以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
本発明に係る送受信回路の構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る送受信システムの構成を示したブロック図である。本発明に係る送受信システムの一実施例は、LVDS規格に従う差動信号で信号を送受信する送受信システムであり、送信機100及び受信機200を備える。
送信機100は、ドライバユニット10及び送信側終端抵抗RT1を備える。送信側終端抵抗RT1は、例えば100Ωの抵抗である。送信側終端抵抗RT1は、ラダー抵抗等を含む可変抵抗器であってもよい。送信側終端抵抗RT1は、一端が出力端子OUTPに接続され、他端が出力端子OUTNに接続されている。ドライバユニット10の一対の出力信号線は、送信側終端抵抗RT1の両端にそれぞれ接続されている。
受信機200は、入力端子IN1及びIN2並びに入力端子IN1と入力端子IN2との間に接続されている受信側終端抵抗RT2を備える。受信側終端抵抗RT2は、例えば100Ωの抵抗である。受信側終端抵抗RT2は、可変抵抗器であってもよい。入力端子IN1及びIN2は、ケーブル等を通じて送信機100の出力端子OUTP及びOUTNにそれぞれ接続される。受信側終端抵抗RT2は、ドライバユニット10の送信側終端抵抗RT1との並列合成抵抗となる終端抵抗RTを構成する。受信機200は、既知のものを用いることができ、したがって、その具体的な回路構成についての図示及び説明は省略する。
図2は、本発明に係る送信機100の回路構成を示した回路図である。
本発明に係る「送信回路」としての送信機100は、ドライバユニット10、バイアス回路20及び制御回路30を備える。
「電流出力回路」としてのドライバユニット10は、終端抵抗RTに流れる電流の大きさ及び方向を制御する回路であり、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10eを含む。
「定電流制御回路」としてのバイアス回路20は、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10eの各々の出力電流の定電流制御を行う回路である。バイアス回路20は、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10eの各々の出力電流の変動を抑制することができるので、出力電流の変動に起因する出力信号の電圧振幅の変動を低減することができる。
制御回路30は、例えば既知のマイコン制御回路であり、入力信号に基づいて、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10e並びにバイアス回路20を制御する。より具体的には、制御回路30は、入力信号に基づいて、「第1の制御信号対」としての制御信号INP及びINN、並びに「第1の制御信号対」を遅延させた「第2の制御信号対」としての制御信号INP_1UI及びINN_1UIを生成して出力する。制御信号INPは、入力信号であり、制御信号INNは、入力信号を論理反転させた信号である。制御信号INP_1UIは、入力信号を遅延させた信号であり、制御信号INN_1UIは、入力信号を遅延させた信号である。制御信号INP_1UI及びINN_1UIの遅延量は、当該実施例では1UI(Unit Interval)となっているが、特にこれに限定されるものではない。
終端抵抗RTには、2つの抵抗R1及びR2が並列に接続される。より具体的には、抵抗R1の一端が終端抵抗RTの一端に接続され、抵抗R1の他端が抵抗R2の一端に接続され、抵抗R2の他端が終端抵抗RTの他端に接続される。抵抗R1及びR2の抵抗値は、いずれも例えば10kΩ等、送信側終端抵抗RT1及び受信側終端抵抗RT2の抵抗値より十分大きい抵抗値とするのが好ましい。また、抵抗R1及びR2の抵抗値は、同じ抵抗値であってもよく、異なる抵抗値であってもよい。
「第1のドライバ回路」としてのメインドライバユニット10mは、終端抵抗RTに並列に接続され、終端抵抗RTに所定の電流を流すとともに、制御信号INP及びINNに従って電流の方向を制御する回路である。
メインドライバユニット10mは、例えば、コンプリメンタリ出力の定電流差動回路であり、8つのトランジスタPm1~Pm4及びNm1~Nm4並びにコンパレータ11を含む。トランジスタPm1~Pm4は、P型MOS電界効果トランジスタである。トランジスタNm1~Nm4は、N型MOS電界効果トランジスタである。コンパレータ11は、例えば、OTA(オペレーショナル・トランスコンダクタ・アンプ)であり得る。
トランジスタPm1は、ソースが電源に接続され、ドレインがノードPTAILに接続され、ゲートには、バイアス回路20が出力する定電流制御信号PBIASが入力される。
トランジスタPm2は、ソースがノードPTAILに接続され、ドレインがトランジスタNm2のドレインに接続されている。トランジスタNm2のソースは、ノードNTAILに接続されている。トランジスタPm2のドレインとトランジスタNm2のドレインとの接続点は、終端抵抗RTの一端に接続される。トランジスタPm2及びNm2のゲートには、制御信号INPが入力される。
トランジスタPm3は、ソースがノードPTAILに接続され、ドレインがトランジスタNm3のドレインに接続されている。トランジスタNm3のソースは、ノードNTAILに接続されている。トランジスタPm3のドレインとトランジスタNm3のドレインとの接続点は、終端抵抗RTの他端に接続される。トランジスタPm3及びNm3のゲートには、制御信号INNが入力される。
トランジスタNm1は、ドレインがノードNTAILに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートには、コンパレータ11が出力する基準電位制御信号NBIASが入力される。コンパレータ11の非反転入力は、抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続され、コンパレータ11の反転入力には、参照電圧VOCが入力される。コンパレータ11は、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧と参照電圧VOCとを比較し、その差分に従う基準電位制御信号NBIASを出力する。
トランジスタPm4は、ソースが電源に接続され、ドレインがノードPTAILに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ_Pが入力される。トランジスタNm4は、ドレインがノードNTAILに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ_Nが入力される。
「第2のドライバ回路」としてのエンファシスドライバユニット10eは、終端抵抗RTに並列に接続され、終端抵抗RTに所定の電流を流すとともに、制御信号INP_1UI及びINN_1UIに従って電流の方向を制御する回路である。
エンファシスドライバユニット10eは、例えば、コンプリメンタリ出力の定電流差動回路であり、8つのトランジスタPe1~Pe4及びNe1~Ne4並びにコンパレータ11を含む。トランジスタPe1~Pe4は、P型MOS電界効果トランジスタである。トランジスタNe1~Ne4は、N型MOS電界効果トランジスタである。
トランジスタPe1は、ソースが電源に接続され、ドレインがノードPTAIL_1UIに接続され、ゲートには、バイアス回路20が出力する定電流制御信号PBIASが入力される。
トランジスタPe2は、ソースがノードPTAIL_1UIに接続され、ドレインがトランジスタNe2のドレインに接続されている。トランジスタNe2のソースは、ノードNTAIL_1UIに接続されている。トランジスタPe2のドレインとトランジスタNe2のドレインとの接続点は、終端抵抗RTの一端に接続される。トランジスタPe2及びNe2のゲートには、制御信号INN_1UIが入力される。
トランジスタPe3は、ソースがノードPTAIL_1UIに接続され、ドレインがトランジスタNe3のドレインに接続されている。トランジスタNe3のソースは、ノードNTAIL_1UIに接続されている。トランジスタPe3のドレインとトランジスタNe3のドレインとの接続点は、終端抵抗RTの他端に接続される。トランジスタPe3及びNe3のゲートには、制御信号INP_1UIが入力される。
トランジスタNe1は、ドレインがノードNTAIL_1UIに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートには、コンパレータ11が出力する基準電位制御信号NBIASが入力される。コンパレータ11の非反転入力は、抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続され、コンパレータ11の反転入力には、参照電圧VOCが入力される。コンパレータ11は、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧と参照電圧VOCとを比較し、その差分に従う基準電位制御信号NBIASを出力する。
トランジスタPe4は、ソースが電源に接続され、ドレインがノードPTAIL_1UIに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ_Pが入力される。トランジスタNe4は、ドレインがノードNTAIL_1UIに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ_Nが入力される。
メインドライバユニット10mの出力電流は、定電流制御信号PBIASに従って動作するトランジスタPm1(第1の定電流回路)、及び基準電位制御信号NBIASに従って動作するトランジスタNm1(第2の定電流回路)による定電流制御によって所定電流となるように制御される。同様に、エンファシスドライバユニット10eの出力電流は、定電流制御信号PBIASに従って動作するトランジスタPe1(第3の定電流回路)、及び基準電位制御信号NBIASに従って動作するトランジスタNe1(第4の定電流回路)による定電流制御によって所定電流となるように制御される。
「第1のインジェクション回路」としてのトランジスタPm4は、インジェクション制御信号INJ_Pに従ってトランジスタPm1に並列に電流経路を構成する。「第2のインジェクション回路」としてのトランジスタNm4は、インジェクション制御信号INJ_Nに従ってトランジスタNm1に並列に電流経路を構成する。「第3のインジェクション回路」としてのトランジスタPe4は、インジェクション制御信号INJ_Pに従ってトランジスタPe1に並列に電流経路を構成する。「第4のインジェクション回路」としてのトランジスタNe4は、インジェクション制御信号INJ_Nに従ってトランジスタNe1に並列に電流経路を構成する。
図3~図6は、本発明に係る送信機100の動作状態の一例を示した回路図である。
図3は、制御信号INP及びINN_1UIの値が0(電圧がローレベル)、制御信号INN及びINP_1UIの値が1(電圧がハイレベル)であるときの動作状態を示したものである。
この動作状態では、メインドライバユニット10mは、トランジスタPm2及びNm3がONし、トランジスタPm3及びNm2がOFFしている状態になる。それによって、メインドライバユニット10mの出力電流Imainは、トランジスタPm1からトランジスタPm2を通じて終端抵抗RTへ順方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNm3を通じてトランジスタNm1へ流れる。また、エンファシスドライバユニット10eは、トランジスタPe2及びNe3がONし、トランジスタPe3及びNe2がOFFしている状態になる。それによって、エンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、トランジスタPe1からトランジスタPe2を通じて終端抵抗RTへ順方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNe3を通じてトランジスタNe1へ流れる。
したがって、図3に示した動作状態では、出力電流Imainが終端抵抗RTに流れる方向と出力電流Iempが終端抵抗RTに流れる方向は、ともに順方向で同じ方向となり、終端抵抗RTには、出力電流Imainに出力電流Iempが加算された順方向電流が流れる。そのため、終端抵抗RTの電圧は、出力電流Imainに出力電流Iempを加算した電流値に終端抵抗RTの抵抗値を乗じた値の順方向電圧となる。
図4は、制御信号INP及びINP_1UIの値が0、制御信号INN及びINN_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
この動作状態では、メインドライバユニット10mは、トランジスタPm2及びNm3がONし、トランジスタPm3及びNm2がOFFしている状態になる。それによって、メインドライバユニット10mの出力電流Imainは、トランジスタPm1からトランジスタPm2を通じて終端抵抗RTへ順方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNm3を通じてトランジスタNm1へ流れる。他方、エンファシスドライバユニット10eは、トランジスタPe3及びNe2がONし、トランジスタPe2及びNe3がOFFしている状態になる。それによって、エンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、トランジスタPe1からトランジスタPe3を通じて終端抵抗RTへ逆方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNe2を通じてトランジスタNe1へ流れる。
したがって、図4に示した動作状態では、出力電流Imainが終端抵抗RTに流れる方向は順方向で、出力電流Iempが終端抵抗RTに流れる方向は逆方向で、相反する方向となり、終端抵抗RTには、出力電流Imainから出力電流Iempが減算された順方向電流が流れる。そのため、終端抵抗RTの電圧は、出力電流Imainから出力電流Iempを減算した電流値に終端抵抗RTの抵抗値を乗じた値の電圧となる。
図5は、制御信号INN及びINN_1UIの値が0、制御信号INP及びINP_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
この動作状態では、メインドライバユニット10mは、トランジスタPm3及びNm2がONし、トランジスタPm2及びNm3がOFFしている状態になる。それによって、メインドライバユニット10mの出力電流Imainは、トランジスタPm1からトランジスタPm3を通じて終端抵抗RTへ逆方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNm2を通じてトランジスタNm1へ流れる。他方、エンファシスドライバユニット10eは、トランジスタPe2及びNe3がONし、トランジスタPe3及びNe2がOFFしている状態になる。それによって、エンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、トランジスタPe1からトランジスタPe2を通じて終端抵抗RTへ順方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNe3を通じてトランジスタNe1へ流れる。
したがって、図5に示した動作状態では、出力電流Imainが終端抵抗RTに流れる方向は逆方向で、出力電流Iempが終端抵抗RTに流れる方向は順方向で、相反する方向となり、終端抵抗RTには、出力電流Imainから出力電流Iempが減算された逆方向電流が流れる。そのため、終端抵抗RTの電圧は、出力電流Imainから出力電流Iempを減算した電流値に終端抵抗RTの抵抗値を乗じた値の逆方向電圧となる。
図6は、制御信号INN及びINP_1UIの値が0、制御信号INP及びINN_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
この動作状態では、メインドライバユニット10mは、トランジスタPm3及びNm2がONし、トランジスタPm2及びNm3がOFFしている状態になる。それによって、メインドライバユニット10mの出力電流Imainは、トランジスタPm1からトランジスタPm3を通じて終端抵抗RTへ逆方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNm2を通じてトランジスタNm1へ流れる。また、エンファシスドライバユニット10eは、トランジスタPe3及びNe2がONし、トランジスタPe2及びNe3がOFFしている状態になる。それによって、エンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、トランジスタPe1からトランジスタPe3を通じて終端抵抗RTへ逆方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNe2を通じてトランジスタNe1へ流れる。
したがって、図6に示した動作状態では、出力電流Imainが終端抵抗RTに流れる方向と出力電流Iempが終端抵抗RTに流れる方向は、ともに逆方向で同じ方向となり、終端抵抗RTには、出力電流Imainに出力電流Iempが加算された逆方向電流が流れる。そのため、終端抵抗RTの電圧は、出力電流Imainに出力電流Iempを加算した電流値に終端抵抗RTの抵抗値を乗じた値の逆方向電圧となる。
図7は、本発明に係る送信機100の動作を示したタイミングチャートである。
入力信号が1UI毎に遷移するタイミング(1UI Transition)では、制御信号INPと制御信号INN_1UIとが同じ論理となるとともに、制御信号INNと制御信号INP_1UIとが同じ論理となる(タイミングT1~T2及びタイミングT4以降)。このタイミングでは、前述したように、メインドライバユニット10mの出力電流Imainとエンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempの方向が同じ方向となるため、終端抵抗RTの電圧VOD(出力端子OUTPと出力端子OUTNとの間の電圧)は、相対的に高い電圧となる。
他方、入力信号が連続した同じビットパターン(CID:Consecutive Identical Digits)となるタイミング(タイミングT2~T4)では、2ビット目以降(タイミングT3~T4)、制御信号INPと制御信号INN_1UIとが異なる論理となるとともに、制御信号INNと制御信号INP_1UIとが異なる論理となる。このタイミングでは、前述したように、メインドライバユニット10mの出力電流Imainとエンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempの方向が相反する方向となるため、終端抵抗RTの電圧VODは、相対的に低い電圧となる。
つまり、入力信号が連続した同じビットパターンのときは、2ビット目以降から終端抵抗RTの電圧VODが減衰するディエンファシス効果が得られることになる。
また、終端抵抗RTの電圧VODの大きさは、メインドライバユニット10mの出力電流Imainに対してエンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempが加算されるか減算されるかによって変化する。そのため、メインドライバユニット10mの出力電流Imain及びエンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、制御信号INPと制御信号INN_1UIとが同じ論理となるタイミングであっても異なる論理となるタイミングであっても変わらないし、制御信号INNと制御信号INP_1UIとが同じ論理となるタイミングであっても異なる論理となるタイミングであっても変わらない。したがって、送信機100の消費電力は常に一定になるので、消費電力の変動が極めて少ないディエンファシス制御が可能になる。
図8は、第1のインジェクション制御回路40の構成を示した回路図である。
制御回路30は、制御信号INP及びINN_1UIに基づいて、インジェクション制御信号INJ_Pを生成し、トランジスタPm4(第1のインジェクション回路)及びトランジスタPe4(第3のインジェクション回路)を制御する第1のインジェクション制御回路40を含む。
第1のインジェクション制御回路40は、エクスクルシブORゲート41、セレクタ42、5つのNOTゲート43~47及びNANDゲート48を含む。
エクスクルシブORゲート41は、制御信号INP及びINN_1UIが入力され、出力がセレクタ42の選択信号入力Sに接続されている。セレクタ42は、ローレベル(グランド電位)の信号L及びハイレベル(電源電圧レベル)の信号Hが入力され、選択信号入力Sの電位に従って、信号L又はHのいずれかを選択的に出力する。より具体的には、セレクタ42の出力は、選択信号入力Sがローレベルのときはハイレベルとなり、選択信号入力がハイレベルのときはローレベルとなる。
NOTゲート43は、入力がセレクタ42の出力に接続され、出力がNOTゲート44の入力に接続されている。NOTゲート44の出力は、NOTゲート45の入力に接続されている。NOTゲート43~45は、セレクタ42の出力信号を遅延させた信号を得るために設けられている遅延回路であり、その遅延時間は、NOTゲートの接続段数(奇数段)に応じて定まる。
NANDゲート48は、セレクタ42の出力信号及びNOTゲート45の出力信号が入力され、出力がNOTゲート46の入力に接続されている。NOTゲート46の出力は、NOTゲート47の入力に接続されている。NOTゲート47の出力信号は、インジェクション制御信号INJ_Pとなる。NOTゲート46及び47は、主にバッファとして機能し、論理演算処理においては不要であるため、設けなくてもよい。
図9は、第1のインジェクション制御回路40の動作を示したタイミングチャートである。
エクスクルシブORゲート41の出力信号O_XORは、入力信号の排他的論理和となるから、制御信号INPの論理と制御信号INN_1UIの論理とが不一致のとき(タイミングT11以前及びタイミングT13~T14)は、ハイレベルであり、制御信号INPの論理と制御信号INN_1UIの論理とが一致するとき(タイミングT11~T13及びT14以降)は、ローレベルとなる。セレクタ42の出力信号O_MUXは、出力信号O_XORがローレベルのときはハイレベルとなり、出力信号O_XORがハイレベルのときはローレベルとなる。
NOTゲート45の出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXを奇数回、論理反転させて遅延させた信号となる。したがって、出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXがローレベルからハイレベルになるタイミング(タイミングT11及びT14)から所定の遅延時間後のタイミング(タイミングT12及びT15)で、ハイレベルからローレベルになる。
NANDゲート48の出力信号O_NANDは、入力信号の否定論理積となるから、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもハイレベルである間のみ、ローレベルとなる。したがって、インジェクション制御信号INJ_Pも同様に、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもハイレベルである間のみ、ローレベルとなる(タイミングT11~T12及びT14~T15)。
このインジェクション制御信号INJ_Pがローレベルとなる時間は、NOTゲート43~45で構成されている遅延回路の遅延時間によって規定される。この時間は、インジェクション制御信号INJ_Pのインジェクションパルス幅IPWであり、トランジスタPm4及びトランジスタPe4がONする時間である。
図10は、第2のインジェクション制御回路50の構成を示した回路図である。
制御回路30は、制御信号INN及びINP_1UIに基づいて、インジェクション制御信号INJ_Nを生成し、トランジスタNm4(第2のインジェクション回路)及びトランジスタNe4(第4のインジェクション回路)を制御する第2のインジェクション制御回路50を含む。
第2のインジェクション制御回路50は、エクスクルシブORゲート51、セレクタ52、5つのNOTゲート53~57及びNORゲート58を含む。
エクスクルシブORゲート51は、制御信号INN及びINP_1UIが入力され、出力がセレクタ52の選択信号入力Sに接続されている。セレクタ52は、ハイレベルの信号H及びローレベルの信号Lが入力され、選択信号入力Sの電位に従って、信号H又はLのいずれかを選択的に出力する。より具体的には、セレクタ52の出力は、選択信号入力Sがローレベルのときはローレベルとなり、選択信号入力がハイレベルのときはハイレベルとなる。
NOTゲート53は、入力がセレクタ52の出力に接続され、出力がNOTゲート54の入力に接続されている。NOTゲート54の出力は、NOTゲート55の入力に接続されている。NOTゲート53~55は、セレクタ52の出力信号を遅延させた信号を得るために設けられている遅延回路であり、その遅延時間は、NOTゲートの接続段数(奇数段)に応じて定まる。
NORゲート58は、セレクタ52の出力信号及びNOTゲート55の出力信号が入力され、出力がNOTゲート56の入力に接続されている。NOTゲート56の出力は、NOTゲート57の入力に接続されている。NOTゲート57の出力信号は、インジェクション制御信号INJ_Nとなる。NOTゲート56及び57は、主にバッファとして機能し、論理演算処理においては不要であるため、設けなくてもよい。
図11は、第2のインジェクション制御回路50の動作を示したタイミングチャートである。
エクスクルシブORゲート51の出力信号O_XORは、入力信号の排他的論理和となるから、制御信号INNの論理と制御信号INP_1UIの論理とが不一致のとき(タイミングT21以前及びタイミングT23~T24)は、ハイレベルであり、制御信号INNの論理と制御信号INP_1UIの論理とが一致するとき(タイミングT21~T23及びT24以降)は、ローレベルとなる。セレクタ52の出力信号O_MUXは、出力信号O_XORがローレベルのときはローレベルとなり、出力信号O_XORがハイレベルのときはハイレベルとなる。
NOTゲート55の出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXを奇数回、論理反転させて遅延させた信号となる。したがって、出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXがハイレベルからローレベルになるタイミング(タイミングT21及びT24)から所定の遅延時間後のタイミング(タイミングT22及びT25)で、ローレベルからハイレベルになる。
NORゲート58の出力信号O_NORは、入力信号の否定論理和となるから、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもローレベルである間のみ、ハイレベルとなる。したがって、インジェクション制御信号INJ_Nも同様に、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもローレベルである間のみ、ハイレベルとなる(タイミングT21~T22及びT24~T25)。
このインジェクション制御信号INJ_Nがハイレベルとなる時間は、NOTゲート53~55で構成されている遅延回路の遅延時間によって規定される。この時間は、インジェクション制御信号INJ_Nのインジェクションパルス幅IPWであり、トランジスタNm4及びトランジスタNe4がONする時間である。
図12及び図13は、送信機100の出力電圧を示したタイミングチャートである。図12は、インジェクション制御を実行しない場合の出力電圧を示したものであり、図13は、インジェクション制御を実行する場合の出力電圧を示したものである。図14は、送信機100の出力電圧波形のシミュレーション結果(ニアエンド)を示したものであり、図14(A)は、インジェクション制御を実行しない場合、図14(B)は、インジェクション制御を実行する場合をそれぞれ示したものである。
終端抵抗RTの電圧VODは、インジェクション制御を実行しない場合、ディエンファシス制御によって振幅が変化するタイミング、特に振幅が大きくなるタイミングで信号遷移の遅れが生じやすい(タイミングT31~T32及びT33~T34)。本発明に係る送信機100は、そのタイミングで出力電流にインジェクション電流を重畳するインジェクション制御を可能にするものである。本発明に係る送信機100は、ディエンファシス制御によって終端抵抗RTの電圧VODの振幅が変化するタイミングでインジェクション制御を実行することによって、出力電流にインジェクション電流が重畳されて増加するため、信号遷移の立ち上がり応答性が向上し、信号遷移の立ち上がりの遅れを低減することができる(タイミングT41~T42及びT45~T46)。それによって、信号遷移の立ち上がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を低減することができるので、より高速な信号伝送が可能になるとともに、より高精度なディエンファシスが可能になる。
より具体的には、再び図2を参照しながら説明すると、電源からメインドライバユニット10mへ流れる電流は、トランジスタPm4がONして電源からノードPTAILへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I1がトランジスタPm1を通じて流れる定電流に加算されて増加する。同様に、メインドライバユニット10mからグランドへ流れる電流は、トランジスタNm4がONしてノードNTAILからグランドへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I2がトランジスタNm1を通じて流れる定電流に加算されて増加する。つまり、トランジスタPm4及びNm4がONして定電流経路に並列に別の電流経路が構成されることにより、その間、メインドライバユニット10mの出力電流が増加し、信号遷移の立ち上がり応答性が向上する。
また、電源からエンファシスドライバユニット10eへ流れる電流は、トランジスタPe4がONして電源からノードPTAIL_1UIへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I3がトランジスタPe1を通じて流れる定電流に加算されて増加する。同様に、エンファシスドライバユニット10eからグランドへ流れる電流は、トランジスタNe4がONしてノードNTAIL_1UIからグランドへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I4がトランジスタNe1を通じて流れる定電流に加算されて増加する。トランジスタPe4及びNe4がONして定電流経路に並列に別の電流経路が構成されることにより、その間、エンファシスドライバユニット10eの出力電流も増加し、さらに信号遷移の立ち上がり応答性が向上する。
制御回路30が上記のインジェクション制御を実行するタイミングは、例えば、終端抵抗RTへ流れる出力電流Imainの方向と出力電流Iempの方向が相反する方向から同じ方向へ切り替わるタイミングから所定時間である。このタイミングは、終端抵抗RTの電圧VODの振幅が相対的に小さい状態(ディエンファシスが行われている状態)から相対的に大きい状態(ディエンファシスが行われていない状態)に変化するタイミングであるため、前述したように、信号遷移の立ち上がりの遅れが生じやすい(タイミングT41~T42及びT45~T46)。したがって、このタイミングから所定時間、上記のインジェクション制御を実行することによって、信号遷移の立ち上がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を的確に低減することができる。
図15は、本発明に係る送信機100の回路構成の他の実施例を示した回路図である。
図15の送信機100の回路構成は、図2の送信機100のトランジスタPm4、Nm4、Pe4及びNe4に代えて、トランジスタPm5、Nm5、Pe5及びNe5が設けられている以外は、図2の送信機100の回路構成と同じである。あるいは、図2の送信機100に加えて、さらに、トランジスタPm5、Nm5、Pe5及びNe5を設けてもよい。
トランジスタPm5及びPe5は、P型MOS電界効果トランジスタである。トランジスタNm5~Ne5は、N型MOS電界効果トランジスタである。
トランジスタPm5は、ドレインがグランドに接続され、ソースがノードPTAILに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ2_Pが入力される。トランジスタNm5は、ソースがノードNTAILに接続され、ドレインが電源に接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ2_Nが入力される。
トランジスタPe5は、ドレインがグランドに接続され、ソースがノードPTAIL_1UIに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ2_Pが入力される。トランジスタNe5は、ソースがノードNTAIL_1UIに接続され、ドレインが電源に接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ2_Nが入力される。
「第5のインジェクション回路」としてのトランジスタPm5は、インジェクション制御信号INJ2_Pに従ってトランジスタPm1の出力(ドレイン)からグランドへの電流経路を構成する。「第6のインジェクション回路」としてのトランジスタNm5は、インジェクション制御信号INJ2_Nに従って電源からトランジスタNm1の入力(ドレイン)への電流経路を構成する。「第7のインジェクション回路」としてのトランジスタPe5は、インジェクション制御信号INJ2_Pに従ってトランジスタPe1の出力(ドレイン)からグランドへの電流経路を構成する。「第8のインジェクション回路」としてのトランジスタNe5は、インジェクション制御信号INJ2_Nに従って電源からトランジスタNe1の入力(ドレイン)への電流経路を構成する。
図16は、第3のインジェクション制御回路60の構成を示した回路図である。
制御回路30は、制御信号INP及びINN_1UIに基づいて、インジェクション制御信号INJ2_Pを生成し、トランジスタPm5(第5のインジェクション回路)及びトランジスタPe5(第7のインジェクション回路)を制御する第3のインジェクション制御回路60を含む。
第3のインジェクション制御回路60は、エクスクルシブORゲート61、セレクタ62、5つのNOTゲート63~67及びNANDゲート68を含む。
エクスクルシブORゲート61は、制御信号INP及びINN_1UIが入力され、出力がセレクタ62の選択信号入力Sに接続されている。セレクタ62は、ローレベル(グランド電位)の信号L及びハイレベル(電源電圧レベル)の信号Hが入力され、選択信号入力Sの電位に従って、信号L又はHのいずれかを選択的に出力する。より具体的には、セレクタ62の出力は、選択信号入力Sがローレベルのときはローレベルとなり、選択信号入力がハイレベルのときはハイレベルとなる。
NOTゲート63は、入力がセレクタ62の出力に接続され、出力がNOTゲート64の入力に接続されている。NOTゲート64の出力は、NOTゲート65の入力に接続されている。NOTゲート63~65は、セレクタ62の出力信号を遅延させた信号を得るために設けられている遅延回路であり、その遅延時間は、NOTゲートの接続段数(奇数段)に応じて定まる。
NANDゲート68は、セレクタ62の出力信号及びNOTゲート65の出力信号が入力され、出力がNOTゲート66の入力に接続されている。NOTゲート66の出力は、NOTゲート67の入力に接続されている。NOTゲート67の出力信号は、インジェクション制御信号INJ2_Pとなる。NOTゲート66及び67は、主にバッファとして機能し、論理演算処理においては不要であるため、省略し得る。
図17は、第3のインジェクション制御回路60の動作を示したタイミングチャートである。
エクスクルシブORゲート61の出力信号O_XORは、入力信号の排他的論理和となるから、制御信号INPの論理と制御信号INN_1UIの論理とが不一致のとき(タイミングT51以前及びタイミングT52~T54)は、ハイレベルであり、制御信号INPの論理と制御信号INN_1UIの論理とが一致するとき(タイミングT51~T52及びT54以降)は、ローレベルとなる。セレクタ62の出力信号O_MUXは、出力信号O_XORがローレベルのときはローレベルとなり、出力信号O_XORがハイレベルのときはハイレベルとなる。
NOTゲート65の出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXを奇数回、論理反転させて遅延させた信号となる。したがって、出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXがローレベルからハイレベルになるタイミング(タイミングT52)から所定の遅延時間後のタイミング(タイミングT53)で、ハイレベルからローレベルになる。
NANDゲート68の出力信号O_NANDは、入力信号の否定論理積となるから、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもハイレベルである間のみ、ローレベルとなる。したがって、インジェクション制御信号INJ2_Pも同様に、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもハイレベルである間のみ、ローレベルとなる(タイミングT52~T53)。
このインジェクション制御信号INJ2_Pがローレベルとなる時間は、NOTゲート63~65で構成されている遅延回路の遅延時間によって規定される。この時間は、インジェクション制御信号INJ2_Pのインジェクションパルス幅IPWであり、トランジスタPm5及びトランジスタPe5がONする時間である。
図18は、第4のインジェクション制御回路70の構成を示した回路図である。
制御回路30は、制御信号INN及びINP_1UIに基づいて、インジェクション制御信号INJ2_Nを生成し、トランジスタNm5(第6のインジェクション回路)及びトランジスタNe5(第8のインジェクション回路)を制御する第4のインジェクション制御回路70を含む。
第2のインジェクション制御回路70は、エクスクルシブORゲート71、セレクタ72、5つのNOTゲート73~77及びNORゲート78を含む。
エクスクルシブORゲート71は、制御信号INN及びINP_1UIが入力され、出力がセレクタ72の選択信号入力Sに接続されている。セレクタ72は、ハイレベルの信号H及びローレベルの信号Lが入力され、選択信号入力Sの電位に従って、信号H又はLのいずれかを選択的に出力する。より具体的には、セレクタ72の出力は、選択信号入力Sがローレベルのときはハイレベルとなり、選択信号入力がハイレベルのときはローレベルとなる。
NOTゲート73は、入力がセレクタ72の出力に接続され、出力がNOTゲート74の入力に接続されている。NOTゲート74の出力は、NOTゲート75の入力に接続されている。NOTゲート73~75は、セレクタ72の出力信号を遅延させた信号を得るために設けられている遅延回路であり、その遅延時間は、NOTゲートの接続段数(奇数段)に応じて定まる。
NORゲート78は、セレクタ72の出力信号及びNOTゲート75の出力信号が入力され、出力がNOTゲート76の入力に接続されている。NOTゲート76の出力は、NOTゲート77の入力に接続されている。NOTゲート77の出力信号は、インジェクション制御信号INJ2_Nとなる。NOTゲート76及び77は、主にバッファとして機能し、論理演算処理においては不要であるため、設けなくてもよい。
図19は、第4のインジェクション制御回路70の動作を示したタイミングチャートである。
エクスクルシブORゲート71の出力信号O_XORは、入力信号の排他的論理和となるから、制御信号INNの論理と制御信号INP_1UIの論理とが不一致のとき(タイミングT61以前及びタイミングT62~T64)は、ハイレベルであり、制御信号INNの論理と制御信号INP_1UIの論理とが一致するとき(タイミングT61~T62及びT64以降)は、ローレベルとなる。セレクタ72の出力信号O_MUXは、出力信号O_XORがローレベルのときはハイレベルとなり、出力信号O_XORがハイレベルのときはローレベルとなる。
NOTゲート75の出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXを奇数回、論理反転させて遅延させた信号となる。したがって、出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXがハイレベルからローレベルになるタイミング(タイミングT62)から所定の遅延時間後のタイミング(タイミングT63)で、ローレベルからハイレベルになる。
NORゲート78の出力信号O_NORは、入力信号の否定論理和となるから、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもローレベルである間のみ、ハイレベルとなる。したがって、インジェクション制御信号INJ_Nも同様に、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもローレベルである間のみ、ハイレベルとなる(タイミングT62~T63)。
このインジェクション制御信号INJ2_Nがハイレベルとなる時間は、NOTゲート73~75で構成されている遅延回路の遅延時間によって規定される。この時間は、インジェクション制御信号INJ2_Nのインジェクションパルス幅IPWであり、トランジスタNm5及びトランジスタNe5がONする時間である。
このように、制御回路30が上記のインジェクション制御を実行するタイミングは、例えば、終端抵抗RTへ流れる出力電流Imainの方向と出力電流Iempの方向が同じ方向から相反する方向へ切り替わるタイミングから所定時間としてもよい。このタイミングは、終端抵抗RTの電圧VODの振幅が相対的に大きい状態(ディエンファシスが行われていない状態)から相対的に小さい状態(ディエンファシスが行われている状態)に変化するタイミングであるため、信号遷移の立ち下がりの遅れが生じやすい(タイミングT43~T44)。したがって、このタイミングから所定時間、上記のインジェクション制御を実行することによって、信号遷移の立ち下がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を的確に低減することができる。
より具体的には、再び図15を参照しながら説明すると、電源からメインドライバユニット10mへ流れる電流は、トランジスタPm5がONしてノードPTAILからグランドへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I5がトランジスタPm1を通じて流れる定電流から減算されて減少する。同様に、メインドライバユニット10mからグランドへ流れる電流は、トランジスタNm5がONして電源からノードNTAILへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I6がトランジスタNm1を通じて流れる定電流から減算されて減少する。つまり、トランジスタPm5及びNm5がONして定電流経路とは逆方向の電流経路が構成されることにより、その間、メインドライバユニット10mの出力電流が減少し、信号遷移の立ち下がりの応答性が向上する。
また、電源からエンファシスドライバユニット10eへ流れる電流は、トランジスタPe5がONしてノードPTAIL_1UIからグランドへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I7がトランジスタPe1を通じて流れる定電流から減算されて減少する。同様に、エンファシスドライバユニット10eからグランドへ流れる電流は、トランジスタNe5がONして電源からノードNTAIL_1UIへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I8がトランジスタNe1を通じて流れる定電流から減算されて減少する。トランジスタPe5及びNe5がONして定電流経路とは逆方向の電流経路が構成されることにより、その間、エンファシスドライバユニット10eの出力電流も減少し、さらに信号遷移の立ち下がり応答性が向上する。
本発明に係る送信機100において、インジェクション電流I1~I8は、例えば、トランジスタPm4、Nm4、Pe4及びNe4並びにトランジスタPm5、Nm5、Pe5及びNe5の各々のサイズ(ゲート幅等)を調整することによって、適切な電流値に設定することができる。適切な電流値は、例えば回路シミュレーションの結果から決定することができる。また、インジェクション制御信号INJ_Pとインジェクション制御信号INJ_Nは、インジェクションパルスに起因する高周波ノイズを低減する上では、可能な限りタイミング及びインジェクションパルス幅IPWを高精度に一致させるのが好ましい。同様に、インジェクション制御信号INJ2_Pとインジェクション制御信号INJ2_Nは、インジェクションパルスに起因する高周波ノイズを低減する上では、可能な限りタイミング及びインジェクションパルス幅IPWを高精度に一致させるのが好ましい。また、インジェクションパルス幅IPWは、終端抵抗RTの電圧VODの振幅にオーバーシュートが生じないようにする上で、例えば、1UIの幅より十分小さいのが好ましく、1UIを超えないのが好ましい。
また、本発明に係る送信機100において、制御回路30は、制御信号INP及びINNをメインドライバユニット10mへ出力するタイミング、並びに制御信号INP_1UI及びINN_1UIをエンファシスドライバユニット10eへ出力するタイミングを遅延させてもよい。それによって、第1のインジェクション制御回路40、第2のインジェクション制御回路50、第3のインジェクション制御回路60及び第4のインジェクション制御回路70で生ずる遅延時間に起因して、インジェクション制御信号INJ_P及びINJ_Nの出力タイミング並びにインジェクション制御信号INJ2_P及びINJ2_Nの出力タイミングが的確なタイミングに間に合わないような場合、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10eの動作タイミングを遅らせてタイミングを合わせることが可能になる。
また、本発明に係る送信機100において、メインドライバユニット10mは、電源からノードPTAILへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタPm4に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。さらに、ノードNTAILからグランドへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタNm4に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。同様に、エンファシスドライバユニット10eは、電源からノードPTAIL_1UIへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタPe4に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。さらに、ノードNTAIL_1UIからグランドへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタNe4に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。それによって、インジェクション電流I1~I4の電流値を調整することができるので、より的確なインジェクション制御が可能になる。
また、本発明に係る送信機100において、メインドライバユニット10mは、ノードPTAILからグランドへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタPm5に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。さらに、電源からノードNTAILへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタNm5に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。同様に、エンファシスドライバユニット10eは、ノードPTAIL_1UIからグランドへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタPe5に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。さらに、電源からノードNTAIL_1UIへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタNe5に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。それによって、インジェクション電流I5~I8の電流値を調整することができるので、より的確なインジェクション制御が可能になる。
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。