以下、図面を参照して本開示に係る実施形態について説明する。なお、図面には、複数の図面相互の関係の把握を容易にするために、右手系の直交座標系xyzを付すことがある。x方向及びy方向は、例えば、水平方向であり、また、y方向は、後述する型開閉方向である。+y方向は、後述する固定金型103から移動金型105への方向となっている。z方向は、例えば、鉛直方向であり、+z側が上方である。
また、以下の説明では、「固定ダイプレート12F」及び「移動ダイプレート12M」のように、「固定」及び「移動」の語が付く名称の部材の符号に「F」及び「M」の付加符号を付すことがある。また、この場合において、単に「ダイプレート12」というなど、「固定」及び「移動」並びに「F」及び「M」を省略して、両者を区別しないことがある。
(ダイカストマシンの概要)
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
ダイカストマシン1は、溶湯を金型101内へ射出して凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。なお、本実施形態の説明において、金型101内又は金型101の内部という場合、特に断りがない限り、ダイカスト品に対応するキャビティCa(製品部)又はこれを主とする空間を指すものとする。ダイカストマシン1において、射出は、金型101内を真空引きした状態で行われる。すなわち、ダイカストマシン1は、いわゆる真空ダイカスト法を実行する。溶湯となる金属材料は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。図1では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示しているが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。なお、金型101又は後述する金型本体は、ダイカスト品の種類に応じて交換されるものであり、ダイカストマシン1とは別個のものと捉えられてもよいし、ダイカストマシン1の一部と捉えられてもよい。
ダイカストマシン1は、例えば、金型101を保持するとともに、成形のための機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
マシン本体3の構成は、例えば、真空ダイカスト法を実行する公知の種々のダイカストマシンのマシン本体の構成と同様とされてよい。制御ユニット5についても同様である。従って、以下では、マシン本体3及び制御ユニット5の一例について、その概略を説明する。
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11と、金型101内の真空引きを行う真空装置31(図4参照)とを有している。
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させる(すなわち、型閉じを行う)。型閉じは、例えば、移動金型105及び固定金型103が互いに接触するまで(すなわち型接触まで)行われる。さらに、型締装置7は、移動金型105及び固定金型103を所定の型締力で互いに押し付け合わせる(すなわち、型締めを行う。)。型締めされた金型101内には製品と同一形状のキャビティCaが構成される。真空装置31は、型締めされた金型101内の真空引きを行う。射出装置9は、真空引きされたキャビティCaへ溶湯を射出・充填する。キャビティCaに充填された金属材料は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、ダイカスト品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際又はその後、押出装置11は、移動金型105からダイカスト品を押し出す。
型締装置7は、例えば、固定金型103を保持する固定ダイプレート12Fと、移動金型105を保持する移動ダイプレート12Mとを有している。両ダイプレート12は、互いに対向しており、その対向する側に固定金型103又は移動金型105を有している。なお、以下では、ダイプレート12、固定金型103及び移動金型105について、ダイプレート又は金型が互いに対向する側の面を前面といい、その反対側の面を背面ということがある。対向方向は、例えば、水平方向(y方向)である。
絶対座標系において移動ダイプレート12Mが上記の対向方向(型開閉方向)に沿って移動することによって、型開閉が行われる。また、型閉じ後、一方のダイプレート12(図示の例では固定ダイプレート12F)に固定されたタイバー13を他方のダイプレート12(図示の例では移動ダイプレート12M)の背面側へ引っ張ることにより、タイバー13の伸長量に応じた型締力が金型101に付与される。
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する射出駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側(図1の紙面左側)を前方、その反対側を後方ということがある。
スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には溶湯をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。射出駆動部25は、液圧シリンダ及び/又は電動機を含んで構成されている。
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の注湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aからスリーブ21内へ供給される。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
押出装置11は、例えば、ダイカスト品に当接して押圧する複数の押出ピン14と、当該押出ピン14を駆動する押出駆動部15とを有している。
押出ピン14は、型開閉方向において、移動金型105に挿通されている。押出駆動部15は、例えば、液圧シリンダ又はリニアモータ等の直線運動を生じるアクチュエータによって構成されており、ガイドピン及び押出板等(符号省略)を介して押出ピン14と直列に連結されている。
溶湯が金型101内に射出されている間、押出駆動部15は、押出ピン14を所定の待機位置に待機させる。この待機位置は、例えば、押出ピン14の先端面が移動金型105の前面(その凹凸の表面)と面一になる位置である。そして、押出駆動部15は、型開きの際、又は型開き後、押出ピン14を固定金型103側へ移動させ、移動金型105からダイカスト品を押し出す。
真空装置31は、例えば、図4に模式的に示すように、金型101内に通じるタンク35と、当該タンク35から排気を行うポンプ37と、ポンプ37を駆動する電動機39と、タンク35と金型101内との間の気体(例えば空気)の流れを許容及び禁止するバルブ33とを有している。
真空装置31は、真空引き(金型101側からの吸気)に先立って、バルブ33が閉じられた状態でポンプ37によってタンク35の排気を行い、タンク35内を減圧しておく。そして、バルブ33を開くことによって、金型101側からタンク35への吸気を開始し、バルブ33を閉じることによって吸気を停止する。予めタンク35を減圧しておくことにより、急速に金型101側からの吸気を行うことができる。
なお、後述する説明から理解されるように、キャビティCaと真空装置31との間には両者の間の流れを許容及び禁止するバルブが介在しており、真空装置31による金型101側からの吸気の開始又は停止は、キャビティCa内の真空引きの開始又は停止を必ずしも意味しない。ポンプ37は、バルブ33の開閉に関わらずに、常時駆動されていてもよいし、必要に応じて駆動されてもよい。
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置16(図4参照)と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17と、画像を表示する表示装置18と、を有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
制御装置16は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置16は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置16は、型締装置7、射出装置9、押出装置11及び真空引きに係る構成毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置18及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分等の適宜な位置に設けられてよい。表示装置18は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
なお、ダイカストマシン1のうち真空引きに係る構成に着目する場合において、制御ユニット5は、真空引きに係る構成の制御ユニットとして捉えられてよい。
(金型の概要)
図2は、金型101の構成を模式的に示す斜視図である。
固定金型103及び移動金型105は、キャビティCaを構成する固定金型本体107F及び移動金型本体107Mと、キャビティCaの真空引きを行う流路を開閉するためのバルブ109(真空バルブ)とを有している。
バルブ109は、固定金型103に含まれる(固定金型本体107Fに位置している)固定バルブユニット111Fと、移動金型105に含まれる(移動金型本体107Mに位置している)移動バルブユニット111Mとを有している。なお、図2では、バルブユニット111は、その具体的な構成については図示が省略されており、概略の外形のみが示されている。
金型本体107の前面(換言すれば金型合わせ面又は分割面)には、種々の目的で凹部及び/又は凸部を含む凹凸部等が形成されている。例えば、キャビティCaを構成するための凹凸部107aが形成されている。通常、凹凸部107aは、双方の金型本体107に形成される。図2は、模式図であることから、いずれの金型本体107の凹凸部107aも、直方体状の凹部として示されている。また、例えば、固定金型本体107Fには、スリーブ21が挿通される、又はスリーブ21と連結される(図1の例では前者)貫通孔107bが形成されている。また、例えば、金型本体107の前面には、貫通孔107bとキャビティCaとを接続する湯道を構成するための凹凸部107cも形成されている。図示の例では、移動金型本体107Mにのみ凹凸部107cが形成されており、また、その形状は、図2が模式図であることから簡略化して示されている。なお、特に図示しないが、凹凸部107aの周囲には、いわゆる湯溜まり(オーバーフロー)を構成する凹凸部が構成されていてもよい。
また、金型本体107の前面には、キャビティCaとバルブ109とを接続する接続流路107dを構成する凹凸部107eが形成されている。接続流路107dは、バルブ109内の、後述するユニット流路115(図3参照)とともに、キャビティCaを排気するための排気流路113を構成している。接続流路107dを構成する凹凸部107eは、1対の金型本体107のうち一方のみに形成されてもよいし、双方に形成されてもよい。本実施形態では、主として、1対の金型本体107の双方に凹部からなる凹凸部107eが形成される態様を例示する。
接続流路107dの形状及び寸法は適宜に設定されてよい。例えば、接続流路107dは、キャビティCaの上面又は側面から、全体として上方へ延びている。別の観点では、接続流路107dは、全体として、キャビティCaから貫通孔107bとは反対側へ延びている。接続流路107dは、直線状であってもよいし、曲がる部分を含んでいてもよいし、断面積が一定であってもよいし、断面積が変化してもよい。また、接続流路107dとキャビティCaとの間には、不図示の湯溜まりが介在していてもよい。なお、この場合の湯溜まりは接続流路107dの一部と捉えられても構わない。
固定バルブユニット111Fは、固定金型本体107Fに対してその前面側に位置している。同様に、移動バルブユニット111Mは、移動金型本体107Mに対してその前面側に位置している。別の観点では、バルブユニット111は、金型本体107から前面側へ露出している。そして、1対のバルブユニット111は、型閉じに伴って互いに当接し(合体し)、型開きに伴って互いに分離する。なお、バルブ109においては、合体によって凹溝が貫通孔になったりするが、本実施形態の説明では、便宜上、合体した状態を前提とした表現をすることがある。
バルブユニット111は、金型本体107の前面において、キャビティCa(凹凸部107a)に対して外縁側に位置しており、金型本体107の外周面(型開閉方向に平行な軸(y軸)回りの面)から露出している。より具体的には、例えば、バルブユニット111は、金型本体107の上面から露出している。別の観点では、バルブユニット111は、キャビティCaに対して貫通孔107bとは反対側に位置している。バルブユニット111の上面は、金型本体107の上面と面一になっていてもよいし(図示の例)、金型本体107の上面よりも上方に位置していてもよいし、金型本体107の上面よりも下方に位置していてもよい。
バルブユニット111は、後述する説明から理解されるように、金型本体107に対して固定的な部分(バルブ本体等)と、当該部分に対して移動する部分(閉止部品等)とを有している。バルブユニット111は、固定的な部分が金型本体107とは別個に形成されて、金型本体107に取り付けられてもよいし、固定的な部分の一部又は全部が金型本体107と一体的に形成されてもよい。本実施形態の説明では、主として前者を例にとる。
既述のように、金型本体107は、例えば、直彫り式のものでもよいし、入れ子式のものでもよい。金型本体107が入れ子式のものである場合において、バルブユニット111のおも型及び入れ子に対する相対位置は適宜に設定されてよい。例えば、バルブユニット111は、おも型のみに位置してよい。
(バルブの概要)
図3はバルブ109の構成を模式的に示す斜視図である。図4及び図5は、固定バルブユニット111Fを前面側から見た図(一部に断面図を含む)であり、図4は、バルブ109が開かれている状態(開状態)を示し、図5は、バルブ109が閉じられている状態(閉状態)を示している。ただし、図4及び図5は、1対のバルブユニット111が合体した状態のバルブ109からすれば断面図であり、固定バルブユニット111Fの前面にもハッチングを付している。
バルブ109は、キャビティCaを真空引きするための排気流路113を構成するユニット流路115を有している。ユニット流路115の上流端115aは、キャビティCa(厳密には接続流路107d)に接続される。ユニット流路115の下流端115bは、金型101の外部に開放されており、真空装置31が接続される。また、バルブ109は、ユニット流路115の中途に位置する開閉部117を有している。開閉部117は、狭義のバルブとも言える部分であり、ユニット流路115を開閉する。
開閉部117及び真空装置31のバルブ33が開かれることにより、キャビティCaからタンク35へのユニット流路115を介した気体の流れが許容される。すなわち、金型101内の真空引きが行われる。なお、開閉部117及び真空装置31のバルブ33を開くタイミングは、同時であってもよいし、いずれかが先であってもよい。すなわち、真空引きの開始を規定するのは、バルブ109であってもよいし、バルブ33であってもよい。
また、例えば、開閉部117が閉じられることによって、金型101内の真空引きが終了される。すなわち、真空引きの終了を規定するのは、バルブ109である。また、開閉部117が閉じられることにより、溶湯の真空装置31への流れが禁止され、例えば、真空装置31が溶湯から保護される。
また、別の観点では、固定バルブユニット111Fは、固定金型本体107Fに固定される固定基部119Fを有している。移動バルブユニット111Mは、移動金型本体107Mに固定される移動基部119Mを有している。そして、1対の基部119(一方のみでもよい)に対して、種々の部材が移動可能に又は移動不可能に取り付けられることによって、1対のバルブユニット111が構成されている。
基部119の概略形状(前面の形状を除く形状)は、適宜な形状とされてよい。図3では、基部119の概略形状は、直方体状である。1対の基部119は、例えば、前面の広さが互いに概ね同等である。1対の基部119は、前面から背面までの厚さが互いに同一であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。基部119は、金型本体107に対してねじ等によって着脱可能に固定されていてもよいし、溶接等によって着脱不可能に固定されていてもよい。また、基部119は、既に触れたように、図示の例とは異なり、金型本体107と一体的に形成されていてもよい。
ユニット流路115は、例えば、主として、1対のバルブユニット111の間に構成されている。より具体的には、例えば、1対の基部119の少なくとも一方の前面に凹部(必要に応じて凸部)を含む凹凸部(符号省略)が形成されることによって、ユニット流路115が構成されている。なお、本実施形態では、主として、双方の基部119に、同等の深さかつ型開閉方向に平面透視して互いに同一の形状の凹部が形成されている場合を例に取る。
ユニット流路115の形状は、後に詳述するように、種々の形状とされてよい。ただし、ユニット流路115の一部には金型本体107から溶湯が入り込み、凝固する。従って、ユニット流路115のうち、溶湯が入り込むことが想定されている部分は、例えば、いわゆるアンダーカットが生じない形状とされてよい。確認的に記載すると、アンダーカットは、ダイカスト品が金型(ここでは固定金型103及び移動金型105)に対して金型から離れる方向に係合してしまう形状をいう。
ユニット流路115の中途には、上述のように開閉部117が位置している。換言すれば、ユニット流路115は、開閉部117よりもキャビティCa側に位置する上流側流路121と、開閉部117よりも金型101の外部側(真空装置31側)に位置する下流側流路123とを有している。開閉部117は、上流側流路121と下流側流路123とを接続又は遮断するバルブとして機能する。上流側流路121は、溶湯が入り込むことが想定されている部分であり、上記のようにアンダーカットが生じない形状とされてよい。
(開閉部)
図6(a)は、図4の一部拡大図である。図6(b)は、図5の一部拡大図である。これらの図において、開閉部117の紙面左側は上流側流路121であり、開閉部117の紙面右側は下流側流路123である。
開閉部117は、バルブ本体125と、バルブ本体125に対して移動可能な閉止部品127とを有している。
バルブ本体125は、例えば、上流側流路121に開口する(キャビティCaに通じる)内側ポート125aと、下流側流路123に開口する(金型101の外部に通じる)外側ポート125bと、内側ポート125aと外側ポート125bとを接続している空間125sとを有している。
一方、閉止部品127は、空間125s内に位置しており、また、バルブ本体125に対して内側ポート125a及び外側ポート125bの開口方向(x方向)に交差(例えば直交)する方向(z方向)に移動可能である。また、閉止部品127は、内側ポート125a及び外側ポート125bを塞ぐことが可能な閉塞部127aと、内側ポート125a及び外側ポート125bをつなぐバルブ流路117aを構成する開放部127bとを有している。
従って、図6(b)に示すように、閉塞部127aが内側ポート125a及び外側ポート125bを塞ぐ閉位置へ閉止部品127が移動することによって、開閉部117は閉状態となる。また、図6(a)に示すように、開放部127bが内側ポート125a及び外側ポート125bに位置する開位置へ閉止部品127が移動することによって、開閉部117は開状態となる。
また、内側ポート125a及び外側ポート125bは、閉止部品127の移動方向(z方向)に複数配列されている。また、閉止部品127は、複数の閉塞部127a及び複数の開放部127bを移動方向に交互に有している。複数の内側ポート125a及び複数の外側ポート125bそれぞれのz方向におけるピッチ(例えば中心同士又は幾何学上の重心同士の距離。以下、同様。)と、複数の閉塞部127a(別の観点では複数の開放部127b)のピッチとは同等である。
従って、閉止部品127が閉位置にあるとき、複数の内側ポート125a及び複数の外側ポート125bは、複数の閉塞部127aによって同時に塞がれる。また、閉止部品127が開位置にあるとき、複数の内側ポート125a及び複数の外側ポート125bは、複数の開放部127bによって同時に連通される。開位置と閉位置との距離は、複数の内側ポート125a等のピッチの概ね半分である。
ここで、1つの内側ポート125a、1つの外側ポート125b、1つの閉塞部127a及び1つの開放部127bの組み合わせをバルブ要素117eとする。そして、例えば、本実施形態とは異なり、バルブ要素117eが一つのみ設けられている態様を仮定する。この態様において、閉塞部127aが内側ポート125a及び外側ポート125bをぎりぎり完全に塞ぐ位置(閉位置の一種と捉えられてよい)から閉塞部127aがこれらのポートからぎりぎり完全に退避する位置(開位置の一種と捉えられてよい)までの閉塞部127aの移動距離(換言すれば、閉塞部127aの+z側の縁部がポートの+z側の縁部からポートの-z側の縁部まで移動するときの距離)は、ポートのz方向(閉止部品の移動方向)の径と同等である。
本実施形態においても、1つのバルブ要素117eに着目した場合においては、閉塞部127aが内側ポート125a及び外側ポート125bをぎりぎり完全に塞ぐ位置からぎりぎり完全に退避する位置までの距離は、上記の態様と同様であり、ポートのz方向の径と同等である。ただし、本実施形態では、複数のバルブ要素117eが同時に開閉される。その結果、バルブ全体としては、上記の態様に比較して、同一の距離で開閉される開口面積(別の観点では開口のz方向の径の合計)が大きくなる。ひいては、短時間で大きな開口面積を開閉できる。
なお、上記においては、閉止部品127の移動距離が開口面積に比較して短くなることを説明する便宜上、当該移動距離がポートのz方向の径と同等であるものとして説明した。以下の説明では、主として、当該移動距離として、複数のバルブ要素117eのピッチの半分を例にとる。
バルブ本体125及び閉止部品127(別の観点では複数のバルブ要素117e)の具体的な形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。以下では、その一例について説明する。
(バルブ本体)
バルブ本体125は、例えば、1対の基部119の少なくとも一方(本実施形態では双方)によって構成されている。より具体的には、例えば、1対の基部119の少なくとも一方(本実施形態では双方)の前面には、凹部及び/又は凸部を含む凹凸部(符号省略)が構成されている。そして、1対の基部119が型閉じに伴って合体することにより、1対の基部119の間に、内側ポート125a、外側ポート125b及び空間125sの少なくとも1つ(本実施形態では全て)が構成される。
(内側ポート)
図7(a)は、内側ポート125aをその開口方向に見た図である。
図3及び図7(a)から理解されるように、また、既に言及したように、内側ポート125aは、例えば、1対のバルブユニット111の間に構成されている。より詳細には、例えば、特に符号を付さないが、1対の基部119の少なくとも一方(図示の例では双方)の前面には、型開閉方向に突出し、その頂部に複数の切欠き部が形成された壁部が設けられている。そして、型閉じに伴って1対の基部119が合体すると、当該複数の切欠き部によって複数の内側ポート125aが構成される。
図7(a)に示されているように、内側ポート125aの開口方向(x方向)に見た形状(開口形状)は、例えば、矩形に形成されている。矩形の2辺は、例えば、閉止部品127の移動方向(z方向)に平行であり、他の2辺は、移動方向に対して直交する。この場合、例えば、内側ポート125aにおいては、z方向(閉止部品127の移動方向)の全体に亘って最大幅(y方向)が維持されることになる。その結果、閉止部品127の移動距離に対する開閉部117の開口面積を最大にすることができる。もちろん、開口形状は、円形、楕円形、矩形以外の多角形等、他の適宜な形状とされてよい。
また、内側ポート125aの開口形状は、例えば、閉止部品127の移動方向(z方向)に直交する方向(y方向)における径が、移動方向における径よりも大きい形状とされている。すなわち、上記の矩形は、y方向に長い長方形である。この場合、例えば、z方向の径がy方向の径よりも大きい態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、閉止部品127の移動距離に対する開閉部117の開口面積を大きくすることができる。もちろん、矩形以外でも、y方向の長さ(例えば最大値)がz方向の長さ(例えば最大値)よりも大きくされてよい。
また、別の観点では、内側ポート125aの開口形状は、例えば、1対の基部119の合わせ面に対して、合わせ面から離れるにつれて拡径しない形状(いわゆるアンダーカットが生じない形状)とされている。これにより、例えば、内側ポート125aに溶湯が入り込んで凝固しても、型開きに伴ってダイカスト品と共に内側ポート125a内の金属材料を除去しやすい。このような形状は、図示しているような矩形の他、合わせ面等を適宜に設定すれば、円形、楕円形又は矩形以外の多角形でも可能である。
図6(a)及び図6(b)に示されているように、内側ポート125aの開口面積は、開口方向(x方向)の位置に寄らずに一定である。ただし、例えば、キャビティCa側ほど、及び/又は金型101の外部側ほど拡径していても構わない。
複数の内側ポート125aの数は、2以上であれば適宜に設定されてよい。もちろん、バルブ要素117eの数が多いほど、閉止部品127の移動距離に対して開閉部117の開口面積を大きくする効果は増大する。例えば、複数の内側ポート125aの数は、3以上又は5以上とされてよい。
複数の内側ポート125aの形状及び寸法は、例えば、互いに同一とされている。また、内側ポート125aが3つ以上設けられている場合において、複数の内側ポート125aのピッチは一定である。ただし、複数の内側ポート125aの形状、寸法及び/又はピッチは、互いに異ならせることも可能である。例えば、ユニット流路115の経路上、キャビティCaに近い(別の観点では溶湯が先に到達する)内側ポート125aほど先に完全に閉状態となるように、キャビティCaに近い内側ポート125aほどキャビティCa側(図示の例では-z側)へ径を縮小してもよい。
内側ポート125aの閉止部品127の移動方向(z方向)における径は、複数の内側ポート125aのピッチよりも小さく、複数の内側ポート125aは、互いに間隔を開けて配列されている。図6(a)から理解されるように、複数の内側ポート125a間の部分は、開状態において閉止部品127の複数の閉塞部127a(ただし、一端の閉塞部127aは除く)が位置する部分となる。内側ポート125aのz方向における径と、内側ポート125a間の距離とは、同等であってもよいし、一方が他方よりも大きくてもよい。別の観点では、内側ポート125aのz方向の径は、複数の内側ポート125aのピッチの半分と同等であってもよいし、小さくてもよいし(図示の例)、大きくてもよい。
内側ポート125aのz方向(閉止部品127の移動方向)の径が、複数の内側ポート125aのピッチの半分よりも小さい場合、この内側ポート125aを塞ぐ閉塞部127aの大きさも、半ピッチよりも小さくされてよい。別の観点では、複数の閉塞部127a間の開放部127bのz方向の径は、半ピッチよりも大きくできる。従って、開状態において内側ポート125a及び開放部127bの重なりによって構成される開口のz方向の径は、内側ポート125aによって規定され、また、内側ポート125aが半ピッチに近いほど大きくなる。
逆に、内側ポート125aのz方向(閉止部品127の移動方向)の径が、複数の内側ポート125aのピッチの半分よりも大きい場合、この内側ポート125aを塞ぐ閉塞部127aの大きさは、半ピッチよりも大きくされなければならない。別の観点では、複数の閉塞部127a間の開放部127bのz方向の径は、半ピッチよりも小さくされる。従って、開状態において内側ポート125a及び開放部127bの重なりによって構成される開口のz方向の径は、開放部127bによって規定され、また、開放部127bが半ピッチに近いほど、最大径は大きくなる。
上記から理解されるように、内側ポート125a及び開放部127bの重なりによって構成される開口のz方向(閉止部品127の移動方向)の径の規定に優先される開口は、内側ポート125a及び開放部127bのいずれであってもよい。
さらに、上記から理解されるように、上記の重なりによる開口の径が最大となるのは、内側ポート125a及び開放部127b双方のz方向(閉止部品127の移動方向)の径が半ピッチとなる場合である。ただし、内側ポート125a及び/又は開放部127bを確実に塞ぐために、閉塞部127aが内側ポート125aよりも若干大きくされてよい、及び/又は内側ポート125a間の部分が開放部127bよりも若干大きくされてよい。別の観点では、内側ポート125a及び/又は開放部127bは、半ピッチよりも小さくされてよい。例えば、内側ポート125a及び/又は開放部127bのz方向の径(円形の開口のようにz方向の径がx方向において均一でない場合は例えば最大径)は、ピッチの0.3以上0.5未満(半ピッチの0.6以上1未満)とされてよい。
内側ポート125aのz方向(閉止部品127の移動方向)径と、開放部127bのz方向の径とは、同等であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。同等の場合は、例えば、両者の重なりによって構成される開口のz方向の径を大きくしやすい。
(外側ポート)
複数の外側ポート125bの構成は、例えば、x方向の位置を除いて、複数の内側ポート125aの構成と同様とされてよい。従って、上記における内側ポート125aの説明は、基本的に、「内側ポート125a」を「外側ポート125b」に置換して、外側ポート125bの説明とされてよい。
(バルブ本体の空間)
空間125sは、閉止部品127を内側ポート125a及び外側ポート125bの開口方向に直交する方向(z方向)に摺動可能に収容する。従って、空間125sは、基本的には、z方向に直交する断面の形状がz方向に一定の形状である。当該断面の形状は、適宜な形状とされてよく、本実施形態では矩形である。すなわち、空間125sは、直方体状の空間である。
(閉止部品)
図7(b)は、閉止部品127の構成を示す斜視図である。
閉止部品127は、例えば、z方向を軸方向とする概略柱形状の部材に複数の貫通孔が形成されて構成されている。複数の貫通孔は、開放部127bを構成している。閉止部品127のうち、複数の開放部127bの間の部分、及び複数の開放部127bに対して一端側(-z側)に位置する部分は、複数の閉塞部127aを構成している。
閉止部品127は、上述した空間125sをz方向に摺動するから、柱の軸に直交する断面(z方向に直交する断面)の形状及び大きさは、空間125sのz方向に直交する断面の形状及び大きさと概略同一であり、また、本実施形態では矩形である。すなわち、閉止部品127は、基本的に、概略直方体状とされている。なお、閉止部品127の両端は、空間125sの形状とは異なる形状とされても構わない。
複数の開放部127bは、例えば、閉止部品127の移動方向に直交する方向(x方向)に直線状に延びている。その横断面(x方向に直交する断面)の形状及び寸法は、例えば、x方向において一定である。当該横断面の形状及び寸法は、内側ポート125a及び/又は外側ポート125bの開口形状及びその寸法と同様であってもよいし、異なっていてもよい。図示の例では、開放部127bの横断面の形状は、z方向の径が内側ポート125a及び外側ポート125bのz方向の径と同じ矩形である。矩形に関するメリットは、内側ポート125aの説明で例示したとおりである。なお、本実施形態の説明で図示する例では、開放部127bのy方向の径は、内側ポート125a及び外側ポート125bのy方向の径よりも小さくされているが、同等であってもよいし、大きくてもよい。
複数の開放部127b及び複数の閉塞部127aは、複数の内側ポート125a及び複数の外側ポート125bに対応するものである。従って、その数及びピッチ等は、複数の内側ポート125a及び複数の外側ポート125bの数及びピッチ等に対応している。換言すれば、内側ポート125aに関する説明の一部は、複数の開放部127b及び複数の閉塞部127aの説明に適用されてよい。例えば、複数の開放部127b(複数の閉塞部127a)の形状、寸法及びピッチは、互いに同一であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。また、例えば、複数の開放部127bのz方向の径は、半ピッチと同等であってもよいし、小さくてもよいし、大きくてもよい。
閉止部品127は、例えば、最も開位置側(-z側)の開放部127bから-z側の面までの部分(下端部127e。最も-z側の閉塞部127aを含んでいる。)の厚さ(z方向)が、最も閉位置側(+z側)の開放部127bから+z側の面までの部分(上端部127f)の厚さ(z方向)よりも大きくなっている。後述するように、下端部127eには溶湯が衝突する。従って、例えば、下端部127eが相対的に厚いことにより、閉止部品127の破損のおそれが抑制される。ただし、下端部127eの厚さは、閉塞部127aの厚さと同等であっても構わない。
本実施形態では、閉止部品127は、最も閉位置側(+z側)の開放部127bよりも+z側に位置する部分(上端部127f)を有している。ただし、図6(a)及び図6(b)から理解されるように、当該上端部127fは、閉塞部127aとして機能していないから、省略されても構わない。この場合、特に図示しないが、複数の内側ポート125aと複数の外側ポート125bとを接続する複数のバルブ流路117aのうち、最も+z側に位置するバルブ流路117aは、閉止部品127を貫通する貫通孔ではなく、開放部としての閉止部品127の上面と、バルブ本体125の空間125sを構成する壁面とで構成される。
閉止部品127は、1対のバルブユニット111の一方(図示の例では固定バルブユニット111F)に設けられている(図3も参照)。より詳細には、閉止部品127は、当該一方のバルブユニット111の基部119(図示の例では固定基部119F)に対して、移動可能に取り付けられている。閉止部品127は、適宜な方法によって、固定基部119Fから前面側への離反が規制されたり、-z側及び+z側の駆動限が規定されたりしてよい。例えば、閉止部品127は、固定基部119Fにおいてz方向に延びる不図示のキー溝によって、固定基部119Fから前面側への離反が規制されてよい。また、閉止部品127は、閉止部品127に対してz方向に当接するストッパが固定基部119Fに設けられることにより(キー溝の一端がストッパとして機能してもよい)、-z側及び+z側の駆動限が規定されてよい。閉止部品127は、後述するアクチュエータの駆動限によって、-z側及び+z側の駆動限が規定されてもよい。
(上流側流路)
図4及び図5に戻って、上流側流路121は、キャビティCa(厳密には接続流路107d)側から延びる第1流路129と、第1流路129の中途又は終端(図示の例)から開閉部117(内側ポート125a)へ延びる第2流路131とを有している。
第1流路129は、例えば、一端(-z側の端部)がキャビティCa(厳密には接続流路107d)に通じ、他端(+z側の端部)が閉止部品127に接している。当該他端を含む少なくとも一部(図示の例では全部)が閉止部品127の移動方向(z方向)に延びている。より詳細には、第1流路129は、例えば、直線状に、かつ閉止部品127の移動方向に平行に延びて、閉止部品127に到達している。第1流路129から閉止部品127への方向は、閉止部品127の開位置から閉位置への方向(+z方向)である。
従って、例えば、キャビティCa内へ溶湯が射出され、溶湯がキャビティCaの全体に概ね行き渡り、さらには、溶湯が接続流路107dから第1流路129へ流れ込むと、溶湯が閉止部品127(より詳細には下端部127eの下面)に衝突する。これにより、閉止部品127は、開位置から閉位置へ移動する。
第1流路129の横断面(z方向に直交する面)の形状及び面積は適宜に設定されてよく、また、当該形状及び面積は、第1流路129の延びる方向において一定であってもよいし、変化してもよい。下端部127eの形状は、既に述べたように、適宜な形状とされてよい。ただし、例えば、下端部127eは、金型101を型開きしたときに、アンダーカットが生じない形状とされてよい。一例として、例えば、下端部127eは、図示の例のように、空間125sの横断面の形状(ここでは矩形)と同一の形状を有する平面状の下面を有する形状とされてよい。
第2流路131における、第1流路129から複数の内側ポート125a(例えば最もキャビティCaに近い内側ポート125a)までの距離は、第1流路129の、第2流路131との接続位置から閉止部品127(例えば開位置及び閉位置のいずれを基準としてもよい。)までの距離よりも長い。従って、金型本体107から上流側流路121に流れ込んだ溶湯は、第1流路129にて閉止部品127に衝突した後、内側ポート125aに到達する。その結果、開閉部117が完全に閉じられる前に溶湯が開閉部117へ到達してしまうおそれが低減される。
第2流路131は、例えば、閉止部品127の移動方向(z方向)に往復するように蛇行して延びる蛇行部131aを有している。そして、複数の内側ポート125aは、蛇行部131aの、z方向に延びる複数の流路(符号省略)のうち、最も第1流路129から離れている流路の側面に開口している。これにより、第2流路131全体が占める体積を小さくしつつ、第2流路131の距離を長くすることが容易化されている。
蛇行部131aは、1往復するだけの構成でもよく、図示の例では、蛇行部131aは、1往復と片道との組み合わせ(z方向に延びる3本の流路)を有している。また、蛇行部131aにおいて、z方向に沿って(例えば直線状かつz方向に平行に)延びる複数の流路は、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。第2流路131の横断面の形状及び面積は適宜に設定されてよく、また、当該形状及び面積は、第2流路131の延びる方向において一定であってもよいし、変化してもよい。
(下流側流路及びホースカプラ)
下流側流路123は、例えば、閉止部品127の移動方向(z方向)に沿って(例えば直線状かつz方向に平行に)延びている。その一端は、金型101の外周面(ここでは上面)に到達して金型101の外部に通じている。そして、複数の外側ポート125bは、下流側流路123の側面に開口している。下流側流路123の横断面(z方向に直交する断面)の形状及び面積は適宜に設定されてよく、また、当該形状及び面積は、下流側流路123の延びる方向において一定であってもよいし、変化してもよい。
下流側流路123の下流側の端部には、ホースカプラ133が設けられている。ホースカプラ133は、例えば、真空装置31から延びる不図示のホースの装着又は着脱に寄与する。ホースカプラ133は、例えば、1対のバルブユニット111の一方(図示の例では固定バルブユニット111F)に設けられており(図3も参照)、より詳細には、当該一方のバルブユニット111の基部119(図示の例では固定基部119F)に固定されている。
(閉止部品の駆動機構)
閉止部品127を開位置及び/又は閉位置へ移動(又は位置保持)させる駆動機構は、適宜な構成とされてよい。以下では、閉止部品127の閉位置への移動が上記のように溶湯から受ける力によってなされる構成を前提として、駆動機構の一例を挙げる。
バルブ109は、例えば、閉止部品127を開位置へ移動させる液圧式(例えば油圧式)のシリンダ装置135を有している。シリンダ装置135は、シリンダ部137と、シリンダ部137内を摺動可能な不図示のピストンと、ピストンに固定されており、シリンダ部137から延び出るロッド139とを有している。そして、ピストンによって区画されているシリンダ部内の2つのシリンダ室に選択的に作動液を供給することにより、不図示のピストン及びロッド139がシリンダ部137に対して軸方向に移動する。
シリンダ部137は、例えば、1対の基部119の一方(図示の例では固定基部119F)に固定されている。ロッド139は、閉止部品127に固定されている。また、シリンダ装置135は、閉止部品127に対して同軸的に連結されている。すなわち、シリンダ装置135の軸方向(シリンダ部137に対するロッド139の移動方向)は、z方向である。従って、シリンダ部137に対するロッド139の移動により、閉止部品127は移動する。より具体的には、例えば、シリンダ部137は、固定基部119Fの上面にねじ等によってロッド139を下方にする向きで固定されている。そして、ロッド139がシリンダ部137から延び出る方向への駆動によって、閉止部品127は、閉位置から開位置へ移動する。
シリンダ装置135への作動液の供給は、液圧装置141(図4)によってなされる。特に図示しないが、液圧装置141は、例えば、作動液を貯留するタンク、作動液を送出する液圧源(例えばポンプ及び/又はアキュムレータ)、液圧源からシリンダ装置135への作動液の流れ等を制御する複数のバルブ等を含んで構成されている。液圧装置141は、制御装置16によって制御される。
なお、本実施形態においては、真空引きの開始から開閉部117が閉じられるまでを含む所定期間(例えばシリンダ装置135によって開閉部117を開くとき以外の期間)において、シリンダ装置135は、例えば、2つのシリンダ室のいずれも圧抜きがされる。すなわち、シリンダ装置135は駆動力を生じない。また、シリンダ装置135は、閉止部品127を開く方向への力のみを生じる構成(単動式)であってもよい。
上記の説明では、シリンダ装置135を例に挙げた。これを上位概念で表現すると、バルブ109は、例えば、直線運動を生じるアクチュエータ(シリンダ装置135)を有しており、当該アクチュエータは、基部119に固定される固定部(シリンダ部137)と、閉止部品127に固定され、固定部に対して閉止部品127の移動方向に駆動される可動部(ロッド139)とを有している。このようなアクチュエータとしては、液圧式のシリンダ装置の他、例えば、空気圧式のシリンダ装置及びリニアモータを挙げることができる。
また、バルブ109は、閉止部品127を開位置の方向へ付勢するばね143を有している。ばね143の付勢力は、第1流路129の溶湯が閉止部品127を閉位置へ押す力よりも小さい。このようなばね143を設けることにより、例えば、溶湯によって閉止部品127が閉位置へ移動するときの衝撃を緩和したり、及び/又はシリンダ装置135が駆動力を生じていない期間(例えば型開閉中及び/又は射出中)に閉止部品127が不要な移動を生じることを抑制したりできる。
ばね143は、具体的には、例えば、つる巻ばねによって構成されている。そして、ロッド139(可動部)が挿通され、かつシリンダ部137(固定部)と閉止部品127とによって圧縮された状態で基部119(本実施形態では固定基部119F)に配置されている。
(トラップ流路)
バルブ109は、上流側流路121に接続されているトラップ流路145を有している。トラップ流路145は、上流側流路121のうちの、複数の内側ポート125aが開口している位置よりもキャビティCaに通じる側とは反対側(ここでは+z側)の位置に接続されている。従って、例えば、溶湯が複数の内側ポート125aに到達するほどにバルブ109内に引き込まれたときに、その溶湯(圧力)をトラップ流路145に逃がすことができる。その結果、例えば、溶湯が開放部127bに入り込むおそれを低減できる。トラップ流路145は、上流側流路121のうちの適宜な位置に接続されてよく、また、適宜な方向に延びてよい。図示の例では、トラップ流路145は、上流側流路121の上方へ向かう端部に直列に接続され、上方に延びている。
図8は、図3のVIII-VIII線における断面図である。すなわち、トラップ流路145及びその周辺の断面図である。
トラップ流路145は、例えば、型閉じに伴って1対のバルブユニット111が合体されることによって両者の間に構成される。また、トラップ流路145は、型開閉方向(y方向)を波高の方向として波状に延びている部分を有している。なお、図示の例ではトラップ流路145の全部が波形状である。
トラップ流路145は、基部119とは異なる部材によって構成されてもよいし(図示の例)、基部119によって構成されてもよい。前者の場合、例えば、トラップ流路145を構成する固定トラップ部材147F及び移動トラップ部材147Mは、基部119よりも伝熱性が高い材料によって構成されていてよい。また、トラップ部材147は、基部119(さらには金型本体107)から外部へ露出していてよい。
このようにトラップ流路145を波形状にしたり、伝熱性が高い材料によって構成したりすることによって、例えば、溶湯の凝固が促進される。
なお、トラップ流路145は、キャビティCaと金型101の外部とを接続する排気流路113の中途に位置するのではなく、排気流路113から分岐する流路である。従って、トラップ流路145は、図8に示すように、金型101の外部に通じていなくてよい。
(押出ピン)
図9は、図3のXI-XI線における断面図である。図10は、移動バルブユニット111Mの前面のうち、開閉部117及びその周辺を示す図である。なお、図4及び図5と同様に、図10は、1対のバルブユニット111が合体した状態のバルブ109からすれば断面図であり、移動バルブユニット111Mの前面にもハッチングを付している。また、直交座標系xyzの向きから理解されるように、図10は、図4及び図5とは紙面左右方向が逆である。
上述のように、ダイカストマシン1は、固定金型103及び移動金型105の一方の金型(本実施形態では移動金型105)からダイカスト品を押し出す押出装置11(押出ピン14)を有している。そして、バルブ109は、この押出装置11の一部として(図示の例)、又は押出装置11とは別に、前記一方の金型(移動金型105)から、バルブ109内で凝固した金属(ダイカスト品と一体化されている不要部分)を押し出す押出ピン149(押出ピン14の一種と捉えられてもよい)を有していてもよい。
複数の押出ピン149は、例えば、移動基部119Mに対して型開閉方向に挿通されている。また、押出ピン149を駆動する機構を設ける位置によっては、移動基部119Mに加えて、移動金型本体107M等に挿通されていてよい。図示の例では、複数の押出ピン149は、ダイカスト品を押す押出ピン14を駆動する押出駆動部15に連結されており、例えば、特に図示しないが、移動金型本体107Mの一部又は全部にも挿通されている。なお、押出駆動部15とは別に、押出ピン149に専用の駆動部が設けられてもよい。
複数の押出ピン149の、型開閉方向に直交する平面内の位置は、バルブ109において、溶湯が入り込むことが想定されている範囲(例えば、上流側流路121、内側ポート125a及びトラップ流路145)内であれば、適宜な位置とされてよい。図示の例では、複数の(例えば全ての)内側ポート125aの位置に押出ピン149が設けられている。
このような内側ポート125aに位置する押出ピン149は、例えば、射出開始から型開きまでを含む期間においては、先端面を内側ポート125aの内面に位置させて待機し、型開きの際又は型開きの後に、内側ポート125a内に突出する。押出ピン149の横断面(図示の例ではy軸に直交する断面)の形状及び寸法は、内側ポート125a内に突出できる形状及び寸法であればよい。図示の例では、押出ピン149の横断面の形状は、内側ポート125aのz方向の径よりも若干小さい径の円形とされている。
以上のとおり、本実施形態に係るバルブ109は、金型101(金型本体107)の内部を排気する排気流路113を開閉するものである。バルブ109は、バルブ本体125と、閉止部品127とを有している。バルブ本体125は、金型101の内部と外部とを通じさせるポート(例えば内側ポート125a)を有している。閉止部品127は、バルブ本体125に対する所定の移動方向(z方向)における移動により、内側ポート125aを閉じる閉位置と、内側ポート125aを開く開位置との間で移動する。
さらに、バルブ本体125は、閉止部品127の移動方向(z方向)に並んでいるとともにz方向に交差する開口方向(x方向)に開口している複数のポート(例えば内側ポート125a)を有している。閉止部品127は、複数の閉塞部127aと、複数の開放部127bとを有している。複数の閉塞部127aは、閉止部品127が閉位置にあるときに複数の内側ポート125aをx方向の一方側(-x側)から塞ぐ。複数の開放部127bは、閉止部品127が開位置にあるときに複数の内側ポート125aを-x側に開放する(露出させる)。複数の閉塞部127a(そのうちの少なくとも複数の内側ポート125a側の部分)と、複数の開放部127b(そのうちの少なくとも複数の内側ポート125a側の部分)とはz方向(閉止部品127の移動方向)に交互に配列されている。
従って、図6(a)及び図6(b)を参照して説明したように、1つの内側ポート125a、1つの閉塞部127a及び1つの開放部127bのみが設けられている態様(1つのバルブ要素117eが設けられている態様)と比較すると、閉止部品127の移動距離が同等である一方で、開閉部117における開口面積は、バルブ要素117eの数が乗じられた大きさになる。その結果、閉じる時間の短縮と、開口面積の増大とを両立することができる。
また、例えば、本実施形態とは異なり、上方へ開口するポートに閉止部品を挿入する態様等では、閉止部品の全周に亘って溶湯が流れ込んで凝固する。別の観点では、閉止部品に対して固定金型側と移動金型側との双方で溶湯が凝固する。その結果、型開きにともなって閉止部品から金属材料を引き剥がすことはできず、型開きの前に閉止部品及びポートを含むバルブを金型から引き抜く動作が必要になる。一方、本実施形態のバルブ109は、内側ポート125aの開口方向に交差する方向に閉止部品127が移動するスライド式のものであることから、閉止部品127の全周に溶湯が流れ込まないようにすることができる。ひいては、バルブ109を金型101から引き抜くような動作は不要である。
また、本実施形態では、バルブ109は、金型101の型閉じによって互いに合体されて少なくともバルブ本体125を構成する第1部位及び第2部位(固定基部119F及び移動基部119M)を有している。ポート(例えば内側ポート125a)の開口方向は、金型101の開閉方向に交差(例えば直交)する方向である。複数の内側ポート125aは、固定基部119F及び移動基部119Mの間に構成される。
この場合、例えば、内側ポート125aが型開閉方向に貫通している態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、型開き状態において、内側ポート125aの内面を視認及び清掃しやすい。従って、例えば、ダイカスト品を移動金型105から押し出したときに、金属材料が内側ポート125aから剥がれずに、内側ポート125a内に残ってしまった場合に、当該金属材料の発見及び除去が容易である。
また、本実施形態では、バルブ109は、固定基部119F及び移動基部119Mに対して型開閉方向に移動可能に挿通され、複数の内側ポート125a内へ出入りする複数の押出ピン149を更に有している。
ここで、内側ポート125aのz方向(閉止部品127の移動方向)の径を小さくし、内側ポート125aのx方向(型開閉方向)の径を大きくし、内側ポート125aの数を多くするほど、閉止部品127の移動距離に対して開閉部117の開口面積を大きくできる。一方、このように寸法等を設定すると、複数の内側ポート125aは、容積に比較して内面の面積が大きくなる。ひいては、凝固した金属材料が内側ポート125aの内面から剥がれにくくなる。しかし、複数の内側ポート125aのそれぞれに対して押出ピン149を設けることによって、凝固した金属材料が内側ポート125a内に残るおそれを低減することができる。
また、本実施形態では、バルブ109(上流側流路121)は、第1流路129と、第1流路129から延びている第2流路131とを有している。第1流路129は、一端が金型101の内部に通じ、他端が閉止部品127に接しており、当該他端を含む少なくとも一部が閉止部品127の移動方向(z方向)に延びている。第2流路131は、z方向に往復するように蛇行して延びる蛇行部131aを有している。複数の内側ポート125aは、蛇行部131aの、z方向に延びる複数の流路のうち、最も第1流路129から離れている流路の側面に開口している。
このような構成により、溶湯の圧力を利用して閉止部品127を閉じることができること、閉止部品127が閉じられる前に溶湯が内側ポート125aに到達するおそれを抑制できることは既に述べたとおりである。ここで、閉止部品127の移動距離を短くしつつ、開閉部117の開口面積を大きくしようとすると、バルブ要素117eの数が多くなり、ひいては、開閉部117は、z方向に長くなる。このz方向に往復するように蛇行部131aを設けることによって、バルブ109が収まる最小の単純形状(例えば直方体)を小さくすることができる。すなわち、バルブ109を小型化しつつ、第2流路131の距離を長く確保することができる。
なお、以上の実施形態において、内側ポート125a及び外側ポート125bは、それぞれポートの一例である。固定バルブユニット111F又は固定基部119Fは第1部位の一例である。移動バルブユニット111M又は移動基部119Mは第2部位の一例である。
(変形例)
以下では、本開示に係る技術の種々の変形例について説明する。なお、変形例の説明においては、基本的に実施形態との相違部分についてのみ説明する。特に言及のない事項については、実施形態と同様とされてよい。また、ポート等の数が実施形態と異なっていても、説明の便宜上、実施形態と同様の符号を付すことがある。
(ポートと閉止部品との位置関係)
実施形態では、バルブ本体125は、空間125sと、内側ポート125aと、外側ポート125bとを有した。空間125sは、閉止部品127を移動可能に収容した。内側ポート125aは、空間125sに開口し、空間125sと金型101の内部とを連通した。外側ポート125bは、空間125sに開口し、空間125sと金型101の外部とを連通した。そして、閉止部品127は、閉位置では、内側ポート125aと外側ポート125bとの双方を塞ぎ、開位置では、内側ポート125aと外側ポート125bとを通じさせた。
しかし、バルブ本体は、実施形態における内側ポート及び外側ポートの一方のみを有する構成とされてもよい。
図11(a)は、内側ポート125aに相当するポート225aのみが設けられている変形例を示す模式図である。
この図は、変形例に係るバルブ209の断面を示している。白抜きの矢印で気体の流れを示すように、+x側に金型101(図1参照)の内部に通じる上流側流路221が位置し、-x側に金型101の外部に通じる下流側流路223が位置している。バルブ本体225は、上流側流路221と下流側流路223とを仕切る壁部(符号省略)を含んでいる。当該壁部には、複数のポート225aがz方向に配列されている。閉止部品227は、複数のポート225aに対して下流側流路223側に位置しており、z方向において移動可能である。
図11(b)は、外側ポート125bに相当するポート325bのみが設けられている変形例を示す模式図である。
この図は、変形例に係るバルブ309の断面を示しており、バルブ209と同様に、上流側流路221、下流側流路223及び閉止部品227を有している。また、バルブ309のバルブ本体325は、バルブ209のバルブ本体225と同様に、上流側流路221と下流側流路223とを仕切る壁部を含んでおり、当該壁部には、複数のポート325bがz方向に配列されて設けられている。ただし、バルブ本体325の壁部は、バルブ本体225の壁部とは逆に、閉止部品227に対して下流側流路223側に位置している。
図11(a)及び図11(b)に例示した構成においても、上流側流路221から下流側流路223への気体及び溶湯の流れを遮断することができる。また、複数のポート225a又は325bが閉止部品227の移動方向に配列されていることによって、実施形態と同様に、閉止部品227の移動距離に対して開口面積を大きくすることができる。
なお、実施形態のように、内側ポート125a及び外側ポート125bが設けられ、双方が複数の閉塞部227aによって塞がれる構成においては、より確実に気体及び/又は溶湯の流れを禁止することができる。また、実施形態及び図11(a)のように閉止部品に対して金型の内部側にポートが設けられている構成では、図11(b)のように閉止部品に対して金型の外部側にのみポートが設けられている構成に比較して、例えば、閉止部品に溶湯が流れ込むおそれが低減される。その結果、閉止部品のメンテナンスの負担が軽減される。
(ポートの方向)
実施形態では、内側ポート125a、開放部127b(バルブ流路117a)及び外側ポート125bは、型開閉方向に交差(例えば直交)する方向に開口した。ただし、これらの開口方向は、型開閉方向に沿う(例えば平行な)方向であってもよい。
図12は、そのような開口方向に係る変形例に係るバルブ409を示す図である。
この図において、y方向は、実施形態と同様に型開閉方向である。より具体的には、+y側は移動金型405側であり、-y側は固定金型403側である。金型の内部に通じる上流側流路421は、型閉じがなされることによって固定基部419Fと移動基部419Mとの間に構成される。金型の外部に通じる下流側流路423は、固定基部419F内に形成されている。バルブ本体425は、固定基部419Fの一部とされている。閉止部品127は、固定基部419F(バルブ本体425)に形成された空間425sに収容されており、バルブ本体425に対してz方向に移動可能である。内側ポート425a、外側ポート425b及び開放部427bは、型開閉方向に開口している。
このような構成においても、実施形態と同様に、閉止部品127の移動方向に複数の内側ポート425a等が配列されていることによって、閉止部品127の移動距離に対して開口面積を大きくすることができる。なお、内側ポート425a内で凝固した金属材料は、実施形態と同様に、型開きによって内側ポート425aから引き抜かれる。
実施形態のようにポート等が型開閉方向に直交する方向に開口する構成は、図12の変形例の構成に比較して、例えば、既に述べたように、内側ポート125aの清掃が容易である。また、実施形態の構成は、押出ピン149を内側ポート125aに設けることも容易である。さらに、溶湯の圧力によって閉止部品127を駆動する場合、凝固した溶湯を型開きに伴って取り出せるように、第1流路129は、基本的に固定金型103と移動金型105との間に構成される。そのような構成の採用も実施形態は容易である。
(閉止部品の形状の第1変形例)
図13(a)は、変形例に係る閉止部品527の斜視図である。図13(b)は、閉止部品527及びその周囲を上流側流路121(図4参照)から下流側流路123(図4参照)への方向へ見た一部に断面図を含む模式図である。閉止部品527は、実施形態の閉止部品127に代えて用いることができるものである。ただし、図解を容易にするために、内側ポート125a及び外側ポート125b(図4参照)の数は2つであるものと仮定している。
この図に示すように、内側ポート125a及び外側ポート125bをつなぐ開放部527bは、貫通孔でなく、凹溝であってもよい。なお、凹溝の形状は、例えば、その幅(y方向)が閉止部品527の型開閉方向の一方側(+y側)の側面にまで広がっていることを除けば、実施形態で説明した開放部127bの貫通孔と同様とされてよい。
凹溝(開放部527b)は、例えば、閉止部品527の型開閉方向の側面のうち、閉止部品527が取り付けられている基部119(ここでは固定基部119F)ではない基部119(ここでは移動基部119M)に面する側面(ここでは+y側の側面)に形成されている。従って、型開きによって、閉止部品527が移動基部119Mから分離すると、凹溝の内面は露出される。また、型閉じによって、固定基部119Fと移動基部119Mとが合体されてバルブ本体125が構成されると、図13(b)において想像線で示すように、閉止部品527(凹溝の内面)と、移動基部119M(バルブ本体125)との間に、内側ポート125aと外側ポート125bとを通じさせるバルブ流路517aが構成される。
実施形態のように開放部127bが貫通孔である場合においては、例えば、バルブ流路117aの密閉性が高い。また、例えば、図13(a)及び図13(b)に示す変形例のように開放部527bが凹溝である場合においては、例えば、型開きによって凹溝の内面が固定基部119Fの前面側(+y側)に露出するから、清掃が容易である。また、例えば、一体的に形成された閉止部品に対して切削によって開放部を形成する場合、貫通孔は、貫通方向(x方向)から加工をしなければならないが、凹溝は、x方向に加えて、+y側からも加工を行うことができる。その結果、加工が容易化され、及び/又は形状の自由度が向上する。
(閉止部品の形状の第2変形例)
図14(a)は、変形例に係る閉止部品627の斜視図である。図14(b)は、閉止部品627及びその周囲を固定基部119Fの前面側から模式図(図6(a)等に相当する図)である。
本変形例の閉止部品627は、基本的には、実施形態の閉止部品127に代えて用いることができるものである。本変形例では、閉止部品以外の構成も、実施形態とは一部異なるが、閉止部品以外の構成については、便宜上、実施形態の符号を付す。また、本変形例も、図13(a)及び図13(b)の変形例と同様に、図解を容易にするために、内側ポート125a及び外側ポート125bの数は2つであるものと仮定している。
この変形例の閉止部品627において、開放部627bは、図13(a)及び図13(b)の変形例と同様に、型開閉方向の側面に形成された凹溝によって構成されている。ただし、開放部627bは、直線状に延びるのではなく、曲がっている部分を有している。曲がっている部分は、開放部627bの一部であってもよいし(図示の例)、全部であってもよい。なお、別の観点では、内側ポート125a及び外側ポート125bは、閉止部品627の移動方向(z方向)における位置が互いに異なっていてもよい。
このように、開放部627bが曲がっている部分を含んでいる場合においては、例えば、溶湯が開放部627bに流れ込んでしまった場合に、溶湯が外側ポート125bまで到達してしまうおそれを低減できる。開放部が貫通孔である場合、曲がっている部分を形成することは困難であり、また、曲がっている部分の清掃も困難である。しかし、開放部627bは、凹溝によって構成されていることから、そのような不都合が解消される。
(閉止部品の形状の第3変形例)
図15は、変形例に係る閉止部品727の斜視図である。
この図に示すように、複数の開放部727bは、閉止部品727内で合流していてもよい。別の観点では、複数の閉塞部727a及び複数の開放部727bは、少なくともポート(ここでは内側ポート125a)側において閉止部品727の移動方向(z方向)に交互に配列されていればよく、その全体において交互に配列されている必要は無い。ただし、合流以前の部分を複数の閉塞部727a及び複数の開放部727bと捉え、ひいては、複数の閉塞部727a及び複数の開放部727bの全体が交互に配列されていると捉えてもよい。
また、この変形例では、合流した開放部は、上方へ開口している。特に図示しないが、この変形例では、例えば、閉止部品727によって開閉される外側ポートは設けられておらず、閉止部品727を収容する空間125s(図6(a)参照)が金型の外部に通じることによって、開放部727bを通過した気体が金型の外部へ排出される。
本開示に係る技術は、以上の実施形態又は変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、ダイカストマシンは、横型締横射出のものに限定されず、縦型締縦射出、横型締縦射出のものに限定されず、縦型締横射出のものであってもよい。また、ダイカストマシンは、液圧式(油圧式)のものであってもよいし、電動式のものであってもよいし、両者を組み合わせたものであってもよい。また、ダイカストマシンは、溶湯だけでなく、固液共存状態の金属材料の成形に利用可能なものであってもよい。さらに、ダイカストマシンは、真空ダイカスト法を行うものに限定されない。バルブは、通常のダイカストマシンにおいて、金型内に射出される溶湯によって金型内から金型外へ押し出される気体を排出する排気流路を開閉するものであってもよい。
実施形態では、バルブ本体のポート及び閉止部品の開放部は、閉止部品の移動方向に1列で配列された。ただし、ポート及び/又は開放部は、2列以上で移動方向に配列されても構わない。2列以上のポートは、閉止部品の移動方向の位置が列同士で互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい(例えば千鳥状に配置されていてもよい。)。
閉止部品の開放部は、貫通孔又は側面の凹溝によって構成されるものに限定されない。例えば、閉止部品は、一般的なスプールと同様に、拡径部と、当該拡径部よりも径が小さい縮径部とを移動方向に交互に有する構成とされてよい。この場合、拡径部が閉塞部であり、縮径部が開放部である。そして、図13(a)の変形例から類推されるように、縮径部と、閉止部品を収容するバルブ本体との間に、金型の内部と外部とを通じさせる流路が構成される。
閉止部品の移動方向は、直線方向に限定されない。例えば、回転方向であってもよい。すなわち、バルブは、回転式のスライドバルブのような構成とされてもよい。円周方向に沿って複数のポート、複数の閉塞部及び複数の開放部が配置されていてもよい。
実施形態では、溶湯の圧力によって閉止部品を開位置から閉位置へ駆動した。ただし、溶湯の圧力を用いずに閉止部品を駆動してもよい。このような駆動機構としては、公知の種々のものが利用されてよく、例えば、実施形態で説明したアクチュエータ(例えば、液圧式のシリンダ装置135、気体圧式のシリンダ又はリニアモータ)が利用されてよい。
また、上記の態様において、バルブを閉じるタイミングを決定する方法についても、公知の種々の方法が採用されてよい。例えば、金型又はバルブ内の適宜な位置に溶湯の到達を検知するセンサを設け、当該センサによって溶湯の到達が検出されたときに、駆動機構によってバルブを閉じてよい。センサとしては、例えば、温度センサ、圧力センサ、通電センサが挙げられる。また、射出装置において検出される射出速度及び/又は射出圧力に基づいてバルブを閉じるタイミングが特定されてもよい。
実施形態では、ポート、閉塞部及び開放部からなるバルブ要素が閉止部品の移動方向に複数配列される態様を示した。しかし、バルブ要素は、1つであっても構わない。この場合も、例えば、実施形態で説明したように、型開き前にバルブを金型本体から引き抜く動作を不要とすることができる等の効果が奏される。
バルブ(バルブユニット)は、バルブのみで流通されてもよいし、金型本体と組み合わされて流通されてもよいし(バルブを含む金型が流通されてもよいし)、金型を含まないダイカストマシン(マシン本体及び制御ユニット)と組み合わされて(金型本体抜きで)流通されてもよいし、金型本体と、金型を含まないダイカストマシン(マシン本体及び制御ユニット)と組み合わされて流通されてもよい。