以下、本発明の粘着層付き化粧シートについて、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<<粘着層付き化粧シート>>
化粧シートは、ビル、ホテル、マンションのロビーやエレベーター、会議室、オフィス等の壁面に取り付けることで、空間の見栄えや快適性を向上させることができるものである。また、化粧シートは、例えば、不動産だけでなく、電車等の車両や、飛行機、船舶等の内装材として使用されるものであってもよい。
本発明の粘着層付き化粧シートは、上記のような機能を有する化粧シートに加え、被着体に貼着される部位としての粘着層を備えるものである。
図1は、本発明の粘着層付き化粧シートの好適な実施形態を模式的に示す断面図である。図2は、粘着層付き化粧シートを、屈曲部を有する被着体に貼着した直後の状態の一例を模式的に示す断面図である。図3は、粘着層付き化粧シートを、屈曲部を有する被着体に貼着した後に、浮きを生じた状態の一例を模式的に示す断面図である。図4は、ボールタック試験の試験方法を説明するための図面である。
図1に示すように、粘着層付き化粧シート100は、メラミン系樹脂を含む材料で構成された硬質層13を有するメラミン化粧シート10と、両面接着性の粘着層20とを備える。そして、メラミン化粧シート10は、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された、少なくとも2つの基材、図示の構成では、第1の基材11および第2の基材12を有するものである。また、粘着層20は、被着体に貼着される部位である。そして、粘着層20は、斜面の傾斜角を10°にした以外は、JIS Z0237:2009に準じて測定されるボールタックが6以上11以下であり、かつ、粘着層付き化粧シート100をステンレス鋼板に貼着した状態で測定されるダイシェア強度が、10N/mm以上である。
これにより、屈曲部、湾曲部に貼着した場合でも、経時的な浮きの発生を好適に防止することができるとともに、被着体への貼り直しを容易に行うことができる粘着層付き化粧シートを提供することができる。より詳しく説明すると、上記ボールタックおよびダイシェア強度がいずれも所定の範囲であることにより、被着体に対して十分な粘着力を発揮することができ、被着体に貼着された状態の粘着層付き化粧シート100に引張応力、せん断応力が加わっても、これらの力による被着体からの粘着層付き化粧シート100の浮きを好適に防止することができるとともに、過剰な粘着力にならないため、必要時に被着体から粘着層付き化粧シート100を剥離することができ、被着体への貼り直しを容易に行うことができる。
前述したように、斜面の傾斜角を10°にした以外はJIS Z0237:2009に準じて測定される粘着層20のボールタックは、6以上11以下であればよいが、6以上10以下であるのが好ましく、6以上9以下であるのがより好ましく、6以上8以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮され、好適に適用することができる被着体の選択の幅がより広いものとなる。
また、前述したように、粘着層付き化粧シート100をステンレス鋼板に貼着した状態で測定されるダイシェア強度は、10N/mm以上であればよいが、10.5N/mm以上20N/mm以下であるのが好ましく、11N/mm以上18N/mm以下であるのがより好ましく、11N/mm以上15N/mm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮され、好適に適用することができる被着体の選択の幅がより広いものとなる。
これに対し、上記のような条件を満たさない場合には、上記のような優れた効果が得られない。
例えば、前記ボールタックが前記下限値未満である場合、被着体に対する粘着層付き化粧シートの粘着力が不十分となり、屈曲部、湾曲部に貼着した場合等に、経時的な浮きの発生を好適に防止することが困難になる。より具体的には、粘着層付き化粧シートを、屈曲部、湾曲部を有する被着体に貼着した場合に、貼着直後においては、被着体と十分に密着していたとしても(図2参照)、せん断応力、引張応力等により、経時的に被着体からの浮きを発生しやすくなる(図3参照)。
また、前記ボールタックが前記上限値を超える場合、被着体に対する粘着層付き化粧シートの粘着力が強くなりすぎ、被着体への粘着層付き化粧シートの貼り直しが困難となる。
また、前記ダイシェア強度が前記下限値未満である場合、被着体に対する粘着層付き化粧シートの粘着力が不十分となり、屈曲部、湾曲部に貼着した場合等に、経時的な浮きの発生を好適に防止することが困難になる。
また、前記ダイシェア強度が前記上限値を超える場合、被着体に対する粘着層付き化粧シートの粘着力が強くなりすぎ、被着体への粘着層付き化粧シート100の貼り直しが困難となる。
また、粘着層付き化粧シートがポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された基材を1つのみしか有していない場合、例えば、粘着層付き化粧シートのコシが不十分となり、粘着層付き化粧シートの取り扱いのし易さが著しく低下する。また、後に詳述するような立体感のある優れた審美性を得ることが困難となる。また、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された基材を1つのみしか有していない場合であっても、当該基材の厚さを大きくすることも考えられるが、この場合、粘着層付き化粧シートの生産性が低下する。
また、粘着層付き化粧シートが2つ以上の基材を有していても、当該基材がポリエチレンテレフタレートを含まない材料で構成されている場合、例えば、粘着層付き化粧シートの耐熱性、透明性、鉛筆硬度が低下する等の問題を生じる。また、粘着層付き化粧シートを施工する際の作業性が低下する場合がある。
また、粘着層付き化粧シートが硬質層を有さない場合、粘着層付き化粧シートの防汚性、耐擦性等が著しく低いものとなる。
また、粘着層付き化粧シートが硬質層を有していても、当該硬質層がメラミン系樹脂を含まない材料で構成されたものである場合、例えば、粘着層付き化粧シート全体としての耐久性、耐薬品性、耐擦性等が低下する等の問題を生じる。
上記のように、粘着層20についてのボールタックは、斜面の傾斜角を10°にした以外は、JIS Z0237:2009に準じた方法で測定することができる(図4参照)。
また、粘着層付き化粧シート100を被着体としてのステンレス鋼板に貼着した状態で測定されるダイシェア強度は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、10mm角、厚さ0.7mmの市販のガラスエポキシ基板(ガラエポ基板)2枚を市販の接着剤にて接着しガラエポ積層体を作製する。次に、ケイカル板に3M社製プライマーを塗布し、粘着層付き化粧シートを貼り合わせて10mm角に切断したものを前記市販の接着剤にて粘着層付き化粧シートの硬質層側の表面をガラエポ基板と貼り合わせる。その後、12時間静置し、前記市販の接着剤を硬化させる。得られたサンプルはガラエポ基板面を下にしてテストボンダに設置する。そして、測定冶具がケイカル板だけに接触するようにし、10μm/秒の速度でダイシェア強度を測定することができる。後述する実施例および比較例については、上記条件でダイシェア強度の測定を行った。ダイシェア強度の測定には、例えば、万能テストボンダ―DAGE4000(Nordson DAGE社製)を用いることができる。
なお、粘着層付き化粧シート100は、使用時(被着体に貼着された状態)において、図1中の上側が観察者の視点側となるものである。
特に、本実施形態では、メラミン化粧シート10は、透明性を有する第1の基材11と、第1の基材11の一方の面側に設けられた印刷層(第1の印刷層)14と、第1の基材11の他方の面側に設けられた印刷層(第2の印刷層)15と、第1の基材11の第1の印刷層14が設けられた面側に配され、最外層を構成する硬質層13と、隠蔽性を有する第2の基材12と、第1の基材11および第2の基材12を接合する接着層(第1の接着層)16と、コア材(芯材層)17と、第2の基材12およびコア材(芯材層)17を接合する接着層(第2の接着層)18とを備えている。
そして、粘着層付き化粧シート100において、粘着層20は、メラミン化粧シート10の硬質層13とは反対の面、すなわち、コア材(芯材層)17に設けられている。
言い換えると、本実施形態の粘着層付き化粧シート100は、その使用時(被着体に貼着された状態)における観察者の視点側から、メラミン化粧シート10および粘着層20がこの順に配されており、メラミン化粧シート10は、粘着層付き化粧シート100の使用時(被着体に貼着された状態)における観察者の視点側から、硬質層13、印刷層(第1の印刷層)14、第1の基材11、印刷層(第2の印刷層)15、接着層(第1の接着層)16、第2の基材12、接着層(第2の接着層)18およびコア材(芯材層)17がこの順に配されている。
[メラミン化粧シート]
前述したように、メラミン化粧シート10は、第1の基材11と、第2の基材12と、硬質層13と、印刷層(第1の印刷層)14と、印刷層(第2の印刷層)15と、接着層(第1の接着層)16と、コア材(芯材層)17と、接着層(第2の接着層)18とを備えている。
<第1の基材>
第1の基材11は、メラミン化粧シート10が有する、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された、少なくとも2つの基材のうちの1つである。
第1の基材11がポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成されたものであることにより、曲げ外力等に対する安定性、取り扱いのし易さ、粘着層付き化粧シート100の生産コスト等の観点から有利である。また、第1の基材11の硬質層13や第1の接着層16に対する密着性をより向上させることができ、粘着層付き化粧シート100の耐久性を向上させることができる。また、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された第1の基材11は、一般に、適度な柔軟性を有しているため、粘着層付き化粧シート100全体としての加工性、取り扱いのし易さが向上する。
第1の基材11中におけるポリエチレンテレフタレートの含有率は、80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、95質量%以上であるのがさらに好ましい。
本実施形態において、第1の基材11は、透明性を有するものであり、硬質層13、第1の印刷層14および第2の印刷層15を支持する機能を有するものである。
第1の基材11が透明性を有することにより、粘着層付き化粧シート100の奥行きの異なる部位に存在する第1の印刷層14と第2の印刷層15と隠蔽層として機能する第2の基材12とを観察者に視認させることができ、立体感のある優れた審美性を得ることができる。
第1の基材11の380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率は、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の審美性をより優れたものとすることができる。
なお、第1の基材11は、ポリエステル以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート以外の樹脂材料、着色剤、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
第1の基材11は、第1の印刷層14が設けられる面、第2の印刷層15が設けられる面のうちの少なくとも一方に、インク受容層が設けられていてもよい。
これにより、例えば、第1の基材11と第1の印刷層14、第2の印刷層15との密着性、第1の印刷層14、第2の印刷層15の発色性をより優れたものとすることができる。
前記インク受容層としては、例えば、発泡体や、多数個の粒子を含み、当該粒子間に空隙(空孔)を有するもの等の多孔質体が挙げられる。
第1の基材11の厚さは、特に限定されないが、30μm以上300μm以下であるのが好ましく、40μm以上250μm以下であるのがより好ましく、50μm以上200μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100全体としての加工性、取り扱いのし易さがさらに向上する。また、第1の基材11を、後に詳述する第1の印刷層14と第2の印刷層との間隔を確保するギャップ層としてより好適に機能させることができ、粘着層付き化粧シート100全体として、より優れた審美性(立体感のある優れた審美性)を得ることができる。
<第2の基材>
第2の基材12は、メラミン化粧シート10が有する、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された、少なくとも2つの基材のうちの1つである。
第2の基材12がポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成されたものであることにより、曲げ外力等に対する安定性、取り扱いのし易さ、粘着層付き化粧シート100の生産コスト等の観点から有利である。また、第2の基材12の第1の接着層16や第2の接着層18に対する密着性をより向上させることができ、粘着層付き化粧シート100の耐久性を向上させることができる。また、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された第2の基材12は、一般に、適度な柔軟性を有しているため、粘着層付き化粧シート100全体としての加工性、取り扱いのし易さが向上する。
第2の基材12中におけるポリエチレンテレフタレートの含有率は、80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、95質量%以上であるのがさらに好ましい。
本実施形態において、第2の基材12は、隠蔽性を有するものである。言い換えると、第2の基材12は、隠蔽層として機能するものである。
これにより、第2の基材12の裏面側(第1の基材11に対向する面とは反対の面側)の様子を隠蔽することができ、粘着層付き化粧シート100の第2の基材12よりも裏側の構成や粘着層付き化粧シート100が設置される部位が、粘着層付き化粧シート100の外観に悪影響を与えることを効果的に防止することができる。その結果、所望の外観を確実に得ることができる。
特に、第2の基材12は、第1の印刷層14、第2の印刷層15が設けられる部位、すなわち、第1の印刷層14、第2の印刷層15の下地としての機能を有するものであり、粘着層付き化粧シート100の使用状態において、第1の印刷層14、第2の印刷層15よりも観察者の視点から離れた側(内側)に配される。これにより、第1の印刷層14と第2の印刷層15と第2の基材(隠蔽層)12との組み合わせの色調、パターンを、観察者に好適に視認させることができ、粘着層付き化粧シート100の審美性を特に優れたものとすることができる。
第2の基材12の380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率は、0%以上40%以下であるのが好ましく、0%以上30%以下であるのがより好ましく、0%以上25%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、隠蔽層としての第2の基材12を有することによる効果がより顕著に発揮される。
第2の基材12の色調は、特に限定されないが、白色であるのが好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の外観上のコントラストを向上させることができ、第1の印刷層14、第2の印刷層15の視認性、第1の印刷層14、第2の印刷層15等による審美性をさらに向上させることができる。また、幅広い色との組み合わせにおいて、優れた視認性、審美性を発揮させることができるため、第1の印刷層14、第2の印刷層15の色調の選択の幅が広がる。また、第1の印刷層14、第2の印刷層15が各部位で微妙な色調の変化を伴うものであっても、観察者にこのような微妙な色調の変化を視認させやすく、粘着層付き化粧シート100の審美性をさらに向上させる上で有利である。また、第1の印刷層14、第2の印刷層15の明度が比較的低いものであっても、粘着層付き化粧シート100全体としての明度を高めることができ、第1の印刷層14と第2の印刷層15との組み合わせによるパターンの視認性をより優れたものとすることができる。
第2の基材12は、例えば、発泡による光の散乱により、白色を呈するものであってもよい。
第2の基材12は、ポリエステル以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート以外の樹脂材料、着色剤(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料;カーボンブラック等の黒色顔料;その他の顔料;各種染料等)、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
第2の基材12は、例えば、表面の平坦性が高いものであってもよいし、また、エンボス加工、すじ目加工、ブラスト加工等の粗面化処理が施されたものであってもよい。粗面化処理は、対象となる面の全体に施されていてもよいし、面の一部にのみ施されていてもよい。
第2の基材12の厚さは、特に限定されないが、30μm以上300μm以下であるのが好ましく、40μm以上250μm以下であるのがより好ましく、50μm以上200μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100全体としての加工性、取り扱いのし易さがさらに向上する。
<硬質層>
硬質層13は、メラミン系樹脂を含む材料で構成されたものである。
このような硬質層13を有することにより、粘着層付き化粧シート100の耐擦性(傷のつき難さ)、防汚性(汚れの付き難さ、汚れの除去のし易さ)、耐久性等を優れたものとすることができる。また、粘着層付き化粧シート100は、適度な弾性、剛性を有し、取り扱い性(取り扱いのしやすさ)が優れたものとなる。
硬質層13は、その表面(第1の基材11に対向する面とは反対側の面)のマルテンス硬度(マルテンス硬さ)が200N/mm2以上800N/mm2以下であるのが好ましく、300N/mm2以上700N/mm2以下であるのがより好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100を特に傷が付き難いものとすることができる。
これに対し、硬質層13の表面のマルテンス硬度が前記下限値未満であると、硬質層13の耐擦傷性等が低く、傷が付き易いものとなる。
また、硬質層13の表面のマルテンス硬度が前記上限値を超えると、粘着層付き化粧シート100の加工性が低いものとなる可能性がある。
なお、硬質層13中には、メラミン系樹脂以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、無機充填剤、着色剤、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
硬質層13中におけるメラミン系樹脂の含有率は、特に限定されないが、80質量%以上100質量%以下であるのが好ましく、95質量%以上100質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
硬質層13の厚さは、特に限定されないが、1.0μm以上30μm以下であるのが好ましく、3.0μm以上20μm以下であるのがより好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の耐擦傷性、防汚性(耐汚染性)を特に優れたものとしつつ、粘着層付き化粧シート100の曲げ加工性等も特に優れたものとすることができる。
また、硬質層13の外表面(第1の基材11に対向する面とは反対側の面)側には、鏡面仕上げ、エンボス仕上げ等の表面仕上げが施されていてもよい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の審美性のさらなる向上を図ることができる。
以下、硬質層13を構成するメラミン系樹脂について説明する。
メラミン系樹脂は、構成成分としてメラミン化合物とアルデヒド化合物とを含む樹脂である。
メラミン化合物は、1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物で、トリアジン環に3つのアミノ基が導入された化合物である。
メラミン化合物の好ましい構造としては、例えば、下記式(3)で表されるもの等が挙げられる。
(式(3)中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上4以下の炭化水素基である。)
メラミン化合物としては、特に、式(3)のR1、R2およびR3がいずれも水素原子である化合物(メラミン)が好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の硬度をより優れたものとすることができる。また、粘着層付き化粧シート100を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
アルデヒド化合物は、分子内にアルデヒド基(-CHO)を有するものであればよく、下記式(2)で表されるもの等が挙げられる。
(式(2)中、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上10以下の炭化水素基である。)
アルデヒド化合物としては、特に、ホルムアルデヒドが好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の硬度をより優れたものとすることができる。また、粘着層付き化粧シート100を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
メラミン系樹脂は、構成成分としてメラミン化合物およびアルデヒド化合物を含むものであればよいが、メラミン化合物およびアルデヒド化合物に加え、さらにグアナミン化合物を構成成分として含むものであってもよい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の硬度を十分に優れたものとしつつ、粘着層付き化粧シート100の加工性を特に優れたものとすることができる。
グアナミン化合物は、1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物で、トリアジン環に2つのアミノ基が導入された化合物である。
グアナミン化合物の好ましい構造としては、例えば、下記式(1)で表されるもの等が挙げられる。
(式(1)中、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上10以下の炭化水素基である。)
グアナミン化合物としては、特に、式(1)のRがメチル基である化合物(アセトグアナミン)が好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の硬度および加工性をより高いレベルで両立することができる。また、粘着層付き化粧シート100を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
メラミン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、メラミン系化合物とアルデヒド系化合物を中性または弱アルカリ下において反応させて得られるもの等を用いることができる。
メラミン系化合物に対するアルデヒド系化合物の反応モル比((アルデヒド系化合物のモル量)/(メラミン系化合物のモル量)の値であり、以下、単に「反応モル比」ということがある。)は、特に限定されないが、1.0以上4.0以下であるのが好ましく、1.0以上2.0以下であるのがより好ましく、1.1以上1.8以下であるのがさらに好ましい。
反応モル比が前記下限値未満であると、未反応成分が増加し保存性低下、コスト高となる場合がある。
また、前記上限値を超えると、硬化後の樹脂柔軟性低下が著しくなる場合がある。
なお、メラミン系樹脂としては、1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、反応モル比や重量平均分子量等が異なる2種類以上のメラミン系樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
また、メラミン系樹脂としては、例えば、住友化学(株)製のメラミン系樹脂等、市販のものを用いることもできる。
<第1の印刷層>
第1の基材11の一方の面(硬質層13に対向する面。第1の面。)には、第1の印刷層14が設けられている。
第1の印刷層14は、粘着層付き化粧シート100の外観に大きな影響を与える部位である。特に、本実施形態においては、第1の印刷層14と第2の印刷層15とにより、所定のパターンを形成する。より詳しくは、第2の印刷層15とは、粘着層付き化粧シート100の奥行きの異なる部位に第1の印刷層14が存在することにより、立体感のある優れた審美性を得ることができる。
第1の印刷層14は、通常、インクを用いた各種の印刷法により形成された部位である。
第1の印刷層14は、通常、各種染料、各種顔料等の色材を含んでいる。色材としては、例えば、蛍光材料、りん光材料等を用いてもよい。
また、第1の印刷層14は、色材に加え、樹脂材料を含むものであってもよい。これにより、第1の印刷層14の第1の基材11に対する密着性をより優れたものとすることができ、粘着層付き化粧シート100の耐久性をより優れたものとすることができる。また、製造時において、第1の印刷層14の形成に用いられるインクの不本意な弾きや濡れ広がりをより効果的に防止または抑制することができ、第1の印刷層14のパターンの精度をより確実に優れたものとすることができる。
なお、第1の印刷層14中には、前述した以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、分散剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
第1の印刷層14は、いかなるパターンで設けられたものであってもよいが、通常、需要者の要求等に応じて決定されたものである。
第1の印刷層14のパターンとしては、例えば、木目調、石材調、筋目加工、各種幾何学模様等が挙げられる。
第1の印刷層14の印刷率(第1の基材11の平面積における第1の印刷層14が設けられた部位の平面積の割合)は、1%以上99%以下であるのが好ましく、2%以上95%以下であるのがより好ましく、3%以上90%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、第1の印刷層14が粘着層付き化粧シート100の外観に与える影響を十分に大きいものとしつつ、観察者に第2の印刷層15をより好適に視認させることができ、粘着層付き化粧シート100の審美性をより優れたものとすることができる。
なお、図示の構成では、第1の印刷層14は、第1の基材11の第1の面の一部のみに選択的に設けられているが、第1の印刷層14は、第1の基材11の第1の面の全体に設けられていてもよい。
第1の印刷層14の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上2.0μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上1.8μm以下であるのがより好ましく、0.3μm以上1.5μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、第1の印刷層14の発色性をより優れたものとすることができ、粘着層付き化粧シート100の審美性をより優れたものとすることができる。
なお、図示の構成では、第1の印刷層14は、第1の基材11の表面(外部)に付着(堆積)して設けられているが、第1の印刷層14は、その少なくとも一部が第1の基材11の内部に浸透して設けられたものであってもよい。また、例えば、粘着層付き化粧シート100の製造過程において、第1の基材11の一部が溶解等することにより、第1の基材11と第1の印刷層14との界面が不鮮明(不明瞭)になっていてもよい。
<第2の印刷層>
第1の基材11の第1の印刷層14が設けられた面とは反対側の面(第2の基材12に対向する面。第2の面。)には、第2の印刷層15が設けられている。
第1の印刷層14は、粘着層付き化粧シート100の外観に大きな影響を与える部位である。特に、本実施形態においては、第1の印刷層14と第2の印刷層15とにより、所定のパターンを形成する。より詳しくは、第1の印刷層14とは、粘着層付き化粧シート100の奥行きの異なる部位に第2の印刷層15が存在することにより、立体感のある優れた審美性を得ることができる。
第2の印刷層15は、通常、インクを用いた各種の印刷法により形成された部位である。
第2の印刷層15は、通常、各種染料、各種顔料等の色材を含んでいる。色材としては、例えば、蛍光材料、りん光材料等を用いてもよい。
また、第2の印刷層15は、色材に加え、樹脂材料を含むものであってもよい。これにより、第2の印刷層15の第1の基材11に対する密着性をより優れたものとすることができ、粘着層付き化粧シート100の耐久性をより優れたものとすることができる。また、製造時において、第2の印刷層15の形成に用いられるインクの不本意な弾きや濡れ広がりをより効果的に防止または抑制することができ、第2の印刷層15のパターンの精度をより確実に優れたものとすることができる。
なお、第2の印刷層15中には、前述した以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、分散剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
第2の印刷層15は、いかなるパターンで設けられたものであってもよいが、通常、需要者の要求等に応じて決定されたものである。
第2の印刷層15のパターンとしては、例えば、木目調、石材調、筋目加工、各種幾何学模様等が挙げられる。
第2の印刷層15の印刷率(第1の基材11の平面積における第2の印刷層15が設けられた部位の平面積の割合)は、1%以上100%以下であるのが好ましく、5%以上99%以下であるのがより好ましく、5%以上95%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、第2の印刷層15が粘着層付き化粧シート100の外観に与える影響を十分に大きいものとすることができ、粘着層付き化粧シート100の審美性をより優れたものとすることができる。また、第1の基材11と第2の基材12との接合強度、粘着層付き化粧シート100の耐久性もより優れたものとすることができる。
なお、図示の構成では、第2の印刷層15は、第1の基材11の第2の面の一部のみに選択的に設けられているが、第2の印刷層15は、第1の基材11の第2の面の全体に設けられていてもよい。
第2の印刷層15の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上2.0μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上1.8μm以下であるのがより好ましく、0.3μm以上1.5μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、第2の印刷層15の発色性をより優れたものとすることができ、粘着層付き化粧シート100の審美性をより優れたものとすることができる。
なお、図示の構成では、第2の印刷層15は、第1の基材11の表面(外部)に付着(堆積)して設けられているが、第2の印刷層15は、その少なくとも一部が第1の基材11の内部に浸透して設けられたものであってもよい。また、例えば、粘着層付き化粧シート100の製造過程において、第1の基材11の一部が溶解等することにより、第1の基材11と第2の印刷層15との界面が不鮮明(不明瞭)になっていてもよい。
また、図示の構成では、第2の印刷層15は、第1の基材11の第2の面の一部に選択的に設けられているが、第2の印刷層15は、第1の基材11の第2の面全面に設けられていてもよい。
<コア材(芯材層)>
本実施形態の粘着層付き化粧シート100では、第2の基材12の第1の基材11に対向する面とは反対の面側に、コア材(芯材層)17をさらに備えている。
これにより、粘着層付き化粧シート100の形状の安定性、耐熱性、耐久性が特に優れたものとなる。また、粘着層付き化粧シート100の目的部位への設置、施工のしやすさが向上する。
コア材(芯材層)17としては、例えば、化学繊維基材で構成されたもの、フェノール系樹脂で構成されたもの、金属材料で構成されたもの等が挙げられる。
コア材(芯材層)7に用いられる化学繊維基材の材質については、特に限定されるものではなく、例えば、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、無機繊維等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリベンゾオキサゾール樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維(ステンレス繊維)等を挙げることができる。
中でも、コア材(芯材層)17は、ガラス繊維を含むものであるのが好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の形状の安定性、耐熱性、難燃性、耐久性がさらに優れたものとなる。粘着層付き化粧シート100として不燃認定を取得することができる。
ガラス繊維を含むコア材(芯材層)17としては、特に限定されず、例えば、ガラスクロス、ガラス不織布等が挙げられ、中でも不燃性、強度の点からガラスクロスが好ましい。
ガラスクロスとしては、特に限定されず、例えば、平織、綾織、朱子織、からみ織、模紗織、斜紋織、二重織等が挙げられ、中でも材料コストと加工性の面から平織のガラスクロスが好ましい。
また、ガラスクロスを構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。
これらの中でもTガラスを用いた場合、ガラスクロスの熱膨張係数を小さくすることができる。また、Eガラスを用いた場合、十分な機能を確保しつつ、粘着層付き化粧シート100の生産コストをより低いものとすることができる。
ガラスクロスの重量は、特に限定するものではないが、建築基準法第2条第9号の不燃性適合要件である「燃焼後の亀裂・貫通があってはならない」を満たす必要がある場合は、坪量80g/m2以上とすることが好ましい。また、重量の上限は特に制約を必要としないが、材料コストと加工性の面から坪量250g/m2以下が好ましい。
また、コア材(芯材層)17は、複数の層が積層されたものであってもよい。例えば、フェノール系樹脂を繊維性の基材(例えば、クラフト紙等の紙で構成された基材)に含浸させてなる部材を複数重ね合わせて接合したものをコア材(芯材層)17として用いることができる。
コア材(芯材層)17に用いられる金属材料としては、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)や、これらのうちの少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。中でも、アルミニウムが好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の不燃性を特に優れたものとすることができる。また、軽量化や低コスト化、反りの防止等の観点からも有利である。
コア材(芯材層)17の厚さは、80μm以上であるのが好ましい。これにより、粘着層付き化粧シート100に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほど粘着層付き化粧シート100の厚みと重量が増大するとともに、コストもかさむため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、500μm以下にすることがより好ましい。
<第1の接着層>
接着層(第1の接着層)16は、第1の印刷層14、第2の印刷層15が設けられた第1の基材11と、第2の基材12とを接合する機能を有する。
接着層16は、接着剤の硬化物で構成されている。
前記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド系接着剤、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)、酢酸ビニル系接着剤、ポリエチレンビニルアセテート系接着剤等が挙げられる。
なお、接着層16中には、前述した以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、分散剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
接着層16の厚さは、特に限定されないが、3.0μm以上20μm以下であるのが好ましく、4.0μm以上15μm以下であるのがより好ましく、5.0μm以上10μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の厚型化をより好適に防止しつつ、第1の基材11と第2の基材12との接合強度、粘着層付き化粧シート100の加工性をより優れたものとすることができる。
<第2の接着層>
接着層(第2の接着層)18は、第2の基材12と、コア材(芯材層)17とを接合する機能を有する。
接着層18は、接着剤の硬化物で構成されている。
前記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド系接着剤、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)、酢酸ビニル系接着剤、ポリエチレンビニルアセテート系接着剤等が挙げられる。
なお、接着層18中には、前述した以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、スリップ剤(レベリング剤)、フィラー、紫外線吸収剤、可塑剤、分散剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
接着層18の厚さは、特に限定されないが、3.0μm以上20μm以下であるのが好ましく、4.0μm以上15μm以下であるのがより好ましく、5.0μm以上10μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の厚型化をより好適に防止しつつ、第2の基材12とコア材(芯材層)17との接合強度、粘着層付き化粧シート100の加工性をより優れたものとすることができる。
メラミン化粧シート10は、全体厚さ(平均厚さ)が0.1mm以上2mm以下であるのが好ましく、0.2mm以上1.2mm以下であるのがより好ましい。
これにより、メラミン化粧シート10は、十分な強度を有しつつ、加工性、取り扱い性が特に優れたものとなる。
[粘着層]
粘着層付き化粧シート100は、前述したメラミン化粧シート10に加え、両面接着性の粘着層20を備えている。
これにより、被着体に対して、メラミン化粧シート10を好適に貼着させることができる。
粘着層20は、前述したようなボールタックの条件およびダイシェア強度の条件を満足すれば、特に限定されず、例えば、ゴム系、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の各種粘着剤を含む材料で構成されたものとすることができるが、アクリル樹脂および架橋剤を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、より好適に前述した範囲に調整することができる。
前記アクリル樹脂としては、アクリル酸エステル共重合体を好適に用いることができる。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
前記アクリル樹脂の酸価は、特に限定されないが、40KOHmg/g以上120KOHmg/g以下であるのが好ましく、50KOHmg/g以上100KOHmg/g以下であるのがより好ましく、70KOHmg/g以上90KOHmg/g以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
前記アクリル樹脂の水酸基価は、特に限定されないが、0.5KOHmg/g以下であるのが好ましく、0.4KOHmg/g以下であるのがより好ましく、0KOHmg/g以上0.2KOHmg/g以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、52万以上100万以下であるのが好ましく、54万以上80万以下であるのがより好ましく、56万以上70万以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
前記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられるが、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
また、粘着層20は、オルガノシラン系化合物を含んでなるものであるのが好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
粘着層20の形成に用いることのできるオルガノシラン系化合物としては、例えば、綜研化学社製のKB-4等が挙げられる。
粘着層20の形成に用いる前記アクリル系樹脂100質量部に対する前記オルガノシラン系化合物の割合は、0.2質量部以上5.0質量部以下であるのが好ましく、0.3質量部以上4.0質量部以下であるのがより好ましく、0.4質量部以上2.5質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
粘着層20は、前記以外の成分を含んでいてもよいが、粘接着付与剤を含まないものであるのが好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
粘着層20のゲル分率は、40%以上70%以下であるのが好ましく、43%以上67%以下であるのがより好ましく、46%以上65%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
なお、ゲル分率は、例えば、粘着層20のサンプルを、25℃の酢酸エチルに、3時間浸漬して、その後、125μmメッシュステンレス鋼製のフィルターでろ過し、温度80℃で10分間乾燥した後、前記酢酸エチルに浸漬する前の前記サンプルの質量に対する酢酸エチルへの浸漬、乾燥後の前記サンプルの質量の比率として求めることができる。
粘着層20の厚さは、特に限定されないが、45μm以上であるのが好ましく、50μm以上200μm以下であるのがより好ましく、60μm以上100μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ボールタックおよびダイシェア強度の条件を、さらに好適に前述した範囲に調整することができる。
<インク>
以下、第1の印刷層14、第2の印刷層15の形成に用いるインクについて詳細に説明する。以下の説明では、第1の印刷層14、第2の印刷層15をまとめて、単に「印刷層」とも言う。
印刷層の形成に用いるインクは、通常、着色剤を含むものである。
以下、インクの構成成分について説明する。
(着色剤)
インクは、固形分として、通常、着色剤を含むものである。
着色剤としては、例えば、各種顔料や各種染料等を用いることができ、また、蛍光材料、りん光材料等を用いることもできるが、インクは、着色剤として顔料を含むものであるのが好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の耐久性を特に優れたものとすることができる。
複数種のインクを用いる場合、例えば、色の三原色(シアン(藍紫色)、マゼンダ(紅紫色)およびイエロー(黄色))に対応するインクを用いることができる。
また、例えば、有彩色のインクと組み合わせて、黒色のインクを用いてもよい。
これにより、インクの使用量を抑制しつつ、濃色を好適に表現することができたり、引き締まった黒色を表現することができる等の効果が得られる。
また、例えば、白色のインクを用いてもよい。
これにより、例えば、有彩色のインクによる印刷層のコントラスト等を特に優れたものとすることができ、粘着層付き化粧シート100の審美性を特に優れたものとすることができる。
特に、藍紫色(シアン)を呈する藍紫色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:2、および、C.I.ピグメントブルー60よりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
また、紅紫色(マゼンダ)を呈する紅紫色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、および、C.I.ピグメントバイオレット37よりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
また、黄色(イエロー)を呈する黄色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー138、および、C.I.ピグメントイエロー139よりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
また、赤色(レッド)を呈する赤色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントレッド177および/またはC.I.ピグメントレッド254を用いるのが好ましい。
また、緑色(グリーン)を呈する緑色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントグリーン36および/またはC.I.ピグメントグリーン58を用いるのが好ましい。
また、青色(ブルー)を呈する青色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6を用いるのが好ましい。
また、黒色(ブラック)を呈する黒色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、カーボンブラック、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラックおよび銅クロムマンガンブラックよりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
また、白色(ホワイト)を呈する白色顔料インクを用いる場合、当該インクを構成する顔料としては、酸化チタン、鉛白、亜鉛華、リトポン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、カオリン、雲母、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、グロスホワイトや、白色プラスチックピグメント等を用いることができる。
(溶剤)
インクは、例えば、溶剤を含むものであってもよい。
これにより、例えば、インクの流動性をより良好なものに調整することができ、所望のパターンの印刷層をより高い精度で形成することができる。
また、インクが付与される基材の構成材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を溶解または膨潤させる機能を有する溶剤を含むものであると、インクを当該基材に付与した際に、当該基材の一部(インクが付与された表面付近の領域)に吸収させ、当該基材を部分的に溶解または膨潤させることができる。その結果、形成される印刷層は当該基材に強固に結合したものとなり、当該基材に対する印刷層の密着性をより優れたものとすることができ、最終的に得られる粘着層付き化粧シート100の耐久性をより優れたものとすることができる。また、インクを当該基材の所望の部位に選択的に吸収させることができるため、当該基材上でのはじきや過剰な濡れ広がりをより効果的に防止することができ、印刷層のパターンが乱れてしまうことをより確実に防止することができる。したがって、当該基材の変形等を確実に防止しつつ、所望の形状、パターンの印刷層をより容易かつより確実に形成することができ、粘着層付き化粧シート100の審美性等をより確実に優れたものとすることができる。
溶剤としては、例えば、アルコール化合物(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等の1価のアルコールやエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、およびこれらのフッ化物等)、ケトン化合物(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル化合物(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル化合物(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ラクトン化合物等を用いることができる。
インクが、溶剤として、アルキレングリコール化合物およびラクトン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含むものである場合、例えば、インクの保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、印刷後に、インクから溶剤を速やかに除去することができるため、粘着層付き化粧シート100の生産性を特に優れたものとすることができる。
溶剤として用いることのできるラクトン化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
中でも、溶剤は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、および、γ-ブチロラクトンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであってもよい。これにより、例えば、インクの保存安定性、インクジェット法による吐出安定性等をさらに優れたものとすることができる。
また、インクは、溶剤として、液状の重合性化合物(例えば、モノマー等)を含むものであってもよい。
これにより、インクが付与される基材に対する、当該インクを用いて形成される印刷層の密着性を特に優れたものとすることができる。また、例えば、溶剤として、揮発性成分(粘着層付き化粧シート100の製造において揮発させることにより除去する成分)を用いる必要がなく、また、揮発性成分を用いる場合でも、その使用量を抑制することができるため、粘着層付き化粧シート100の生産性を特に優れたものとすることができる。
液状の重合性化合物としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の各種硬化性樹脂等を用いることができるが、光硬化性樹脂が好ましく、紫外線硬化性樹脂がより好ましい。
光硬化性樹脂(特に、紫外線硬化性樹脂)を液状の重合性化合物として含むことにより、印刷工程で、より容易かつ確実に、適切なタイミングでインクに含まれる硬化性樹脂(光硬化性樹脂)を確実に硬化させること(液状の重合性化合物を除去すること)ができるため、所望の形状、パターンの印刷層をより容易かつ確実に形成することができる。
なお、溶剤としての液状の重合性化合物(例えば、モノマー等)については、後の「(樹脂材料)」の項目で詳細に説明する。
(樹脂材料)
インクは、樹脂材料を含むものであってもよい。
これにより、インクが付与される基材に対する、当該インクを用いて形成される印刷層の密着性を特に優れたものとすることができる。
樹脂材料としては、各種熱可塑性樹脂、硬化性樹脂材料等を用いることができる。
熱可塑性樹脂を用いることにより、当該インクが付与される基材に対する、当該インクを用いて形成される印刷層の密着性を特に優れたものとすることができる。また、熱可塑性樹脂は、一般に、前述した溶剤に対して、優れた溶解性、分散性を示すため、インク中、形成される印刷層中での不本意な組成のばらつきを効果的に防止することができ、インクの保存安定性、製造される粘着層付き化粧シート100の信頼性を特に優れたものとすることができる。また、インクのインクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
また、インクが硬化性樹脂材料を含むものである場合、当該インクが付与される基材に対する、当該インクを用いて形成される印刷層の密着性を特に優れたものとすることができる。
また、インクが光硬化性樹脂(特に、紫外線硬化性樹脂)を含むことにより、光の照射タイミング等を調整することにより、より容易かつ確実に、適切なタイミングでインクの流動性を低下させることができ、所望の形状、パターンの印刷層をより容易かつ確実に形成することができる。
光硬化性樹脂は、光の照射により硬化反応(重合反応)が進行するものであればよく、例えば、可視光線の照射により硬化反応(重合反応)が進行するものや、紫外線の照射により硬化反応(重合反応)が進行するもの(紫外線硬化性樹脂)等を用いることができるが、紫外線の照射により硬化反応(重合反応)が進行するものであるのが好ましい。
これにより、光硬化性樹脂の硬化反応の反応速度を特に優れたものとし、粘着層付き化粧シート100の生産性を特に優れたものとすることができる。また、紫外線の照射には、広く流通している紫外線ランプ等を光源として用いることができるため、特殊な光源を必要とせず、また、粘着層付き化粧シート100の製造装置の構成の簡略化を図ることができ、粘着層付き化粧シート100の製造コストの抑制を図ることができる。また、紫外線硬化性樹脂の硬化物は、一般に、透明性の高いものであるため、印刷層の色調に悪影響が及ぶことをより効果的に防止することができる。
光硬化性樹脂(重合性化合物)は、それ単独で液状をなすものであり、当該インクが付与される基材の構成材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を溶解または膨潤させる機能を有するもの、すなわち、前記溶剤として機能するものであるのが好ましい。
これにより、粘着層付き化粧シート100の製造過程において蒸発する揮発成分を前記溶剤として用いなくてもインクの粘度を十分に低いものとすることができ、各種印刷法(特に、インクジェット法)による印刷層の形成を好適に行うことができる。したがって、液体成分(揮発成分)の除去に伴うパターンの変形を防止することができ、所望の形状、パターンの印刷層を容易かつ確実に形成することができる。
光硬化性樹脂(重合性化合物)としては、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を用いることができるが、インクは、光硬化性樹脂(重合性化合物)として、少なくともモノマー成分を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘度の成分であるため、前記溶剤として機能するものとすることができる。また、インクジェット法によるインクの吐出安定性を特に優れたものとする上で有利である。
光硬化性樹脂(重合性化合物)としてのモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸や、これらのエステル、各種誘導体(例えば、水素原子の少なくとも一部を他の原子または原子団で弛緩した化合物)等のアクリル系モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、前述した溶剤として好適に機能することができる。
(その他の成分)
インクは、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
光重合開始剤は、光の照射によってラジカルやカチオン等の活性種を発生し、上記光硬化性樹脂(重合性化合物)の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、光硬化性樹脂(重合性化合物)への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、ケトン系光ラジカル重合開始剤、イミダゾール系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、トリクロロメチルトリアジン系光ラジカル重合開始剤、カルバゾール系光ラジカル重合開始剤等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
インクがスリップ剤を含むものであると、レベリング作用により印刷層の表面の平滑性が向上する。
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
インクが分散剤を含むものであると、顔料等の分散質の分散性を優れたものとすることができ、インクの保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、エポキシ樹脂等が挙げられる。
<硬質層形成用組成物>
以下、硬質層13の形成に用いる硬質層形成用組成物について詳細に説明する。
(硬質材料またはその前駆体)
硬質層13の形成に用いる硬質層形成用組成物は、硬質層13を構成する硬質材料および/またはその前駆体を含むものである。
(溶剤)
硬質層形成用組成物は、溶剤を含むものであってもよい。これにより、例えば、硬質層形成用組成物中において、硬質材料やその前駆体を、溶解および/または分散させることができ、硬質層形成用組成物の取り扱いのし易さ(取り扱い性)を向上させることができ、粘着層付き化粧シート100の生産性を特に優れたものとすることができる。また、第1の基材11と硬質層13との密着性を特に優れたものとすることができる。
硬質層形成用組成物中に含まれる溶剤としては、極性溶媒を好適に用いることができ、具体的には、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール性溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶媒等が挙げられる。
中でも、溶剤としては、水を用いるのが好ましい。
これにより、例えば、硬質層形成用組成物が硬質材料の前駆体を含む場合に、硬質材料の前駆体を硬質層形成用組成物中に均一に溶解させることができるとともに、水素イオン指数(pH)の制御が容易で、硬質層形成用組成物中での不本意な水素イオン指数(pH)のばらつきの発生を効果的に防止することができる。このようなことから、重合反応を好適に進行させることができる。
(その他の成分)
硬質層形成用組成物は、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、各種酸性物質、各種塩基性物質等の触媒、離型剤、重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
触媒としての塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
触媒としての酸性物質としては、例えば、酢酸、塩化水素、硫酸、硝酸や、イミドジスルホン酸ジアンモニウム等の潜在性酸触媒等が挙げられる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述したものに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本発明の粘着層付き化粧シートは、前述した形態に限定されず、さらに他の構成を備えていてもよい。例えば、機械的強度等を付与したい場合には、芯材層の下側にさらに支持層を積層した構成としたものであってもよい。また、例えば、意匠面側の最外層に保護層を有するものでもよい。
また、前述した実施形態では、メラミン化粧シートが、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された基材を2つ備える場合について説明したが、
メラミン化粧シートは、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成された基材を3つ以上有するものであってもよい。
また、本発明において、粘着層付き化粧シートは、前述した各層の間に少なくとも1層の中間層を有するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、粘着層付き化粧シートが、芯材層を有する場合について代表的に説明したが、本発明の粘着層付き化粧シートは、芯材層を有していないものであってもよい。
また、前述した実施形態では、第1の基材の両面に印刷層が設けられた構成について説明したが、第1の基材は、一方の面のみに印刷層が設けられたものであってもよいし、印刷層が設けられていないものであってもよい。
また、前述した実施形態では、第2の基材には印刷層が設けられていない構成について説明したが、第2の基材は、一方の面に印刷層が設けられたものであってもよいし、両面に印刷層が設けられたものであってもよい。
また、例えば、第1の基材の第2の基材に対向する面と、第2の基材の第1の基材に対向する面とは反対の面とに、印刷層が設けられていてもよい。このような場合、第2の基材をギャップ層として機能させることができる。
また、メラミン化粧シートは、印刷層を有していなくてもよい。
また、前述した実施形態では、第2の基材が隠蔽層としての機能を有する場合について、代表的に説明したが、第2の基材は、隠蔽層としての機能を有していなくてもよい。
また、前述した実施形態では、2つの基材が接着層により接合された構成について説明したが、2つの基材が、例えば、融着等により接合されており、接着層を有さない構成であってもよい。
また、粘着層は、被着体に貼着される前の状態では、例えば、剥離ライナーで被覆されていてもよい。
これにより、粘着層が好適に保護され、例えば、粘着層付き化粧シートの保管時や輸送時等に、粘着層に埃等の汚れが付着したり、目的としない部位に粘着層付き化粧シートが貼りついてしまうこと等を好適に防止することができる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[1]粘着層付き化粧シートの製造
(実施例1)
まず、第1の基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。第1の基材の厚さは、38μmであった。
次に、第1の基材の一方の面に、インクジェット法により、所定のパターン(幾何学模様のパターン)で印刷層(第1の印刷層)を形成し、次いで、第1の基材の他方の面に、インクジェット法により、所定のパターン(木目調のパターン)で印刷層(第2の印刷層)を形成した。
印刷層(第1の印刷層、第2の印刷層)の形成は、いずれも、顔料を含むラテックスインクを、インクジェット法による吐出することにより行った。
次に、第1の基材の第1の印刷層が設けられた面側に、メラミン系樹脂(反応モル比:1.4、樹脂固形分:50質量%)を付与した。その後、120℃の熱風乾燥機にて90秒乾燥し、樹脂比率:53質量%、揮発分率:3質量%のBステージ層(Bステージの硬化性樹脂(メラミン系樹脂)を含む材料で構成された層)としての硬質を形成した。なお、前記メラミン系樹脂は、反応釜に原料メラミンとホルマリンを所定配合比率で仕込み触媒添加後、沸点まで昇温して還流反応し、メラミン溶解が完了したことを確認した上で、反応終点に達したら脱水処理にて樹脂固形分を調整し冷却する方法により合成した。
一方、第2の基材として、厚さ38μmの白色のポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。
次に、接着剤を介して、第1の基材の第2の印刷層が設けられた面と、第2の基材とを対向させ、140℃、8MPaの条件で20分間加熱加圧することにより、メラミン系樹脂を硬化させるとともに、第1の基材の第2の印刷層が設けられた面と、第2の基材とを接合した。これにより、硬質層、第1の印刷層、第1の基材、第2の印刷層、第1の接着層および第2の基材がこの順に積層された積層体が得られた。なお、第1の接着層の形成には、接着剤として、エポキシ系接着剤を用いた。
一方、ポリエチレンテレフタレート製の基材上に、シリコーンで構成された剥離剤層が設けられた剥離ライナーを用意し、当該剥離ライナーの剥離剤層上に、アクリル酸エステル共重合体とイソシアネート系架橋剤と酢酸エチルとを含む粘着層形成用組成物を塗工し、その後、100℃で3分間乾燥させ50μmの粘着層を形成した。粘着層形成用組成物としては、アクリ酸エステル共重合体(酸価:80KOHmg/g、水酸基価:0KOHmg/g、重量平均分子量:600,000)を含むSKダイン1310DT(綜研化学社製)と、イソシアネート系架橋剤としてのウレタン樹脂を含むL-45K(綜研化学社製)との混合物を用いた。
次に、粘着層が設けられた剥離ライナー上に、メラミン化粧シートを重ね合わせて、前記粘着層と芯材層とを接触させ、25℃の環境下で7日間養生することにより、硬質層、第1の印刷層、第1の基材、第2の印刷層、第1の接着層、第2の基材、第2の接着層および芯材層がこの順に積層したメラミン化粧シートと、前記芯材層に接触して設けられた粘着層とを有する粘着層付き化粧シート(図1参照)が、前記粘着層が剥離ライナーで保護された状態で得られた。
(実施例2)
粘着層の条件を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして粘着層付き化粧シートを製造した。
(比較例1~5)
粘着層の条件を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして粘着層付き化粧シートを製造した。
前記各実施例および各比較例の粘着層付き化粧シートについての粘着層の条件を表1にまとめて示した。なお、表1中、アクリ酸エステル共重合体(酸価:80KOHmg/g、水酸基価:0KOHmg/g、重量平均分子量:600,000)を含むSKダイン1310DT(綜研化学社製)の固形分を「1310DT」、アクリ酸エステル共重合体(酸価:30KOHmg/g、水酸基価:1KOHmg/g、重量平均分子量:500,000)を含むSKダイン1717DT(綜研化学社製)の固形分を「1717DT」、アクリ酸エステル共重合体(酸価:20KOHmg/g、水酸基価:0KOHmg/g、重量平均分子量:500,000)を含むSKダイン1986DT(綜研化学社製)の固形分を「1986DT」、特殊ゴム系粘着剤で構成された両面テープVR5300(日東電工社製)を「VR5300」、アクリル樹脂系粘着剤で構成された両面テープ5150(日東電工社製)を「5150」、イソシアネート系架橋剤としてのウレタン樹脂を含むL-45K(綜研化学社製)の固形分を「L-45K」、エポキシ系架橋剤を含むE-5CM(綜研化学社製)の固形分を「E-5CM」、オルガノシラン系化合物を含むKB-4(綜研化学社製)の固形分を「KB-4」と示した。また、ゲル分率の値としては、前述した条件で測定した結果を示した。また、表1には、斜面の傾斜角を10°にした以外は、JIS Z0237:2009に準じて測定された粘着層についてのボールタック、および、粘着層付き化粧シートをステンレス鋼板に貼着した状態で測定されるダイシェア強度も併せて示した。なお、ダイシェア強度の測定は、万能テストボンダ―DAGE4000(Nordson DAGE社製)を用いて行った。また、前記各実施例の粘着層付き化粧シートでは、第1の基材および硬質層の380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率が、いずれも、90%以上であり、第2の基材の380nm以上780nm以下の範囲の各波長についての光の透過率が、いずれも、25%以上であり、硬質層についてのマルテンス硬度(マルテンス硬さ)が、いずれも300N/mm2以上700N/mm2以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例および各比較例の粘着層付き化粧シートの芯材層は、いずれも、コーンカロリー燃焼試験をした際の発熱量が、6MJ/m2以下のものであった。
[2]評価
前記のようにして製造された各実施例および各比較例の粘着層付き化粧シートについて、以下の評価を行った。
[2.1]審美性
剥離ライナーを除去した粘着層付き化粧シートを石膏ボード(吉野石膏社製)に貼着した状態で、粘着層付き化粧シートを観察し、その審美性を以下の基準に従い評価した。
A:立体感に溢れ、非常に優れた外観を有している。
B:立体感があり、優れた外観を有している。
C:立体感があり、良好な外観を有している。
D:立体感に劣り、審美性がやや劣っている。
E:立体感に劣り、審美性が非常に劣っている。
[2.2]防汚性(耐汚染性)試験
JIS K6902の耐汚染性試験に準拠した方法で処理を行い、粘着層付き化粧シートの表面の汚染材料の残りの状態を確認し、以下の基準に従い評価した。
A:汚染材料の残りが全く認められない。
B:汚染材料の残りがほとんど認められない。
C:汚染材料の残りがわずかに認められる。
D:汚染材料の残りがはっきりと認められる。
E:汚染材料の残りが顕著に認められる。
[2.3]浮きの生じにくさ
前記各実施例および各比較例の粘着層付き化粧シートからA4サイズの小片を切り出した。
一方、厚さ0.6cmのA4サイズのケイカル板材を用意した。
ケイカル板材表面に3M社製プライマーを塗布した後10分放置して乾燥させた後に、小片から剥離ライナーを除去した後、前記ケイカル板材の側面を跨ぐように、ケイカル板材の上面から下面にわたって貼着した。このとき、小片の粘着層の全面がケイカル板材の表面(上面、側面および下面)に密着するようにした。
各小片を貼着した板材を温度25℃、湿度40%RHの環境下で、1日間静置し、その後、目視により、前記ケイカル板材の側面部付近における状態を観察し、以下の基準に従い評価した。
A:ケイカル板材からの小片の浮きが全く認められない。
B:ケイカル板材からの小片の浮きがほとんど認められない。
C:ケイカル板材からの小片の浮きがわずかに認められる。
D:ケイカル板材からの小片の浮きがはっきりと認められる。
E:ケイカル板材からの小片の浮きが顕著に認められる。
[2.4]貼り直しのしやすさ
前記各実施例および各比較例の粘着層付き化粧シートかA4サイズの小片を切り出し、当該小片から剥離ライナーを除去した後、これらを3M社製プライマーEC1368を塗布した金属鋼板の表面に貼着した。
その後、金属鋼板から小片を剥離し、剥離した小片を再度金属鋼板に貼着することを試み、以下の基準に従い評価した。
A:小片の剥離、金属鋼板への再貼着をきわめて容易に行うことができる。
B:小片の剥離、金属鋼板への再貼着を比較的容易に行うことができる。
C:金属鋼板からの小片を剥離する際の剥離力がやや大きいが、小片の剥離、金属鋼板への再貼着を問題なく行うことができる。
D:金属鋼板からの小片を剥離が困難で、小片の剥離、金属鋼板への再貼着に支障がある。
E:金属鋼板からの小片を剥離が極めて困難で、小片の剥離、金属鋼板への再貼着に支障がある。
これらの結果を表2にまとめて示した。
表2から明らかなように、本発明では、被着体に貼着した場合における経時的な浮きの発生を好適に防止することができるとともに、被着体への貼り直しを容易に行うことができた。また、本発明では、優れた審美性(特に、立体感のある優れた審美性)を有するとともに、防汚性(耐汚染性)にも優れていた。これに対し、各比較例では、満足な結果が得られなかった。
また、第1の基材に対する第1の印刷層の形成を省略し、基材の一方の面のみに印刷層を設けた以外は、前記と同様にして、粘着層付き化粧シートの製造、評価を行ったところ、[2.2]~[2.4]については、前記と同様の結果が得られた。