以下、本発明の化粧板について、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<<化粧板>>
化粧板は、ビル、ホテル、マンションのロビーやエレベーター、会議室、オフィス等の壁面に取り付けることで、空間の見栄えや快適性を向上させることができるものである。また、化粧板は、例えば、不動産だけでなく、電車等の車両や、飛行機、船舶等の内装材として使用されるものであってもよい。
[第1実施形態]
図1は、本発明の化粧板の第1実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の化粧板100は、硬質樹脂材料で構成されたコート層(硬質樹脂層)2と、透明フィルム(透明基材)1と、印刷層3と、接着層6と、金属層4と、コア材(芯材層)5とが、この順に積層されてなるものである。
化粧板100は、使用時において、図1中の上側が観察者の視点側となるものである。
言い換えると、化粧板100は、透明フィルム1と、透明フィルム1の一方の面である第1の面11側に配された硬質樹脂材料で構成されたコート層2と、透明フィルム1の第1の面11とは反対の面である第2の面12側に配された金属層4と、コート層2と金属層4との間に配された印刷層3とを備えている。さらに言い換えると、化粧板100は、印刷層3が設けられた透明フィルム1と、透明フィルム1の一方の面である第1の面11側に配された硬質樹脂材料で構成されたコート層2と、透明フィルム1の第1の面11とは反対の面である第2の面12側に配された金属層4とを備えている。
このような構成により、硬質樹脂材料が有する耐擦傷性、防汚性等の特長を発揮させつつ、金属材料が本来有する優れた外観を十分に生かすことができ、高級感のある金属光沢を呈し、かつ、耐擦傷性(傷の付き難さ)、防汚性(汚れの付き難さ、汚れの除去のし易さ)に優れる化粧板100を提供することができる。また、金属層4とともに、印刷層3を備えることにより、様々なパターン、色調を表現することができ、化粧板100の審美性を特に優れたものとすることができる。
特に、本実施形態では、前記印刷層3が、透明フィルム1の第2の面12側に配されている。
これにより、化粧板100の耐摩耗性を特に優れたものとすることができる。
<透明フィルム>
透明フィルム(透明基材)1は、コート層2、印刷層3を支持する機能を有するものである。
また、透明フィルム1は、印刷層3、金属層4で反射した光を好適に透過し、透過光を観察者に視認させることができるように、十分な光透過性を有している。
透明フィルム1は、化粧板100の審美性を十分に優れたものとすることができる程度(印刷層3、金属層4が化粧板100の外観に影響を与える程度)の光透過性(透明性)を有するものであればよいが、透明フィルム1についての380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率は、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、金属材料が本来有する優れた外観(特に高級感)をより効果的に生かすことができ、化粧板100の審美性をより優れたものとすることができる。
透明フィルム1は、透明性を有する材料であれば、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、透明フィルム1の構成材料としては、例えば、各種樹脂材料、各種ガラス材料等が挙げられる。
中でも、曲げ外力等に対する安定性、取り扱いのし易さ、化粧板100の生産コスト等の観点から、透明フィルム1は、樹脂材料を含むもの(透明樹脂フィルム)であるのが好ましい。
透明フィルム1を構成する樹脂材料としては、例えば、各種熱可塑性樹脂、硬化性樹脂材料の硬化物等を用いることができる。透明フィルム1を構成する樹脂材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン(COP)、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
なお、透明フィルム1中には、前述した以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、着色剤、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
透明フィルム1中における樹脂材料の含有率は、80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、95質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
透明フィルム1の厚さは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、20μm以上300μm以下であるのがより好ましい。
これにより、化粧板100の薄型化を図りつつ、化粧板100の加工性、耐久性、信頼性等を特に優れたものとすることができる。
<コート層>
透明フィルム1の第1の面11側(化粧板100が設置された状態での観察者の視点側)には、硬質樹脂材料で構成されたコート層2が設けられている。
このようなコート層2が設けられていることにより、化粧板100の耐擦傷性、防汚性等を優れたものとすることができる。
また、コート層2を構成する硬質樹脂材料は、一般に、透明性の高いものである。したがって、透明フィルム1とともにコート層2が、印刷層3、金属層4で反射した光を好適に透過し、透過光を観察者に視認させることができ、化粧板100の外観を、高級感のある金属光沢を呈するものとすることができる。
また、コート層2は、印刷層3、金属層4等を保護する機能も有している。
したがって、長期間にわたって化粧板100の審美性を安定的に優れたものとすることができる。
コート層2は、化粧板100の審美性を十分に優れたものとすることができる程度(印刷層3、金属層4が化粧板100の外観に影響を与える程度)の光透過性(透明性)を有するものであればよいが、コート層2についての380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率は、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、金属材料が本来有する優れた外観(特に高級感)をより効果的に生かすことができ、化粧板100の審美性をより優れたものとすることができる。
コート層2は、その表面(透明フィルム1に対向する面とは反対側の面)のマルテンス硬度(マルテンス硬さ)が300MPa以上800MPa以下であるのが好ましく、400MPa以上600MPa以下であるのがより好ましい。
これにより、化粧板100を特に傷が付き難いものとすることができる。
これに対し、コート層2の表面のマルテンス硬度が前記下限値未満であると、コート層2の耐擦性等が低く、傷が付き易いものとなる。
また、コート層2の表面のマルテンス硬度が前記上限値を超えると、化粧板100の加工性が低いものとなる可能性がある。
コート層2の構成材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂材料等、セラミック系、ガラス系等の無機材料が挙げられるが、コート層2は、メラミン系樹脂を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、化粧板100は、適度な弾性、剛性を有し、取扱い性(取り扱いのしやすさ)が特に優れたものとなる。また、メラミン系樹脂は、各種硬質樹脂材料の中でも、特に高い表面硬度を有し、耐擦傷性、防汚性(汚れの付着のしにくさ)に特に優れているため、化粧板100の審美性、耐久性のさらなる向上の観点からも好ましい。
以下、コート層2がメラミン系樹脂を含む材料で構成されたものである場合について中心的に説明する。
メラミン系樹脂は、構成成分としてメラミン化合物とアルデヒド化合物とを含む樹脂である。
メラミン化合物は、1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物で、トリアジン環に3つのアミノ基が導入された化合物である。
メラミン化合物の好ましい構造としては、例えば、下記式(3)で表されるもの等が挙げられる。
(式(3)中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上4以下の炭化水素基である。)
メラミン化合物としては、特に、式(3)のR1、R2およびR3がいずれも水素原子である化合物(メラミン)が好ましい。
これにより、化粧板100の硬度をより優れたものとすることができる。また、化粧板100を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
アルデヒド化合物は、分子内にアルデヒド基(-CHO)を有するものであればよく、下記式(2)で表されるもの等が挙げられる。
(式(2)中、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上10以下の炭化水素基である。)
アルデヒド化合物としては、特に、ホルムアルデヒドが好ましい。
これにより、化粧板100の硬度をより優れたものとすることができる。また、化粧板100を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
メラミン系樹脂は、構成成分としてメラミン化合物およびアルデヒド化合物を含むものであればよいが、メラミン化合物およびアルデヒド化合物に加え、さらにグアナミン化合物を構成成分として含むものであってもよい。
これにより、化粧板100の硬度を十分に優れたものとしつつ、化粧板100の加工性を特に優れたものとすることができる。
グアナミン化合物は、1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物で、トリアジン環に2つのアミノ基が導入された化合物である。
グアナミン化合物の好ましい構造としては、例えば、下記式(1)で表されるもの等が挙げられる。
(式(1)中、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上10以下の炭化水素基である。)
グアナミン化合物としては、特に、式(1)のRがメチル基である化合物(アセトグアナミン)が好ましい。
これにより、化粧板100の硬度および加工性をより高いレベルで両立することができる。また、化粧板100を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
メラミン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、メラミン系化合物とアルデヒド系化合物を中性または弱アルカリ下において反応させて得られるもの等を用いることができる。
メラミン系化合物に対するアルデヒド系化合物の反応モル比((アルデヒド系化合物のモル量)/(メラミン系化合物のモル量)の値であり、以下、単に「反応モル比」ということがある。)は、特に限定されないが、1.0以上4.0以下であるのが好ましく、1.0以上2.0以下であるのがより好ましく、1.1以上1.8以下であるのがさらに好ましい。
反応モル比が前記下限値未満であると、未反応成分が増加し保存性低下、コスト高となる場合がある。
また、前記上限値を超えると、硬化後の樹脂柔軟性低下が著しくなる場合がある。
なお、メラミン系樹脂としては、1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、反応モル比や重量平均分子量等が異なる2種類以上のメラミン系樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
また、メラミン系樹脂としては、例えば、住友化学(株)製のメラミン系樹脂等、市販のものを用いることもできる。
なお、コート層2中には、前述した以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、無機充填剤、着色剤、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
コート層2中におけるメラミン系樹脂の含有率は、特に限定されないが、80質量%以上100質量%以下であるのが好ましく、95質量%以上100質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
コート層2の厚さは、特に限定されないが、1μm以上60μm以下であるのが好ましく、3μm以上50μm以下であるのがより好ましい。
これにより、化粧板100の耐擦傷性、防汚性を特に優れたものとしつつ、化粧板100の曲げ加工性等も特に優れたものとすることができる。
また、コート層2の外表面(透明フィルム1に対向する面とは反対側の面)側には、鏡面仕上げ、エンボス仕上げ等の表面仕上げが施されていてもよい。
これにより、化粧板100の審美性のさらなる向上を図ることができる。
<印刷層>
透明フィルム1の第2の面12(第1の面11の反対の面)側には、印刷層3が設けられている。
後に詳述する金属層4とともに、金属層4よりも化粧板100の外表面側(観察者の視点側)に印刷層3が設けられていることにより、化粧板100の審美性を特に優れたものとすることができる。具体的には、例えば、金属光沢を有しつつ、木目調等の所望のパターンを有する外観を得ることができたり、印刷層3中に含まれる着色剤の色調と、金属層4を構成する金属材料の色調とが組み合わされることにより、金属材料のみでは表現することのできない色調の外観を得ることができたりする。
また、印刷層3が透明フィルム1の第2の面12側に設けられていることにより、化粧板100の耐久性を特に優れたものとすることができる。
印刷層3は、通常、顔料、染料等の着色剤を含む材料で構成されたものである。
また、印刷層3は、着色剤に加え、樹脂材料を含むものであってもよい。これにより、印刷層3の透明フィルム1等に対する密着性を優れたものとすることができ、化粧板100の耐久性をより優れたものとすることができる。また、製造時において、印刷層3の形成に用いられるインクの不本意な弾きや濡れ広がりをより効果的に防止または抑制することができ、印刷層3のパターンの精度をより確実に優れたものとすることができる。
印刷層3を構成する樹脂材料としては、例えば、各種熱可塑性樹脂、硬化性樹脂材料の硬化物等を用いることができる。印刷層3を構成する樹脂材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン(COP)、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
なお、印刷層3中には、前述した以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、分散剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
印刷層3は、いかなるパターンで設けられたものであってもよいが、通常、需要者の要求等に応じて決定されたものである。
印刷層3のパターンとしては、例えば、木目調、石材調、筋目加工、各種幾何学模様等が挙げられる。
なお、図示の構成では、印刷層3は、透明フィルム1の第2の面12の一部のみに選択的に設けられているが、金属層4からの反射光の少なくとも一部を透過することができるのであれば、印刷層3は、透明フィルム1の第2の面12の全体に設けられていてもよい。
また、図示の構成では、透明フィルム1と印刷層3との間には明確な界面があるが、例えば、化粧板100の製造過程において、透明フィルム1の一部が溶解等することにより、透明フィルム1と印刷層3との界面が不鮮明(不明瞭)になっていてもよい。
<金属層>
印刷層3の透明フィルム1に対向する面とは反対の面側には、金属材料で構成された金属層4が設けられている。
金属層4を備えることにより、金属材料が有する高級感のある光沢を、化粧板100の外観に利用することができ、化粧板100の審美性を優れたものとすることができる。
特に、化粧板100の使用状態において、印刷層3よりも観察者の視点から離れた側(内側)に金属層4が設けられていることにより、印刷層3と金属層4との組み合わせの色調、パターンを、観察者に視認させることができ、化粧板100の審美性を特に優れたものとすることができる。
また、金属層4は、コート層2、透明フィルム1等よりも内側に設けられていることにより、化粧板100の耐久性をより優れたものとすることできる。
金属層4を構成する金属材料としては、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)や、これらのうち少なくとも1種を含む合金等が挙げられるが、金属層4は、アルミニウムを含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、化粧板100の生産コストを抑制しつつ、特に優れた外観が得られる。また、アルミニウムは、化学的に安定でかつ外観に優れた不動態皮膜を形成するため、化粧板100は、より長期間にわたって安定的に優れた外観を呈することができる。
なお、金属層4には、金属材料に加えて、他の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、金属酸化物、金属化合物等が挙げられる。
金属層4中における金属材料の含有率は、特に限定されないが、90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
金属層4の厚さは、特に限定されないが、1nm以上300μm以下であるのが好ましく、5nm以上200μm以下であるのがより好ましい。
これにより、化粧板100の審美性、耐久性をより優れたものとすることができる。
なお、金属層4は、図示しない支持基材で支持されたものであってもよい。
これにより、例えば、蒸着法等の気相成膜法等で形成された比較的膜厚の小さい金属層4(例えば、厚さが1nm以上50nm以下の金属層4)であっても、化粧板100の製造に好適に用いることができる。
この場合、金属層4を支持する支持基材は、金属層4よりも透明フィルム1側に配置されたものであってもよいし、その反対側に配されたものであってもよい。
支持基材の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の各種樹脂材料が挙げられる。
金属層4(金属を含む材料で構成された部分)の表面(透明フィルム1に対向する側の面)は、平坦性の高いものであるのが好ましく、例えば、エンボス加工、すじめ加工、ブラスト加工等の粗面化処理が施されたものでないのが好ましい。
これにより、金属層4は光をより好適に反射するものとなり、化粧板100の審美性をより優れたものとすることができる。
特に、金属層4(金属を含む材料で構成された部分)の表面(透明フィルム1に対向する側の面)の表面粗さRaは、0μm以上5μm以下であるのが好ましく、0μm以上4μm以下であるのがより好ましい。
これにより、金属層4は光をさらに好適に反射するものとなり、化粧板100の審美性をさらに優れたものとすることができる。
<接着層>
接着層6は、印刷層3が設けられた透明フィルム1と、金属層4とを接合する機能を有している。
接着層6を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド系接着剤、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)、ポリ酢酸ビニル(VA)、ポリエチレンビニルアセテート(EVA)系接着剤等が挙げられる。
また、接着層6は、熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分であってもよい。
これにより、印刷層3が設けられた透明フィルム1と、金属層4との密着性を特に優れたものとすることができ、化粧板100の耐久性を特に優れたものとすることができるとともに、化粧板100の加工性を特に優れたものとすることができる。
以下の説明では、接着層6が熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分を含むものである場合について、中心的に説明する。
なお、本明細書中おいて、熱可塑性樹脂エマルジョンとは、熱可塑性樹脂が溶剤に分散してエマルジョン状態となったものである。
また、熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分とは、熱可塑性樹脂エマルジョンから溶剤を除いた成分を意味する。
熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分は、エマルジョン樹脂粒子として存在する成分を含み、金属や各種素材との接着特性を有し、化粧板100に柔軟性を付与する。その結果、印刷層3が設けられた透明フィルム1と金属層4との密着性(接着強度)を向上させることができるとともに、化粧板100の曲げ加工性を向上させることができる。
熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分には、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体、ウレタンアクリル複合粒子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等の熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子が挙げられる。これらの中でもウレタンアクリル複合粒子が好ましい。
本明細書中において、ウレタンアクリル複合粒子とは、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するものを意味する。
ウレタン樹脂とアクリル樹脂とは、各々が芯材層5との接着強度が高いため、ウレタンアクリル複合粒子を用いることで、芯材層5との良好な接着強度を発現することができる。さらに、ウレタン樹脂は、特に強靭性、弾性、柔軟性に優れ、アクリル樹脂は、特に透明性、耐久性、耐候性、耐薬品性、造膜性に優れる。
また、本明細書中において「異相構造」とは、1個の粒子内に異なる種類の樹脂からなる相が複数存在する構造を意味し、例えば、コアシェル構造、局在構造、海島構造等が挙げられる。
また、接着層6における複数個のウレタンアクリル複合粒子の配列状態は、特に限定されず、例えば、直鎖構造等が挙げられる。粒子の構造および粒子間の配列状態は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
前述した中でも、前記ウレタンアクリル複合粒子は、アクリル成分をコアとし、ウレタン成分をシェルとするコアシェル構造を有する水性クリヤータイプであることが特に好ましい。
ウレタンアクリル複合粒子が上記コアシェル構造であると、接着層6の表面外郭がウレタン組成となるので、接着層6は、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂の両方の特性を有しつつ、外郭にウレタン樹脂の特性が付与される。
なお、本明細書中において「水性クリヤー」とは、樹脂液は水溶性であり水分を除去した後の塗膜は非水性で、かつ下地の色柄が明らかに識別できる程の透明性を持つ樹脂水溶液を意味する。
前記ウレタンアクリル複合粒子が水性クリヤータイプであることにより、接着層6が化粧板100の外観に悪影響を与えることをより効果的に防止、抑制することができる。
なお、熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分としては、前述した中の1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
また、熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分には、上記熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子以外にも、必要に応じて少量の増粘剤、浸透促進剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分は、平均粒径が30nm以上10μm以下のエマルジョン樹脂粒子を含むことが好ましく、前記エマルジョン樹脂粒子の平均粒径は、60nm以上5μm以下であることがより好ましい。
これにより、印刷層3が設けられた透明フィルム1と金属層4との密着性をより優れたものとしつつ、化粧板100の柔軟性をより優れたものとすることができる。
本発明において、平均粒径とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指す。
ここで、粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-7000(島津製作所社製)を用いて、水中に対象粒子を1分間超音波処理することにより分散させ、測定することができる。
また、熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分は、非水溶性であることが好ましい。
これにより、化粧板100の製造時に、熱可塑性樹脂エマルジョンとして水を分散媒として含むものを好適に用いることができる。これにより、化粧板100の生産コストの低減や環境への負荷の低減等を図ることができる。
なお、本明細書において、非水溶性とは、25℃における水に対する溶解度が、0.5g/100g水未満のもののことをいい、水溶性とは、25℃における水に対する溶解度が、0.5g/100g水以上のもののことをいう。
<コア材(芯材層)>
本実施形態の化粧板100では、金属層4の印刷層3に対向する面とは反対の面側に、コア材(芯材層)5をさらに備えている。
これにより、化粧板100の形状の安定性、耐熱性、耐久性が特に優れたものとなる。
コア材(芯材層)5としては、例えば、化学繊維基材で構成されたもの、フェノール系樹脂で構成されたもの、金属材料で構成されたもの等が挙げられる。
芯材層5に用いられる化学繊維基材の材質については、特に限定されるものではなく、例えば、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、無機繊維等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリベンゾオキサゾール樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維(ステンレス繊維)等を挙げることができる。
中でも、芯材層5は、ガラス繊維を含むものであるのが好ましい。
これにより、化粧板100の形状の安定性、耐熱性、耐久性がさらに優れたものとなる。
ガラス繊維を含む芯材層5としては、特に限定されず、例えば、ガラスクロス、ガラス不織布等が挙げられ、中でも不燃性、強度の点からガラスクロスが好ましい。
ガラスクロスとしては、特に限定されず、例えば、平織、綾織、朱子織、からみ織、模紗織、斜紋織、二重織等が挙げられ、中でも材料コストと加工性の面から平織のガラスクロスが好ましい。
また、ガラスクロスを構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。
これらの中でもTガラスを用いた場合、ガラスクロスの熱膨張係数を小さくすることができる。また、Eガラスを用いた場合、十分な機能を確保しつつ、化粧板100の生産コストをより低いものとすることができる。
ガラスクロスの重量は、特に限定するものではないが、建築基準法第2条第9号の不燃性適合要件である「燃焼後の亀裂・貫通があってはならない」を満たす必要がある場合は、坪量80g/m2以上とすることが好ましい。また、重量の上限は特に制約を必要としないが、材料コストと加工性の面から坪量250g/m2以下が好ましい。
また、芯材層5は、前述したようなガラス材料を基材とするプリプレグであってもよい。
これにより、化粧板100の耐熱性、剛性等を特に優れたものとすることができる。
プリプレグとしては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を含有する樹脂組成物を上述のガラスクロスに含浸してなるものを用いることができる。
プリプレグ中に含まれる樹脂組成物の含有量は、金属層4との層間接着強度が、化粧板100を形成するために十分であれば、特に限定されないが、樹脂組成物として熱可塑性樹脂を用いる場合は、プリプレグ中に固形分で1質量%以上20質量%以下含有することが好ましく、1質量%以上10質量%以下含有することがより好ましい。また、樹脂組成物として熱硬化性樹脂を用いる場合は、プリプレグ中に固形分で1質量%以上20質量%以下含有することが好ましく、2質量%以上10質量%以下含有することがより好ましい。これにより、金属層4と芯材層5との層間接着強度を向上させることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂および/またはウレタン樹脂を用いるのが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ユリア樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられる。中でも、不燃性、耐熱性、密着性の観点からフェノール樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独または混合して用いることができる。
プリプレグは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、上述したガラスクロスと同様のガラスクロスに、樹脂を溶剤に溶解させたワニスを含浸、乾燥させることにより得られる。
また、芯材層5は、複数の層が積層されたものであってもよい。例えば、フェノール系樹脂を繊維性の基材(例えば、クラフト紙等の紙で構成された基材)に含浸させてなる部材を複数重ね合わせて接合したものを芯材層5として用いることができる。
芯材層5に用いられる金属材料の材質については、特に限定されるものではなく、例えば、金属層4の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。中でも、アルミニウムが好ましい。
これにより、化粧板100の不燃性を特に優れたものとすることができる。また、軽量化や低コスト化、反りの防止等の観点からも有利である。
芯材層5の厚さは、100μm以上であるのが好ましい。
これにより、化粧板100に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほど化粧板100の厚みと重量が増大するとともに、コストもかさむため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、500μm以下にすることがより好ましい。
また、金属層4と芯材層5との間には、図示しない接着層が設けられていてもよい。これにより、化粧板100の取り扱い性、形状の安定性、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
金属層4と芯材層5との間に図示しない接着層を有する場合、当該接着層としては、前述した接着層6と同様の条件を満足するものであるのが好ましい。
化粧板100は、全体厚さ(平均厚さ)が0.1mm以上2mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上1.2mm以下であるのがより好ましい。
これにより、化粧板100は、十分な強度を有しつつ、加工性、取り扱い性が特に優れたものとなる。
[第2実施形態]
図2は、本発明の化粧板の第2実施形態を模式的に示す断面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
図2に示すように、本実施形態の化粧板100は、硬質樹脂材料で構成されたコート層(硬質樹脂層)2と、印刷層3と、透明フィルム(透明基材)1と、接着層6と、金属層4と、コア材(芯材層)5とが、この順に積層されてなるものである。
すなわち、前述した実施形態の化粧板100では、印刷層3が、透明フィルム1の第2の面12側に配されていたのに対し、本実施形態の化粧板100では、印刷層3が、透明フィルム1の第1の面11側に配されている。
このような構成であると、印刷層3が、観察者の視点により近い側に配されることになり、印刷層3の色柄がより鮮明となり、化粧板100の審美性をさらに優れたものとすることができる。
<<化粧板の製造方法>>
次に、前述した化粧板の製造方法について説明する。
[第1実施形態]
図3は、本発明の化粧板の製造方法の第1実施形態を示す断面図である。
図3に示すように、本実施形態の製造方法は、透明フィルム1を準備する透明フィルム準備工程(1a)と、透明フィルムの一方の面(第2の面12)に印刷層3を形成する印刷工程(1b)と、透明フィルムの他方の面(第1の面11)にコート層2を形成するコート層形成工程(1c)と、接着層6を形成して、印刷層3が設けられた透明フィルム1と金属層4とを接合する接着工程(1d)と、金属層4の表面に芯材層5を形成する芯材層形成工程(1e)とを有している。
<透明フィルム準備工程>
透明フィルム準備工程では、前述したような透明フィルム1を準備する(1a)。
透明フィルム1としては、例えば、製造すべき化粧板100に対応する面積のフィルムを用いることができる。また、本工程では、例えば、ロール状に巻き取られた長尺のフィルムを用いることができ、本工程に際して、または、本工程よりも後に、当該フィルムを所定の長さに切断してもよい。
また、本工程で準備する透明フィルム1は、例えば、第2の面12に、印刷層3の形成に用いるインクを吸収するインク受容層を備えるものであってもよい。
また、本工程で準備する透明フィルム1は、後の印刷工程に先立ち、第2の面12に、例えば、プラズマ処理、紫外線照射処理、プライマー処理等の各種表面処理(表面活性化処理)等が施されたものであってもよい。
これにより、透明フィルム1と印刷層3との密着性を特に優れたものとすることができる。
また、透明フィルム1は、第1の面11に、前記と同様の表面処理が施されたものであってよい。
これにより、透明フィルム1とコート層2との密着性を特に優れたものとすることができる。
<印刷工程>
次に、前記工程で準備した透明フィルム1の第2の面12に対して、インクを付与して印刷層3を形成する(1b)。
透明フィルム1へのインクの付与は、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、タコ印刷法等の各種印刷法により行うことができる。
インクジェット法を用いてインクを付与することにより、版の準備が不要となり、短期間で、種々のパターンの印刷層3を好適に形成することができる。したがって、多品種の化粧板100を好適に提供することができる。
また、パターンの微妙な調整等にも好適に対応することができるため、需要者の要求に的確に応えることができる。
また、本工程では、インクとして、透明フィルム1の一部(インクが付与された表面付近の領域)を溶解または膨潤させる成分(溶剤等)を含むものであってもよい。
これにより、付与されたインクを、透明フィルム1の目的の部位に好適に付着させることができ、透明フィルム1上でのインクのはじきや過剰な濡れ広がり等を効果的に防止することができる。その結果、所望のパターンの印刷層3を容易かつ確実に形成することができる。また、形成される印刷層3は、透明フィルム1に強固に結合したものとなり、透明フィルム1に対する印刷層3の密着性を優れたものとすることができ、最終的に得られる化粧板100の耐久性を特に優れたものとすることができる。
本工程では、複数種のインクを用いてもよい。
これにより、例えば、色再現範囲を広いものとしたり、微妙なグラデーションの表現をより好適に行うことができる。
印刷層3の形成に用いるインクについては、後に詳述する。
<コート層形成工程>
次に、透明フィルム1の印刷層3が設けられた面(第2の面12)とは反対の面(第1の面11)側に、コート層2を形成する(1c)。
コート層2は、例えば、浸漬法(ディッピング)、スプレー法、キスコーター、コンマコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーター等の各種コーターを用いたコート法、各種印刷法等の各種方法により、コート層形成用の組成物を透明フィルム1の第1の面11側に付与し、その後、硬化反応を行うことにより好適に形成することができる。
コート層2の形成に用いる組成物(コート層形成用組成物)については、後に詳述する。
また、コート層2は、シート状に成形したコート層形成用部材を透明フィルム1の第1の面11側に接合することにより形成してもよい。
コート層形成用部材と透明フィルム1との接合は、例えば、圧着により行うことができる。
コート層形成用部材と透明フィルム1との接合を圧着により行う場合、透明フィルム1とコート層形成用部材との接合は、例えば、圧着時に加熱してもよい。
これにより、化粧板100の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、透明フィルム1とコート層2との接合強度を特に優れたものとすることができる。また、例えば、コート層2に含まれる成分の重合反応を好適に進行させることができ、コート層2の硬度、化粧板100の耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
また、コート層形成用部材と透明フィルム1との接合時に、コート層形成用部材の外表面(透明フィルム1に対向する面とは反対側の面)側に、鏡面仕上げ板を重ねることにより鏡面仕上げとすることができ、エンボス板またはエンボスフィルム等を重ねることにより、エンボス仕上げとすることができる。
コート層2が硬化性樹脂で構成されるものとする場合、本工程で形成されるコート層2は、重合反応が終了していないものであってもよい。このような場合であっても、後の工程で、コート層2の構成成分の重合反応を進行させることができ、最終的に得られる化粧板100の耐久性、信頼性等を特に優れたものとすることができる。
<接着工程>
次に、接着層6を形成して、印刷層3が設けられた透明フィルム1と金属層4とを接合する(1d)。
金属層4の形成には、例えば、金属箔を用いることができる。また、必要に応じて離型処理が施された基材上に形成された金属膜(例えば、乾式めっき法、湿式めっき法、溶射法等の各種成膜法により形成された金属膜)を用いてもよい。この場合、前記基材は、化粧板100の製造過程において、除去してもされるものであってもよいし、除去されず、化粧板100の一部を構成するものであってもよい。
接着層6は、例えば、浸漬法(ディッピング)、スプレー法、キスコーター、コンマコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーター等の各種コーターを用いたコート法、各種印刷法等の各種方法により、接着層形成用の組成物を印刷層3が設けられた透明フィルム1、金属層4のうちの少なくとも一方に付与することにより、好適に形成することができる。
<芯材層形成工程>
次に、金属層4の透明フィルム1に対向する面とは反対の面側に、コア材(芯材層)5を設ける(1e)。
これにより、化粧板100が得られる。
芯材層5と透明フィルム1との接合は、例えば、芯材層5が樹脂材料を含むものである場合、芯材層5の一部を溶融・軟化させることにより行うことができる。
また、芯材層5と透明フィルム1との接合は、例えば、接着により行ってもよい。
なお、化粧板100として、芯材層5を有さないものとして製造する場合、前述した芯材層形成工程を省略することにより、化粧板100を製造することができる。
[第2実施形態]
図4は、本発明の化粧板の製造方法の第2実施形態を示す断面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
図4に示すように、本実施形態の製造方法は、透明フィルム1を準備する透明フィルム準備工程(2a)と、透明フィルムの一方の面(第1の面11)に印刷層3を形成する印刷工程(2b)と、透明フィルムの印刷層3が設けられた面側にコート層2を形成するコート層形成工程(2c)と、接着層6を形成して、印刷層3が設けられた透明フィルム1と金属層4とを接合する接着工程(2d)と、金属層4の表面に芯材層5を形成する芯材層形成工程(2e)とを有している。
すなわち、前述した実施形態の製造方法では、印刷層3を透明フィルム1の第2の面12に形成していたのに対し、本実施形態の製造方法では、印刷層3を透明フィルム1の第1の面11に形成している。
[第3実施形態]
図5は、本発明の化粧板の製造方法の第3実施形態を示す断面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
図5に示すように、本実施形態の製造方法は、透明フィルム1を準備する透明フィルム準備工程(3a)と、透明フィルムの一方の面(第2の面12)に印刷層3を形成する印刷工程(3b)と、透明フィルムの他方の面(第1の面11)にコート層2を形成するコート層形成工程(3c)と、接着層6を形成して、印刷層3が設けられた透明フィルム1と金属層4とを接合するとともに、金属層4の表面(透明フィルム1に対向する面とは反対側の面)に芯材層5を形成する接合工程(3d)とを有している。
すなわち、前述した実施形態の製造方法では、印刷層3が設けられた透明フィルム1と金属層4との接合と、芯材層5を形成(金属層4への接合)とを同一工程で行う。
これにより、化粧板100の生産性をさらに向上させることができる。
[第4実施形態]
図6は、本発明の化粧板の製造方法の第4実施形態を示す断面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
図6に示すように、本実施形態の製造方法は、透明フィルム1を準備する透明フィルム準備工程(4a)と、透明フィルムの一方の面(第1の面11)に印刷層3を形成する印刷工程(4b)と、透明フィルムの印刷層3が設けられた面側にコート層2を形成するコート層形成工程(4c)と、接着層6を形成して、印刷層3が設けられた透明フィルム1と金属層4とを接合するとともに、金属層4の表面(透明フィルム1に対向する面とは反対側の面)に芯材層5を形成する接着工程(4d)とを有している。
すなわち、前述した第3実施形態の製造方法では、印刷層3を透明フィルム1の第2の面12に形成していたのに対し、本実施形態の製造方法では、印刷層3を透明フィルム1の第1の面11に形成している。
<インク>
以下、印刷層3の形成に用いるインクについて詳細に説明する。
印刷層3の形成に用いるインクは、通常、着色剤を含むものである。
以下、インクの構成成分について説明する。
(着色剤)
インクは、固形分として、通常、着色剤を含むものである。
着色剤としては、例えば、各種顔料や各種染料等を用いることができ、また、蛍光材料、りん光材料等を用いることもできるが、インクは、着色剤として顔料を含むものであるのが好ましい。
これにより、化粧板100の耐久性を特に優れたものとすることができる。
複数種のインクを用いる場合、例えば、色の三原色(シアン(藍紫色)、マゼンダ(紅紫色)およびイエロー(黄色))に対応するインクを用いることができる。
また、例えば、有彩色のインクと組み合わせて、黒色のインクを用いてもよい。
これにより、インクの使用量を抑制しつつ、濃色を好適に表現することができたり、引き締まった黒色を表現することができる等の効果が得られる。
また、例えば、白色のインクを用いてもよい。
これにより、例えば、有彩色のインクによる印刷層3のコントラスト等を特に優れたものとすることができ、化粧板100の審美性を特に優れたものとすることができる。
特に、藍紫色(シアン)を呈する藍紫色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:2、および、C.I.ピグメントブルー60よりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
また、紅紫色(マゼンダ)を呈する紅紫色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、および、C.I.ピグメントバイオレット37よりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
また、黄色(イエロー)を呈する黄色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー138、および、C.I.ピグメントイエロー139よりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
また、赤色(レッド)を呈する赤色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントレッド177および/またはC.I.ピグメントレッド254を用いるのが好ましい。
また、緑色(グリーン)を呈する緑色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントグリーン36および/またはC.I.ピグメントグリーン58を用いるのが好ましい。
また、青色(ブルー)を呈する青色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6を用いるのが好ましい。
また、黒色(ブラック)を呈する黒色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、カーボンブラック、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラックおよび銅クロムマンガンブラックよりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
また、白色(ホワイト)を呈する白色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、酸化チタン、鉛白、亜鉛華、リトポン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、カオリン、雲母、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、グロスホワイトや、白色プラスチックピグメント等を用いることができる。
(溶剤)
インクは、例えば、溶剤を含むものであってもよい。
これにより、例えば、インクの流動性をより良好なものに調整することができ、所望のパターンの印刷層3をより高い精度で形成することができる。
また、インクが透明フィルム1の構成材料(例えば、樹脂材料)を溶解または膨潤させる機能を有する溶剤を含むものであると、インクを透明フィルム1に付与した際に、透明フィルム1の一部(インクが付与された表面付近の領域)に吸収させ、透明フィルム1を部分的に溶解または膨潤させることができる。その結果、形成される印刷層3は透明フィルム1に強固に結合したものとなり、透明フィルム1に対する印刷層3の密着性をより優れたものとすることができ、最終的に得られる化粧板100の耐久性をより優れたものとすることができる。また、インクを透明フィルム1の所望の部位に選択的に吸収させることができるため、透明フィルム1上でのはじきや過剰な濡れ広がりを防止することができ、印刷層3のパターンが乱れてしまうことを確実に防止することができる。したがって、透明フィルム1の変形等を確実に防止しつつ、所望の形状、パターンの印刷層3をより容易かつより確実に形成することができ、化粧板100の審美性等をより確実に優れたものとすることができる。
溶剤としては、例えば、アルコール化合物(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等の1価のアルコールやエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、およびこれらのフッ化物等)、ケトン化合物(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル化合物(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル化合物(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ラクトン化合物等を用いることができる。
インクが、溶剤として、アルキレングリコール化合物およびラクトン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含むものである場合、例えば、インクの保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、印刷後に、インクから溶剤を速やかに除去することができるため、化粧板100の生産性を特に優れたものとすることができる。
溶剤として用いることのできるラクトン化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
中でも、溶剤は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、および、γ-ブチロラクトンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであってもよい。これにより、例えば、インクの保存安定性、インクジェット法による吐出安定性等をさらに優れたものとすることができる。
また、インクは、溶剤として、液状の重合性化合物(例えば、モノマー等)を含むものであってもよい。
これにより、インクを用いて形成される印刷層3の透明フィルム1に対する密着性を特に優れたものとすることができる。また、例えば、溶剤として、揮発性成分(化粧板100の製造において揮発させることにより除去する成分)を用いる必要がなく、また、揮発性成分を用いる場合でも、その使用量を抑制することができるため、化粧板100の生産性を特に優れたものとすることができる。
液状の重合性化合物としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の各種硬化性樹脂等を用いることができるが、光硬化性樹脂が好ましく、紫外線硬化性樹脂がより好ましい。
光硬化性樹脂(特に、紫外線硬化性樹脂)を液状の重合性化合物として含むことにより、前述した印刷工程で、より容易かつ確実に、適切なタイミングでインクに含まれる硬化性樹脂(光硬化性樹脂)を確実に硬化させること(液状の重合性化合物を除去すること)ができるため、所望の形状、パターンの印刷層3をより容易かつ確実に形成することができる。
なお、溶剤としての液状の重合性化合物(例えば、モノマー等)については、後の「(樹脂材料)」の項目で詳細に説明する。
(樹脂材料)
インクは、樹脂材料を含むものであってもよい。
これにより、インクを用いて形成される印刷層3の透明フィルム1に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
樹脂材料としては、各種熱可塑性樹脂、硬化性樹脂材料等を用いることができる。
熱可塑性樹脂を用いることにより、透明フィルム1と印刷層3との密着性を特に優れたものとすることができる。また、熱可塑性樹脂は、一般に、前述した溶剤に対して、優れた溶解性、分散性を示すため、インク中、形成される印刷層3中での不本意な組成のばらつきを効果的に防止することができ、インクの保存安定性、製造される化粧板100の信頼性を特に優れたものとすることができる。また、インクのインクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
また、インクが硬化性樹脂材料を含むものである場合、インクを用いて形成される印刷層3の透明フィルム1に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
また、インクが光硬化性樹脂(特に、紫外線硬化性樹脂)を含むことにより、光の照射タイミング等を調整することにより、より容易かつ確実に、適切なタイミングでインクの流動性を低下させることができ、所望の形状、パターンの印刷層3をより容易かつ確実に形成することができる。
光硬化性樹脂は、光の照射により硬化反応(重合反応)が進行するものであればよく、例えば、可視光線の照射により硬化反応(重合反応)が進行するものや、紫外線の照射により硬化反応(重合反応)が進行するもの(紫外線硬化性樹脂)等を用いることができるが、紫外線の照射により硬化反応(重合反応)が進行するものであるのが好ましい。
これにより、光硬化性樹脂の硬化反応の反応速度を特に優れたものとし、化粧板100の生産性を特に優れたものとすることができる。また、紫外線の照射には、広く流通している紫外線ランプ等を光源として用いることができるため、特殊な光源を必要とせず、また、化粧板100の製造装置の構成の簡略化を図ることができ、化粧板100の製造コストの抑制を図ることができる。また、紫外線硬化性樹脂の硬化物は、一般に、透明性の高いものであるため、印刷層3の色調に悪影響が及ぶことをより効果的に防止することができる。
光硬化性樹脂(重合性化合物)は、それ単独で液状をなすものであり、透明フィルム1を構成する樹脂材料を溶解または膨潤させる機能を有するもの、すなわち、前記溶剤として機能するものであるのが好ましい。
これにより、化粧板100の製造過程において蒸発する揮発成分を前記溶剤として用いなくてもインクの粘度を十分に低いものとすることができ、各種印刷法(特に、インクジェット法)による印刷層3の形成を好適に行うことができる。したがって、液体成分(揮発成分)の除去に伴うパターンの変形を防止することができ、所望の形状、パターンの印刷層3を容易かつ確実に形成することができる。
光硬化性樹脂(重合性化合物)としては、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を用いることができるが、インクは、光硬化性樹脂(重合性化合物)として、少なくともモノマー成分を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘度の成分であるため、前記溶剤として機能するものとすることができる。また、インクジェット法によるインクの吐出安定性を特に優れたものとする上で有利である。
光硬化性樹脂(重合性化合物)としてのモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸や、これらのエステル、各種誘導体(例えば、水素原子の少なくとも一部を他の原子または原子団で弛緩した化合物)等のアクリル系モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、前述した溶剤として好適に機能することができる。
(その他の成分)
インクは、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
光重合開始剤は、光の照射によってラジカルやカチオン等の活性種を発生し、上記光硬化性樹脂(重合性化合物)の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、光硬化性樹脂(重合性化合物)への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、ケトン系光ラジカル重合開始剤、イミダゾール系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、トリクロロメチルトリアジン系光ラジカル重合開始剤、カルバゾール系光ラジカル重合開始剤等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
インクがスリップ剤を含むものであると、レベリング作用により印刷層3の表面の平滑性が向上する。
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
インクが分散剤を含むものであると、顔料等の分散質の分散性を優れたものとすることができ、インクの保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、エポキシ樹脂等が挙げられる。
<コート層形成材用組成物>
以下、コート層2の形成に用いるコート層形成用組成物について詳細に説明する。
(硬質材料またはその前駆体)
コート層2の形成に用いるコート層形成用組成物は、コート層2を構成する硬質材料および/またはその前駆体を含むものである。
(溶剤)
コート層形成用組成物は、溶剤を含むものであってもよい。これにより、例えば、コート層形成用組成物中において、硬質材料やその前駆体を、溶解および/または分散させることができ、コート層形成用組成物の取り扱いのし易さ(取り扱い性)を向上させることができ、化粧板100の生産性を特に優れたものとすることができる。また、透明フィルム1とコート層2との密着性を特に優れたものとすることができる。
コート層形成用組成物中に含まれる溶剤としては、極性溶媒を好適に用いることができ、具体的には、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール性溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶媒等が挙げられる。
中でも、溶剤としては、水を用いるのが好ましい。
これにより、例えば、コート層形成用組成物が硬質材料の前駆体を含む場合に、硬質材料の前駆体をコート層形成用組成物中に均一に溶解させることができるとともに、水素イオン指数(pH)の制御が容易で、コート層形成用組成物中での不本意な水素イオン指数(pH)のばらつきの発生を効果的に防止することができる。このようなことから、重合反応を好適に進行させることができる。
(その他の成分)
コート層形成用組成物は、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、各種酸性物質、各種塩基性物質等の触媒、離型剤、重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
触媒としての塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
触媒としての酸性物質としては、例えば、酢酸、塩化水素、硫酸、硝酸や、イミドジスルホン酸ジアンモニウム等の潜在性酸触媒等が挙げられる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述したものに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本発明の化粧板は、図1、図2に示した化粧板100の形態に限定されず、機械的強度等を付与したい場合には、例えば、図7に示すように、芯材層5の下側にさらに支持層8を積層した構成としたものであってもよい。また、例えば、図8に示すように、意匠面側の最外層に保護層9を有するものでもよい。
また、本発明において、化粧板は、前述した各層の間に少なくとも1層の中間層を有するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、化粧板が、芯材層を有する場合について代表的に説明したが、本発明の化粧板は、芯材層を有していないものであってもよい。
また、前述した実施形態では、化粧板が、接着層を有する場合について代表的に説明したが、本発明の化粧板は、別途、接着層を有していないものであってもよい。
また、本発明の化粧板は、いかなる方法で製造されたものであってもよく、前述した方法で製造されたものに限定されない。
例えば、前述した製造方法についての実施形態での各工程の順番を入れ替えて行ってもよい。
より具体的には、例えば、前述した実施形態では、透明フィルムに印刷層を形成した後に、コート層を形成するものとして説明したが、コート層の形成は、印刷層の形成よりも前に行ってもよい。
また、前述した実施形態では、接着層を介して、印刷層が設けられた透明フィルムに金属層を接着(接合)する場合について代表的に説明したが、金属層は、例えば、乾式めっき法、湿式めっき法、溶射法等の各種成膜法により、接着層を介することなく、透明フィルム上に形成してもよい。
また、前述した実施形態では、印刷層を透明フィルム上に形成する場合について代表的に説明したが、印刷層は、例えば、金属層上に形成してもよい。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[1]化粧版の製造
(実施例1)
まず、透明フィルムとして、インク受容層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。この透明フィルムは、厚さが100μmであった。
次に、この透明フィルムのインク受容層が設けられた面側に、インクジェット法により、所定のパターン(木目調のパターン)で印刷層を形成した。
印刷層の形成は、顔料を含むラテックスインクを、インクジェット法で吐出することにより行った。
次に、透明フィルムの印刷層が設けられた面とは反対の面側に、メラミン系樹脂(反応モル比:1.4、樹脂固形分:50質量%)を付与した。その後、120℃の熱風乾燥機にて90秒乾燥し、樹脂比率:53質量%、揮発分率:3質量%のBステージ層(Bステージの硬化性樹脂(メラミン系樹脂)を含む材料で構成された層)を得た。なお、前記メラミン系樹脂は、反応釜に原料メラミンとホルマリンを所定配合比率で仕込み触媒添加後、沸点まで昇温して還流反応し、メラミン溶解が完了したことを確認した上で、反応終点に達したら脱水処理にて樹脂固形分を調整し冷却する方法により合成した。
一方、ポリエチレンテレフタレート製の支持基材(厚さ:50μm)で支持されたアルミニウム製の金属層(厚さ:0.5nm)と、難燃性不織布(ガラス不織布)を基材とし、バインダーを含むプリプレグからなる芯材層材料で構成された基体(芯材層となる部材)を用意し、ポリエチレンテレフタレート製の支持基材で支持された金属層の表面に、EVA系エマルジョン(ジャパンコーティングレジン社製、アクアテックスEC1400)を固形分で20g/m2となるように塗工し、支持基材の表面に、ウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業社製「SU-100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で10g/m2となるように塗工した。
次に、Bステージ層および印刷層が設けられた透明フィルム、エマルジョンが塗工されたポリエチレンテレフタレート製の支持基材で支持された金属層、および、バインダーを含む基体を、この順で積層した。このとき、Bステージ層および印刷層が設けられた透明フィルムは、印刷層が設けられた側の面が、金属層に対向するように設置した。また、ポリエチレンテレフタレート製の支持基材で支持された金属層は、支持基材が基体(芯材層となる部材)に対向するように設置した。
その後、140℃、2MPaの条件で40分間加熱加圧成形して、硬質樹脂材料で構成されたコート層(厚さ:15μm)、透明フィルム(厚さ:100μm)、印刷層、第1の接着層、金属層(厚さ:0.5nm)、第2の接着層、および、芯材層(厚さ:50μm)がこの順で積層されてなる厚さ0.65mmの化粧板(メラミン化粧板)を得た(図1参照)。
なお、難燃性不織布(ガラス不織布)としては、Tガラスのガラス繊維で構成され、坪量が23.4g/m2のものを用いた。また、プリプレグ中に含まれるバインダーは、アクリル樹脂であった。また、プリプレグ中における難燃性不織布:100質量部に対するバインダーの含有率は1.50質量部であった。
(実施例2~4)
各層の条件を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして化粧板を製造した。
(実施例5)
透明フィルムの印刷層が設けられた面側に、メラミン系樹脂(反応モル比:1.4、樹脂固形分:50質量%)を付与し、当該面が化粧板の外表面となるようにした以外は、前記実施例1と同様にして化粧板を製造した。すなわち、本実施例では、化粧板を、コート層、印刷層、透明フィルム、第1の接着層、金属層、第2の接着層、および、芯材層がこの順で積層されたものとして製造した(図2参照)。
(実施例6~8)
各層の条件を表1に示すように変更した以外は、前記実施例5と同様にして化粧板を製造した。
(比較例1)
Bステージ層および印刷層が設けられた透明フィルムの印刷層が設けられた面側に、ウレタンアクリル複合粒子のエマルジョンを塗工し、金属層を介することなく、前記エマルジョンを介して、透明フィルムとバインダーを含む基体とを積層し、その後、加熱加圧成形した以外は、前記実施例1と同様にして化粧板を製造した。
(比較例2)
印刷層の形成を省略した以外は、前記実施例1と同様にして化粧板を製造した。
(比較例3)
透明フィルムの印刷層が設けられた面とは反対の面側へのメラミン系樹脂の付与を省略した以外は、前記実施例1と同様にして化粧板を製造した。
前記各実施例および各比較例の化粧板の条件を表1にまとめて示した。なお、前記各実施例の化粧板では、透明フィルムについての380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率が、いずれも、99%以上であり、コート層についての380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率が、いずれも99%以上であり、コート層についてのマルテンス硬度(マルテンス硬さ)が、いずれも400MPa以上600MPa以下の範囲内の値であり、金属層についての380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率が、いずれも1%以下であった。また、前記各実施例および各比較例の化粧板の芯材層は、いずれも、コーンカロリー燃焼試験をした際の発熱量が、6MJ/m2以下8MJ/m2以下のものであった。
[2]評価
前記のようにして製造された各実施例および各比較例の化粧板について、以下の評価を行った。
[2.1]目視による審美性評価
芯材層が設けられた面とは反対の面側から化粧板を目視により観察し、その審美性を以下の基準に従い評価した。
A:金属光沢を呈し、非常に優れた外観を有している。
B:金属光沢を呈し、優れた外観を有している。
C:金属光沢を呈し、良好な外観を有している。
D:審美性がやや劣っている。
E:審美性が非常に劣っている。
[2.2]防汚性(耐汚染性)評価
JIS K6902の耐汚染性試験に準拠した方法で処理を行い、化粧板の表面の汚染材料の残りの状態を確認し、以下の基準に従い評価した。
A:汚染材料の残りが全く認められない。
B:汚染材料の残りがほとんど認められない。
C:汚染材料の残りがわずかに認められる。
D:汚染材料の残りがはっきりと認められる。
E:汚染材料の残りが顕著に認められる。
[2.3]耐擦性(耐摩耗性)評価
JIS K6902の耐摩耗性試験に準拠した方法で測定される摩耗量を確認し、以下の基準で評価を実施した。
○:摩耗量が0.1g/100以下である。
×:摩耗量が0.1g/100よりも大きい。
これらの結果を表2にまとめて示した。
表2から明らかなように、本発明では、優れた金属光沢を呈し、審美性に優れるとともに、耐擦傷性、防汚性(耐汚染性)に優れる化粧板が得られた。これに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。