JP7052694B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術では、このような課題が生じていることについて全く認識もされていないため、前記特許文献1に記載の技術によって酸素濃度のばらつきの課題を解決できない。
図1に示すように、単結晶引き上げ装置1は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶10を引き上げる装置であり、外郭を構成するチャンバ2と、チャンバ2の中心部に配置される坩堝3とを備える。
坩堝3は、内側の石英坩堝3Aと、外側の黒鉛坩堝3Bとから構成される二重構造であり、回転および昇降が可能な支持軸4の上端部に固定されている。
坩堝3の上方には、支持軸4と同軸上で逆方向または同一方向に所定の速度で回転するワイヤなどの引き上げ軸7が設けられている。この引き上げ軸7の下端には種結晶8が取り付けられている。
また、熱遮蔽体12は、シリコン融液9からの蒸発物を炉上方から導入した不活性ガスにより、炉外に排気する整流筒としての機能もある。熱遮蔽体12は、上端がチャンバ2の支持部21に支持された円筒状の本体部121と、本体部121の下端全周から内側に鍔状に突出する厚さが均一の円環板状の突出部122とを備える。なお、本体部121は、下端に向かうにしたがって直径が小さくなる円錐台筒状に形成されていてもよい。
ガス導入口13からチャンバ2内に導入された不活性ガスは、育成中のシリコン単結晶10と熱遮蔽体12との間を下降し、熱遮蔽体12の下端とシリコン融液9の液面との隙間を経た後、熱遮蔽体12の外側、さらに坩堝3の外側に向けて流れ、その後に坩堝3の外側を下降し、排気口14から排出される。
磁場印加部15は、それぞれ電磁コイルで構成された第1の磁性体15Aおよび第2の磁性体15Bを備える。第1,第2の磁性体15A,15Bは、チャンバ2の外側において坩堝3を挟んで対向するように設けられている。磁場印加部15は、中心の磁力線15Cが引き上げ軸7と重なる石英坩堝3Aの中心軸3Cを通り、かつ、当該中心の磁力線15Cの向きが図2における上方向(図1における紙面手前から奥に向かう方向)となるように、水平磁場を印加することが好ましい。中心の磁力線15Cの高さ位置については特に限定されず、シリコン単結晶10の品質に合わせて、シリコン融液9の内部にしてもよいし外部にしてもよい。
また、チャンバ2の上部の切欠部122Aの直上には、放射温度計16が配置され、図2に示すように、切欠部122Aの近傍となる測定点Pにおけるシリコン融液9の表面温度を非接触で測定することができるようになっている。
坩堝3内にシリコン融液9が形成されると、引き上げ軸7を下降させて種結晶8をシリコン融液9に浸漬し、坩堝3および引き上げ軸7を所定の方向に回転させながら、引き上げ軸7を徐々に引き上げ、これにより種結晶8に連なったシリコン単結晶10を育成する。
本発明者らは、同一の単結晶引き上げ装置1を用い、同一の引き上げ条件で引き上げを行っても、引き上げられたシリコン単結晶10の酸素濃度が高い場合と、酸素濃度が低い場合があることを知っていた。従来、これを解消するために、引き上げ条件等を重点的に調査してきたが、確固たる解決方法が見つからなかった。
まず、水平磁場を印加せず、石英坩堝3Aを回転させない状態では、石英坩堝3Aの外周近傍でシリコン融液9が加熱されるため、シリコン融液9の底部から表面9Aに向かう上昇方向の対流が生じている。上昇したシリコン融液9は、シリコン融液9の表面9Aで冷却され、石英坩堝3Aの中心で石英坩堝3Aの底部に戻り、下降方向の対流が生じる。
なお、下降流の回転が拘束されるのは、シリコン融液9に作用する水平磁場の強度が特定強度よりも大きくなってからと考えられる。このため、下降流の回転は、水平磁場の印加開始直後には拘束されず、印加開始から所定時間経過後に拘束される。
その後、図4(D)に示すように、下降流の右側の上昇方向の対流が消え去り、左側が上昇方向の対流、右側が下降方向の対流となり、右回りの対流90(右渦)となる。
一方、図4(A)の最初の下降流の位置を石英坩堝3Aの回転方向に180°ずらせば、下降流は、図4(C)とは位相が180°ずれた左側の位置で拘束され、左回りの対流90となる。
このような右回りや左回りのシリコン融液9の対流90は、水平磁場の印加を停止しない限り、維持される。
以上のことから、本発明者らは、予め準備しておいた不活性ガスのガス流動分布と、シリコン融液9の対流90の方向と、シリコン単結晶10の酸素濃度との関係に基づいて、対流90の方向をシリコン単結晶10の酸素濃度が所定の濃度となる方向に固定することで、シリコン単結晶10ごとの酸素濃度のばらつきを抑制できると考えた。
次に、シリコン単結晶の製造方法を説明する。
次に、図6に示すように、熱遮蔽体12の下端部とシリコン融液9の表面9Aとの間を流れる不活性ガスの流れに、第2の基準平面R2に対して非面対称なガス流動分布が形成されるように、チャンバ2内の状態を調整する(ステップS1:状態調整工程)。例えば、作業者は、図2に示すように、第2の磁性体15B側から見たときに、切欠部122Aが第2の基準平面R2に対して左側に位置し、かつ、第1の基準平面R1上に位置するように、熱遮蔽体12を配置する。
その後、制御部は、磁場印加部15および放射温度計16を駆動して、シリコン融液9の対流90の方向を所定の方向に固定する(ステップS3:対流固定工程)。
このとき、ステップS1の状態調整工程の実施によって、切欠部122Aが設けられている側(図5(A),(B)中左側)の不活性ガスの流量が、設けられていない側(図5(A),(B)中右側)と比べて増加し、流速が速くなっていると考えられる。また、シリコン融液9の表層部は、当該表層部からの酸素の蒸発によって低酸素濃度領域9Bになっていると考えられる。
一方、図5(B)に示す状態の場合、対流90が左回りであり、低酸素濃度領域9Bがシリコン単結晶10に接近する流れに対して、切欠部122Aにより形成された流量および流速が大きい不活性ガスの流れが順方向となっている。このため、シリコン単結晶10は、低酸素濃度領域9Bを取り込みやすくなり、低酸素濃度となる。
ステップS3の対流固定工程では、事前決定条件に基づいて、シリコン単結晶10の酸素濃度を高くしたい場合には対流90の方向を右回りに固定し、低くしたい場合には左回りに固定する。
以上のステップS1~S3の処理は、本発明のガス流動分布形成工程に対応する。
上記実施形態によれば、熱遮蔽体12の下端部とシリコン融液9の表面9Aとの間を流れる不活性ガスの流れに、第2の基準平面R2に対して非面対称なガス流動分布が形成されるように、チャンバ2内の状態を調整し、対流90の方向を所定の方向に固定するだけの簡単な方法で、所定の酸素濃度のシリコン単結晶10を製造できる。
なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
例えば、図7(A)に示すように、突出部122の一部に肉厚部122Bを設け、シリコン単結晶10の右側に肉厚部122Bが位置するように熱遮蔽体12を配置し、肉厚部122Bの下端からシリコン融液9の表面9Aまでの距離が、それ以外の部分の下端からの距離よりも短くなるように形成された非面対称構造を有するようにしてもよい。このような構成にすれば、肉厚部122B以外の部分(図7の左側部分)の下方を流れる不活性ガスの流速は、肉厚部122Bの下方(図7の右側部分)よりも隙間が大きくなっているので、速くなる。その結果、対流90が右回りの場合、低酸素濃度領域9Bがシリコン単結晶10に接近する流れに対して、流量および流速が大きい不活性ガスの流れが逆行することになり、シリコン単結晶10は、高酸素濃度となる。
切欠部122Aの形状を、上記実施形態で例示した形状と異ならせてもよい。
切欠部122Aを複数設けてもよい。
まず、上記実施形態の単結晶引き上げ装置1を準備し、図8(A)に示すように、切欠部122Aが第2の基準平面R2上における引き上げ軸7よりも第2の磁性体15B側に位置するように(切欠部の配置角度0°)、熱遮蔽体12を配置した。そして、上記実施形態と同様の融液生成工程、対流固定工程、育成工程を実施し、1本のシリコン単結晶10を製造した。なお、対流固定工程では、対流90を左回りに固定した。
図8(B)に示すように、切欠部122Aが実験例1の位置から左回りに90°回転した方向に位置するように(切欠部の配置角度90°)、熱遮蔽体12を配置したこと以外は、実験例1と同じ条件で1本のシリコン単結晶10を製造した。
図8(C)に示すように、切欠部122Aが実験例1の位置から左回りに270°回転した方向に位置するように(切欠部の配置角度270°)、熱遮蔽体12を配置したこと以外は、実験例1と同じ条件で1本のシリコン単結晶10を製造した。
実験例1~3で製造したシリコン単結晶10の直胴部から複数のウェーハを取得し、当該ウェーハの酸素濃度(ASTM F121-1979)を測定した。酸素濃度の測定に、FTIR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy:フーリエ変換赤外分光法)を用いた。
固化率で表した測定位置と酸素濃度との関係を図9に示す。なお、固化率とは、最初に坩堝に貯留されたシリコン融液の初期チャージ重量に対するシリコン単結晶の引上げ重量の割合をいう。
実験例2の酸素濃度が最も高かった理由は、シリコン融液9の低酸素濃度領域9Bがシリコン単結晶10に接近する流れに対して、切欠部122Aにより形成された流量および流速が大きい不活性ガスの流れが逆行しており、シリコン単結晶10が低酸素濃度領域9Bを取り込みやすくなったためと推定できる。
一方、実験例3の酸素濃度が最も低かった理由は、実験例2とは逆の現象によって、シリコン単結晶10が低酸素濃度領域9Bを取り込みにくくなったためと推定できる。
また、実験例1の酸素濃度が実験例1,2の間の値であった理由は、低酸素濃度領域9Bがシリコン単結晶10に接近する流れと、切欠部122Aにより形成された不活性ガスの流れとが直交しているため、シリコン単結晶10への低酸素濃度領域9Bの取り込みやすさが実験例2と実験例3との間の状態となったためと推定できる。
Claims (5)
- チャンバと、シリコン融液を収容する石英坩堝と、育成中のシリコン単結晶を囲むように前記石英坩堝の上方に配置された熱遮蔽体とを備えた単結晶引き上げ装置を用い、前記石英坩堝内に不活性ガスを流しつつ、前記シリコン融液に水平磁場を印加して、前記シリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法であって、
前記熱遮蔽体の下端部と前記シリコン融液表面との間を流れる不活性ガスの流れに、前記単結晶引き上げ装置の引き上げ軸を含みかつ前記水平磁場の印加方向と平行な第2の基準平面に対して非面対称なガス流動分布が形成されるように、前記チャンバ内の状態を調整する状態調整工程と、
前記水平磁場を印加していない状態で、前記シリコン融液を生成する融液生成工程と、
前記シリコン融液に前記水平磁場を印加することで、前記シリコン融液内の前記水平磁場の印加方向に直交する第1の基準平面における対流の方向を、前記水平磁場の中心の磁力線を軸として右回りまたは左回りの方向に固定する対流固定工程と、
前記対流の方向が前記右回りまたは左回りの方向に固定され、かつ、前記非面対称なガス流動分布が形成された状態で、前記シリコン単結晶を引き上げる育成工程とを備え、
前記対流固定工程において、予め準備しておいた前記ガス流動分布と、前記シリコン融液の対流の方向と、前記シリコン単結晶の酸素濃度との関係に基づいて、前記対流の方向を前記シリコン単結晶の酸素濃度が所定の濃度となる方向に固定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記熱遮蔽体は、前記第2の基準平面に対して非面対称構造を有し、
前記非面対称なガス流動分布は、前記熱遮蔽体の配置状態が調整されることによって形成されることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記熱遮蔽体は、当該熱遮蔽体の一部に切欠部が形成された非面対称構造を有することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記熱遮蔽体は、当該熱遮蔽体の下端から前記シリコン融液表面までの距離が一部で異なるように形成された非面対称構造を有することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項3または請求項4に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記熱遮蔽体の配置状態の調整は、前記非面対称構造を有する熱遮蔽体を、その中心軸で回転させることによって行われることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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