方向外方に向かって斜めに持ち上げられる。このとき、クリップは開いており、フィルムを把持しない(図4)。一方、昇降レバー24が取付軸部材23を中心として斜め方向に回動すると、上側把持部材26もフィルム幅方向内方に向かって斜めに降下して、下側把持部材22と共にフィルム200の端部を挟み込んで把持する(図5)。なお、図4および図5は、いわゆるスライドイン方式でフィルムを把持するクリップを図示するが、図示例とは異なり、上側把持部材が垂直方向に降下することによりフィルムを把持する方式であってもよい。
図6(a)に示すように、上側把持部材26は、平面視円形であり、略中央部に上下方向に貫通する貫通孔を有し、底面が下方に突出した曲面形状とされている上側押さえ部26aと、上側押さえ部26aの貫通孔内に圧入により固定された軸受(ラジアル軸受)26bと、軸受26b内に挿入され、取付軸部材25を受入れ可能な貫通孔を有し、下端部が上側押さえ部26aの底面形状と連続した曲面形状とされている装着軸26cと、上側押さえ部26aの上面の位置まで装着軸26cに嵌め合わされた軸受(スラスト軸受)26dと、を有する。このような構成によれば、昇降レバー24の回動に伴って上側把持部材26がフィルムを把持する位置まで降下することによって、軸受(スラスト軸受)26dに下向きのチャック圧が印加された際に、上側押さえ部26a(結果として、上側把持部材26の底面)は、装着軸26cを中心としてフィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転することができる。上側押さえ部の直径は、本発明の効果が得られる限りにおいて限定されず、例えば15mm~50mmであり得る。装着軸の下端部の直径もまた、本発明の効果が得られる限りにおいて限定されず、例えば5mm~40mmであり得る。なお、上側把持部材の構成は、上記図示例に限定されない。例えば、図示例のように上側把持部材の底面の一部のみ、より具体的には外縁部(径方向外側部分)のみが回転する構成であってもよく、図示例とは異なり、底面の全体が回転する構成であってもよい。
一方、下側把持部材22は、図6(b)に示すように、上側把持部材26の底面形状に対応する凹曲面状の上面を有する下側押さえ部22aと、下側押さえ部22aの底面に設けられた凹部に圧入により固定された軸受(スラスト軸受)22bと、クリップ本体に設けられた凹部に圧入により固定された(ラジアル軸受)22dと、軸受22bおよび22d内に挿入された装着軸22cと、を有する。
このような構成とすることにより、下側把持部材22がクリップ本体21に取り付けられた際に、下側押さえ部22a(結果として、下側把持部材22の上面)は、装着軸22cを中心としてフィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転することができる。なお、下側把持部材の構成は、上記図示例に限定されない。例えば、図示例のように、下側把持部材の上面の全体が回転する構成であってもよく、図示例とは異なり、底面の一部のみ、より具体的には外縁部(径方向外側部分)のみが回転する構成であってもよい。
上側把持部材26の上側押さえ部26aと下側把持部材22の下側押さえ部22aの回転方向および回転角度に限定はなく、時計回り、反時計回りのいずれの方向にも360°を超えて自由に回転することができる。
また、図示例において、上側把持部材の底面および下側把持部材の上面は互いに対応する曲面形状とされているが、図示例とは異なり、平坦な形状であってもよい。同様に、軸受の固定方法は、凹部への圧入に限定されず、ナット、ボルト、ネジ、止め輪、接着剤等を用いた固定方法であってもよい。軸受は、滑り軸受であってもよく、転がり軸受であってもよい。
上側押さえ部26aの底面および下側押さえ部22aの上面の平面視形状は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な形状であり得る。例えば、円形、楕円形、矩形が挙げられる。上側押さえ部26aの底面および下側押さえ部22aの上面が円形である場合、回転角度の影響を受けることなく、常に一定形状(円形)のフィルム把持面を形成することができる。なお、本明細書において、フィルム把持面とは、上側把持部材26(具体的には、上側押さえ部26a)および下側把持部材22(具体的には、下側押さえ部22a)とに挟まれるフィルム面を意味し、上側押さえ部26aの底面と下側押さえ部22aの上面との重なりによって規定される。
フィルムを把持した際に、上側把持部材の上側押さえ部26aと下側把持部材の下側押さえ部22aとは、平面視において外周形状が完全に重なっていてもよく、重ならない部分があってもよい。重ならない部分がある場合、上側押さえ部26aと下側押さえ部22aとは、フィルム幅方向内方の端辺が平面視において同じ位置になるように重なっていることが好ましい。
図7(a)および(b)はそれぞれ、従来のクリップ式フィルム延伸装置および本発明のクリップ式フィルム延伸装置を用いて同条件で斜め延伸した際のフィルム端部における応力の発生状況をシミュレーションした結果を示す図である。図7(a)に示されるとおり、従来のクリップ式フィルム延伸装置によれば、フィルム全体としては斜め方向に引き伸ばされる一方で、クリップ周縁部ではクリップがフィルムの変形を阻止するように作用することに起因して応力が集中し、該応力は走行方向上流側の領域と下流側の領域とにおいて不均衡に集中する。これに対し、図7(b)に示されるとおり、本発明のクリップ式フィルム延伸装置によれば、上側把持部材の上側押さえ部と下側把持部材の下側押さえ部とがフィルムの主面に対して垂直な軸まわりに自由に回転できる。そのため、斜め延伸の間、フィルムが引き伸ばされる方向(すなわち、延伸方向)に追従するようにこれらの押さえ部が回転でき、その結果、クリップ周縁部における応力の集中が抑制されて、クリップ周縁部を起点とするフィルムの破断が抑制され得る。なお、本明細書において、上側把持部材の上側押さえ部と下側把持部材の下側押さえ部とが「延伸方向に追従するように回転する」とは、クリップが斜め延伸ゾーンを走行する間、これらの押さえ部の回転角度(フィルム幅方向を基準とする)が延伸角度(フィルム幅方向と延伸方向とのなす角度)と一致する場合だけでなく、本発明の効果が得られる範囲において角度の変化パターンが一致している場合も含み得る。これらの押さえ部が延伸方向に追従するように回転する場合、代表的には、走行方向上流側の領域と下流側の領域とにおける応力の不均衡は解消されて概ね均等となり得る。
フィルムを把持する際、クリップ(具体的には、上側把持部材および下側把持部材)は、フィルムの左右の端辺(幅方向の端辺)から好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上の距離の位置を把持する。図8を参照しながらより詳細に説明すると、フィルム200の端辺からフィルム把持面28のフィルム幅方向最内部(以下、「クリップ位置」とも称する)までの距離Dが好ましくは20mm以上となるようにフィルムを把持する。このような位置をクリップで把持することにより、フィルムの破断がより一層抑制され得る。フィルムの端辺からクリップ位置までの距離の上限は、例えば、60mmとすることができる。クリップ位置は、例えば、基準レールの離間距離を調整することによって制御することができる。
図8に示すように、クリップの走行方向(基準レールの延びる方向)におけるフィルム把持面28の長さを掴み長さ(L)とし、クリップの走行方向と直交する方向におけるフィルム把持面28の長さを掴み代(W)としたとき、掴み代(W)は、例えば15mm以上、好ましくは20mm以上である。掴み代(W)は、例えば、60mm以下とすることができる。一方、掴み長さ(L)は、例えば20mm以上、好ましくは25mm以上である。掴み長さ(L)は、例えば、80mm以下とすることができる。掴み代または掴み長さをこのような範囲とすることにより、フィルム把持面が広面となるので、クリップ周縁部への応力集中が緩和されてフィルムの破断がより一層抑制され得る。
[B.位相差フィルムの製造方法]
本発明の別の局面によれば、延伸対象のフィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること(把持工程)、該フィルムを予熱すること(予熱工程)、該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、該フィルムを斜め延伸すること(斜め延伸工程)、および該フィルムを把持するクリップを開放すること(開放工程)、を含む、位相差フィルムの製造方法が提供される。該位相差フィルムの製造方法においては、フィルムの端部を挟み込んで把持する上側把持部材と下側把持部材とを有するクリップを使用し、斜め延伸時に、該上側把持部材の底面および該下側把持部材の上面を延伸方向に追従するように回転させる。これにより、クリップ周縁部における応力の集中および応力の不均衡な集中を低減できる。その結果、クリップ周縁部を起点としたフィルムの破断が抑制され得る。また、該位相差フィルムの製造方法は、上記A項に記載の延伸装置を用いることにより、好適に行われる。以下、上記A項に記載の延伸装置を用いた実施形態を具体例として、各工程について詳細に説明する。なお、本明細書において、「縦方向のクリップピッチ」(単にクリップピッチ)と称される場合がある)とは、縦方向に隣接するクリップの走行方向における中央間距離(より具体的には、フィルム把持面の走行方向における中央間距離)を意味し、図8のPで表される距離である。
[B-1.把持工程]
延伸対象となるフィルムは、まず、把持ゾーンA(延伸装置100のフィルム取り込みの入り口)において、左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20によって、その両端部を互いに等しい一定のクリップピッチ、あるいは、互いに異なるクリップピッチで把持される。把持工程における左右のクリップのクリップピッチは、所望の位相差、軸角度等に応じて適切に設定され得る。該クリップピッチは、例えば50mm~180mmであり得る。なお、本明細書において、フィルムの端部とは、フィルム端辺からフィルム全幅の1割の領域を意味する。
把持工程におけるクリップ位置は、フィルムの左右の端辺から好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上の距離の位置である。フィルムの端辺からクリップ位置までの距離の上限は、例えば、60mm以下とすることができる。このような位置をクリップで把持することにより、フィルムの破断がより一層抑制される。
また、フィルム把持面が広面であることが好ましい。フィルム把持面を広面とすることにより、クリップへの応力集中が緩和されてフィルムの破断がより一層抑制される。具体的には、上記A項に記載したとおり、クリップによる掴み代(W)は、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは25mm以上であり、例えば60mm以下とすることができる。また、掴み長さ(L)は、例えば20mm以上、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上であり、例えば、80mm以下とすることができる。
フィルムは、クリップに把持された状態で、横延伸も縦延伸も行われることなく、左右の無端ループ10L、10Rの移動(実質的には、基準レール70に案内された各クリップ担持部材の移動)により、予熱ゾーンBに送られる。
上記クリップはフィルムの端部を挟み込んで把持する上側把持部材と下側把持部材とを有する。上記A項に記載のとおり、該上側把持部材の上側押さえ部(結果として、上側把持部材の底面)および該下側把持部材の下側押さえ部(結果として、下側把持部材の上面)は、フィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転可能に構成されている。
[B-2.予熱工程]
予熱ゾーンBにおいては、左右の無端ループ10L、10Rは、上記のとおり延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されているので、基本的には横延伸も縦延伸も行わず、フィルムが加熱される。ただし、予熱によりフィルムのたわみが起こり、オーブン内のノズルに接触するなどの不具合を回避するために、わずかに左右クリップ間の距離(幅方向の距離)を広げてもよい。
予熱においては、フィルムを温度T1(℃)まで加熱する。温度T1は、フィルムのガラス転移温度(Tg)以上であることが好ましく、より好ましくはTg+2℃以上、さらに好ましくはTg+5℃以上である。一方、加熱温度T1は、好ましくはTg+40℃以下、より好ましくはTg+30℃以下である。用いるフィルムにより異なるが、温度T1は、例えば70℃~190℃であり、好ましくは80℃~180℃である。
上記温度T1までの昇温時間および温度T1での保持時間は、フィルムの構成材料や製造条件(例えば、フィルムの搬送速度)に応じて適切に設定され得る。これらの昇温時間および保持時間は、クリップ20の移動速度、予熱ゾーンの長さ、予熱ゾーンの温度等を調整することにより制御され得る。
[B-3.斜め延伸工程]
延伸ゾーンCにおいては、左右のクリップ20の少なくとも一方の縦方向のクリップピッチを変化させて、フィルムを斜め延伸する。より具体的には、延伸ゾーンCを通過走行する間に、左右のクリップ20の少なくとも一方の縦方向のクリップピッチを変化させることにより、一方のクリップを先行走行させるとともに他方のクリップを後行走行させて、フィルムを斜め延伸する。代表的には、延伸ゾーンCの終端部、すなわち、斜め延伸終了時における左右のクリップのクリップピッチの変化率(斜め延伸終了時のクリップピッチ/斜め延伸前のクリップピッチ)は互いに略等しい。
上記の通り、クリップの上側把持部材の上側押さえ部(結果として、上側把持部材の底面)および下側把持部材の下側押さえ部(結果として、下側把持部材の上面)がフィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転可能であることから、斜め延伸時に、延伸方向に追従するようにこれらの押さえ部が回転する。その結果、クリップ周縁部における応力の集中およびその不均衡さが低減されて、クリップ周縁部を起点としたフィルムの破断が抑制され得る。
斜め延伸は、横延伸を含んでもよく、含まなくてもよい。例えば、図示例のように、左右のクリップ間の距離(幅方向の距離)を拡大させながら行われてもよく、あるいは、図示例とは異なり、左右のクリップ間の距離を維持したまま行われてもよい。好ましくは、斜め延伸は、横延伸を含む。
斜め延伸が横延伸を含む場合、横方向(TD)の延伸倍率(フィルムの初期幅Winitialに対する斜め延伸後のフィルムの幅Wfinalの比(Wfinal/Winitial))は、好ましくは1.05~6.00であり、より好ましくは1.10~5.00である。
1つの実施形態において、斜め延伸は、上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチが増大または減少し始める位置と他方のクリップのクリップピッチが増大または減少し始める位置とを縦方向における異なる位置とした状態で、それぞれのクリップのクリップピッチを所定のピッチまで増大または減少することによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特許文献1、特開2014-238524号公報等の記載を参照することができる。
別の実施形態において、斜め延伸は、上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチを固定したまま、他方のクリップのクリップピッチを所定のピッチまで増大または減少させた後、当初のクリップピッチまで戻すことによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特開2013-54338号公報、特開2014-194482号公報等の記載を参照することができる。
さらに別の実施形態において、斜め延伸は、(i)上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチを増大させつつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させること、および、(ii)該減少したクリップピッチと該増大したクリップピッチとが所定の等しいピッチとなるように、それぞれのクリップのクリップピッチを変化させることによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特開2014-194484号公報等の記載を参照することができる。当該実施形態の斜め延伸は、左右のクリップ間の距離を拡大させながら、一方のクリップのクリップピッチを増大させつつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させて、該フィルムを斜め延伸すること(第1の斜め延伸工程)、および、該左右のクリップ間の距離を拡大させながら、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように該一方のクリップのクリップピッチを維持または減少させ、かつ、該他方のクリップのクリップピッチを増大させて、該フィルムを斜め延伸すること(第2の斜め延伸工程)を含み得る。
上記第1の斜め延伸工程においては、フィルムの一方の側縁部を長手方向に伸長させつつ、他方の側縁部を長手方向に収縮させながら斜め延伸を行うことにより、所望の方向(例えば、長手方向に対して45°の方向)に高い一軸性および面内配向性で遅相軸を発現させることができる。また、第2の斜め延伸工程においては、左右のクリップピッチの差を縮小しながら斜め延伸を行うことにより、余分な応力を緩和しつつ、斜め方向に十分に延伸することができる。さらに、左右のクリップの移動速度が等しくなった状態でフィルムを開放工程に供することができるので、左右のクリップの開放時にフィルムの搬送速度等のバラつきが生じ難く、その後のフィルムの巻き取りが好適に行われ得る。
以下、当該実施形態の斜め延伸の一例を、図9および図10を参照しながら具体的に説明する。まず、予熱ゾーンBにおいては、左右のクリップピッチはともにPとされている。Pは、代表的にはフィルムを把持した際のクリップピッチである。次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンC1に入ると同時に、一方の(図示例では右側)クリップのクリップピッチの増大を開始し、かつ、他方の(図示例では左側)クリップのクリップピッチの減少を開始する。第1の斜め延伸ゾーンC1においては、右側クリップのクリップピッチをPまで増大させ、左側クリップのクリップピッチをPまで減少させる。したがって、第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部(第2の斜め延伸ゾーンC2の開始部)において、左側クリップはクリップピッチPで移動し、右側クリップはクリップピッチPで移動することとされている。なお、クリップピッチの比はクリップの移動速度の比に概ね対応し得る。よって、左右のクリップのクリップピッチの比は、フィルムの右側側縁部と左側側縁部の縦方向(MD方向)の延伸倍率の比に概ね対応し得る。
図9および図10では、右側クリップのクリップピッチが増大し始める位置および左側クリップのクリップピッチが減少し始める位置をともに第1の斜め延伸ゾーンC1の開始部としているが、図示例とは異なり、右側クリップのクリップピッチが増大し始めた後に左側クリップのクリップピッチが減少し始めてもよく、左側クリップのクリップピッチが減少し始めた後に右側クリップのクリップピッチが増大し始めてもよい(図示せず)。1つの好ましい実施形態においては、一方の側のクリップのクリップピッチが増大し始めた後に他方の側のクリップのクリップピッチが減少し始める。このような実施形態によれば、既にフィルムが幅方向に一定程度(好ましくは1.2倍~2.0倍程度)延伸されていることから該他方の側のクリップピッチを大きく減少させてもシワが発生しにくい。よって、より鋭角な斜め延伸が可能となり、一軸性および面内配向性の高い位相差フィルムが好適に得られ得る。
同様に、図9および図10では、第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部(第2の斜め延伸ゾーンC2の開始部)まで右側クリップのクリップピッチの増大および左側クリップのクリップピッチの減少が続いているが、図示例とは異なり、クリップピッチの増大または減少のいずれか一方が第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部よりも前に終了し、第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部までクリップピッチがそのまま維持されてもよい。
上記増大するクリップピッチの変化率(P/P)は、好ましくは1.05~1.75、より好ましくは1.10~1.70、さらに好ましくは1.15~1.65である。また、減少するクリップピッチの変化率(P/P)は、例えば0.50以上1未満、好ましくは0.50~0.95、より好ましくは0.55~0.93、さらに好ましくは0.55~0.90である。クリップピッチの変化率がこのような範囲内であれば、フィルムの長手方向に対して概ね45度の方向に高い一軸性および面内配向性で遅相軸を発現させることができる。
クリップピッチは、上記のとおり、延伸装置のピッチ設定レールと基準レールとの離間距離を調整してスライダを位置決めすることにより、調整され得る。
第1の斜め延伸工程におけるフィルムの幅方向の延伸倍率(W/W)は、好ましくは1.05倍~3.0倍、より好ましくは1.1倍~2.5倍、さらに好ましくは1.15倍~2.0倍である。当該延伸倍率が1.05倍未満であると、収縮させた側の側縁部にトタン状のシワが生じる場合がある。また、当該延伸倍率が3.0倍を超えると、得られる位相差フィルムの二軸性が高くなってしまい、円偏光板等に適用した場合に視野角特性が低下する場合がある。
1つの実施形態において、第1の斜め延伸は、一方のクリップのクリップピッチの変化率と他方のクリップのクリップピッチの変化率との積が、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.8~1.45、さらに好ましくは0.85~1.40となるように行われる。変化率の積がこのような範囲内であれば、一軸性および面内配向性の高い位相差フィルムが得られ得る。
続いて、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンC2に入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始する。第2の斜め延伸ゾーンC2においては、左側クリップのクリップピッチをPまで増大させる。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンC2においてPのまま維持される。したがって、第2の斜め延伸ゾーンC2の終端部(開放ゾーンDの開始部)において、左側クリップおよび右側クリップはともに、クリップピッチPで移動することとされている。
上記増大するクリップピッチの変化率(P/P)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて制限はない。該変化率(P/P)は、例えば1.1~4.0、好ましくは1.2~3.0である。
1つの実施形態において、第1の斜め延伸および第2の斜め延伸は、以下の式(1)から求められる斜め延伸倍率Sが、例えば1.5以上、好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.0~4.0、さらに好ましくは2.5~3.5となるように行われる。当該斜め延伸倍率が1.5未満であると、二軸性が高くなる場合や面内配向性が低くなる場合がある。
Figure 0007037950000001
(式中、
は、第1の斜め延伸前のフィルム幅、
は、第2の斜め延伸後のフィルム幅、
v3’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第2の斜め延伸工程で所定のクリップピッチに変化した際のクリップ移動速度、
t3は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップが、予熱ゾーンに入ってから、第2の斜め延伸工程が終了するまでの時間、
t3’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップが、予熱ゾーンに入ってから、第2の斜め延伸工程が終了するまでの時間
を表す。)
上記v3’に関して、所定のクリップピッチとは、第1の斜め延伸工程において増大が完了したクリップピッチが第2の斜め延伸工程で維持された場合のクリップピッチ(図9および図10を用いた説明におけるPに対応する)あるいは減少した後のクリップピッチを意味する。また、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第1の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図9および図10を用いた説明におけるPに対応する)に変化された際の該クリップの移動速度をv2’とすると、
v2’=v3’の場合は、上記t3は下記式(2)、上記t’3は下記式(3)で表され、
v2’>v3’の場合は、上記t3は下記式(4)、上記t’3は下記式(5)で表される。
以下、式(2)~(5)について説明する。式中の各記号の説明おいては、図11~13を参考とすることができる。なお、式(1)~(5)中のアスタリスクマーク(*)は乗算記号である。また、フィルム幅の単位はm、速度の単位はm/sec、距離の単位はm、時間の単位はsecである。
Figure 0007037950000002
(式中、
a1=(v2-v3)/(L2-L3)、
b1=v3-a1*L3、
a=(v1-v2)/(L1-L2)、
b=v2-a*L2であり、
v1は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップが予熱ゾーンを通過する際のクリップ移動速度、
v2は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第1の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図9および図10を用いた説明におけるPに対応する)に減少した際のクリップ移動速度、
v3は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第2の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図9および図10を用いた説明におけるPに対応する)に増大した際のクリップ移動速度であり、
L1は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップがクリップピッチを減少し始めるまでの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から予熱ゾーン出口までの距離)、
L2は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップがクリップピッチを増大し始める箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第1の斜め延伸ゾーン出口までの距離)、
L3は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを減少させる方のクリップがクリップピッチを増大し終わる箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第2の斜め延伸ゾーン出口までの距離)
である。)
Figure 0007037950000003
(式中、
a’=(v1’-v2’)/(L1’-L2’)、
b’=v3’-a’*L2’であり、
v1’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップが予熱ゾーンを通過する際のクリップ移動速度、
v2’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第1の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図9および図10を用いた説明におけるPに対応する)に増大した際のクリップ移動速度、
v3’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップが第2の斜め延伸ゾーンを通過する際のクリップ移動速度であり、
L1’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップがクリップピッチを増大し始めるまでの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から予熱ゾーン出口までの距離)、
L2’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップがクリップピッチを増大し終わる箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第1の斜め延伸ゾーン出口までの距離)、
L3’は、予熱ゾーン入口から、第2の斜め延伸ゾーン出口までの距離
である。)
Figure 0007037950000004
(式中、a1、b1、a、b、v1、v2、v3、L1、L2およびL3は、式(2)に関して定義したとおりである。)
Figure 0007037950000005
(式中、
a’=(v1’-v2’)/(L1’-L2’)、
b’=v2’-a’*L2’、
a’’=(v2’-v3’)/(L2’-L3’)、
b’’=v3’-a’’*L3’であり、
v1’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップが予熱ゾーンを通過する際のクリップ移動速度、
v2’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第1の斜め延伸工程で所定のクリップピッチ(図9および図10を用いた説明におけるPに対応する)に増大した際のクリップ移動速度、
v3’は、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップに関して、該クリップのクリップピッチが第2の斜め延伸工程で所定のクリップピッチに減少した際のクリップ移動速度であり、
L1’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップがクリップピッチを増大し始める箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から予熱ゾーン出口までの距離)、
L2’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップがクリップピッチを増大し終わる箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第1の斜め延伸ゾーン出口までの距離)、
L3’は、予熱ゾーン入口から、第1の斜め延伸工程でクリップピッチを増大させる方のクリップが第2の斜め延伸工程でクリップピッチを所定のクリップピッチに減少し終わる箇所までの距離(1つの実施形態においては、予熱ゾーン入口から第2の斜め延伸ゾーン出口までの距離)である。)
斜め延伸は、代表的には、温度T2で行われ得る。温度T2は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg-20℃~Tg+30℃であることが好ましく、さらに好ましくはTg-10℃~Tg+20℃、特に好ましくはTg程度である。用いる樹脂フィルムにより異なるが、温度T2は、例えば70℃~180℃であり、好ましくは80℃~170℃である。上記温度T1と温度T2との差(T1-T2)は、好ましくは±2℃以上であり、より好ましくは±5℃以上である。1つの実施形態においては、T1>T2であり、したがって、予熱ゾーンで温度T1まで加熱されたフィルムは温度T2まで冷却され得る。
上記縦収縮処理および横延伸処理は、斜め延伸後に行われる。斜め延伸後のこれらの処理については、特開2014-194483号公報の0029~0032段落を参照することができる。
[B-4.開放工程]
最後に、フィルムを把持するクリップを開放して、位相差フィルムが得られる。通常、フィルムをTg以下まで冷却した後にクリップを開放する。必要に応じて、フィルムを熱処理して延伸状態を固定し、冷却した後にクリップを開放する。
熱処理は、代表的には、温度T3で行われ得る。温度T3は、延伸されるフィルムによって異なり、T2≧T3の場合も、T2<T3の場合もあり得る。一般的に、フィルムが非晶性材料である場合はT2≧T3であり、結晶性材料である場合はT2<T3にすることで結晶化処理を行う場合もある。T2≧T3の場合、温度T2とT3の差(T2-T3)は好ましくは0℃~50℃である。熱処理時間は、代表的には10秒~10分である。
クリップを開放後、フィルムは、両端のクリップ把持部分がカットされ、ロール状に巻き取られ得る。
[C.延伸対象のフィルムおよび延伸により得られる位相差フィルム]
本発明の製造方法に好適に用いられるフィルムとしては、位相差フィルムとして用いられ得る任意の適切な長尺状のフィルムが挙げられる。延伸対象のフィルムの幅は、例えば300mm以上、好ましくは500mm以上、より好ましくは500mm~2000mmである。
上記フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂である。これらの樹脂であれば、いわゆる逆分散の波長依存性を示す位相差フィルムが得られ得るからである。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、所望の特性に応じて組み合わせて用いてもよい。
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂が用いられる。例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。ジヒドロキシ化合物の具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
上記のようなポリカーボネート樹脂の詳細は、例えば特開2012-67300号公報および特許第3325560号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、110℃以上250℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上230℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
上記ポリビニルアセタール樹脂としては、任意の適切なポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。代表的には、ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも2種類のアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物と、ポリビニルアルコール系樹脂とを縮合反応させて得ることができる。ポリビニルアセタール樹脂の具体例および詳細な製造方法は、例えば、特開2007-161994号公報に記載されている。当該記載は、本明細書に参考として援用される。
上記延伸対象のフィルムを延伸して得られる位相差フィルムは、好ましくは、屈折率特性がnx>nyの関係を示す。さらに、位相差フィルムは、好ましくはλ/4板として機能し得る。位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm~180nm、より好ましくは135nm~155nmである。なお、本明細書において、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。また、Re(λ)は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。したがって、Re(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、斜め延伸条件を適切に設定することにより所望の範囲とすることができる。例えば、斜め延伸によって100nm~180nmの面内位相差Re(550)を有する位相差フィルムを製造する方法は、特開2013-54338号公報、特開2014-194482号公報、特開2014-238524号公報、特開2014-194484号公報等に詳細に開示されている。よって、当業者は、当該開示に基づいて適切な斜め延伸条件を設定することができる。
位相差フィルムは、別の光学フィルムと貼り合わせられて光学積層体として用いられ得る。例えば、本発明の製造方法によって得られた位相差フィルムは、偏光板と貼り合わせられて、円偏光板として好適に用いられ得る。偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とのなす角度は、好ましくは30°~60°、より好ましくは38°~52°、さらに好ましくは43°~47°、特に好ましくは45°程度である。
本発明の製造方法により得られた位相差フィルムは、長尺状であり、かつ、斜め方向(長尺方向に対して例えば45°の方向)に遅相軸を有する。また、多くの場合、長尺状の偏光子は長尺方向または幅方向に吸収軸を有する。よって、本発明の製造方法により得られた位相差フィルムを用いれば、いわゆるロールトゥロールを利用することができ、きわめて優れた製造効率で円偏光板を作製することができる。なお、ロールトゥロールとは、長尺状のフィルム同士をロール搬送しながら、その長尺方向を揃えて連続的に貼り合わせる方法をいう。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における測定および評価方法は下記のとおりである。
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG-205 type pds-2」)を用いて測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準じて測定した。
<実施例1>
(ポリエステルカーボネート樹脂フィルムの作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン 29.60質量部(0.046mol)、ISB 29.21質量部(0.200mol)、SPG 42.28質量部(0.139mol)、DPC 63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂のTgは、140℃であった。
得られたポリエステルカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、樹脂フィルムを作製した。
(延伸)
上記のようにして得られた長尺状のポリエステルカーボネート樹脂フィルムを、図1~図5に示すようなクリップ式フィルム延伸装置を用いて斜め延伸を行った。該延伸装置に取り付けられたクリップの上側把持部材および下側把持部材の各押さえ部はそれぞれ、図6(a)および図6(b)に示す構成を有していた。具体的には、各押さえ部がフィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転可能に構成されており、その平面視形状はいずれも、円形(φ29mm)であった。また、装着軸の下端の直径は8mmであった。
具体的な延伸方法は、以下のとおりである。まず、ポリエステルカーボネート樹脂フィルム(幅:765mm)を延伸装置の取り込み口(把持ゾーン)でフィルムの左右の端辺からクリップ位置までの距離が30mmとなるようにクリップで把持した。このとき、上側把持部材の底面と下側把持部材の上面とが完全に重なるようにフィルムを把持した。把持時の左右のクリップのクリップピッチは150mmであった。
次いで、ポリエステルカーボネート樹脂フィルム(厚み150μm、幅(W)765mm)を予熱ゾーンBで145℃に予熱した。予熱ゾーンBにおいては、左右のクリップのクリップピッチ(P)は150mmであった。次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンC1に入ると同時に、右側クリップのクリップピッチの増大および左側クリップのクリップピッチの減少を開始した。第1の斜め延伸ゾーンC1の終端部における右側クリップのクリップピッチの変化率(P/P)は1.42であり、左側クリップのクリップピッチの変化率(P/P)は0.72であった。第1の斜め延伸後のフィルム幅(W)は1092mmであった(TD延伸倍率(W/W)=1.45倍)。
次に、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンC2に入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始し、PからPまで増大させるべく、第2の斜め延伸ゾーンC2における左側クリップのクリップピッチの変化率(P2/P3)を1.97と設定した。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンC2においてP2のまま維持した。また、上記第1の斜め延伸工程および第2の斜め延伸工程における幅方向への延伸倍率(W/W)は、1.9倍と設定した。
しかし、第2の斜め延伸工程の途中でフィルムが破断した。延伸機出口より、フィルムの様子を観察し、破断が生じた位置に基づいて破断した箇所のMD倍率、TD倍率を特定した。破断した箇所のMD倍率およびTD倍率に基づいて、かつ、上記式(1)を用いて破断時の斜め延伸倍率を算出した。フィルム破断時の延伸倍率を表1に示す。
なお、第1の斜め延伸および第2の斜め延伸はともに、142℃で行った。また、フィルムの破断は、クリップ周縁部を起点として生じていた。
[比較例1]
各押さえ部がフィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転不能であり、その平面視形状がいずれも、矩形(21.5mm×2mm)である上側把持部材および下側把持部材を有するクリップを備えたフィルム延伸装置を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムが破断するまで斜め延伸し、破断時の斜め延伸倍率を算出した。フィルム把持面の形状は、掴み代が2mm、掴み長さが21.5mmの矩形であった。また、フィルムの破断は、クリップ周縁部を起点として生じていた。フィルム破断時の延伸倍率を表1に示す。
[比較例2]
各押さえ部がフィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転不能である上側把持部材および下側把持部材を有するクリップを備えたフィルム延伸装置を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムが破断するまで斜め延伸し、破断時の斜め延伸倍率を算出した。フィルム把持面の形状は、円形(φ29mm)であった。また、フィルムの破断は、クリップ周縁部を起点として生じていた。フィルム破断時の延伸倍率を表1に示す。
Figure 0007037950000006
<評価>
表1に示されるとおり、上側把持部材の底面および下側把持部材の上面が、フィルムの主面に対して垂直な軸まわりに回転可能に構成されているクリップ式フィルム延伸装置を用いて斜め延伸を行うことにより、クリップ周縁部を起点としたフィルムの破断が抑制されて、より高い延伸倍率で延伸できる。
本発明の延伸フィルムの製造方法は、位相差フィルムの製造に好適に用いられ、結果として、液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置の製造に寄与し得る。
10L 無端ループ
10R 無端ループ
20 クリップ
22 下側把持部材
22a 下側押さえ部
22b 軸受
22c 装着軸
22d 軸受
26 上側把持部材
26a 上側押さえ部
26b 軸受
26c 装着軸
26d 軸受
28 フィルム把持面
30 クリップ担持部材
70 基準レール
90 ピッチ設定レール
100 延伸装置
200 フィルム

Claims (7)

  1. 延伸対象のフィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること、該フィルムを予熱すること、該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、該フィルムを斜め延伸すること、および該フィルムを把持するクリップを開放すること、を含む、位相差フィルムの製造方法であって、
    該クリップは、該フィルムの端部を挟み込んで把持する上側把持部材と下側把持部材とを有し、
    該クリップで該フィルムを把持する際に、該上側把持部材の底面および該下側把持部材の上面のフィルム幅方向内方の端辺が、平面視において同じ位置になるように重なり、
    該斜め延伸時に、該上側把持部材の底面および該下側把持部材の上面を延伸方向に追従するように回転させる、位相差フィルムの製造方法。
  2. 前記フィルムの端辺から20mm以上離間した箇所を前記クリップで把持する、請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  3. 前記上側把持部材の底面および前記下側把持部材の上面との重なりによって規定されるフィルム把持面の前記クリップの走行方向と直交する方向における長さが、15mm~60mmである、請求項1または2に記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. 前記上側把持部材の底面および前記下側把持部材の上面との重なりによって規定されるフィルム把持面の前記クリップの走行方向における長さが、20mm~80mmである、請求項1から3のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法。
  5. 前記上側把持部材の底面および前記下側把持部材の上面の形状が、円形である、請求項1から4のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法。
  6. 前記斜め延伸が、横延伸を含む、請求項1から5のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法。
  7. 前記フィルムを構成する材料が、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂を含む、請求項1から6のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法。
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