以下、本発明の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.画像形成装置(第1実施形態)
1-1.全体構成
1-2.現像部の構成
1-3.ブロック構成
1-4.トナーの構成
1-5.動作
1-6.作用および効果
2.画像形成装置(第2実施形態)
2-1.構成
2-2.動作
2-3.作用および効果
3.画像の用途
3-1.画像形成装置(第1実施形態)を用いて形成された画像の転写方法
3-2.画像形成装置(第2実施形態)を用いて形成された画像の転写方法
4.変形例
<1.画像形成装置(第1実施形態)>
まず、本発明の第1実施形態の画像形成装置に関して説明する。
ここで説明する画像形成装置は、例えば、トナーを用いて後述する媒体M(図1参照)に画像を形成する装置であり、いわゆる電子写真方式のフルカラープリンタである。
より具体的には、画像形成装置は、例えば、後述する中間転写ベルト41を用いて媒体Mに画像を形成する中間転写方式の画像形成装置である。
媒体Mの種類は、特に限定されないが、例えば、紙およびフィルムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
<1-1.全体構成>
まず、画像形成装置の全体構成に関して説明する。
図1は、画像形成装置の平面構成を表している。この画像形成装置では、画像の形成工程において、搬送経路R1~R5のそれぞれに沿って媒体Mが搬送される。図1では、搬送経路R1~R5のそれぞれを破線で示している。
具体的には、画像形成装置は、例えば、図1に示したように、筐体1の内部に、トレイ10と、送り出しローラ20と、現像部30と、転写部40と、定着部50と、搬送ローラ61~68と、搬送路切り替えガイド69,70とを備えている。
この画像形成装置は、例えば、媒体Mの片面に画像を形成するだけでなく、その媒体Mの両面に画像を形成することもできる。
以下では、画像形成装置が媒体Mの片面だけに画像を形成する場合において、その画像が形成される面を媒体Mの「表面」と呼称する。また、媒体Mの片面(表面)と反対側の面を「裏面」と呼称する。すなわち、画像形成装置が媒体Mの両面に画像を形成する場合には、その媒体Mの表面および裏面のそれぞれに画像が形成される。
[筐体]
筐体1は、例えば、金属材料および高分子材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。筐体1には、画像が形成された媒体Mを排出するためのスタッカ2が設けられており、その画像が形成された媒体Mは、筐体1に設けられた排出口1Hからスタッカ2に排出される。
[トレイおよび送り出しローラ]
トレイ10は、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されており、媒体Mを収納している。送り出しローラ20は、例えば、Y軸の方向に延在していると共にそのY軸を中心として回転可能である円筒状の部材である。以降において説明する一連の構成要素のうち、名称中に「ローラ」という文言を含む構成要素は、送り出しローラ20と同様に、Y軸の方向に延在している円筒状の部材であると共に、そのY軸を中心として回転可能である。
トレイ10には、例えば、複数の媒体Mが積層された状態で収納されている。トレイ10に収納されている複数の媒体Mは、例えば、送り出しローラ20によりトレイ10から1つずつ取り出される。
トレイ10の数は、特に限定されないため、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。また、送り出しローラ20の数は、特に限定されないため、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。図1では、例えば、トレイ10の数が1個であると共に送り出しローラ20の数が1個である場合を示している。
[現像部]
現像部30は、トナーを用いて、潜像(静電潜像)に対するトナーの付着処理(現像処理)を行う。具体的には、現像部30は、主に、静電潜像を形成すると共に、クーロン力を利用して静電潜像にトナーを付着させる。
ここでは、画像形成装置は、例えば、5個の現像部30(30F,30Y,30M,30C,30K)を備えている。現像部30Fは、本発明の一実施形態の「第2トナー像形成部」であると共に、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、本発明の一実施形態の「第1トナー像形成部」である。
現像部30F,30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されていると共に、後述する中間転写ベルト41の移動経路に沿って配列されている。ここでは、現像部30F,30Y,30M,30C,30Kは、例えば、中間転写ベルト41の移動方向(矢印F5)において、上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。
現像部30F,30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、後述するカートリッジ38(図2参照)に収納されているトナーの種類が異なることを除いて、互いに同様の構成を有している。ここでは、2種類のトナー(被染色トナーおよび捺染トナー)を用いている。
具体的には、現像部30Fは、例えば、被染色トナーを収納している。現像部30Yは、例えば、捺染トナーである捺染イエロートナーを収納している。現像部30Mは、例えば、捺染トナーである捺染マゼンタトナーを収納している。現像部30Cは、例えば、捺染トナーである捺染シアントナーを収納している。現像部30Kは、例えば、捺染トナーである捺染ブラックトナーを収納している。
捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナーのそれぞれは、フルカラーの画像を形成するために用いられるトナーであり、特に、加熱時に昇華転写性を利用して後述する他媒体L(図11参照)に移行することが可能な有色トナーである。この「他媒体」とは、画像形成装置を用いて画像が形成される媒体Mとは異なる媒体であり、例えば、後述する布地などである。一方、被染色トナーは、例えば、媒体Mに形成された画像が他媒体Lに転写される際に、上記した捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナーのそれぞれに含まれている着色剤(後述する捺染染料)により染色されるトナーである。
以下では、被染色トナー、捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナーを個別に呼称する他、必要に応じて総称を用いる。具体的には、被染色トナー、捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナーを「トナー」と総称する。また、捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナーを「捺染トナー」と総称する。
現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)を用いて捺染トナー像Z2(後述する図4および図5参照)を形成する。一方、現像部30Fは、被染色トナーを用いて被染色トナー像Z1(後述する図4および図5参照)を形成する。
現像部30F,30Y,30M,30C,30Kのそれぞれの構成に関しては、後述する(図2参照)。また、被染色トナー、捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナーのそれぞれの構成に関しても、後述する。
[転写部]
転写部40は、現像部30により現像処理されたトナーを用いて転写処理を行う。具体的には、転写部40は、主に、現像部30により静電潜像に付着されたトナーを媒体Mに転写させる。
この転写部40は、例えば、中間転写ベルト41と、駆動ローラ42と、従動ローラ43と、バックアップローラ44と、1次転写ローラ45と、2次転写ローラ46と、クリーニングブレード47とを含んでいる。
特に、転写部40は、後述するように、中間転写ベルト41の上に被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2をこの順に転写させたのち(図4参照)、その中間転写ベルト41から媒体Mの上に捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1をこの順に転写させることにより(図5参照)、その媒体Mの上に、捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1をこの順に積層させる。中間転写ベルト41は、本発明の一実施形態の「中間転写媒体」である。
中間転写ベルト41は、媒体Mにトナーが転写される前に、そのトナーが一時的に転写される媒体であり、例えば、無端の弾性ベルトなどである。この中間転写ベルト41は、例えば、ポリイミドなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。また、中間転写ベルト41は、例えば、駆動ローラ42、従動ローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれにより張架された状態において、その駆動ローラ42の回転に応じて移動可能である。
駆動ローラ42は、例えば、後述するベルトモータ91(図3参照)を介して回転可能である。従動ローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれは、例えば、駆動ローラ42の回転に応じて回転可能である。
1次転写ローラ45は、静電潜像に付着されたトナーを中間転写ベルト41に転写(1次転写)させる。この1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41を介して現像部30(後述する感光体ドラム32:図2参照)に圧接されている。なお、1次転写ローラ45は、例えば、後述するローラモータ88(図3参照)を介して回転可能である。
1次転写ローラ45の数は、特に限定されないため、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。ここでは、転写部40は、例えば、上記した5個の現像部30(30F,30Y,30M,30C,30K)に対応して、5個の1次転写ローラ45(45F,45Y,45M,45C,45K)を含んでいる。一方、転写部40は、1個のバックアップローラ44に対応して、1個の2次転写ローラ46を含んでいる。
2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41に転写されたトナーを媒体Mに転写(2次転写)させる。この2次転写ローラ46は、バックアップローラ44に圧接されており、例えば、金属製の芯材と、その芯材の外周面を被覆する発泡ゴム層などの弾性層とを含んでいる。なお、2次転写ローラ46は、例えば、後述するローラモータ88(図3参照)を介して回転可能である。
クリーニングブレード47は、中間転写ベルト41に圧接されており、その中間転写ベルト41の表面に残留した不要なトナーなどの異物を掻き取る。
[定着部]
定着部50は、転写部40により媒体Mに転写されたトナーを用いて定着処理を行う。具体的には、定着部50は、主に、転写部40によりトナーが転写された媒体Mを加熱しながら加圧することにより、そのトナーを媒体Mに定着させる。すなわち、定着部50は、媒体Mの上に捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1がこの順に積層されたのち、その捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1を媒体Mに定着させる
この定着ユニット50は、例えば、加熱ローラ51および加圧ローラ52を含んでいる。
加熱ローラ51は、媒体Mに転写されたトナーを加熱する。この加熱ローラ51は、例えば、金属芯と、その金属芯の表面を被覆する樹脂コートとを含んでいる。樹脂コートは、例えば、例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
加熱ローラ51(金属芯)の内部には、例えば、後述するヒータ92(図3参照)が設置されており、そのヒータ92は、例えば、ハロゲンランプなどを含んでいる。加熱ローラ51の近傍には、例えば、その加熱ローラ51から離間されるように、後述するサーミスタ93(図3参照)が配置されている。このサーミスタ93は、例えば、加熱ローラ51の表面温度を測定する。
加圧ローラ52は、加熱ローラ51に圧接されており、媒体Mに転写されたトナーを加圧する。この加圧ローラ52は、例えば、金属芯と、その金属芯の表面を被覆する耐熱弾性層とを含んでいる。耐熱弾性層は、例えば、シリコーンゴムなどのゴム材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
[搬送ローラ]
搬送ローラ61~68のそれぞれは、搬送経路R1~R5のそれぞれを介して互いに対向するように配置された一対のローラを含んでおり、送り出しローラ20により取り出された媒体Mを搬送させる。
媒体Mの片面(表面)だけに画像が形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61~64により搬送経路R1,R2に沿って搬送される。これに対して、媒体Mの両面(表面および裏面)に画像が形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61~68により搬送経路R1~R5に沿って搬送される。
[搬送路切り替えガイド]
搬送路切り替えガイド69,70は、媒体Mに形成される画像の形式などに応じて、その媒体Mの搬送方向を切り替える。この画像の形式とは、例えば、媒体Mの片面だけに画像が形成される形式と、媒体Mの両面に画像が形成される形式とである。
<1-2.現像部の構成>
次に、現像部30の構成に関して説明する。図2は、図1に示した現像部30(30F,30Y,30M,30C,30K)の平面構成を拡大している。
現像部30F,30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、上記したように、カートリッジ38に収納されているトナーの種類が異なることを除いて、互いに同様の構成を有している。
具体的には、現像部30F,30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、図2に示したように、感光体ドラム32と、帯電ローラ33と、現像ローラ34と、供給ローラ35と、現像ブレード36と、クリーニングブレード37と、カートリッジ38とを備えている。現像部30F,30Y,30M,30C,30Kのそれぞれには、例えば、光源39が付設されている。
感光体ドラム32、帯電ローラ33、現像ローラ34、供給ローラ35、現像ブレード36およびクリーニングブレード37は、例えば、筐体31の内部に収納されている。カートリッジ38は、例えば、筐体31に対して着脱可能に取り付けられている。光源39は、例えば、筐体31の外部に配置されている。
現像部30F,30Y,30M,30C,30Kそれぞれは、例えば、後述する移動モータ90(図3参照)を介して待避位置と接触位置との間を移動可能である。待避位置は、感光体ドラム32が中間転写ベルト41から遠ざかるように後退しているため、その感光体ドラム32が中間転写ベルト41を介して1次転写ローラ45に押圧されていない位置である。一方、接触位置は、感光体ドラム32が中間転写ベルト41に近づくように前進しているため、その感光体ドラム32が中間転写ベルト41を介して1次転写ローラ45に押圧されている位置である。
[筐体]
筐体31は、例えば、金属材料および高分子材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。筐体31には、例えば、感光体ドラム32を部分的に露出させるための開口部31K1と、光源39から出力された光を感光体ドラム32に導くための開口部31K2とが設けられている。
[感光体ドラム]
感光体ドラム32は、主に、静電潜像が形成されると共にその静電潜像を担持する潜像担持部材である。この感光体ドラム32は、Y軸の方向に延在していると共に、そのY軸を中心として回転可能である。また、感光体ドラム32は、例えば、円筒状の導電性支持体と、その導電性支持体の外周面を被覆する光導電層とを含む有機系感光体であり、後述するドラムモータ89(図3参照)を介して回転可能である。導電性支持体は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む金属パイプである。光導電層は、例えば、電荷発生層および電荷輸送層などを含む積層体である。感光体ドラム32の一部は、筐体31に設けられた開口部31K1から露出している。
[帯電ローラ]
帯電ローラ33は、主に、感光体ドラム32の表面を帯電させる。この帯電ローラ33は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性エピクロロヒドリンゴム層とを含んでいる。なお、帯電ローラ33は、感光体ドラム32に圧接されている。
[現像ローラ]
現像ローラ34は、主に、供給ローラ35から供給されるトナーを担持すると共に、感光体ドラム32の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させる。この現像ローラ34は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性ウレタンゴム層とを含んでいる。なお、現像ローラ34は、感光体ドラム32に圧接されている。
[供給ローラ]
供給ローラ35は、主に、現像ローラ34の表面にトナーを供給する。この供給ローラ35は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性発泡シリコンスポンジ層とを含んでおり、いわゆるスポンジローラである。なお、供給ローラ35は、現像ローラ34に圧接されている。
[現像ブレード]
現像ブレード36は、主に、現像ローラ34の表面に供給されたトナーの厚さを規制する。この現像ブレード36は、例えば、現像ローラ34から所定の距離を隔てた位置に配置されており、その現像ローラ34と現像ブレード36との間の距離(間隔)に基づいて、トナーの厚さが制御される。なお、現像ブレード36は、例えば、ステンレスなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
[クリーニングブレード]
クリーニングブレード37は、主に、感光体ドラム32の表面に残留した不要なトナーなどを掻き取る板状の弾性部材である。このクリーニングブレード37は、例えば、感光体ドラム32の延在方向と略平行な方向に延在しており、その感光体ドラム32に圧接されている。なお、クリーニングブレード37は、例えば、ウレタンゴムなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
[カートリッジ]
カートリッジ38は、主に、トナーを収納する収納部材である。カートリッジ38に収納されているトナーの種類は、例えば、上記した通りである。
[光源]
光源39は、主に、感光体ドラム32の表面を露光することにより、その感光体ドラム32の表面に静電潜像を形成する露光装置である。この光源39は、例えば、発光ダイオード(LED)ヘッドであり、LED素子およびレンズアレイなどを含んでいる。LED素子およびレンズアレイは、例えば、そのLED素子から出力された光が感光体ドラム32の表面において結像するように配置されている。
<1-3.ブロック構成>
次に、画像形成装置のブロック構成に関して説明する。
図3は、画像形成装置のブロック構成を表している。ただし、図3では、既に説明した画像形成装置の構成要素も併せて示している。
画像形成装置は、例えば、図3に示したように、制御部71と、インターフェース(I/F)制御部72と、受信メモリ73と、編集メモリ74と、パネル部75と、操作部76と、各種センサ77と、光源制御部78と、帯電電圧制御部79と、現像電圧制御部80と、供給電圧制御部81と、転写電圧制御部82と、ローラ駆動制御部83と、ドラム駆動制御部84と、移動制御部85と、ベルト駆動制御部86と、定着制御部87とを備えている。
[制御部]
制御部71は、主に、画像形成装置全体の動作を制御する。この制御部71は、例えば、制御回路、メモリ、入出力ポートおよびタイマなどを含んでいる。制御回路は、例えば、中央演算処理装置(CPU)などを含んでいる。メモリは、例えば、リードオンリーメモリ(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)などの記憶素子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
特に、制御部71は、現像部30Fにより形成される被染色トナー像Z1(後述する図4および図5参照)と、現像部30Y,30M,30C,30Kにより形成される捺染トナー像Z2(後述する図4および図5参照)との位置関係を制御する。
具体的には、制御部71は、例えば、画像を形成するために中間転写ベルト41が用いられる場合には、後述するように、その中間転写ベルト41の上に被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2をこの順に積層させる(図4参照)。この場合には、中間転写ベルト41に近い側に被染色トナー像Z1が配置されると共に、その中間転写ベルト41から遠い側に捺染トナー像Z2が配置される。現像部30(30F,30Y,30M,30C,30K)、転写部40および制御部71は、本発明の一実施形態の「画像形成部」である。
制御部71が中間転写ベルト41の上に被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2をこの順に積層させるのは、その制御部71は、後述するように、最終的に媒体Mの上に捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1をこの順に積層させるためである(図5参照)。この場合には、媒体Mに近い側に捺染トナー像Z2が配置されると共に、その媒体Mから遠い側に被染色トナー像Z1が配置される。
[I/F制御部]
I/F制御部72は、主に、外部装置から画像形成装置に送信されるデータなどの情報を受信する。この外部装置は、例えば、画像形成装置のユーザが使用可能であるパーソナルコンピュータなどのうちのいずれか1種類または2種類以上であり、その外部装置から画像形成装置に送信される情報は、例えば、画像を形成するために用いられる画像データなどである。
[受信メモリおよび編集メモリ]
受信メモリ73は、主に、画像形成装置において受信されたデータなどの情報を格納する。編集メモリ74は、主に、受信メモリ73に格納された画像データが編集処理されたデータなどを格納する。
[パネル部および操作部]
パネル部75は、例えば、ユーザが画像形成装置を操作するために必要な情報を表示する表示パネルなどを含んでいる。この表示パネルの種類は、特に限定されないが、例えば、液晶パネルなどである。操作部76は、例えば、画像形成装置の操作時においてユーザにより操作されるボタンなどを含んでいる。
[各種センサ]
各種センサ77は、例えば、温度センサ、湿度センサ、画像濃度センサ、媒体位置検出センサ、トナー残量検知センサおよび人感センサなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
[光源制御部、帯電電圧制御部、現像電圧制御部、供給電圧制御部および転写電圧制御部]
光源制御部78は、主に、光源39の露光動作などを制御する。帯電電圧制御部79は、主に、帯電ローラ33に印加される電圧などを制御する。現像電圧制御部80は、主に、現像ローラ34に印加される電圧などを制御する。供給電圧制御部81は、主に、供給ローラ35に印加される電圧などを制御する。転写電圧制御部82は、主に、1次転写ローラ45および2次転写ローラ46のそれぞれに印加される電圧などを制御する。これらの電圧は、例えば、制御部71の指示に応じて設定可能であると共に、その制御部71の指示に応じて任意に変更可能である。
なお、図3では図示内容を簡略化しているが、画像形成装置は、例えば、5個の現像部30(30F,30Y,30M,30C,30K)に対応する5個の光源制御部78を含んでいる。具体的には、例えば、現像部30Fに付設されている光源39を制御する光源制御部78と、現像部30Yに付設されている光源39を制御する光源制御部78と、現像部30Mに付設されている光源39を制御する光源制御部78と、現像部30Cに付設されている光源39を制御する光源制御部78と、現像部30Kに付設されている光源39を制御する光源制御部78とである。
ここで光源制御部78に関して説明したことは、例えば、帯電電圧制御部79、現像電圧制御部80、供給電圧制御部81および転写電圧制御部82のそれぞれに関しても同様である。すなわち、画像形成装置は、例えば、5個の現像部30に対応して、5個の帯電電圧制御部79と、5個の現像電圧制御部80と、5個の供給電圧制御部81と、5個の転写電圧制御部82とを含んでいる。
[ローラ駆動制御部、ドラム駆動制御部、移動制御部、ベルト駆動制御部および定着制御部]
ローラ駆動制御部83は、主に、ローラモータ88を介して帯電ローラ33、現像ローラ34、供給ローラ35、1次転写ローラ45および2次転写ローラ46などの一連のローラの回転動作などを制御する。ドラム駆動制御部84は、主に、ドラムモータ89を介して感光体ドラム32の回転動作などを制御する。移動制御部85は、主に、移動モータ90を介して現像部30の移動動作などを制御する。ベルト駆動制御部86は、主に、ベルトモータ91を介して中間転写ベルト41の移動動作などを制御する。定着制御部87は、主に、サーミスタ93により測定された温度に基づいてヒータ92の動作を制御すると共に、定着モータ94を介して加熱ローラ51および加圧ローラ52のそれぞれの回転動作などを制御する。
光源制御部78に関して上記したことは、例えば、ローラ駆動制御部83、ドラム駆動制御部84および移動制御部85のそれぞれに関しても同様である。すなわち、画像形成装置は、例えば、5個の現像部30に対応して、5個のローラ駆動制御部83と、5個のドラム駆動制御部84と、5個の移動制御部85とを含んでいる。
<1-4.トナーの構成>
次に、トナーの構成に関して説明する。
ここで説明するトナーは、例えば、一成分現像方式の負帯電トナーである。すなわち、トナーは、例えば、負の帯電極性を有している。
一成分現像方式とは、トナーに電荷を付与するためのキャリア(磁性粒子)を用いずに、そのトナー自身に適切な帯電量を付与する方式である。これに対して、二成分現像方式とは、上記したキャリアとトナーとを混合することにより、そのキャリアとトナーとの摩擦を利用してトナーに適切な帯電量を付与する方式である。
トナーの製造方法は、特に限定されない。具体的には、トナーの製造方法は、例えば、粉砕法でもよいし、重合法でもよいし、それら以外の方法でもよい。もちろん、上記した製造方法のうちの2種類以上を併用してもよい。重合法は、例えば、乳化重合凝集法および溶解懸濁法などである。
[被染色トナー]
被染色トナーは、上記したように、捺染トナーに含まれている捺染染料より染色される性質を有するトナーである。すなわち、被染色トナーは、後述するように、捺染トナーに熱エネルギーH(図11参照)が供給された際に、その熱エネルギーHを利用して捺染トナー中から移行してくる捺染染料を受容する受容体である。この被染色トナーが捺染染料を受容することにより、その捺染染料より被染色トナーが染色される。
この被染色トナーは、例えば、高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この高分子化合物は、捺染染料により染色される性質を有する高分子化合物である。具体的には、高分子化合物は、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびスチレン-ブタジエン系樹脂などである。
ポリエステル系樹脂は、ポリエステルおよびその誘導体を含む総称である。すなわち、「ポリエステル系樹脂」のうちの「系」は、ポリエステルだけでなく誘導体も含まれることを意味している。この「系」の定義は、スチレン-アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびスチレン-ブタジエン系樹脂などに関しても同様である。
中でも、高分子化合物は、ポリエステル系樹脂を含んでいることが好ましい。第1に、被染色トナーが捺染染料により染色されやすくなるからである。第2に、ポリエステル系樹脂は、紙などの媒体Mに対して高い親和性を有するため、そのポリエステル系樹脂を含んでいる被染色トナーは、その媒体Mに定着しやすいからである。第3に、ポリエステル系樹脂は、布地などの他媒体Lに対して高い親和性を有するため、そのポリエステル系樹脂を含んでいる被染色トナーは、その他媒体Lに定着しやすいからである。第4に、ポリエステル系樹脂は、比較的分子量が小さい場合においても高い物理的強度を有するため、そのポリエステル系樹脂を含んでいる被染色トナーは、優れた耐久性を有するからである。第5に、被染色トナーが本質的に低い帯電特性を有していても、その被染色トナーが媒体Mに定着しやすくなるからである。
ポリエステル系樹脂の結晶状態は、特に限定されない。このため、ポリエステル系樹脂は、結晶性ポリエステルでもよいし、非晶質ポリエステルでもよいし、双方でもよい。中でも、結晶性ポリエステルが好ましい。被染色トナーが捺染染料により染色されやすくなるからである。また、被染色トナーが媒体Mにより定着しやすくなると共に、その被染色トナーの耐久性がより向上するからである。
このポリエステル系樹脂は、例えば、1種類または2種類以上のアルコールと1種類または2種類以上のカルボン酸との反応物(縮重合体)である。
アルコールの種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のアルコールおよびその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のアルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、ソルビトールおよびグリセリンなどである。
カルボン酸の種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のカルボン酸およびその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンジカルボン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸およびドデセニル無水コハク酸などである。
なお、被染色トナーの色は、特に限定されない。このため、被染色トナーは、捺染トナーと同様に、着色剤を含んでいてもよいし、その捺染トナーとは異なり、着色剤を含んでいなくてもよい。この着色剤は、捺染トナーに含まれている着色剤(捺染染料)と同様に、染色性を有していてもよいし、その捺染トナーに含まれている着色剤とは異なり、染色性を有していなくもよい。
被染色トナーが着色剤を含んでいない場合、その被染色トナーの色は、無色(透明)である。この無色の被染色トナーは、例えば、いわゆるクリアトナーである。この場合には、被染色トナー像Z1の色が無色になるため、その被染色トナー像Z1の色相が捺染トナー像Z2の色相にほとんど影響を与えなくなる。
被染色トナーが染色性を有していない着色剤を含んでいる場合、その被染色トナーの色は、特に限定されない。このため、被染色トナーの色は、イエローでもよいし、マゼンタでもよいし、シアンでもよいし、ブラックでもよいし、ホワイトでもよいし、それらのうちの2種類以上が混合された色でもよい。この場合において、被染色トナーは、例えば、その被染色トナーの色に対応する色の着色剤を含んでおり、その着色剤は、例えば、顔料および染料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。一例を挙げると、ホワイトの被染色トナーは、例えば、酸化チタンなどの顔料を含んでいる。
中でも、被染色トナーの色は、被染色トナー像Z1の色相が捺染トナー像Z2の色相に影響を及ぼしにくい色であることが好ましいため、ホワイトであることが好ましい。ただし、被染色トナー像Z1の色相が捺染トナー像Z2の色相に影響を及ぼしにくい色であれば、被染色トナーの色は、ホワイトに限られず、淡いグレーなどの淡色でもよい。
被染色トナーが染色性を有する着色剤を含んでいる場合、その被染色トナーの色は、特に限定されない。このため、被染色トナーの色は、上記した被染色トナーが染色性を有していない着色剤を含んでいる場合と同様に、イエローでもよいし、マゼンタでもよいし、シアンでもよいし、ブラックでもよいし、ホワイトでもよいし、それらのうちの2種類以上が混合された色でもよい。この場合において、被染色トナーは、例えば、その被染色トナーの色に対応する色の着色剤を含んでおり、その着色剤は、例えば、染色性を有する染料(捺染材料)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。各色の捺染染料に関する詳細は、後述する捺染トナーに含まれる着色剤(捺染染料)に関する詳細と同様である。
ここで、被染色トナーの色は、上記したように、被染色トナー像Z1の色相が捺染トナー像Z2の色相に影響を及ぼしにくい色であることが好ましい。このため、被染色トナーの色は、無色(透明)および白色であることがより好ましく、無色であることがさらに好ましい。すなわち、被染色トナーは着色剤を含んでいないため、その被染色トナーの色は無色であることが特に好ましい。
ただし、被染色トナーは、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の材料の種類は、特に限定されないが、例えば、外添剤、離型剤、帯電制御剤、導電性調整剤、補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤およびクリーニング性向上剤などである。
外添剤は、主に、トナー同士の凝集などを抑制することにより、そのトナーの流動性を向上させる。この外添剤は、例えば、無機材料および有機材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機材料は、例えば、疎水性シリカなどである。有機材料は、例えば、メラミン樹脂などである。
外添剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、高分子化合物100重量部に対して0.01重量部~10重量部、好ましくは0.05重量部~8重量部である。
離型剤は、主に、トナーの定着性および耐オフセット性などを向上させる。この離型剤は、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸エステル系ワックスの脱酸化物などのワックスのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この他、離型剤は、例えば、上記した一連のワックスのブロック共重合物などでもよい。
脂肪族炭化水素系ワックスは、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィンの共重合物、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスなどである。脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物は、例えば、酸化ポリエチレンワックスなどである。脂肪酸エステル系ワックスは、例えば、カルナバワックスおよびモンタン酸エステルワックスなどである。脂肪酸エステル系ワックスの脱酸化物は、その脂肪酸エステル系ワックスの一部または全部が脱酸化されたワックスであり、例えば、脱酸カルナバワックスなどである。
離型剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、高分子化合物100重量部に対して0.1重量部~20重量部、好ましくは0.5重量部~12重量部である。
帯電制御剤は、主に、トナーの摩擦帯電性などを制御する。負帯電のトナーに用いられる帯電制御剤は、例えば、アゾ系錯体、サリチル酸系錯体およびカリックスアレン系錯体などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
。
帯電制制御剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、高分子化合物100重量部に対して0.05重量部~15重量部である。
[捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)]
捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナーのそれぞれは、それぞれの色に対応した色の捺染染料を含んでいる。この捺染染料は、捺染イエロー染料、捺染マゼンタ染料、捺染シアン染料および捺染ブラック染料である。
具体的には、捺染イエロートナーは、例えば、着色剤として捺染イエロー染料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいると共に、高分子化合物の代わりに結着剤のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることを除いて、被染色トナーと同様の構成を有している。捺染イエロー染料は、例えば、C.L Reactive Yellow2、C.L Disperse Yellow54、Disperse Yellow160およびC.L Yellow114などである。結着剤は、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびスチレン-ブタジエン系樹脂などである。
ただし、捺染イエロートナーは、被染色トナーとは異なり、離型剤を含んでいなくてもよい。この場合には、主に、離型剤の有無に起因して、捺染トナーと被染色トナーとでは互いに異なる熱的物性(吸熱特性)が得られる。この吸熱特性の差違に関しては、後述する。
捺染イエロー染料の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤100重量部に対して2重量部~25重量部、好ましくは2重量部~15重量部である。離型剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤100重量部に対して0.1重量部~20重量部、好ましくは0.5重量部~12重量部である。帯電制御剤は、特に限定されないが、例えば、結着剤100重量部に対して0.05重量部~15重量部である。外添剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤100重量部に対して0.01重量部~10重量部、好ましくは0.05重量部~8重量部である。
捺染マゼンタトナーは、例えば、捺染イエロー染料の代わりに捺染マゼンタ染料を含んでいることを除いて、捺染イエロートナーと同様の構成を有している。捺染マゼンタ染料は、例えば、C.L Reactive Red3、C.L Disperse Red50およびC.L Disperse Red92などである。捺染マゼンタ染料の含有量は、例えば、捺染イエロー染料の含有量と同様である。
捺染シアントナーは、例えば、捺染イエロー染料の代わりに捺染シアン染料を含んでいることを除いて、捺染イエロートナーと同様の構成を有している。捺染シアン染料は、例えば、C.L Disperse Blue60、C.L Reactive Blue15、C.L Disperse Blue359、C.L Solvent Blue63、C.L Disperse Blue165およびCibacronTurquoiseBlueFGF-Pなどである。捺染シアン染料の含有量は、例えば、捺染イエロー染料の含有量と同様である。
捺染ブラックトナーは、例えば、捺染イエロー染料の代わりに捺染ブラック染料を含んでいることを除いて、捺染イエロートナーと同様の構成を有している。捺染ブラック染料は、例えば、C.L Reactive Black5などである。ただし、捺染ブラック染料は、例えば、捺染イエロー染料と捺染マゼンタ染料と捺染シアン染料との混合物でもよい。捺染ブラック染料の含有量は、例えば、捺染イエロー染料の含有量と同様である。
<1-5.動作>
次に、画像形成装置の動作に関して説明する。
図4は、被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2が形成された中間転写ベルト41の断面構成を表している。図5は、捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1が形成された媒体Mの断面構成を表している。図6は、画像G(捺染画像G2および被染色画像G1)が形成された媒体Mの断面構成を表している。
図4および図5のそれぞれでは、被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2を互いに区別するために、その捺染トナー像Z2に網掛けを施している。また、図6では、被染色画像G1および捺染画像G2を互いに区別するために、その捺染画像G2に網掛けを施している。
媒体Mに画像Gを形成する場合には、画像形成装置は、例えば、以下で説明するように、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理をこの順に行うと共に、必要に応じてクリーニング処理を行う。ここで説明する画像形成装置の一連の動作は、上記した制御部71(図3)により制御される。
[現像処理]
最初に、トレイ10に収納された媒体Mは、送り出しローラ20により取り出される。この送り出しローラ20により取り出された媒体Mは、搬送ローラ61,62により搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送される。
現像処理では、現像部30Fにおいて、感光体ドラム32が回転すると、帯電ローラ33が回転しながら感光体ドラム32の表面に直流電圧を印加する。これにより、感光体ドラム32の表面が均一に帯電する。
続いて、編集処理された画像データに基づいて、光源39が感光体ドラム32の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム32の表面では、光が照射された領域において表面電位が減衰(光減衰)するため、静電潜像が形成される。
一方、現像部30Fでは、カートリッジ38に収納されている被染色トナーが供給ローラ35に向けて放出される。
供給ローラ35に電圧が印加されると、その供給ローラ35が回転する。これにより、カートリッジ38から被染色トナーが供給ローラ35の表面に供給される。
現像ローラ34に電圧が印加されると、その現像ローラ34が供給ローラ35に圧接されながら回転する。これにより、供給ローラ35の表面に供給された被染色トナーが現像ローラ34の表面に付着すると共に、その被染色トナーが現像ローラ34の回転を利用して搬送される。この場合には、現像ローラ34の表面に付着されている被染色トナーの一部が現像ブレード36により除去されるため、その現像ローラ34の表面に付着された被染色トナーの厚さが均一化される。
現像ローラ34に圧接されながら感光体ドラム32が回転したのち、その現像ローラ34の表面に付着されていた被染色トナーが感光体ドラム32の表面に移行する。これにより、感光体ドラム32の表面(静電潜像)に被染色トナーが付着する。
[1次転写処理]
転写部40において、駆動ローラ42が回転すると、その駆動ローラ42の回転に応じて従動ローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれが回転する。これにより、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する。
1次転写処理では、1次転写ローラ45Fに電圧が印加されている。この1次転写ローラ45Fは、中間転写ベルト41を介して感光体ドラム32に圧接されているため、上記した現像処理において感光体ドラム32の表面(静電潜像)に付着された被染色トナーは、中間転写ベルト41の表面に転写される。
これにより、図4に示したように、中間転写ベルト41の表面に、被染色トナーを含む被染色トナー像Z1が形成される。
こののち、被染色トナーが転写された中間転写ベルト41は、引き続き矢印F5の方向に移動する。これにより、現像部30Y,30M,30C,30Kおよび1次転写ローラ45Y,45M,45C,45Kにおいて、上記した現像部30Fおよび1次転写ローラ45Fと同様の手順により、現像処理および1次転写処理が行われる。よって、中間転写ベルト41の表面に捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナーが転写される。
具体的には、現像部30Yおよび1次転写ローラ45Yにより、中間転写ベルト41の表面に捺染イエロートナーが転写される。現像部30Mおよび1次転写ローラ45Mにより、中間転写ベルト41の表面に捺染マゼンタトナーが転写される。現像部30Cおよび1次転写ローラ45Cにより、中間転写ベルト41の表面に捺染シアントナーが転写される。現像部30Kおよび1次転写ローラ45Kにより、中間転写ベルト41の表面に捺染ブラックトナーが転写される。
これにより、図4に示したように、中間転写ベルト41の表面に形成された被染色トナー像Z1の上に、捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)を含む捺染トナー像Z2が形成される。すなわち、中間転写ベルト41の上に、被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2がこの順に積層される。
もちろん、実際に現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれおよび1次転写ローラ45Y,45M,45C,45Kのそれぞれにおいて現像処理および1次転写処理が行われるかどうかは、捺染トナー像Z2を形成するために必要な色(色の組み合わせ)に応じて決定される。
[2次転写処理]
搬送経路R1に沿って搬送される媒体Mは、バックアップローラ44と2次転写ローラ46との間を通過する。
2次転写処理では、2次転写ローラ46に電圧が印加されている。この2次転写ローラ46は、媒体Mを介してバックアップローラ44に圧接されているため、上記した1次転写処理において中間転写ベルト41に転写されたトナー(被染色トナー、捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)は、媒体Mに転写される。
これにより、図5に示したように、媒体Mの上に捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1がこの順に積層される。
[定着処理]
2次転写処理において媒体Mにトナーが転写されたのち、その媒体Mは、引き続き搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送されるため、定着部50に投入される。
定着処理では、加熱ローラ51の表面温度が所定の温度となるように制御されている。加熱ローラ51に圧接されながら加圧ローラ52が回転すると、その加熱ローラ51と加圧ローラ52との間を通過するように媒体Mが搬送される。
これにより、媒体Mの表面に転写されたトナーが加熱されるため、そのトナーが溶融する。しかも、溶融状態であるトナーが媒体Mに圧接されるため、そのトナーが媒体Mに対して強固に密着する。
これにより、トナーが媒体Mに定着されるため、図6に示したように、その媒体Mの表面に画像Gが形成される。この画像Gは、被染色トナー像Z1が定着処理されることにより形成された被染色画像G1と、捺染トナー像Z2が定着処理されることにより形成された捺染画像G2とを含んでいる。すなわち、捺染画像G2および被染色画像G1は、媒体Mの上にこの順に積層されている。
なお、媒体Mに形成された画像Gは、例えば、後述するように、加熱されることにより媒体M以外の他媒体L(図11参照)に移行することが可能である捺染染料の特性を利用して、その媒体Mから他媒体Lに転写可能である。このため、媒体Mに画像Gが形成される場合には、その画像Gは、例えば、他媒体Lに転写された際に正常な向きとなるように、左右が反転された状態で形成される。
画像Gが形成された媒体Mは、搬送経路R2に沿って搬送ローラ63,64により矢印F2の方向に搬送される。これにより、媒体Mは、排出口1Hからスタッカ2に排出される。
なお、媒体Mの搬送手順は、その媒体Mに形成される画像の形式に応じて変更される。
例えば、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、定着部50を通過した媒体Mは、搬送経路R3~R5に沿って搬送ローラ65~68により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、再び搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド69,70により制御される。これにより、媒体Mの裏面(未だ画像が形成されていない面)において、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が行われる。
[クリーニング処理]
現像部30では、感光体ドラム32の表面に不要なトナーが残留する場合がある。この不要なトナーは、例えば、1次転写処理において用いられたトナーの一部であり、中間転写ベルト41に転写されずに感光体ドラム32の表面に残留したトナーなどである。
そこで、現像部30では、クリーニングブレード37に圧接された状態において感光体ドラム32が回転するため、その感光体ドラム32の表面に残留しているトナーがクリーニングブレード37により掻き取られる。よって、感光体ドラム32の表面から不要なトナーが除去される。
また、転写部40では、1次転写処理において中間転写ベルト41の表面に移行したトナーの一部が2次転写処理において媒体Mの表面に移行されずに、その中間転写ベルト41の表面に残留する場合がある。
そこで、転写部40では、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する際に、その中間転写ベルト41の表面に残留したトナーがクリーニングブレード47により掻き取られる。よって、中間転写ベルト41の表面から不要なトナーが除去される。
<1-6.作用および効果>
本実施形態の画像形成装置では、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれが捺染トナーを用いて捺染トナー像Z2を形成すると共に、現像部30Fが被染色トナーを用いて被染色トナー像Z1を形成することにより、媒体Mの上に、捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1がこの順に積層される。よって、以下で説明する理由により、媒体Mに形成された画像Gを布地などの他媒体Lに転写させた際に、その他媒体Lに高品質な画像Iを形成することができる。
図7は、比較例の画像形成装置により画像Gが形成された媒体Mの断面構成を表しており、図6に対応している。比較例の画像形成装置は、現像部30Fを備えていないため、画像Gが捺染画像G2だけにより形成されることを除いて、本実施形態の画像形成装置と同様の構成を有していると共に同様に動作する。
捺染トナーを用いて媒体Mに形成された画像Gの用途としては、後述するように、布地などの他媒体L(図11参照)に画像Gを転写させることにより、その画像Gに対応する画像Iを他媒体Lに形成することが考えられる。この画像の形成方式は、例えば、他媒体LがTシャツである場合には、いわゆるTシャツプリントである。
比較例の画像形成装置を用いて媒体Mに形成された画像Gでは、図7に示したように、捺染画像G2により画像Gが形成されているため、その画像Gが捺染トナーを含んでいる。これにより、他媒体Lに媒体Mが密着された状態において、その媒体Mが加熱されると、画像G(捺染トナー)中に含まれている捺染染料が他媒体Lに移行することにより、その他媒体Lが捺染染料により染色されるため、画像Gが他媒体Lに転写される。この場合には、画像Gが捺染トナーと共に結着剤などを含んでいると、その結着剤などが媒体Mの上に残留したまま、捺染染料だけが媒体Mから他媒体Lに移行する。よって、他媒体Lに画像Iが形成される。
しかしながら、他媒体Lの材質によっては、捺染トナー中に含まれている捺染染料が他媒体Lに移行しにくくなると共に、その捺染染料により他媒体Lが染色されにくくなるため、媒体Mから他媒体Lに対する画像Gの転写効率が低くなる。また、捺染染料が他媒体Lに移行する際に、その捺染染料の一部が媒体Mおよび他媒体Lのそれぞれを通過しやすくなるため、この観点においても画像Gの転写効率が低くなる。この場合には、他媒体Lに転写された画像Gの濃度が不足するため、色再現性が低下すると共に輪郭も不鮮明になる。よって、他媒体Lに高品質な画像Iを形成することが困難である。
これに対して、本実施形態の画像形成装置を用いて媒体Mに形成された画像Gでは、図6に示したように、捺染トナーを含む捺染画像G2の上に、被染色トナーを含む被染色画像G1が形成されている。これにより、他媒体Lに媒体Mが密着された状態において、その媒体Mが加熱されると、捺染画像G2(捺染トナー)中に含まれている捺染染料が被染色画像G1に移行することにより、その被染色画像G1(被染色トナー)が捺染染料により染色される。しかも、捺染染料により染色された被染色画像G1は、捺染画像G2から剥離されることにより、他媒体Lに転写される。すなわち、被染色画像G1は、捺染染料により染色された状態において、媒体Mから他媒体Lに移行し、その捺染染料の一部は、被染色画像G1の存在に起因して他媒体Lを通過しにくくなる。よって、他媒体Lに画像Iが形成される。
この場合には、捺染染料が被染色画像G1と一緒に他媒体Lに移行するため、その被染色画像G1が他媒体Lに移行しやすければ、その他媒体L自体が捺染染料により染色されやすいかどうかに依存せずに、捺染染料により他媒体Lが染色されやすくなると共に、他媒体Lの通過に起因する捺染染料のロス量が減少するため、媒体Mから他媒体Lに対する画像Gの転写効率が高くなる。これにより、他媒体Lに転写された画像Gの濃度が担保されるため、色再現性が向上すると共に輪郭も鮮明になる。よって、他媒体Lに高品質な画像Iを形成することができる。すなわち、高品質な画像Iを実現することが可能な高品質な画像Gを媒体Mに形成することができる。
特に、本実施形態では、媒体Mの種類は、捺染トナーを含んでいる捺染画像G2が定着可能な媒体であれば、特に限定されない。また、他媒体Lの種類は、高分子化合物を含んでいる被染色画像G1が定着可能な媒体であれば、特に限定されない。よって、媒体Mの種類(材質)に関する自由度を広げることができると共に、他媒体Lの種類に関する自由度を広げることができる。
この場合には、さらに、上記した熱エネルギーHに応じて被染色画像G1が捺染画像G2から剥離可能であるため、その捺染画像G2から被染色画像G1を剥離させるために離型処理などの特別な処理を別途行うことは不要である。よって、捺染画像G2から被染色画像G1を容易かつ安定に剥離させることができる。
また、被染色トナー(高分子化合物)がポリエステル系樹脂を含んでいれば、被染色画像G1(被染色トナー)が捺染染料により染色されやすくなると共に、捺染画像G2から剥離された被染色画像G1が他媒体Lに転写されやすくなる。よって、他媒体Lに形成される画像Iの色再現性などがより向上するため、より高い効果を得ることができる。
また、被染色トナーが着色剤を含んでおらずに無色(いわゆるクリアトナー)であれば、被染色画像G1(または被染色トナー像Z1)の色相が捺染画像G2(または捺染トナー像Z2)の色相にほとんど影響を与えない。よって、画像Gの色再現性が向上することにより、画像Iの色再現性も向上するため、より高い効果を得ることができる。
また、画像形成装置が中間転写ベルト41を備えており、被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2が中間転写ベルト41を経由してから媒体Mに転写されれば、被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2のそれぞれが安定に形成されると共に媒体Mの上に安定に積層される。よって、被染色画像G1が捺染画像G2から剥離しやすくなると共に、その捺染画像G2から剥離された被染色画像G1が他媒体Lに転写されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、画像形成装置が捺染トナーおよび被染色トナーを媒体Mに定着させる定着部50を備えていれば、被染色画像G1および捺染画像G2のそれぞれが安定に形成される。よって、被染色画像G1が捺染画像G2から剥離しやすくなると共に、その捺染画像G2から剥離された被染色画像G1が他媒体Lに転写されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
<2.画像形成装置(第2実施形態)>
次に、本発明の第2実施形態の画像形成装置に関して説明する。以下では、適宜、既に説明した第1実施形態の構成要素を引用する。
第1実施形態の画像形成装置は、中間転写ベルト41の上に、被染色トナー像Z1および捺染トナー像Z2をこの順に積層させたのち、媒体Mの上に、捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1をこの順に積層させることにより、その媒体Mの上に、捺染画像G2および被染色画像G1がこの順に積層されるように画像Gを形成した。
これに対して、本実施形態の画像形成装置は、後述するように、中間転写ベルト41の上に、被染色トナー像Z11、捺染トナー像Z12および被染色トナー層Z13をこの順に積層させたのち、媒体Mの上に、被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z11をこの順に積層させることにより、その媒体Mの上に、被染色画像G13、捺染画像G12および被染色画像G11がこの順に積層されるように画像Gを形成する(図8~図10参照)。
本実施形態の画像形成装置の構成および動作は、例えば、以下で説明することを除いて、第1実施形態の画像形成装置の構成および動作と同様である。
<2-1.構成>
図8は、被染色トナー像Z11、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z13が形成された中間転写ベルト41の断面構成を表している。図9は、被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z11が形成された媒体Mの断面構成を表している。図10は、画像G(被染色画像G13、捺染画像G12および被染色画像G11)が形成された媒体Mの断面構成を表している。
図8および図9のそれぞれでは、被染色トナー像Z11,Z13および捺染トナー像Z12を互いに区別するために、その捺染トナー像Z12に網掛けを施している。また、図10では、被染色画像G11,G13および捺染画像G12を互いに区別するために、その捺染画像G12に網掛けを施している。
なお、被染色トナー像Z11,Z13のそれぞれの構成は、被染色トナー像Z1の構成と同様であると共に、捺染トナー像Z12の構成は、捺染トナー像Z2の構成と同様である。また、被染色画像G11,G13のそれぞれの構成は、被染色画像G1の構成と同様であると共に、捺染画像G12の構成は、捺染画像G2の構成と同様である。
現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)を用いて捺染トナー像Z12を形成する。一方、現像部30Fは、被染色トナーを用いて被染色トナー像Z11,Z13を形成する。
転写部40は、中間転写ベルト41の上に、被染色トナー像Z11、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z13をこの順に転写させたのち、その中間転写ベルト41から媒体Mの上に、被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z11をこの順に転写させる。
定着部50は、媒体Mの上に被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z11がこの順に積層されたのち、その被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z11を媒体Mに定着させる。これにより、媒体Mの表面に画像G(被染色画像G13、捺染画像G12および被染色画像G11)が形成される。
制御部71は、現像部30Fにより形成される被染色トナー像Z11,Z13と、現像部30Y,30M,30C,30Kにより形成される捺染トナー像Z12との位置関係を制御する。
具体的には、制御部71は、例えば、中間転写ベルト41の上に、被染色トナー像Z11、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z13をこの順に積層させる。この場合には、中間転写ベルト41に近い側に被染色トナー像Z11が配置されると共に、その中間転写ベルト41から遠い側に被染色トナー像Z13が配置される。
制御部71が中間転写ベルト41の上に被染色トナー像Z11、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z13をこの順に積層させるのは、その制御部71は、最終的に媒体Mの上に、被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z11をこの順に積層させるためである。この場合には、中間転写ベルト41に近い側に被染色トナー像Z13が配置されると共に、その中間転写ベルト41から遠い側に被染色トナー像Z11が配置される。
なお、被染色トナーを用いて形成される被染色画像G13の形成量(mg/cm2 )は、特に限定されない。中でも、被染色画像G13の形成量は、0.25mg/cm2 以上であることが好ましく、0.25mg/cm2 ~0.68mg/cm2 であることがより好ましい。媒体Mから他媒体Lに対する画像Gの転写効率が十分に高くなるからである。この被染色画像G13の形成量は、単位面積当たり(cm2 )における被染色トナーの重量(mg)である。
<2-2.動作>
媒体Mに画像Gを形成する場合には、画像形成装置は、最初に、現像処理および1次転写処理を繰り返して行うことにより、図8に示したように、中間転写ベルト41の表面に、被染色トナー像Z11、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z13をこの順に形成する。これにより、中間転写ベルト41の上に、被染色トナー像Z11、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z13がこの順に積層される。
続いて、2次転写処理を行うことにより、図9に示したように、媒体Mの上に、被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z13をこの順に積層させる。
最後に、定着処理を行うことにより、図10に示したように、媒体Mの表面に画像Gを形成する。この画像Gは、被染色トナー像Z13が定着処理されることにより形成された被染色画像G13と、捺染トナー像Z12が定着処理されることにより形成された捺染画像G12と、被染色トナー像Z11が定着処理されることにより形成された被染色画像G11とを含んでいる。すなわち、媒体Mの上に、被染色画像G13、捺染画像G12および被染色画像G11がこの順に積層されている。
<2-3.作用および効果>
本実施形態の画像形成装置では、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれが捺染トナーを用いて捺染トナー像Z12を形成すると共に、現像部30Fが被染色トナーを用いて被染色トナー像Z11,Z13を形成することにより、媒体Mの上に、被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z11がこの順に積層される。
この場合には、図10に示したように、捺染トナーを含む捺染画像G12の上に、被染色トナーを含む被染色画像G11が形成されている。これにより、他媒体Lに密着された状態において媒体Mが加熱されると、捺染画像G12(捺染トナー)中に含まれている捺染染料により被染色画像G11(被染色トナー)が染色されると共に、その捺染染料により染色された被染色画像G11が他媒体Lに転写されることにより、その他媒体Lに画像Iが形成される。よって、第1実施形態と同様に、比較例の場合(図7参照)と比較して、媒体Mから他媒体Lに転写される画像Gの転写効率が高くなるため、その他媒体Lに転写された画像Gの濃度が担保される。
しかも、捺染トナー像G12の下に、被染色トナーを含む被染色トナー像G13が形成されている。これにより、被染色画像G11だけでなく被染色画像G13も捺染染料により染色される。また、他媒体Lに密着された状態において媒体Mが加熱されたのち、その媒体Mが他媒体Lから剥離される際に、捺染染料により染色された被染色トナー像G13の一部が捺染トナー像G12の一部と一緒に他媒体Mに転写されるため、その他媒体Lに移行する捺染染料の量が増加する。この場合には、被染色画像G11,G13の存在に起因して、捺染染料の一部が他媒体Lだけでなく媒体Mも通過しにくくなるため、その捺染染料のロス量が著しく減少する。よって、媒体Mから他媒体Lに対する画像Gの転写効率がより高くなるため、その他媒体Lに転写された画像Gの濃度もより増加する。
これらのことから、媒体Mから他媒体Lに対する画像Gの転写効率が著しく高くなると共に、その他媒体Lに転写された画像Gの濃度も著しく増加するため、その他媒体Lにより高品質な画像Iを形成することができる。すなわち、第1実施形態よりも高品質な画像Iを形成することができる。
本実施形態の画像形成装置に関する他の作用および効果は、第1実施形態の画像形成装置に関する他の作用および効果と同様である。
<3.画像の用途>
次に、上記した画像形成装置を用いて形成される画像Gの用途に関して説明する。
画像形成装置を用いて媒体Mに形成された画像Gは、上記したように、加熱されることにより媒体M以外の他媒体Lに移行することが可能である捺染染料の特性(昇華転写性)を利用して、その媒体Mから他媒体Lに転写可能である。よって、画像Gは、他媒体Lの種類に応じて様々な用途に用いられる。
他媒体Lの種類は、特に限定されないが、例えば、紙、布地、木材、金属、ガラス、陶器および樹脂などである。より具体的には、布地は、例えば、Tシャツなどの衣類であると共に、陶器は、例えば、マグカップなどの食器である。ただし、布地は、衣類に限られないと共に、陶器は、食器に限られない。樹脂は、例えば、上記したポリエステル系樹脂に限られず、ポリエステル系樹脂以外の樹脂でもよい。
<3-1.画像形成装置(第1実施形態)を用いて形成された画像の転写方法>
最初に、第1実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gの媒体Mから他媒体Lに対する転写方法に関して説明する。
ここでは、例えば、上記したように、媒体Mに形成された画像Gが他媒体L(布地)に転写される場合に関して説明する。ここで説明する画像Gの転写方法は、例えば、加熱源としてアイロンを用いたアイロンプリントである。他媒体Lは、例えば、Tシャツなどの衣類である。
図11および図12のそれぞれは、他媒体Lに対する画像Gの転写方法を説明するために、図6に対応する断面構成を示している。
他媒体Lに画像Gを転写させる場合には、まず、図11に示したように、転写対象である他媒体Lに対して、画像G(被染色画像G1および捺染画像G2)が形成された媒体Mを対向させる。この場合には、被染色画像G1が他媒体Lに対向するように媒体Mを配置する。
続いて、他媒体Lに媒体Mを密着させたのち、その媒体Mにアイロンを押し当てることにより、その媒体Mに熱エネルギーHを供給する。図11では、熱エネルギーHだけを示しており、アイロンの図示を省略している。なお、アイロンの温度、アイロンを媒体Mに押し当てる時間およびアイロンを介して媒体Mに供給される加重などの条件は、任意に設定可能である。
これにより、図12に示したように、熱エネルギーHを利用して捺染画像G2(捺染トナー)から被染色画像G1(被染色トナー)に捺染染料が移行すると共に、その捺染画像G2から被染色画像G1が剥離される。これにより、被染色画像G1が捺染染料により染色されると共に、その捺染染料により染色された被染色画像G1が他媒体Lに転写される。よって、画像Gに対応する画像Iが他媒体Lに形成される。
ここで、他媒体Lに形成される画像Iの品質に関して説明する。
図13は、本実施形態の画像形成装置(図6)を用いて形成された画像Gの他媒体Lに対する転写状態を説明するために、その他媒体Lなどの断面構成を表している。図14は、比較例の画像形成装置(図7)を用いて形成された画像Gの他媒体Lに対する転写状態を説明するために、図13に対応する断面構成を示している。なお、図13および図14のそれぞれでは、捺染画像G2中において捺染トナーTが捺染染料Dを含んでいる状態を示している。
比較例の画像形成装置を用いて形成された画像Gを媒体Lに転写させた場合には、図14に示したように、捺染画像G2(捺染トナーT)中に含まれている捺染染料Dが他媒体Lに直接的に移行する。
この場合には、上記したように、他媒体Lの材質によっては、その他媒体Lが捺染染料Dにより染色されにくいため、媒体Mから他媒体Lに対する画像Gの転写効率が低くなる。すなわち、捺染画像G2中に含まれていた捺染染料Dの全量に対して、その捺染画像G2から他媒体Lに移行する捺染染料Dの量が少なくなる。よって、他媒体Lに形成される画像Iの濃度などが不足するため、高品質な画像Iを形成することが困難である。
これに対して、本実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gを他媒体Lに転写させた場合には、図13に示したように、捺染画像G2(捺染トナーT)中に含まれている捺染染料Dにより被染色画像G1(被捺染トナー)が染色されると共に、その捺染染料Dにより染色された被染色画像G1が他媒体Lに転写されるため、その捺染染料Dが被染色画像G1を介して他媒体Lに間接的に移行する。
この場合には、上記したように、被染色トナーは捺染染料Dにより染色されやすい性質を有しているため、捺染画像G2から被染色画像G1に十分な量の捺染染料Dが移行する。しかも、他媒体Lの材質に依存せずに、捺染染料Dにより十分に染色された被染色画像G1が他媒体Lに安定に転写される。これにより、他媒体Lに対する捺染染料Dの移行量および染色性が担保されるため、媒体Mから他媒体Lに対する画像Gの転写効率が高くなる。すなわち、捺染画像G2中に含まれていた捺染染料Dの全量に対して、その捺染画像G2から他媒体Lに移行する捺染染料Dの量が十分に多くなる。よって、他媒体Lに形成される画像Iの濃度などが担保されるため、高品質な画像Iを形成することができる。
<3-2.画像形成装置(第2実施形態)を用いて形成された画像の転写方法>
次に、第2実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gの媒体Mから他媒体Lに対する転写方法に関して説明する。この画像Gの転写方法に関する詳細は、例えば、以下で説明することを除いて、第1実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gの転写方法と同様である。
図15および図16のそれぞれは、他媒体Lに対する画像Gの転写方法を説明するために、図10に対応する断面構成を示している。
他媒体Lに画像Gを転写させる場合には、まず、図15に示したように、他媒体Lに対して、画像G(被染色画像G11、捺染画像G12および被染色画像G13)が形成された媒体Mを対向させる。この場合には、被染色画像G11が他媒体Lに対向するように媒体Mを配置する。
続いて、他媒体Lに媒体Mを密着させたのち、アイロンを用いて媒体Mに熱エネルギーHを供給する。これにより、図16に示したように、熱エネルギーHを利用して捺染画像G12(捺染トナー)から被染色画像G11,G13(被染色トナー)に捺染染料が移行すると共に、その捺染画像G12から被染色画像G11が剥離される。これにより、被染色画像G11,G13が捺染染料により染色されると共に、その捺染染料により染色された被染色画像G11が他媒体Lに転写される。この場合には、捺染染料により染色された被染色画像G11と一緒に、捺染トナー像G12の一部と、捺染染料により染色された被染色画像G13の一部も他媒体Lに転写される。よって、画像Gに対応する画像Iが他媒体Lに形成される。
第2実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gを他媒体Lに転写させる場合(図16)には、捺染トナー像G12の一部と捺染染料により染色された被染色画像G13の一部も他媒体Lに転写される。よって、第1実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gを他媒体Lに転写させる場合(図12)と比較して、媒体Mから他媒体Lに移行する捺染染料の量が増加するため、画像Gの転写効率も増加する。
<4.変形例>
上記した画像形成装置の構成は、適宜、変更可能である。
[変形例1]
具体的には、例えば、4種類の捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)を用いたが、その捺染トナーの種類は任意に変更可能である。具体的には、3種類以下の捺染トナーを用いてもよいし、5種類以上の捺染トナーを用いてもよい。この場合においても、媒体Mの上に捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1がこの順に積層されることにより、同様の効果を得ることができる。
[変形例2]
また、例えば、中間転写ベルト媒体41を用いて媒体Mに画像を形成する中間転写方式の画像形成装置に関して説明したが、図1に対応する図17に示したように、中間転写ベルト41を用いないで媒体Mに画像を形成する直接転写方式の画像形成装置でもよい。
この直接転写方式の画像形成装置は、例えば、図17に示したように、以下で説明することを除いて、中間転写方式の画像形成装置(図1~図3)と同様の構成を有している。第1に、画像形成装置は、転写部40の代わりに、1次転写ローラ45(45F,45Y,45M,45C,45K)に対応する転写ローラ48(48F,48Y,48M,48C,48K)を備えている。第2に、現像部30(30F,30Y,30M,30C,30K)および転写ローラ48(48F,48Y,48M,48C,48K)は、搬送経路R1に沿うように配列されている。第3に、現像部30F,30Y,30M,30C,30Kは、例えば、搬送経路R1における媒体Mの搬送方向において、下流側から上流側に向かってこの順に配置されている。
直接転写方式の画像形成装置の動作は、例えば、1次転写処理および2次転写処理の代わりに転写処理を行うことを除いて、中間転写方式の画像形成装置の動作と同様である。この転写処理の内容は、1次転写処理の内容と同様である。すなわち、転写処理では、現像処理において静電潜像に付着された被染色トナーおよび捺染トナーのそれぞれが媒体Mの表面に転写される。
現像部30(30F,30Y,30M,30C,30K)、転写ローラ48(48F,48Y,48M,48C,48K)および制御部71は、本発明の一実施形態の「画像形成部」である。
この直接転写方式の画像形成装置においても、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれが捺染トナーを用いて捺染トナー像Z2を形成すると共に、現像部30Fが被染色トナーを用いて被染色トナー像Z1を形成することにより、媒体Mの上に、捺染トナー像Z2および被染色トナー像Z1がこの順に積層される。または、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれが捺染トナーを用いて捺染トナー像Z12を形成すると共に、現像部30Fが被染色トナーを用いて被染色トナー像Z11,Z13を形成することにより、媒体Mの上に、被染色トナー像Z13、捺染トナー像Z12および被染色トナー像Z11がこの順に積層される。よって、中間転写方式の画像形成装置に関して説明した場合と同様の理由により、媒体Mに形成された画像Gを布地などの他媒体Lに転写させた際に、その他媒体Lに高品質な画像Iを形成することができる。
直接転写方式の画像形成装置に関する他の作用および効果は、転写部40(中間転写ベルト41)に起因する作用および効果を除いて、中間転写方式の画像形成装置に関する他の作用および効果と同様である。
本発明の実施例に関して、詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.画像形成装置(第1実施形態)を用いて形成された画像の性能評価
2.画像形成装置(第2実施形態)を用いて形成された画像の性能評価
<1.画像形成装置(第1実施形態)を用いて形成された画像の性能評価>
まず、第1実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像の性能を評価した。
(実験例1~16)
以下の手順により、図1~図3に示した画像形成装置を用いて媒体Mに画像Gを形成したのち、その画像Gの性能を評価した。
[画像形成装置の準備]
最初に、画像形成装置と共に、トナーおよび媒体Mを準備した。
画像形成装置としては、株式会社沖データ製のカラープリンタ MICROLINE VINCI C941dnを用いた。媒体Mとしては、株式会社沖データ製のA4プリンタ用紙(エクセレントホワイト,サイズ=297mm×210mm)を用いた。
(トナーの種類および組成)
トナーとしては、5種類のトナーを用いた。具体的には、無色(透明)の被染色トナーと、4種類の捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)とを用いた。
被染色トナーの組成は、以下の通りである。
高分子化合物:非晶質ポリエステル 100質量部
結晶性ポリエステル 5質量部
離型剤:パラフィンワックス(日本精・株式会社製のSP-0145,融点=62℃) 4質量部
帯電制御剤:ボントロンP-51(オリエント化学工業株式会社製) 1質量部
外添剤:複合酸化物粒子(日本アエロジル株式会社製のSTX801,平均一次粒子径=18nm) トナー母粒子100質量部に対して1質量部
コロイダルシリカ(信越化学工業株式会社製のゾルゲルシリカ X-24-9163A,平均一次粒子径=100nm) トナー母粒子100質量部に対して1質量部
シリカ粉末(日本アエロジル株式会社製のVPRY40S,平均一次粒子径=80nm) トナー母粒子100質量部に対して1質量部
シリカ粉末(日本アエロジル株式会社製のRY50,平均一次粒子径=40nm) トナー母粒子100質量部に対して1.5質量部
捺染イエロートナーの組成は、以下の通りである。
捺染イエロー染料:C.L Reactive Yellow2 5質量部
結着剤:非晶質ポリエステル 100質量部
帯電制御剤:ボントロンP-51(オリエント化学工業株式会社製) 1質量部
外添剤:疎水性シリカ微粉末(日本アエロジル株式会社製のR972,平均一次粒子径=16nm) トナー母粒子100質量部に対して3質量部
捺染マゼンタトナーの組成は、以下の通りである。
捺染マゼンタ染料:C.L Reactive Red3 5質量部
結着剤:非晶質ポリエステル 100質量部
帯電制御剤:ボントロンP-51(オリエント化学工業株式会社製) 1質量部
外添剤:疎水性シリカ微粉末(日本アエロジル株式会社製のR972,平均一次粒子径=16nm) トナー母粒子100質量部に対して3質量部
捺染シアントナーの組成は、以下の通りである。
捺染シアン染料:C.L Disperde Blue60 5質量部
結着剤:非晶質ポリエステル 100質量部
帯電制御剤:ボントロンP-51(オリエント化学工業株式会社製) 1質量部
外添剤:疎水性シリカ微粉末(日本アエロジル株式会社製のR972,平均一次粒子径=16nm) トナー母粒子100質量部に対して3質量部
捺染ブラックトナーの組成は、以下の通りである。
捺染ブラック染料:C.L Reactive Black5 5質量部
結着剤:非晶質ポリエステル 100質量部
帯電制御剤:ボントロンP-51(オリエント化学工業株式会社製) 1質量部
外添剤:疎水性シリカ微粉末(日本アエロジル株式会社製のR972,平均一次粒子径=16nm) トナー母粒子100質量部に対して3質量部
(トナーの製造方法)
被染色トナーを製造するためには、溶解懸濁法を用いた。
具体的には、最初に、連続相を調製した。この場合には、まず、水性溶媒(純水)329676重量部に懸濁安定剤(工業用リン酸三ナトリウム十二水和物)11024重量部を混合したのち、その混合物(温度=60℃)を撹拌した。これにより、懸濁安定剤が溶解されたため、第1水溶液が得られた。こののち、第1水溶液にpH調整用の希硝酸を添加した。続いて、水性溶媒(純水)43234重量部に懸濁安定剤(工業用塩化カルシウム無水物)5319重量部を混合したのち、その混合物を撹拌した。これにより、懸濁安定剤が溶解されたため、第2水溶液が得られた。続いて、第1水溶液と第2水溶液とを混合したのち、撹拌装置(プライミクス株式会社製のラインミル)を用いて混合物(温度=60℃)を撹拌(回転数=3566回転/分,撹拌時間=50分間)した。これにより、連続相が得られた。
次に、分散相を調製した。この場合には、まず、有機溶剤(酢酸エチル,温度=50℃)を準備した。続いて、有機溶剤76565重量部に、離型剤1086重量部と、蛍光増白剤28重量物とをこの順に混合したのち、その混合物を撹拌した。続いて、混合物に結着剤13361重量部を混合したのち、その混合物を固形物が消失するまで撹拌した。これにより、分散相が得られた。
次に、連続相および分散相を用いて造粒することにより、トナー母粒子を形成した。この場合には、連続相と分散相とを混合したのち、上記した撹拌装置を用いて混合物(温度=55℃)を撹拌(回転数=2000回転/分,撹拌時間=50分間)した。これにより、混合物が懸濁すると共に造粒されたため、その造粒物を含むスラリー溶液が得られた。続いて、スラリー溶液を減圧蒸留することにより、そのスラリー溶液中に含まれている有機溶剤(酢酸エチル)を揮発除去した。続いて、スラリー溶液にpH調整剤(硝酸)を添加することにより、pHを1.5となるように調整したのち、そのスラリー溶液を濾過することにより、懸濁安定剤を溶解除去した。続いて、スラリー溶液中に含まれている造粒物を脱水したのち、その造粒物を水性溶媒(純水)中に再分散させた。続いて、水性溶媒(純水)を用いて造粒物を洗浄したのち、その造粒物を濾過した。続いて、造粒物を脱水乾燥させたのち、その造粒物を分級した。これにより、トナー母粒子が得られた。
最後に、トナー母粒子に外添処理を施すことにより、被染色トナーを製造した。この場合には、トナー母粒子に外添剤を混合したのち、撹拌装置(日本コークス工業株式会社製のヘンシェルミキサ)を用いて混合物を撹拌(回転数=5400回転/分,撹拌時間=10分間)した。これにより、被染色トナーが得られた。
捺染トナーを製造するためには、粉砕法を用いた。具体的には、最初に、捺染染料(捺染イエロー染料、捺染マゼンタ染料、捺染シアン染料または捺染ブラック染料)と、結着剤と、帯電制御剤とを混合することにより、混合物を得た。続いて、ヘンシェルミキサを用いて混合物を撹拌したのち、二軸押出機を用いて混合物を溶融混練することにより、混練物を得た。こののち、混練物を冷却した。続いて、スクリーン(直径=2mm)を備えたカッターミルを用いて混練物を粉砕したのち、さらに衝突版式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製のディスパージョンセパレータ)を用いて混練物を粉砕することにより、粉砕物を得た。続いて、風力分級機を用いて粉砕物を分級することにより、トナー母粒子を得た。最後に、トナー母粒子に外添剤を混合したのち、ヘンシェルミキサを用いて混合物を撹拌(撹拌時間=3分間)した。これにより、捺染トナーが得られた。
(トナーの物性)
示差走査熱量計(DSC)を用いて一連のトナー(被染色トナー、捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)の熱的物性(吸熱特性)を調べたところ、図19~図28および表1に示した結果が得られた。この場合には、示差走査熱量計として株式会社日立ハイテクサイエンス製のDSC6220を用いた。
図19は、被染色トナーに関する1回目昇温時の吸熱曲線であると共に、図20は、被染色トナーに関する2回目昇温時の吸熱曲線である。図21は、捺染イエロートナーに関する1回目昇温時の吸熱曲線であると共に、図22は、捺染イエロートナーに関する2回目昇温時の吸熱曲線である。図23は、捺染マゼンタトナーに関する1回目昇温時の吸熱曲線であると共に、図24は、捺染マゼンタトナーに関する2回目昇温時の吸熱曲線である。図25は、捺染シアントナーに関する1回目昇温時の吸熱曲線であると共に、図26は、捺染シアントナーに関する2回目昇温時の吸熱曲線である。図27は、捺染ブラックトナーに関する1回目昇温時の吸熱曲線であると共に、図28は、捺染ブラックトナーに関する2回目昇温時の吸熱曲線である。図19~図28のそれぞれにおいて、横軸は温度(℃)を示していると共に、縦軸はDSC(吸熱量(mW))を示している。
吸熱曲線の測定条件(示差走査熱量計の温度プログラムパターン)は、以下の通りである。1回目昇温時には、20℃で10分間に渡って各トナーを放置し、10℃/分の昇温速度で200℃まで各トナーを加熱し、200℃で5分間に渡って各トナーを放置したのち、90℃/分の降温速度で0℃まで各トナーを冷却し、0℃で5分間に渡って各トナーを放置した。2回目の昇温時には、60℃/分の昇温速度で20℃まで各トナーを加熱し、20℃で10分間に渡って各トナーを放置したのち、10℃/分の昇温速度で200℃まで各トナーを加熱した。
表1では、各トナーの熱的物性として、1回目昇温時における各トナーのガラス転移温度Tg 1st(℃)、2回目昇温時における各トナーのガラス転移温度Tg 2nd(℃)、離型剤(ワックス)の吸熱量(mJ/mg)および離型剤のピークトップ温度(℃)を示している。このピークトップ温度は、2回目昇温時に検出されたピークのトップ温度である。
図19~図28および表1に示したように、被染色トナーと捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)とでは、離型剤の有無に応じて熱的物性に大きな差違が生じた。
具体的には、離型剤を含んでいる被染色トナーでは、大きな吸熱量が得られた。これに対して、離型剤を含んでいない捺染トナーでは、上記した離型剤を含んでいる被染色トナーと比較して、吸熱量が著しく減少した。
[画像の形成]
次に、上記した画像形成装置を用いて、その媒体Mに画像Gを形成した。
環境条件は、温度=25℃および湿度=55%とした。画像Gの形成条件は、画像形成速度(感光体ドラムの最外周の線速度)=58.7mm/秒、媒体Mの進行方向=長手方向、帯電ローラ33の印加電圧=+970V、現像ローラ34の印加電圧=-175V、供給ローラ35の印加電圧=-285Vとした。
画像Gを形成する場合には、媒体Mの上に捺染画像G2および被染色画像G1をこの順に形成した。この場合には、被染色トナーを用いて被染色画像G1を形成すると共に、4種類の捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)のそれぞれを用いて各色の捺染画像G2を形成した。また、捺染画像G2および被染色画像G1のそれぞれの画像パターンをベタ画像とすると共に、印字率=100%とした。なお、後述する濃度測定機器(X-rite社製の分光濃度計)を用いて測定される画像Gの濃度が1.45~1.55となるように調整した。
なお、比較のために、被染色画像G1を形成せずに捺染画像G2だけを形成したことを除いて同様の手順により、媒体Mに画像Gを形成した。
捺染画像G2の色(Y,M,C,K)と、その捺染画像G2の形成量(mg/cm2 )と、被染色画像G1の有無と、その被染色画像G1の形成量(mg/cm2 )とは、表2に示した通りである。「Y」はイエロー、「M」はマゼンタ、「C」はシアン、「K」はブラックを表している。捺染画像G2の形成量は、単位面積当たりにおける捺染トナーの重量であると共に、被染色画像G1の形成量は、単位面積当たりにおける被染色トナーの重量である。この場合には、現像ローラ34の印加電圧を変更することにより、捺染画像G2および被染色画像G1のそれぞれの形成量を変化させた。
[画像の性能評価]
次に、上記した手順により、いわゆるアイロンプリントを行うことにより、媒体Mに形成された画像Gの性能を評価した。この場合には、以下の手順により、画像Gの性能を評価するための指標として転写効率(%)を求めたところ、表2に示した結果が得られた。
具体的には、最初に、媒体Mに画像Gを形成したのち、その画像Gの濃度を測定した。
図18は、画像Gの濃度の測定位置を説明するために、その画像Gが形成された媒体Mの平面構成を表している。ここでは、図18に示したように、媒体Mの表面のうちの中央領域に被染色画像G1および捺染画像G2のそれぞれを形成した。なお、図18では、画像G(被染色画像G1および捺染画像G2)の形成範囲に網掛けを施している。
図18において、仮想線S1は、媒体Mの表面を短手方向において二等分する線であると共に、仮想線S2は、媒体Mの表面を長手方向において二等分する線である。また、位置P1~P9は、濃度の測定位置を表している。位置P1,P3,P7,P9のそれぞれは、画像Gの四隅の位置である。位置P2,P8のそれぞれは、画像Gの長手方向における2つの端縁と仮想線S1とが互いに交わる位置である。位置P4,P6のそれぞれは、画像Gの短手方向における2つの端縁と仮想線S2とが互いに交わる位置である。位置P5は、仮想線S1,S2が互いに交わる位置である。
画像Gの濃度を測定する場合には、位置P1~P9において9つの濃度を測定したのち、その9つの濃度の平均値を算出した。なお、濃度測定機器としては、X-rite社製の分光濃度計 X-Rite528を用いた。
次に、画像Gが形成された媒体Mを用いて、アイロンプリント(Tシャツプリント)を行った。この場合には、図11および図12を参照しながら説明したように、他媒体Lに媒体Mを密着させたのち、その媒体Mに加熱源を押し当てた。
他媒体Lとしては、Heins社製のTシャツプリント用布地(Comfortsoft(綿100%))を用いた。ここで、綿100%の布地を用いているのは、被染色画像G1の有無に応じた画像Gの性能の優劣を顕著にするためである。加熱源としては、MagicTouch社製の熱プレス機 Model HTP234PS1を用いた。加熱源の温度は200℃、他媒体Lに対する加熱源の押し当て時間は60秒間とした。
これにより、捺染画像G2(捺染トナー)中に含まれていた捺染染料により他媒体Lが染色されたため、図12に示したように、画像Gに対応する画像Iが他媒体Lに形成された。
次に、上記した濃度測定機器を再び用いて、画像Iの濃度を測定した。この場合には、図18に示した位置P1~P9に対応する位置において9つの濃度を測定したのち、その9つの濃度の平均値を算出した。
最後に、上記した濃度の測定結果に基づいて、転写効率(%)を算出した。この転写効率は、転写効率=(画像Iの濃度/画像Gの濃度)×100により算出される。
[考察]
表2に示したように、転写効率は、被染色画像G1の有無に応じて大きく変動した。具体的には、捺染画像G2と共に被染色画像G1を形成した場合(実験例2~4,6~8,10~12,14~16)には、その捺染画像G2の色に依存せずに、被染色画像G1を形成しなかった場合(実験例1,5,9,13)と比較して、転写効率が増加した。
特に、被染色画像G1を形成した場合には、その被染色画像G1の形成量が増加するにしたがって、転写効率が次第に増加した。
これらの結果から、媒体Mの上に、捺染染料を含む捺染トナーを用いて形成された捺染トナー像Z2と、その捺染染料により染色される高分子化合物を含む被染色トナーを用いて形成された被染色トナー像Z1とをこの順に積層させることにより、媒体Mに形成された画像Gを布地などの他媒体Lに転写させた際に、その他媒体Lに対する画像Gの転写効率が改善された。よって、他媒体Lに高品質な画像Iが形成された。
<2.画像形成装置(第2実施形態)を用いて形成された画像の性能評価>
次に、第2実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像の性能を評価した。
(実験例17~76)
表3~表5に示したように、画像形成装置を用いて媒体Mに画像G(被染色画像G13、捺染画像G12および被染色画像G11)を形成したのち、その画像Gの性能を評価した。画像の形成手順および画像の評価手順に関する詳細は、以下で説明することを除いて、第2実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像の性能を評価した場合と同様である。
[画像の形成および性能評価]
画像Gを形成する場合には、媒体Mの上に、被染色画像G13、捺染画像G12および被染色画像G11をこの順に形成した。この場合には、被染色トナーを用いて被染色画像G11,G12を形成すると共に、4種類の捺染トナー(捺染イエロートナー、捺染マゼンタトナー、捺染シアントナーおよび捺染ブラックトナー)のそれぞれを用いて各色の捺染画像G12を形成した。また、捺染画像G12および被染色画像G11,G13のそれぞれの画像パターンをベタ画像とすると共に、印字率=100%とした。
なお、比較のために、あらためて第1実施形態の画像形成装置を用いて画像G(捺染画像G12および被染色画像G1)を形成した。また、比較のために、被染色画像G11,G13を形成せずに捺染画像G12だけを形成したことを除いて同様の手順により、媒体Mに画像Gを形成した。
捺染画像G12の色(Y,M,C,K)と、その捺染画像G12の形成量(mg/cm2 )と、被染色画像G11,G13のそれぞれの有無と、その被染色画像G11,G13のそれぞれの形成量(mg/cm2 )とは、表3~表5に示した通りである。捺染画像G12の形成量は、単位面積当たりにおける捺染トナーの重量であると共に、被染色画像G11,G13のそれぞれの形成量は、単位面積当たりにおける被染色トナーの重量である。この場合には、現像ローラ34の印加電圧を変更することにより、捺染画像G12および被染色画像G11,G13のそれぞれの形成量を変化させた。
媒体Mに形成された画像Gの性能を評価するために、アイロンプリントを行うことにより、他媒体Lに画像Iを形成したのち、転写効率(%)を求めたところ、表3~表5に示した結果が得られた。この場合には、他媒体Lに対する加熱源の押し当て時間を120秒間とした。なお、表3~表5では、「被染色画像(下層)」が被染色画像G13を表していると共に、「被染色画像(上層)」が被染色画像G11を表している。
[考察]
表3~表5に示したように、転写効率は、被染色画像G11,G13の有無に応じて大きく変動した。
具体的には、捺染画像G2と共に被染色画像G1を形成した場合(実験例18,23,28,33など)には、その捺染画像G2の色に依存せずに、被染色画像G1を形成しなかった場合(実験例17,22,27,32など)と比較して、転写効率が増加した。
また、捺染画像G12と共に被染色画像G11,G13を形成した場合(実験例19~21,24~26,29~31,34~36など)には、その捺染画像G12の色に依存せずに、被染色画像G13を形成しなかった場合(実験例18,23,28,33)と比較して、転写効率が増加した。
特に、被染色画像G11,G13を形成した場合には、その被染色画像G13の形成量が増加するにしたがって転写効率が次第に増加した。この場合には、被染色画像G13の形成量が0.25mg/cm2 ~0.68mg/cm2 であると、十分に高い転写効率が得られた。
これらの結果から、媒体Mの上に、捺染染料により染色される高分子化合物を含む被染色トナーを用いて形成された被染色トナー像Z11と、その捺染染料を含む捺染トナーを用いて形成された捺染トナー像Z12と、その被染色トナーを用いて形成された被染色トナー像Z13とをこの順に積層させることにより、媒体Mに形成された画像Gを布地などの他媒体Lに転写させた際に、その他媒体Lに対する画像Gの転写効率がより改善された。よって、他媒体Lにより高品質な画像Iが形成された。
以上、いくつかの実施形態を挙げながら本発明を説明したが、本発明は上記した各実施形態において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
具体的には、例えば、本発明の各実施形態の画像形成装置は、プリンタに限られず、複写機、ファクシミリおよび複合機などでもよい。