JP7058011B2 - 口腔摂取用co2ハイドレートまたは該co2ハイドレートを含む口腔摂取用複合物、及びそれらの製造方法 - Google Patents

口腔摂取用co2ハイドレートまたは該co2ハイドレートを含む口腔摂取用複合物、及びそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、口腔摂取用COハイドレートまたは該COハイドレートを含む口腔摂取用複合物(以下、「口腔摂取用COハイドレート等」とも表示する。)、及びそれらの製造方法に関する。
COハイドレート(二酸化炭素ハイドレート)という物質が知られている。COハイドレートとは、水分子の結晶体の空寸に二酸化炭素分子を閉じ込めた包接化合物をいう。結晶体を形成する水分子は「ホスト分子」、水分子の結晶体の空寸に閉じ込められている分子は「ゲスト分子」または「ゲスト物質」と呼ばれる。COハイドレートは、融解するとCO(二酸化炭素)と水に分解するため、融解時にCOを発生させる。COハイドレートは、COと水を、低温、かつ、高圧のCO分圧という条件にすることにより製造することができ、例えば、ある温度であること、及び、その温度におけるCOハイドレートの平衡圧力よりもCO分圧が高いことを含む条件(以下、「COハイドレート生成条件」とも表示する。)において製造することができる。上記の「ある温度であること、及び、その温度におけるCOハイドレートの平衡圧力よりもCO分圧が高い」条件は、非特許文献1のFigure 2.や、非特許文献2のFigure 7.やFigure 15.に開示されているCOハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す)において、かかる曲線の高圧側(COハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内の温度とCO圧力の組合せの条件として表される。また、COハイドレートは、水の代わりに微細な氷をCOと、低温、かつ、低圧のCO分圧という条件下で反応させて製造することもできる。COハイドレートを製造する際のCOの圧力が高くなるほど、また、COと水の温度が低くなるほど、COハイドレートのCO濃度が高くなる傾向がある。COハイドレートのCO濃度は、COハイドレートの製法にもよるが、約3~28重量%程度とすることができ、炭酸水のCO濃度(約0.5重量%程度)と比較して顕著に高い。
COハイドレートの用途として、例えば特許文献1には、COハイドレートを飲料に混合することにより、その飲料に炭酸を付与して、炭酸飲料を製造することが、特許文献2には、COハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体を飲料に添加することによって、ぬるくなった飲料を冷却すると共に、気が抜けた飲料に炭酸ガスを補充することが、特許文献3には、COハイドレートを、カキ氷、アイスクリーム等の冷菓に混入することにより、該冷菓を喫食した者の口腔内でCOハイドレートが融解することとなり、その結果、該冷菓において、炭酸特有のシュワシュワ感の他、口中で冷菓が弾けるような刺激的な食感を発生させられることが開示されている。
COハイドレートを保存、移送する場合、かかるCOハイドレートの分解を可能な限り抑制するという観点からは、保存・移送の際の温度は低いほど好ましいが、より低い温度条件下にCOハイドレートを保持するにはより高いコストが必要となる。そこで、より低コストで、COハイドレートの分解をより効率良く抑制する観点から、温度制御以外の方法でCOハイドレートの分解をより効果的に抑制し、その保存安定性、貯蔵安定性を向上させる手段が開発されてきた。そのような手段として、CO等のガスハイドレートにおいて知られている「自己保存効果(self-preservation effect)」という現象を利用する試みがなされている。ガスハイドレートの自己保存効果とは、本来はガスハイドレートが比較的速やかに分解するはずの温度条件及び圧力条件の領域内において、ある特異的な条件下でガスハイドレートの分解が非常に遅くなる効果をいう。自己保存効果のメカニズムはまだ完全には解明されていないが、ガスハイドレートの分解は吸熱反応であるため、ある特異的な条件下では、ガスハイドレートの分解により表面に生じた水が再び氷となり、ガスハイドレートの表面を氷膜が被覆することなり、その結果、ガスハイドレートの保存安定性、貯蔵安定性が向上すると考えられている。また、氷点下温度の大気圧下でガスハイドレートの表面が分解されてガス分子が気相中に放出され、ガスハイドレート表面を氷膜が被覆することにより、ガスハイドレートの保存安定性、貯蔵安定性が向上するとも考えられている。例えば、特許文献4には、ガスがCOガスであってもよいガスハイドレートの粒子を、その分解条件下に置き、該粒子の表面をわずかに融解させて、水を生成させ、かかる水を凍らせることによって、ガスハイドレートの自己保存性を高めることが開示されている。また、特許文献5には、メタン等のガスハイドレートをペレットに成型する工程の後に、加湿雰囲気下でかかるペレットの表面に氷膜を形成することにより、ガスハイドレートの運搬及び貯蔵効率を向上することが開示されている。また、特許文献6には、メタン等のガスハイドレートをペレットに成型する工程の後に、マイナスに帯電した原料水を前記ペレットに噴霧し、ペレット表面に10μmから500μmの薄くてかつ均一な水膜を形成し、それを冷却して氷膜とすることで、自己保存性を十分に発揮するガスハイドレートを製造できることが開示されている。しかし、自己保存性が関連する保存安定性や貯蔵安定性は、氷の融点未満の温度(約0℃未満)における保存安定性、貯蔵安定性であり、本発明のように、口腔内のような約37℃等の条件における炭酸ガスの徐放性とは直接関係しない別の次元の概念である。
一方、COハイドレートに糖類を添加する例として、特許文献7には、ブドウ糖等の糖類を添加した炭酸ガスクラスハイドレートからなり、口に含むと発泡性と甘味を持つことを特徴とする冷菓が開示されており、非特許文献3には、炭酸ガスハイドレートの製造時にスクロース(ショ糖)を添加することにより、炭酸ガスハイドレートの保存性が低下することが開示されている。しかし、これらの文献は、COハイドレートを製造する際の水に糖類を添加するものであって、例えば、糖類を含む氷膜でCOハイドレートをコーティングすることを開示するものではない。
他方、COハイドレートに増粘剤を添加する例として、特許文献8には、イナゴマメゴムやゼラチン等の安定剤を含むアイススラリーに、COハイドレート含有粒子を混合することにより、スプーンですくう事が可能なアイスを製造する方法が開示されている。また、特許文献9には、ペクチン等の増粘剤を含むフレーバー付きシロップ凍結物と混合する冷凍炭酸飲料の製造方法が開示されている。しかし、これらの文献は、COハイドレートを、増粘剤を含む凍結物に混合するものであって、例えば増粘剤を含む氷膜でCOハイドレートをコーティングすることを開示するものではない。
高濃度のCOガスを吸入すると、二酸化炭素中毒が生じることが知られている。二酸化炭素中毒は数回の呼吸でも発生する場合があり、その症状としては、頭痛、めまい、不整脈、嘔気、呼吸困難、意識障害などが挙げられる。ラットにおいては、高濃度の二酸化炭素環境下に曝露することにより、不整脈や呼吸抑制を引き起こすことが知られている。しかし、ヒトの二酸化炭素中毒については、どのような条件・メカニズムで生じるのかなど、不明な部分が依然として多い。口腔摂取用COハイドレートを含む製品は発明者が知る限りは実用化された例はなく、COハイドレートを口腔摂取する際の二酸化炭素中毒リスクに関して、検討されたことはない。
特開2005-224146号公報 特許4969683公報 特許4716921号公報 特許5173736号公報 特許5153412号公報 特許5052385号公報 特開2008-237034号公報 特許4169165号公報 特表2004-512035号公報
J. Chem. Eng. Data (1991) 36, 68-71 J. Chem. Eng. Data (2008), 53, 2182-2188 World Academy of Science,Engineering and Technology International Journal of Chemical, Molecular,Nuclear, Materials and Metallurgical Engineering Vol:7, No:2, 2013
前述したような背景技術の状況下、本発明者らは口腔摂取用COハイドレートの様々な用途や、その実用化の態様についてさまざまな検討を具体的に進める為には、実用化した際の安全性、特に、口腔摂取する際の二酸化炭素中毒リスクについて詳細に検討した。その結果、従来の製造方法により製造した最大長5~20mmの粒状のCOハイドレート(CO含有率15~18%)を、1度に2~10g、口腔内に含んだ場合、従来の製造方法により製造したCOハイドレートは2gであっても、二酸化炭素中毒のリスクが十分に低いとはいえないことを見出した。このように、COハイドレートを口腔摂取する際に二酸化炭素中毒のリスクが重大な課題となることが新たにわかった。
なお、当該COハイドレートを口腔摂取する際の二酸化炭素中毒リスクについては、ヒト口腔内に類似する環境下で、(A)の評価系での「最大CO発生速度(mL/秒)」、及び、(B)の評価系での「成人を想定したモデル肺内最大CO濃度(mmHg)」を用いて客観的に評価した。
(A)COを0.3~0.36g含有する量のCOハイドレートを、室温37℃、湿度70%の大気圧の雰囲気下で、液温37℃の10mLの水に添加し、添加から5秒毎に少なくとも30秒以上重量変化を測定して、5秒毎のCOの発生量(mL)をそれぞれ算出し、それらの発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという試験を、3回繰り返し、得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、そのCOハイドレートの最大CO発生速度(mL/秒)とする。
(B)人工呼吸器で駆動するモデル肺と;口腔モデルと;前記モデル肺と前記口腔モデルを連通して接続する連通管と、該連通管に設置されたカプノメータと;からなる死腔量が約200mLに調整された呼吸シミュレータを用いた。呼吸シミュレータの概要を図1に示す。具体的には、COハイドレートを口腔モデルに入れ、モデル成人肺を駆動させた際の連通管における呼気ガス中のCO濃度(mmHg)を測定する。このCO濃度(mmHg)を120秒以上測定して、その濃度の最大値をモデル肺内最大CO濃度(mmHg)とする。なお、実験実施中はモデル肺にCOガスを、生体内で生じる量と同等の200mL/分で供給した。
そこで、本発明が解決しようとする課題(課題(1))は、COハイドレートあるいはCOハイドレート複合物(以下、「COハイドレート等」とも表示する。)を食用あるいは飲用して独特な食感またはのど越し感、あるいは美味しく見える演出効果等を楽しむ目的で口腔摂取する際に、冷製飲食品にCOハイドレート等を添加した後、COハイドレート等の分解が進みつつあり、口に運ぶ段階で、当該COハイドレート等の分解により発生しつつあるCOガスを吸入した場合であっても、二酸化炭素中毒のリスクが従来よりも低減された、より安全性の高い口腔摂取用COハイドレート等を提供することである。
また、本発明が解決しようとする課題(課題(2))は、上記目的でCOハイドレート等を口腔摂取した後、口腔内環境下でCOハイドレート等の分解が上記課題(1)の場合よりも急速に進むことにより発生する、上記課題(1)の場合よりも多量のCOガスを吸入した場合であっても、二酸化炭素中毒のリスクが従来よりも低減された、より安全性の高い口腔摂取用COハイドレート等を提供することである。
さらに、本発明が解決しようとする課題(課題(3))は、二酸化炭素中毒のリスクが低減された、より安全性の高い口腔摂取用COハイドレート等の製造方法を提供することである。
尚、上記課題(2)が解決されれば、上記課題(1)は当然解決されることとなる。なぜなら、COハイドレートの分解速度は、温度が高いほど速くなり、二酸化炭素中毒のリスクも高くなるところ、温度の高低は、冷製飲食品の温度<気温<口腔内の温度(~37℃)という関係であり、冷製飲食品に添加した際のCOハイドレート等の分解による二酸化炭素中毒のリスクは、口腔内で水分接触した際のCOハイドレート等の分解による二酸化炭素中毒のリスクよりも低くなるからである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、肺内CO濃度が一定以上になると、二酸化炭素中毒により人体に危険が及ぶ可能性があり、動脈血炭酸ガス分圧が80~100mmHgでは意識が混迷することが知られているため(「呼吸管理に活かす呼吸生理 改訂版」(羊土社、瀧 健治 著、2011年12月1日発行)における高二酸化炭素血症に関する記載)、COハイドレート等を摂取しても肺内炭酸ガス分圧が80mmHg未満となるように制御することを着想した。
鋭意検討した結果、ヒト口腔内に類似する環境下でのCOハイドレートの融解時の最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように口腔内での二酸化炭素の放出が緩やかである性質(以下、「CO徐放性」)を調整することによって肺内炭酸ガス分圧80mmHg未満に制御することができ、口腔摂取する際の二酸化炭素中毒リスクを顕著に低減しつつ、十分な炭酸感を有する口腔摂取用COハイドレートを得ることができることを見いだした。また、本発明者らは、COハイドレートを氷膜(増粘剤や甘味成分を含有する氷膜も含む)で被覆することや、被覆する氷膜の厚みや組成等を調整することにより、ヒト口腔内に類似する環境下でのCOハイドレートの融解時の最大CO発生速度をコントロールできることを見いだした。本発明者らは、これらの知見により、本発明を完成させるに至った。
なお、COハイドレートを氷膜で被覆することを開示する先行技術(特許文献4~6など)もあるが、これらの先行技術はあくまでも自己保存性、すなわち、氷の融点未満の温度(約0℃未満)における保存安定性、貯蔵安定性を向上させることを目的とする技術であり、本発明のように、ヒト口腔内に類似する環境下(例えば36~38℃)での融解時の最大CO発生速度を低下(CO徐放性を向上)させることを目的とする技術ではない。本発明者らは、複数個の小さなペレット状のCOハイドレートと、それと同量のCOを含む1個の大きめの塊状のCOハイドレートについて、保存安定性及びCO徐放性を比較したところ、塊状のCOハイドレートの方が保存安定性は高いにもかかわらず、CO徐放性はほぼ同程度か又は塊状のCOハイドレートの方がむしろ低かった(CO発生速度が速かった)ことを確認した。このことは、上述の保存安定性の向上と、上述のCO徐放性の向上が直接関係しないことを示している。
また、自己保存効果と氷膜の厚さの関係について述べると、例えば特許文献5の[0037]には、COハイドレートのペレット(小さな粒)の運搬効率を考慮すると、COハイドレートペレットに含まれる水は少ない方が好ましいため、COハイドレートペレットの表面に形成する氷膜は、自己保存効果を発揮する範囲で最も薄く形成することが望ましい旨が記載されている。実際、特許文献4~6などに開示されるような、自己保存性のための氷膜の場合、その厚さはせいぜい500μm程度以下(例えば特許文献6参照)である。
また、特許文献2は、COハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体を一応記載しているものの、明細書に開示しているのは、規定圧力で加圧した規定温度下でCOガスを水に混入させ、かかる水を攪拌してスラリー状としたものを、脱水を行わずに冷却して、氷の中にCOハイドレートを点在させたものなどである。しかし、この製法で製造したCOハイドレートは、氷の中だけでなく、氷の表面にもCOハイドレートが多く点在しているのであり、本発明のCO徐放性が調整された口腔摂取用COハイドレートの一態様である「氷の被覆膜が設けられたCOハイドレート」とは異なる。実際、本願の実施例では、比較例として、特許文献2に記載されているような、スラリー状のCOハイドレートを脱水せずに冷却したCOハイドレートを比較例サンプルとして用いているが、最大CO発生速度が高く、二酸化炭素中毒のリスクは十分に低いとはいえないことを確認した。
すなわち、本発明は、
(1)下記で定義される最大CO発生速度が、8mL/秒 未満となるように調整されたことを特徴とする口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物:
(最大CO発生速度(mL/秒)の定義)
0.3~0.36gのCOを含有する量のCOハイドレートを分取し、分取したCOハイドレートを、室温37℃、湿度70%の大気圧の雰囲気下で、液温37℃の10mLの水に添加し、添加から5秒毎に少なくとも30秒以上重量変化を測定して、5秒毎のCOの発生量(mL)をそれぞれ算出し、それらの発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという試験を、3回繰り返し、得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、前記COハイドレートの最大CO発生速度(mL/秒)とする;や、
(2)最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるようにCOハイドレート塊に氷の被覆膜が設けられたことを特徴とする上記(1)に記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物や、
(3)氷の被覆膜が、厚さ0.6~50mmの氷膜であることを特徴とする上記(2)に記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物や、
(4)0.3~0.36gのCOを含有するCOハイドレートであることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物や、
(5)CO含有率が、3~28重量%であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物や、
(6)氷の被覆膜が、増粘剤及び甘味成分からなる群から選択される1種又は2種以上の物質を含有していることを特徴とする上記(2)~(5)のいずれかに記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物や、
(7)氷の被覆膜に含まれる増粘剤の濃度が0.5重量%以下であり、及び/又は、氷の被覆膜に含まれる甘味成分濃度が20重量%以下であることを特徴とする上記(6)に記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物や、
(8)口腔摂取用複合物が、口腔摂取用COハイドレートを含む飲料、氷菓又はアイスクリーム類である上記(1)~(7)のいずれかに記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物に関する。
また、本発明は、
(9)COハイドレートの製造において、下記で定義される最大CO発生速度が8mL/秒未満となるように調整する工程を含むことを特徴とする、口腔摂取用COハイドレートまたは前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物の製造方法:
(最大CO発生速度(mL/秒)の定義)
0.3~0.36gのCOを含有する量のCOハイドレートを分取し、分取したCOハイドレートを、室温37℃、湿度70%の大気圧の雰囲気下で、液温37℃の10mLの水に添加し、添加から5秒毎に少なくとも30秒以上重量変化を測定して、5秒毎のCOの発生量(mL)をそれぞれ算出し、それらの発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという試験を、3回繰り返し、得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、前記COハイドレートの最大CO発生速度(mL/秒)とする;に関する。
さらに、本発明は、
(10)COハイドレートの製造において、下記で定義される最大CO発生速度が8mL/秒未満となるように調整する工程を含むことを特徴とする、口腔摂取用COハイドレートまたは前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物のCO徐放性調整方法:
(最大CO発生速度(mL/秒)の定義)
0.3~0.36gのCOを含有する量のCOハイドレートを分取し、分取したCOハイドレートを、室温37℃、湿度70%の大気圧の雰囲気下で、液温37℃の10mLの水に添加し、添加から5秒毎に少なくとも30秒以上重量変化を測定して、5秒毎のCOの発生量(mL)をそれぞれ算出し、それらの発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという試験を、3回繰り返し、得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、前記COハイドレートの最大CO発生速度(mL/秒)とする;に関する。
本発明によれば、飲食品に添加してから口腔摂取する場合や、直接口腔摂取する場合の二酸化炭素中毒リスクを低減しつつ、十分な炭酸感を有する、より安全性の高い口腔摂取用COハイドレート等、及び、それらの製造方法等を提供することができ、特に、ヒト口腔内に類似する環境下での融解時の最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるようにCO徐放性が調整された口腔摂取用COハイドレート、または該COハイドレートを含む口腔摂取用複合物、及び、それらの製造方法等を提供することができる。
実施例で用いた呼吸シミュレータの概要を示す図である。測定項目は、呼気終末CO分圧である。COボンベは、成人安静時のCO産生量相当(200mL/分)のCOガスを供給し、人工呼吸器は、設定換気量でモデル肺を駆動する。
本発明は、下記で定義される最大CO発生速度(本明細書において、単に「最大CO発生速度」とも表示する。)が8mL/秒 未満となるように調整された口腔摂取用COハイドレート、または該COハイドレートを含む口腔摂取用複合物(以下、併せて「本発明の口腔摂取用COハイドレート等」ともいう)、及び、それらの製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。)からなる。
(最大CO発生速度(mL/秒)の定義)
0.3~0.36gのCOを含有する量のCOハイドレートを分取し、分取したCOハイドレートを、室温37℃、湿度70%の大気圧の雰囲気下で、液温37℃の10mLの水に添加し、添加から5秒毎に少なくとも30秒以上重量変化を測定して、5秒毎のCOの発生量(mL)をそれぞれ算出し、それらの発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという試験を、3回繰り返し、得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、前記COハイドレート等の最大CO発生速度(mL/秒)とする。
本発明の口腔摂取用COハイドレートは、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整されており、すなわち、CO徐放性が調整されている。最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整されている本発明の口腔摂取用COハイドレートは、二酸化炭素中毒に対する安全性の高い口腔摂取用COハイドレートである。また、本明細書において、「十分な炭酸感を有するCOハイドレート」とは、最大CO発生速度が1mL/秒 以上、より好ましくは1.5mL/秒 以上であるCOハイドレートを意味する。
また、本発明には、COハイドレートの製造において、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整することを特徴とする口腔摂取用COハイドレート等のCO徐放性を調整する方法(以下、「本発明のCO徐放性調整方法」とも表示する。)も含まれる。
本発明において「COハイドレート(二酸化炭素ハイドレート)」とは、水分子の結晶体の空寸に二酸化炭素分子を閉じ込めた固体の包接化合物を意味する。COハイドレートは、通常、氷状の結晶体であり、例えば標準気圧条件下で、かつ、氷が融解するような温度条件下に置くと、融解しながら二酸化炭素を放出する。
1.<本発明の口腔摂取用COハイドレート等>
本発明の口腔摂取用COハイドレートとは、最大CO発生速度が、8mL/秒 未満となるように調整された口腔摂取用COハイドレートである。本発明の口腔摂取用COハイドレートとしては、そのような口腔摂取用COハイドレートである限り、形状、大きさ、CO含有率、製造方法など特に制限されない。また、本発明の口腔摂取用複合物とは、本発明の口腔摂取用COハイドレートを包含する口腔摂取用の物質を意味する。本発明の口腔摂取用複合物としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートを包含する口腔摂取用の物質である限り、組成、形状、大きさ、CO含有率、製造方法など特に制限されない。本発明の口腔摂取用複合物における、本発明の口腔摂取用COハイドレート以外の口腔摂取用の物質としては、冷菓(例えば氷)、菓子、食品、飲料などの飲食品が挙げられ、中でも、飲料、冷菓が好ましく挙げられ、中でも、飲料、氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類がより好ましく挙げられ、中でも、氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類がさらに好ましく挙げられる。なお、かかる飲食品の形態としては、該飲食品(好ましくは氷)が、本発明の口腔摂取用COハイドレートを膜状に被覆して凍結していることが好ましい。
本発明の口腔摂取用COハイドレートの最大CO発生速度は8mL/秒 未満である限り特に制限されず、当業者であれば、かかるCOハイドレートの使用対象製品の香味設計における炭酸感等に応じて、好適な最大CO発生速度を適宜設定することができる。口腔摂取する際の二酸化炭素中毒リスクを低減することと、十分な炭酸感を得ることとのバランスの観点から、最大CO発生速度の上限として、7.5mL/秒 以下、7mL/秒 以下、6mL/秒 以下、5mL/秒 以下が挙げられ、下限として、1mL/秒 以上、1.5mL/秒 以上、2mL/秒 以上、2.5mL/秒 以上、3mL/秒以上が挙げられる。下限として挙げられるいずれかの数値と、上限として挙げられるいずれかの数値により表されるすべての組合せの数値範囲は本願明細書に開示されるが、好ましい数値範囲として、1~8mL/秒、1.5~7.5mL/秒、2~8mL/秒、2~7.5mL/秒などが挙げられる。なお、本発明の口腔摂取用複合物の最大CO発生速度は、該複合物に含まれる本発明の口腔摂取用COハイドレートの最大CO発生速度よりも通常遅い。本発明の口腔摂取用COハイドレートを包含する物質であり、該複合物におけるCOハイドレート以外の物質は、通常、COハイドレートよりもCO濃度が低いからである。
上記の最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整された口腔摂取用COハイドレートとしては、COハイドレート塊に氷の被覆膜を設けて(すなわち、氷膜でCOハイドレートを被覆して)、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整されたCOハイドレートや、CO含有率を調整することにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整されたCOハイドレートなどが挙げられ、中でも、口腔摂取する際の二酸化炭素中毒リスクを顕著に低減しつつ、より十分な炭酸感を得る観点から、COハイドレート塊に氷の被覆膜を設ける(氷膜でCOハイドレートを被覆する)ことにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整されたCOハイドレートが好適に挙げられる。COハイドレート塊に氷の被覆膜を設けることにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整された口腔摂取用COハイドレートとして、具体的には、厚さ0.6~50mmの氷膜で被覆されたCOハイドレート(以下、「氷膜被覆COハイドレート」とも表示する。)が好適に挙げられる。
本発明の口腔摂取用COハイドレートの形状としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の製品設計等に応じて適宜設定することができ、例えば、略球状;略楕円体状;略直方体形状等の略多面体形状;あるいは、これらの形状にさらに凹凸を備えた形状;などが挙げられ、また、COハイドレートの塊を適宜破砕して得られる様々な形状の破砕片(塊)であってもよい。本発明の口腔摂取用複合物の形状としては、該複合物の種類、組成等に応じて適宜設定することができ、例えば、該複合物が全体として個体である場合は、該複合物の形状としては、略球状;略楕円体状;略直方体形状等の略多面体形状;あるいは、これらの形状にさらに凹凸を備えた形状;などが挙げられる。
本発明の口腔摂取用COハイドレートの大きさとしては、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の製品設計等に応じて適宜設定することができ、例えば、口腔摂取用COハイドレートの最大長として1~100mm、2~50mm、3~30mm、4~25mm、5~20mmなどが挙げられる。本明細書において「口腔摂取用COハイドレートの最大長」とは、口腔摂取用COハイドレートのその塊の表面の2点を結び、かつ、その塊の重心を通る線分のうち、最も長い線分の長さを意味する。なお、本発明の口腔摂取用複合物の大きさとしては、かかる複合物の使用対象製品の製品設計等に応じて適宜設定することができ、例えば、該複合物が全体として個体である場合は、該複合物の大きさとしては、口腔摂取用COハイドレートの最大長として1~200mm、3~100mm、5~80mm、7~50mm、7~25mmなどが挙げられる。
本発明の口腔摂取用COハイドレートの二酸化炭素含有率(CO含有率)としては、最大CO発生速度が8mL/秒 未満である限り特に制限されず、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の製品設計等に応じて適宜設定することができるが、本発明の口腔摂取用COハイドレートが氷膜被覆COハイドレートである場合、CO含有率の下限として例えば、3重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、より好ましくは12重量%以上が挙げられ、CO含有率の上限として例えば、28重量%以下、23重量%以下、18重量%以下が挙げられる。なお、本明細書において、氷膜被覆COハイドレートである場合のCO含有率は、氷膜を含む氷膜被覆COハイドレートの全重量に対するCOの重量の割合(%)を意味する。一方、本発明の口腔摂取用COハイドレートが氷膜被覆COハイドレートではなく、CO含有率を調整することにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整されたCOハイドレートである場合、CO含有率の下限として例えば、1重量%以上、好ましくは2.5重量%以上、より好ましくは4重量%以上が挙げられ、CO含有率の上限として例えば、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下が挙げられる。
本発明の口腔摂取用複合物の二酸化炭素含有率(CO含有率)としては、特に制限されず、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の製品設計等に応じて適宜設定することができるが、CO含有率の下限として例えば、1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは7重量%以上、より好ましくは9重量%以上が挙げられ、CO含有率の上限として例えば、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下が挙げられる。なお、本明細書において、本発明の口腔摂取用複合物のCO含有率は、本発明の口腔摂取用複合物の全重量に対するCOの重量の割合(%)を意味する。
本発明の口腔摂取用COハイドレートにおけるCO含有率は、本発明の口腔摂取用COハイドレートを製造する際の「CO分圧の高低」、「脱水処理の程度」、「圧密成型処理を行うか否か」、「圧密成型処理する場合の圧密の圧力の高低」、「氷膜の厚さの程度」などにより調整することができる。例えば、COハイドレートを製造する際の「CO分圧を高くし」、「脱水処理の程度を上げ」、「圧密成型処理を行い」、「圧密成型処理する場合の圧密の圧力を高くする」と、COハイドレートのCO含有率を高くすることができる。なお、COハイドレートが融解すると、該COハイドレートに含まれていたCOが放出され、その分の重量が減少するので、口腔摂取用COハイドレートのCO含有率は、例えば、口腔摂取用COハイドレートを常温で融解させた際の重量変化から、下記式を用いて算出する事ができる。
(CO含有率)=(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)/融解前のサンプル重量)
本発明の口腔摂取用複合物におけるCO含有率は、該口腔摂取用複合物に含有させる本発明の口腔摂取用COハイドレートにおけるCO含有率や、上記口腔摂取用複合物に含有させる口腔摂取用COハイドレートの配合比率等により調整することができる。本発明の口腔摂取用複合物におけるCO含有率は、口腔摂取用COハイドレートのCO含有率と同様の方法により算出することができる。
本発明の口腔摂取用COハイドレート等は、より長期間、より安定的に保つ観点から、流通や保管等の際に、「低温条件下」、又は「高圧条件下」、又は「低温条件下かつ高圧条件下」で保持することが好ましい。保持の簡便性の観点から、これらの中でも、「低温条件下」で保持することが好ましく、常圧で「低温条件下」で保持することがより好ましい。
上記の「低温条件下」における上限温度としては、好ましくは0℃以下、より好ましくは-5℃以下、さらに好ましくは-10℃以下、より好ましくは-15℃以下、さらに好ましくは-20℃、より好ましくは-25℃が挙げられ、上記の「低温条件下」における下限温度としては、-273℃以上、-80℃以上、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上などが挙げられる。
上記の「高圧条件下」における下限圧力としては、1050ヘクトパスカル(hPa)以上、好ましくは1150hPa以上、より好ましくは1300hPa以上、さらに好ましくは1500hPa以上が挙げられ、上記の「高圧条件下」における上限圧力としては、15000hPa以下、12000hPa以下、10000hPa以下、8000hPa以下、5000hPa以下などが挙げられる。なお、本段落に記載された圧力はいずれも絶対圧力で表記している。
(氷膜被覆COハイドレート)
前述したように、本発明の口腔摂取用COハイドレートとしては、本発明の氷膜被覆COハイドレートが好適に挙げられ、本発明の口腔摂取用複合物としては、本発明の氷膜被覆COハイドレートを含む口腔摂取用複合物が好適に挙げられる。かかる氷膜被覆COハイドレートとしては、厚さ0.6~50mmの氷膜で被覆されたCOハイドレートである限り、形状、大きさ、CO含有率、製造方法など特に制限されない。
(氷膜)
本発明における氷膜の厚さとしては、0.6~50mmである限り特に制限されないが、好ましくは0.6~30mm、より好ましくは0.6~20mm、さらに好ましくは0.7~5mm、より好ましくは0.7~4mm、さらに好ましくは0.8~3.5mmが挙げられる。
本明細書における「氷膜の厚さ」とは、そのCOハイドレートを被覆する氷膜の厚さの平均値を意味し、かかる「氷膜の厚さ」には、例えばその氷膜被覆COハイドレートの氷膜においてランダムに選択された3~10箇所(好ましくは5箇所)の位置における氷膜の厚さの平均値が含まれる。氷膜被覆COハイドレートのある位置における氷膜の厚さとは、その位置の氷膜表面が平面の場合はその平面に垂直方向の氷膜の厚さを意味し、その位置の氷膜表面が曲面の場合はその位置の氷膜表面の接平面に垂直方向の氷膜の厚さを意味する。また、1個の氷膜被覆COハイドレートが、2個又は3個以上のCOハイドレート塊を含んでいる場合の各COハイドレート塊の氷膜の境界面としては、隣り合う2個のCOハイドレート塊の各表面上の点を結ぶ線分であって、その長さが最短となる線分の垂直二等分面が好ましく挙げられる。
氷膜の厚さは、氷膜被覆COハイドレートの表面の位置によって異なっていてもよいが、氷膜被覆COハイドレートの表面全体でおおむね均一であることが好ましく、そのCOハイドレートについて「最も薄い位置の氷膜の厚さ」に対する「最も厚い位置の氷膜の厚さ」の比率が例えば1.0より高く5.0以下、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.0~3.0であることが好適に挙げられる。
本明細書における「氷膜被覆COハイドレート」には、最大CO発生速度が8mL/秒 未満に調整されている限り、表面の少なくとも一部が氷膜で被覆されていないCOハイドレートも便宜上含まれるが、表面のすべてが氷膜で被覆されていることが好ましい。より具体的には、「氷膜被覆COハイドレートの全表面積」に対する、「氷膜被覆COハイドレートにおいて、表面が氷膜である部分の面積」の比率(%)が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、最も好ましくは100%であることが好適に挙げられる。
また、1個の氷膜被覆COハイドレートは、1個のCOハイドレート塊を含んでいてもよいし、2個又は3個以上のCOハイドレート塊を含んでいてもよいが、1個のCOハイドレート塊を含んでいることが好ましい。1個の氷膜被覆COハイドレートが、2個又は3個以上のCOハイドレート塊を含んでいる場合、1個の氷膜被覆COハイドレートに含まれるCOハイドレート塊の個数に対して、割合として60%以上の個数のCOハイドレート塊が氷膜被覆COハイドレートであればよいが、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは100%の割合の個数のCOハイドレート塊が氷膜被覆COハイドレートであることが好適に挙げられる。
本発明における氷膜は氷の膜であり、かかる氷としては、氷のみから成っていてもよいし、氷以外の任意物質を含有していてもよい。かかる任意物質としては、増粘剤、甘味成分、乳化剤及び油脂からなる群から選択される1種又は2種以上の物質が挙げられ、中でも、増粘剤及び甘味成分からなる群から選択される1種又は2種以上の物質が好ましく挙げられ、中でも、1種又は2種以上の増粘剤がより好ましく挙げられ、中でも、少なくともキサンタンガムを含む1種又は2種以上の増粘剤がさらに好ましく挙げられる。なお、前述したように、本発明における氷膜には、冷菓(例えば氷)、菓子、食品、飲料などの飲食品が凍結してなる膜も含まれる。
上記の増粘剤とは、飲食品に添加することにより飲食品の粘性を向上させることのできる物質のことをいい、かかる増粘剤には、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、タラガム、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、プルラン、プロピレングリコール、ゼラチン、アラビアガム、ダイユータンガム、デンプン、デキストリン、アルギン酸、イナゴマメゴム、などが挙げられ、中でも、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、カラギナン、カルボキシメチルセルロース、ローカストビーンガムなどが好ましく挙げられ、中でも、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガムがより好ましく挙げられる。増粘剤は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明における氷膜が増粘剤を含有する場合、かかる氷膜中の増粘剤の濃度としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の香味設計に応じて適宜設定することができるが、例えば、0重量%より高く5重量%以下、好ましくは0.01~4.5重量%、より好ましくは0.01~4.0重量%、さらに好ましくは0.05~0.6重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、さらに好ましくは0.1~0.5重量%が挙げられる。
上記の「甘味成分」とは、甘味を呈する成分のことをいい、かかる甘味成分には、黒砂糖、白下糖、カソナード(赤砂糖)、和三盆、ソルガム糖、メープルシュガーなどの含蜜糖、ザラメ糖(白双糖、中双糖、グラニュー糖など)、車糖(上白糖、三温糖など)、加工糖(角砂糖、氷砂糖、粉砂糖、顆粒糖など)、液糖などの精製糖、単糖類(ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース、異性化糖など)、二糖類(蔗糖 、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、パラチノースなど)、オリゴ糖類(フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガーなど)、糖アルコール類(エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール、オリゴ糖アルコール、粉末還元麦芽糖水飴)などのような糖質甘味料の他、天然非糖質甘味料(ステビア抽出物、カンゾウ抽出物等)や合成非糖質甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK等)のような高甘味度甘味料などの甘味料が挙げられる。甘味成分は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明における氷膜が甘味成分を含有する場合、かかる氷膜中の甘味成分の合計濃度としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の香味設計に応じて適宜設定することができるが、例えば、0重量%より高く30重量%以下、好ましくは1~25重量%が挙げられる。
上記の乳化剤とは、乳化作用を有する物質のことをいい、かかる乳化剤としては、食用として使用できるものを広く採用することができ、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、キラヤサポニン、ユッカサポニン、大豆サポニン、化工澱粉(酸分解澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、グラフト化澱粉、カルボキシメチル基、ヒドロキシアルキル基等を導入したエーテル化澱粉、酢酸、リン酸等を反応させたエステル化澱粉、2ヶ所以上の澱粉の水酸基間に多官能基を結合させた架橋澱粉、湿熱処理澱粉等)などが挙げられる。乳化剤は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明における氷膜が乳化剤を含有する場合、かかる氷膜中の乳化剤の濃度としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の香味設計に応じて適宜設定することができるが、例えば、0重量%より高く0.5重量%以下、好ましくは0.001~0.5重量%、より好ましくは0.01~0.4重量%、さらに好ましくは0.01~0.3重量%が挙げられる。
上記の油脂とは、グリセリンと脂肪酸のエステルのことをいい、かかる油脂としては、食用として使用できるものを広く採用することができ、例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂;並びに、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂;が挙げられ、さらに、上記油脂類の単独または混合油、あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂も挙げられる。油脂は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明における氷膜が油脂を含有する場合、かかる氷膜中の油脂の濃度としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の香味設計に応じて適宜設定することができるが、例えば、0重量%より高く40重量%以下、好ましくは0.01~35重量%、より好ましくは0.1~30重量%、さらに好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは0.1~20重量%、さらに好ましくは0.1~18重量%が挙げられる。
本発明における氷膜中の任意成分の濃度は、例えば氷膜のみを融解した後、その溶液について、例えばHPLC法、GC-MS法、LC-MS法などの公知の方法を適用することにより測定することができる。
本発明における氷膜は、上記の任意成分に加えて、又は、上記の任意成分を含まずに、その他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、色素、香料が挙げられる。
また、本発明の口腔摂取用COハイドレートを後述のように氷菓、アイスクリーム類等の冷菓として用いる場合、後述するような氷菓又はアイスクリーム類の原料混合物で氷膜を形成してもよい。
(COハイドレートを氷膜で被覆する方法)
COハイドレートを氷膜で被覆する方法(すなわち、COハイドレート塊に氷の被覆膜を設ける方法)としては、COハイドレートを氷膜で被覆することができる限り特に制限されず、例えば、COハイドレートの表面形状に合わせて作製した薄い氷(任意成分を含む氷を含む)を、COハイドレートの表面に貼り付ける方法であってもよいが、COハイドレートを厚さのより均一な氷膜でより簡便に被覆できる点で、COハイドレートの表面を「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」に接触させた後、かかる「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」を凍らせる方法が好ましく挙げられる。COハイドレートの表面を「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」に接触させる方法としては、例えば(i)COハイドレートを「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」に浸漬させる方法や、(ii)「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」をCOハイドレートの表面に塗布する方法や、(iii)「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」をスプレーや霧吹き等にて霧状、細粒状にしてCOハイドレートの表面に吹き付ける方法や、(iv)「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」を超音波振動器等により気化又は霧状にしてCOハイドレートの表面に接触させる方法等が挙げられ、中でも、COハイドレートを厚さのより均一な氷膜で被覆できる点で、上記の(iii)の方法や、(iv)の方法が好ましく挙げられる。
上記のCOハイドレートの表面を「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」に接触させた後、かかる「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」を凍らせる方法としては、特に制限されず、表面に「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」が接触したCOハイドレートを液体窒素等で冷却してもよいし、COハイドレートを予め十分に冷却しておき、その表面に接触した「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」が凍るようにしておいてもよい。
また、上記のCOハイドレートの表面を「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」に接触させた後、かかる「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」を凍らせる方法において、氷膜を所望の厚さに調整するまでに行う前記接触とそれを凍らせる処理の回数は、得られる氷膜被覆COハイドレートの最大CO発生速度が8mL/秒 未満である限り特に制限されず、1回でもよいし、2回以上であってもよい。また、上限の処理回数としては、目的とする氷膜の厚さや、氷膜の被覆方法等にもよるため一概に規定できないが、20回以下、15回以下、10回以下、8回以下が挙げられる。
氷膜の厚さは、COハイドレートの表面に接触させる「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」の量や、接触させる回数などにより調整することができる。
COハイドレートの表面を「水」又は「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」に接触させる際の「水」や「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」の液温としては、特に制限されないが、より均一な厚さの氷膜を形成すること、「水」や「任意成分を含む水溶液又は懸濁液」の液温によって、COハイドレートが融解するのを回避すること等の観点から、-5~15℃が好ましく、0~10℃がより好ましく、1~8℃がさらに好ましい。
(氷膜被覆COハイドレート作製用COハイドレート)
本発明の氷膜被覆COハイドレートの作製に用いるCOハイドレート(以下、単に「氷膜被覆用COハイドレート」とも表示する。)の最大CO発生速度は、8mL/秒 以上であってもよく、より十分な炭酸感を有する口腔摂取用COハイドレートを得る観点から、氷膜被覆用COハイドレートの最大CO発生速度は、好ましくは8mL/秒 以上、より好ましくは10mL/秒 以上であり、また、好ましくは15mL/秒 以下、より好ましくは13mL/秒 以下であることが挙げられる。
氷膜被覆用COハイドレートの形状、大きさ、CO含有率、製造方法など特に制限されない。氷膜被覆用COハイドレートの形状や、大きさは、本発明の口腔摂取用COハイドレートにおいて氷膜を除去した形状や、大きさとなる。氷膜被覆用COハイドレートの大きさとしては、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の香味設計等に応じて適宜設定することができ、例えば、氷膜被覆用COハイドレートの最大長として0.5~30mm、1~25mm、2~20mmなどが挙げられる。
氷膜被覆用COハイドレートのCO含有率としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートとしたときに最大CO発生速度が8mL/秒 未満である限り特に制限されず、本発明の口腔摂取用COハイドレートの使用対象製品の製品設計等に応じて適宜設定することができるが、CO含有率の下限として例えば、3重量%以上、好ましくは6重量%以上、より好ましくは8重量%以上、さらに好ましくは11重量%以上、より好ましくは13重量%以上が挙げられ、CO含有率の上限として例えば、28重量%以下、25重量%以下が挙げられる。
氷膜被覆用COハイドレートの製造方法としては、COハイドレートを製造できる限り特に制限されず、COハイドレート生成条件を充たす条件下で原料水中にCOを吹き込みながら原料水を攪拌する気液攪拌方式や、COハイドレート生成条件を充たす条件下でCO中に原料水をスプレーする水スプレー方式等の常法を用いることができる。これらの方式で生成されるCOハイドレートは、通常、COハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状であるため、COハイドレートの濃度を高めるために、脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理によって含水率が比較的低くなったCOハイドレート(すなわち、比較的高濃度のCOハイドレート)は、ペレット成型機で一定の形状(例えば球状や直方体状)に圧縮成型することが好ましい。圧縮成型したCOハイドレートは、そのまま本発明に用いてもよいし、必要に応じてさらに破砕等したものを用いてもよい。なお、氷膜被覆用COハイドレートの製造方法としては、前述のように、原料水を用いる方法が比較的広く用いられているが、水(原料水)の代わりに微細な氷(原料氷)をCOと、低温、かつ、低圧のCO分圧という条件下で反応させてCOハイドレートを製造する方法を用いることもできる。
上記の「COハイドレート生成条件」は、前述したように、その温度におけるCOハイドレートの平衡圧力よりCO分圧(CO圧力)が高い条件である。上記の「COハイドレートの平衡圧力よりもCO分圧が高い条件」は、非特許文献1(J. Chem. Eng. Data (1991) 36, 68-71)のFigure 2.や、非特許文献2(J. Chem. Eng. Data (2008), 53, 2182-2188)のFigure 7.やFigure 15.に開示されているCOハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す)において、かかる曲線の高圧側(COハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内のCO圧力と温度の組合せの条件として表される。COハイドレート生成条件の具体例として、「-20~4℃の範囲内」と「二酸化炭素圧力1.8~4MPaの範囲内」の組合せの条件や、「-20~-4℃の範囲内」と「二酸化炭素圧力1.3~1.8MPaの範囲内」の組合せの条件が挙げられる。
氷膜被覆用COハイドレートは、二酸化炭素と氷のみからなるCOハイドレート(以下、「任意成分及びその他成分を含有しないCOハイドレート」とも表示する。)であってもよいが、増粘剤、甘味成分、乳化剤、油脂、色素及び香料からなる群から選択される1種又は2種以上の物質を含んでいてもよい。上記の「色素」としては、例えば、マリーゴールド色素等のカロテノイド系色素、ベニバナ色素等のフラボノイド系色素、アントシアニン系色素、クチナシ色素類、ビート色素等のベタニン系色素、クロレラ、葉緑素等、カラメル色素等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
本発明の口腔摂取用COハイドレート等は、包装容器内に収容されていてもよいし、収容されていなくてもよい。かかる包装容器としては、例えば、飲料用の氷などに通常用いられているものと同様の形状、材質等の包装容器を用いることができる。かかる包装容器として例えば、ポリエチレン樹脂等の樹脂製の袋や、樹脂製のカップが挙げられる。
(本発明の口腔摂取用COハイドレートの用途、本発明の口腔摂取用複合物)
本発明の口腔摂取用COハイドレートは、CO徐放性が調整されているので、口腔摂取用COハイドレートとして好適に用いることができる。本発明の口腔摂取用COハイドレートは、そのまま冷菓又は氷菓としてもよく、また、以下のように他の冷菓、菓子、食品、飲料などの飲食品等の口腔摂取用の物質に添加するか、混合・混和するか、又は振りかけることにより、本発明の口腔摂取用複合物としてもよい。
本発明の口腔摂取用複合物は、本発明の口腔摂取用COハイドレートを包含する(含む)口腔摂取用の物質であり、該口腔摂取用複合物としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートを含む、冷菓(例えば氷)、菓子、食品、飲料などの飲食品が挙げられ、中でも、本発明の口腔摂取用COハイドレートを含む飲料、冷菓(例えば氷)が好ましく挙げられ、中でも、本発明の口腔摂取用COハイドレートを含む飲料、氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類がより好ましく挙げられ、中でも、本発明の口腔摂取用COハイドレートを含む氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類がさらに好ましく挙げられる。なお、本発明の口腔摂取用複合物の別の観点からの好ましい態様として、1個又は2個以上の本発明の氷膜被覆COハイドレートを含む口腔摂取用の物質(好ましくは氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類)が挙げられ、中でも、かかる口腔摂取用の物質(好ましくは氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類)に含まれる個々の「本発明の氷膜被覆COハイドレート」がそれぞれ1個のCOハイドレート塊を含んでいる、口腔摂取用の物質(好ましくは氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類)がより好ましく挙げられる。
本発明の口腔摂取用COハイドレートは、その融解時にパチパチと音を立ててCOガスが飛び出すため、視覚的効果や聴覚的効果が得られる他、口腔内で冷菓が弾けるような刺激的な食感が得られる。また、本発明の口腔摂取用複合物(好ましくは氷菓、アイスクリーム類)は、本発明の口腔摂取用COハイドレートのもつ顕著な炭酸感が、他の飲食品(好ましくは氷菓、アイスクリーム類)本来の風味や食感と合わさって、従来にない食感・風味を醸し出すことができる。
上記の冷菓としては、アイスクリーム類、氷菓などが挙げられ、かかるアイスクリーム類としては、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等が挙げられ、上記の氷菓としては、アイスキャンデー、みぞれ、かき氷、氷、シャーベット、フローズンヨーグルト、シェイク等が挙げられる。菓子や食品としては、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ナタデココ、寒天、杏仁豆腐、タピオカ、シロップ、蜜蜂、生クリーム、ミルフィーユ、マシュマロ、果実、チョコレート、チーズ、クッキー、ウェハース、ケーキ、タルト、パイ、シュークリーム、ムース、ババロア、パンナコッタ、ドーナツ、ワッフル、バームクーヘン、カステラ、葛きりもち、ようかん、白玉、しるこ、ぜんざい、わらびもち、おはぎ、きな粉等が挙げられる。
上記の飲料としては、アルコール飲料や、非アルコール飲料が挙げられる。かかるアルコール飲料としては、ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類等の発泡性酒類;日本酒;果実酒類;蒸留酒類;リキュール;等が挙げられる。上記の日本酒としては、大吟醸酒、純米大吟醸酒、吟醸酒、純米吟醸酒、本醸造酒、純米酒等が挙げられる。上記の果実酒類としては、ブドウのワイン(ブドウ酒)、リンゴのワイン(シードル)等のワイン(果実酒)や、シェリー、ポート等の甘味果実酒が挙げられ、中でも、ワインが好ましく挙げられ、中でもブドウのワインがより好ましく挙げられ、中でも、白ワイン、ロゼワインがより好ましく挙げられる。上記の蒸留酒としては、焼酎、ウイスキー、ウオッカ、スピリッツが挙げられる。上記のリキュールとしては、梅酒、カシスリキュール、オレンジリキュール、レモンリキュール、グレープフルーツリキュール、ライムリキュール、アンズリキュール、イチゴリキュール、ヨーグルトリキュール等が挙げられる。
上記の非アルコール飲料としては、ミネラルウォーター等の水;コーラ、ジンジャエール、サイダー等の炭酸飲料;ビールテイスト飲料;果汁含有飲料;野菜汁含有飲料;スポーツ飲料;アイソトニック飲料;ニアウォーター;コーヒー飲料;紅茶、緑茶、ウーロン茶、麦茶、社仲茶等の茶飲料;ココア飲料;ゼリー飲料;牛乳、低脂肪乳、加工乳等の乳;乳飲料;乳性飲料;乳酸菌飲料;豆乳類;栄養ドリンク剤;美容ドリンク剤; 等が挙げられる。
本発明の口腔摂取用複合物としては、本発明の口腔摂取用COハイドレートを含んでいること以外は通常の口腔摂取用の物質(好ましくは飲食品、より好ましくは飲料、氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類、さらに好ましくは氷菓(例えば氷)、アイスクリーム類)と変わるところはない。
本発明の口腔摂取用複合物において、本発明の口腔摂取用COハイドレートが含まれる態様としては特に制限されず、例えば、口腔摂取用の物質の上に本発明の口腔摂取用COハイドレートが載っている態様であってもよいし、口腔摂取用の物質の中に本発明の口腔摂取用COハイドレートの一部又は全部が埋め込まれているような態様であってもよい。また、包装容器内に口腔摂取用の物質と、本発明の口腔摂取用COハイドレートが別々に含まれている態様も、便宜上、「本発明の口腔摂取用COハイドレートを含む口腔摂取用の物質」に含まれる。
本発明の口腔摂取用複合物における本発明の口腔摂取用COハイドレートの含有量としては特に制限されないが、本発明の口腔摂取用COハイドレートを含む本発明の口腔摂取用複合物全量に対して、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上が挙げられ、上限として例えば100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下が挙げられる。
本発明の口腔摂取用複合物の製造方法としては、口腔摂取用複合物の通常の製造方法において、本発明の口腔摂取用COハイドレートが口腔摂取用の物質に含まれるようにする方法である限り特に制限されず、例えば、飲食品等の口腔摂取用の物質の通常の製造方法において、該口腔摂取用の物質の通常の製造方法において、該口腔摂取用の物質の原料混合物に、本発明の口腔摂取用ハイドレートを添加・混和する方法が好ましく挙げられる。
本発明の口腔摂取用複合物が、氷菓又はアイスクリーム類である場合の製造方法についてより詳細に述べると、氷菓又はアイスクリーム類の通常の製造方法において、氷菓又はアイスクリーム類の原料混合物を冷却する際に本発明の口腔摂取用ハイドレートを添加・混和する方法が好ましく挙げられる。上記の氷菓の原料としては、氷菓の種類によっても異なるが、甘味成分;乳化剤;安定剤;香料;色素;等が挙げられ、上記のアイスクリーム類の原料としては、アイスクリーム類の種類によっても異なるが、例えば、脱脂粉乳、脱脂乳等のタンパク質;植物油脂、乳脂等の食用油脂;甘味成分;乳化剤;安定剤;香料;色素;等が挙げられる。
上記のアイスクリーム類は、コーン、ワッフル生地などに充填されていなくてよいが、充填されていてもよい。
本発明の口腔摂取用複合物は、包装容器内に収容されていてもよいし、収容されていなくてもよい。かかる包装容器としては、その口腔摂取用の物質に通常用いられているものと同様の形状、材質等の包装容器を用いることができる。
2.<本発明の製造方法>
本発明の口腔摂取用COハイドレート等の製造方法(本発明の製造方法)は、COハイドレートの製造において、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整することを含んでいる限り、特に制限されない。
上記の最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法としては、特に制限されないが、COハイドレート塊に氷の被覆膜を設ける(COハイドレートを氷膜で被覆する)ことにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法や、COハイドレートのCO含有率を調整することにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法などが挙げられ、中でも、口腔摂取する際の二酸化炭素中毒リスクを顕著に低減しつつ、より十分な炭酸感を得る観点から、COハイドレート塊に氷の被覆膜を設けることにより、最大CO発生速度が8mL/秒未満となるように調整する方法が好ましく挙げられ、COハイドレートを厚さ0.6~50mmの氷膜で被覆することにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法がより好ましく挙げられる。
氷膜や、氷膜でCOハイドレートを被覆する方法や、氷膜被覆用COハイドレート等については、前述したとおりである。
3.<本発明のCO徐放性調整方法>
本発明のCOハイドレート等のCO徐放性調整方法(本発明のCO徐放性調整方法)は、COハイドレートの製造において、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整することを含んでいる限り、特に制限されない。
上記のCOハイドレートの最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法としては、特に制限されないが、COハイドレート塊に氷の被覆膜を設ける(COハイドレートを氷膜で被覆する)ことにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法や、COハイドレートのCO含有率を調整することにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法などが挙げられ、中でも、口腔摂取する際の二酸化炭素中毒リスクを顕著に低減しつつ、より十分な炭酸感を得る観点から、COハイドレート塊に氷の被覆膜を設ける(COハイドレートを氷膜で被覆する)ことにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法が好ましく挙げられ、COハイドレートを厚さ0.6~50mmの氷膜で被覆することにより、最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるように調整する方法がより好ましく挙げられる。
氷膜や、氷膜でCOハイドレートを被覆する方法や、氷膜被覆用COハイドレート等については、前述したとおりである。
4.<本発明の風味改善剤>
本発明の風味改善剤は、本発明の口腔摂取用COハイドレート等を含んでいる限り、特に制限されない。本発明の口腔摂取用COハイドレート等については、前述したとおりである。本発明の風味改善剤は、二酸化炭素中毒リスクを低減しつつ、飲食品に十分な炭酸感を増強させることができる。すなわち、本発明の風味改善剤は、飲食品に対して、より安全に、かつ、より十分な炭酸感を与えることができる。
本発明の風味改善剤は、飲食品に含有させること等により使用することができる。本発明の風味改善剤の使用量は、その風味改善剤における本発明の口腔摂取用COハイドレート等の濃度や、飲食品において増強する炭酸感の程度等に応じて適宜設定することができる。
本発明の風味改善剤中の、本発明の口腔摂取用COハイドレート等の濃度としては、本発明の風味改善剤の使用対象製品の香味設計に応じて適宜設定することができるが、例えば、0.1~100重量%、好ましくは1~95重量%の範囲内、より好ましくは5~90重量%の範囲内が挙げられる。
本発明の風味改善剤は、本発明の口腔摂取用COハイドレート等のみから成っていてもよいし、本発明の口腔摂取用COハイドレート等以外の任意成分を含有していてもよい。かかる任意物質としては、増粘剤、増量剤等が挙げられる。
本発明の風味改善剤は、例えば、本発明の口腔摂取用COハイドレート等と任意成分を混合することにより製造することができる。本発明の風味改善剤は、包装容器内に収容されていてもよいし、収容されていなくてもよい。かかる包装容器としては、例えば、飲料用の氷などに通常用いられているものと同様の形状、材質等の包装容器を用いることができる。かかる包装容器として例えば、ポリエチレン樹脂等の樹脂製の袋や、樹脂製のカップが挙げられる。
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<方法>
[1]COハイドレートの調製
先行文献(特許第3090687号、特表2004-512035、特許第4969683号)を参考に、COハイドレートの生成を行った。具体的には、4Lの水にCOガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でハイドレート生成反応を進行させ、COハイドレートを含むシャーベット状のスラリーを作製した。このシャーベット状のスラリーを、-20℃まで冷却した後、COハイドレートとして回収し、液体窒素上で1粒あたり0.4~0.6gとなるよう調製した。なお、これらのCOハイドレートのCO含有率は15~18%であった。
[2]氷膜によるCOハイドレートの被覆
[2-1]被覆に用いる溶液の調製
キサンタンガム(三栄源社製、ビストップD-3000-E-S)、ペクチン(三晶株式会社製、VIS-J-TF)、カラギナン(CP Kelco社製、CSM-2)またはグラニュー糖を、常温のイオン交換水に溶解させ、粘度1mPas~7500mPasの粘性溶液を作製した。粘度はB型粘度計(ブルックフィールド社製、LVDV-II+Pro)を用いて、粘性溶液の液温5℃で測定を行った。粘度の測定は、JIS Z8803に基づいて実施した。作製した粘性溶液は5℃で保管して、後述のCOハイドレートの被覆処理に使用した。また、イオン交換水も5℃で保管して、後述のCOハイドレートの被覆処理に使用した。
[2-2]氷膜によるCOハイドレートの被覆
上記[1]の方法で製造した粒状のCOハイドレート2.0gを、液体窒素中で冷却して取り出し、上記[2-1]で調製した液温5℃の粘性溶液またはイオン交換水に浸漬した後、すみやかに液体窒素中で冷却することにより、COハイドレートの表面を粘性溶液の氷膜またはイオン交換水の氷膜でコーティングした。粘性溶液の氷膜またはイオン交換水の氷膜が、COハイドレート表面で所定の厚さとなるまで、このコーティング操作を繰り返し行い、口腔摂取用COハイドレートサンプルを得た。なお、得られた口腔摂取用COハイドレートサンプルはその表面のすべてが氷膜で被覆されていた。氷膜の厚さは、用いた粒状のCOハイドレート1粒を直径0.50cmの球と仮定し、コーティングに用いた粘性溶液またはイオン交換水の重量を元に算出した。例えば、粒状のCOハイドレート2.0gにイオン交換水を3.0gコーティングした場合、粒状のCOハイドレートは4粒であるため、1粒あたりイオン交換水が0.75gコーティングされている事となる。氷の比重を0.92として、イオン交換水0.75g分の体積を計算し、直径0.50cmの球の表面に均一にコーティングされたとすると、COハイドレート粒の直径は0.18cm増加したこととなる。この増加した0.18cm分の厚さを氷膜の厚さの推定値とした。
[3]COハイドレートサンプルの最大CO発生速度の測定試験
各COハイドレートサンプルは、試験に供する10~15分前に液体窒素上から、-20℃条件下に移した。各COハイドレートサンプルは実験に供する前に、サーモグラフィー(FLIR社製、E40sc)を用いて、表面温度が-20℃以上となっていることを確認した。
計測機器として、温度37℃、湿度70%のインキュベーター内に精密天秤を設置した。精密天秤のフード内の計量皿の上に、液温37℃の水200mLを入れたステンレス容器(直径110mm、深さ50mm)を置き、このステンレス容器内の底面に、液温37℃の水10mLを入れたビーカー(50mL容量、直径45mm、深さ75mm)を配置した。
各COハイドレートサンプルを上記のビーカー内の水に添加し、添加から5秒毎に10分間重量変化を計測した。COハイドレートが融解すると、COハイドレートに含まれていたCOガスが放出され、その分の重量が減少する。その重量変化から、5秒毎のCO発生量(mL)を算出した。それらのCO発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという測定試験を、各COハイドレートサンプルについてそれぞれ3回繰り返した。測定試験を3回繰り返して得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、そのCOハイドレートサンプルの最大CO発生速度(mL/秒)とした。
[4]呼吸シミュレータを用いたモデル肺内最大CO濃度の測定試験
成人の肺を含む気道系を模したモデル(呼吸シミュレータ:図1)を作製し、サンプルおよび換気条件を変え、呼気終末CO分圧を指標として肺内CO濃度上昇の程度を検討した。
各COハイドレートサンプルは、試験に供する10~15分前に液体窒素上から、-20℃条件下に移した。モデル肺(ミシガン・インスツルメント社製、TTLモデル肺)の一方を人工呼吸器(COVIDIEN社製、Ventilator 840)で換気して、物理的に他方のモデル肺を駆動し、自発呼吸を模した。モデル肺に口鼻腔・喉咽頭(以下、「口腔」と表示する)モデルを接続し、喉頭に相当する部位にカプノメータ(NOVAMETRIX社製、Ventrac)を設置した。口腔モデルは成人を想定し生理学的死腔(呼吸器系システムにおいて血液とガス交換を行わない領域)を193mLに設定した。成人安静時のCO産生量に倣いモデル肺内にはCOガスを常時200mL/分で流入させた。
上記の呼吸シミュレータ口腔モデル内に、各COハイドレートサンプルを投入し、投入から1分後に37℃の水5mLを口腔モデル内に注入した。水注入時から10秒毎に呼気ガス中のCO濃度(mmHg)を前述のカプノメータで測定し、測定開始から30秒毎のCO濃度測定値の平均をモデル肺内最大CO濃度(mmHg)とした。各CO2ハイドレートサンプルについて、駆動側人工呼吸器の一回換気量を400mL、600mL、800mLに変更して測定を行った。
<結果>
[5]COハイドレート表面における氷膜の有無、厚さが、COハイドレートにおけるCOガスの徐放性に与える影響
COハイドレート表面における氷膜の有無、厚さが、COハイドレートにおけるCOガスの徐放性に与える影響を調べるために、以下の実施例1~3のサンプル及び比較例1のサンプルについて、上記[3]の最大CO発生速度の測定試験、及び、上記[4]のモデル肺内最大CO濃度の測定試験を行った。
[5-1]実施例1~3
上記[1]の方法で製造した粒状のCOハイドレート2.0g(CO含有率16.8%;CO含量0.34g)に対し、キサンタンガムを0.1%、およびグラニュー糖を20%となるよう溶かした粘度26.4mPas(液温6.1℃、回転数50rpm)の粘性溶液5.0~6.0g、または3.0~4.0g、または1.0~2.0gを用いて、上記[2]の方法でコーティングを行った口腔摂取用COハイドレートサンプルを、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3とした。なお、実施例1~3の口腔摂取用COハイドレートサンプルを被覆する氷膜の厚さは、それぞれ2.5~3.1mm、1.6~2.2mm、0.8~1.3mmであった。
[5-2]比較例1
上記[1]の方法で製造した粒状のCOハイドレート2.0g(CO含有率17.5%;CO含量0.35g)を比較例1のCOハイドレートサンプルとした。
[5-3]最大CO発生速度、及び、モデル肺内最大CO濃度
比較例1のCOハイドレートサンプルおよび実施例1~3の口腔摂取用COハイドレートサンプルのそれぞれについて、上記[3]の方法で最大CO発生速度(mL/秒)を測定し、及び、上記[4]の方法でモデル肺内最大CO濃度(mmHg)を測定した。これらの結果を表1に示す。
Figure 0007058011000001
表1の結果に示されるとおり、COハイドレートをそのまま用いて、氷の被覆膜を設けなかった比較例1のサンプルでは、最大CO発生速度が10 mL/秒以上となり、また、モデル肺内最大CO濃度が80mmHgを超えた。80mmHgを超える肺内CO濃度は、二酸化炭素中毒により人体に危険が及ぶ可能性が高い濃度である。一方、表1の結果に示されるとおり、COハイドレートに氷の被覆膜を設けてCOハイドレートの最大CO発生速度を約8mL/秒 未満とした実施例1~3のサンプルでは、モデル肺内最大CO濃度は70mmHg以下に維持された。また、実施例3のサンプルと比較して、実施例1および2のサンプルの最大CO発生速度が低いことから、氷膜を厚くすることで、COハイドレートの最大CO発生速度が低下し、COハイドレートからのCO発生がより緩やかとなることが示された。すなわち、COハイドレートの氷膜が厚いほど、COの徐放性がより高いCOハイドレートとなることが示された。二酸化炭素中毒の発症し易さは、年齢、体重、特定の持病の有無等の個人差などの影響を受けるため、二酸化炭素中毒発生の危険性がある濃度を一概に規定することは困難であるが、本実験により、当該サンプルを口腔内に含んだ際の安全性確保のために有益な知見が得られた。
[6]COハイドレートを被覆する氷膜の組成の検討
より高いCO徐放性を発揮する氷膜の組成を検討するために、以下の実施例4~7の口腔摂取用COハイドレートサンプルについて、上記[3]の最大CO発生速度の測定試験、及び、上記[4]のモデル肺内最大CO濃度の測定試験を行った。
[6-1]実施例4~7
上記[1]の方法で製造した粒状のCOハイドレート2.0g(CO含有率16.0%;CO含量0.32g)に対し、キサンタンガムを0%、0.01%、0.1%又は0.5%となるよう溶かした粘性溶液をそれぞれ3.0~4.0g用いて、上記[2]の方法でコーティングを行った口腔摂取用COハイドレートサンプルを、それぞれ実施例4、実施例5、実施例6とした。
[6-2]最大CO発生速度、及び、モデル肺内最大CO濃度
実施例4~6の各口腔摂取用COハイドレートサンプルについて、上記[3]の方法で最大CO発生速度(mL/秒)を測定し、及び、上記[4]の方法でモデル肺内最大CO濃度(mmHg)を測定した。また、COハイドレートのコーティングに用いた各粘性溶液の粘度を5℃で測定した。これらの結果を表2に示す。なお、粘度を測定する際のスピンドルの種類はいずれの実施例サンプルの場合も「SC4-18」を用い、角速度は実施例4、5のサンプルの場合は20.94rad/sとし、実施例6のサンプルの場合は0.63rad/sとした。
Figure 0007058011000002
表2の結果に示されるとおり、実施例5及び実施例6のサンプルは、実施例4のサンプルと比較して、最大CO発生速度(mL/秒)が低く、また、実施例5のサンプルは実施例6のサンプルと比較して、最大CO発生速度(mL/秒)がさらに低かった。表2の結果から、コーティング氷膜の作製に用いる粘性溶液の粘度を調整する事で、ハイドレートからの最大CO発生速度をより低下させることが可能であることが示された。また、表2の結果から、キサンタンガムの濃度としては、好ましくは0.01~0.7重量%、より好ましくは0.01~0.6重量%、さらに好ましくは0.05~0.6重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、さらに好ましくは0.1~0.5重量%であることが示された。
本発明によれば、飲食品に添加してから口腔摂取する場合や、直接口腔摂取する場合の二酸化炭素中毒のリスクを低減しつつ、十分な炭酸感を有する、より安全性の高い口腔摂取用COハイドレート、または該口腔摂取用COハイドレートを含む複合物を提供でき、食して独特な食感、または飲用して心地良いのど越し感、あるいはより一層美味しく見えるCOハイドレートならではの演出効果等を楽しむことができる。

Claims (9)

  1. 下記で定義される最大CO発生速度が8mL/秒 未満となるようにCO ハイドレート塊に氷の被覆膜が設けられたことを特徴とする口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物。
    (最大CO発生速度(mL/秒)の定義)
    0.3~0.36gのCOを含有する量のCOハイドレートを分取し、分取したCOハイドレートを、室温37℃、湿度70%の大気圧の雰囲気下で、液温37℃の10mLの水に添加し、添加から5秒毎に少なくとも30秒以上重量変化を測定して、5秒毎のCOの発生量(mL)をそれぞれ算出し、それらの発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという試験を、3回繰り返し、得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、前記COハイドレートの最大CO発生速度(mL/秒)とする。
  2. 氷の被覆膜が、厚さ0.6~50mmの氷膜であることを特徴とする請求項に記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物。
  3. 0.3~0.36gのCOを含有するCOハイドレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物。
  4. CO含有率が、3~28重量%であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物。
  5. 氷の被覆膜が、増粘剤及び甘味成分からなる群から選択される1種又は2種以上の物質を含有していることを特徴とする請求項のいずれかに記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物。
  6. 氷の被覆膜に含まれる増粘剤の濃度が0.5重量%以下であり、及び/又は、氷の被覆膜に含まれる甘味成分濃度が20重量%以下であることを特徴とする請求項に記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物。
  7. 口腔摂取用複合物が、口腔摂取用COハイドレートを含む飲料、氷菓又はアイスクリーム類である請求項1~のいずれかに記載の口腔摂取用COハイドレート、または前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物。
  8. COハイドレートの製造において、下記で定義される最大CO発生速度が8mL/秒未満となるようにCO ハイドレート塊に氷の被覆膜を設ける工程を含むことを特徴とする、口腔摂取用COハイドレートまたは前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物の製造方法。
    (最大CO発生速度(mL/秒)の定義)
    0.3~0.36gのCOを含有する量のCOハイドレートを分取し、分取したCOハイドレートを、室温37℃、湿度70%の大気圧の雰囲気下で、液温37℃の10mLの水に添加し、添加から5秒毎に少なくとも30秒以上重量変化を測定して、5秒毎のCOの発生量(mL)をそれぞれ算出し、それらの発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという試験を、3回繰り返し、得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、前記COハイドレートの最大CO発生速度(mL/秒)とする。
  9. COハイドレートの製造において、下記で定義される最大CO発生速度が8mL/秒未満となるようにCO ハイドレート塊に氷の被覆膜を設ける工程を含むことを特徴とする、口腔摂取用COハイドレートまたは前記COハイドレートを含む口腔摂取用複合物のCO徐放性調整方法。
    (最大CO発生速度(mL/秒)の定義)
    0.3~0.36gのCOを含有する量のCOハイドレートを分取し、分取したCOハイドレートを、室温37℃、湿度70%の大気圧の雰囲気下で、液温37℃の10mLの水に添加し、添加から5秒毎に少なくとも30秒以上重量変化を測定して、5秒毎のCOの発生量(mL)をそれぞれ算出し、それらの発生量(mL)から5秒毎のCO発生速度(mL/秒)をそれぞれ算出するという試験を、3回繰り返し、得られた5秒毎のCO発生速度(mL/秒)のうち最大の値を、前記COハイドレートの最大CO発生速度(mL/秒)とする。
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PETERS, Teresa B. et al.,Transfer process limited models for CO2 perception in CO2 hydrate desserts,Journal of Food Engineering,2013年,Vol. 115,p. 285-291

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