以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一又は相当部分には同一符号を付す。
明細書に表されている構成要素の形態は、あくまで例示であって、これらの記載に限定されるものではない。また、本発明は、本実施の形態及び図面で限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で本実施の形態及び図面に変更を加えることができるのはもちろんである。
本発明の実施の形態の動作を行うプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列に行われる処理であるが、必ずしも時系列に処理されなくても、並列的又は個別に実行される処理をも含んでも良い。
本発明の実施の形態は、単独で実施されてもよく、組み合わされて実施されてもよい。いずれの場合においても、下記で説明する有利な効果を奏することとなる。また、本発明の実施の形態で説明する各種具体的な設定例及びフラグ例は一例を示すだけであり、特にこれらに限定しない。
本発明の実施の形態において、システムとは、複数の装置で構成される装置全体又は複数の機能で構成される機能全体を表すものである。
(実施の形態1)
<空調装置1の構成>
図1に、本発明の実施の形態に係る空調装置1を示す。空調装置1は、空調対象の空間である室内空間71を空調する設備である。空調とは、空調対象の空間の空気の温度、湿度、清浄度、気流等を調整することであって、具体的には、暖房、冷房、除湿、加湿、空気清浄等である。
図1に示すように、空調装置1は、家屋3に設置される。家屋3は、一例として、いわゆる一般的な戸建て住宅の建物である。空調装置1は、例えばCO2(二酸化炭素)又はHFC(ハイドロフルオロカーボン)等を冷媒として用いたヒートポンプ式の空調設備である。空調装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを搭載しており、図示しない商用電源、発電設備又は蓄電設備等から電力を得て動作する。
図1に示すように、空調装置1は、家屋3の外側に設けられる室外機11と、家屋3の内側に設けられる室内機13と、ユーザによって操作されるリモートコントローラ55と、を備える。室外機11と室内機13とは、冷媒が流れる冷媒配管61と、各種信号が転送される通信線63と、を介して接続されている。空調装置1は、室内機13から空調空気、例えば、冷風を吹き出すことで室内空間71を冷房し、温風を吹き出すことで室内空間71を暖房する。
室外機11は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、膨張弁24と、室外送風機31と、室外機制御部51と、を備える。室内機13は、室内熱交換器25と、室内送風機33と、室内機制御部53と、を備える。冷媒配管61は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、膨張弁24と、室内熱交換器25と、を環状に接続している。これにより、冷凍サイクルが構成されている。
圧縮機21は、冷媒を圧縮して冷凍サイクルを循環させる。具体的に説明すると、圧縮機21は、低温且つ低圧の冷媒を圧縮し、高圧及び高温となった冷媒を四方弁22に吐出する。圧縮機21は、駆動周波数に応じて運転容量を変化させることができるインバータ回路を備える。運転容量とは、圧縮機21が単位時間当たりに冷媒を送り出す量である。圧縮機21は、室外機制御部51からの指示に従って駆動周波数を調整することによって運転容量を変更する。
四方弁22は、圧縮機21の吐出側に設置されている。四方弁22は、空調装置1の運転が冷房又は除湿運転であるか暖房運転であるかに応じて、冷媒配管61中の冷媒の流れる方向を切り換える。
室外熱交換器23は、冷媒配管61を流れる冷媒と、空調対象の空間の外である室外空間72の空気と、の間で熱交換を行う第1の熱交換器である。室外送風機31は、室外熱交換器23の傍に設けられており、室外空間72の空気を室外熱交換器23に送る第1の送風機である。室外送風機31は、送風動作を開始すると、室外機11の内部に負圧が生じて、室外空間72の空気を吸い込む。吸い込まれた空気は、室外熱交換器23に供給され、冷媒配管61を流れる冷媒により供給される冷温熱との間で熱交換された後、室外空間72に吹き出される。
膨張弁24は、室外熱交換器23と室内熱交換器25との間に設置されており、冷媒配管61を流れる冷媒を減圧して膨張させる。膨張弁24は、その開度が可変に制御可能な電子式膨張弁である。膨張弁24は、室外機制御部51からの指示に従って開度を変更して、冷媒の圧力を調整する。
室内熱交換器25は、冷媒配管61を流れる冷媒と、室内空間71の空気と、の間で熱交換を行う第2の熱交換器である。室内送風機33は、室内熱交換器25の傍に設けられており、室内空間71の空気を室内熱交換器25に送る第2の送風機である。室内送風機33は、送風動作を開始すると、室内機13の内部に負圧が生じて室内空間71の空気を吸い込む。吸い込まれた空気は、室内熱交換器25に供給され、冷媒配管61を流れる冷媒より供給される冷温熱との間で熱交換された後、室内空間71に吹き出される。
室内熱交換器25で熱交換された空気は、空調空気として室内空間71に供給される。これにより、室内空間71が冷暖房される。室内熱交換器25における冷媒と空気との熱交換量が大きいほど、空調装置1の空調能力は上がる。ここで、空調能力とは、空調装置1による空調の強さを示す指標である。以下、冷房時の空調能力を冷房能力と呼び、暖房時の空調能力を暖房能力と呼ぶ。
室外機11における圧縮機21、四方弁22、室外熱交換器23、膨張弁24及び室外送風機31、並びに、室内機13における室内熱交換器25及び室内送風機33を、合わせて空調部と呼ぶ。空調部は、室内空間71を空調する空調手段として機能する。
室内機13は、室温検知部41と、表面温度検知部43と、を更に備えている。室温検知部41は、測温抵抗体、サーミスタ、熱電対等の温度センサを備えており、室内空間71における空気温度、すなわち室温を検知する。室温検知部41は、室内熱交換器25の吸い込み口に設置されており、室内機13の吸込空気の温度を検知する。
表面温度検知部43は、焦電型、サーモパイル型等の赤外線センサを備えており、被検知体から放射される赤外線を検知することによって、被検知体の表面温度を検知する。表面温度検知部43は、室内空間71の壁、床等から放射される赤外線を検知することができる位置に設置され、壁、床等を含む周囲の物体の表面温度を検知する。
また、空調装置1は、図示を省略するが、室温検知部41及び表面温度検知部43以外の検知部を備えている。具体的に説明すると、空調装置1は、圧縮機21の吐出側に設置され、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検知する吐出側圧力検知部、圧縮機21の吸入側に設置され、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検知する吸入側圧力検知部、圧縮機21の吐出側に設置され、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検知する吐出側室温検知部、圧縮機21の吸入側に設置され、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検知する吸入側室温検知部、外気の温度を検知する外気温検知部等を備えている。
室温検知部41及び表面温度検知部43を含む検知部による検知結果は、室内機制御部53に供給される。室内機制御部53は、供給された検知結果を、通信線63を介して、室外機制御部51に供給する。
室外機制御部51は、室外機11の動作を制御する。図2に示すように、室外機制御部51は、制御部101と、記憶部102と、計時部103と、通信部104と、を備える。これら各部はバス109を介して接続されている。
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等ともいう。制御部101において、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、室外機制御部51を統括制御する。
記憶部102は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリであって、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部102は、制御部101が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータ、並びに、制御部101が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。また、記憶部102は、室温検知部41及び表面温度検知部43を含む検知部によって検知された検知情報を記憶している。記憶部102は、記憶手段として機能する。
計時部103は、RTC(Real Time Clock)を備えており、空調装置1の電源がオフの間も計時を継続する計時デバイスである。
通信部104は、通信線63を介して室内機制御部53及びリモートコントローラ55と通信するためのインタフェースである。通信部104は、ユーザから受け付けられた操作情報を、リモートコントローラ55から受信し、ユーザに報知するための報知情報をリモートコントローラ55に送信する。また、通信部104は、室内機13の運転指令を室内機制御部53に送信し、室内機13の状態を示す状態情報を室内機制御部53から受信する。
室内機制御部53は、いずれも図示しないが、CPU、ROM、RAM、通信インタフェース、及び、読み書き可能な不揮発性の半導体メモリを備える。室内機制御部53において、CPUがRAMをワークメモリとして用いながらROMに格納された制御プログラムを実行することにより、室内機13の動作を制御する。
室外機制御部51は、有線、無線又は他の通信媒体である通信線63によって室内機制御部53と接続されている。室外機制御部51は、室内機制御部53と通信線63を介して各種信号を授受することにより協調動作し、空調装置1全体を制御する。このように、室外機制御部51は、空調装置1を制御する制御装置として機能する。
室外機制御部51及び室内機制御部53は、室温検知部41、表面温度検知部43及び他の検知部の検知結果と、ユーザによって設定された空調装置1の設定情報と、に基づいて、空調装置1の運転を制御する。具体的に説明すると、室外機制御部51は、圧縮機21の駆動周波数、四方弁22の切り換え、室外送風機31の回転数、及び膨張弁24の開度を制御する。また、室内機制御部53は、室内送風機33の回転数を制御する。なお、室外機制御部51が室内送風機33の回転数を制御しても良いし、室内機制御部53が圧縮機21の駆動周波数、四方弁22の切り換え、室外送風機31の回転数、又は膨張弁24の開度を制御しても良い。このように、室外機制御部51及び室内機制御部53は、空調装置1に与えられた運転指令に応じて各種装置に各種動作指令を出力する。
室内空間71にはリモートコントローラ55が配置されている。リモートコントローラ55は、室内機13が備えている室内機制御部53と各種信号を送受信する。空調装置1のユーザは、リモートコントローラ55を操作することで、空調装置1に運転指令を入力する。運転指令として、例えば、運転と停止との切換指令、運転モード(冷房、暖房、除湿、加湿、保湿、空気清浄、送風等)の切換指令、目標温度の切換指令、目標湿度の切換指令、風量の切換指令、風向の切換指令、又はタイマーの切換指令等が挙げられる。空調装置1は、入力された運転指令に従って運転を開始する。
<冷房運転における冷凍サイクル>
第1に、「冷房」の運転モードについて説明する。室外機制御部51は、「冷房」の運転指令を受信すると、圧縮機21から吐出された冷媒が室外熱交換器23に流入するように四方弁22の流路を切り換え、膨張弁24を開き、そして圧縮機21と室外送風機31とを駆動させる。また、室内機制御部53は、「冷房」の運転指令を受信すると、室内送風機33を駆動させる。
圧縮機21が駆動すると、圧縮機21から吐出された冷媒は、四方弁22を通過して室外熱交換器23へと流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外空間72から吸い込まれた室外空気と熱交換して凝縮液化し、膨張弁24へと流入する。膨張弁24に流入した冷媒は、膨張弁24で減圧された後、室内熱交換器25へと流入する。室内熱交換器25に流入した冷媒は、室内空間71から吸い込まれた室内空気と熱交換して蒸発した後、四方弁22を通過して、再び圧縮機21に吸入される。このようにして冷媒が流れることで、室内空間71から吸い込まれた室内空気が室内熱交換器25で冷却される。室内熱交換器25における冷媒と室内空気との熱交換量を、冷房能力と呼ぶ。
<暖房運転における冷凍サイクル>
第2に、「暖房」の運転モードについて説明する。室外機制御部51は、「暖房」の運転指令を受信すると、圧縮機21から吐出された冷媒が室内熱交換器25に流入するように四方弁22の流路を切り換え、膨張弁24を開き、そして圧縮機21と室外送風機31とを駆動させる。また、室内機制御部53は、「暖房」の運転指令を受信すると、室内送風機33を駆動させる。
圧縮機21が駆動すると、圧縮機21から吐出された冷媒は、四方弁22を通過して室内熱交換器25へと流入する。室内熱交換器25に流入した冷媒は、室内空間71から吸い込まれた室内空気と熱交換して凝縮液化し、膨張弁24へと流入する。膨張弁24に流入した冷媒は、膨張弁24で減圧された後、室外熱交換器23へと流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外空間72から吸い込まれた室外空気と熱交換して蒸発した後、四方弁22を通過して、再び圧縮機21に吸入される。このようにして冷媒が流れることで、室内空間71から吸い込まれた室内空気が室内熱交換器25で加熱される。室内熱交換器25における冷媒と室内空気との熱交換量を、暖房能力と呼ぶ。
次に、図3を参照して、空調装置1の機能的な構成について説明する。図3に示すように、空調装置1の室外機制御部51は、機能的に、空気温度取得部310と、表面温度取得部320と、空調制御部330と、設定部340と、を備える。
これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、室外機制御部51のROM又は記憶部102に格納される。そして、室外機制御部51の制御部101において、CPUが、ROM又は記憶部102に記憶されたプログラムを実行することによって、空調装置1の各機能を実現する。
空気温度取得部310は、室内空間71における空気温度を取得する。室内空間71における空気温度とは、室内空間71の内部に存在する空気の温度である。空気温度取得部310は、室内空間71における空気温度として、室内機13に設置された室温検知部41によって検知された室温を取得する。
室温検知部41は、検知した室温を示す温度情報を、予め定められた周期で定期的に室外機制御部51に送信する。或いは、空気温度取得部310が必要に応じて室温検知部41に要求を送信し、室温検知部41がこの要求に応答する方式で、温度情報を送信しても良い。このようにして、空気温度取得部310は、室内空間71における空気温度を示す空気温度情報を、室内機制御部53と通信線63とを介して室温検知部41から取得する。空気温度取得部310は、制御部101が通信部104と協働することによって実現される。空気温度取得部310は、空気温度取得手段として機能する。
表面温度取得部320は、室内空間71における躯体の表面温度を取得する。室内空間71における躯体とは、室内空間71の壁、床、天井、柱等の構造物である。表面温度取得部320は、室内空間71における躯体の表面温度として、表面温度検知部43によって検知された表面温度を取得する。
表面温度検知部43は、検知した温度を示す温度情報を、予め定められた周期で定期的に室外機制御部51に送信する。或いは、表面温度取得部320が必要に応じて表面温度検知部43に要求を送信し、表面温度検知部43がこの要求に応答する方式で、温度情報を送信しても良い。このようにして、表面温度取得部320は、室内空間71における躯体の表面温度を示す表面温度情報を、室内機制御部53と通信線63とを介して表面温度検知部43から取得する。表面温度取得部320は、制御部101が通信部104と協働することによって実現される。表面温度取得部320は、表面温度取得手段として機能する。
空調制御部330は、室内空間71の空調を制御する。空調制御部330は、通信部104を介して室内機制御部53と通信し、室内機制御部53と協働することによって、空調手段に空調させる。具体的に説明すると、空調制御部330は、運転モードに応じて四方弁22の流路を切り換え、膨張弁24の開度を調整し、圧縮機21、室外送風機31及び室内送風機33を駆動させる。空調制御部330は、制御部101が計時部103及び通信部104と協働することによって実現される。空調制御部330は、空調制御手段として機能する。
空調制御部330は、空気温度取得部310によって取得された室温が運転停止温度Toffに達すると、圧縮機21の運転を停止させ、空気温度取得部310によって取得された室温が運転開始温度Tonに達すると、圧縮機21の運転を開始させる。運転停止温度Toffは、空調の効きすぎを防ぐために設定された、圧縮機21が運転を停止すべき温度である。運転開始温度Tonは、運転を停止している圧縮機21が運転を再び開始すべき温度である。圧縮機21の運転の停止及び開始は、それぞれ「サーモオフ」及び「サーモオン」と呼ぶ。また、運転停止温度Toff及び運転開始温度Tonは、それぞれ「サーモオフ点Toff」及び「サーモオン点Ton」と呼ぶ。
室温が運転停止温度Toffに達するとは、室温が運転停止温度Toffよりも低い温度から運転停止温度Toff以上にまで上昇する、又は、室温が運転停止温度Toffよりも高い温度から運転停止温度Toff以下にまで低下することを意味する。同様に、室温が運転開始温度Tonに達するとは、室温が運転開始温度Tonよりも低い温度から運転開始温度Ton以上にまで上昇する、又は、室温が運転開始温度Tonよりも高い温度から運転開始温度Ton以下にまで低下することを意味する。
図4に、暖房時にサーモオフとサーモオンとを実施した場合における室温の変化、及び圧縮機21の回転数の変化を示す。圧縮機21の回転数とは、圧縮機21の駆動周波数、すなわち圧縮機21に備えられた電動機の単位時間当たりの回転数である。暖房時において、サーモオフ点Toffは、サーモオン点Tonよりも高い温度に設定され、サーモオン点Tonは、空調装置1による空調によって達成すべき室内空間71の目標温度である設定温度に設定される。
図4に示すように、暖房運転の最中、室温は徐々に上昇する。室温がサーモオフ点Toffまで上昇すると、空調制御部330は、圧縮機21の回転数を0に変更して、圧縮機21の運転を停止させる。圧縮機21が運転を停止すると、室温は徐々に低下する。室温がサーモオン点Tonまで低下すると、空調制御部330は、圧縮機21の回転数を設定温度に応じた値に変更して、圧縮機21の運転を開始させる。圧縮機21が運転を開始すると、室温は再び徐々に上昇する。このように、空調制御部330は、空気温度取得部310によって取得された室温を参照して圧縮機21の運転の停止と開始とを繰り返すことによって、室温を設定温度以上の温度に調節する。
なお、冷房時には、サーモオフ点Toffはサーモオン点Tonよりも低い温度に設定され、室温は、図4に示した暖房時の変化とは高低が逆に変化する。具体的に説明すると、冷房運転の最中、室温は徐々に低下する。室温がサーモオフ点Toffまで低下すると、空調制御部330は、圧縮機21の回転数を0に変更して、圧縮機21の運転を停止させる。圧縮機21が運転を停止すると、室温は徐々に上昇する。室温がサーモオン点Tonまで上昇すると、空調制御部330は、圧縮機21の回転数を設定温度に応じた値に変更して、圧縮機21の運転を開始させる。圧縮機21が運転を開始すると、室温は再び徐々に低下する。このように、空調制御部330は、空気温度取得部310によって取得された室温を参照して圧縮機21の運転の停止と開始とを繰り返すことによって、室温を設定温度以下の温度に調節する。
より詳細に説明すると、空調制御部330は、空気温度取得部310によって取得された室温がサーモオン点Tonに達し、且つ、圧縮機21の運転を停止させてから規定時間が経過した場合に、圧縮機21の運転を開始させる。規定時間とは、圧縮機21が運転を停止してから再び運転を開始するまでに必要な時間であって、圧縮機21を保護する目的で設定された時間である。圧縮機21が運転を停止した直後は、冷凍サイクルにおける圧力差が大きいため、電動機は回転することができない。このような状態で圧縮機21を稼働させようとすると、故障につながる。そのため、圧縮機21は、運転を停止した直後に運転を開始することが禁止されている。
規定時間は、圧縮機21が運転を停止した後において、圧縮機21が運転を開始することが禁止された禁止時間である。圧縮機21は、運転を停止した直後は運転を再開することはできず、運転を再開するには、運転を停止してから禁止時間が経過するまで待機しなければならない。規定時間は、例えば、数10秒から数分の時間に設定される。
このような禁止時間が規定されているため、空調制御部330は、室温がサーモオン点Tonに達していても、圧縮機21の運転を停止させてから禁止時間が経過するまでの間は、圧縮機21の運転を開始させない。そのため、周囲の環境によっては、圧縮機21が運転を停止してから禁止時間が経過して運転を再開可能になるまでの間に室温が変化して、室内空間71における快適性が低下することがある。
<室温計算のパラメータ>
圧縮機21が運転を停止した後の室温の変化は、周囲の環境に依存する。ここで、室温に影響を与える要因について説明する。
図5に、家屋3における熱移動の様子を示す。図5に示すように、室内空間71と室外空間72との間では、家屋3の壁、窓、隙間、換気設備等を介して熱が移動する。このような熱の移動の結果、室内空間71における室温は、様々な要因によって変動する。概略的には、室内空間71における室温は、室内空間71の躯体温度と、室内空間71の内部発熱量と、室外空間72から室内空間71への空気流入熱と、室内空間71の壁及び床の面積と、時間と、の関数として、下記(1)式のように定められる。
室温=関数(躯体温度,内部発熱量,空気流入熱,壁及び床の面積,時間)…(1)
室内空間71の躯体温度は、室内空間71の壁、床、天井、柱等の躯体の表面温度であって、表面温度取得部320によって取得される。躯体温度は、家屋3の外壁の温度と、室内空間71の窓を通過した日射と、室内空間71の断熱性能と、時間と、の関数として、下記(2)式のように定められる。
躯体温度=関数(外壁の温度,窓を通過した日射,断熱性能,時間)…(2)
外壁の温度は、日射と外気温と時間との関数である。言い換えると、室内空間71の躯体は、家屋3の外壁を介して日射と外気とから熱を受ける。また、室内空間71の躯体は、窓を通過した日射によって直接的に熱を受ける。窓を通過した日射は、窓の性能と窓の面積との関数である。窓の性能は、窓から室内空間71への日射の入りやすさを示す日射熱取得率によって見積もられる。日射取得率として、日射取得係数であるμ値、又は外皮平均日射取得率であるηA値を用いることができる。室内空間71の断熱性能は、熱の伝えやすさを示す熱貫流率によって見積もられる。熱貫流率として、外皮平均熱貫流率であるUA値、又は熱損失係数であるQ値を用いることができる。
室内空間71の内部発熱量は、室内空間71の内部に存在する人間、照明、ヒータ等から発生する熱量である。内部発熱量は、室内空間71に居る人間の数である在室人数と、室内空間71に設置された照明、家電機器及び燃焼器具からの発熱量と、の関数として、下記(3)式のように定められる。
内部発熱量=関数(在室人数,照明,家電機器,燃焼器具)…(3)
室外空間72から室内空間71への空気流入熱は、家屋3の窓、扉、隙間、換気設備等を介して室外空間72から室内空間71に流入する空気の熱である。空気流入熱は、室外空間72における風量と、外気温と、室内空間71に隣接する部屋の室温と、室内空間71の気密性を示す隙間相当面積と、の関数として、下記(4)式のように定められる。隙間相当面積は、C値とも呼ぶ。
空気流入熱=関数(風量,外気温,隣接する部屋の室温,隙間相当面積)…(4)
このように、室内空間71における室温は、様々なパラメータの影響を受けて変化するが、短期的には、躯体温度の影響を最も受けて変化する。例として、図6に、暖房時に圧縮機21の運転を停止させた後における、躯体温度による室温の変化の違いを示す。図6において、実線は、室内空間71内の躯体温度が相対的に高い場合における室温の変化を表しており、破線は、室内空間71内の躯体温度が相対的に低い場合における室温の変化を表している。
図6に示すように、室温は、サーモオフ点Toffにまで上昇して圧縮機21が運転を停止した後、躯体温度が相対的に低い場合には、躯体温度が相対的に高い場合に比べて、大きく低下する。これは、暖房時において、サーモオフ直後の室温は、躯体温度と同程度になるまで急速に低下し、その後、躯体温度と同程度で緩やかに低下していくからである。そのため、図6に示すように同じサーモオフ点Toffで圧縮機21の運転を停止したと仮定すると、躯体温度が相対的に低い場合には、躯体温度が相対的に高い場合に比べて、禁止時間time0の最中に室温がサーモオン点Tonを超えて変化する可能性が高くなる。室温がサーモオン点Tonを超えて変化すると、暖房時には寒くなりすぎ、また冷房時には暑くなりすぎて、室内空間71の快適性が低下する。
このように、禁止時間time0の最中に室温がサーモオン点Tonを超えて変化することを抑制するため、図3に示した設定部340は、躯体温度に応じて異なるサーモオフ点Toffを設定する。具体的に説明すると、設定部340は、表面温度取得部320によって取得された躯体の表面温度である躯体温度を参照して、躯体温度が低いほど、サーモオフ点Toffを高い温度に設定する。言い換えると、設定部340は、サーモオフ点Toffを、躯体温度が第1温度である場合には、躯体温度が第1温度よりも高い第2温度である場合よりも、高い温度に設定する。設定部340は、制御部101によって実現される。設定部340は、設定手段として機能する。
より詳細に説明すると、設定部340は、表面温度取得部320によって取得された躯体温度に基づいて、圧縮機21が運転を停止してから圧縮機21が運転を再開するまでに必要な禁止時間が経過するまでにおける室温の変化量を予測する。一般的に、規定時間における室温の変化量は、室温と躯体温度との差が大きいほど大きくなる。例えば暖房時には、躯体温度が低いほど室温の変化量は大きくなり、冷房時には、躯体温度が高いほど室温の変化量は大きくなる。
設定部340は、圧縮機21が運転を停止してから禁止時間が経過するまでにおける室温の変化量を、上記(1)式を用いて予測する。上記(1)式のように、室温は、躯体温度と時間とを含む複数のパラメータによって定められる。上記(1)式に含まれる内部発熱量、空気流入熱、及び壁及び床の面積のパラメータは、予め規定された値を用いても良いし、センサによって測定された値を用いていても良い。
禁止時間における室温の変化量を予測すると、設定部340は、予測した変化量に基づいて、サーモオフ点Toffを設定する。具体的に説明すると、設定部340は、サーモオフ点Toffを、設定温度であるサーモオン点Tonに予測した変化量を加えた又は減じた温度に設定する。暖房時には、設定部340は、サーモオフ点Toffを、サーモオン点Tonに予測した室温の変化量を加えた温度に設定する。これにより、室温は、サーモオフ後の禁止時間が終了したタイミングでサーモオン点Tonにまで低下する。これに対して、冷房時には、設定部340は、サーモオフ点Toffを、サーモオン点Tonに予測した室温の変化量を減じた温度に設定する。これにより、室温は、サーモオフ後の禁止時間が終了したタイミングでサーモオン点Tonにまで上昇する。
空調制御部330は、設定部340によって設定されたサーモオフ点Toffに従って、圧縮機21の運転を停止させる。図7及び図8に、それぞれ暖房時及び冷房時において、躯体温度が異なる場合における室温の変化を示す。図7及び図8において、破線は、室内空間71内の躯体温度が相対的に低い場合、具体的には躯体温度が第1温度である場合における室温の変化を表している。これに対して、実線は、室内空間71内の躯体温度が相対的に高い場合、具体的には躯体温度が第1温度よりも高い第2温度である場合における室温の変化を表している。
図7に示すように、暖房時には、設定部340は、サーモオフ点Toff1,Toff2を、サーモオン点Tonよりも高い温度に設定し、且つ、躯体温度が相対的に低い場合におけるサーモオフ点Toff1を、躯体温度が相対的に高い場合におけるサーモオフ点Toff2よりも高い温度に設定する。空調制御部330は、躯体温度が相対的に低い場合には、室温がサーモオフ点Toff1にまで上昇すると圧縮機21の運転を停止させ、躯体温度が相対的に高い場合には、室温がサーモオフ点Toff1よりも低いサーモオフ点Toff2にまで上昇すると圧縮機21の運転を停止させる。なお、サーモオフ点Toff1,Toff2を、それぞれ第1の運転停止温度及び第2の運転停止温度と呼ぶ。
サーモオフ後、室温は、躯体温度が低いほど大きく低下する。このとき、サーモオフ点Toff1,Toff2は、禁止時間time0における室温の変化量を予測して設定されているため、室温は、禁止時間が終わるタイミングで、設定温度であるサーモオン点Tonにまで低下する。室温がサーモオン点Tonにまで低下すると、空調制御部330は、圧縮機21の運転を開始させる。これにより、室温は再び上昇し始める。このように、躯体温度の高低に関わらず、室温は設定温度以上の温度に保たれる。
これに対して、冷房時には、設定部340は、図8に示すように、サーモオフ点Toff1,Toff2を、サーモオン点Tonよりも低い温度に設定し、且つ、躯体温度が相対的に低い場合におけるサーモオフ点Toff1を、躯体温度が相対的に高い場合におけるサーモオフ点Toff2よりも高い温度に設定する。空調制御部330は、躯体温度が相対的に低い場合には、室温がサーモオフ点Toff1にまで低下すると圧縮機21の運転を停止させ、躯体温度が相対的に高い場合には、室温がサーモオフ点Toff1よりも低いサーモオフ点Toff2にまで低下すると圧縮機21の運転を停止させる。
サーモオフ後、室温は、躯体温度が高いほど大きく上昇する。このとき、サーモオフ点Toff1,Toff2は、禁止時間time0における室温の変化量を予測して設定されているため、室温は、禁止時間が終わるタイミングで、設定温度であるサーモオン点Tonにまで上昇する。室温がサーモオン点Tonにまで上昇すると、空調制御部330は、圧縮機21の運転を開始させる。これにより、室温は再び低下し始める。このように、躯体温度の高低に関わらず、室温は設定温度以下の温度に保たれる。
以上のように構成される空調装置1において実行される空調制御処理の流れについて、図9に示すフローチャートを参照して、説明する。空調装置1の制御部101は、空調装置1が室内空間71を暖房又は冷房している際において、図9に示す空調制御処理を実行する。
図9に示す空調制御処理において、制御部101は、まず、表面温度検知部43によって検知された躯体温度に基づいて、サーモオフ後の禁止時間における室温の変化量を予測する(ステップS1)。禁止時間は、圧縮機21の保護のため、サーモオフの直後に圧縮機21が再起動しないように規定された時間である。制御部101は、圧縮機21の運転を停止した場合に、禁止時間において室温がどの程度変化するかを予測する。具体的に説明すると、制御部101は、暖房時には、躯体温度が低いほど室温の変化量が大きくなると予測し、冷房時には、躯体温度が高いほど室温の変化量が大きくなると予測する。
禁止時間における室温の変化量を予測すると、制御部101は、予測した室温の変化量に応じてサーモオフ点Toffを調整する(ステップS2)。具体的に説明すると、制御部101は、暖房時には、サーモオフ点Toffを、サーモオン点Tonに予測した室温の変化量を加えた温度に設定し、冷房時には、サーモオフ点Toffを、サーモオン点Tonに予測した室温の変化量を減じた温度に設定する。ステップS1,S2において、制御部101は、設定部340として機能する。
サーモオフ点Toffを調整すると、制御部101は、室温検知部41によって検知された室温を参照して、室温がサーモオフ点Toffに達したか否かを判定する(ステップS3)。具体的に説明すると、暖房時には、制御部101は、室温がサーモオフ点Toff以上の温度まで上昇した場合に、室温がサーモオフ点Toffに達したと判定する。これに対して、冷房時には、制御部101は、室温がサーモオフ点Toff以下の温度まで低下した場合に、室温がサーモオフ点Toffに達したと判定する。
室温がサーモオフ点Toffに達していない場合(ステップS3;NO)、制御部101は、ステップS3に留まり、室温がサーモオフ点Toffに達するまで待機する。
これに対して、室温がサーモオフ点Toffに達した場合(ステップS3;YES)、制御部101は、サーモオフを実施する(ステップS4)。具体的に説明すると、制御部101は、圧縮機21を制御して回転数を0に変更することによって、圧縮機21の運転を停止させる。これにより、空調装置1による室内空間71の空調が停止する。
サーモオフを実施すると、制御部101は、室温検知部41によって検知された室温を参照して、室温がサーモオン点Tonに達したか否かを判定する(ステップS5)。具体的に説明すると、暖房時には、制御部101は、室温がサーモオン点Ton以下の温度まで低下した場合に、室温がサーモオン点Tonに達したと判定する。これに対して、冷房時には、制御部101は、室温がサーモオン点Ton以上の温度まで上昇した場合に、室温がサーモオン点Tonに達したと判定する。
室温がサーモオン点Tonに達していない場合(ステップS5;NO)、制御部101は、ステップS5に留まり、室温がサーモオン点Tonに達するまで待機する。
これに対して、室温がサーモオン点Tonに達した場合(ステップS5;YES)、制御部101は、更に、サーモオフを実施してから禁止時間が経過したか否かを判定する(ステップS6)。具体的に説明すると、制御部101は、サーモオフを実施してからの経過時間を計時部103によって計測し、計測した経過時間が予め規定された禁止時間を超えたか否かを判定する。
サーモオフを実施してから禁止時間が経過していない場合(ステップS6;NO)、制御部101は、ステップS6に留まり、サーモオフを実施してから禁止時間が経過するまで待機する。言い換えると、制御部101は、室温がサーモオン点Tonに達していても、サーモオフを実施してから禁止時間が経過していなければ、サーモオンを実施しない。
これに対して、サーモオフを実施してから禁止時間が経過した場合(ステップS6;YES)、制御部101は、サーモオンを実施する(ステップS7)。具体的に説明すると、制御部101は、圧縮機21を制御して回転数を設定温度に応じた値に変更することによって、圧縮機21の運転を開始させる。これにより、空調装置1による室内空間71の空調が開始する。ステップS3〜S7において、制御部101は、空調制御部330として機能する。
サーモオンを実施すると、制御部101は、処理をステップS1に戻し、ステップS1〜S7の処理を繰り返す。言い換えると、制御部101は、躯体温度に応じてサーモオフ点Toffを変更しながら、室温がサーモオフ点Toffに達するとサーモオフを実施し、室温がサーモオン点Tonに達するとサーモオンを実施する処理を繰り返す。
以上説明したように、実施の形態1に係る空調装置1は、室温がサーモオフ点Toffに達すると圧縮機21の運転を停止させ、室温がサーモオン点Tonに達すると圧縮機21の運転を開始させることによって室内空間71を空調する。このとき、空調装置1は、室内空間71における躯体温度が相対的に低い場合には、室内空間71における躯体温度が相対的に高い場合よりも、サーモオフ点Toffを高い温度に設定する。
このように躯体温度に応じてサーモオフ点Toffを調整することによって、サーモオフ直後の圧縮機21が再起動できない時間の最中に、室温が、設定温度であるサーモオン点Tonを超えて変化することを抑制できる。そのため、室内空間71における快適性を向上させることができる。また、室温の変化が少ないと予測した場合は早めに圧縮機21の運転を停止することができるため、消費電力量を削減できる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1に係る空調装置1は、躯体温度に基づいて室温の変化を予測して、サーモオフ点Toffを調整した。これに対して、実施の形態2に係る空調装置1aは、室温の変化を予測するための指標として、外気温の情報を更に取得する。
図10に、実施の形態2に係る空調装置1aに備えられた室外機制御部51aの機能的な構成を示す。なお、空調装置1a及び室外機制御部51aは、実施の形態1と同様のハードウェア構成を備えている。
図10に示すように、室外機制御部51aは、機能的に、空気温度取得部310と、表面温度取得部320と、空調制御部330と、設定部340と、指標取得部350と、を備える。空気温度取得部310、表面温度取得部320及び空調制御部330の機能については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための、躯体温度以外の指標を取得する。具体的に説明すると、指標取得部350は、指標として、外気温を取得する。外気温は、室外空間72における空気温度であって、図示しない温度センサによって検知される。温度センサは、室外機11に設置されており、室外送風機31によって吸い込まれた外気の温度を検知する。指標取得部350は、温度センサによって検知された外気温を示す情報を、通信部104を介して取得する。指標取得部350は、制御部101が通信部104と協働することによって実現される。指標取得部350は、指標取得手段として機能する。
図5及び上記(2)式で示したように、室内空間71における躯体温度は、家屋3の外壁の温度から熱を受けて変化し、更に、家屋3の外壁の温度は、外気温から熱を受けて変化する。そのため、室内空間71における躯体温度は、外気温に応じて変化する。例えば、外気温が上昇すると躯体温度は数時間遅れて上昇し、外気温が低下すると躯体温度は徐々に低下する。このように、外気温によって躯体温度の変化を予測することができる。そのため、外気温を取得することによって、躯体温度だけを用いる場合よりも更に先の時間まで見越して、室内空間71における室温の変化を予測することができる。
設定部340は、表面温度取得部320によって取得された躯体温度と指標取得部350によって取得された外気温とに応じて、サーモオフ点Toffを設定する。具体的に説明すると、設定部340は、実施の形態1と同様、躯体温度が低いほどサーモオフ点Toffを高い温度に設定する。その一方で、設定部340は、躯体温度が同じであれば、外気温が相対的に低い場合の方が、外気温が相対的に高い場合よりも、サーモオフ点Toffを高い温度に設定する。空調制御部330は、このように設定部340によって躯体温度と外気温とに応じて設定されたサーモオフ点Toffに従って、圧縮機21の運転を停止させる。
図11に、暖房時において、躯体温度が同じであって外気温が異なる場合における室温の変化を示す。図11において、破線は、外気温が相対的に低い場合、具体的には外気温が規定値よりも低い場合における室温の変化を表している。これに対して、実線は、外気温が相対的に高い場合、具体的には外気温が規定値よりも高い場合における室温の変化を表している。
図11に示すように、暖房時には、設定部340は、サーモオフ点Toff3,Toff4を、サーモオン点Tonよりも高い温度に設定し、且つ、外気温が相対的に低い場合におけるサーモオフ点Toff3を、外気温が相対的に高い場合におけるサーモオフ点Toff4よりも高い温度に設定する。このように外気温に応じてサーモオフ点Toff3,Toff4が設定されることによって、外気温が高いため室温が上昇することが予測される場合には、圧縮機21は早めに停止する。これにより、室内空間71が暖まりすぎることを抑制できるため、快適性が向上するとともに消費電力量も削減できる。また、外気温が低いため室温が低下することが予測される場合には、圧縮機21は長く運転するため、十分に暖房できる。
これに対して、冷房時には、設定部340は、サーモオフ点Toff3,Toff4を、サーモオン点Tonよりも低い温度に設定し、且つ、外気温が相対的に低い場合におけるサーモオフ点Toff3を、外気温が相対的に高い場合におけるサーモオフ点Toff4よりも高い温度に設定する。このように外気温に応じてサーモオフ点Toff3,Toff4が設定されることによって、外気温が低いため室温が低下することが予測される場合には、圧縮機21は早めに停止する。これにより、室内空間71が冷えすぎることを抑制できるため、快適性が向上するとともに消費電力量も削減できる。また、外気温が高いため室温が上昇することが予測される場合には、圧縮機21は長く運転するため、十分に冷房できる。
以上説明したように、実施の形態2に係る空調装置1aは、躯体温度に加えて外気温を取得し、躯体温度と外気温とに応じてサーモオフ点Toff3,Toff4を調整する。外気温を用いることによって、より先の室温変化まで精度良く予測することができるため、サーモオフ点Toff3,Toff4をより的確に設定することができ、室内空間71における快適性をより向上させることができる。
なお、実施の形態2において、外気温を検知する温度センサは、室外機11以外の場所に設置されていても良い。例えば、指標取得部350は、家屋3の外部に設置された温度センサによって検知された外気温の情報を外部の通信ネットワークを介して取得しても良い。或いは、指標取得部350は、天気予報又は気象データの情報を外部の通信ネットワークを介して取得することによって、外気温の情報を取得しても良い。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態2に係る空調装置1aは、外気温に応じてサーモオフ点Toffを調整した。これに対して、実施の形態3では、指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための指標として、日射量を取得する。
日射量は、太陽から受ける放射エネルギーの量であって、図示しない赤外線センサによって検知される。赤外線センサは、焦電型、サーモパイル型等のセンサであって、室内空間71の窓の付近、室外空間72等の日射量を検知可能な場所に設置される。指標取得部350は、赤外線センサによって検知された日射量を示す情報を、通信部104を介して取得する。
図5及び上記(2)式で示したように、室内空間71における躯体温度は、窓を通過する日射から熱を受けて変化する。また、家屋3の外壁の温度は、日射から熱を受けて変化する。そのため、室内空間71における躯体温度は、日射量に応じて変化する。例えば、家屋3の外壁が日射を受けて加熱されると、熱が壁を通ることで貫流負荷が増加し、躯体温度は上昇する。また、窓から入った日射が内壁に当たると、日射負荷が増加し、躯体温度は徐々に上昇する。日射が無くなると、躯体温度は徐々に低下する。このように、日射量によって躯体温度の変化を予測することができる。そのため、日射量を取得することによって、躯体温度だけを用いる場合よりも更に先の時間まで見越して、室内空間71における室温の変化を予測することができる。
設定部340は、表面温度取得部320によって取得された躯体温度と指標取得部350によって取得された日射量とに応じて、サーモオフ点Toffを設定する。具体的に説明すると、設定部340は、実施の形態1と同様、躯体温度が低いほどサーモオフ点Toffを高い温度に設定する。その一方で、設定部340は、躯体温度が同じであれば、日射量が規定値よりも低い場合の方が、日射量が規定値よりも高い場合よりも、サーモオフ点Toffを高い温度に設定する。空調制御部330は、このように設定部340によって躯体温度と日射量とに応じて設定されたサーモオフ点Toffに従って、圧縮機21の運転を停止させる。日射量が異なる場合における暖房時のサーモオフ点Toff及び室温の変化は、実施の形態2で示した図11において、外気温が高い場合と低い場合とをそれぞれ日射量が多い場合と少ない場合とに置き換えることで、同様に説明することができる。
このように、実施の形態3に係る空調装置1aは、躯体温度に加えて日射量を取得し、躯体温度と日射量とに応じてサーモオフ点Toffを調整する。日射量を用いることによって、より先の室温変化まで精度良く予測することができるため、サーモオフ点Toffをより的確に設定することができ、室内空間71における快適性をより向上させることができる。
なお、実施の形態3において、指標取得部350は、赤外線センサに限らず、照度センサによって検知された室内空間71の照度から日射量を取得しても良い。また、指標取得部350は、カメラによって撮影された室内空間71の可視画像から日射量を取得しても良い。或いは、指標取得部350は、太陽光発電設備による発電量、天気予報又は気象データの情報を外部の通信ネットワークを介して取得することによって、日射量の情報を取得しても良い。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4において、指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための指標として、室内空間71の断熱性能を示す情報を取得する。
室内空間71の断熱性能は、室内空間71と室外空間72との間での熱の伝わりやすさを示す指標であって、外皮平均熱貫流率、熱損失係数等によって見積もられる。指標取得部350は、室内空間71の断熱性能を示す情報を、リモートコントローラ55を介してユーザから入力を受け付けることによって取得する。
図5及び上記(2)式で示したように、室内空間71における躯体温度は、室内空間71の断熱性能に依存して変化する。断熱性能が高いほど、サーモオフ時に室温は変化し難く、断熱性能が低いほど、サーモオフ時に室温は変化し易い。そのため、断熱性能の情報を用いることで、室内空間71における室温の変化をより正確に予測することができる。
設定部340は、表面温度取得部320によって取得された躯体温度と指標取得部350によって取得された断熱性能を示す情報とに応じて、サーモオフ点Toffを設定する。具体的に説明すると、設定部340は、実施の形態1と同様、躯体温度が低いほどサーモオフ点Toffを高い温度に設定する。その一方で、設定部340は、躯体温度が同じであれば、断熱性能が規定値よりも高い場合の方が、断熱性能が規定値よりも低い場合よりも、サーモオフ点Toffをサーモオン点Tonに近い温度に設定する。空調制御部330は、このように設定部340によって躯体温度と断熱性能とに応じて設定されたサーモオフ点Toffに従って、圧縮機21の運転を停止させる。断熱性能が異なる場合における暖房時のサーモオフ点Toff及び室温の変化は、実施の形態2で示した図11において、外気温が高い場合と低い場合とをそれぞれ断熱性能が高い場合と低い場合に置き換えることで、同様に説明することができる。
このように、実施の形態4に係る空調装置1aは、室内空間71の断熱性能を用いることによって、室温の変化をより正確に予測することができる。そのため、室内空間71における快適性と省エネ性とをより向上させることができる。
なお、実施の形態4において、指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための指標として、室内空間71の断熱性能を示す情報に加えて又は代えて、室内空間71の広さを示す情報を取得しても良い。指標取得部350は、室内空間71の広さを示す情報を、リモートコントローラ55を介して取得しても良いし、赤外線センサ又は画像センサによって取得しても良い。
室内空間71は広いほど、サーモオフ時に室温は変化し易く、室内空間71は狭いほど、サーモオフ時に室温は変化し難い。そのため、設定部340は、躯体温度が同じであれば、室内空間71が規定値よりも狭い場合の方が、室内空間71が規定値よりも広い場合よりも、サーモオフ点Toffをサーモオン点Tonに近い温度に設定する。このように、室内空間71の広さの情報を用いることで、室内空間71における室温の変化をより正確に予測することができる。そのため、室内空間71における快適性と省エネ性とをより向上させることができる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態5において、指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための指標として、室内空間71の内部からの発熱量を取得する。室内空間71の内部からの発熱量を、以下では内部発熱量と呼ぶ。
内部発熱量は、室内空間71内の人間、照明、ヒータ等のように、躯体以外から発生する熱量である。内部発熱量は、上記(3)式のように、室内空間71の在室人数と、室内空間71に設置された照明、家電機器及び燃焼器具からの発熱量と、によって見積もられる。指標取得部350は、内部発熱量を、リモートコントローラ55を介して取得しても良いし、赤外線センサで在室人数、照明、家電機器及び燃焼機器を検知することによって取得しても良い。或いは、指標取得部350は、外部の通信ネットワークを介して在室人数の情報、又は機器の使用情報を取得することによって、内部発熱量を取得しても良い。
内部発熱量が大きいほど、サーモオフ時に室温は上昇し易く、低下し難い。そのため、設定部340は、躯体温度が同じであれば、内部発熱量が規定値よりも低い場合の方が、内部発熱量が規定値よりも高い場合よりも、サーモオフ点Toffを高い温度に設定する。内部発熱量が異なる場合における暖房時のサーモオフ点Toff及び室温の変化は、実施の形態2で示した図11において、外気温が高い場合と低い場合とをそれぞれ内部発熱量が多い場合と少ない場合とに置き換えることで、同様に説明することができる。
このように、実施の形態5に係る空調装置1aは、躯体温度に加えて内部発熱量を取得し、躯体温度と内部発熱量とに応じてサーモオフ点Toffを調整する。内部発熱量を用いることによって、室内空間71における室温の変化をより正確に予測することができ、室内空間71における快適性と省エネ性とをより向上させることができる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。実施の形態6において、指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための指標として、室内空間71における開閉部の開閉情報を取得する。
室内空間71における開閉部とは、窓、扉、間仕切り等のような、室内空間71と室外空間72との境界部分に設けられた開閉可能な部分である。開閉部の開閉情報とは、開閉部が開いているか閉じているかを示す情報である。指標取得部350は、開閉部の開閉情報を、リモートコントローラ55を介して取得しても良いし、赤外線センサ又は画像センサによって取得しても良い。或いは、指標取得部350は、外部の通信ネットワークを介して開閉情報を取得しても良い。
開閉部が開いている場合、室内空間71と室外空間72との間で多くの空気が移動するため、室内空間71の断熱性能が低下する。その結果、サーモオフ時に室温が変化し易くなる。そのため、設定部340は、躯体温度が同じであれば、開閉部が閉じている場合の方が、開閉部が開いている場合よりも、サーモオフ点Toffをサーモオン点Tonに近い温度に設定する。開閉部が開いている場合と閉じている場合とにおける暖房時のサーモオフ点Toff及び室温の変化は、実施の形態2で示した図11において、外気温が高い場合と低い場合とをそれぞれ開閉部が閉じている場合と開いている場合とに置き換えることで、同様に説明することができる。
このように、実施の形態6に係る空調装置1aは、躯体温度に加えて開閉部の開閉情報を取得し、躯体温度と開閉情報とに応じてサーモオフ点Toffを調整する。開閉部の開閉情報を用いることによって、室内空間71における室温の変化をより正確に予測することができ、室内空間71における快適性と省エネ性とをより向上させることができる。
なお、実施の形態6において、指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための指標として、室内空間71における開閉部の開閉情報に加えて又は代えて、室内空間71に設けられた換気設備の運転情報を取得しても良い。換気設備とは、換気扇、レンジフード等、室内空間71を換気する設備である。指標取得部350は、換気設備の運転情報を、リモートコントローラ55を介して取得しても良いし、赤外線センサ又は画像センサによって取得しても良いし、外部の通信ネットワークを介して取得しても良い。
換気設備が運転している場合、室内空間71と室外空間72との間で多くの空気が移動するため、室内空間71の断熱性能が低下する。その結果、サーモオフ時に室温が変化し易くなる。そのため、設定部340は、躯体温度が同じであれば、換気設備が運転していない場合の方が、換気設備が運転している場合よりも、サーモオフ点Toffをサーモオン点Tonに近い温度に設定する。このように、換気設備の運転情報を用いることで、室内空間71における室温の変化をより正確に予測することができる。そのため、室内空間71における快適性と省エネ性とをより向上させることができる。
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7について説明する。図12に、実施の形態7に係る空調装置1bに備えられた室外機制御部51bの機能的な構成を示す。なお、空調装置1b及び室外機制御部51bは、実施の形態1と同様のハードウェア構成を備えているため、説明を省略する。
図12に示すように、室外機制御部51bは、機能的に、空気温度取得部310と、表面温度取得部320と、空調制御部330と、設定部340と、指標取得部350と、情報更新部360と、学習部370と、を備える。空気温度取得部310、表面温度取得部320及び空調制御部330の機能については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための、躯体温度以外の指標として、外気温を取得する。外気温は、室外空間72における空気温度であって、実施の形態2と同様に、例えば室外機11に設置された温度センサによって検知される。
更に、指標取得部350は、室内空間71における室温の変化を予測するための、躯体温度以外の指標として、日射量を示す日射情報を取得する。日射量は、太陽から受ける放射エネルギーの量であって、実施の形態3と同様に、日射量を検知可能な場所に設置された赤外線センサ、照度センサ等によって検知される。
以下では、指標取得部350が、日射情報として、室内空間71の窓の表面温度を取得する場合を例にとって説明する。窓は、日中太陽が出ている時に日光に照らされるため、その表面温度は、日射量の指標として用いることができる。窓の表面温度は、窓の付近に設置された赤外線センサによって検知される。
情報更新部360は、空気温度取得部310によって取得された室内空間71の室温と、指標取得部350によって取得された外気温及び窓の表面温度とによって、記憶部102に記憶された履歴情報150を更新する。以下、室内空間71の室温、外気温、及び窓の表面温度を、それぞれ「室温Ti」、「外気温To」、及び「窓温度Tw」と呼ぶ。
図13に、履歴情報150の具体例を示す。図13に示すように、履歴情報150は、室温Ti、外気温To、窓温度Tw、空調能力等の履歴を時系列順に格納している。空調能力は、空調装置1bによる室内空間71の空調の強さである。具体的に、空調能力は、室温Tiが設定温度Tmに維持されるように空調制御部330が空調を制御した場合における室内熱交換器25における冷媒と室内空気との熱交換量に相当する。
情報更新部360は、予め定められた時間毎に、空気温度取得部310によって新たに取得された室温Tiと、指標取得部350によって新たに取得された外気温To及び窓温度Twと、空調能力と、を対応付けて履歴情報150に格納する。これにより、情報更新部360は、履歴情報150を随時更新する。情報更新部360は、制御部101が記憶部102と協働することによって実現される。情報更新部360は、情報更新手段として機能する。
学習部370は、室内空間71の熱特性を学習する。室内空間71の熱特性とは、室内空間71の熱に関する性質であって、具体的には、室内空間71の断熱性能、室内空間71への日射の入りやすさ等である。学習部370は、履歴情報150に記録された過去の室温Ti、窓温度Tw、外気温To及び空調能力に基づいて、室内空間71の熱特性を学習する。学習部370は、制御部101によって実現される。学習部370は、学習手段として機能する。
<学習機能>
以下、学習部370の学習機能についてより詳細に説明する。図5に示したように、室内空間71と室外空間72との間では、家屋3の壁、窓、隙間、換気設備等を介して熱が移動する。そのため、空調装置1bが室内空間71の温度を維持するために必要な熱量である熱負荷Qは、壁の厚さ、窓の大きさ等の家屋3の特徴に依存する。
より詳細には、熱負荷Qには、貫流負荷と換気負荷と内部発熱量と日射負荷とがある。貫流負荷は、外気温Toと室温Tiとの温度差ΔTに応じて外皮を伝わる熱負荷である。なお、外皮は、室内空間71を室外空間72から隔離する壁である。換気負荷は、換気又は隙間風の空気流入による熱負荷である。換気負荷は、温度差ΔTに比例する。内部発熱量Qnは、室内空間71内に存在する、照明、家電、及び、人による熱負荷である。日射負荷は、窓ガラスを透過して室内を加熱する熱負荷である第1の日射負荷と、外皮を加熱して外皮から室内空間71内に伝わる熱負荷である第2の日射負荷と、に分けられる。
学習部370は、下記(5)式を用いて、室内空間71の熱特性として、熱負荷Qと、室温Tiと、外気温Toと、窓温度Twと、内部発熱量Qnとの関係を学習する。具体的には、学習部370は、α、β及びQnの値を学習により見積もる。なお、理解を容易にするため、室温Tiは設定温度Tmと一致し、熱負荷Qは空調装置1bの空調能力に一致すると仮定する。
Q=α(To2−Ti)+β(Tw−Ti)+Qn…(5)
上記(5)式において、αは、家屋3の断熱性能を示す係数である。つまり、αは、外気温Toと室温Tiとの温度差ΔTに比例して必要となる熱負荷に関わる比例係数である。温度差ΔTに比例して必要となる熱負荷は、貫流負荷と換気負荷である。ただし、第2の日射負荷も、外皮を伝わる熱負荷であるため、貫流負荷と同様に扱うことが好適である。そこで、上記(5)式では、外気温Toの上昇分ΔToを第2の日射負荷に対応するパラメータと見なし、外気温Toの代わりに見かけ上の外気温To2(=To+ΔTo)を用いて熱負荷Qを見積もる。
なお、αは、換気負荷を考慮しない場合、理論上、外皮平均熱貫流率UAと外皮の表面積Aとを用いて、以下の(6)式により見積もられる。(6)式において、αの単位はW(ワット)/K(ケルビン)であり、外皮平均熱貫流率UAの単位はW/(m2・K)であり、外皮の表面積Aの単位はm2である。また、1.000は、貫流負荷に対応する係数であり、0.034は、第2の日射負荷に対応する係数である。ただし、外皮平均熱貫流率UA及び外皮の表面積Aに関する情報を取得できないことが多く、また、換気負荷の影響により以下の(6)式によりαを正確に求めることができないことも多い。そこで、本実施の形態では、学習部370は、上記(5)式を用いて、各種の値の実績値からαの値を求める。
α=UA・A・(1.000+0.034)…(6)
上記(5)式において、βは、室内空間71への日射の入りやすさを示す係数である。つまり、βは、日射量に比例して必要となる熱負荷に関わる比例係数である。日射量に比例して必要となる熱負荷は、第1の日射負荷である。βの値は、窓の大きさ、窓を構成するガラスの種類等に依存する。
学習部370は、記憶部102に記憶された履歴情報150を参照して、室温Ti、窓温度Tw、外気温To及び空調能力の関係を分析する。そして、学習部370は、分析の結果に基づいて、α、β及びQnを見積もる。
第1に、室内空間71の断熱性能を示す係数αを学習する方法について説明する。学習部370は、日射量が十分に少ない場合に取得された室温Ti、外気温To及び空調能力のデータに基づいて、係数αを学習する。具体的に説明すると、日射量が十分に少ない場合には、第1日射負荷及び第2日射負荷が貫流負荷及び換気負荷に比べて無視できる。この場合、上記(5)式において、β=0であると近似でき、更にΔTо=0、すなわちTо=Tо2であると近似できる。そのため、上記(5)式は、下記(7)式に近似できる。学習部370は、下記(7)式によって表される室温Tiと外気温Tоとの温度差ΔTと空調能力との関係に基づいて、係数αを学習する。
Q=α(To−Ti)+Qn…(7)
図14(a)に、室温Tiと外気温Toとの温度差ΔTと空調能力との関係を示す。図14(a)は、室温Tiと外気温Toとの温度差ΔTを表す座標軸である横軸と空調能力を表す座標軸である縦軸とを有する座標平面に、温度差ΔTの実績値と空調能力の実績値とに対応する複数のデータ点をプロットした場合の一例を示している。貫流負荷及び換気負荷は温度差ΔTに比例するため、温度差ΔTと空調能力との関係は一次近似式で表すことができる。学習部370は、座標平面にプロットされた複数のデータ点に対して最小二乗法等の適宜の回帰手法を適用することにより、温度差ΔTと空調能力との関係を示す近似直線L0を求める。近似直線L0と式(7)との対応から、近似直線L0の傾きは断熱性能を示す係数αに対応し、近似直線L0の切片は内部発熱量Qnに対応する。
ここで、家屋3の外皮に使用される断熱材の性能が良いほど、また、外皮の面積が小さいほど、貫流負荷は小さくなる。また、室内空間71と室外空間72とを仕切る外皮の隙間が小さい程、換気負荷は小さくなる。そのため、貫流負荷が小さいほど、また、換気負荷が小さいほど、近似直線の傾きが小さくなる。具体的に図14(b)に、家屋3の断熱性能に応じて近似直線の傾きが異なる様子を示す。図14(b)に示すように、断熱性能が悪い家屋3について求められる近似直線L11の傾きは、断熱性能が良い家屋3について求められる近似直線L12の傾きよりも大きくなる。そのため、学習部370は、近似直線の傾きから、室内空間71の断熱性能を取得する。
また、内部発熱量Qnが小さいほど、近似直線の切片が小さくなる。具体的に図14(c)に、内部発熱量Qnに応じて近似直線の切片が異なる様子を示す。図14(c)に示すように、内部発熱量Qnが大きい家屋3について求められる近似直線L21の切片は、内部発熱量Qnが小さい家屋3について求められる近似直線L22の切片よりも大きくなる。そのため、学習部370は、近似直線の切片から、室内空間71の内部発熱量Qnを取得する。このように、学習部370は、記憶部102に記憶された履歴情報150を参照して、室温Tiと外気温Toとの温度差ΔTと空調能力との関係に基づいて、断熱性能を示す係数α及び内部発熱量Qnを求める。
ここで、学習の精度及び速度を向上させるには、履歴情報150を短期間に多数収集する必要がある。そこで、本実施の形態では、学習部370は、外気温To及び室温Tiが異なる場合であっても温度差ΔTが同じである場合には、要求される空調能力が同じであるものとみなして、同じ温度差ΔTのデータ点として座標平面にプロットする。かかる構成では、外気温To又は室温Ti毎に熱特性式を求める必要がないため、学習の精度及び速度を向上させることができる。なお、空調運転中に履歴情報150の更新と学習とを繰り返すことで、室内空間71の熱特性の変化についても把握することができ、制御の精度を向上させることができる。熱特性の変化は、例えば、冬季に電気カーペットを使用し始めて内部発熱量Qnが増加したり、部屋の間の仕切りをして貫流負荷が減少したりすることにより生じる。
第2に、室内空間71への日射の入りやすさを示す係数βを学習する方法について説明する。学習部370は、室温Tiと外気温Tоとの温度差ΔTが同一であるときに取得された室温Ti、窓温度Tw及び空調能力のデータに基づいて、係数βを学習する。
温度差ΔTが同一である場合には、上記(5)式におけるα(To2−Ti)の項を定数として扱うことができる。この場合、学習部370は、上記(5)式におけるβ(Tw−Ti)の項に基づいて、室温Tiと窓温度Twとの温度差ΔT2と空調能力との関係を見積もることができる。具体的には、室温Tiと窓温度Twとの温度差ΔT2を表す座標軸である横軸と空調能力を表す座標軸である縦軸とを有する座標平面に、温度差ΔT2の実績値と空調能力の実績値とに対応する複数のデータ点をプロットした場合、図14(a)と同様に、温度差ΔT2と空調能力との関係は一次近似式で表すことができる。
ここで、室内空間71に日射が入りやすいほど、近似直線の傾きは大きくなり、室内空間71に日射が入りにくいほど、近似直線の傾きは小さくなる。そのため、図14(b)において、「断熱性能が悪い家屋」を「日射が入りやすい家屋」に置き換え、且つ、「断熱性能が良い家屋」を「日射が入りにくい家屋」に置き換えることで、同様に説明可能である。学習部370は、座標平面にプロットされた複数のデータ点に対して最小二乗法等の適宜の回帰手法を適用することにより、温度差ΔT2と空調能力との関係を示す近似直線を求める。そして、学習部370は、近似直線の傾きから、室内空間71への日射の入りやすさを示す係数βを学習する。
以下、学習の精度を向上させる方法について説明する。本実施の形態では、学習部370は、日射量が閾値以下であるときの室温Ti、外気温To及び空調能力に基づいて、断熱性能を学習する。具体的に説明すると、温度差ΔTを表す座標軸である横軸と空調能力を表す座標軸である縦軸とを有する座標平面にプロットされる複数のデータ点は、日射量が閾値以下であるときに取得されたデータ点に限られる。学習部370は、座標平面に温度差ΔTと空調能力とに対応するデータ点をプロットする前に、プロットするデータ点に対応する温度差ΔT及び空調能力のデータが、日射量が予め定められた閾値以下であるときに取得されたデータであるか否かを判別する。そして、学習部370は、プロットするデータ点に対応する温度差ΔT及び空調能力のデータが、日射量が閾値以下であるときに取得されたと判別した場合、このデータ点を座標平面にプロットする。一方、学習部370は、プロットするデータ点に対応する温度差ΔT及び空調能力のデータが、日射量が閾値より大きいときに取得されたと判別した場合、このデータ点を座標平面にプロットしない。
つまり、学習部370は、温度差ΔTと空調能力とに対応する複数のデータ点のうち、日射量が閾値以下であるときに取得されたデータ点を、座標平面にプロットする。例えば、学習部370は、窓温度Twが室温Tiよりも小さい場合に日射量が閾値以下であると判別し、窓温度Twが室温Tiよりも大きい場合に日射量が閾値より大きいと判別する。
このように、温度差ΔTと空調能力との相関関係を学習する場合、日射の影響が小さいときに取得されたデータから温度差ΔTと空調能力との関係を求めることが好適である。かかる構成によれば、日射負荷の影響によるデータのばらつきが抑制される。そのため、傾きにより表される断熱性能を示す係数αと切片により表される内部発熱量Qnとを精度良く取得することができる。つまり、日射量が閾値以下であるときに取得されたデータを用いる場合、(5)式ではなく(7)式を用いて、容易にαを求めることができる。なお、学習部370は、温度差ΔTと空調能力とのデータから近似直線の傾き及び切片を取得することができれば良く、実際に、何らかの座標平面にデータ点をプロットしなくてもよいことは勿論である。
また、学習部370は、室温Tiの変化量が基準値以下であるときの室温Ti、外気温To及び空調能力に基づいて、断熱性能を学習しても良い。また、学習部370は、室温Tiの変化量が基準値以下であるときの室温Ti、窓気温Tw及び空調能力に基づいて、日射の入りやすさを学習しても良い。
具体的に説明すると、室温Tiが安定していない過渡状態では、発揮される空調能力が安定しないことが一般的である。例えば、空調の起動直後において室温Tiが大きく変化している間は、空調能力の中に部屋の熱容量を処理する分が含まれるため、見かけ上の空調能力は大きくなる。そこで、学習部370は、座標平面にプロットされる複数のデータ点を、規定時間における室温Tiの変化量が基準値以下であるときに取得されたデータ点に限っても良い。これにより、学習部370は、室温Tiが安定しているときに取得されたデータを用いて、近似直線を求めることができる。そのため、近似直線の傾きにより表される断熱性能又は日射の入りやすさと、切片により表される内部発熱量Qnとを、精度良く求めることができる。
また、空調能力には、顕熱と潜熱と全熱の区分がある。顕熱は、温度変化を伴う熱である。潜熱は、状態変化に伴う熱であり、温度変化を伴わない熱である。全熱は、顕熱と潜熱との合計である。例えば、冷房時には、空気中の水分が除湿されるため、空調能力には潜熱が含まれる。しかしながら、温度差ΔTと相関があるのは、空調能力のうちの顕熱分だけである。そこで、学習部370は、空調能力のうちの顕熱分の能力を用いて断熱性能又は日射の入りやすさを求めても良い。かかる構成によれば、近似直線の傾きにより表される断熱性能又は日射の入りやすさと、切片により表される内部発熱量Qnとを、精度良く求められる。
学習部370は、例えばε−NTU(Number of Transfer Unit)法により、顕熱分の空調能力を算出することができる。なお、全熱は、以下の(8)式により表され、顕熱は、以下の(9)式により表される。
全熱=エンタルピ効率・空気密度・風量・(室内機13の吸込空気エンタルピ−室内熱交換器25の配管温度の飽和空気エンタルピ)…(8)
顕熱=温度効率・空気密度・風量・(室内機13の吸込空気温度−室内熱交換器25の配管温度)…(9)
次に、図15を参照して、学習の精度を向上するためのデータ処理方法について説明する。実際に学習部370が履歴情報150に基づいて学習する場合、データ点が座標平面に均一にプロットされるとは限られない。例えば、図15に示す例では、温度差ΔTが大きい領域、具体的には、温度差ΔTがT3からT4までの間の領域に、データ点が偏って分布している。なお、プロットされた全データ点を黒丸で表している。ここで、全データ点を用いて近似直線を求めると、データ点が多数ある領域の影響を強く受け、近似直線の傾き及び切片が正確に求められないことがある。図15には、全データ点を用いて求めた近似直線L31の傾きが小さく、且つ、その切片が大きくなる例が示されている。つまり、この場合、断熱性能が良く、内部発熱量Qnが大きい家屋3とみなされ、誤差が大きくなる。
そこで、学習部370は、黒丸で表される全データ点ではなく、白丸で表される代表データ点を用いて、近似直線を求めることが好適である。図15には、温度差ΔTの領域を、予め定められた温度幅で複数の区分に分類し、分類された温度幅毎に1つの代表データ点を求める例が示されている。代表データ点は、例えば、1つの区分に属する全データ点の平均値を表すデータ点である。平均値は、温度差ΔTと空調能力とのそれぞれについて求められる。言い換えると、学習部370は、座標平面において、複数の区分のうちの1つの区分において温度差Δの実績値と空調能力の実績値とのそれぞれを平均化することにより、この1つの区分に含まれる複数のデータ点を1つの代表データ点に統合する。そして、学習部370は、統合後の代表データ点により近似直線を求める。
図15の例では、代表データ点を用いて求められた近似直線L32の傾きは、全データ点を用いて求められた近似直線L31の傾きよりも大きい。また、近似直線L32の切片は、近似直線L31の切片よりも小さい。このように区分毎に求められた代表データ点を用いることで、全データ点を用いるよりも精度良く近似直線の傾きと切片とを求めることができる。また、かかる手法によれば、例えば、空調装置1bの使い始めの頃のように、データの個数が少なく、或いは条件が偏っている場合においても、精度良く学習することができる。
以上のような学習部370の学習によって得られた室内空間71の熱特性に基づいて、設定部340は、サーモオフ点Toffを設定する。実施の形態4で説明したように、室内空間71の断熱性能が高いほど、サーモオフ時に室温Tiは変化し難く、室内空間71の断熱性能が低いほど、サーモオフ時に室温Tiは変化し易い。そのため、設定部340は、躯体温度が低いほどサーモオフ点Toffを高い温度に設定する一方で、躯体温度が同じであれば、αの値が規定値よりも大きい場合の方が、αの値が規定値よりも小さい場合よりも、サーモオフ点Toffをサーモオン点Tonに近い温度に設定する。また、室内空間71への日射の入りやすさが大きいほど、サーモオフ時に室温Tiは上昇し易く、低下し難い。そのため、設定部340は、躯体温度が低いほどサーモオフ点Toffを高い温度に設定する一方で、躯体温度が同じであれば、βの値が規定値よりも小さい場合の方が、βの値が規定値よりも大きい場合よりも、サーモオフ点Toffを高い温度に設定する。このように、設定部340は、表面温度取得部320によって取得された躯体温度と学習部370によって取得された室内空間71の熱特性とに応じて、サーモオフ点Toffを設定する。
以上のように、実施の形態7に係る空調装置1bは、室内空間71の熱特性を過去のデータに基づいて学習し、学習した熱特性に応じてサーモオフ点Toffを調整する。これにより、室内空間71の室温Tiの変化をより正確に予測することができる。そのため、室内空間71における快適性と省エネ性とをより向上させることができる。
(実施の形態8)
次に、本発明の実施の形態8について説明する。実施の形態8において、設定部340は、圧縮機21が運転を停止している時間の比率、又は、単位時間当たりに圧縮機21が運転を停止する回数が上限値より大きい場合、暖房時にはサーモオフ点Toffを上げ、冷房時にはサーモオフ点Toffを下げる。
圧縮機21の運転が停止している時間の比率は、ある期間において圧縮機21の運転が停止している時間を、この期間の長さで除することによって得られる。また、単位時間当たりに圧縮機21が運転を停止する回数は、ある期間において圧縮機21が運転を停止した回数を、この期間の長さで除することによって得られる。圧縮機21が運転を停止している時間の比率が大きい場合、及び、単位時間当たりに圧縮機21が運転を停止する回数が大きい場合は、圧縮機21が運転を停止し易い、言い換えると室温がサーモオフ点Toffに達し易い状態であることが推測される。
そのため、設定部340は、上記の比率又は回数が上限値より大きい場合、暖房中であればサーモオフ点Toffを上げ、冷房中であればサーモオフ点Toffを下げる。これにより、サーモオフ点Toffとサーモオン点Tonとの差が大きくなるため、室温がサーモオフ点Toffに達し難くなる。その結果、サーモオフ及びサーモオンの回数が減るため、圧縮機21の起動ロスが少なくなり、消費電力の削減につながる。
(実施の形態9)
次に、本発明の実施の形態9について説明する。上記実施の形態1〜8では、サーモオン点Tonは設定温度に固定されており、設定部340は、躯体温度又はその他の指標に応じてサーモオフ点Toffを変更した。これに対して、実施の形態9では、設定部340は、サーモオフ点Toffとサーモオン点Tonとの双方を変更する。
図16に、暖房時において、躯体温度が異なる場合における室温の変化を示す。図16において、破線は、室内空間71内の躯体温度が相対的に低い場合、具体的には躯体温度が第1温度である場合における室温の変化を表している。これに対して、実線は、室内空間71内の躯体温度が相対的に高い場合、具体的には躯体温度が第1温度よりも高い第2温度である場合における室温の変化を表している。
図16に示すように、設定部340は、躯体温度が相対的に低い場合のサーモオフ点Toff1を、躯体温度が相対的に高い場合のサーモオフ点Toff2よりも高い温度に設定する。これと共に、設定部340は、躯体温度が相対的に低い場合のサーモオン点Ton1を、躯体温度が相対的に高い場合のサーモオン点Ton2よりも低い温度に設定する。
具体的に説明すると、設定部340は、表面温度取得部320によって取得された躯体温度に基づいて、禁止時間における室温の変化量を予測する。そして、設定部340は、暖房時には、サーモオフ点Toff1,Toff2を、設定温度に予測した変化量の半分を加えた温度に設定し、サーモオン点Ton1,Ton2を、設定温度に予測した変化量の半分を減じた温度に設定する。これに対して、冷房時には、設定部340は、サーモオフ点Toff1,Toff2を、設定温度に予測した変化量の半分を減じた温度に設定し、サーモオン点Ton1,Ton2を、設定温度に予測した変化量の半分を加えた温度に設定する。
このようにサーモオフ点Toff1,Toff2とサーモオン点Ton1,Ton2とを設定することによって、サーモオフ点Toff1,Toff2とサーモオン点Ton1,Ton2とは、設定温度に対する温度差が等しくなるように、言い換えると設定温度を基準として対照になるように設定される。その結果、室内空間71における室温が設定温度から大きく離れることを抑制することができるため、室内空間71における快適性の向上につながる。
なお、実施の形態9において、設定部340は、サーモオフ点Toff1,Toff2とサーモオン点Ton1,Ton2とを、図16に示したように設定温度に対して対照に設定しなくても良い。設定部340は、サーモオフ点Toff1,Toff2とサーモオン点Ton1,Ton2との間に設定温度が位置していれば、サーモオン点Ton1,Ton2を設定温度により近い温度に設定しても良いし、サーモオフ点Toff1,Toff2を設定温度により近い温度に設定しても良い。
(変形例)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明を実施するにあたっては、種々の形態による変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施の形態では、室温検知部41及び表面温度検知部43は、室内機13に設置されていた。しかしながら、室温検知部41及び表面温度検知部43は、それぞれ目的とする温度及び日射量を検知することができる場所であれば、どこに設置されていても良い。表面温度検知部43は、赤外線センサに限らず、室内空間71の壁、床、天井等に貼られ、これらの表面温度を検知する温度センサであっても良い。
上記実施の形態では、空調装置1は、1台の室外機11と1台の室内機13とを備えていた。しかしながら、本発明において、空調装置1は、1台の室外機11と複数台の室内機13とを備えていても良い。或いは、空調装置1は、1台の室外機11と中継機(図示省略)と逆止弁(図示省略)と複数台の室内機13とを備えており、冷房する室内機13と暖房する室内機13とを混在させて運転することが可能なものであっても良い。
また、室外機11と室内機13とが設置される位置は、特に限定されない。室外機11と室内機13とは、距離が離れた位置に設置されていても良い。例えば、室外機11が図示しない建物の屋上に設置され、室内機13が天井裏に設置されていてもよい。
上記実施の形態では、室外機制御部51,51a,51bが、図3、図10又は図13に示した各機能を備えており、空調装置1,1a,1bを制御する制御装置として機能した。しかしながら、本発明において、これらの各機能のうちの一部又は全部を、室内機制御部53が備えていても良いし、空調装置1の外部の装置が備えていても良い。
例えば、図17に示すように、空調装置1と制御装置100とを備える空調システムSにおいて、空調装置1と通信ネットワークNを介して接続された制御装置100が、空気温度取得部310と、表面温度取得部320と、空調制御部330と、設定部340と、指標取得部350と、情報更新部360と、学習部370と、のうちの少なくとも1つの機能を備えていても良い。例えば、通信ネットワークNは、エコーネットライト(ECHONET Lite)に準じた宅内ネットワークであって、制御装置100は、家屋3における電力を管理するHEMS(Home Energy Management System)のコントローラであっても良い。或いは、通信ネットワークNは、インターネット等の広域ネットワークであって、制御装置100は、家屋3の外部から空調装置1を制御するサーバであっても良い。
制御装置100が上記の各機能を備える場合、空調システムSは、制御装置100による制御対象として複数の空調装置1,1a,1bを備えていても良い。この場合、空調装置1,1a,1bの台数は限定されない。制御装置100の制御対象は、空調装置1,1a,1bのように、冷凍サイクルを備える装置であれば良く、その詳細な構成は限定されない。
設定部340は、空調対象の空間の設定温度を変更することによって、サーモオフ点Toff又はサーモオン点Tonを変更しても良い。サーモオフ点Toff及びサーモオン点Tonは、一般的に、設定温度に合わせて決められている。例えば、設定温度を上げると、それに伴ってサーモオフ点Toff及びサーモオン点Tonも同じだけ上がり、設定温度を下げると、それに伴ってサーモオフ点Toff及びサーモオン点Tonも同じだけ下がる。そのため、設定温度を変更することによって、間接的にサーモオフ点Toff及びサーモオン点Tonを変更することができる。
設定温度の変更は、空調装置1のサーモオフ点Toff又はサーモオン点Tonを直接変更することに比べて容易に実行することができるため、利便性が向上する。特に、制御装置100が通信ネットワークNを介して外部から空調装置1,1aを制御する場合、設定温度の変更であれば製造元を問わずに空調装置1,1a,1bに指令を送ることができるため、容易に空調能力を制御することができる。
上記実施の形態では、空調装置1,1a,1bが設置される対象として、家屋3を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明において、空調装置1,1a,1bが設置される対象は、集合住宅、オフィスビル、施設、工場等であっても良い。空調対象の空間は、家屋3内の部屋であることに限らず、空調装置1,1a,1bによって空調される空間であれば、どのような空間であっても良い。
上記実施の形態では、制御部101において、CPUがROM又は記憶部102に記憶されたプログラムを実行することによって、空気温度取得部310と、表面温度取得部320と、空調制御部330と、設定部340と、指標取得部350と、情報更新部360と、学習部370と、のそれぞれとして機能した。しかしながら、本発明において、制御部101は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部101が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。
また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部101は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
本発明に係る室外機制御部51,51a,51b又は制御装置100の動作を規定するプログラムを、パーソナルコンピュータ又は情報端末装置等の既存のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、本発明に係る室外機制御部51又は制御装置100として機能させることも可能である。
また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
本出願は、2017年4月27日に出願された、日本国特許出願特願2017−88153号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2017−88153号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。