JP2019042990A - 多孔質材用前処理液、多孔質材用インクセット、加飾された多孔質材の製造方法、及び、加飾された多孔質材 - Google Patents
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Abstract
【課題】多孔質材に対し、発色性の高い画像を形成することができる加飾技術を提供する。【解決手段】水及び平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む多孔質材用前処理液。【選択図】なし
Description
本発明の実施形態は、多孔質材用前処理液、多孔質材用インクセット、加飾された多孔質材の製造方法、及び、加飾された多孔質材に関する。
表面及び内部に多数の細孔を備える多孔質材は、吸音、吸水、調湿、断熱等の様々な機能を有して、日常生活用品又は建築資材等の用途として利用されている。
多孔質材は、日常生活用品、又は建築資材等の用途に用いられる場合、吸音又は吸水等の機能だけではなく、高い意匠性も求められる場合が多い。このため、しばしば、このような多孔質材に対し、高品位な画像を形成することが求められ、その際、多孔質材が本来もつ多孔質構造ならではの機能を消失又は低減しない加飾方法が望ましい。
特許文献1には、吸音性を有する多孔質基材に対し、吸音効果を妨げることなく多孔質吸音材表面へのインクの定着性を高める技術として、カチオン性の水分散性樹脂、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm未満の無機粒子、及び多価金属塩からなる群から選ばれる1種以上を含む色材定着成分を含む表面処理液を用いることが記載されている。
しかし、多孔質材表面の画像のさらなる発色の向上が望まれる。
そこで、本発明の一目的は、多孔質材に対し、発色性の高い画像を形成することができる加飾技術を提供することである。
そこで、本発明の一目的は、多孔質材に対し、発色性の高い画像を形成することができる加飾技術を提供することである。
本発明の一実施形態は、水及び平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む多孔質材用前処理液に関する。
本発明の他の実施形態は、前記多孔質材用前処理液と、水及び色材を含む水性インクジェットインクと、を含む多孔質材用インクセットに関する。
本発明の他の実施形態は、前記多孔質材用前処理液を多孔質材の表面に付着させる前処理工程、及び、前記前処理工程の後に、水及び色材を含む水性インクジェットインクを用いて前記多孔質材の表面にインクジェット印刷する工程を含む、加飾された多孔質材の製造方法に関する。
本発明の他の実施形態は、多孔質材の表面に、平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む加飾部を有する、加飾された多孔質材に関する。
本発明の他の実施形態は、前記多孔質材用前処理液と、水及び色材を含む水性インクジェットインクと、を含む多孔質材用インクセットに関する。
本発明の他の実施形態は、前記多孔質材用前処理液を多孔質材の表面に付着させる前処理工程、及び、前記前処理工程の後に、水及び色材を含む水性インクジェットインクを用いて前記多孔質材の表面にインクジェット印刷する工程を含む、加飾された多孔質材の製造方法に関する。
本発明の他の実施形態は、多孔質材の表面に、平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む加飾部を有する、加飾された多孔質材に関する。
本発明の実施形態により、多孔質材に対し、発色性の高い画像を形成することができる加飾技術を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことは言うまでもない。
以下の記載において、多孔質材を「基材」と記すことがあり、多孔質材用前処理液を単に「前処理液」と記すことがあり、水性インクジェットインクを単に「インク」又は「水性インク」と記すことがある。
また、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。また、加飾された多孔質材を、「加飾物品」と記す場合もある。
以下の記載において、多孔質材を「基材」と記すことがあり、多孔質材用前処理液を単に「前処理液」と記すことがあり、水性インクジェットインクを単に「インク」又は「水性インク」と記すことがある。
また、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。また、加飾された多孔質材を、「加飾物品」と記す場合もある。
<多孔質材用前処理液>
本発明の一実施形態の多孔質材用前処理液は、水及び平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む。
本発明の一実施形態の多孔質材用前処理液は、水及び平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む。
本明細書において、「前処理」とは、塗布等の任意の手段により、前処理液を多孔質材に付着させる意味であり、前処理液を付着させることを「適用」とも記す。また、その付着箇所は、多孔質材の表面のみではなく、孔の内部(内面)を含んでいてもよい。
本実施形態の多孔質材用前処理液は、特には、水性インクジェットインクによる印刷画像を形成する前の前処理液として用いることが好ましい。
本実施形態の多孔質材用前処理液は、特には、水性インクジェットインクによる印刷画像を形成する前の前処理液として用いることが好ましい。
多孔質材にそのまま水性インクジェットインクによる印刷を行うと、その多孔質構造のため、インクが基材内部に浸透してしまい、十分な発色を得にくい場合がある。これに対し、本実施形態の前処理液で予め表面処理することで、インクジェットインクのような低粘度のインクを用いた場合であっても、多孔質材表面に高発色の画像を形成することができる。これは、基材に付着した平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子が、インクの基材内部への浸透を効果的に抑制または低減することができるためと考えられる。
多孔質材は、多孔質構造を有するものであれば特に限定されない。
多孔質材としては、通気度が8〜40mmH2O程度のものが好ましい。ここで、通気度は、ISO−9237に規定される、フラジール形法により繊維製品の通気性を評価する方法で測定されたものであり、試験片に対し一定流速の空気を流し、試験片の表裏両面の圧力差を測定した値である。具体的には、フラジール形通気性試験機(株式会社安田精機製作所製)を用い、試験片に対し、試験片面積100cm2あたり空気流量250L/分、流速41.7cm/秒の条件で、一定流速の空気を流し、試験片の表裏両側の圧力差「流れ抵抗値」として評価することができる。
また、多孔質材は、吸音機能を有する吸音材、吸水機能を有する吸水材、断熱機能を有する断熱材などの機能性多孔質材でもよい。多孔質材としては、例えば、紙、布なども挙げられる。
本実施形態の前処理液を用いた場合、機能性多孔質材に対しても、吸音機能等の、多孔質構造に由来する機能を維持したまま、発色性の高い画像を形成することができる。
多孔質材としては、通気度が8〜40mmH2O程度のものが好ましい。ここで、通気度は、ISO−9237に規定される、フラジール形法により繊維製品の通気性を評価する方法で測定されたものであり、試験片に対し一定流速の空気を流し、試験片の表裏両面の圧力差を測定した値である。具体的には、フラジール形通気性試験機(株式会社安田精機製作所製)を用い、試験片に対し、試験片面積100cm2あたり空気流量250L/分、流速41.7cm/秒の条件で、一定流速の空気を流し、試験片の表裏両側の圧力差「流れ抵抗値」として評価することができる。
また、多孔質材は、吸音機能を有する吸音材、吸水機能を有する吸水材、断熱機能を有する断熱材などの機能性多孔質材でもよい。多孔質材としては、例えば、紙、布なども挙げられる。
本実施形態の前処理液を用いた場合、機能性多孔質材に対しても、吸音機能等の、多孔質構造に由来する機能を維持したまま、発色性の高い画像を形成することができる。
吸音材は、表面及び内部に多数の細孔又は空隙を備え、これらが音を吸収して防音効果を発揮する。吸音材は、こうした機能を奏する多孔質体であれば、特に限定されず、例えば、グラスウール、ロックウール、樹脂繊維、金属質繊維等を用いて形成されるもの、又は樹脂発泡体、石膏ボード、金属発泡体、金属粉末焼結体から形成されるものを用いることができる。吸音材は、例えば、アルミニウム、ステンレス等のエキスパンドメタルを用いた防音材でもよい。吸音材の形状は通常、ボード状あるいはパネル状、すなわち板状であるが、これに限定されるものではない。
吸音材は、一般に、50〜1000μmの細孔又は空隙を有しており、そのまま水性インクジェットインクによる印刷を行うと、インクが基材内部に浸透してしまい、十分な発色を得ることが困難である。これに対し、本実施形態の前処理液で予め表面処理することで、上述の通り、基材内部へのインクの浸透を抑制又は低減することが可能となり、これにより、インクジェットインクのような低粘度のインクであっても、吸音材表面に高発色の画像を形成することができる。
吸音材は、一般に、50〜1000μmの細孔又は空隙を有しており、そのまま水性インクジェットインクによる印刷を行うと、インクが基材内部に浸透してしまい、十分な発色を得ることが困難である。これに対し、本実施形態の前処理液で予め表面処理することで、上述の通り、基材内部へのインクの浸透を抑制又は低減することが可能となり、これにより、インクジェットインクのような低粘度のインクであっても、吸音材表面に高発色の画像を形成することができる。
吸音材の市販品としては、例えば、アルミニウム粉末を焼結して製造された金属製吸音板「NDCカルム」(エヌデーシー販売株式会社)、アルミニウム繊維をプレス成形した「アルトーン」(ニチアス株式会社)、アルミニウム不織布をエキスパンドメタルでサンドイッチ状に密着・圧延した「ポアル」(株式会社ユニックス)、アルミニウム繊維を連続焼結させた「フルポーラス」(株式会社UACJ)、「メタシリー」(株式会社サーマル)、ポリエステル繊維を圧縮した「アコースティック・ミュートボード」(株式会社アコースティック・アドバンス)、ガラス繊維とパルプを混ぜた極薄軽量シートからなる「カールトン」(野原産業株式会社)等を好ましく使用できる。
上記「NDCカルム」は、不均一な数百μmサイズの空隙が分布してなる、空隙率(気孔率)が45%の、板状(厚さ約3mm)の吸音材である。上記「アコースティック・ミュートボード」は、主として数百μmの空隙を多く有する、板状(厚さ約5mm)の吸音材である。上記「カールトン」は、ガラス繊維とパルプが主原料で、シートの厚さは0.7mmである。
上記「NDCカルム」は、不均一な数百μmサイズの空隙が分布してなる、空隙率(気孔率)が45%の、板状(厚さ約3mm)の吸音材である。上記「アコースティック・ミュートボード」は、主として数百μmの空隙を多く有する、板状(厚さ約5mm)の吸音材である。上記「カールトン」は、ガラス繊維とパルプが主原料で、シートの厚さは0.7mmである。
吸水材としては、例えば、合成樹脂及び/又は天然繊維を用いて形成され、表面及び内部に多数の細孔を備え、この細孔が水を吸収するものが挙げられる。吸水材としては、例えば、スポンジクロスが挙げられ、スポンジクロスの市販品としては、例えば、KALLE社製スポンジクロスが挙げられる。
多孔質材用前処理液は、平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子を含むことが好ましい。
扁平状粒子を用いることで、前処理後の印刷で得られる画像の光沢をまし、発色性を向上させやすい。また、粒子が沈降しにくく、前処理液の保存安定性も良好としやすい。
また、平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子は、多孔質材表面の凹凸の凹部に入り込んで多孔質材表面にとどまりやすい。多孔質材表面にとどまった扁平状粒子は、その後の印刷で用いられるインクに対して目止め効果を発揮しながら、扁平状粒子がある確率で多孔質材表面に平行状に配列することで画像の光沢を増し、発色性も向上させることができると考えられる。
扁平状粒子を用いることで、前処理後の印刷で得られる画像の光沢をまし、発色性を向上させやすい。また、粒子が沈降しにくく、前処理液の保存安定性も良好としやすい。
また、平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子は、多孔質材表面の凹凸の凹部に入り込んで多孔質材表面にとどまりやすい。多孔質材表面にとどまった扁平状粒子は、その後の印刷で用いられるインクに対して目止め効果を発揮しながら、扁平状粒子がある確率で多孔質材表面に平行状に配列することで画像の光沢を増し、発色性も向上させることができると考えられる。
扁平状粒子は、粒子の立体形状に直交3次元座標系を当てはめたとき、少なくともいずれか一方向において短い。
扁平状粒子としては、例えば、フレーク状、鱗片状、板状、薄片状等の薄く平たい形状を有するものが挙げられる。
扁平状粒子の1つの方向からみたときの形状はとくに限定されず、例えば、円形、楕円形、四角状あるいは六角状等の多角形であっても、また、ランダムな(不定形)形状であってもよい。また、扁平状粒子は、表面に凹凸を有していてもよい。
扁平状粒子としては、例えば、フレーク状、鱗片状、板状、薄片状等の薄く平たい形状を有するものが挙げられる。
扁平状粒子の1つの方向からみたときの形状はとくに限定されず、例えば、円形、楕円形、四角状あるいは六角状等の多角形であっても、また、ランダムな(不定形)形状であってもよい。また、扁平状粒子は、表面に凹凸を有していてもよい。
平均長径70μm〜500μの扁平状粒子の種類は特に限定されず、例えば、無機粒子、有機粒子、有機/無機複合粒子のいずれでもよく、例えば、これらの粒子表面に、金属若しくは金属酸化物等の無機物、又は、樹脂等の有機物等でコーティングしたものを用いてもよい。
無機粒子の具体例としては、例えば、ガラス(例えばシリカ(SiO2)ガラス)、アルミ、マイカ(雲母)、酸化チタン等の、金属または金属酸化物をはじめとする無機扁平状粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、機械的に粉砕処理して得られた扁平状セルロース粒子、合成樹脂を扁平に成形したもの等が挙げられる。これらのなかでも、量産性、コスト、及び入手しやすさの観点から、無機粒子が好ましい。
平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子としては、例えば、無機粒子等の粒子表面に、金属若しくは金属酸化物等の無機物、又は、樹脂等の有機物でコーティングしたものを用いてもよい。このような粒子は、例えば、粒子の表面に金属酸化物等でコーティングして干渉色を利用して光輝性をさらに向上させたり、特定の波長の反射率だけを高めて色味を付けたものであってもよい。
平均長径70μm〜500μの扁平状粒子は、無機粒子を含むことが好ましく、例えば、金属若しくは金属酸化物等の無機物、又は、樹脂等の有機物でコーティングした無機粒子を含んでよい。
無機粒子の具体例としては、例えば、ガラス(例えばシリカ(SiO2)ガラス)、アルミ、マイカ(雲母)、酸化チタン等の、金属または金属酸化物をはじめとする無機扁平状粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、機械的に粉砕処理して得られた扁平状セルロース粒子、合成樹脂を扁平に成形したもの等が挙げられる。これらのなかでも、量産性、コスト、及び入手しやすさの観点から、無機粒子が好ましい。
平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子としては、例えば、無機粒子等の粒子表面に、金属若しくは金属酸化物等の無機物、又は、樹脂等の有機物でコーティングしたものを用いてもよい。このような粒子は、例えば、粒子の表面に金属酸化物等でコーティングして干渉色を利用して光輝性をさらに向上させたり、特定の波長の反射率だけを高めて色味を付けたものであってもよい。
平均長径70μm〜500μの扁平状粒子は、無機粒子を含むことが好ましく、例えば、金属若しくは金属酸化物等の無機物、又は、樹脂等の有機物でコーティングした無機粒子を含んでよい。
光沢や反射率を上げるには、例えば、屈折率の高い酸化チタン製の扁平状粒子、もしくは、酸化チタンで表面コーティングした粒子を好ましく用いることができる。酸化チタンで表面コーティングした粒子としては、例えば、無機粒子の表面を酸化チタンでコーティングした粒子が挙げられる。このような具体例として、雲母粒子の表面を酸化チタンでコーティングした粒子(例えば、メルクパフォーマンスマテリアルズ株式会社製イリオジン100シリーズ)、シリカ粒子の表面を酸化チタンでコーティングした粒子等(例えば、日本板硝子株式会社製メタシャイン)等が挙げられる。これらのなかで、着色を求めるならば、例えば、シリカ扁平状粒子に、酸化チタンなどの薄膜を、反射率を上げたい特定の波長の4分の1等、一定の厚みで設けて、干渉による構造色を利用した粒子(例えば、日本板硝子株式会社製メタシャイン)などを好適に用いることができる。
扁平状粒子の平均長径は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真で任意に選択した20個の粒子のそれぞれについて長径を求め、これを平均した値である。粒子の長径は、SEMで観察される粒子の最大長さである。
扁平状粒子の平均長径は、発色及び光沢の観点から、70μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。平均長径が70μm以上であるとき、扁平状粒子は多孔質材表面の凹凸の凹部に入り込んで、多孔質材表面に残りやすいことから、その後の印刷に用いられるインクに対する目止め効果を発揮しやすい。また、粒子が、ある程度の確率で多孔質材表面に平行に配列しやすいため、画像の光沢を向上させやすく、発色も向上させやすい。
扁平状粒子の平均長径は、通気性等の多孔質構造に由来する性能の維持、発色及び耐刷性の観点から、500μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。平均長径が500μm以下の扁平状粒子を用いるとき、多孔質材の多孔質構造による性能を維持しやすい。また、扁平状粒子が多孔質材の凹凸の凹部に入り込んで多孔質材表面にとどまりやすいため、発色及び耐刷性にも優れる。
扁平状粒子の平均長径は、通気性等の多孔質構造に由来する性能の維持、発色及び耐刷性の観点から、500μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。平均長径が500μm以下の扁平状粒子を用いるとき、多孔質材の多孔質構造による性能を維持しやすい。また、扁平状粒子が多孔質材の凹凸の凹部に入り込んで多孔質材表面にとどまりやすいため、発色及び耐刷性にも優れる。
平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の平均厚さは、平均長径より短いことが好ましい。平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の平均厚さは、画像の光沢及び発色性並びに前処理液の保存安定性の観点から、10nm以上が好ましく、100nm以上であってよい。平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の厚さは、画像の光沢及び発色性並びに前処理液の保存安定性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の厚さは、例えば、10nm以上20μm以下であってよい。
扁平状粒子の平均厚さは、任意に選択した20個の粒子について、個々の粒子の厚さをもとめ、これを平均した値である。なお、扁平状粒子の厚さは、粒子の長径となる直線の方向をX軸方向としたとき、X軸方向に直交する軸のうち最小長さとなる軸方向の長さである。
扁平状粒子の平均厚さは、任意に選択した20個の粒子について、個々の粒子の厚さをもとめ、これを平均した値である。なお、扁平状粒子の厚さは、粒子の長径となる直線の方向をX軸方向としたとき、X軸方向に直交する軸のうち最小長さとなる軸方向の長さである。
平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子は、SEM写真で観察される粒子のうち、粒子の半数以上において、粒子の幅が長径の5分の1以上であることが好ましく、3分の1以上がより好ましく、2分の1以上であることがさらに好ましい。粒子の幅と長径とが同じ長さであってもよい。
粒子の幅は、粒子の長径となる直線の方向をX軸方向、粒子の厚さとなる直線の方向をY軸方向としたとき、Z軸方向の長さである。
粒子の幅は、粒子の長径となる直線の方向をX軸方向、粒子の厚さとなる直線の方向をY軸方向としたとき、Z軸方向の長さである。
平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
前処理液中の平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の含有量は、発色性の観点から、前処理液全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。前処理液中の平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の含有量は、前処理液の粘度等の観点から、前処理液全量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
前処理液中の平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の含有量は、発色性の観点から、前処理液全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。前処理液中の平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の含有量は、前処理液の粘度等の観点から、前処理液全量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
前処理液は水を含むことが好ましい。水は、前処理液の溶媒、すなわちビヒクルとして機能するものであり、水道水、イオン交換水、脱イオン水等が使用できる。水は揮発性の高い溶媒であり、多孔質材に吐出された後、容易に蒸発するので、前処理後の多孔質材の細孔が塞がれるのを防止し、前処理後の多孔質材の、多孔質構造に由来する性能の低下を防止する作用を奏する。また、水は、無害で安全性が高く、VOCのような問題が無いので、前処理された多孔質材を環境にやさしいものとすることができる。
前処理液中の水の含有量が多ければ多いほど、多孔質材の多孔質構造に由来する性能の低下を防止する効果が高まるので、水は、処理液全量の60質量%以上であることが好ましく、65重量%以上であることがより好ましく、例えば、70質量%以上、または80質量以上であってよい。
水の配合量の上限値は、特に限定はされないが、例えば、水の含有量は95質量%以下であってよい。
水の配合量の上限値は、特に限定はされないが、例えば、水の含有量は95質量%以下であってよい。
前処理液は、インクの不要な広がりやにじみを防止するために、動的光散乱法により測定されるメジアン径が10μm以下のカチオン性の水分散性樹脂、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子、多価金属塩、及び、有機酸から選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。以下、動的光散乱法により測定されるメジアン径が10μm以下のカチオン性の水分散性樹脂、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子、多価金属塩、及び、有機酸から選択される少なくとも1種を、「成分A」と記す場合がある。
インクは一般に、表面電荷がアニオン性の成分を含み、顔料等の色材も一般的にアニオン性である。したがって、カチオン性の成分を含む前処理液を用いて、予め基材表面にカチオン性の成分を付着させておくことにより、インクとの間にアニオン−カチオン反応が生じ、色材などのインク成分の基材への浸透を十分に抑制し、色材を基材表面に留めることができる。
カチオン性の成分は、好ましくは、水分散性樹脂であり、水分散性樹脂粒子である。
カチオン性の水分散性樹脂は、樹脂粒子の表面がプラスに帯電した、正電荷を帯びた樹脂粒子であり、水に溶解することなく粒子状に分散して、水中油(O/W)型のエマルションを形成できるものである。自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するカチオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にカチオン性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。カチオン性の官能基は、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、又はベンゾピラゾール基等であり、カチオン性の分散剤は、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有アクリルポリマー、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、カチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等である。
樹脂粒子の表面電荷量は、粒子電荷計で評価することができる。試料を中和するのに必要なアニオン量またはカチオン量を測定することで、表面電荷量を算出することができる。具体的には、表面電荷量が+300μeq/g以上であることが好ましい。粒子電荷計としては、日本ルフト株式会社製コロイド粒子電荷量計Model CAS等を用いることができる。
樹脂粒子の表面電荷量は、粒子電荷計で評価することができる。試料を中和するのに必要なアニオン量またはカチオン量を測定することで、表面電荷量を算出することができる。具体的には、表面電荷量が+300μeq/g以上であることが好ましい。粒子電荷計としては、日本ルフト株式会社製コロイド粒子電荷量計Model CAS等を用いることができる。
水分散性樹脂としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。また、処理液の製造に際しては、水中油型の樹脂エマルションとして配合することができる。
代表的には、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。
これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いても良い。後述するが、これらの樹脂が複合された樹脂エマルションでも良い。
上記のとおり、これらの樹脂にカチオン性の官能基を導入するか、又は、カチオン性分散剤等で表面処理して、プラスの表面電荷を与えることができる。
代表的には、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。
これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いても良い。後述するが、これらの樹脂が複合された樹脂エマルションでも良い。
上記のとおり、これらの樹脂にカチオン性の官能基を導入するか、又は、カチオン性分散剤等で表面処理して、プラスの表面電荷を与えることができる。
樹脂粒子の粒径は、複数種の異なる粒径の粒子を任意に組み合わせて用いることができる。
また、樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定されるメジアン径10μm以下であることが好ましく、これにより多孔質材の多孔を完全に塞ぐことなく、多孔質構造に由来する性能の低下を抑制しやすい。一実施形態において、多孔質である基材の表面に留まりやすく、加熱乾燥等により基材表面に定着しやすいとの観点から、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm以上のサイズを持つ粒子を含むことが好ましい。
また、樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定されるメジアン径10μm以下であることが好ましく、これにより多孔質材の多孔を完全に塞ぐことなく、多孔質構造に由来する性能の低下を抑制しやすい。一実施形態において、多孔質である基材の表面に留まりやすく、加熱乾燥等により基材表面に定着しやすいとの観点から、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm以上のサイズを持つ粒子を含むことが好ましい。
一実施形態においては、水分散性樹脂は、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm以上10μm以下の大粒子と、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm未満の小粒子とを含んでもよい。
すなわち、一実施形態において前処理液は、カチオン性の水分散性樹脂を含んでよく、該カチオン性の水分散性樹脂は、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以上10μm以下の大粒子と、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm未満の小粒子とを含んでよい。
すなわち、一実施形態において前処理液は、カチオン性の水分散性樹脂を含んでよく、該カチオン性の水分散性樹脂は、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以上10μm以下の大粒子と、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm未満の小粒子とを含んでよい。
樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒径値(メジアン径)である。動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、ナノ粒子解析装置nano Partica SZ−100(株式会社堀場製作所製)等を用い、水分散性樹脂の濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、25℃で測定することができる。
前処理液中又は後述するインク中において、樹脂粒子は、独立した微粒子の状態で存在する場合と、独立した微粒子が集合した凝集体の状態で存在する場合とが考えられるが、動的光散乱法で測定されるメジアン径を「平均粒径」と位置づけることとする。
なお、上記樹脂粒子の平均粒径は、前処理液又はインクを調製する前の原料エマルション状態で測定することが、インクの場合であれば色材(顔料粒子)の影響を排除できることから好ましく、その測定値を本実施形態の平均粒径とすることができる。
なお、上記樹脂粒子の平均粒径は、前処理液又はインクを調製する前の原料エマルション状態で測定することが、インクの場合であれば色材(顔料粒子)の影響を排除できることから好ましく、その測定値を本実施形態の平均粒径とすることができる。
大粒子の平均粒径は、1μm以上、2μm以上であることがこの順に好ましく、10μm以下、7μm以下、5μm以下であることがこの順に好ましい。
小粒子の平均粒径は、1μm未満、500nm以下、250nm以下であることがこの順に好ましい。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、前処理液の保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
さらに、大粒子と小粒子は、両者を混合して平均粒径を測定した場合に、その粒度分布において二つのピークが存在する、すなわち各々が異なるピーク値を有するものであることが好ましい。
小粒子の平均粒径は、1μm未満、500nm以下、250nm以下であることがこの順に好ましい。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、前処理液の保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
さらに、大粒子と小粒子は、両者を混合して平均粒径を測定した場合に、その粒度分布において二つのピークが存在する、すなわち各々が異なるピーク値を有するものであることが好ましい。
また、大粒子と小粒子は、平均粒径値の相違に加え、その他の相違点を有していてもよい。例えば、大粒子は、最低造膜温度(MFT)が70℃以上であることが好ましく、一方、小粒子は、MFTが70℃未満以下であることが好ましい。このMFTとは、エマルションがフィルム化(成膜)するために必要な温度であり、JIS K6828−2に従って測定することができる。ここで、70℃においても成膜しない水分散性樹脂は、MFTが70℃以上の水分散性樹脂に含まれるものとする。
より好ましくは、大粒子のMFTは100℃以上であり、小粒子のMFTは50℃以下であり、特に、小粒子は室温で成膜することが好ましいため、40℃以下であることが一層好ましい。
また、大粒子のMFTと小粒子のMFTの差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
より好ましくは、大粒子のMFTは100℃以上であり、小粒子のMFTは50℃以下であり、特に、小粒子は室温で成膜することが好ましいため、40℃以下であることが一層好ましい。
また、大粒子のMFTと小粒子のMFTの差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
大粒子と小粒子の樹脂の分子構造は、同一であってもよいが、互いに異なるものを用いてもよい。
大粒子として、例えば、カルボキシ基、スルホ基等に代表されるアニオン性の官能基を有するポリマーと、アミノ基又はアミド基等に代表されるカチオン性の官能基を有するポリマーとが複合して得られるポリマーコンプレックスであって、コア部がアニオン性ポリマー、シェル部がカチオン性ポリマーである、コアシェル構造の複合有機粒子を用いることも好ましい。
大粒子として、例えば、カルボキシ基、スルホ基等に代表されるアニオン性の官能基を有するポリマーと、アミノ基又はアミド基等に代表されるカチオン性の官能基を有するポリマーとが複合して得られるポリマーコンプレックスであって、コア部がアニオン性ポリマー、シェル部がカチオン性ポリマーである、コアシェル構造の複合有機粒子を用いることも好ましい。
複合有機粒子のアニオン性ポリマーとしては、例えば繰り返し単位として(メタ)アクリル酸を含むポリマー、より具体的にはスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。スチレン、(メタ)アクリル酸以外の、これらと共重合可能なビニル化合物を含んでいてもよい。
複合有機粒子のカチオン性ポリマー(塩基性ポリマー)としては、例えば、含窒素モノマーを含むポリマーであり、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルイミダゾール等の窒素複素環化合物を繰り返し単位として含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。コポリマーを形成するコモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の一般的なビニル化合物を、1種または2種以上選択して使用できる。
複合有機粒子のカチオン性ポリマー(塩基性ポリマー)としては、例えば、含窒素モノマーを含むポリマーであり、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルイミダゾール等の窒素複素環化合物を繰り返し単位として含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。コポリマーを形成するコモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の一般的なビニル化合物を、1種または2種以上選択して使用できる。
この場合のアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの使用割合は、粒子表面の電荷をカチオン性とするために、質量比で、アニオン性ポリマー1に対し、カチオン性ポリマーが3〜10であることが好ましい。
このような複合有機粒子の市販品として、「PP−15」、「PP−17」(共に明成化学工業株式会社製)を好ましく用いることができる。
このような複合有機粒子の市販品として、「PP−15」、「PP−17」(共に明成化学工業株式会社製)を好ましく用いることができる。
カチオン性水分散性樹脂の市販品の例としては、例えば、カチオン性アクリル樹脂エマルションであるポリゾールAE−803(昭和電工株式会社製)、カチオン性水系ウレタン樹脂エマルションであるサンプレックスPUE−C200B(株式会社村山化学研究所製)が挙げられる。
前処理液中における水分散性樹脂の量(大粒子と小粒子を用いる場合には両者の合計固形分量)は、処理した際の基材表面におけるインク定着性の観点から2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが一層好ましい。一方、処理液の粘度が高すぎる場合、均一な処理が困難になるため、樹脂量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
また大粒子と小粒子を用いる場合の両者の比率は、小粒子が大粒子に対して少なすぎると定着性が不十分であり、多すぎると処理層が皮膜化し基材の吸音性を妨げる恐れがあるため、質量比で大粒子1に対し小粒子が0.1〜1.5程度であることが好ましい。
また大粒子と小粒子を用いる場合の両者の比率は、小粒子が大粒子に対して少なすぎると定着性が不十分であり、多すぎると処理層が皮膜化し基材の吸音性を妨げる恐れがあるため、質量比で大粒子1に対し小粒子が0.1〜1.5程度であることが好ましい。
動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子は、インクの受容層となり、色材を定着させることができる。その際、多孔質材が本来有する空隙を無機粒子が埋めることになるが、無機粒子で形成される受容層自体も多孔質層となるため、多孔質材の多孔質構造に由来する性能を良好に維持することができる。
成分Aの無機粒子は、基材に対する定着性の観点から、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下であることが好ましい。
動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子の種類は、特に限定されないが、シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等を好ましく使用することができ、これらの複数種を組み合わせて使用してもよい。
動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子の種類は、特に限定されないが、シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等を好ましく使用することができ、これらの複数種を組み合わせて使用してもよい。
好ましい一実施形態において、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子は、表面がプラスに帯電した、正電荷を帯びたカチオン性の無機粒子である。無機粒子の表面電荷は、上述の樹脂粒子の表面電荷と同様に測定することができる。
前処理液中における動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子の含有量は、処理した際の基材表面におけるインク定着性の観点から0.5質量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることが一層好ましい。一方、処理液の粘度が高すぎる場合、均一な処理が困難になるため、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子量は40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
前処理液は、多価金属塩を含むことができる。インク中の色材は、多価金属塩の存在により、その分散状態が破壊されて、凝集状態に成りやすい傾向がある。そのため、多価金属塩が多孔質材に付着していることにより、多価金属塩と接触した色材が凝集して、多孔質基材の表面に留まり易くなると考える。
多価金属塩としては、例えば、Mg、Ca、Al、Zn、Ba等の2価以上の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、脂肪酸塩、乳酸塩等が挙げられ、これらの2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
前処理液中における多価金属塩の含有量は、処理した際の基材表面におけるインク定着性の観点から0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上であることが、この順に一層好ましい。一方、処理液の安定性や画像の均一性の観点から、多価金属塩量は30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であることが、この順に一層好ましい。
有機酸は、多価金属イオンと同様に凝集剤として用いられる物質である。有機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前処理液中における有機酸の含有量は、0.5質量%以上、2質量%以上がこの順に好ましく、20質量%以下、10質量%以下がこの順に好ましい。
前処理液中における有機酸の含有量は、0.5質量%以上、2質量%以上がこの順に好ましく、20質量%以下、10質量%以下がこの順に好ましい。
成分Aとして、複数種を用いる場合、動的光散乱法により測定されるメジアン径が10μm以下のカチオン性の水分散性樹脂、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以下の無機粒子、多価金属塩、及び、有機酸の個々の含有量は、例えば、上述した好ましい量よりも少ない量としてもよい。
前処理液の溶媒は、ほとんどが水で構成されることが好ましいが、必要に応じて、水以外に、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、β−チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、β−チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
水溶性有機溶剤の含有量は、粘度調整と保湿効果の観点から、処理液中に30質量%以下(あるいは、溶媒中に50質量%以下)であることが好ましい。
水溶性有機溶剤の含有量は、粘度調整と保湿効果の観点から、処理液中に30質量%以下(あるいは、溶媒中に50質量%以下)であることが好ましい。
前処理液は、その表面張力を低下させて基材表面に均一に塗布できるようにするために、また、粒径の小さい水分散性樹脂粒子(小粒子)又は無機粒子の凝集を抑制して液の保存安定性を高めるために、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
界面活性剤は、親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のものと非イオン性(ノニオン性)のものに大別されるが、本実施形態では、処理液の泡立ちの観点から、起泡しにくい非イオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。また、低分子系・高分子系(一般には分子量が約2000以上のものを指す。)のどちらでも良いが、高分子系界面活性剤を用いることが好ましい。
HLB値については、5〜20程度の界面活性剤であることが好ましい。
HLB値については、5〜20程度の界面活性剤であることが好ましい。
非イオン系の界面活性剤としては、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型のもの、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型のもの、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型のもの等が挙げられる。
本実施形態では、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、アセチレングリコールであるサーフィノール104E、104H、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造のサーフィノール420、440、465、485、アセチレングリコールのオルフィンE−1004、E−1010、E−1020、PD−002W、PD−004、EXP.4001、EXP−4200、EXP−4123、EXP−4300等(日信化学工業株式会社)、アセチレングリコールのアセチレノールE00、E00P、アセチレングリコールのエチレンオキサイドを付加した構造のアセチレノールE40、E100等(川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、アセチレングリコールであるサーフィノール104E、104H、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造のサーフィノール420、440、465、485、アセチレングリコールのオルフィンE−1004、E−1010、E−1020、PD−002W、PD−004、EXP.4001、EXP−4200、EXP−4123、EXP−4300等(日信化学工業株式会社)、アセチレングリコールのアセチレノールE00、E00P、アセチレングリコールのエチレンオキサイドを付加した構造のアセチレノールE40、E100等(川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤は、非常に高い表面張力低下能と接触角低下能を持つため、多孔質材表面が親水性でなくても基材表面に処理液を速やかに拡散させることができる。その結果、多孔質基材の表面に処理液の機能発現成分が均一に定着することができるため、印刷した際にインクが処理部分に均一に定着し、高発色で高品位の印刷画像を得ることができる。
シリコーン系界面活性剤のなかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤が好ましい。市販品では「シルフェイスSAGシリーズ」(日信化学工業株式会社)を好ましく使用できる。
シリコーン系界面活性剤のなかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤が好ましい。市販品では「シルフェイスSAGシリーズ」(日信化学工業株式会社)を好ましく使用できる。
界面活性剤は、上記のシリコーン系界面活性剤等を、いずれか単独で用いてもよいし、互いに相溶性が良好な複数の界面活性剤を併用してもよい。
界面活性剤を使用する場合の前処理液中の含有量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましい、一方、界面活性剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であってよい。
界面活性剤を使用する場合の前処理液中の含有量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましい、一方、界面活性剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であってよい。
前処理液には、前処理液の機能を阻害しない限り、上記の成分以外に、他の成分を添加することができる。他の成分としては、例えば、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。
例えば、成分Aが無機粒子又は多価金属塩の場合、前処理液の多孔質材への定着性を高めるために、バインダー樹脂が含まれていることが好ましい。
バインダー樹脂は、特に限定されないが、水分散性樹脂として先に例示したエチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等を好ましく用いることができる。これらの樹脂は単独で含まれても良いし、複数が含まれても良い。また、これらの樹脂を架橋させる架橋成分が含まれても良い。架橋成分としては、例えばブロックイソシアネート、オキサゾリン基含有化合物、(ポリ)カルボジイミド、アジリジン等が挙げられるがその限りではない。なお、前処理液が、成分Aとしてカチオン性水溶性樹脂を含む場合は、このカチオン性水溶性樹脂がバインダー樹脂としての機能も併せ持つことができる。
バインダー樹脂は、特に限定されないが、水分散性樹脂として先に例示したエチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等を好ましく用いることができる。これらの樹脂は単独で含まれても良いし、複数が含まれても良い。また、これらの樹脂を架橋させる架橋成分が含まれても良い。架橋成分としては、例えばブロックイソシアネート、オキサゾリン基含有化合物、(ポリ)カルボジイミド、アジリジン等が挙げられるがその限りではない。なお、前処理液が、成分Aとしてカチオン性水溶性樹脂を含む場合は、このカチオン性水溶性樹脂がバインダー樹脂としての機能も併せ持つことができる。
前処理液は、水、平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子、及び、その他成分を、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。
<多孔質材用インクセット>
本発明の一実施形態である多孔質材用インクセットは、上記の多孔質材用前処理液と、水及び色材を含む水性インクジェットインクを含む。
本実施形態の多孔質材用インクセットを用いるとき、上述の前処理液で予め表面処理することで、基材に付着した平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子が、インクの基材内部への浸透を抑制または低減することができるので、多孔質材表面に高発色の画像を形成することができる。また、機能性多孔質材に対しても、吸音機能等の、多孔質構造に由来する機能を維持したまま、発色性の高い画像を形成することができる。
多孔質材及び多孔質材用前処理液については、前述のとおりである。
以下、水性インクジェットインクについて説明する。
本発明の一実施形態である多孔質材用インクセットは、上記の多孔質材用前処理液と、水及び色材を含む水性インクジェットインクを含む。
本実施形態の多孔質材用インクセットを用いるとき、上述の前処理液で予め表面処理することで、基材に付着した平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子が、インクの基材内部への浸透を抑制または低減することができるので、多孔質材表面に高発色の画像を形成することができる。また、機能性多孔質材に対しても、吸音機能等の、多孔質構造に由来する機能を維持したまま、発色性の高い画像を形成することができる。
多孔質材及び多孔質材用前処理液については、前述のとおりである。
以下、水性インクジェットインクについて説明する。
水性インクジェットインクにおいて、水は、インクの溶媒、すなわちビヒクルとして機能するものであれば特に限定されず、水道水、イオン交換水、脱イオン水等が使用できる。前処理液について上述したとおり、水は安全であるとともに揮発性が高いため、多孔質材の細孔が塞がれるのを防止し、加飾された多孔質材の多孔質構造に由来する性能の低下を防止することができる。
インク中の水の含有量が多ければ多いほど、多孔質材の多孔質構造に由来する性能の低下を防止する効果が高まるので、水は、インク全量の30質量%以上であることが好ましく、インク全量の60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。
また、水の含有量は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
インク中の水の含有量が多ければ多いほど、多孔質材の多孔質構造に由来する性能の低下を防止する効果が高まるので、水は、インク全量の30質量%以上であることが好ましく、インク全量の60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。
また、水の含有量は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
インクの溶媒は、その大部分が水で構成されることが好ましいが、必要に応じて、水以外に、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、上記前処理液に使用できるものと同様の溶剤を、1種又は2種以上選択して使用できる。
水溶性有機溶剤のインク中の含有量は、2種以上が用いられる場合はその合計含有量として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。
水溶性有機溶剤のインク中の含有量は、2種以上が用いられる場合はその合計含有量として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。
色材としては、顔料及び染料の何れも使用することができ、単独で使用しても両者を併用してもよい。加飾画像の耐候性及び印刷濃度の点から、色材として顔料を使用することが好ましい。
色材の含有量は、インク全量に対して0.01〜20質量%の範囲であることが好ましい。さらには、色材の含有量は0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが一層好ましく、また、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが一層好ましい。
色材の含有量は、インク全量に対して0.01〜20質量%の範囲であることが好ましい。さらには、色材の含有量は0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが一層好ましく、また、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが一層好ましい。
染料としては、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等が挙げられ、これらのうち、水溶性のもの及び還元等により水溶性となるものが使用できる。より具体的には、アゾ染料、ローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等が挙げられる。これらの染料は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料及び染付レーキ顔料等の有機顔料並びに無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。無機顔料としては、代表的にはカーボンブラック及び酸化チタン等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェニルスルホン酸基、フェニルカルボキシル基等のアニオン基を有するアニオン性顔料がより好ましい。
顔料としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェニルスルホン酸基、フェニルカルボキシル基等のアニオン基を有するアニオン性顔料がより好ましい。
インクには、インク中における顔料の分散を良好にするために、インクに必要に応じて顔料分散剤を添加することができる。使用できる顔料分散剤としては、顔料を溶媒中に安定して分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、高分子分散剤や顔料分散能をもった界面活性剤に代表される公知の顔料分散剤を使用することが好ましい。高分子分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパース(商品名)シリーズ、BASFジャパン株式会社製のジョンクリル(商品名)シリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ、BYKシリーズ、エボニックジャパン株式会社製のTEGO Dispers 750W、TEGO Dispers 760Wなどが挙げられる。界面活性剤の具体例としては、花王株式会社製デモール(商品名)シリーズのような、アニオン性の脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等、非イオン性のポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に上記溶媒中に分散可能な量であれば足り、例えば顔料1に対し質量比で0.01〜2の範囲内で、適宜設定できる。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に上記溶媒中に分散可能な量であれば足り、例えば顔料1に対し質量比で0.01〜2の範囲内で、適宜設定できる。
顔料表面を親水性官能基で修飾した自己分散顔料を使用してもよい。自己分散顔料の市販品の例としては、たとえば、キャボットジャパン株式会社製CAB−O−JETシリーズ(CAB−O−JET200、300、250C、260M、270Y)、オリヱント化学工業株式会社製BONJETシリーズ(BONJET BLACK CW−1、CW−2、CW−4)等が挙げられる。顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を使用してもよい。
インクには、水分散性樹脂又は水溶性樹脂の少なくとも一方が含まれることが好ましい。これにより、少量の色材で高い着色性を得やすい。水分散性樹脂と水溶性樹脂を併用してもよい。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらは、単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらは、単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。
水分散性樹脂の場合は、粒子表面がマイナスに帯電し、負電荷を帯びたアニオン性の樹脂粒子を用いることが好ましい。これは、水に溶解することなく粒子状に分散して水中油(O/W)型エマルションを形成できるものである。自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するアニオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にアニオン性の分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。アニオン性の官能基は、代表的にはカルボキシ基、スルホ基等であり、アニオン性の分散剤は、陰イオン界面活性剤等である。表面がアニオン性であると、上記前処理液中のカチオン性水分散性樹脂との化学的な相互作用が得られ、その結果、色材の定着を一層強固なものとして画像の耐久性をより高めることができる。
樹脂粒子の表面電荷は、ゼータ電位を測定することで評価できる。具体的には、ゼータ電位の絶対値が30mV以上であることが好ましい。
樹脂粒子の表面電荷は、ゼータ電位を測定することで評価できる。具体的には、ゼータ電位の絶対値が30mV以上であることが好ましい。
樹脂の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。また、インクの製造に際し、樹脂エマルションとして配合することができる。
代表的には、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。
上記のとおり、これらの樹脂にアニオン性の官能基を導入するか、又は、アニオン性分散剤等で表面処理して、マイナスの表面電荷を与えることができる。
代表的には、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。
上記のとおり、これらの樹脂にアニオン性の官能基を導入するか、又は、アニオン性分散剤等で表面処理して、マイナスの表面電荷を与えることができる。
これらの水分散性樹脂(又はそのエマルション)のうち、インクジェットヘッドからの安定吐出性能の観点、及び金属製等の多孔質材に対する密着性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が−35〜40℃のウレタン樹脂(エマルション)を用いることが好ましい。かかる樹脂エマルションの具体例としては、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス460、420、470、460S(カーボネート系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)、150HS(エステル・エーテル系ウレタン樹脂エマルション・商品名)、740、840(芳香族イソシアネート系エステル系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)、DSM株式会社製のNeoRez R−9660、R−2170(脂肪族ポリエステル系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)、NeoRez R−966、R−967、R−650(脂肪族ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)、R−986、R−9603(脂肪族ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)などが挙げられる。
ガラス転移温度(Tg)が−35〜40℃であるもの以外のウレタン樹脂(エマルション)の具体例としては、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス300(商品名)などが挙げられる。ウレタン樹脂(エマルション)としては、例えば、株式会社ADEKA製アデカボンタイターHUX−380なども挙げられる。
ガラス転移温度(Tg)が−35〜40℃であるもの以外のウレタン樹脂(エマルション)の具体例としては、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス300(商品名)などが挙げられる。ウレタン樹脂(エマルション)としては、例えば、株式会社ADEKA製アデカボンタイターHUX−380なども挙げられる。
また、インク中での安定性の観点から、(メタ)アクリル樹脂又は(メタ)アクリル樹脂共重合体を用いることも好ましい。具体的には、日本合成化学工業株式会社製のモビニール966A、6963、6960(アクリル樹脂エマルション・いずれも商品名)、6969D、RA−033A4(スチレン/アクリル樹脂エマルション・いずれも商品名)や、BASFジャパン株式会社のジョンクリル7100、PDX−7370、PDX−7341(スチレン/アクリル樹脂エマルション・いずれも商品名)、DIC株式会社製のボンコートEC−905EF、5400EF、CG−8400(アクリル/スチレン系エマルション)、DSM株式会社製Neocryl BT−62(スチレン/アクリル樹脂エマルション・商品名)などが挙げられる。
水分散性樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の1種単独の樹脂(又はそのエマルション)から構成されてもよいし、又は、複数種の樹脂(又はそれらのエマルション)を組み合わせて構成されてもよい。
水分散性樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の1種単独の樹脂(又はそのエマルション)から構成されてもよいし、又は、複数種の樹脂(又はそれらのエマルション)を組み合わせて構成されてもよい。
エマルションを形成する水分散性樹脂粒子は、インクジェット印刷に適した粒子径であれば良く、一般的には平均粒径(動的光散乱法により体積基準で測定したメジアン径)で300nm以下であることが好ましい。また、インクジェット印刷に適したこの程度の大きさであれば、多孔質基材の細孔を完全に塞ぐことがなく、吸音性能を維持することができるので好ましい。この吸音性能の維持のため、平均粒径のより好ましい値は250nm以下であり、さらに好ましい値は200nm以下であり、一層好ましい値は150nm以下である。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、インクの保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
インク中における水分散性樹脂及び/又は水溶性樹脂の量(固形分量)は、色材と樹脂の比率(色材:樹脂)で1:0.5〜1:7(質量比)が好ましい。樹脂の含有量をこの範囲にすることで、多孔質基材の表面に印刷された画像の耐水擦過性と高画質性を十分に確保することができる。色材1に対する樹脂の比率が0.5より小さいと、顔料の定着性が悪くなる可能性があり、7より大きいと、粘度が高くなり、インクを吐出するヘッドからインクを吐出できなくなる可能性がある。
また、インク中にはインクの表面張力を低下させ、インクジェットヘッドに導入した際の吐出安定性を確保し、また印刷対象基材にインクを速やかに浸透させるために、表面張力低下剤を添加することができる。表面張力低下剤としては、さらに水分散性樹脂粒子の凝集を抑制する効果も有している界面活性剤、例えば、前処理液に配合されると同様の界面活性剤を用いることもできる。顔料分散機能と表面張力低下機能の双方を備える界面活性剤を使用してもよい。
インク中の表面張力低下剤の量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましい。
一方、表面張力低下剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であってもよい。
インク中の表面張力低下剤の量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましい。
一方、表面張力低下剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であってもよい。
インクには、インクの性状に悪影響を与えない限り、上記の成分以外に、例えば、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、分散助剤等の他の成分を添加できる。ここでいう分散助剤とは、すでに分散されている顔料分散体に追加で添加する分散剤のことで、分散助剤としては、一般的な分散剤を使用することができる。
インクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。
例えば、ビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め水と色材の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
例えば、ビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め水と色材の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
多孔質材用インクセットは、必要に応じて、上述の前処理液及び/又は水性インクジェットインクを複数含んでもよい。多孔質材用インクセットは、例えば、必要に応じて、その他のインク及び/又は処理液等を含んでもよい。
<加飾された多孔質材の製造方法>
本発明の一実施形態の加飾された多孔質材の製造方法は、上述の多孔質材前処理液を多孔質材の表面に付着させる前処理工程、及び、前処理工程の後に、上述の水性インクジェットインクを用いて多孔質材の表面にインクジェット印刷する工程を含む。
本実施形態の加飾された多孔質材の製造方法では、上述の前処理液で予め表面処理することで、基材に付着した平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子が、インクの基材内部への浸透を抑制または低減することができるので、多孔質材表面に高発色の画像を形成することができる。また、機能性多孔質材に対しても、吸音機能等の、多孔質構造に由来する機能を維持したまま、発色性の高い画像を形成することができる。
多孔質材、多孔質材用前処理液及びインクについては、前述のとおりである。上述の通り、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。この加飾された部分は、対象物、すなわち多孔質材の全面であっても一部であってもよい。
本発明の一実施形態の加飾された多孔質材の製造方法は、上述の多孔質材前処理液を多孔質材の表面に付着させる前処理工程、及び、前処理工程の後に、上述の水性インクジェットインクを用いて多孔質材の表面にインクジェット印刷する工程を含む。
本実施形態の加飾された多孔質材の製造方法では、上述の前処理液で予め表面処理することで、基材に付着した平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子が、インクの基材内部への浸透を抑制または低減することができるので、多孔質材表面に高発色の画像を形成することができる。また、機能性多孔質材に対しても、吸音機能等の、多孔質構造に由来する機能を維持したまま、発色性の高い画像を形成することができる。
多孔質材、多孔質材用前処理液及びインクについては、前述のとおりである。上述の通り、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。この加飾された部分は、対象物、すなわち多孔質材の全面であっても一部であってもよい。
多孔質材には、前処理工程前に、任意の下地塗装や親水化処理等がなされていても良い。その場合、塗装は水性の塗料で行われることが好ましい。また、多孔質材が本来もつ多孔質構造に由来する性能を低下させない程度の下地塗装である必要がある。
前処理工程では、多孔質材の表面に、多孔質材用前処理液を付着させる。そして、この多孔質材用前処理液を付着させて乾燥させてから、水性インクを用いたインクジェット印刷を行うことが好ましい。
前処理工程では、多孔質材の表面に、多孔質材用前処理液を付着させる。そして、この多孔質材用前処理液を付着させて乾燥させてから、水性インクを用いたインクジェット印刷を行うことが好ましい。
前処理液の多孔質材表面への付着は、刷毛、ローラー、バーコーター、エアナイフコーター、スプレーを使用して基材表面に一様に塗布することによって行ってもよいし、又は、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷手段によって画像を印刷することで行ってもよい。すなわち、前処理液は、多孔質材表面の全面に塗布されてもよいし、必要な箇所にのみ、例えば上記インクを用いたインクジェット印刷が行われる箇所にのみ塗布されてもよい。また、前処理液の付着箇所は、前処理材の表面のみではなく、孔の内部(内面)を含んでいてもよい。
前処理液の塗工量(付着量)は、多孔質材の種類・材質等によっても異なるため一律に規定することはできないが、加飾画像の一定の発色及び光沢を達し、かつ、多孔質材の多孔質構造に由来する性能を妨げないためには、塗布面積あたりの不揮発分量として、例えば1g/m2〜50g/m2程度であることが好ましく、5g/m2〜30g/m2程度であることがより好ましい。
前処理液の塗工量(付着量)は、扁平状粒子の塗工量として、0.1g/m2以上が好ましく、0.2g/m2以上がより好ましい。前処理液の塗工量(付着量)が、扁平状粒子の塗工量として0.1g/m2以上の場合、発色性を向上させやすい。また、前処理液の塗工量(付着量)は、扁平状粒子の塗工量として1.0g/m2以下が好ましく、0.8g/m2以下がより好ましく、0.6g/m2以下がさらに好ましい。前処理液の塗工量(付着量)が、扁平状粒子の塗工量として1.0g/m2以下の場合、多孔質材の多孔質構造に由来する性能を維持しやすい。前処理液の塗工量(付着量)は、扁平状粒子の塗工量として、例えば、0.1g/m2〜1.0g/m2であってよい。
インクジェット印刷工程では、上述の水性インクジェットインクを用い、多孔質材の表面にインクジェット印刷する。
多孔質材への水性インクを用いたインクジェット印刷は、一般的な記録ヘッドを用いて行うことができ、印刷方式や使用する装置等に特に制限はない。印刷(加飾)後は、乾燥させることにより、多孔質材の表面に、インクジェット印刷されたインクから水及びその他の揮発性成分が揮発して、色材等を含む画像を備えてなる、多孔質構造に由来する性能を有する加飾された多孔質材が得られる。
画像の記録面積は、特に限定されず、任意の絵柄又は文字、あるいは絵柄と文字との組合せ等を、自由に選択することができる。
画像の記録面積は、特に限定されず、任意の絵柄又は文字、あるいは絵柄と文字との組合せ等を、自由に選択することができる。
なお、高品位の加飾画像を得るために、(i)インク滴を小さくする、(ii)印刷速度を遅くする、(iii)片方向印刷をする、(iv)多孔質材を温めながら印刷する、(v)印刷解像度を低くする、又は、(vi)これらの方法を組み合わせて印刷するなどの印刷条件を用いることが有効である。
特に、多孔質材を温めながら印刷する上記印刷条件は、多孔質材の性能に関わらず、少ないインク量で高発色の画像を得ることが必要な場合、凹凸が多い多孔質材やインクの吸水性能が異なる複数の多孔質材にまたがった絵柄を均一に印刷する場合の印刷条件としても有効である。多孔質材を温めながら印刷することで、インク中の水以外の成分である顔料等の存在位置を多孔質材の表面近くに形成させることが可能となるため、多孔質材の多孔質構造に由来する性能や形状への影響が小さくなり、安定した画像を得ることが可能となる。
印刷終了後に多孔質材を加熱してもよく、インク中の水やその他の揮発性成分を完全に揮発させ、インク中の色材を水分散性樹脂によって多孔質基材に定着させることができる。
多孔質材を温める方法は任意であり、加熱温度は、インクジェット印刷に用いるノズルが乾燥し吐出が不安定にならない温度であれば特に限定されず、例えば50〜100℃の範囲で加熱できる。
多孔質材を温める方法は任意であり、加熱温度は、インクジェット印刷に用いるノズルが乾燥し吐出が不安定にならない温度であれば特に限定されず、例えば50〜100℃の範囲で加熱できる。
加飾された多孔質材の製造方法は、必要に応じて、その他の工程を含んでよい。
例えば、上記前処理液による前処理の前に、別の任意の処理が行われてよい。また、印刷前の多孔質材は、上記前処理液による前処理工程後に、任意の別の処理が行われてもよい。
例えば、上記前処理液による前処理の前に、別の任意の処理が行われてよい。また、印刷前の多孔質材は、上記前処理液による前処理工程後に、任意の別の処理が行われてもよい。
加飾を行うための装置は、特に限定されないが、例えば、多孔質材を載置するための載置部と、多孔質材の表面に前処理液を塗布するための前処理液塗布部と、続いてインクを吐出してインクジェット印刷するように配置されたインクジェット記録ヘッドとを少なくとも備え、さらに好ましくは、多孔質材を加熱するための加熱部を任意に備えた加飾装置を用いることができる。
より詳細には、加飾装置は、加飾しようとする画像の電子データ(各画素に対応する画素値を備えるもの)を提供するための入力部(例えば、スキャナ)、多孔質材の表面に水性インクを吐出して画像を記録する記録ヘッド部、多孔質材を載置した状態で記録ヘッド部の下面に形成された吐出ノズルと対向する位置に多孔質基材を搬送する搬送部、及び、多孔質材が記録ヘッド部に至る前に、その表面に前処理液を塗布する前処理液塗布部を備えることができる。さらに、印刷中又は印刷前後の任意の段階で、多孔質材上の加飾領域を加熱する加熱部(セラミックヒーター等の各種ヒーター)を設け、吐出された処理液及び/又はインクの乾燥を促進できるようにすることが好ましい。
<加飾された多孔質材>
本発明の一実施形態である加飾された多孔質材(加飾物品)は、多孔質材の表面に、平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む加飾部を有する。
多孔質材、及び、平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子は、上記の多孔質材用前処理液で説明した通りである。
上述の通り、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。「加飾部」は、加飾された部分(すなわち印刷画像を有する部分)であり、加飾部は、多孔質材の全面であっても一部であってもよい。
平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子は、例えば、加飾部の、前処理層に含まれることが好ましい。前処理層は、上述の前処理液を用いて形成されたものであることが好ましい。加飾部は、多孔質材上に、前処理層と、水性インクジェットインクにより形成されたインクジェット印刷層とをこの順で含むことが好ましい。インクジェット印刷層の形成に用いる水性インクジェットインクとしては、上述の水性インクジェットインクを好ましく用いることができる。加飾部は、前処理層及びインクジェット印刷のほかに他の層を含んでもよい。
本発明の一実施形態である加飾された多孔質材(加飾物品)は、多孔質材の表面に、平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む加飾部を有する。
多孔質材、及び、平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子は、上記の多孔質材用前処理液で説明した通りである。
上述の通り、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。「加飾部」は、加飾された部分(すなわち印刷画像を有する部分)であり、加飾部は、多孔質材の全面であっても一部であってもよい。
平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子は、例えば、加飾部の、前処理層に含まれることが好ましい。前処理層は、上述の前処理液を用いて形成されたものであることが好ましい。加飾部は、多孔質材上に、前処理層と、水性インクジェットインクにより形成されたインクジェット印刷層とをこの順で含むことが好ましい。インクジェット印刷層の形成に用いる水性インクジェットインクとしては、上述の水性インクジェットインクを好ましく用いることができる。加飾部は、前処理層及びインクジェット印刷のほかに他の層を含んでもよい。
加飾部は、多孔質材の全面でもよく一部でもよい。加飾部の面積は、特に限定されない。また、加飾部の画像として、例えば、任意の絵柄又は文字、あるいは絵柄と文字との組合せ等を、自由に選択することができる。
本実施形態の加飾された多孔質材を製造する方法はとくに限定されない。例えば、上記の前処理液を含む上記の多孔質材用インクセットを用いてもよい。また、加飾された多孔質材は、上記の加飾された多孔質材の製造方法で好ましく製造することができる。
本実施形態の加飾された多孔質材は、加飾部が平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む。この扁平状粒子のうえにインク画像が形成されていることで、インクの基材内部への浸透が抑制または低減された、高い発色の画像を備えたものとすることができる。また、機能性多孔質材に対しても、吸音機能等の、多孔質構造に由来する機能を維持したまま、発色性の高い画像が形成されたものとすることができる。
吸音性能などの多孔質構造に由来する機能は、例えば、上述の通気度測定により簡便に評価することもできる。具体的には、フラジール形通気性試験機(株式会社安田精機製作所製)を用い、試験片に対し、試験片面積100cm2あたり空気流量250L/分、流速41.7cm/秒の条件で、一定流速の空気を流し、試験片の表裏両側の圧力差(「流れ抵抗値」)を測定し、評価することができる。流れ抵抗値が、未加飾の多孔質材に対して小さいほど、その多孔質材が従来もつ通気度が維持され、多孔質構造による性能も維持されていると判断できる。
具体的には、加飾された多孔質材の加飾部の通気度は、流れ抵抗値の未加飾時(加飾された多孔質材が前処理及び印刷が行われた物である場合には、前処理も印刷も行われる前の状態)との差が30mmH2O未満である(つまり、30mmH2O以上高くなっていない)ことが好ましく、20mmH2O未満であることがより好ましい。
加飾された多孔質材の加飾部において、平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子の付着量は、0.1g/m2以上が好ましく、0.2g/m2以上がより好ましい。また、加飾部における扁平状粒子の塗工量は、1.0g/m2以下が好ましく、0.8g/m2以下がより好ましく、0.6g/m2以下がさらに好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」である。表中の各成分の配合量も「質量%」で示す。
<インクの製造>
表1及び2に記載の各材料を表1及び2に示す割合でプレミックスし、その後、10cmの回転羽で400rpmで10分撹拌し、黒(K)インクK1〜K7、シアン(C)インクC1及びC2、マゼンタ(M)インクM1〜M3、及びイエロー(Y)インクY1〜Y3をそれぞれ得た。
表1及び2に記載の各材料を表1及び2に示す割合でプレミックスし、その後、10cmの回転羽で400rpmで10分撹拌し、黒(K)インクK1〜K7、シアン(C)インクC1及びC2、マゼンタ(M)インクM1〜M3、及びイエロー(Y)インクY1〜Y3をそれぞれ得た。
表1及び2記載の各材料の詳細は下記のとおりである。
(顔料分散体)
「BONJET BLACK CW−6」:オリヱント化学工業株式会社製、水系自己分散カーボンブラック分散体
「BONJET BLACK CW−2」:オリヱント化学工業株式会社製、水系自己分散カーボンブラック分散体
「CAB−O−JET 450C」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散シアン顔料分散体
「CAB−O−JET 465M」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散マゼンタ顔料分散体
「Smart Magenta 3122BA」:センシエントカラーズ社製、水系自己分散マゼンタ顔料分散体
「CAB−O−JET 470Y」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散イエロー顔料分散体
「CAB−O−JET 270Y」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散イエロー顔料分散体
(顔料分散体)
「BONJET BLACK CW−6」:オリヱント化学工業株式会社製、水系自己分散カーボンブラック分散体
「BONJET BLACK CW−2」:オリヱント化学工業株式会社製、水系自己分散カーボンブラック分散体
「CAB−O−JET 450C」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散シアン顔料分散体
「CAB−O−JET 465M」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散マゼンタ顔料分散体
「Smart Magenta 3122BA」:センシエントカラーズ社製、水系自己分散マゼンタ顔料分散体
「CAB−O−JET 470Y」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散イエロー顔料分散体
「CAB−O−JET 270Y」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散イエロー顔料分散体
(顔料)
「#960」:ランクセス株式会社製、バイフェロックス960(オレンジ無機顔料)
「Fastogen Blue TGR」:DIC株式会社製、銅フタロシアニン顔料
「Cinquasia Magenta D4550J」:BASFジャパン株式会社製、有機顔料
「Inkjet Yellow 4GP」:クラリアントケミカルズ株式会社製、有機顔料
「#960」:ランクセス株式会社製、バイフェロックス960(オレンジ無機顔料)
「Fastogen Blue TGR」:DIC株式会社製、銅フタロシアニン顔料
「Cinquasia Magenta D4550J」:BASFジャパン株式会社製、有機顔料
「Inkjet Yellow 4GP」:クラリアントケミカルズ株式会社製、有機顔料
(分散剤)
「TEGO Dispers 750W」:エボニックジャパン株式会社製、高分子分散剤
「TEGO Dispers 760W」:エボニックジャパン株式会社製、高分子分散剤
(分散助剤)
「DISPERBYKE−102」:ビックケミー・ジャパン株式会社製、高分子分散剤
「FUJI SP A−54」:冨士色素株式会社製、アクリル系分散(助)剤
「TEGO Dispers 750W」:エボニックジャパン株式会社製、高分子分散剤
「TEGO Dispers 760W」:エボニックジャパン株式会社製、高分子分散剤
(分散助剤)
「DISPERBYKE−102」:ビックケミー・ジャパン株式会社製、高分子分散剤
「FUJI SP A−54」:冨士色素株式会社製、アクリル系分散(助)剤
(水分散性樹脂)
「スーパーフレックス460S」:第一工業製薬株式会社製、アニオン性水系ウレタン樹脂エマルション
「スーパーフレックス300」:第一工業製薬株式会社製、弱アニオン性水系ウレタン樹脂エマルション
「アデカボンタイターHUX−370」:株式会社ADEKA製、アニオン性水系ウレタン樹脂エマルション
「モビニール966A」:日本合成化学工業株式会社製、アニオン性水系アクリル樹脂エマルション
「NeoCryl BT−62」:DSM株式会社製、水系スチレン/アクリル樹脂エマルション
「スーパーフレックス460S」:第一工業製薬株式会社製、アニオン性水系ウレタン樹脂エマルション
「スーパーフレックス300」:第一工業製薬株式会社製、弱アニオン性水系ウレタン樹脂エマルション
「アデカボンタイターHUX−370」:株式会社ADEKA製、アニオン性水系ウレタン樹脂エマルション
「モビニール966A」:日本合成化学工業株式会社製、アニオン性水系アクリル樹脂エマルション
「NeoCryl BT−62」:DSM株式会社製、水系スチレン/アクリル樹脂エマルション
(水溶性有機溶剤)
「ジエチレングリコール」:和光純薬工業株式会社製
(界面活性剤)
「サーフィノール465」:日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤
「ジエチレングリコール」:和光純薬工業株式会社製
(界面活性剤)
「サーフィノール465」:日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤
<前処理液の製造>
表3〜5に記載の各材料を表3〜5に示す割合でプレミックスし、その後、10cmの回転羽で400rpmで10分撹拌し実施例1〜18及び比較例1〜7の前処理液を得た。
表3〜5に記載の各材料を表3〜5に示す割合でプレミックスし、その後、10cmの回転羽で400rpmで10分撹拌し実施例1〜18及び比較例1〜7の前処理液を得た。
表3〜5記載の各材料の詳細は下記のとおりである。
(カチオン性水分散性樹脂)
「PP−17」:明成化学工業株式会社製、カチオン性水分散性複合樹脂、平均粒径2.5μm
「ポリゾールAE−803」:昭和電工株式会社製、カチオン性水系アクリル樹脂エマルション、平均粒径419nm
「サンプレックスPUE−C200B」:株式会社村山化学研究所製、カチオン性水系ウレタン樹脂エマルション、平均粒径129nm
(界面活性剤)
「オルフィンE1010」(商品名):日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤
「シルフェイスSAG503A」(商品名):日信化学工業株式会社製、シリコーン系界面活性剤
(カチオン性水分散性樹脂)
「PP−17」:明成化学工業株式会社製、カチオン性水分散性複合樹脂、平均粒径2.5μm
「ポリゾールAE−803」:昭和電工株式会社製、カチオン性水系アクリル樹脂エマルション、平均粒径419nm
「サンプレックスPUE−C200B」:株式会社村山化学研究所製、カチオン性水系ウレタン樹脂エマルション、平均粒径129nm
(界面活性剤)
「オルフィンE1010」(商品名):日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤
「シルフェイスSAG503A」(商品名):日信化学工業株式会社製、シリコーン系界面活性剤
(扁平状粒子)
「ガラスフレーク(20μm)」:日本板硝子株式会社製MT1020FY、平均長径20μm、平均厚さ1μm
「ガラスフレーク(40μm)」:日本板硝子株式会社製MT1040FY、平均長径40μm、平均厚さ1μm
「ガラスフレーク(80μm)」:日本板硝子株式会社製MT1080FY、平均長径80μm、平均厚さ1μm
「ガラスフレーク(120μm)」:日本板硝子株式会社製MT1120FY、平均長径120μm、平均厚さ1μm
「ガラスフレーク(230μm)」:日本板硝子株式会社製MT1230FY、平均長径230μm、平均厚さ5μm
「ガラスフレーク(480μm)」:日本板硝子株式会社製MT1480FY、平均長径480μm、平均厚さ5μm
「アルミフレーク(141μm)」:福田金属箔粉工業株式会社製アストロフレーク(シルバー)#5、100μm平方、平均長径141μm、平均厚さ12μm
「TiO2被覆雲母(10〜60μm)」:メルクパフォーマンスマテリアルズ株式会社製、イリオジン100シリーズ(シルバータイプ)、平均長径10〜60μm
(無機球形粒子)
「ユニビーズSPM−100」:ユニチカ株式会社製、平均粒径100μm(形状:真球)(無機不定形粒子)
「スノーテックスAK」(商品名):日産化学工業株式会社製カチオン性コロイダルシリカ、平均粒径44nm(動的光散乱法で測定した数値)
「ガラスフレーク(20μm)」:日本板硝子株式会社製MT1020FY、平均長径20μm、平均厚さ1μm
「ガラスフレーク(40μm)」:日本板硝子株式会社製MT1040FY、平均長径40μm、平均厚さ1μm
「ガラスフレーク(80μm)」:日本板硝子株式会社製MT1080FY、平均長径80μm、平均厚さ1μm
「ガラスフレーク(120μm)」:日本板硝子株式会社製MT1120FY、平均長径120μm、平均厚さ1μm
「ガラスフレーク(230μm)」:日本板硝子株式会社製MT1230FY、平均長径230μm、平均厚さ5μm
「ガラスフレーク(480μm)」:日本板硝子株式会社製MT1480FY、平均長径480μm、平均厚さ5μm
「アルミフレーク(141μm)」:福田金属箔粉工業株式会社製アストロフレーク(シルバー)#5、100μm平方、平均長径141μm、平均厚さ12μm
「TiO2被覆雲母(10〜60μm)」:メルクパフォーマンスマテリアルズ株式会社製、イリオジン100シリーズ(シルバータイプ)、平均長径10〜60μm
(無機球形粒子)
「ユニビーズSPM−100」:ユニチカ株式会社製、平均粒径100μm(形状:真球)(無機不定形粒子)
「スノーテックスAK」(商品名):日産化学工業株式会社製カチオン性コロイダルシリカ、平均粒径44nm(動的光散乱法で測定した数値)
上記の材料において、樹脂の「平均粒径」は、動的光散乱式粒子径分布測定装置「ナノ粒子解析装置nano Prtica SZ−100」(株式会社堀場製作所製)を用いて、各樹脂分散液を粒子濃度0.5質量%となるように精製水で希釈して、分散媒屈折率:1.333、試料屈折率:1.600、演算条件:多分散・ナローの設定で、温度25℃で測定した体積基準のメジアン径である。
上記の材料において、扁平状粒子の平均長径は、SEM写真で任意に選択した20個の粒子のそれぞれについて長径を求め、これを平均した値である。
扁平状粒子の平均厚さは、任意に選択した20個の粒子について、個々の粒子の厚さをもとめ、これを平均した値である。
扁平状粒子の平均厚さは、任意に選択した20個の粒子について、個々の粒子の厚さをもとめ、これを平均した値である。
<加飾された多孔質材の製造>
下記の多孔質材に対し、表3〜5に示す各実施例及び比較例の前処理液を、表3〜5に示す前処理液塗布量で塗布し、前処理を行った。前処理液塗布は、スプレーで行い、処理後150℃のオーブンで30分間乾燥させて前処理物品を得た。
その後、表1及び2に記載のインクを市販の水性顔料インクジェットプリンタの各色に対応したインクヘッドに導入し、表3〜5に示す前処理液による黒のベタ画像、及び、黒文字を含むフルカラー画像を印刷した。印刷終了後、150℃のオーブンで30分間加熱燥したものを、加飾された多孔質材(加飾物品)とした。比較例7については、前処理を行わない未処理物品に印刷を行った。
用いた多孔質材は下記の通りである。
下記の多孔質材に対し、表3〜5に示す各実施例及び比較例の前処理液を、表3〜5に示す前処理液塗布量で塗布し、前処理を行った。前処理液塗布は、スプレーで行い、処理後150℃のオーブンで30分間乾燥させて前処理物品を得た。
その後、表1及び2に記載のインクを市販の水性顔料インクジェットプリンタの各色に対応したインクヘッドに導入し、表3〜5に示す前処理液による黒のベタ画像、及び、黒文字を含むフルカラー画像を印刷した。印刷終了後、150℃のオーブンで30分間加熱燥したものを、加飾された多孔質材(加飾物品)とした。比較例7については、前処理を行わない未処理物品に印刷を行った。
用いた多孔質材は下記の通りである。
(吸音材)
「アコースティックミュートボード」:株式会社アコースティックアドバンス製、ポリエステル繊維製吸音材
「カールトン」:野原産業株式会社製、ガラス繊維とパルプを混ぜた吸音材
「NDCカルム」:エヌデーシー販売株式会社製、アルミニウム焼結吸音板
(吸水材)
「スポンジクロス」:KALLE社製、セルロース及び綿の混合素材の吸水材
「アコースティックミュートボード」:株式会社アコースティックアドバンス製、ポリエステル繊維製吸音材
「カールトン」:野原産業株式会社製、ガラス繊維とパルプを混ぜた吸音材
「NDCカルム」:エヌデーシー販売株式会社製、アルミニウム焼結吸音板
(吸水材)
「スポンジクロス」:KALLE社製、セルロース及び綿の混合素材の吸水材
上記のようにして得られた各実施例及び比較例の加飾された多孔質材について、下記の評価を行った。
<色混じり及び/又はにじみ>
色混じり及び/又はにじみは、黒と隣接する他の色との境界部の色混じり、および、黒の文字のエッジのにじみを顕微鏡で観察し、下記の評価基準により判定した。評価Cは実用上問題がある。結果は、表6〜8の「にじみ」に示す。
A:色混じりもにじみもないか、または、色混じり及び/又はにじみがあっても目立たない
C:色混じりやにじみがあり、目立つ
色混じり及び/又はにじみは、黒と隣接する他の色との境界部の色混じり、および、黒の文字のエッジのにじみを顕微鏡で観察し、下記の評価基準により判定した。評価Cは実用上問題がある。結果は、表6〜8の「にじみ」に示す。
A:色混じりもにじみもないか、または、色混じり及び/又はにじみがあっても目立たない
C:色混じりやにじみがあり、目立つ
<光沢度>
黒のベタ画像の表面の60°光沢度を光沢計(コニカミノルタジャパン株式会社製Multi−Glose 268)で測定し、加飾前の多孔質材(前処理及び印刷を行っていない多孔質材)の光沢度と比較した。結果を表6〜8に示す。
A:黒ベタ画像の60°光沢度は、加飾前の多孔質材の60°光沢度よりも高い
B:黒ベタ画像の60°光沢度は、加飾前の多孔質材の60°光沢度と同程度
C:黒ベタ画像の60°光沢度は、加飾前の多孔質材の60°光沢度より劣る
黒のベタ画像の表面の60°光沢度を光沢計(コニカミノルタジャパン株式会社製Multi−Glose 268)で測定し、加飾前の多孔質材(前処理及び印刷を行っていない多孔質材)の光沢度と比較した。結果を表6〜8に示す。
A:黒ベタ画像の60°光沢度は、加飾前の多孔質材の60°光沢度よりも高い
B:黒ベタ画像の60°光沢度は、加飾前の多孔質材の60°光沢度と同程度
C:黒ベタ画像の60°光沢度は、加飾前の多孔質材の60°光沢度より劣る
<発色>
黒のベタ画像のOD値を測定し、下記の評価基準により発色を判定した。OD値の測定はビデオジェット・エックスライト株式会社製X−Rite eXactを使用した。評価AおよびBが実用上望ましい。各基材ごとに要求される発色レベルが異なるため、OD値の範囲は基材ごとに異なる判定基準を用いた。結果を表6〜8に示す。
(アコースティックミュートボードおよびスポンジクロスの判定基準)
A:OD値が1.65超
B:OD値が1.50以上1.65未満
C:OD値が1.25以上1.50未満
D:OD値が1.25未満
(カールトンの判定基準)
A:OD値が1.30以上
C:OD値が1.30未満
(カルムの判定基準)
A:OD値が1.55超
B:OD値が1.40以上1.55未満
C:OD値が1.10以上1.40未満
D:OD値が1.10未満
黒のベタ画像のOD値を測定し、下記の評価基準により発色を判定した。OD値の測定はビデオジェット・エックスライト株式会社製X−Rite eXactを使用した。評価AおよびBが実用上望ましい。各基材ごとに要求される発色レベルが異なるため、OD値の範囲は基材ごとに異なる判定基準を用いた。結果を表6〜8に示す。
(アコースティックミュートボードおよびスポンジクロスの判定基準)
A:OD値が1.65超
B:OD値が1.50以上1.65未満
C:OD値が1.25以上1.50未満
D:OD値が1.25未満
(カールトンの判定基準)
A:OD値が1.30以上
C:OD値が1.30未満
(カルムの判定基準)
A:OD値が1.55超
B:OD値が1.40以上1.55未満
C:OD値が1.10以上1.40未満
D:OD値が1.10未満
<通気度>
多孔質基材の吸音および吸水性能を、通気度測定により簡便に評価した。これは、上述の、ISO−9237に規定される、フラジール形法により繊維製品の通気性を評価する方法であり、具体的には、フラジール形通気性試験機(株式会社安田精機製作所製)を用い、試験片である加飾された多孔質材に対し、試験片面積100cm2あたり空気流量250L/分、流速41.7cm/秒の条件で、一定流速の空気を流し、試験片の表裏両側の圧力差を「流れ抵抗値」として評価した。前処理も印刷も行われていない未加飾の多孔質材に対する流れ抵抗値との差が小さいほど、多孔質材の性能が未加飾時から低下していない、と判断できる。評価基準は下記の通りである。結果を表6〜8に示す。
A:流れ抵抗値の未加飾時との差が20mmH2O未満である
B:流れ抵抗値が、未加飾時に比べ20mmH2O以上30mmH2O未満、高くなった
多孔質基材の吸音および吸水性能を、通気度測定により簡便に評価した。これは、上述の、ISO−9237に規定される、フラジール形法により繊維製品の通気性を評価する方法であり、具体的には、フラジール形通気性試験機(株式会社安田精機製作所製)を用い、試験片である加飾された多孔質材に対し、試験片面積100cm2あたり空気流量250L/分、流速41.7cm/秒の条件で、一定流速の空気を流し、試験片の表裏両側の圧力差を「流れ抵抗値」として評価した。前処理も印刷も行われていない未加飾の多孔質材に対する流れ抵抗値との差が小さいほど、多孔質材の性能が未加飾時から低下していない、と判断できる。評価基準は下記の通りである。結果を表6〜8に示す。
A:流れ抵抗値の未加飾時との差が20mmH2O未満である
B:流れ抵抗値が、未加飾時に比べ20mmH2O以上30mmH2O未満、高くなった
平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む前処理液による前処理が行われた実施例1〜18では、発色、光沢、色混じり及び/又はにじみ(にじみ)、及び、通気度のいずれの項目においても優れた結果を示された。
これに対し、平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子を含まない前処理液による前処理が行われた比較例1〜6では、いずれも発色の評価はCであり、前処理が行われなかった比較例7では、発色の評価はC又はDであり、いずれも、発色において低い評価結果であった。
これに対し、平均粒径70μm〜500μmの扁平状粒子を含まない前処理液による前処理が行われた比較例1〜6では、いずれも発色の評価はCであり、前処理が行われなかった比較例7では、発色の評価はC又はDであり、いずれも、発色において低い評価結果であった。
Claims (7)
- 水及び平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む多孔質材用前処理液。
- 前記扁平状粒子の平均厚さが、10nm以上20μm以下である、請求項1に記載の多孔質材用前処理液。
- 請求項1又は2に記載の多孔質材用前処理液と、
水及び色材を含む水性インクジェットインクと、
を含む、多孔質材用インクセット。 - 請求項1又は2に記載の多孔質材用前処理液を多孔質材の表面に付着させる前処理工程、及び、
前記前処理工程の後に、水及び色材を含む水性インクジェットインクを用いて前記多孔質材の表面にインクジェット印刷する工程
を含む、加飾された多孔質材の製造方法。 - 前記平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の多孔質材への付着量が0.1g/m2〜1.0g/m2である、請求項4に記載の加飾された多孔質材の製造方法。
- 多孔質材の表面に、平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子を含む加飾部を有する、加飾された多孔質材。
- 前記加飾部における前記平均長径70μm〜500μmの扁平状粒子の量が、0.1g/m2〜1.0g/m2である、請求項6に記載の加飾された多孔質材。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017166952A JP2019042990A (ja) | 2017-08-31 | 2017-08-31 | 多孔質材用前処理液、多孔質材用インクセット、加飾された多孔質材の製造方法、及び、加飾された多孔質材 |
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JP7413809B2 (ja) | 2020-02-10 | 2024-01-16 | 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 | インクジェット捺染方法 |
-
2017
- 2017-08-31 JP JP2017166952A patent/JP2019042990A/ja active Pending
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