JP7061852B2 - 加飾された多孔質材の製造方法 - Google Patents
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Description
多孔質であるため非常に軽量であり、孔がいずれかの部分で連結しているため通気性や透過性、透光性、吸水性、断熱性等の様々な機能をもつ。また、孔の内部に空気や液体を保持することが可能であるため、衝撃吸収性、吸音性、吸水性、断熱性、又はエネルギー吸収性などをもつ。さらに、比表面積が大きくなるため、表面での化学反応性等も高くなる。また、加工性に優れており、容易に切断や曲げが可能である。
そのような性質と、素材が本来もつ特徴を併せ持つため、多様な用途に利用されている。
また、断熱材としても多孔質材が多く用いられる。グラスウール、ロックウール、ガラスクロス等、そのままの形状で使用されるものもあれば、吸音材と同様に圧縮成形したものもある。
吸音材や断熱材等の多孔質材の加飾方法としては、表面を立体加工して凹凸等をつける方法、塗装又は印刷により色及び/又は模様をつける方法、ファブリックで覆う方法等があるが、よりユーザーのニーズに対応し、表現の幅を広げるためには、オンデマンド印刷による加飾方法が適している。
一方、塗料等の粘度が高いインクは、多孔質材に対しても比較的基材内部に浸透しにくいため塗装しやすいが、デジタル印刷に比べ表現力が低い。
スクリーンインクのようにインク中の樹脂量が非常に多いインクで印刷した場合、多孔質材がもつ孔が塞がれてしまい、多孔質材が本来もつ機能を低下させてしまう恐れがある。
以下の記載において、多孔質材を「基材」と記すことがあり、水性インクジェットインクを単に「インク」又は「水性インク」と記すことがある。
また、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。また、加飾された多孔質材を、「加飾物品」と記す場合もある。
本発明の実施形態の加飾された多孔質材の製造方法は、多孔質材の表面に、前処理液Aを付着させる第1前処理工程、第1前処理工程の後に、前記多孔質材の表面に、前処理液Bを付着させる第2前処理工程、及び、前記第2前処理工程の後に、水及び色材を含む水性インクジェットインクを用い、前記多孔質材の表面にインクジェット印刷する印刷工程を含み、前記前処理液Aは、多価金属塩及びイオン性粒子からなる群から選択される少なくとも1種である成分A、並びに水を含み、前記前処理液Bは、水分散性樹脂及びイオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である成分B、並びに水を含む。
吸音材の形状は通常、ボード状あるいはパネル状、すなわち板状であるが、これに限定されるものではない。
吸音材として利用されている多孔質金属体としては、アルミニウムの不織布をプレス加工したもの、及びアルミニウム、銅、マグネシウム、チタニウム、ステンレス鋼、ニッケル等の金属粉末を焼結して多孔質にしたもの、アルミニウム等の溶融金属を発泡させ気孔を作ることで多孔質にしたものなどが挙げられる。これらは、従来の石膏ボードやグラスウール、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、又はセラミック素材の吸音材のように、繊維や粒子が飛散することもなく、リサイクルも容易である。例えば市販品としては、アルミニウム粉末を焼結して製造された金属製吸音板「NDCカルム」(エヌデーシー販売株式会社)、アルミニウム繊維をプレス成形した「アルトーン」(ニチアス株式会社)、アルミニウム不織布をエキスパンドメタルでサンドイッチ状に密着・圧延した「ポアル」(株式会社ユニックス)、アルミニウム繊維を連続焼結させた「フルポーラス」(株式会社UACJ)、「メタシリー」(株式会社サーマル)等を好ましく使用できる。
α=(la+lt)/li=(li-lr)/li=1-lr/li
α:吸音率
li:入射音のエネルギー(=lr+la+lt)
lr:反射音のエネルギー
la:吸収音のエネルギー
lt:透過音のエネルギー
吸音率の種類として、垂直入射吸音率、ランダム入射吸音率、斜入射吸音率があるが、一般的にはJIS A 1409で規格化されたランダム入射吸音率で表記され、残響室法を用いて測定される。
水性インクジェットインクによる印刷前に、前処理液Aを用いた第1前処理工程、及び、前処理液Bを用いた第2前処理工程を行うことにより、多孔質材に高発色の画像を付与することができる。
成分Bの水分散性樹脂は、例えば、イオン性水分散性樹脂、非イオン性水分散樹脂のいずれでもよい。一実施形態において、成分Bは、イオン性水分散性樹脂、非イオン性水分散性樹脂及びイオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
例えば、一実施形態において、成分Aは、多価金属塩、イオン性水分散性樹脂及びイオン性表面を有する無機粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、成分Bは、イオン性水分散性樹脂、非イオン性水分散性樹脂及びイオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(a)成分Aは、多価金属塩及びカチオン性粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
(b)成分Bは、カチオン性水分散性樹脂及びカチオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
条件(a)は、下記の条件(a´)であることがより好ましい。
(a´)成分Aは、多価金属塩、カチオン性水分散性樹脂、及びカチオン性表面を有する無機粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
前処理液Aの成分Aに含まれうるイオン性粒子としては、例えば、イオン性水分散性樹脂、イオン性表面を有する無機粒子が挙げられる。
前処理液Aの成分Aに含まれうるイオン性粒子は、カチオン性、アニオン性のいずれでもよいが、カチオン性粒子がより好ましい。一実施形態において、成分Aは、多価金属塩及びカチオン性粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
無機粒子及び後述する樹脂粒子の表面電荷量は、粒子電荷量計で評価することができる。試料を中和するのに必要なアニオン量またはカチオン量を測定することで、表面電荷量を算出することができる。具体的には、カチオン性無機粒子の表面電荷量は、+50μeq/g以上であることが好ましく、+100μeq/g以上であることがより好ましい。粒子電荷計としては、日本ルフト株式会社製コロイド粒子電荷量計Model CAS等を用いることができる。
なお、前処理液Aの成分A及び前処理液Bの成分Bがそれぞれイオン性水分散性樹脂を含む場合、前処理液Aの成分Aに含まれるイオン性水分散性樹脂及び前処理液Bの成分Bに含まれるイオン性水分散性樹脂は、互いに同一であっても異なってもよい。
イオン性の水分散性樹脂は、樹脂粒子の表面がプラス又はマイナスに帯電した、電荷を帯びた樹脂粒子であり、樹脂粒子の表面がプラスに帯電した、正電荷を帯びた水分散性は、カチオン性水分散性樹脂であり、樹脂粒子の表面マイナスに帯電した、負電荷を帯びた水分散性は、アニオン性水分散性樹脂である。イオン性水分散性樹脂としては、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するカチオン性又はアニオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にカチオン性またはアニオン性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。
アニオン性の官能基は、代表的にはカルボキシ基、スルホ基等であり、アニオン性の分散剤の例としては、陰イオン界面活性剤等である。
代表的には、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いても良い。後述するが、これらの樹脂が複合された樹脂エマルションでも良い。
上記のとおり、これらの樹脂にカチオン性又はアニオン性の官能基を導入するか、又は、カチオン性又はアニオン性分散剤等で表面処理して、プラス又はマイナスの表面電荷を与えることができる。
一実施形態において、多孔質材の表面に留まりやすく、加熱乾燥等により基材表面に定着しやすいとの観点から、イオン性水分散性樹脂としては、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が0.5μm以上のサイズを持つイオン性水分散性樹脂(以下、「大粒子」と記す場合もある。)が好ましい。また、樹脂粒子の平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、これにより多孔質材の多孔を完全に塞ぐことなく、多孔質材の多孔質構造に由来する性能の低下を抑制することができる。
例えば、一実施形態において、前処理液Aの成分A及び前処理液Bの成分Bのうちの一方が、動的光散乱法により測定されるメジアン径が0.5μm以上10μm以下の大粒子を含んでよく、他方が、動的光散乱法により測定されるメジアン径が0.5μm未満の小粒子とを含んでよい。
なお、上記樹脂粒子の平均粒径は、前処理液A、前処理液B又はインクを調製する前の原料エマルション状態で測定することが、インクの場合であれば色材(顔料粒子)の影響を排除できることから好ましく、その測定値を本実施形態の平均粒径とすることができる。
小粒子の平均粒径は、0.5μm(500nm)未満、250nm以下であることがこの順に好ましい。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、表面処理液の保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
さらに、大粒子と小粒子は、両者を混合して平均粒径を測定した場合に、その粒度分布において二つのピークが存在する、すなわち各々が異なるピーク値を有するものであることが好ましい。
より好ましくは、大粒子のMFTは100℃以上であり、小粒子のMFTは50℃以下であり、特に、小粒子は室温で成膜することが好ましいため、40℃以下であることが一層好ましい。
また、大粒子のMFTと小粒子のMFTの差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
大粒子と小粒子の樹脂の分子構造は、同一であってもよいが、互いに異なるものを用いてもよい。
複合有機粒子のカチオン性ポリマー(塩基性ポリマー)としては、例えば、含窒素モノマーを含むポリマーであり、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルイミダゾール等の窒素複素環化合物を繰り返し単位として含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。コポリマーを形成するコモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の一般的なビニル化合物を、1種または2種以上選択して使用できる。
このような複合有機粒子の市販品として、「PP-15」、「PP-17」(共に明成化学工業株式会社製)を好ましく用いることができる。
また、前処理液Aの成分A及び前処理液Bの成分Bがいずれもイオン性水分散性樹脂を含む場合、前処理液Aに含まれる水分散性樹脂の含有量X(前処理液A全量に対する質量%)及び前処理液Bに含まれる水分散性樹脂の含有量Y(前処理液B全量に対する質量%)の比率は、X1に対しYが0.1~1.5程度であることが好ましく、0.5~1.2程度がより好ましい。
イオン性水溶性樹脂としては、アニオン性、カチオン性のいずれでもよいが、カチオン性水溶性樹脂が好ましい。カチオン性水溶性樹脂の例としては、アミノ基を有する水溶性樹脂が好ましい。
ポリエチレンイミンは、市販のものを用いることが可能であり、たとえば、(株)日本触媒製エポミンSP-006、SP-012、SP-018、SP-200(いずれも商品名);BASFジャパン(株)製Lupasol FG、Lupasol G20 Waterfree、Lupasol PR 8515(いずれも商品名)等を好ましく挙げることができる。
また、ポリアリルアミンとしては、たとえば日東紡績株式会社のPAA-01、PAA-03、PAA-05、アリルアミン塩重合体であるPAA-HCL-01、PAA-HCL-03、PAA-HCL-05、アリルアミンアミド硫酸塩重合体であるPAA-SA等が挙げられるがこの限りではない。
水は、前処理液の溶媒、すなわちビヒクルとして機能するものであり、水道水、イオン交換水、脱イオン水等が使用できる。水は揮発性の高い溶媒であり、多孔質材に吐出された後、容易に蒸発するので、表面処理後の多孔質材の細孔が塞がれるのを防止し、表面処理後の多孔質材の多孔質構造に由来する性能の低下を防止する作用を奏する。また、水は、無害で安全性が高く、VOCのような問題が無いので、表面処理された多孔質材を環境にやさしいものとすることができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
前処理液Aに水溶性有機溶剤が含まれる場合は、水溶性有機溶剤の含有量は、粘度調整と保湿効果の観点から、前処理液A中に30質量%以下(あるいは、溶媒中に50質量%以下)であることが好ましい。前処理液Bに水溶性有機溶剤が含まれる場合の、前処理液Bにおける水溶性有機溶剤の量の好ましい範囲についても同様である。
なお、無機材料由来の多孔質材に界面活性剤を含む前処理液で前処理したものを高温多湿環境に長期保管する場合には、前処理後に熱乾燥して基材に固定化させた前処理層の、未加飾の状態における高温多湿での保存安定性の観点から、前処理液Aには活性剤を含まず、前処理液Bには界面活性剤を含むことが好ましい。この場合、高温多湿で保存する場合でも、前処理層が多孔質材に安定して固定化され、すぐれた発色性を得やすい。これは、未加飾の状態で湿度が高く温度も高めの環境に一定期間保管しておいた際にも、前処理層と基材との界面の界面活性剤の密度が高くなりにくいためと考える。
HLB値については、5~20程度の界面活性剤であることが好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、アセチレングリコールであるサーフィノール104E、104H、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造のサーフィノール420、440、465、485、アセチレングリコールのオルフィンE-1004、E-1010、E-1020、PD-002W、PD-004、EXP.4001、EXP-4200、EXP-4123、EXP-4300等(日信化学工業株式会社)、アセチレングリコールのアセチレノールE00、E00P、アセチレングリコールのエチレンオキサイドを付加した構造のアセチレノールE40、E100等(川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤のなかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤が好ましい。市販品では「シルフェイスSAGシリーズ」(日信化学工業株式会社)を好ましく使用できる。
界面活性剤を使用する場合の前処理液A中の含有量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましく、一方、前処理液A中の界面活性剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが一層好ましい。
同様に、界面活性剤を使用する場合の前処理液B中の含有量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましく、一方、前処理液B中の界面活性剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが一層好ましい。
バインダー樹脂は、特に限定されないが、例えば、水分散性樹脂として先に例示したエチレン-塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等、水溶性樹脂として先に例示した樹脂等を好ましく用いることができる。これらの樹脂は一種が単独で含まれても良いし、複数が含まれても良い。また、これらの樹脂を架橋させる架橋成分が含まれても良い。架橋成分としては、例えばブロックイソシアネート、オキサゾリン基含有化合物、(ポリ)カルボジイミド、アジリジン等が挙げられるがその限りではない。なお、成分A及び/又はBが、例えば、水分散性樹脂又は水溶性樹脂を含む場合は、この成分A及び/又はBの水分散性樹脂又は水溶性樹脂がバインダー樹脂としての機能も併せ持つことができる。
例えば、成分Bの多孔質材表面への定着性を高めるため、第2前処理工程で前処理液Bを多孔質材の表面に付着させたのち、前処理液Bを乾燥させてから、印刷工程を行うことが好ましい。第2前処理工程の後かつ印刷工程の前に乾燥工程を行う場合の乾燥方法はとくに限定されず、例えば、加熱乾燥などが挙げられる。加熱乾燥における加熱温度は、例えば、50~200℃(より好ましくは50~150℃)であってよい。
例えば、加飾された多孔質材の製造方法は、一実施形態において、第1前処理工程の後かつ第2前処理工程の前に、前処理液Aを加熱乾燥する工程、及び、第2前処理工程の後かつ印刷工程の前に、前処理液Bを加熱乾燥する工程を、含んでよい。
上述の通り、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。この加飾部分は、対象物、すなわち多孔質材の全面であっても一部であってもよい。
なお、印刷前の多孔質材は、第1前処理工程及び第2前処理工程に加えて、任意の別の処理が行われたものであってもよい。
インク中の水の含有量が多ければ多いほど、多孔質材の性能の低下を防止する効果が高まるので、水は、インク全量の30質量%以上であることが好ましく、インク全量の60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。
また、水の含有量は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
水溶性有機溶剤のインク中の含有量は、2種以上が用いられる場合はその合計含有量として、5~50質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましい。
色材の含有量は、インク全量に対して0.01~20質量%の範囲であることが好ましい。さらには、色材の含有量は0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが一層好ましく、また、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが一層好ましい。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に上記溶媒中に分散可能な量であれば足り、例えば顔料1に対し質量比で0.01~2の範囲内で、適宜設定できる。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらは、単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。
樹脂粒子の表面電荷は、ゼータ電位を測定することで評価できる。具体的には、ゼータ電位の絶対値が30mV以上であることが好ましい。
代表的には、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。
上記のとおり、これらの樹脂にアニオン性の官能基を導入するか、又は、アニオン性分散剤等で表面処理して、マイナスの表面電荷を与えることができる。
水分散性樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の1種単独の樹脂(又はそのエマルション)から構成されてもよいし、又は、複数種の樹脂(又はそれらのエマルション)を組み合わせて構成されてもよい。
インク中の表面張力低下剤の量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましい。
一方、表面張力低下剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが一層好ましい。
例えば、ビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め水と色材の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
画像の記録面積は、特に限定されず、任意の絵柄又は文字、あるいは絵柄と文字との組合せ等を、自由に選択することができる。
多孔材を温める場合(例えば、多孔質材を温めながら印刷する場合、及び印刷終了後に多孔質材を加熱する場合、など)、温める方法は任意であり、加熱温度も特に限定されないが、例えば50~100℃の範囲で加熱してもよい。
本発明の一実施形態は、前処理液A及び前処理液Bを含む前処理液セットに関する。前処理液A及び前処理液Bについては、上述の加飾された多孔質材の製造方法で説明したとおりである。
前処理液セットは、必要に応じて、その他の処理液等を含んでもよい。
本発明の一実施形態では、上述の前処理液セット及び上述の水性インクジェットインクを含むインクセットに関する。インクセットは、必要に応じて、複数のインクを含んでよい。また、必要に応じて、その他のインク及び/又は処理液等を含んでもよい。
表1に記載の各材料を表1に示す割合でプレミックスし、その後、ホモジナイザーで1分間分散して、前処理液1~9を得た。
「CaCl2」:塩化カルシウム(多価金属塩)
「Al2(SO4)3・16H2O」:硫酸アルミニウム(多価金属塩)
「ジエチレングリコール」:和光純薬工業株式会社製ジエチレングリコール、沸点245℃
「PP-17」(商品名):明成化学工業株式会社製カチオン性水分散性複合樹脂(イオン性水分散性樹脂)、メジアン径2.5μm
「ポリゾールAP-1350」(商品名):昭和電工株式会社製カチオン性アクリル樹脂エマルション(イオン性水分散性樹脂)、メジアン径57nm
「アクアテックスAC-3100」(商品名):ジャパンコーティングレジン社製カチオン性エチレン・メタクリル酸樹脂エマルション(イオン性水分散性樹脂)、メジアン径700nm
「スノーテックスAK-L」(商品名):日産化学工業株式会社製カチオン性コロイダルシリカ(イオン性無機粒子)、メジアン径79nm
「スーパーフレックス500M」(商品名):第一工業製薬株式会社製非イオン性ウレタン樹脂エマルション(非イオン性水分散性樹脂)
「ジエチレングリコール」:和光純薬工業株式会社製、沸点245℃
「オルフィンE1010」(商品名):日信化学工業株式会社製アセチレングリコール系界面活性剤
表2に記載の各成分を表2に示す割合でプレミックスし、その後、ホモジナイザーで1分間分散して、前処理液10~15を得た。
「PP-17」(商品名):明成化学工業株式会社製カチオン性水分散性複合樹脂(イオ
ン性水分散性樹脂)、メジアン径2.5μm
「ポリゾールAP-1350」:昭和電工株式会社製カチオン性アクリル樹脂エマルション(イオン性水分散性樹脂)、メジアン径57nm
「モビニール7720」(商品名):日本合成化学工業株式会社製非イオン性アクリル樹脂エマルション(非イオン性水分散性樹脂)
「エポミンSP-006」(商品名):株式会社日本触媒製ポリエチレンイミン(イオン性水溶性樹脂)
「JMR-10M」(商品名):日本酢ビ・ポバール株式会社製ポリビニルアルコール(非イオン性水溶性樹脂)
「ジエチレングリコール」:和光純薬工業株式会社製ジエチレングリコール、沸点245℃
「オルフィンE1010」(商品名):日信化学工業株式会社製アセチレングリコール系界面活性剤
「シルフェイスSAG503A」(商品名):日信化学工業株式会社製シリコーン系界面活性剤
表3に記載の各材料を表3に示す割合で配合し、その後、ホモジナイザーで1分間分散し、その後、孔径3μmのメンブレンフィルターで濾過し、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及び黒(K)インクをそれぞれ製造し、水性インクセット1とした。
「BONJET BLACK CW-4」:オリヱント化学工業株式会社製水系自己分散カーボンブラック分散体
「CAB-O-JET 250C」:キャボットジャパン株式会社製水系自己分散顔料シアン分散体
「CAB-O-JET 260M」:キャボットジャパン株式会社製水系自己分散顔料マゼンタ分散体
「CAB-O-JET 270Y」:キャボットジャパン株式会社製水系自己分散顔料イエロー分散体
「スーパーフレックス470」:第一工業製薬株式会社製水系ウレタン樹脂エマルション
「サーフィノール465」:日信化学工業株式会社製アセチレングリコール系界面活性剤
「グリセリン」:和光純薬工業株式会社製グリセリン、沸点290℃
「エチレングリコール」:和光純薬工業株式会社製エチレングリコール、沸点197.3℃、
多孔質材として、「NDCカルム」(NDC株式会社製アルミニウム焼結吸音板)を用いた。10cm×10cmにカットした多孔質材に対して、表5に示す前処理液A及び前処理液Bを用いて、次のように処理を行った。まず、この多孔質材に対して、前処理液Aをスプレーガンにて50g/m2のウェット塗布量になるように塗布し、塗布後の多孔質材を100℃のオーブンで10分間乾燥させた。この多孔質材に対して、さらに、前処理液Bを50g/m2のウェット塗布量になるようにスプレーガンにて塗布し、塗布後の多孔質材を100℃のオーブンで10分間乾燥させ、処理物品とした。
なお、比較例1では、上記の処理は行われなかった。比較例2では、前処理液Aを用いた処理は行われず、前処理液Bの塗布及びその後100℃のオーブンでの10分間の乾燥のみを行い、処理物品とした。比較例5及び6では、前処理Bを用いた処理は行われず、前処理液Aの塗布及びその後100℃のオーブンでの10分間の乾燥のみを行い、処理物品とした。
室温環境で保管した各処理物品(比較例1は未処理多孔質材)に対して、インクセット1を市販の水性顔料インクジェットプリンタの各色に対応したインクヘッドに導入し、シアン単色でのベタ画像、黒の文字及び細線の画像、及び、フルカラーの写真画像を印刷した。印刷終了後、100℃のオーブンで10分間加熱乾燥したものを、加飾物品とした。
このようにして、表5に示す、実施例及び比較例の加飾物品を得た。
上記で得られた実施例及び比較例の各加飾物品の、加飾して1日後のシアン単色のベタ画像のOD値を測定した。OD値は光学濃度計(RD920:マクベス社製)を用い測定した。判定基準を表4に、結果を表5に示す。
上記で得られた加飾物品の黒の細線画像部分を、目視で観察した。細線画像は1mm間隔の線が並んだ画像であり、同じ細線画像を写真用インクジェット光沢紙に印刷し、その写真用インクジェット光沢紙上の細線画像と加飾物品の細線画像とを比較し、細線の滲み、及びカスレについて判定した。判定基準を表4に、結果を表5に示す。
吸音性は、上記で得られた加飾物品のフルカラーの写真画像を有する物を用い、JIS A1409に規定される残響室法吸音率測定法で評価した。背後空気層50mmを設け、各周波数に対する吸音率を測定した。判定基準を表4に、結果を表5に示す。
Claims (10)
- 多孔質材の表面に、前処理液Aを付着させる第1前処理工程、
前記第1前処理工程の後に、前記多孔質材の表面に、前処理液Bを付着させる第2前処理工程、及び、
前記第2前処理工程の後に、水及び色材を含む水性インクジェットインクを用い、前記多孔質材の表面にインクジェット印刷する印刷工程
を含み、
前記前処理液Aは、多価金属塩及びイオン性粒子からなる群から選択される少なくとも1種である成分A、並びに水を含み、
前記前処理液Bは、カチオン性水溶性樹脂である成分B、及び水を含む、
加飾された多孔質材の製造方法。 - 前記成分Aは、多価金属塩、イオン性水分散性樹脂及びイオン性表面を有する無機粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の加飾された多孔質材の製造方法。
- 前記成分Aが、多価金属塩及びカチオン性粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の加飾された多孔質材の製造方法。
- 多孔質材の表面に、前処理液Aを付着させる第1前処理工程、
前記第1前処理工程の後に、前記多孔質材の表面に、前処理液Bを付着させる第2前処理工程、及び、
前記第2前処理工程の後に、水及び色材を含む水性インクジェットインクを用い、前記多孔質材の表面にインクジェット印刷する印刷工程
を含み、
前記前処理液Aは、イオン性粒子である成分A、及び水を含み、
前記前処理液Bは、水分散性樹脂及びイオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である成分B、並びに水を含む、
加飾された多孔質材の製造方法。 - 前記成分Aは、イオン性水分散性樹脂及びイオン性表面を有する無機粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記成分Bは、イオン性水分散性樹脂、非イオン性水分散性樹脂及びイオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、
請求項4に記載の加飾された多孔質材の製造方法。 - 下記の条件(a)又は(b)の少なくとも1つを満たす、請求項4又は5に記載の加飾された多孔質材の製造方法。
(a)前記成分Aが、カチオン性粒子を含む。
(b)前記成分Bが、カチオン性水分散性樹脂及びカチオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。 - 前記第1前処理工程の後かつ前記第2前処理工程の前に、前記前処理液Aを加熱乾燥する工程、及び、
前記第2前処理工程の後かつ前記印刷工程の前に、前記前処理液Bを加熱乾燥する工程を、
さらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の加飾された多孔質材の製造方法。 - 多孔質材の表面に、前処理液Aを付着させる第1前処理工程、
前記第1前処理工程の後に、前記多孔質材の表面に、前処理液Bを付着させる第2前処理工程、
前記第2前処理工程の後に、水及び色材を含む水性インクジェットインクを用い、前記多孔質材の表面にインクジェット印刷する印刷工程、
前記第1前処理工程の後かつ前記第2前処理工程の前に、前記前処理液Aを加熱乾燥する工程、及び、
前記第2前処理工程の後かつ前記印刷工程の前に、前記前処理液Bを加熱乾燥する工程
を含み、
前記前処理液Aは、多価金属塩及びイオン性粒子からなる群から選択される少なくとも1種である成分A、並びに水を含み、
前記前処理液Bは、水分散性樹脂及びカチオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である成分B、並びに水を含む、
加飾された多孔質材の製造方法。 - 前記成分Aは、多価金属塩、イオン性水分散性樹脂及びイオン性表面を有する無機粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記成分Bは、イオン性水分散性樹脂、非イオン性水分散性樹脂及びカチオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、
請求項8に記載の加飾された多孔質材の製造方法。 - 下記の条件(a)又は(b)の少なくとも1つを満たす、請求項8又は9に記載の加飾された多孔質材の製造方法。
(a)前記成分Aが、多価金属塩及びカチオン性粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
(b)前記成分Bが、カチオン性水分散性樹脂及びカチオン性水溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
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