上記のように矯正板により液体噴射ヘッドの反りを抑制する構成では、その分、部品点数が増加し、また、矯正板を配置することにより構成部材の寸法や形状等に制約が生じるという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成部材の反りによるフレキシブルケーブルの実装部分の剥離を抑制することが可能な液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体を噴射するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットが有するヘッド基板に一端部が固定されたフレキシブルケーブルと、
前記ヘッドユニットが複数固定された共通部材と、
を備え、
前記共通部材は、互いに直交する3つの方向をそれぞれ第1方向、第2方向、第3方向としたとき、前記第1方向と前記第2方向とにより定まる仮想面に置いたときに前記第3方向が厚さ方向となり、前記第2方向よりも前記第1方向に長尺であり、
前記第3方向からの平面視において、前記フレキシブルケーブルと前記ヘッド基板とが固定された固定領域は、前記第1方向よりも前記第2方向に長尺であることを特徴とする。
本発明によれば、フレキシブルケーブルとヘッド基板とが固定された固定領域、すなわち、ヘッド基板におけるフレキシブルケーブルの実装部分が、共通部材の長尺方向である第1方向よりも第2方向に長尺であるので、共通部材や他の第1方向に長尺な構成部材が第1方向において反った場合においても、固定領域において剥離が生じにくくなる。このため、反りを抑制するための矯正板等の部材を別途備えない場合であっても、実装部分の接続不良等を抑制することが可能となる。
また、本発明は、液体を噴射するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットが有するヘッド基板に一端部が固定され、当該ヘッドユニットに駆動信号を供給するフレキシブルケーブルと、
前記ヘッドユニットが複数固定された共通部材と、
を備え、
前記共通部材は、互いに直交する3つの方向をそれぞれ第1方向、第2方向、第3方向としたとき、前記第1方向と前記第2方向とにより定まる仮想面に置いたときに前記第3方向が厚さ方向となり、前記第2方向よりも前記第1方向に長尺であり、
前記フレキシブルケーブルにおいて、前記ヘッド基板に沿った部分と前記ヘッド基板に交差する方向に延びる部分との間の曲げ部は、前記第3方向からの平面視で前記第1方向よりも前記第2方向に長尺であることを特徴とする。
本発明によれば、フレキシブルケーブルにおいて、ヘッド基板に沿った部分とヘッド基板に交差する方向に延びる部分との間の曲げ部が、共通部材の長尺方向である第1方向よりも第2方向に長尺であるので、共通部材や他の第1方向に長尺な構成部材が第1方向において反った場合においても、固定領域、すなわち、ヘッド基板におけるフレキシブルケーブルの実装部分において剥離が生じにくくなる。このため、反りを抑制するための矯正板等の部材を別途備えない場合であっても、実装部分の接続不良等を抑制することが可能となる。
上記各構成において、前記フレキシブルケーブルの他端部が固定された回路基板を備え、
前記平面視において前記フレキシブルケーブルと前記回路基板とが固定された領域は、前記第1方向よりも前記第2方向に長尺である構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、フレキシブルケーブルと回路基板とが固定された領域、すなわち、回路基板におけるフレキシブルケーブルの実装部分が、第1方向よりも第2方向に長尺であることにより、共通部材や他の第1方向に長尺な構成部材が第1方向において反った場合においても、当該実装部分において剥離が生じにくくなる。
上記各構成において、前記フレキシブルケーブルの他端部が固定された回路基板を備え、
前記フレキシブルケーブルにおいて、前記回路基板に沿った部分と前記回路基板に交差する方向に延びる部分との間の曲げ部は、前記第1方向よりも前記第2方向に長尺である構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、回路基板に沿った部分と回路基板に交差する方向に延びる部分との間の曲げ部が第1方向よりも第2方向に長尺であることにより、共通部材や他の第1方向に長尺な構成部材が第1方向において反った場合においても、回路基板におけるフレキシブルケーブルの実装部分において剥離が生じにくくなる。
また、本発明は、液体を噴射するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットが有するヘッド基板に一端部が固定され、当該ヘッドユニットに駆動信号を供給するフレキシブルケーブルと、
前記ヘッドユニットが複数固定された共通部材と、
前記フレキシブルケーブルの他端部が固定された回路基板と、
を備え、
前記共通部材は、互いに直交する3つの方向をそれぞれ第1方向、第2方向、第3方向としたとき、前記第1方向と前記第2方向とにより定まる仮想面に置いたときに前記第3方向が厚さ方向となり、前記第2方向よりも前記第1方向に長尺であり、
前記第3方向からの平面視において前記フレキシブルケーブルと前記回路基板とが固定された領域は、前記第1方向よりも前記第2方向に長尺であることを特徴とする。
本発明によれば、フレキシブルケーブルと回路基板とが固定された領域、すなわち、回路基板におけるフレキシブルケーブルの実装部分が、第1方向よりも第2方向に長尺であることにより、共通部材や他の第1方向に長尺な構成部材が第1方向において反った場合においても、当該実装部分において剥離が生じにくくなる。
さらに、本発明は、液体を噴射するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットが有するヘッド基板に一端部が固定され、当該ヘッドユニットに駆動信号を供給するフレキシブルケーブルと、
前記ヘッドユニットが複数固定された共通部材と、
前記フレキシブルケーブルの他端部が固定された回路基板と、
を備え、
前記共通部材は、互いに直交する3つの方向をそれぞれ第1方向、第2方向、第3方向としたとき、前記第1方向と前記第2方向とにより定まる仮想面に置いたときに前記第3方向が厚さ方向となり、前記第2方向よりも前記第1方向に長尺であり、
前記フレキシブルケーブルにおいて、前記回路基板に沿った部分と前記回路基板に交差する方向に延びる部分との間の曲げ部は、前記第3方向からの平面視において前記第1方向よりも前記第2方向に長尺であることを特徴とする。
本発明によれば、回路基板に沿った部分と回路基板に交差する方向に延びる部分との間の曲げ部が第1方向よりも第2方向に長尺であることにより、共通部材や回路基板や他の第1方向に長尺な構成部材が第1方向において反った場合においても、回路基板におけるフレキシブルケーブルの実装部分において剥離が生じにくくなる。
上記各構成において、前記回路基板は、複数設けられ、
前記共通部材との間で前記複数の回路基板を覆い、前記第2方向よりも前記第1方向に長尺なカバー部材を備えた構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、回路基板が複数あるので、回路基板が1つだけの場合と比較して、それぞれの回路基板のサイズを小さくすることができ、回路基板の反りを低減することができる。このため、回路基板におけるフレキシブルケーブルの実装部分において剥離が生じにくくなる。また、カバー部材と共通部材とで回路基板が挟まれるので、回路基板を保護することができる。
上記各構成において、前記フレキシブルケーブルは、前記ヘッド基板と前記回路基板との間で撓んでいる構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、フレキシブルケーブルがヘッド基板と回路基板との間で撓んでいるので、共通部材や他の第1方向に長尺な構成部材が反ったとしても、撓んでいる分だけフレキシブルケーブルの長さに余裕があるため、当該反りの影響を緩和することができる。その結果、フレキシブルケーブルの実装部分における剥離をより確実に抑制することが可能となる。
上記各構成において、前記フレキシブルケーブルは、前記ヘッド基板と前記回路基板との間で折り曲げられている構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、フレキシブルケーブルがヘッド基板と回路基板との間で折り曲げられているので、共通部材や他の第1方向に長尺な構成部材が反ったとしても、折り曲げられている分だけフレキシブルケーブルの長さに余裕があるため、当該反りの影響を緩和することができる。その結果、フレキシブルケーブルの実装部分における剥離をより確実に抑制することが可能となる。
上記各構成において、前記平面視において前記第2方向よりも前記第1方向に長尺なホルダー部材を備え、
前記ホルダー部材は、
第1面側に形成されて前記ヘッドユニットが収容された第1凹部と、前記第1面とは反対側の第2面側に形成されて前記回路基板が収容された第2凹部と、を有する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、第1面側及び第2面側のそれぞれに凹部が設けられているので、各凹部を区画している壁等の構造の強度が、第1面側及び第2面側において揃えられる。その結果、ホルダー部材に反りや捻じれ等の変形が生じにくい。
上記各構成において、前記ホルダー部材の熱膨張率と前記共通部材の熱膨張率とが異なる構成を採用することができる。
この構成によれば、熱膨張率の相違によりホルダー部材と共通部材とに反りが生じやすい場合においても、フレキシブルケーブルの実装部分の剥離を抑制することができる。このため、熱膨張率の相違に制約されず、ホルダー部材と共通部材の材料の選択自由度が向上する。また、材料によって反りが大きい方を予め把握することができ、当該構成部材に配置されたフレキシブルケーブルの実装部分の長尺方向を第2方向とする対策が採りやすい。
上記各構成において、前記ヘッドユニットは、前記第2方向よりも前記第1方向に長尺であり、
複数の前記ヘッドユニットは、前記第1方向に沿って配列された構成を採用することができる。
この構成によれば、液体噴射ヘッドを第1方向に長尺化することができる。
上記各構成において、前記平面視において前記フレキシブルケーブルと前記ヘッド基板とが固定された領域は、前記ヘッドユニットと前記共通部材とを固定する領域と重なる構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、フレキシブルケーブルとヘッド基板とが固定された領域がヘッドユニットと共通部材とを固定する領域と重ならない構成と比較してヘッド基板を小型化することができ、ヘッドユニットをより高密度に配置することが可能となる。また、固定領域の面積をより広く確保できるのでヘッドユニットと共通部材とをより確実に固定することが可能となる。
上記各構成において、前記フレキシブルケーブルが前記ヘッド基板から離間する位置は、前記第1方向において、前記ヘッドユニットの中心に対して偏っており、
複数の前記ヘッドユニットの内、前記第1方向の両側に位置する前記ヘッドユニットの前記ヘッド基板に固定された前記フレキシブルケーブルは、前記第1方向において前記共通部材の中心からより遠くに配置された構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、複数のヘッドユニットの内、第1方向の両側に位置するヘッドユニットの前記ヘッド基板に固定された前記フレキシブルケーブルは、発熱しやすいフレキシブルケーブルが第1方向において共通部材の中心からより遠く(換言すると、より外側)に配置されることにより、液体噴射ヘッド内における温度勾配を低減することができる。その結果、温度変化に基づく各ヘッドユニットの特性のばらつきを抑制することが可能となる。
上記各構成において、前記一端部における配線の太さは、前記他端部における配線の太さよりも細い構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、フレキシブルケーブルの一端部における配線の太さが、他端部における配線の太さよりも細いことにより、ヘッド基板との固定領域の第2方向における寸法を小さくすることができる。これにより、ヘッドユニットの第2方向におけるサイズをより小型化することが可能となる。これに対し、他端部における配線の太さが、一端部における配線の太さよりも太いことにより、配線の抵抗を低減することが可能となる。
上記各構成において、前記一端部における配線のピッチは、前記他端部における配線のピッチよりも狭い構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、フレキシブルケーブルにおいて一端部における配線のピッチが他端部における配線のピッチよりも狭いことにより、ヘッド基板との固定領域の第2方向における寸法を小さくすることができる。これにより、ヘッドユニットの第2方向におけるサイズをより小型化することが可能となる。これに対し、他端部における配線のピッチが、一端部における配線のピッチよりも広いことにより、他端部の配線作業が容易となる。
上記各構成において、前記一端部における配線が並ぶ方向は、前記フレキシブルケーブルの幅方向であり、
前記他端部における配線が並ぶ方向は、当該フレキシブルケーブルの長さ方向である構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、一端部の配線が並ぶ方向が当該フレキシブルケーブルの幅方向であることにより、一端部のヘッド基板との固定領域の第2方向における寸法を小さくすることができる。これにより、ヘッドユニットの第2方向におけるサイズをより小型化することが可能となる。これに対し、他端部の配線が並ぶ方向は、当該フレキシブルケーブルの長さ方向であることにより、当該他端部における配線のレイアウトの自由度が高まる。すなわち、他端部における配線のピッチや太さをより自由に設定することが可能となる。
そして、本発明の液体噴射装置は、上記何れかの構成の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする。
本発明によれば、共通部材や他の第1方向に長尺な構成部材の反りによるフレキシブルケーブルの実装部分における剥離を抑制することが可能であるため、液体噴射装置の信頼性がより高まる。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッド3と称する。)を搭載したインクジェット式プリンター(以下、単にプリンター1と称する。)を例に挙げて説明する。
プリンター1の構成について、図1を参照して説明する。なお、図において、互いに直交する3つの方向をそれぞれX方向(本発明における第2方向に相当)、Y方向(本発明における第1方向に相当)、及びZ方向(本発明における第3方向に相当)として示している。プリンター1は、記録紙等の記録媒体Sの表面に液体状のインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、複数のヘッドユニット4を備える記録ヘッド3、記録媒体Sを搬送する搬送機構5、及び、ヘッドユニット4(図2参照)の各ノズル面に対向する位置に搬送された記録媒体Sを支持する媒体支持部6(又はプラテンとも呼ばれる)等を装置本体7の内部に備えている。
本実施形態における記録ヘッド3は、記録媒体Sの搬送方向をX方向とし、このX方向よりも当該X方向に直交するY方向に長尺なラインヘッドである。また、この記録ヘッド3をX方向及びY方向で定まる仮想面に置いたときのZ方向が当該記録ヘッド3や当該記録ヘッド3を構成している各構成部材の厚さ方向(換言すると、各構成部材の積層方向)である。この厚さ方向は、構成部材、特に、後述するホルダー部材15や固定板17等の共通部材のX方向、Y方向、及び、Z方向の各寸法のうち、最も小さい寸法となる方向である。この記録ヘッド3には、液体の一種であるインクを貯留した図示しないインクカートリッジの内部と連通する液体供給チューブ8が接続されている。インクカートリッジからのインクは、液体供給チューブ8を介して後述する流路部材13に供給される。なお、インクカートリッジを記録ヘッド3の上面に装着する構成を採用することもできる。また、記録ヘッド3には、制御部からの駆動信号等を記録ヘッドに供給するFFC等の図示しない外部配線が、ケーブル挿通口9を通じて後述する回路基板16のコネクター36に接続されるように構成されている。
搬送機構5は、媒体支持部6よりもX方向における上流側に上下一対に配置された第1の搬送ローラー10aと、媒体支持部6よりもX方向における下流側に上下一対に配置された第2の搬送ローラー10bと、を備えている。供給側からの記録媒体Sは、これらの搬送ローラー10a,10bの駆動により、上下のローラーに挟まれた状態で媒体支持部6上を通過して排出側に向けて搬送される。また、搬送機構が、無端ベルトやドラムにより構成されるものもあり、このような構成では、ベルトやドラムが媒体支持部として機能する。さらに、媒体支持部としては、記録媒体を静電気力により吸着させる構成のものや、吸引ポンプ等で負圧を発生させることで記録媒体を吸着させる構成のものを採用することもできる。
図2は、斜め上方から見た記録ヘッド3の分解斜視図であり、図3は、記録ヘッド3の下面図、図4は図3におけるA-A線断面図(即ち、X方向における断面図)、図5は図3におけるB-B線断面図(即ち、Y方向における断面図)である。本実施形態における記録ヘッド3は、各ヘッドユニット4へインクを供給する流路が内部に形成された流路部材13と、カバー部材14と、ホルダー部材15と、回路基板16と、ヘッドユニット4と、固定板17と、を備えている。
ホルダー部材15は、Z方向からの平面視においてX方向よりもY方向に長尺な略直方体上の部材であり、例えば、合成樹脂により作製されている。このホルダー部材15の下面(本発明における第1面に相当)側には、複数のヘッドユニット4を収容する第1収容凹部19(本発明における第1凹部に相当)が設けられている。また、ホルダー部材15の上面(本発明における第2面に相当)側には、回路基板16を収容する第2収容凹部20(本発明における第2凹部に相当)が、仕切板21により第1収容凹部19と隔てられた状態で形成されている。仕切板21の周囲には、当該仕切板21に交差する方向に延びる側壁22が形成されている。この側壁22は、仕切板21の四方の縁から第1収容凹部19側及び第2収容凹部20側のそれぞれに向けて延設されている。このため、ホルダー部材15は、図4及び図5に示されるように、断面視において略H字状を呈している。また、第1収容凹部19の深さD1と、第2収容凹部20の深さD2とは、同程度に揃えられている。より具体的には、D1とD2のそれぞれが、仕様・設計上の収容凹部19,20の深さの中心値に対して80%以上120%以下の範囲内となるように設定されている。より望ましくは、D1とD2のそれぞれが上記中心値に対して95%以上105%以下の範囲内である。このように、ホルダー部材15の上面側及び下面側のそれぞれに収容凹部19,20が形成されているので、側壁22が耐力壁として機能して、仕切板21が変形することが抑制される。また、深さD1,D2、すなわち、側壁22の仕切板21からの高さが第1収容凹部19側と第2収容凹部20側とで同程度に揃えられているため、収容凹部19,20をそれぞれ区画している壁等の構造の強度に偏りが生じにくい。これにより、Y方向に長尺なホルダー部材15の変形がより効果的に抑制される。
第1収容凹部19は、ホルダー部材15の下面に開口する凹形状を呈し、固定板17に固定された複数のヘッドユニット4が内部に収容される。すなわち、第1収容凹部19の下面側の開口が固定板17によって封止され、第1収容凹部19と固定板17とによって区画された空間内に各ヘッドユニット4が収容される。なお、第1収容凹部19は、ヘッドユニット4毎に設けられていてもよく、複数のヘッドユニット4に亘って連続して設けられていてもよい。このようなホルダー部材15は、各ヘッドユニット4に共通な共通部材の一種とも言える。
ホルダー部材15には、同じく平面視においてX方向よりもY方向に長尺なヘッドユニット4が当該Y方向に沿って互い違いに配置されている。ヘッドユニット4は、複数のノズル24がY方向に列設されてなるノズル列25a,25bが形成されたノズルプレート26や、圧力室51等の流路が形成された流路形成基板45や、ノズル24からインクを噴射させるための駆動源(換言すると、アクチュエーター)として機能する圧電素子60等がユニット化されたヘッドチップである。図3に示されるように、各ヘッドユニット4は、ノズル列25がY方向に沿った姿勢(すなわち、ヘッドユニット4の長尺方向がY方向に沿った姿勢)で、X方向、すなわち記録媒体Sの搬送方向における配置位置を互い違いに異ならせてY方向に複数配列されている。このようにY方向に長尺なヘッドユニット4をY方向に沿って配列することにより、記録ヘッド3を長尺化することができる。すなわち、所謂ラージフォーマットと呼ばれるより大型な記録ヘッド3が得られる。なお、隣り合うヘッドユニット4同士は、互いのノズル列25における一部のノズル24のY方向における配置位置が重複するような位置関係になっている。このため、Y方向に亘って連続したノズル24の列を形成することができる。なお、本実施形態においては、合計4つのヘッドユニット4が設けられた構成を例示したが、これには限られない。
図2に示されるように、ホルダー部材15の仕切板21には、カバー部材14側からのインクをヘッドユニット4側に供給するための連通流路27が、当該仕切板21の厚さ方向、即ち、Z方向を貫通する状態で形成されている。この連通流路27の第2収容凹部20側の開口部には、カバー部材14の下面に突設された流路接続部31(図4及び図5参照)が接続される。本実施形態において、この連通流路27は、各ヘッドユニット4に対して2つずつ設けられている。また仕切板21には、ヘッドユニット4のフレキシブルケーブル29が挿通される配線挿通口28が、当該仕切板21の厚さ方向を貫通する状態で設けられている。第1収容凹部19に収容されたヘッドユニット4のフレキシブルケーブル29は、仕切板21の下面側、すなわち第1収容凹部19が側から配線挿通口28に挿通されて、仕切板21の上面側、すなわち第2収容凹部20側に引き出される。
第2収容凹部20には、回路基板16が配置されている。回路基板16は、電子部品や配線等が設けられたリジット基板からなる。本実施形態においては、2つのヘッドユニット4に対して1枚の回路基板16が設けられている。このため、第2収容凹部20には、合計2枚の回路基板16が第2収容凹部20に配置されている。なお、2つのヘッドユニット4に対して1枚の回路基板16が設けられる構成に限られず、各ヘッドユニット4についてそれぞれ1枚の回路基板16が設けられてもよいし、第2収容凹部20に配置された全ヘッドユニット4に共通の1枚の回路基板16が設けられてもよい。複数の回路基板16が設けられた構成では、回路基板16が1つだけの場合と比較してそれぞれの回路基板16のサイズを小さくすることができ、個々の回路基板16の反りの大きさを低減できる。このため、回路基板16におけるフレキシブルケーブル29の実装部分において剥離が生じにくくなる。
図2に示されるように、本実施形態における回路基板16は、Z方向からの平面視において、対応する2つのヘッドユニット4の配置レイアウトに倣ったクランク状を呈している。この回路基板16の上面(換言すると、カバー部材14に対向する側の面)には、フレキシブルケーブル29の第2端子部34が接続される回路基板端子部35が設けられている。本実施形態において回路基板端子部35は、平面視においてX方向よりもY方向に沿って長尺である。すなわち、回路基板端子部35を構成する端子がY方向に沿って配設されている。また、回路基板16の上面において、ホルダー部材15の連通流路27に対応する位置には、カバー部材14の流路接続部31が挿入される逃げ穴37が設けられている。すなわち、カバー部材14の流路接続部31は、逃げ穴37を通じて連通流路27と接続される。さらに、回路基板16の上面には、上記ケーブル挿通口9を通して第2収容凹部20内に挿入された外部配線が接続されるコネクター36が設けられている。
カバー部材14は、平面視においてX方向よりもY方向に長尺な直方体状の部材であり、ホルダー部材15と同様に合成樹脂から作製されている。このカバー部材14は、ホルダー部材15の第2収容凹部20の上部開口を塞ぐ状態で、接着剤による接着、ネジ止め、又は溶着等の固定手法によりホルダー部材15に固定されている。このカバー部材14の内部には、ホルダー部材15の連通流路27にインクを供給する供給流路39が設けられている。平面視において、供給流路39は、カバー部材14の上面における開口位置から、ホルダー部材15の対応する連通流路27と重なる位置まで、カバー部材14の内部で当該カバー部材14の上下面に沿った方向に延在されている。そして、連通流路27の下流側の一部は、カバー部材14の下面に突設された流路接続部31内に形成されており、当該流路接続部31の端面(連通流路27と接続される側の面)に開口している。
固定板17は、平面視においてX方向よりもY方向に長尺な金属製の板材である。この固定板17は、第1収容凹部19の開口を塞ぐ状態でホルダー部材15の下面に接着等により固定されている。固定板17には、各ヘッドユニット4のノズル面26a(図3参照)を露出させる開口部40が、ヘッドユニット4毎に設けられている。固定板17の上面(換言すると、第1収容凹部19側の面)において開口部40の周縁部にヘッドユニット4がそれぞれ接着剤等により固定される。このように、本実施形態における固定板17は、複数のヘッドユニット4に共通な共通部材の一種として機能する。この固定板17とカバー部材14とは、互いにホルダー部材15を介して間接的に固定されている。このため、回路基板16は、固定板17とカバー部材14との間において覆われている。これにより、回路基板16がインクや埃等から保護される。
本実施形態において、カバー部材14の上面には、合計4つの流路部材13がX方向に並べて配置されている。各流路部材13の上面には、流路部材13の液体供給チューブ8に対応する流入口41が開口している。流入口41は、流路部材13の内部に形成された液体流路を介してカバー部材14の上面に開口した供給流路39と連通されている。この流路部材13は、液体供給チューブ8から供給されたインクについてヘッドユニット4側への供給圧力を調整すると共に、図示しないフィルターにより当該インクをろ過する機能を有している。そして、流路部材13から供給流路39、連通流路27を通じてヘッドユニット4にインクが供給される。
図6は、ヘッドユニット4の一形態の分解斜視図である。また、図7はヘッドユニット4の部分的な(即ち、後述する収容空部50の近傍の)平面図である。同図においてリザーバー形成基板47、コンプライアンス基板48、及びフレキシブルケーブル29の図示が省略されている。さらに、図8は、ヘッドユニット4のX方向における断面図、図9は、図7におけるヘッドユニット4のC-C線断面図である。本実施形態におけるヘッドユニット4は、平面視においてX方向よりもY方向に長尺な直方体状を呈している。このヘッドユニット4の上面(換言すると、第1収容凹部19に収容された状態における仕切板21側の面)における長手方向であるY方向の一端部に設けられた配線用開口43から配線基板としてのフレキシブルケーブル29が挿入されている。また、ヘッドユニット4の上面のY方向における中央部には、2つのインク導入口44が設けられている。インク導入口44は、連通流路27と連通されて流路部材13からのインクが導入される部分である。
本実施形態におけるヘッドユニット4は、流路形成基板45(本発明におけるヘッド基板の一種)と、ノズルプレート26と、保護基板46と、リザーバー形成基板47と、コンプライアンス基板48と、駆動IC49と、フレキシブルケーブル29と、を備えている。ノズルプレート26、流路形成基板45、及び保護基板46は、この順に接着剤等により積層され、さらに保護基板46上にはリザーバー形成基板47及びコンプライアンス基板48がこの順に積層されている。また、駆動IC49は、流路形成基板45とリザーバー形成基板47との間で、保護基板46に形成された収容空部50に配置されている。
流路形成基板45は、例えば、シリコン単結晶板からなる。この流路形成基板45には、異方性エッチングによって、複数の圧力室51がノズル24毎に対応してY方向に沿って並設されている。本実施形態においては、ノズルプレート26に形成された2列のノズル列25に対応させて圧力室51の列が流路形成基板45に2列形成されている。また、流路形成基板45において圧力室51のX方向の外側の領域には、液体供給路としての連通部52が形成され、さらに、連通部52と各圧力室51とが、圧力室51毎に設けられたインク供給路53を介して連通されている。インク供給路53は、圧力室51よりも狭い幅で形成されており、連通部52から圧力室51に流入するインクに流路抵抗を付与する。
ノズルプレート26には、各圧力室51のインク供給路53とは反対側の端部において連通するノズル24が穿設されている。このノズルプレート26は、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、又はステンレス鋼などからなる。本実施形態におけるノズルプレート26は、流路形成基板45よりも一回り小さく形成されている。そして、流路形成基板45とノズルプレート26とは、接着剤や熱溶着フィルム等によって接合されている。このノズルプレート26において、流路形成基板45が接合された面とは反対側の下面がノズル面である。本実施形態においては、流路形成基板45の下面の略中央部に接合されたノズルプレート26の周囲に固定板17が接合されるように構成されている。すなわち、流路形成基板45の下面に固定板17が接合されると、当該固定板17に形成された開口部40内にノズルプレート26が配置される(図3~図5参照)。
流路形成基板45におけるノズルプレート26が接合された面と反対側の面には、振動板を構成する弾性膜55が形成されている。弾性膜55は、例えば二酸化シリコンからなる。弾性膜55上には、酸化膜からなる絶縁膜56が形成されている。この絶縁膜56は、例えば酸化ジルコニウムから構成されている。これらの弾性膜55と絶縁膜56とにより振動板が構成されている。
絶縁膜56上には、白金(Pt)などの金属やルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)などの金属酸化物からなる下電極57と、ペロブスカイト構造の圧電体層58と、金(Au)、イリジウム(Ir)などの金属からなる上電極59と、からなる圧電素子60が形成されている。一般的には、圧電素子60のいずれか一方の電極が共通電極とされ、他方の電極及び圧電体層58が各圧力室51に対応してパターニングされている。そして、両電極57,59への駆動電圧の印加により圧電歪みが生じる部分が圧電体能動部として機能する。なお、本実施形態では、下電極57が圧電素子60の共通電極とされ、上電極59が圧電素子60の個別電極とされているが、駆動IC49や配線の都合で、下電極57が圧電素子60の個別電極とされ、上電極59が圧電素子60の共通電極とされる構成を採用することも可能である。いずれの場合においても、圧力室51毎に圧電体能動部が形成されている。また、ここでは、圧電素子60と当該圧電素子60の駆動により変位が生じる弾性膜55及び絶縁膜56からなる振動板とがアクチュエーターとして機能する。
各圧電素子60を構成する上電極59には、例えば、金(Au)等からなる引き出し電極としてのリード電極61が接続されており、このリード電極61は、圧力室51の列の間の領域まで引き出されている。このリード電極61は、例えば、金(Au)等からなる金属層が圧電素子60毎にパターニングされることによって形成されている。
保護基板46は、圧電素子60に対向する領域に、圧電素子60の変形を阻害しない程度の空間を確保した状態の圧電素子収容空部63を有する。圧電素子収容空部63は、各圧力室51の各列に対応して2つ設けられている。この保護基板46は、圧電素子60が形成された流路形成基板45に接着剤によって接着されている。保護基板46の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、樹脂、シリコン基板等が採用される。また、保護基板46には、流路形成基板45の連通部52に対応する領域から圧電素子収容空部63上にわたってインク貯留空部64が設けられている。本実施形態におけるインク貯留空部64は、圧力室51の列に沿って一連に設けられており、流路形成基板45の連通部52と連通して各圧力室51に共通のインク室となるリザーバー65(又はマニホールドとも呼ばれる)を構成している。
さらに、保護基板46において、圧力室51の列間に対応する領域には、保護基板46を厚さ方向、即ちZ方向に貫通する収容空部50が設けられている。そして、圧電素子60から引き出されたリード電極61の先端部が、収容空部50の底部に露出している。そして、本実施形態における駆動IC49は、収容空部50内に収容されている。収容空部50に露出したリード電極61の先端部上に駆動IC49が配置され、リード電極61の先端部と駆動IC49の図示しない出力端子とが電気的に接続されている。また、流路形成基板45上には、駆動IC49の図示しない入力端子部と電気的に接続されるヘッド基板端子部62が、上記配線用開口43に対応する位置まで延設されている(図7及び図9参照)。ヘッド基板端子部62は、複数の端子がX方向に沿って並設されて構成されている。このヘッド基板端子部62は、厳密には、流路形成基板45に積層された振動板(即ち、弾性膜55及び絶縁膜56)上に形成されているが、便宜上、ヘッド基板端子部62は、流路形成基板45上に間接的に形成されているものとする。このヘッド基板端子部62には、配線用開口43に挿通されたフレキシブルケーブル29の第1端子部33が接続されている。このように、ヘッド基板端子部62は、流路形成基板45において平面視で当該流路形成基板45の中央部に対してY方向における一端部に偏って配置されている。なお、フレキシブルケーブル29の詳細については後述する。
保護基板46上には、リザーバー形成基板47が配置されている。このリザーバー形成基板47の略中央部には、収容空部50の上部に蓋をするようにY方向に沿って桁67が形成されている。桁67と駆動IC49との間には、熱伝導部材68が配置され、桁67と駆動IC49とにそれぞれ接触している。熱伝導部材68としては、接着剤等の樹脂、シリコングリース、セラミックフィラーをシリコンに高充填したグリース、放熱シートを用いることができる。
リザーバー形成基板47の上には、封止膜69及び支持版70とからなるコンプライアンス基板48が接合されている。封止膜69は、可撓性を有する材料(例えば、厚さが数μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜69によってリザーバー65を構成するインク貯留空部64の一方の面が封止されている。また、支持版70は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが数十μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成されている。この支持版70のインク貯留空部64に対向する領域は、厚さ方向であるZ方向に完全に除去された貫通開口71となっているため、インク貯留空部64の一方面は可撓性を有する封止膜69のみで封止されている。
このようなヘッドユニット4では、流路部材13からインクを取り込み、リザーバー65からノズル24に至るまでのインク流がインクで満たされた状態で、プリンター1の制御部から回路基板16及びフレキシブルケーブル29を通じて駆動信号等が駆動IC49に伝送され、当該駆動IC49の制御により各圧電素子60に選択的に駆動信号が印加される。圧電素子60は、印加された駆動信号の波形に応じて変形し、この変形により各圧力室51内に圧力変動が生じる。そして、この圧力変動によってノズル24からインク滴が噴射される。なお、ヘッドユニット4の構成は、例示したものには限られず、種々の構成のものを採用することができる。例えば、コンプライアンス基板48に関し、ヘッドユニット4の上面側に配置された構成を例示したが、流路形成基板45の下面側に配置される構成を採用することもできる。すなわち、当該構成の場合、流路形成基板45の下面の略中央部に接合されたノズルプレート26の周囲に、当該ノズルプレート26を露出させるための開口を備えたコンプライアンス基板48が接合される。この場合、固定板17は、コンプライアンス基板48に接合され、当該固定板17の開口部40内には、ノズルプレート26のみが露出することになる。
図10は、フレキシブルケーブル29の一形態の構成を説明する正面図である。本発明に係るフレキシブルケーブル29は、ポリイミド等の矩形状のベースフィルム72の一方の面に配線73,74のパターンや端子部33,34が形成されている。なお、同図において配線73,74については一部のみを図示している。このフレキシブルケーブル29の一端部(換言すると、図10における下端部)には、上記ヘッド基板端子部62に接続される第1端子部33が設けられている。第1端子部33は、フレキシブルケーブル29の幅方向、即ち、ヘッドユニット4に接続された状態におけるX方向に沿って並設された複数の第1端子76を有しており、Y方向よりもX方向に長尺となっている。このため、フレキシブルケーブル29の一端部における配線73も、フレキシブルケーブル29の幅方向に沿って並んでいる。
また、フレキシブルケーブル29の他端部であって、当該フレキシブルケーブル29の幅方向における一側の縁部(換言すると、図9における左側の縁部)には、上記回路基板16の回路基板端子部35に接続される第2端子部34が、当該フレキシブルケーブル29の長さ方向に沿って形成されている。第2端子部34は、ベースフィルム72の長さ方向に沿って並設された複数の第2端子77を有しており、当該長さ方向に長尺となっている。このため、フレキシブルケーブル29の他端部における配線73も、フレキシブルケーブル29の長さ方向に沿って並んでいる。
このように、フレキシブルケーブル29の一端部における配線73が並ぶ方向が当該フレキシブルケーブル29の幅方向であることにより、フレキシブルケーブル29の一端部の流路形成基板45との固定領域のX方向における寸法を小さくすることができる。これにより、ヘッドユニット4のX方向におけるサイズをより小型化することが可能となる。そして、フレキシブルケーブル29の幅は、ヘッドユニット4のX方向における幅よりも狭いことが望ましい。これにより、フレキシブルケーブル29の大きさ(特に幅)の制約を受けることなくヘッドユニット4をより高密度に配置することが可能となる。また、フレキシブルケーブル29の他端部の配線が並ぶ方向が、当該フレキシブルケーブルの長さ方向であることにより、当該他端部における配線のレイアウト等の自由度が高まる。すなわち、以下に説明するように、他端部における配線73のピッチや太さをより自由に設定することが可能となる。
ここで、第1端子76の幅(換言すると、端子並設方向の寸法)は、第2端子77の幅よりも狭くなっている。このため、これらの端子76,77を接続する配線73の太さに関し、第1端子76側(換言すると、一端部)では相対的に細く、第2端子77側(換言すると、他端部)では相対的に太くなっている。また、第1端子76の形成ピッチは、第2端子77の形成ピッチよりも狭くなっている。このため、配線73の形成ピッチに関しても、第1端子76側では相対的に狭く、第2端子77側では相対的に広くなっている。このような構成を採用することにより、フレキシブルケーブル29の一端部における第1端子部33の幅を小さくすることができる。このため、この第1端子部33が接続される流路形成基板45のヘッド基板端子部62のX方向における幅を小さくすることができる。これにより、ヘッドユニット4のX方向における小型化に寄与することが可能となる。また、フレキシブルケーブル29の他端部では、配線73の太さが一端部よりも太いので、配線抵抗を低減することが可能となる。特に、本実施形態においては、他端部において一端部の第1端子部33からより遠い位置にある配線73ほど配線長が長くなるので、これに伴い抵抗が大きくなりやすいところ、配線73の太さをより太くすることで、抵抗が増大することを低減することができる。また、配線73の形成ピッチが一端部よりも広いので、回路基板16に対する配線作業が容易となる。これにより電気的な接触不良等が低減される。
このフレキシブルケーブル29の一端部の第1端子部33は、流路形成基板45におけるヘッド基板端子部62に接続される。ヘッド基板端子部62へのフレキシブルケーブル29の実装作業において、フレキシブルケーブル29の一端部は、例えば、仮想的に設定された折り曲げ線L1(図10参照)から端子部33,34や配線73が形成されている一方の面とは反対側の他方の面側に向けて屈曲(換言すると、山折り)される(図5、図6、及び図9参照)。以下、この曲げ部分を第1曲げ部78と称する。これにより、第1曲げ部78よりも第1端子部33側の部分が、ヘッド基板である流路形成基板45に沿った状態とされて、ヘッド基板端子部62に対向する。本実施形態においてはこの部分が、ヘッド基板である流路形成基板45に沿った部分に相当する。また、この場合において、第1曲げ部78よりも他端側の部分が、流路形成基板45に交差する方向(換言すると、流路形成基板45から離間する方向)に延びる部分である。なお、「流路形成基板45に沿った」状態に関し、第1曲げ部78よりも第1端子部33側の部分が流路形成基板45の上面(換言すると、実装面)に完全に平行である状態には限られず、フレキシブルケーブル29の他の部分よりも流路形成基板45の上面により平行に近い状態となっていれば流路形成基板45に沿った状態である(なお、後述する「回路基板16に沿った」状態も同様)。また、第1曲げ部78に関し、本実施形態においては角のある状態に折り曲げられた構成を例示したが、より緩やかに曲げられた、ある程度幅のある部分(曲率がより小さいもの)であってもよい(なお、後述する第2曲げ部79についても同様)。
そして、フレキシブルケーブル29の第1端子部33とヘッド基板端子部62とは、例えば、非導電性接着剤(NCP:Non-Conductive Paste)或いはこれをシート状にしたものにより電気的に接続され、フレキシブルケーブル29の一端部が流路形成基板45に固定される。非導電性接着剤は、導電性粒子を含まないため、隣り合う端子間の間隔が比較的狭い構成においても隣接端子間のショートを防止しつつ素子側端子と配線側端子との接合が可能である。このため、端子の高密度化に対応することができる。
第1端子部33とヘッド基板端子部62との電気的な接続部分、すなわち、フレキシブルケーブル29と流路形成基板45とが互いに固定された固定領域(換言すると、実装部分)は、流路形成基板45の実装面に直交する平面視においてY方向よりもX方向に長尺となっている。換言すると、第1曲げ部78が、平面視でY方向よりもX方向に長尺となっている。このため、例えば記録ヘッド3の構成部材の熱膨張率の違いにより、特にY方向に長尺な構成部材が当該Y方向において反った場合においても、実装部分や第1曲げ部78がY方向に沿っている構成と比較して、実装部分に対して反りによる応力が作用しにくい。このため、本実施形態のように、より長尺な構成部材を有する記録ヘッド3においても、電気的な接点である第1端子部33とヘッド基板端子部62との実装部分の剥離を抑制することが可能となる。このため、ヘッド構成部材の反りを抑制するための矯正板等の部材を別途要することなく、実装部分の接続不良等を抑制することが可能となる。
フレキシブルケーブル29において、第1曲げ部78より他端側の部分は、流路形成基板45から回路基板16側に離間する方向に、すなわち、流路形成基板45に交差する方向に延びるように起立され、ヘッドユニット4の配線用開口43から上方に引き出される。ヘッドユニット4が第1収容凹部19に収容される際、配線用開口43から引き出されたフレキシブルケーブル29は、ホルダー部材15の仕切板21に設けられた配線挿通口28に挿通されて、第2収容凹部20側に引き出される。第2収容凹部20側に引き出されたフレキシブルケーブル29の他端部は、仮想的に設定された折り曲げ線L2(図10参照)から端子部33,34や配線73が形成されている一方の面側に向けて屈曲(換言すると、谷折り)される(図5参照)。以下、この曲げ部分を第2曲げ部79と称する。この状態では、第2曲げ部79よりも第2端子部34側の部分が、回路基板16の実装面に沿った状態とされて回路基板端子部35に対向する。そして、この場合、フレキシブルケーブル29において第2曲げ部79よりも一端側の部分が、回路基板16に交差する方向(換言すると、回路基板16から離間する方向)に延びる部分である。
フレキシブルケーブル29の第2端子部34と回路基板端子部35とは、第1端子部33とヘッド基板端子部62との接合時と同様に、非導電性接着剤等により電気的に接続され、フレキシブルケーブル29の他端部が回路基板16に固定される。なお、端子部同士の接続には、例示した非導電性接着剤に限られず、異方性導電接着剤(ACP:Anisotropic Conductive Paste)やハンダ等により電気的に接続しても良い。
図5に示されるように、フレキシブルケーブル29の一端部における第1端子部33がヘッド基板端子部62に固定され、他端部における第2端子部34が回路基板端子部35に固定されて、フレキシブルケーブル29の実装が完了した状態では、フレキシブルケーブル29が流路形成基板45と回路基板16との間で撓んだ状態となる。本実施形態においては、第1曲げ部78から第2曲げ部79までの長さが、流路形成基板45の上面(換言すると、実装面)から回路基板16の上面(換言すると、実装面)までの距離に対して101〔%〕以上、140〔%〕以下に調整されている。このように当該部分の長さに余裕が持たされているので、X方向よりもY方向に長尺な構成部材が反ったとしても、その分、当該反りの影響を緩和することができる(すなわち、反りが生じた場合においてもフレキシブルケーブル29がピンと張った状態となり難い)。その結果、フレキシブルケーブル29の実装部分における剥離をより確実に抑制することが可能となる。
ここで、図5、図6、及び図9等に示されるように、各ヘッドユニット4においてフレキシブルケーブル29が流路形成基板45から離間する位置(即ち、第1曲げ部78の位置)は、Y方向において、ヘッドユニット4の中心に対して一方の端部に偏っている。そして、図2に示されるように、複数のヘッドユニット4の内、Y方向の両側に位置するヘッドユニット4の流路形成基板45に固定されたフレキシブルケーブル29は、Y方向において固定板17或はホルダー部材15等の共通部材の中心からより遠くに配置されている。このように発熱しやすいフレキシブルケーブル29が、共通部材の中心(或は、記録ヘッド3の中心)からより遠くに配置されることにより、すなわち、比較的温度が下がりやすい位置(換言すると、温度が逃げやすい位置)であるより外側に配置されることにより、記録ヘッド3内における温度勾配を低減することができる。その結果、温度変化に基づく各ヘッドユニット4の噴射特性のばらつきを抑制することが可能となる。
図11は、フレキシブルケーブル29及び流路形成基板45の固定領域(換言すると、実装部分)と流路形成基板45及び固定板17の固定領域との関係を説明するY方向における部分断面図である。また、図12は、フレキシブルケーブル29及び流路形成基板45の固定領域(実装部分)と流路形成基板45及び固定板17の固定領域との関係の他の例について説明するY方向における部分断面図である。図11に示されるように、本実施形態においては、フレキシブルケーブル29と流路形成基板45との固定領域(換言すると、実装部分)、すなわち、第1端子部33とヘッド基板端子部62との接続領域が、流路形成基板45と固定板17との固定領域と平面視で重なっている。すなわち、流路形成基板45と固定板17の固定領域におけるY方向における幅をw1としたとき、この幅w1の範囲内にフレキシブルケーブル29と流路形成基板45との固定領域が位置している。これに対し、図12の例においては、フレキシブルケーブル29と流路形成基板45との固定領域が、流路形成基板45と固定板17の固定領域と重なっておらず、幅w1の範囲から内側(換言すると、Y方向における流路形成基板45の中心側)に外れている。この場合、流路形成基板45と固定板17との固定領域として必要な幅w1が一定であるとすると、その分、図12の例の構成では、流路形成基板45のY方向における長さw3が長くなってしまう。また、長さw3を小さく抑えようとすると、固定領域として必要な幅w1を確保することが難しく、これにより接着強度が弱くなるおそれがある。これに対し、本実施形態における構成によれば、図12の例よりも流路形成基板45のY方向における長さw2を短くすることができる。これにより、流路形成基板45を小型化することができ、ひいてはヘッドユニット4をより小型化することができる。このため、ヘッドユニット4をより高密度に配置することが可能となる。また、固定領域の面積をより広く確保できるのでヘッドユニット4と固定板17とをより確実に固定することが可能となる。
なお、本実施形態におけるフレキシブルケーブル29及び流路形成基板45の固定領域に関し、Y方向が長尺である一方でX方向において短いため、固定領域の面積は比較的小さいものとなっている。このような固定領域が、例えばヘッド基板の全面に亘るような構成では、フレキシブルケーブル29が大型化するという問題がある。また、フレキシブルケーブル29と固定対象の基板との熱膨張率の相違による剥離等が生じやすいという問題がある。これに対し、本実施形態におけるフレキシブルケーブル29及び流路形成基板45の固定領域は、面積は小さいものの、フレキシブルケーブル29のサイズを小さく抑えることができるので、ヘッドユニット4の小型化に寄与することができる。また、フレキシブルケーブル29と流路形成基板45との間に熱膨張率の相違があったとしてもその影響を抑えることができる。
本実施形態では、合成樹脂製のホルダー部材15の熱膨張率と、金属製の固定板17の熱膨張率とが異なっている。この両者の熱膨張率の相違により、ホルダー部材15と固定板17とに反りが生じやすい場合においても、フレキシブルケーブル29の実装部分の剥離を抑制することができる。このため、熱膨張率の相違に制約されず、ホルダー部材15と固定板17の材料の選択自由度が向上する。また、材料に基づいて反りが大きい(又は、反りが生じやすい)構成部材を予め把握することができ、当該構成部材に配置されたフレキシブルケーブル29の実装部分の長尺方向をX方向とする等のように対策・管理がしやすい。そして、Y方向に長尺な構成部材の反りによるフレキシブルケーブル29の実装部分における剥離を抑制することが可能であるため、プリンター1の信頼性が向上する。
図13は、第2実施形態における記録ヘッド3の分解斜視図である。また、図14は、第2実施形態における記録ヘッド3のY方向における断面図である。さらに、図15は、第2実施形態におけるフレキシブルケーブル29の正面図である。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明は適宜省略する。本実施形態においては、第1実施形態における固定板17が設けられていない。そして、第1実施形態においてヘッドユニット4毎に個別に設けられていたノズルプレート26が、本実施形態においては、複数のヘッドユニット4に共通な共通部材として機能する。すなわち、本実施形態におけるノズルプレート26は、平面視でX方向よりもY方向に長尺な一枚の板材から構成されており、各ヘッドユニット4に対応する領域に複数のノズル24及びこれらのノズル24が並設されてなるノズル列25がそれぞれ形成されている。また、上記第1実施形態では複数の回路基板16が設けられた構成であったが、本実施形態においては、ホルダー部材15に収容される全てのヘッドユニット4に共通の一枚の回路基板16となっている。この回路基板16において、ホルダー部材15の配線挿通口28に対応する位置に、配線用開口部81が形成されている。すなわち、回路基板16に対するフレキシブルケーブル29の配線作業の際、フレキシブルケーブル29は、ホルダー部材15の仕切板21に設けられた配線挿通口28に挿通されると共に、配線用開口部81に挿通されて、回路基板16の上面側に引き出される。
図15に示されるように、本実施形態における第2端子部34は、フレキシブルケーブル29の他端部において当該フレキシブルケーブル29の幅方向(換言すると、X方向)に沿って形成されている。すなわち、第2端子部34を構成する第2端子77が、フレキシブルケーブル29の幅方向に沿って並設されている。このため、フレキシブルケーブル29の他端部における配線73も、フレキシブルケーブル29の幅方向に沿って並んでいる。これに対応して、回路基板16の回路基板端子部35もX方向に沿って形成されている。そして、第2端子部34と回路基板端子部35との電気的な接続部分、すなわち、フレキシブルケーブル29と回路基板16とが互いに固定された固定領域(換言すると、実装部分)は、平面視においてX方向に長尺となっている。換言すると、第2曲げ部79が、平面視でY方向よりもX方向に長尺となっている。このため、本実施形態においても、記録ヘッド3の構成部材のうち平面視でX方向よりもY方向に長尺な構成部材が当該Y方向において反った場合においても、電気的な接点である第2端子部34と回路基板端子部35の実装部分の剥離を抑制することが可能となる。なお、他の構成については、第1実施形態と同様である。
図16は、フレキシブルケーブル29の端子部33と流路形成基板45のヘッド基板端子部62との電気的な接合に関する変形例を説明する模式図である。上記各実施形態においては、フレキシブルケーブル29と流路形成基板45との固定領域、あるいは、フレキシブルケーブル29と回路基板16との固定領域において、フレキシブルケーブル29の端子部33,34がそれぞれヘッド基板端子部62及び回路基板端子部35と電気的に接合された構成を例示したが、これには限られない。例えば、図16に示される変形例では、フレキシブルケーブル29と流路形成基板45との固定領域とは異なる位置にヘッド基板端子部62が設けられている。そして、フレキシブルケーブル29と流路形成基板45とが接着剤により固定される一方、フレキシブルケーブル29の端子部33とヘッド基板端子部62とは、ワイヤー83を介したワイヤーボンディングにより電気的に接合されている。同様に、フレキシブルケーブル29の第2端子部34と、回路基板16の回路基板端子部35との接合に関しても同様にワイヤーボンディングに電気的に接合されてもよい。
このような、ワイヤーボンディングにより電気的な接続を行う構成を採用することにより、フレキシブルケーブル29が固定される対象であるヘッド基板は、必ずしも電極端子や配線等が設けられたものには限られない。例えば、上記保護基板46にフレキシブルケーブル29が固定され、当該部分からワイヤーボンディングにより流路形成基板45上のヘッド基板端子部62と第1端子部33とが電気的に接続される構成を採用することも可能である。この例の場合、保護基板46が本発明におけるヘッド基板に相当する。
図17は、フレキシブルケーブル29の他の変形例について説明する正面図である。上記第1実施形態では、フレキシブルケーブル29が流路形成基板45と回路基板16との間で撓んでいる構成を例示したが、これには限られず、例えば、フレキシブルケーブル29が流路形成基板45と回路基板16との間で折り曲げられている構成を採用することもできる。例えば、図17に示される変形例のフレキシブルケーブル29は、途中の第1屈曲部84とこれとは異なる位置の第2の屈曲部85とでそれぞれ略90°ずつ屈曲されている。このようなフレキシブルケーブル29の折り曲げの仕方は、実装対象の基板における端子部の形成位置等のレイアウトに応じて任意に選択することができる。このようにフレキシブルケーブル29が流路形成基板45と回路基板16との間で折り曲げられていることにより、上記第1実施形態と同様に、フレキシブルケーブル29の長さに余裕が持たされている。これにより、X方向よりもY方向に長尺な構成部材が反ったとしても、その分、当該反りの影響を緩和することができる。その結果、フレキシブルケーブル29の実装部分における剥離をより確実に抑制することが可能となる。
また、上記実施形態における記録ヘッド3として、記録媒体Sに対して幅方向の走査を伴うことなくインクを噴射する所謂ライン型記録ヘッドを例示したが、これには限られず、記録媒体Sの幅方向に往復走査させながらインクを噴射させる所謂シリアル型記録ヘッドにも同様に本発明を適用することができる。
そして、以上では、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド3を例に挙げて説明したが、本発明は、複数のヘッドユニットを共通部材に固定する構成を採用する他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。