以下に、本発明の実施の形態に係る浴室空調装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は、本発明にかかる浴室空調装置を適用した浴室の断面図である。図1に示した例では、浴室空調装置3は浴室1の天面に設置されている。浴室1には浴槽2が設置されている。
浴室空調装置3は、冷房運転、暖房運転、送風運転および換気運転ができるようになっており、内部にヒータ5および送風ファン6を備えている。浴室空調装置3は、浴室1の天井裏側に設置され、浴室1の天面と接する面31には、吸い込み口7および吹き出し口8が設けられている。浴室1の天面には、浴室空調装置3の吸い込み口7および吹き出し口8が接する位置を含む一定の範囲に穴が設けられており、浴室空調装置3が運転を行うと、浴室1内の空気が吸い込み口7から浴室空調装置3の内部に吸い込まれ、吹き出し口8から吹出されるように構成されている。浴室空調装置3の面31には、さらに、浴室1内の空気温度を検知する温度センサ10と、浴室1内の壁面、浴槽2および床面の表面温度を検知する赤外線センサ4とが設けられている。なお、赤外線センサ4および温度センサ10の一方または両方は、浴室空調装置3の本体と別構成とされていてもよい。すなわち、赤外線センサ4および温度センサ10の一方または両方は、面31ではなく浴室1内に設けられ、浴室空調装置3と電気的に接続される構成であってもよい。浴室1の天井裏側には、浴室空調装置3と接続される換気ダクト9が設けられており、浴室空調装置3は外と連通している。
ヒータ5は、シーズヒータ、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ等が使用され、電気入力により加熱される。ヒータ5は、1つではなく、複数個搭載されてもよい。送風ファン6は、シロッコファン、ラインフローファン、クロスフローファン、ターボファン、軸流ファン等が使用される。
浴室空調装置3は、暖房運転または送風運転を行う場合、送風ファン6が稼働すると、浴室1内の空気を吸い込み口7から吸い込み、吸い込んだ空気を、ヒータ5が設けられた風路を通過させた後、吹き出し口8から浴室1内に戻す。この動作をヒータ5の駆動中に行えば、空気がヒータ5の周囲を通過する際に加熱され、加熱後の空気が浴室1内に戻る暖房運転となる。ヒータ5を駆動させずに送風ファン6を稼働させると送風運転となる。また、浴室空調装置3は、換気運転を行う場合、送風ファン6が稼働すると、浴室1内の空気を吸い込み口7から吸い込み、吸い込んだ空気を換気ダクト9に流す。換気運転の場合、ヒータ5は駆動させない。なお、ヒータ5を熱交換器に置き換え、浴室空調装置3が暖房および冷房を可能としてもよい。
図2は、本発明にかかる浴室空調装置3を構成する赤外線センサ4の一例を示す図である。浴室空調装置3を構成する赤外線センサ4は、縦方向に並べた複数の受光素子を左右方向に動かしてスキャニングする機能を備えているものとする。赤外線センサ4は、表面温度検知部であり、複数の熱画像をスキャニングによって取得することで、予め決められた範囲に存在する物体の表面温度を非接触で検知することができる。ここでは、浴室1の全体を表面温度の検出対象範囲とする。すなわち、赤外線センサ4は、浴室1内の壁面、浴槽2の表面、床面、窓等の表面温度を検知する。赤外線センサ4は、浴槽2にお湯が入った場合、お湯の温度も検知できる。また、赤外線センサ4は、体感温度を検知する体感温度センサとしても機能する。また、浴室空調装置3は、赤外線センサ4が検知した表面温度を解析することで、背景との温度差から人体の存在有無、人体の肌の露出部と非露出部とを検知することができる。ここで、赤外線センサは、ある決められた領域の検出に用いられる画素の数が多いほど検出精度が高い。例えば、赤外線センサ4が、必要な検出精度を満足できる数の画素を有する構成の場合、浴室空調装置3は、浴室1内の壁面、床、浴槽2に張られたお湯、人体などの表面温度を高精度に検出することが可能となる。
図2に示すように、赤外線センサ4は、金属缶内部に8個の受光素子(図示せず)を縦方向に一列に配列している。金属缶の上面には、8個の受光素子に赤外線を通すためのレンズ製の窓(図示せず)が設けられている。各受光素子の配光視野角11は、縦方向が7度、横方向が8度とする。なお、図2に示した例では、各受光素子の配光視野角11を、縦方向7度、横方向8度としているが、これに限定されるものではない。赤外線センサ4を構成する受光素子の数は、各受光素子の配光視野角11および表面温度の検出対象範囲の広さなどに応じて決まる。赤外線センサ4を構成する受光素子の総数は、例えば、1個の受光素子の縦方向の配光視野角と受光素子の総数との積が一定になるように決定すればよい。例えば、図2に示した赤外線センサ4の代わりに、縦方向の配光視野角が8度の受光素子を縦方向に7個並べた構成の赤外線センサを使用してもよい。
赤外線センサ4の受光素子の配列は、ステッピングモーター(図示せず)により、左右方向に予め決められた一定の角度範囲で回転駆動させられる。具体的には、赤外線センサ4は、受光素子の配列を、浴室1の温度検出対象範囲を左右に走査し、温度検出対象の温度を検出する。
浴室空調装置3が浴室1の壁および床の熱画像データを取得する動作について説明する。浴室空調装置3は、浴室1の壁および床の熱画像データを取得する場合、赤外線センサ4をステッピングモーターにより左右方向に動かし、赤外線センサ4の各受光素子の受光面の方向を変化させる。浴室空調装置3は、受光素子の受光面の方向の変化量が一定の値、例えば、5度に達すると、赤外線センサ4を予め定められた時間だけ停止させる。赤外線センサ4を停止させる時間は、0.1~0.2秒とするが、この時間の長さは赤外線センサ4の性能などを考慮して決定される。また、赤外線センサ4を停止させるまでの間の受光素子の受光面の方向の変化量は、1つの受光素子の横方向の配光視野角よりも少ない値とする。浴室空調装置3は、赤外線センサ4を停止させた後、8個の受光素子による検出結果である熱画像データを赤外線センサ4から取り込む。浴室空調装置3は、赤外線センサ4から熱画像データの取り込みが終了すると、再びステッピングモーターを駆動して赤外線センサ4の各受光素子の受光面の方向を一定量変化させた後、停止させる。そして、浴室空調装置3は、熱画像データを再び取り込む。以下、同様の動作を繰り返すことにより、浴室空調装置3は、左右方向の90~100箇所の熱画像データを取り込む。浴室空調装置3は、取り込んだ熱画像データを合成することにより、検出対象範囲全体の熱画像データを取得する。
図3は、本発明にかかる浴室空調装置3の構成例を示す図である。浴室空調装置3は、上述した赤外線センサ4、ヒータ5、送風ファン6および温度センサ10と、ヒータ5および送風ファン6を制御する制御装置100とを備える。
制御装置100は、断熱状態判定部12、湯温判定部14、生体検知部16、空調制御部18、制御情報記憶部19、送風ファン制御部20およびヒータ制御部21を備える。
ここで、制御装置100のハードウェア構成について説明する。制御装置100は、例えば、図4に示したプロセッサ101およびメモリ102により実現される。プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSPともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどである。制御装置100の断熱状態判定部12、湯温判定部14、生体検知部16、空調制御部18、送風ファン制御部20およびヒータ制御部21は、それぞれの処理部として動作するためのプログラムをプロセッサ101がメモリ102から読み出して実行することにより実現される。制御情報記憶部19はメモリ102により実現される。
図3の説明に戻り、断熱状態判定部12は、赤外線センサ4から出力される熱画像データに基づいて、浴室空調装置3が設置されている浴室1の断熱状態を判定する。浴室1の断熱状態は、浴室1の外部の温度が浴室1内の温度にどの程度の影響を与えるかを表す。断熱状態が良好、すなわち、浴室1内の温度が外部の温度から受ける影響が少ない場合、効率的に空気調和を行うことができる。例えば、暖房を行い浴室1内の温度を外部の温度よりも高める場合、浴室1内から外部へ逃げる熱量が少ないため、ヒータ5の出力を上げなくても、浴室1内の温度を目標温度に到達させることができる。一方、断熱状態が良好ではない場合、暖房により浴室1内の温度を目標温度まで上げるためには、断熱状態が良好な場合よりもヒータ5の出力を高めて暖房を行う、または、断熱状態が良好な場合と同じ出力で長時間暖房を行う必要がある。そのため、浴室空調装置3は、浴室1の断熱状態を考慮して、暖房運転を行う場合の暖房出力すなわちヒータ5の出力を決定する。断熱状態が良好な浴室1は、省エネルギー性能が高いといえる。暖房運転の場合について説明したが、ヒータ5を熱交換器に置き換えた構成の浴室空調装置が冷房運転を行う場合も同様である。浴室空調装置は、浴室1の断熱状態に応じた出力で冷房を行う。
上述したように、赤外線センサ4から出力される熱画像データは、浴室1の全体を表面温度の検出対象範囲に設定して取得したデータであるため、浴室1内の壁面、床、浴槽2、人体などの表面温度の情報が含まれる。断熱状態判定部12は、熱画像データに含まれている浴室1内の壁面の温度の情報と、テーブル13に登録されている情報とに基づいて、浴室1の断熱状態を判定する。
ここで、住宅には、断熱されていないものと断熱が施されているものとが存在し、また、断熱が施されているものは、建築された時期ごとに異なる断熱基準を満たすように建築されている。建築された時期が遅いほど断熱基準のレベルすなわち断熱性能は高く、省エネルギー性能も高い。既存の住宅に適用されている断熱基準は3段階存在しており、断熱が施されていないものも含めると4段階の断熱性能が存在する。このような事情を考慮し、浴室空調装置3は、断熱状態判定部12を備え、浴室1の断熱状態を考慮した出力で空気調和を行うようにしている。断熱状態判定部12は、少なくとも2段階で断熱状態を判定する。3段階または4段階で断熱状態を判定するように断熱状態判定部12を構成しても構わない。
湯温判定部14は、赤外線センサ4から出力される熱画像データに基づいて、浴槽2にお湯が張られているか否かを判定する。湯温判定部14は、熱画像データに含まれている浴槽2の表面温度と温度しきい値15とを比較することにより、浴槽2にお湯が張られているか否かを判定する。すなわち、湯温判定部14は、浴槽にお湯が張られているか否かを判定する浴槽状態判定部である。
生体検知部16は、赤外線センサ4から出力される熱画像データに基づいて、浴室1内に入浴者が存在するか否かを判定する。生体検知部16は、テーブル17に登録されている情報を使用して熱画像データの温度分布状態を解析することにより、人体の有無を判定し、人体を検出した場合には、さらに、検出した人体の肌の露出部または非露出部の面積に基づいて、入浴者を検出したか否かを判定する。
空調制御部18は、温度センサ10が検出した浴室1内の温度と、断熱状態判定部12による判定結果と、湯温判定部14による判定結果と、生体検知部16による判定結果と、制御情報記憶部19が保持している制御情報とに基づいて、送風ファン制御部20およびヒータ制御部21に対する指令値を生成する。制御情報記憶部19が保持している制御情報には、浴室1の目標温度の情報などが含まれている。空調制御部18は、ヒータ5の出力を表す指令値を生成してヒータ制御部21へ出力し、送風ファン6の出力を表す指令値を生成して送風ファン制御部20へ出力する。
送風ファン制御部20は、空調制御部18から入力される指令値に従い、送風ファン6を制御する。送風ファン制御部20は、送風ファン6が有するファンモータ(図示せず)に流す電流を制御することにより、送風ファン6の回転数を変化させて送風量を調整する。
ヒータ制御部21は、空調制御部18から入力される指令値に従い、ヒータ5を制御する。ヒータ制御部21は、ヒータ5に流す電流を制御することによりヒータ5の出力すなわち発熱量を調整する。
なお、空調制御部18、送風ファン制御部20およびヒータ制御部21は、送風ファン6およびヒータ5とともに空調部30を構成する。
次に、浴室空調装置3による浴室1内の空気調和動作について説明する。ここでは、まず、空気調和を行う際に必要な、浴室1の断熱状態を判定する動作について説明し、その後に、空気調和動作を説明する。図5は、浴室空調装置3が浴室1の断熱状態を判定する動作の一例を示すフローチャートである。浴室1の断熱状態は変化しないため、浴室空調装置3は、設置された後に少なくとも1回、図5に示した動作を実行すればよい。図5に示した動作は、例えば、浴室空調装置3が設置された後、最初の運転開始操作が行われたときに実行する。
浴室空調装置3は、浴室1の断熱状態を判定する動作を開始すると、まず、暖房を開始する(ステップS11)。このステップS11では、空調制御部18が、送風ファン制御部20およびヒータ制御部21に対して動作開始を指示し、送風ファン制御部20が送風ファン6を稼働させるとともに、ヒータ制御部21がヒータ5を稼働させる。ここでの送風ファン6およびヒータ5の出力は予め定められている固定の出力とする。
浴室空調装置3は、次に、浴室1内の壁面の温度を測定する(ステップS12)。このステップS12で測定した温度をT1とする。ステップS12では、赤外線センサ4が、浴室1内の床、壁面、浴槽2などの各部の表面温度を検知し、検知結果を熱画像データとして出力し、断熱状態判定部12が、赤外線センサ4から出力された熱画像データを解析して浴室1内の壁面の温度T1を求め、これを記憶する。
浴室空調装置3は、次に、測定周期が経過するまで、測定周期が経過したか否かを監視し(ステップS13:No)、測定周期が経過した場合(ステップS13:Yes)、浴室1内の壁面の温度を測定する(ステップS14)。このステップS14で測定した温度をT2とする。ステップS14は、上記のステップS12と同様の処理である。
浴室空調装置3は、次に、予め決められた一定時間が経過したか否か、すなわち、浴室1の断熱状態を判定する動作を開始してから一定時間が経過したか否かを確認し(ステップS15)、一定時間が経過していない場合(ステップS15:No)、ステップS13に戻る。なお、一定時間はステップS13で使用する測定周期よりも長くなるようにする。一定時間が経過した場合(ステップS15:Yes)、浴室空調装置3は、ステップS12で測定した温度T1と、ステップS14で測定した温度T2とに基づいて、浴室1の断熱状態を判定する(ステップS16)。ここでは、ステップS14が複数回実行されたものとし、ステップS14を実行するごとに測定した複数の温度T2を使用して浴室1の断熱状態を判定する。なお、ステップS15では浴室空調装置3が一定時間が経過したか否かを確認し、一定時間が経過した場合にステップS16を実行することとしたが、これに代えて、ステップS13およびS14の処理の実行回数が予め決められた一定回数に達したか否かを確認し、一定回数に達した場合にステップS16を実行するようにしてもよい。
ステップS16の処理は断熱状態判定部12が行う。また、ステップS16の結果、すなわち断熱状態の判定結果は制御情報記憶部19が記憶する。ステップS16において、断熱状態判定部12は、まず、ステップS12で測定した温度T1およびステップS14で測定した温度T2を用いて、時間の経過とともに壁面温度がどのように変化したかを表すグラフを作成する。断熱状態判定部12は、次に、作成したグラフとテーブル13に登録されているデータで表されるグラフとを比較することにより断熱状態を判定する。例えば、テーブル13には、想定される複数の断熱状態のそれぞれに対応する、時間に対する温度変化を表す複数のグラフ(以下、判定用グラフと呼ぶ)を表すデータを登録しておく。各断熱状態の判定用グラフを表すデータは、暖房を開始してからの経過時間とこれに対応する壁面温度の情報とで構成される。断熱状態判定部12は、温度T1およびT2に基づいて作成したグラフを、テーブル13に登録されているデータが表す複数の判定用グラフのそれぞれと比較し、温度変化のカーブが最も近い判定用グラフに対応する断熱状態が浴室1の断熱状態であると判定する。断熱状態判定部12は、例えば、作成したグラフと、各判定用グラフとを解析し、暖房を開始してから任意の時間が経過した時点の壁面温度を求め、作成したグラフから求めた壁面温度を各判定用グラフから求めた複数の壁面温度のそれぞれと比較する処理を、異なる複数の任意の時間について繰り返し行う。ただし、暖房開始時点の温度は一定ではないため、同じ時間が経過した時点の壁面温度は、暖房開始時点の温度を基準とした相対値とする。断熱状態判定部12は、作成したグラフから求めた壁面温度との差分の積算値が最も小さい判定用グラフに対応する断熱状態を浴室1の断熱状態とする。判定用グラフのデータは、断熱状態がそれぞれ異なる複数の浴室において、ステップS11で開始する暖房と同じヒータ出力および送風出力で暖房を行い、そのときの壁面温度を周期的に測定して記録するなどして、予め生成しておく。
なお、上記の測定周期が大きな値に設定され、ステップS12を実行してからステップS14を実行するまでの時間が十分に長い場合、ステップS14を繰り返すことなくステップS16を実行するようにしてもよい。この場合、ステップS16において、断熱状態判定部12は、例えば、温度T1および温度T2から温度変化の傾きすなわち時間あたりの温度の変化量を求め、時間あたりの温度の変化量を用いて浴室1の断熱状態を判定する、または、温度T2と温度T1の差分を求め、求めた差分を用いて浴室1の断熱状態を判定する。
図6は、浴室空調装置3による浴室1内の空気調和動作の一例を示すフローチャートである。浴室空調装置3は、リモコンなどから空気調和動作の開始の指示を受けると図6に示した動作を開始する。ここでの空気調和動作は、入浴時に浴室1内の温度を予め設定されている目標温度まで高める動作とする。
浴室空調装置3は、まず、赤外線センサ4により浴室1内の温度検知を行う(ステップS21)。具体的には、赤外線センサ4が、浴室1内の床、壁面、浴槽2などの各部の表面温度を検知し、検知結果を熱画像データとして出力する。
浴室空調装置3は、次に、浴槽2にお湯が存在するか否かを確認する(ステップS22)。具体的には、湯温判定部14が、赤外線センサ4から出力された熱画像データを解析して浴槽2の表面温度を特定し、浴槽2の表面温度が温度しきい値15よりも高ければ、浴槽2にお湯が存在する、すなわち、浴槽2にお湯が張られていると判断する。浴槽2にお湯が存在しない場合(ステップS22:No)、浴室空調装置3は、ステップS21に戻って温度検知を再度行う。
浴槽2にお湯が存在する場合(ステップS22:Yes)、浴室空調装置3は、赤外線センサ4により浴室1内の温度検知を行う(ステップS23)。このステップS23では上述したステップS21と同じ処理を行う。
浴室空調装置3は、次に、浴室1内に人が存在するか否かを確認する(ステップS24)。具体的には、生体検知部16が、赤外線センサ4から出力された熱画像データを解析し、人の体温と同程度の温度の範囲が存在していれば、人が存在すると判断する。生体検知部16は、たとえば、温度が36℃~38℃の範囲が存在する場合、人が存在すると判断する。生体検知部16は、複数の熱画像データを解析することにより、温度が36℃~38℃の範囲が移動したかどうかを確認し、移動を検出した場合に人が存在すると判断してもよい。この場合、生体検知部16は、たとえば、ステップS21で赤外線センサ4が出力した熱画像データとステップS23で赤外線センサ4が出力した熱画像データとを解析し、人の体温と同程度の温度の範囲が移動したか否かを判定する。複数の熱画像データを使用して判定を行う場合、人の検出精度を高めることができる。
人が存在する場合(ステップS24:Yes)、浴室空調装置3は、検出した人が着衣状態か否かを確認する(ステップS25)。この判定は生体検知部16が行う。例えば、生体検知部16は、赤外線センサ4から出力された熱画像データを解析して検出される、人の体温と同程度の温度の範囲に基づいて、ステップS24で検出した人が着衣状態か否かを判定する。着衣がある場合、着衣部分すなわち肌が露出されていない部分の温度と体温との差が大きくなる。そのため、生体検知部16は、人の体温と同程度の温度の範囲の面積がテーブル17に登録されている判定しきい値よりも小さければ着衣ありと判定する。
着衣なし、すなわち、ステップS24で検出した人が入浴しようとしている場合(ステップS25:No)、浴室空調装置3は、送風弱で暖房運転を行う、すなわち、送風量を少なくした状態での暖房運転を行う(ステップS26)。この場合、生体検知部16が、浴室1内に入浴者が存在することを空調制御部18に通知する。この通知を受けた空調制御部18は、送風ファン制御部20に対して、送風量を少なくした状態、すなわち回転数を少なくした状態で送風ファン6を運転させるよう指示し、ヒータ制御部21に対しては、浴室1の断熱状態に対応する出力でヒータ5を稼働させるよう指示する。送風ファン制御部20は、空調制御部18からの指示に従って送風ファン6を制御し、ヒータ制御部21は、空調制御部18からの指示に従ってヒータ5を制御する。このとき、空調制御部18は、制御情報記憶部19で記憶されている情報に従い、送風ファン制御部20に対する送風量の指示およびヒータ制御部21に対するヒータ5の出力の指示を行う。制御情報記憶部19は、浴室1内に入浴者が存在する場合の送風量の情報、浴室1内に入浴者が存在しない場合の送風量の情報、複数種類の断熱状態のそれぞれに対応するヒータ5の出力の情報、といった各種の情報を記憶しているものとする。なお、断熱性能が高い断熱状態の場合に使用するヒータ5の出力は、断熱性能が低い断熱状態の場合に使用するヒータ5の出力よりも低くなる。断熱状態に応じた出力でヒータ5を稼働させることにより、ある温度から空調動作を始めて目標温度に達するまでの所要時間の差が断熱状態の違いに起因して大きくなってしまうのを防止できる。
浴室1内に人が存在しない場合(ステップS24:No)、および、浴室1内に存在する人が着衣ありの場合(ステップS25:Yes)、浴室空調装置3は、送風強で暖房運転を行う、すなわち、送風量を多くした状態での暖房運転を行う(ステップS27)。この場合、生体検知部16が、浴室1内に入が存在しないこと、または、浴室1内に存在する人が入浴者ではないことを空調制御部18に通知する。この通知を受けた空調制御部18は、送風ファン制御部20に対して、送風量を多くした状態、すなわち回転数を多くした状態で送風ファン6を運転させるよう指示し、ヒータ制御部21に対しては、浴室1の断熱状態に対応する出力でヒータ5を稼働させるよう指示する。送風ファン制御部20は、空調制御部18からの指示に従って送風ファン6を制御し、ヒータ制御部21は、空調制御部18からの指示に従ってヒータ5を制御する。この場合のヒータ5の出力は、ステップS26に示した暖房運転を行う場合の出力と同じである。
なお、ステップS24とステップS25とに分けて説明を行ったが、ステップS24およびステップS25の処理は、浴室1内に入浴者が存在するか否かを判定する処理である。
上述したように、浴室空調装置3は、浴室1内に入浴者が存在する場合は送風量を少なくした状態で暖房を行い、浴室1内に入浴者が存在しない場合には送風量を多くした状態で暖房を行う。これは、着衣が無く肌の露出が多い入浴者の場合、肌にあたる風の量が増えると体感温度が下がるためである。送風量を少なくして体感温度が下がらないようにすることにより、入浴者の快適性を高めることができる。一方、浴室1内に入浴者が存在しない場合、送風量を多くすることでより多くの加熱された空気を浴室1内に循環させ、浴室1内の温度が目標温度である設定温度に到達するまでの所要時間を短縮化することができる。
浴室空調装置3は、ステップS26またはステップS27を実行すると、次に、浴室1内の温度が設定温度に到達したか否かを確認する(ステップS28)。このステップS28では、空調制御部18が、温度センサ10で検知された温度と、制御情報記憶部19で記憶されている設定温度とを比較し、浴室1内の温度が設定温度に到達したか否かを判定する。
浴室1内の温度が設定温度に到達していない場合(ステップS28:No)、ステップS23に戻る。浴室1内の温度が設定温度に到達している場合(ステップS28:Yes)、浴室空調装置3は、暖房運転を停止する(ステップS29)。浴室空調装置3は、暖房運転を停止後、暖房運転を再開する必要があるか否かを繰り返し確認し(ステップS30:No)、暖房運転を再開する必要性が生じた場合(ステップS30:Yes)、ステップS23に戻る。ステップS29およびステップS30は、ステップS28と同様に、空調制御部18が実行する処理である。ステップS29において、空調制御部18は、送風ファン制御部20に対して送風ファン6を停止させるよう指示するとともに、ヒータ制御部21に対してヒータ5を停止させるよう指示することにより、暖房動作を停止させる。ステップS30において、空調制御部18は、温度センサ10で検知された温度と制御情報記憶部19で記憶されている設定温度とを比較し、設定温度と温度センサ10で検知された温度の差が予め定められた値、例えば3℃よりも大きくなった場合、暖房運転を再開する必要があると判断する。
なお、本実施の形態では、浴槽2にお湯が存在するか否かを判定し、お湯が存在する場合に暖房運転を行うようにしたが、この判定処理については省略可能に構成してもよい。すなわち、お湯の有無を判定する機能を利用者が無効化できるようにしてもよい。浴槽2にお湯が存在するか否かによらず暖房運転を行う場合でも、浴室1内に入浴者が存在していれば送風を弱める制御を行うため、この制御を行わない場合と比較して快適性を高めることができる。
以上のように、本実施の形態にかかる浴室空調装置3は、設置された浴室1の断熱状態を判定する断熱状態判定部12と、浴室1内に入浴者が存在するか否かを判定する生体検知部16とを備え、断熱状態および入浴者の有無を考慮した空気調和動作を行うこととした。これにより、入浴者のヒートショックによる不快感を低減できる適切な空気調和を実現できる。また、浴室空調装置3は、浴槽2の状態を監視し、浴槽2にお湯が存在する場合に暖房動作を開始する。これにより、給湯機器による浴槽2への湯はり動作の開始に合わせて暖房動作を開始することができ、湯はり動作に合わせて浴室内の温度を所望の温度に制御する機能を簡易な構成で実現することができる。
また、本実施の形態にかかる浴室空調装置3は、上記の特許文献1に記載された発明のように複数の装置が連携して動作する必要が無いため、制御が複雑化することもない。さらに、本実施の形態にかかる浴室空調装置3は、他の装置と連携するための通信系統の設置工事が必要ないため、リフォーム等により既存の浴室へ設置することが容易である。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。