JP2024094025A - インクセット、加飾物品の製造方法、及び加飾物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷画像に良好な凹凸を付与することができるインクセットを提供する。【解決手段】水、及び凝集剤を含む前処理液と、揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い、発泡水性インクジェットインクとを含む、インクセット。【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は、インクセット、加飾物品の製造方法、及び加飾物品に関する。
インクジェット印刷法は近年、普通紙や専用紙等の紙媒体だけではなく、織物、フェルト等の不織布、木質材等のインクが繊維に沿って浸透しやすい基材、基材のもつ空隙により機能を発現するような機能性多孔質材、プラスチック基材、合成紙、金属基材、ガラス基材等のインクが浸透しにくい基材にも利用されている。また、基材に印刷を施したものが、建築材、家具、日用品等に用いられる場合、それぞれの用途に合った質感が求められ、例えば、凹凸の付与が求められる場合がある。
水性の発泡インクを基材に付与し、基材上のインクを加熱して発泡させることで印刷物に凹凸をつける方法がある。
特許文献1は、発泡剤内含マイクロカプセルと樹脂エマルションと粉末シリカと水を含む発泡インクを記載している。
特許文献2は、溶媒として水と、熱可塑性樹脂を外殻として有する発泡性のマイクロカプセルからなる発泡剤と、発泡剤を溶媒中に分散させるための分散剤と、発泡剤が溶媒中で沈降することを防止するための沈降防止剤と、溶媒よりも沸点の高い水溶性有機溶剤からなる乾燥防止剤と、樹脂製のバインダとを含む発泡インクを記載している。
特開2000-191962号公報 特開2018-168203号公報
特許文献1、2に記載されるような、マイクロカプセル含有インクを付与した後に熱膨張させることで、印刷物に凹凸を形成する場合、インク皮膜の強度が十分ではないと、印刷物に良好な凹凸を形成できない場合がある。
本発明の一実施形態は、印刷画像に良好な凹凸を付与することができるインクセットを提供することを課題とする。
本発明の他の実施形態は、印刷画像に良好な凹凸を付与することができる加飾物品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の他の実施形態は、印刷画像に良好な凹凸が付与された加飾物品を提供することを課題とする。
本発明の一実施形態は、水、及び凝集剤を含む前処理液と、揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い、発泡水性インクジェットインクとを含む、インクセットに関する。
本発明の他の実施形態は、前処理液を基材に付与する工程と、前記前処理液が付与された基材に、発泡水性インクジェットインクをインクジェット法で付与する工程と、前記発泡水性インクジェットインクが付与された基材を加熱して発泡層を形成する工程とを含み、前記前処理液は、水、及び凝集剤を含み、前記発泡水性インクジェットインクは、揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い、加飾物品の製造方法に関する。
本発明の他の実施形態は、基材と、前記前処理液を乾燥して得られる前処理層と、前記発泡水性インクジェットインクを加熱して得られる発泡層とを、この順で含む、加飾物品に関する。
本発明の実施形態によれば、印刷画像に良好な凹凸を付与することができるインクセット、及び加飾物品の製造方法、並びに、印刷画像に良好な凹凸が付与された加飾物品を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことはいうまでもない。
[インクセット]
一実施形態によるインクセットは、水、及び凝集剤を含む前処理液と、揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い発泡水性インクジェットインクと、を含む。
このインクセットを用いると、印刷画像に良好な凹凸を付与することができる。
以下の説明において、発泡水性インクジェットインクを、単に「発泡水性インク」、又は「インク」と称する場合がある。また、揮発性の非水溶性有機溶剤であって、沸点が100℃よりも高い非水溶性有機溶剤を、「揮発性の非水溶性有機溶剤S」又は「非水溶性有機溶剤S」と称する場合がある。また、揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包する粒子にける粒子それ自体を、「粒子P」と称する場合がある。
理論に拘束されるものではないが、このインクセットに含まれる前処理液と発泡水性インクジェットインクは以下のように作用し得ると考えられる。
発泡水性インクジェットインクに含まれる水分散性樹脂は、粒子Pを基材に定着させるためのバインダとして機能し、インク中の水が蒸発して水分散性樹脂が成膜し、インク皮膜が形成されることで、発泡水性インクによる層を基材に定着させることができる。基材上の発泡水性インクが加熱されると、インク皮膜の内側(基材側)で、揮発性の非水溶性有機溶剤Sがガス化して、例えば、これを内包する粒子Pを膨らませる、または、粒子Pから放出されて直接インク皮膜を押し上げる、などにより、インク皮膜を基材側から押し上げるようにしてインク皮膜を基材上で膨らませて(発泡)、凹凸を形成することができる。インクを乾燥させて水分散性樹脂を成膜させて得られたインク皮膜を膨らませる観点から、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの沸点は、水が蒸発する温度である100℃より高いことが好ましい。
一方、インク皮膜の強度が十分ではないと、良好な凹凸を形成できない場合がある。この原因の一つとしては、インク皮膜の内側(基材側)で加熱時に発生した気体が、インク皮膜を押し上げる前に漏れ出てしまうことが推測される。凝集剤を含む前処理液を予め基材表面に付与しておくと、発泡水性インクを付与した際に、インク中の粒子P及び水分散性樹脂粒子の両方が、前処理液の凝集剤と反応し、粒子表面の静電反発力を失うなどにより、凝集し得る。発泡水性インク中の粒子が凝集すると、基材表面での粒子密度が高くなり、インク皮膜がより強固になり、インク皮膜の内側で加熱時に発生した気体が皮膜を押し上げる前に漏れてしまうことを、より効果的に抑制することができると推測される。このように、気体が皮膜を押し上げる力のロスを低減することで、前処理液を付与しない場合に比較して、印刷画像により良好な凹凸を付与することができる。
また、インクセットは水性カラーインク(以下、単に「カラーインク」という場合もある。)をさらに含んでもよい。発泡水性インクの上に水性カラーインクを付与すると、高画質で、凹凸の質感が付与された印刷画像を得ることができる。理論に拘束されるものではないが、その原理は以下のように推測される。
発泡水性インクに含まれる粒子P間に水性カラーインクが入り込み、さらに、粒子Pの空隙内にインク溶媒が入り込むことにより、水性カラーインクの発泡水性インク層への定着性が向上し得る。また、前処理液によって発泡水性インクが凝集し、粒子間の空隙が密度高く形成されることで、水性カラーインクの定着性はさらに向上し、滲みやムラが少ない画像を得ることができると推測される。
インクセットは、例えば、後処理液等をさらに含んでよい。
<前処理液>
前処理液は、凝集剤を含むことができる。
凝集剤としては、例えば、多価金属塩、カチオン性樹脂等が挙げられる。凝集剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン性樹脂は、例えば、カチオン性水溶性樹脂、カチオン性水分散性樹脂、又はこれらの組合せであってよい。
より良好な凹凸の形成のしやすさ、及び、より高画質な印刷画像の形成しやすさの観点から、凝集剤としてカチオン性水分散性樹脂を用いることが好ましい。例えば、基材が浸透性の表面をもつ場合、前処理液を基材表面に付与した後に水性のインクを付与すると、凝集剤がインク溶媒に溶解して基材内部に浸透しやすくなる場合がある。凝集剤として水分散性樹脂を用いる場合、一度乾燥した前処理液は再溶解しにくい傾向があるため、前処理液が付与された面の上に水性のインクが付与されても、凝集剤が基材表面に留まりやすい傾向があり、このため、より良好な凹凸を形成しやく、また、印刷画像の画質を向上させやすい傾向がある。
多価金属塩としては、例えば、2価以上の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、脂肪酸塩、乳酸塩、塩素酸塩等を用いることができる。ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が好ましい。2価以上の金属としては、Mg、Ca、Sr、Ba等の2価のアルカリ土類金属、Ni、Zn、Cu、Fe(II)等の2価の金属、Fe(III)、Al等の3価の金属等が挙げられ、なかでもアルカリ土類金属が好ましい。
より具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
上記した多価金属塩は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価金属塩は、例えば、前処理液全量に対して、1.0~30.0質量%が好ましく、1.5~25.0質量%がより好ましく、2.0~20.0質量%がさらに好ましい。
カチオン性水溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びその塩、ポリビニルピリジン、カチオン性のアクリルアミドの共重合体等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等を用いることができる。
カチオン性水溶性樹脂の市販品の例としては、例えば、ハイモ株式会社製「ハイマックスSC-700M」(商品名)等が挙げられる。
カチオン性水溶性樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることがきる。
カチオン性水分散性樹脂は、水性溶媒中で分散可能な樹脂粒子である。カチオン性水分散性樹脂は、水分散性を示し、水中で水に溶解することなく分散して水中油(O/W)型エマルションを形成できる。
カチオン性水分散性樹脂は、前処理液中では、樹脂粒子として分散状態で含まれることが好ましい。水分散性樹脂は、前処理液の製造に際し、樹脂エマルションとして配合することができる。
カチオン性水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するカチオン性の官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にカチオン性分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。カチオン性の官能基は、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、又はベンゾピラゾール基等が挙げられる。カチオン性分散剤は、例えば、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有アクリルポリマー、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、カチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等が挙げられる。
カチオン性水分散性樹脂粒子の表面電荷量は、100μeq/g以上であることが好ましく、例えば、100~3000μeq/gが好ましい。
本明細書において、特に断らない限り、水分散性樹脂粒子及び粒子Pの表面電荷量は、粒子電荷計で評価することができる。試料を中和するのに必要なアニオン量またはカチオン量を測定することで、表面電荷量を算出することができる。粒子電荷計としては、日本ルフト株式会社製コロイド粒子電荷量計「Model CAS」等を用いることができる。
カチオン性水分散性樹脂の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。
カチオン性水分散性樹脂の種類としては、例えば、
スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体、またはこれらとスチレン等との共重合体等のアクリル系樹脂;
エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、
あるいはこれらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;
メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等、の水分散性樹脂が挙げられる。これらの単独樹脂の樹脂エマルションを用いてもよく、ハイブリッド型の樹脂エマルションを用いてもよい。
カチオン性水分散性樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン性水分散性樹脂の平均粒子径は、1~10μmが好ましく、1~7μmがより好ましく、2~5μmがさらに好ましい。カチオン性水分散性樹脂の平均粒子径が1~10μmである場合、空隙が多い基材や凹凸が大きい基材を用いる場合にも、凝集剤がより表面に留まりやすい傾向があり、より効率的に基材表面で凝集反応起こしやすい傾向がある。
本明細書において、特に断らない限り、前処理液のカチオン性水分散性樹脂の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒子径値(メジアン径)である。動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、ナノ粒子解析装置nano Partica SZ-100(株式会社堀場製作所)等を使用することができる。前処理液中において、カチオン性水分散性樹脂は、独立した粒子の状態で存在する場合と、独立した粒子が集合した凝集体の状態で存在する場合とが考えられるが、動的光散乱法で測定されるメジアン径を「平均粒子径」と位置づけることとする。
カチオン性水分散性樹脂は、例えば、平均粒子径が1~10μmの粒子(以下、「大粒子」と称する場合もある)と、平均粒子径が1μm未満の粒子(以下、「小粒子」と称する場合もある。)とを含んでもよい。
大粒子の平均粒子径は、1μm以上、2μm以上であることがこの順に好ましく、10μm以下、7μm以下、5μm以下であることがこの順に好ましい。大粒子の平均粒子径は、例えば、1~10μm、1~7μm又は2~5μmであってよい。
小粒子の平均粒子径は、1μm未満、500nm以下、250nm以下であることがこの順に好ましい。小粒子の平均粒子径の下限値は、特に限定はされないが、表面処理液の保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。小粒子の平均粒子径は、例えば、5nm以上1μm未満、5~500nm、又は10~250nmであってよい。
さらに、大粒子と小粒子は、両者を混合して平均粒子径を測定した場合に、その粒度分布において二つのピークが存在する、すなわち各々が異なるピーク値を有するものであることが好ましい。
また、大粒子と小粒子は、平均粒子径値の相違に加え、その他の相違点を有していてもよい。例えば、大粒子は、最低造膜温度(MFT)が70℃以上であることが好ましく、一方、小粒子は、MFTが70℃未満以下であることが好ましい。
水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は、エマルションがフィルム化(成膜)するために必要な温度であり、JIS K6828-2に従って測定することができる。以下、水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)について同じである。
ここで、70℃においても成膜しない水分散性樹脂は、MFTが70℃以上の水分散性樹脂に含まれるものとする。
より好ましくは、大粒子のMFTは100℃以上であり、小粒子のMFTは50℃以下であり、特に、小粒子は室温で成膜することが好ましいため、小粒子のMFTは40℃以下であることがさらに好ましい。
また、大粒子のMFTと小粒子のMFTの差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
大粒子と小粒子の樹脂の分子構造は、同一であってもよいが、互いに異なるものを用いてもよい。
大粒子として、例えば、カルボキシ基、スルホ基等に代表されるアニオン性の官能基を有するポリマーと、アミノ基又はアミド基等に代表されるカチオン性の官能基を有するポリマーとが複合して得られるポリマーコンプレックスであって、コア部がアニオン性ポリマー、シェル部がカチオン性ポリマーである、コアシェル構造の複合有機粒子を用いることも好ましい。
複合有機粒子のアニオン性ポリマーとしては、例えば繰り返し単位として(メタ)アクリル酸を含むポリマー、より具体的にはスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。スチレン、(メタ)アクリル酸以外の、これらと共重合可能なビニル化合物を含んでいてもよい。
複合有機粒子のカチオン性ポリマー(塩基性ポリマー)としては、例えば、含窒素モノマーを含むポリマーであり、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルイミダゾール等の窒素複素環化合物を繰り返し単位として含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。コポリマーを形成するコモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の一般的なビニル化合物を、1種または2種以上選択して使用できる。
この場合のアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの使用割合は、粒子表面の電荷をカチオン性とするために、重量比で、アニオン性ポリマー1に対し、カチオン性ポリマーが3~10であることが好ましい。
このような複合有機粒子の市販品として、明成化学工業株式会社製「PP-15」、「PP-17」(いずれも商品名)等が挙げられる。
平均粒子径が1μ未満の水分散性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂等の上述した樹脂の種類から適宜選択することができる。
平均粒子径が1μm未満の水分散性樹脂のエマルションの市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「ポリゾールAP-1350」(商品名)等が挙げられる。
カチオン性樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン性樹脂は、前処理液全量に対して、1.0~30.0質量%が好ましく、1.5~25.0質量%がより好ましく、2.0~20.0質量%がさらに好ましい。
凝集剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
より良好な凹凸の形成しやすさの観点から、凝集剤は、前処理液全量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。一方、凝集剤は、前処理液全量に対して、30.0質量%以下が好ましく、25.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下がさらに好ましい。凝集剤は、例えば、前処理液全量に対して、0.1~30.0質量%が好ましく、0.5~25.0質量%がより好ましく、1.0~20.0質量%がさらに好ましい。
前処理液は、水性溶媒として水を含むことができ、主溶媒が水であってもよい。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。
特に、前処理液の貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、前処理液の粘度の調整の観点から、前処理液全量に対して10.0~90.0質量%で含まれることが好ましく、20.0~85.0質量%で含まれることがより好ましく、30.0~80.0質量%で含まれることがさらに好ましい。
前処理液には、水溶性有機溶剤を配合することが好ましい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
水溶性有機溶剤の前処理液中の含有量は、1.0~80.0質量%であることが好ましく、5.0~60.0質量%であることがより好ましい。
前処理液は、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤またはこれらの組合せを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型界面活性剤;アセチレン系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレン基を有する界面活性剤等を挙げることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、アセチレン基を有するグリコールであって、好ましくはアセチレン基が中央に位置して左右対称の構造を備えるグリコールであり、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造を備えてもよい。
アセチレン系界面活性剤の市販品としては、例えば、エボニックインダストリーズ社製サーフィノールシリーズ「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール485」等、日信化学工業株式会社製オルフィンシリーズ「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製の「シルフェイスSAG002」、「シルフェイス503A」、「シルフェイスSAG008」等が挙げられる(いずれも商品名)。
また、その他の非イオン性界面活性剤として、例えば、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲン102KG」、「エマルゲン103」、「エマルゲン104P」、「エマルゲン105」、「エマルゲン106」、「エマルゲン108」、「エマルゲン120」、「エマルゲン147」、「エマルゲン150」、「エマルゲン220」、「エマルゲン350」、「エマルゲン404」、「エマルゲン420」、「エマルゲン705」、「エマルゲン707」、「エマルゲン709」、「エマルゲン1108」、「エマルゲン4085」、「エマルゲン2025G」等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製エマールシリーズ「エマール0」、「エマール10」、「エマール2F」、「エマール40」、「エマール20C」等、ネオペレックスシリーズ「ネオペレックスGS」、「ネオペレックスG-15」、「ネオペレックスG-25」、「ネオペレックスG-65」等、ペレックスシリーズ「ペレックスOT-P」、「ペレックスTR」、「ペレックスCS」、「ペレックスTA」、「ペレックスSS-L」、「ペレックスSS-H」等、デモールシリーズ「デモールN」、「デモールNL」、「デモールRN」、「デモールMS」等が挙げられる(いずれも商品名)。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アセタミンシリーズ「アセタミン24」、「アセタミン86」等、コータミンシリーズ「コータミン24P」、コータミン86P」、「コータミン60W」、「コータミン86W」等、サニゾールシリーズ「サニゾールC」、「サニゾールB-50」等が挙げられる(いずれも商品名)。
両性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アンヒトールシリーズ「アンヒトール20BS」、「アンヒトール24B」、「アンヒトール86B」、「アンヒトール20YB」、「アンヒトール20N」等が挙げられる(いずれも商品名)。
上記した界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前処理液に用いる界面活性剤のHLB値は、10.0以下が好ましい。
前処理液に用いる界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
ここで、HLB値は、界面活性剤の性質を示す尺度の一つであり、分子中の親水基と親油基とのバランスを数値化したものである。HLB値は、いくつかの算出方法によって提唱されているが、本明細書において、グリフィン法によって算出される値であり、下記式(1)によって算出される。
HLB値=20×(親水部の式量)/(界面活性剤の分子量)・・・式(1)
ここで、「親水部」は、界面活性剤の分子構造中に含まれている親水性の部分を示し、好ましくは、ポリオキシアルキレン基、水酸基に対する主鎖の炭素数が3以下のアルコール基、又はこれらの組み合わせである。界面活性剤に複数の親水性の部分が含まれる場合は、上記式(1)において親水部の式量はこれらの合計量とする。
ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基(ポリエチレンオキサイド;EO:-(CHCHO)-)、ポリオキシプロピレン基(ポリプロピレンオキサイド;PO:-(CHCH(CH)O)-)等が挙げられる。
また、アルコール基としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、スクロース(ショ糖)、マンニット、グリコール類等に由来する基(例えばエタノールであれば-CHCHOH)が挙げられる。
「疎水部」は、界面活性剤の分子構造中に含まれている疎水性の部分を示し、例えば、水酸基に対する主鎖の炭素数が4以上の脂肪族アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸等に由来する脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基;有機シロキサン、ハロゲン化アルキル等に由来する基;又はこれらの組み合わせである。
前処理液は、HLB10.0以下のアセチレン系界面活性剤を含むことが好ましく、HLB10.0以下のアセチレングリコール系界面活性剤を含むことがより好ましい。
界面活性剤の前処理液中の配合量は、前処理液全量に対して、0.1~5.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましい。
前処理液は、樹脂成分をさらに含んでもよい。
樹脂成分としてバインダ樹脂を含むことで、前処理液の基材への定着性をより高めることができる。例えば、凝集剤として多価金属塩が用いられる場合、前処理液の基剤への定着性を高めるために、前処理液にバインダ樹脂が含まれていることが好ましい。
バインダ樹脂としては、非イオン性樹脂が好ましい。非イオン性樹脂は、水溶性及び水分散性のいずれであってもよい。前処理液が、凝集剤としてカチオン性樹脂を含む場合は、このカチオン性樹脂がバインダ樹脂としての機能も併せ持つことができる。
前処理液中の樹脂の合計量は、前処理液全量に対して、1.0~40.0質量%であることが好ましく、5.0~30.0質量%であることがより好ましい。
前処理液は、その他の成分を適宜含んでもよい。その他の成分としては、pH調整剤、防腐剤等が挙げられる。
前処理液の粘度は、23℃において1.0~50.0mPa・sであることが好ましく、1.5~30.0mPa・sであることがより好ましく、2.0~20.0mPa・sであることがさらに好ましい。
前処理液の作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望のインクを得ることができる。例えば、ビーズミル等の分散機を用いてもよい。また、得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。
インクセットは、上記した前処理液を1種または2種以上含んでよい。
<発泡水性インクジェットインク>
発泡水性インクジェットインクは、揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包する粒子を含むことができる。
揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包する粒子の、揮発性の非水溶性有機溶剤Sと、これを内包する粒子それ自体(「粒子P」)について、説明する。
揮発性の非水溶性有機溶剤Sは、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない溶剤が好ましい。揮発性の非水溶性有機溶剤Sを用いることで、基材上のインクを加熱してこの溶剤がガス化すると、インク皮膜を発泡させることができる。
粒子Pに内包される揮発性の溶剤が水と混合しやすいと、基材上で水分散性樹脂が成膜する前に、揮発性の溶剤がインクの水性溶媒(水等)ととともに基材に浸透することで、成膜後のインク皮膜を膨らませにくくなる。
インク中の水の蒸発によりインク中の水分散性樹脂が成膜してインク皮膜が形成された後に、揮発性の非水溶性有機溶剤Sがインク皮膜の内側(基材側)で揮発してインク皮膜を膨らませる観点から、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの沸点は、水が蒸発する温度より高いことが好ましい。揮発性の非水溶性有機溶剤Sの沸点は、100℃より高いことが好ましく、130℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。粒子Pに内包される揮発性の溶剤の沸点が水の沸点以下であると、基材上で水分散性樹脂が成膜する前に、揮発性の溶剤がインクの水性溶媒(水等)とともに揮発することで、成膜後のインク皮膜を膨らせにくくなる。
一方、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの沸点は、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。揮発性の非水溶性有機溶剤Sの沸点は、例えば、100℃より高く、かつ、250℃以下であってよく、130~230℃がより好ましく、150~200℃がさらに好ましい。
揮発性の非水溶性有機溶剤Sとして、例えば、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤等が挙げられるが、臭気が少なく極性が低い観点から、炭化水素系溶剤が好ましい。炭化水素系溶剤としては、炭素数が10以上のものが好ましい。
炭化水素系溶剤としては、例えばノルマルパラフィン系溶剤が挙げられ、例えば、炭素数が10以上のノルマルパラフィン系溶剤が挙げられる。
沸点が100℃より高いノルマルパラフィン系溶剤としては、例えば、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等が挙げられる。
揮発性の非水溶性有機溶剤Sは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粒子Pは、発泡水性インクジェットインク中で、揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包できるものであれば特に限定されない。粒子Pとしては、内部に空洞や空隙等の空間を有しているものを用いることができ、例えば、無数の孔を有する多孔質粒子、内側が空洞になっている中空粒子等が挙げられる。粒子Pとして、例えば、無機粒子、樹脂粒子、またはそれらの組合せを用いることができる。
実施形態において、発泡水性インクジェットインク中において、揮発性の非水溶性有機溶剤Sは、粒子P内の空間に入り込み、その結果、水相と油相に分離することがなく均一な発泡水性インクとなると推測される。
また、揮発性の非水溶性有機溶剤Sが粒子Pに内包されて含まれることで、インクの長期保管時に非水溶性有機溶剤Sがインク表面に分離して揮発してしまうことを抑制できるため、インク皮膜を良好に膨らませやすい。
粒子Pは、水性溶媒中で分散可能な粒子であることが好ましい。例えば、粒子Pは、水中で水に溶解することなく粒子状に分散して分散体を形成できるものであることが好ましい。
粒子Pは、インク中では、分散状態で含まれることが好ましい。例えば、樹脂粒子を用いる場合は、樹脂粒子は、粒子表面に分散性をもつ官能基をもつことで、水性溶媒中で分散するものであってもよいし、分散剤等により分散するものであってもよい。粒子Pは、インクの製造に際して、分散体として配合することができる。
粒子Pは、基材上でインクが乾燥された後もインク皮膜中で個々の粒子として存在することができることが好ましい。例えば、樹脂粒子を用いる場合、樹脂粒子は、乾燥された後も、膜状にならずバインダとしての機能が無いものが好ましい。
樹脂粒子の樹脂の種類はとくに限定されないが、水性のインクに配合しやすい樹脂として、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂などが使用できる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体、または、これらとスチレン等との共重合体(例えば、スチレンアクリル樹脂)等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂粒子は、室温では成膜しない性質をもつことが好ましく、ガラス転移点(Tg)が比較的高いことが好ましい。より具体的には、樹脂粒子のガラス転移点は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましく、80℃超がさらに好ましい。樹脂粒子のガラス転移点は、200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。樹脂粒子のガラス転移点は、50~200℃が好ましく、60~190℃がより好ましく、70~180℃がさらに好ましく、80℃超180℃以下がさらに好ましい。
樹脂粒子としては、白発色させて、より鮮明な画像を形成する観点から、中空樹脂粒子が好ましい。中空樹脂粒子は、発泡水性インクジェットインク中では、揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包しているが、インクが基材に付与された後、中空樹脂粒子に内包された揮発性の非水溶性有機溶剤Sが揮発することなどによって、粒子内部から放出され、粒子内部の空洞(中空部)が空気で置換されると、中空樹脂粒子の中空部と粒子の樹脂の屈折率差によって、光の屈折及び散乱が生じ、白発色することができる。中空樹脂粒子としては、例えば、中空でありさらに潰れた形に変形した扁平形状の粒子が好ましい。扁平形状である場合、散乱が細かく起こるため白発色がさらに良好になる傾向がある。扁平形状の粒子は、粒子の立体形状に直交3次元座標系を当てはめたとき、少なくともいずれか一方向において短いことが好ましい。中空樹脂粒子の1つの方向からみたときの形状はとくに限定されず、例えば、円形、楕円形、四角状あるいは六角状等の多角形であっても、また、ランダムな(不定形)形状であってもよい。中空樹脂粒子は、扁平形状であり、かつ、外面に凹部を有するものであってもよい。例えば、1つの方向からみたとき、中央部に凹部を有する形状であることが好ましく、例えば、凹部を有することでお椀のような形状を有するもの、赤血球のように、両面の中央部に凹部が形成された円盤状の形状を有するもの等が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、酸化チタン粒子等が挙げられる。
粒子Pの平均粒子径は、250nm以上が好ましく、300nm以上がより好ましい。一方、粒子Pの平均粒子径は、インクジェットヘッドでの吐出性の観点から、1μm以下が好ましく、800nm以下がより好ましい。粒子Pの平均粒子径は、250nm以上1μm以下が好ましく、300nm以上800nm以下がより好ましい。
本明細書において、特に断らない限り、粒子Pと後述する水分散性樹脂の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒子径値(メジアン径)である。動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、ナノ粒子解析装置nano Partica SZ-100(株式会社堀場製作所)等を使用することができる。インク中において、粒子Pや後述する水分散性樹脂は、独立した粒子の状態で存在する場合と、独立した粒子が集合した凝集体の状態で存在する場合とが考えられるが、動的光散乱法で測定されるメジアン径を「平均粒子径」と位置づけることとする。
粒子Pは、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粒子Pは、合成してもよいし、市販のものを用いてもよい。例えば、市販の樹脂粒子としては、積水化学工業株式会社製「アドバンセルHB-2051」、松本油脂製薬株式会社製「マツモトマイクロスフェアーM-600」、「マツモトマイクロスフェアーMHB-R」、冨士色素株式会社製「FUJI SP WHITE 1185」、「FUJI SP WHITE 1188」等が挙げられる(いずれも商品名)。
揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包する粒子は、例えば、市販の、又は合成によって得られた粒子Pの水分散体と、揮発性の非水溶性有機溶剤Sとを、混合して分散させて、揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包する粒子の水分散体を製造して、インクの製造に用いてもよい。分散には、例えば、超音波ホモジナイザー等を用いてもよい。
また、揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包する粒子として、市販品を用いることもできる。揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子の市販品としては、例えば、松本油脂製薬株式会社製「マツモトマイクロスフェアーF」シリーズ、「マツモトマイクロスフェアーFN」シリーズの製品、積水化学工業株式会社製「アドバンセルEM」等が挙げられる(いずれも商品名)。
揮発性の非水溶性有機溶剤Sの量は、インク全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。一方、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの量は、インク全量に対して、1.5質量%以下が好ましく、1.2質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。揮発性の非水溶性有機溶剤Sの量は、例えば、インク全量に対して、0.1~1.5質量%が好ましく、0.3~1.2質量%がより好ましく、0.3~1.0質量%がさらに好ましい。
粒子Pの量は、固形分量で、インク全量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。一方、粒子Pの量は、固形分量で、インク全量に対して、40.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以下がより好ましく、25.0質量%以下がさらに好ましい。粒子Pの量は、固形分量で、例えば、インク全量に対して、0.01~40.0質量%が好ましく、0.1~40.0質量%がより好ましく、0.5~30.0質量%がさらに好ましく、1.0~25.0質量%がさらに好ましい。
粒子Pの量(固形分量)と揮発性の非水溶性有機溶剤Sの量の合計に対する、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの量は、1.0~10.0質量%が好ましく、1.5~8.0質量%がより好ましく、2.0~6.0質量%がさらに好ましい。
発泡水性インクジェットインクは、水分散性樹脂を含むことができる。
水分散性樹脂は、インクを皮膜化させ、かつ、インクを基材に定着させるバインダ樹脂として機能することができる。
水分散性樹脂は、好ましくは、内部に空洞を有しない中実粒子の形態を有する。水分散性樹脂は、好ましくは、発泡水性インク中で、揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包していない粒子として存在する。
水分散性樹脂は、水性溶媒中で分散可能な樹脂粒子である。水分散性樹脂は、水分散性を示し、水中で水に溶解することなく分散して水中油(O/W)型エマルションを形成できる。
水分散性樹脂は、発泡水性インク中では、樹脂粒子として分散状態で含まれることが好ましい。水分散性樹脂は、発泡水性インクの製造に際し、樹脂エマルションとして配合することができる。
水分散性樹脂は、水性インクジェットインクに配合可能な樹脂であれば特に限定されないが、インク皮膜の発泡の容易さに加え、印刷面の耐久性や柔軟性を考慮して選択することが好ましい。
発泡水性インクを基材に付与し、その上に重ねて水性カラーインクを付与した際に、発泡水性インクのバインダ樹脂の皮膜がその上の水性カラーインクに溶解してしまうと、発泡水性インクによるインク皮膜を発泡させた際にその上に形成されたインク画像が崩れてしまう可能性がある。このため、皮膜化すると耐水性をもつような水分散性樹脂を用いることが好ましい。
水分散性樹脂の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。
水分散性樹脂が皮膜化する温度は、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの揮発が始まる温度よりも低いことが好ましい。バインダ樹脂が皮膜化しないうちに、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの揮発が始まってしまうと、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの揮発により発生したガスが抜け出てしまい、インク皮膜が良好に発泡しない場合がある。この観点から、水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は、揮発性の非水溶性有機溶剤Sの沸点より低いことが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがさらに好ましい。
例えば、MFTが高い水分散性樹脂と、その水分散性樹脂の成膜温度を、例えば、60℃以下又は20℃以下にする水溶性の成膜助剤をインクに含んでもよい。
水分散性樹脂のガラス転移点(Tg)は、80℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましく、10℃以下がさらに好ましく、0℃以下がさらに好ましい。水分散性樹脂のガラス転移点は、-50℃以上が好ましく、-35℃以上がより好ましい。水分散性樹脂のガラス転移点は、例えば、-50~80℃が好ましく、-35~20℃がより好ましく、-35~10℃がさらに好ましく、-35~0℃がさらに好ましい。
水分散性樹脂の平均粒子径は、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下がさらに好ましい。また、水分散性樹脂の平均粒子径は、1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。水分散性樹脂の平均粒子径は、例えば、1~250nmが好ましく、5~200nmがより好ましく、10~150nmがさらに好ましい。
水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有する官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面に分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。
水分散性樹脂は、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性の水分散性樹脂のいずれであってもよい。
前処理液による凝集効果の向上とより良好な凹凸の形成しやすさの観点から、発泡水性インクの水分散性樹脂としては、アニオン性水分散性樹脂が好ましい。
アニオン性水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するアニオン性官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にアニオン性分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。アニオン性の官能基としては、代表的にはカルボキシ基、スルホ基、スルフィノ基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、亜リン酸基、亜リン酸エステル基等が挙げられる。アニオン性の分散剤としては、陰イオン界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性水分散性樹脂の表面電荷量は、1000μeq/g以下であることが好ましく、例えば、50~1000μeq/gが好ましい。
前処理液による凝集効果のさらなる向上とさらに良好な凹凸の形成しやすさの観点から、前処理液の凝集剤がカチオン性水分散性樹脂を含み、発泡水性インクがアニオン性水分散性樹脂を含むことが、より好ましい。
水分散性樹脂の種類としては、例えば、
スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体、またはこれらとスチレン等との共重合体等のアクリル系樹脂;
エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、
あるいはこれらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;
メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等、の水分散性樹脂が挙げられる。これらの単独樹脂のエマルションを用いてもよく、ハイブリッド型の樹脂エマルションを用いてもよい。
水分散性樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製「モビニール966A」(商品名)、Covestro社製「NeoCryl A-639」、「Neocryl A-662」等が挙げられる(いずれも商品名)。
水分散性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
より良好な凹凸の形成しやすさの観点から水分散性樹脂は、樹脂分量で、発泡水性インク全量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上がさらに好ましい。一方、水分散性樹脂は、樹脂分量で、発泡水性インク全量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。水分散性樹脂は、樹脂分量で、例えば、発泡水性インク全量に対して、0.01~40質量%が好ましく、0.1~30質量%がより好ましく、0.5~30質量%がさらに好ましく、1~25質量%がさらに好ましく、7~25質量%がさらに好ましい。
発泡水性インクは、水性溶媒として水を含むことができ、主溶媒が水であってもよい。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。
特に、インクの貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、インク粘度の調整の観点から、インク全量に対して20~90質量%で含まれることが好ましく、30~80質量%で含まれることがより好ましく、40~70質量%で含まれることがさらに好ましい。
発泡水性インクには、水溶性有機溶剤を配合することが好ましい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な水溶性有機溶剤の説明で例示したものが挙げられる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
水溶性有機溶剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル、エチレングリコール等の1,2-アルカンジオール、またはそれらの組合せを含むことが好ましい。アルキレングリコールアルキルエーテル及び/又は1,2-アルカンジオールを配合する場合、後述するHLBが10.0以下のアセチレングリコール系界面活性剤をインク中に安定に配合しやすい。このため、粒子Pが、さらに基材表面に残留しやすくなり得る。
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
水溶性有機溶剤の発泡水性インク中の含有量は、5~50質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましい。
発泡水性インクは、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤またはこれらの組合せを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。界面活性剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な界面活性剤の説明で例示したものが挙げられる。界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡水性インクに用いる界面活性剤のHLB値は、10.0以下が好ましい。
発泡水性インクに用いる界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
発泡水性インクが基材に濡れる速度を上げ、粒子Pが基材に残りやすくする観点から、発泡水性インクは、HLB10.0以下のアセチレン系界面活性剤を含むことが好ましく、HLB10.0以下のアセチレングリコール系界面活性剤を含むことがより好ましい。
界面活性剤の発泡水性インク中の配合量は、発泡水性インク全量に対して、0.1~5.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましい。
発泡水性インクは、その他の成分を適宜含んでもよい。その他の成分としては、pH調整剤、防腐剤等が挙げられる。
発泡水性インクの粘度は、23℃において3.0~20.0mPa・sであることが好ましく、4.0~16・0mPa・sであることがより好ましく、6.0~14.0mPa・sであることがさらに好ましい。
発泡水性インクの作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望のインクを得ることができる。例えば、ビーズミル等の分散機を用いてもよい。また、得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。また、非揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包する粒子は、例えば、予め、粒子Pの水分散体と非揮発性の非水溶性有機溶剤Sとを用いて、分散機等で分散して製造したものを用いてもよいし、非揮発性の非水溶性有機溶剤Sを内包する粒子の市販品を用いてもよい。
発泡水性インクジェットインクの付与方法として、インクジェット方式は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
インクセットは、上記した発泡水性インクジェットインクを1種又は2種以上含んでよい。
<水性カラーインク>
一実施形態のインクセットは、上記した前処理液及び上記した発泡水性インクに加えて、水性カラーインクをさらに含んでもよい。上記した前処理液及び上記した発泡水性インクとともに水性カラーインクを含むインクセットを用いると、高画質で、凹凸の質感が付与された印刷画像を有する加飾物品を製造することができる。
カラーインクとしては、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク、ブラックインク等の白色以外の無彩色または有彩色のインクが挙げられる。
カラーインクは、非白色の色材として、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを含むことができ、顔料を含むことがより好ましい。
カラーインクは、非白色の顔料を含むことが好ましい。
非白色の顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
カラーインク中における顔料粒子の平均粒子径は、吐出安定性と保存安定性の観点から、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の平均値として、300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
顔料として自己分散性顔料を配合してもよい。自己分散性顔料は、化学的処理又は物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された顔料である。自己分散性顔料に導入させる親水性官能基としては、イオン性を有するものが好ましく、顔料表面をアニオン性又はカチオン性に帯電させることにより、静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、スルフィノ基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、亜リン酸基、亜リン酸エステル基等が好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基等が好ましい。
これらの親水性官能基は、顔料表面に直接結合させてもよいし、他の原子団を介して結合させてもよい。他の原子団としては、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、これらに限定されることはない。顔料表面の処理方法としては、ジアゾ化処理、スルホン化処理、次亜塩素酸処理、フミン酸処理、真空プラズマ処理等が挙げられる。
自己分散性顔料としては、例えば、キャボット社製CAB-O-JETシリーズ「CAB-O-JET200」、「CAB-O-JET300」、「CAB-O-JET250C」、「CAB-O-JET260M」、「CAB-O-JET270」、「CAB-O-JET450C」、「CAB-O-JET465M」、「CAB-O-JET470Y」等、オリヱント化学工業株式会社製「BONJET BLACK CW-1」、「BONJET BLACK CW-2」、「BONJET BLACK CW-3」、「BONJET BLACK CW-4」等を好ましく使用することができる(いずれも商品名)。
顔料として、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を用いてもよい。
顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。顔料分散剤で分散された顔料分散体の市販品としては、例えば、クラリアント社製HOSTAJETシリーズ、冨士色素株式会社製FUJI SPシリーズ等が挙げられる。後述する顔料分散剤で分散された顔料分散体を使用してもよい。
非白色の染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等のうち水溶性の染料および還元等により水溶性になった水溶性染料を好ましく用いることができる。また、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、ニトロ系等の分散染料も好ましく用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
色材の含有量は、印刷濃度とインク粘度の観点から、カラーインク全量に対して0.5~20.0質量%であることが好ましく、1.0~15.0質量%であることがより好ましく、2.0~10.0質量%であることがさらに好ましい。
カラーインクが顔料を含む場合、インク中に顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤、界面活性剤型分散剤等に代表される顔料分散剤を用いることができる。
高分子分散剤としては、例えば、市販品として、EVONIK社製のTEGOディスパースシリーズ「TEGOディスパース740W」、「TEGOディスパース750W」、「TEGOディスパース755W」、「TEGOディスパース757W」、「TEGOディスパース760W」等、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ「ソルスパース20000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース41090」、「ソルスパース43000」、「ソルスパース44000」、「ソルスパース46000」等、BASFジャパン株式会社製のジョンクリルシリーズ「ジョンクリル57」、「ジョンクリル60」、「ジョンクリル62」、「ジョンクリル63」、「ジョンクリル71」、「ジョンクリル501」等、ビックケミージャパン株式会社製の「DISPERBYK-102」、「DISPERBYK-180」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-190」、「DISPERBYK-193」、「DISPERBYK-199」等、第一工業製薬株式会社製の「ポリビニルピロリドンK-30」、「ポリビニルピロリドンK-90」等が挙げられる(いずれも商品名)。
界面活性剤型分散剤としては、例えば、花王株式会社製デモールシリーズ「デモールP」、「デモールEP」、「デモールN」、「デモールRN」、「デモールNL」、「デモールRNL」、「デモールT-45」等のアニオン性界面活性剤、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲンA-60」、「エマルゲンA-90」、「エマルゲンA-500」、「エマルゲンB-40」、「エマルゲンL-40」、「エマルゲン420」等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
上記した顔料分散剤は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料分散剤を使用する場合のインク中の配合量は、その種類によって異なり特に限定はされないが、一般に、有効成分(顔料濃度)の質量比で顔料1に対し、0.01~1.0が好ましい。
カラーインクは、水性溶媒として水を含むことが好ましく、主溶媒が水であってもよい。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。
特に、インクの貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、インク粘度の調整の観点から、カラーインク全量に対して20~90質量%で含まれることが好ましく、30~80質量%で含まれることがより好ましい。
カラーインクは、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を用いることができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した発泡水性インクジェットインクで説明したものから選択して用いることができる。
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤のカラーインク中の含有量は、5~50質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましい。
カラーインクは、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤またはこれらの組合せを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。
界面活性剤としては、例えば、上記した発泡水性インクジェットインクで説明したものから選択して用いることができる。
界面活性剤は、カラーインク全量に対し有効成分量で0.05~5.0質量%が好ましく、0.1~3.0質量%がより好ましい。
カラーインクは、水性溶媒中で分散可能な樹脂粒子である水分散性樹脂を含むことが好ましい。水分散性樹脂は、水分散性を示し、水中で水に溶解することなく分散して水中油(O/W)型エマルションを形成できる。水分散性樹脂は、カラーインク中では、樹脂粒子として分散状態で含まれることが好ましい。水分散性樹脂は、カラーインクの製造に際し、樹脂エマルションとして配合することが可能である。
水分散性樹脂の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。
水分散性樹脂の平均粒子径は、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下がさらに好ましい。また、水分散性樹脂の平均粒子径は、1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。水分散性樹脂の平均粒子径は、例えば、1~300nmが好ましく、5~200nmがより好ましく、10~150nmがさらに好ましい。ここで、水分散性樹脂の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒子径値(メジアン径)である。
水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有する官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面に分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。
水分散性樹脂は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は両性の水分散性樹脂のいずれであってもよい。水分散性樹脂はアニオン性、非イオン性又はこれらの組合せが好ましい。
水分散性樹脂としては、例えば、
スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体、またはこれらとスチレン等との共重合体等のアクリル系樹脂;
エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、
あるいはこれらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;
メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。これらの単独樹脂の樹脂エマルションを用いてもよく、ハイブリッド型の樹脂エマルションでもよい。
水分散性樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス470」(商品名)等が挙げられる。
これらの水分散性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。水分散性樹脂のカラーインク中の含有量(固形分)は、0.5~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
カラーインクは、その他の成分を適宜含んでもよい。その他の成分としては、pH調整剤、防腐剤等が挙げられる。
カラーインクの粘度は、23℃において1.0~20.0mPa・sであることが好ましく、2.0~16.0mPa・sであることがより好ましく、3.0~14.0mPa・sであることがさらに好ましい。
カラーインクの作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望のインクを得ることができる。例えば、顔料の分散性を高めるためにビーズミル等の分散機を用いてもよい。また、得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。
カラーインクは、水性カラーインクジェットインクとして好ましく使用することができる。この場合、インクジェット方式は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
インクセットは、水性カラーインクを1種または2種以上含んでよい。
<基材>
上記したインクセットは、浸透性基材及び非浸透性基材のいずれにも用いることができる。
非浸透性基材は、基材内部に液体が染み込んでいかない基材であり、具体的には、前処理液中又はインク中の液体の大部分が基材の表面上に留まる基材である。
非浸透性基材としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、チタン、錫、クロム、カドミウム、合金(例えばステンレス、スチール等)等の金属板等の金属基材;ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス等の板ガラス等のガラス基材;PETフィルム、PPフィルム、OHTシート、ポリエステルシート、ポリプロピレンシート等の樹脂製シート、アクリル板、ポリ塩化ビニル板等の樹脂基材;アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化ケイ素等の成形体等のセラミック基材等が挙げられる。
これらの基材は、メッキ層、金属酸化物層、樹脂層等が形成されていてもよく、又はコロナ処理等を用いて表面処理されていてもよい。
浸透性基材としては、例えば、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙;織布、編物、不織布等の布;調湿用、吸音用、断熱用等の多孔質建材;木材、コンクリート、多孔質材等が挙げられる。多孔質材としては、例えば、ケイ酸カルシウム等の無機材料を用いたものが挙げられる。
ここで、普通紙は、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
布を構成する繊維としては、例えば、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維および鉱サイ繊維等の無機繊維;セルロース系、たんぱく質系等の再生繊維;セルロース系等の半合成繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフッ化エチレン等の合成繊維;綿、麻、絹、毛等の天然繊維等の各種の繊維から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
<加飾物品の製造方法>
一実施形態の加飾物品の製造方法は、前処理液を基材に付与する工程と、前処理液が付与された基材に、発泡水性インクジェットインクをインクジェット法で付与する工程と、発泡水性インクジェットインクが付与された基材を加熱して発泡層を形成する工程を含むことができる。
前処理液及び発泡水性インクジェットインクとしては、それぞれ上記したインクセットにおいて説明した前処理液及び発泡水性インクジェットインクを用いることができる。また、基材としては、例えば、上記した一実施形態のインクセットを用いることができる基材として説明した基材を用いることができる。
この方法により、印刷画像に良好な凹凸が付与された加飾物品を製造することができる。
この方法は、例えば、上記した一実施形態のインクセットを用いて行ってもよい。
加飾物品の製造方法は、前処理液を基材に付与する工程を含むことができる。
前処理液を基材に付与する方法は特に限定されず、例えば、ハンディスプレー又はエアブラシ等を用いるスプレー法、浸漬法、パッド法、コーティング法等の任意の方法を用いることができ、さらにインクジェット印刷(インクジェット法)、スクリーン印刷等の各種印刷方法を用いてもよい。
インクジェット法によって前処理液を付与する場合、インクジェット方式は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
前処理液を付与する領域は、例えば、発泡水性インクジェットインクによる画像と同一の形状の領域であってもよいし、発泡水性インクジェットインクによる画像の形状を含む広めの領域であってもよいし、発泡水性インクジェットインクによる画像の一部のみであってもよいし、発泡水性インクジェットインクによる画像の一部とそれ以外の部分を含む領域であってもよい。前処理液を付与する領域は、例えば、基材の一部であってもよく、基材の全面であってもよい。
前処理液の付与領域と、発泡水性インクジェットインクの付与領域とは、少なくとも部分的に重なることが好ましい。
基材への前処理液の付与量は、5.0~200.0g/mが好ましく、10.0~150.0g/mがより好ましく、15.0~75.0g/mがさらに好ましい。前処理液の付与量は、5.0g/m以上が好ましく、10.0g/m以上がより好ましく、15.0g/m以上がさらに好ましい。一方、前処理液の付与量は、200.0g/m以下が好ましく、150.0g/m以下がより好ましく、75.0g/m以下がさらに好ましい。
基材への前処理液の付与量は、凝集剤の量として、0.05~60.0g/mが好ましく、0.15~37.5g/mが好ましく、0.3~15.0g/mがより好ましい。
加飾物品の製造方法は、前処理液が付与された基材に、発泡水性インクジェットインクをインクジェット法で付与する工程を含むことができる。
インクジェット方式は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
発泡水性インクジェットインクは、基材の、凹凸を付与したい領域に付与することが好ましい。好ましくは、前処理液が付与された基材に、発泡水性インクジェットインクで、凹凸を付与したい画像を基材に印刷することができる。発泡水性インクジェットインクを付与する領域は、例えば、基材の一部であってもよく、基材の全面であってもよい。
基材への発泡水性インクジェットインクの付与量は、50~600g/mが好ましく、80~550g/mがより好ましく、100~500g/mがさらに好ましい。
発泡水性インクジェットインクが付与された基材を加熱して発泡層を形成する工程において、基材を加熱する温度は、例えば、100~250℃が好ましく、130~230℃がより好ましい。加熱装置は、特に制限されないが、例えば、ドライヤー、オーブン、赤外線ヒーター等を用いることができる。加熱処理時間は、例えば、30秒~10分が好ましく、1分~5分がより好ましい。
発泡水性インクジェットインクが付与された基材を加熱し、揮発性の非水溶性有機溶剤Sが揮発してインク皮膜を発泡させて発泡層が形成される。このようにして凹凸を形成することができる。
加飾物品の製造方法は、その他の工程を含んでもよい。
例えば、発泡水性インクジェットインク中の水分散性樹脂をより効果的に皮膜化させる観点から、発泡水性インクジェットインクを基材にインクジェット法で付与する工程と、発泡水性インクジェットインクが付与された基材を加熱して発泡層を形成する工程との間に、基材上の発泡水性インクジェットインクを室温等で乾燥させる工程を含んでもよい。この工程の温度は、例えば、40℃以下又は室温であってよい。乾燥させる時間は、例えば、5分~24時間が好ましく、10分~1時間が好ましい。
加飾物品の製造方法は、例えば、発泡水性インクジェットインクが付与された基材に水性カラーインクを付与する工程をさらに含んでもよい。このような方法により、高画質で、凹凸の質感が付与された印刷画像を有する加飾物品を製造することができる。
カラーインクとしては、上述の一実施形態のインクセットで説明したカラーインクを用いることができる。
カラーインクを基材に付与する方法は、特に限定されないが、インクジェット法が好ましい。インクジェット方式は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
カラーインクを付与する領域は、例えば、発泡水性インクジェットインクによる画像と同一の形状の領域であってもよいし、発泡水性インクジェットインクによる画像の形状を含む広めの領域であってもよいし、発泡水性インクジェットインクによる画像の一部のみであってもよいし、発泡水性インクジェットインクによる画像の一部とそれ以外の部分を含む領域であってもよい。カラーインクを付与する領域は、例えば、基材の一部であってもよく、基材の全面であってもよい。
カラーインクの付与領域と、発泡水性インクジェットインクの付与領域とは、少なくとも部分的に重なることが好ましい。カラーインクの付与領域と、発泡水性インクジェットインクの付与領域と、前処理液の付与領域とは、少なくとも部分的に重なることが好ましい。
基材へのカラーインクの付与量は特に限定されないが、例えば、5~50g/mが好ましく、10~40g/mがより好ましい。
1種類のカラーインクを付与してもよく、2種類以上のカラーインクを付与してもよい。
水性カラーインクは、発泡水性インクジェットインクが付与された基材に、例えば、基材を加熱する工程の前又は後に付与されてよい。印刷ドットが良好に形成されたより高画質な印刷画像を得やすい観点からは、基材を加熱する工程の前に、発泡水性インクジェットインクが付与された基材に水性カラーインクを付与することが好ましい。例えば、発泡水性インクジェットインクを基材にインクジェット法で付与する工程の後に、基材上の発泡水性インクジェットインクを室温等で乾燥させる工程を行い、その後、発泡水性インクジェットインクが付与された基材に水性カラーインクを付与する工程を行うことが好ましい。
一実施形態の加飾物品は、基材と、前処理液を乾燥して得られる前処理層と、発泡水性インクジェットインクを加熱して得られる発泡層とをこの順で含むことができる。前処理液及び発泡水性インクジェットインクとしては、それぞれ上記したインクセットにおいて説明した前処理液及び発泡水性インクジェットインクを用いることができる。また、基材としては、例えば、上記した一実施形態のインクセットを用いることができる基材として説明した基材を用いることができる。
この加飾物品は、凹凸のある画像を有することができる。この加飾物品は、上記した一実施形態のインクセットを用いて製造することができる。また、この加飾物品は、例えば、上述した一実施形態の加飾物品の製造方法で製造することができる。
この加飾物品は、発泡層の上に、水性カラーインクの画像層をさらに含んでもよい。水性カラーインクの画像層としては、上述のインクセットで説明した水性カラーインクを用いて得ることができる。この加飾物品は、高画質で、凹凸の質感が付与された印刷画像を有することができる。
本開示は、下記の実施形態を含む。
<1>
水、及び凝集剤を含む前処理液と、
揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い、発泡水性インクジェットインクとを含む、インクセット。
<2>
前記凝集剤が、カチオン性水分散性樹脂を含み、前記揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子が、アニオン性表面を有する、<1>に記載のインクセット。
<3>
水性カラーインクをさらに含む、<1>又は<2>に記載のインクセット。
<4>
前処理液を基材に付与する工程と、
前記前処理液が付与された基材に、発泡水性インクジェットインクをインクジェット法で付与する工程と、
前記発泡水性インクジェットインクが付与された基材を加熱して発泡層を形成する工程とを含み、
前記前処理液は、水、及び凝集剤を含み、
前記発泡水性インクジェットインクは、揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い、
加飾物品の製造方法。
<5>
前記発泡層を形成する工程の前に、前記発泡水性インクジェットインクが付与された基材に水性カラーインクを付与する工程をさらに含む、<4>に記載の加飾物品の製造方法。
<6>
基材と、<1>~<3>のいずれか1項に記載の前処理液を乾燥して得られる前処理層と、<1>~<3>のいずれか1項に記載の発泡水性インクジェットインクを加熱して得られる発泡層とを、この順で含み、
前記前処理液は、水、及び凝集剤を含み、
前記発泡水性インクジェットインクは、揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い、
加飾物品。
<7>
前記発泡層の上に、水性カラーインクの画像層をさらに含む、<6>に記載の加飾物品。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の説明において、特に説明のない箇所では、「%」は「質量%」を示す。
1.前処理液の製造
前処理液1~4の処方を表1に示す。
表1に記載の各材料を表1に示す割合で配合し、その後孔径5μmのメンブレンフィルターで濾過し、前処理液1~4とした。
表1に記載の材料の詳細は以下の通りである。
<凝集剤>
「ポリゾールAP-1350」(商品名):昭和電工株式会社製、カチオン性水分散性アクリル系樹脂のエマルション、樹脂分32.5質量%
「PP-17」(商品名):明成化学工業株式会社製、カチオン性水分散性樹脂粒子分散体(複合有機粒子)、樹脂分26質量%
「ハイマックスSC-700M」(商品名):ハイモ株式会社製、カチオン性水溶性樹脂(アクリルアミド・アクリルニトリル・N-ビニルアクリルアミジン塩酸塩、N-ビニルアクリルアミド・ビニルアミン塩酸塩・N-ビニルホルムアミド共重合物)、樹脂分35質量%
塩化マグネシウム10%:塩化マグネシウム10質量%水溶液(東京化成工業株式会社製塩化マグネシウム四水和物及びイオン交換水を用いて、塩化マグネシウム10質量%の水溶液とした。)
<バインダ樹脂>
「ポリゾールAE-710WF」(商品名):昭和電工株式会社製、非イオン性水分散性アクリル系樹脂のエマルション、樹脂分46質量%
<水溶性有機溶剤>
エチレングリコール:東京化成工業株式会社製
<界面活性剤>
「サーフィノール485」(商品名):日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤(非イオン性)、有効成分100質量%
Figure 2024094025000001
2.発泡水性インクの製造
発泡水性インクの処方を表1及び2に示す。表に記載の各材料を表に示す割合で配合し、その後孔径5μmのメンブレンフィルターで濾過し、発泡水性インク1~10とした。
表中に記載の各材料の詳細は以下の通りである。
<粒子分散体>
「FUJI SP WHITE 1185」(商品名):冨士色素株式会社製、アクリル系中空樹脂粒子分散体、平均粒子径0.45μm、不揮発分29.6質量%
<樹脂エマルション(水分散性樹脂)>
「Neocryl A-639」(商品名):Covestro社製、アニオン性アクリル系樹脂エマルション、最低造膜温度(MFT)=53℃、Tg=62℃、樹脂分45質量%
「モビニール966A」(商品名):ジャパンコーティングレジン株式会社製、アニオン性アクリル系樹脂エマルション、最低造膜温度(MFT)=0℃、Tg=-32℃、樹脂分45質量%
<水溶性樹脂>
「ポバール22-88」(商品名):株式会社クラレ製、ポリビニルアルコール樹脂、樹脂分100質量%
<非水溶性有機溶剤>
ヘキサン:東京化成工業株式会社製ヘキサン、沸点69℃
ウンデカン:東京化成工業株式会社製ウンデカン、沸点195℃
トリデカン:東京化成工業株式会社製トリデカン、沸点226℃
<水溶性有機溶剤>
グリセリン:東京化成工業株式会社製グリセロール、沸点290℃
テトラエチレングリコールジメチルエーテル:東京化成工業株式会社製テトラエチレングリコールジメチルエーテル、沸点276℃
<界面活性剤>
「サーフィノール485」(商品名):日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤、有効成分100質量%
Figure 2024094025000002
Figure 2024094025000003
3.水性カラーインクの製造例
表4に水性カラーインクの処方を示す。表4に記載の各材料を表4に示す割合でプレミックスし、その後、ホモジナイザーで1分間分散し、その後孔径3μmのメンブレンフィルターで濾過し、インクK、C、M、Yを製造し、インクセット1とした。
表4に記載の原材料の詳細は下記のとおりである。
<顔料分散体>
「CAB-O-JET 300」(商品名):キャボットコーポレーション製、水系自己分散カーボンブラック分散体、顔料15質量%
「CAB-O-JET 450C」(商品名):キャボットコーポレーション製、水系自己分散顔料シアン分散体、顔料15質量%
「CAB-O-JET 465M」(商品名):キャボットコーポレーション製、水系自己分散顔料マゼンタ分散体、顔料24質量%
「CAB-O-JET 470Y(商品名):キャボットコーポレーション製、水系自己分散顔料イエロー分散体、顔料15質量%
<樹脂エマルション(水分散性樹脂)>
「スーパーフレックス470」(商品名):第一工業製薬株式会社製、水系ポリウレタン樹脂エマルション、樹脂分38質量%
<界面活性剤>
「サーフィノール485」(商品名):日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤
<水溶性有機溶剤>
グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製グリセリン
エチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製エチレングリコール
Figure 2024094025000004
4.実施例および比較例
4-1.対象基材
基材として市販のケイカル板(ケイ酸カルシウム板)を使用した。
4-2.評価方法
(1)加飾物品の作製
加飾物品は以下に記載の方法で作製した。
前処理液の付与を、発泡水性インクの付与の前に実施した。前処理液は、ハンディスプレーを用いて、前処理液塗布量(wet塗布量)が約50g/mとなるように基材の全面に塗布し、室温で5分乾燥させた。
上記で作製した発泡水性インクをエスアイアイプリンテック社製RC1536Mヘッドに導入し、前処理液の塗布及び5分間の室温乾燥が行われた基材に対して、発泡水性インクの塗布量(wet塗布量)が約100g/mになるように、発泡水性インクを用いて、文字および3cm×3cmのベタ画像4か所の画像を印刷し、室温で30分乾燥した。
次にインクセット1を市販のインクジェットプリンタ(マスターマインド社製、MMP845H)に導入し、発泡水性インクによる文字およびベタの画像に重ね、塗布量(wet塗布量)として約20g/mになるようにして、黒文字および黒、シアン、マゼンタ、イエローのベタ画像を印刷した。印刷終了後、190℃で5分間加熱して発泡及び乾燥させ、加飾物品とした。
(2)加飾物品の評価
(2-1)画像の画質
得られた加飾物品の画像の画質を、下記評価基準で発色および鮮明性を目視で評価することにより評価した。結果を表5及び6に示す。
(評価基準)
AA:ベタ画像の色彩が鮮やかでムラが無く、文字もはっきり見える。
A:ベタ画像の色彩がやや素地の色と混ざった色であるが、自然に発色している。文字もはっきりしている。
B:ベタ画像の発色が暗めになり、ムラがある。文字もやや見えにくい。
C:ベタ画像のムラが大きく、文字がにじんでおり画像が見えにくい。
(2-2)画像の凹凸
得られた加飾物品の画像の凹凸を、下記の評価基準で、目視及び触感で評価した。結果を表5及び6に示す
AA:凹凸が目視で明らかに分かる程度であり、触ると発泡水性インクを印刷した凸の部分と印刷していない部分との差がはっきりと分かる。
A:凹凸が目視でやや分かる程度であり、触ると発泡水性インクを印刷した凸の部分と印刷していない部分との差が分かる。
B:凹凸はあるが、目視では分からず、触ると発泡水性インクを印刷した凸の部分と印刷していない部分との差が分かる部分と分からない部分がある。
C:見た目でも触感でも凹凸が感じられない。
Figure 2024094025000005
Figure 2024094025000006
実施例1~5では、得られた加飾物品の画像の画質及び画像の凹凸の評価のいずれにおいても良好な結果が示された。
揮発性であって、沸点が100℃以上の非水溶性有機溶剤は含まれるが、これを内包する粒子が含まれない発泡水性インク7が用いられた比較例1では、良好な凹凸が得られなかった。また、印刷画像にも、にじみやムラが大きかった。沸点が100℃以上の非水溶性有機溶剤が基材にしみこんでしまったためと考えられる。
水分散性樹脂が含まれない発泡水性インク8が用いられた比較例2では、画像の凹凸が不足した。発泡しても膨らみが維持できなかったためと考えられる。
沸点の低い非水溶性有機溶剤が含まれる発泡水性インク9が用いられた比較例3では、印刷画像の画質は良好であったが、印刷画像の凹凸が得られなかった。発泡水性インクの非水溶性有機溶剤の沸点が低く、加熱するとすぐに揮発してしまったためと考えられる。
前処理液を用いなかった比較例4では、良好な凹凸が得られなかった。また、印刷画像も、高画質ではなかった。

Claims (7)

  1. 水、及び凝集剤を含む前処理液と、
    揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い、発泡水性インクジェットインクとを含む、インクセット。
  2. 前記凝集剤が、カチオン性水分散性樹脂を含む、請求項1に記載のインクセット。
  3. 水性カラーインクをさらに含む、請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前処理液を基材に付与する工程と、
    前記前処理液が付与された基材に、発泡水性インクジェットインクをインクジェット法で付与する工程と、
    前記発泡水性インクジェットインクが付与された基材を加熱して発泡層を形成する工程とを含み、
    前記前処理液は、水、及び凝集剤を含み、
    前記発泡水性インクジェットインクは、揮発性の非水溶性有機溶剤を内包する粒子、水分散性樹脂、及び水を含み、前記非水溶性有機溶剤の沸点は、100℃よりも高い、
    加飾物品の製造方法。
  5. 前記発泡層を形成する工程の前に、前記発泡水性インクジェットインクが付与された基材に水性カラーインクを付与する工程をさらに含む、請求項4に記載の加飾物品の製造方法。
  6. 基材と、請求項1又は2に記載の前処理液を乾燥して得られる前処理層と、請求項1に記載の発泡水性インクジェットインクを加熱して得られる発泡層とを、この順で含む、加飾物品。
  7. 前記発泡層の上に、水性カラーインクの画像層をさらに含む、請求項6に記載の加飾物品。
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