本発明のトナーは、結着樹脂、離型剤、極性樹脂及びカーボンブラックを少なくとも含有するトナー粒子と無機微粉体とを有するトナーであって、
前記トナーの温度30乃至140℃の範囲における周波数10+5Hzで測定した誘電正接tanδの最大値をαMax、温度30乃至140℃の範囲における周波数10+6Hzで測定した誘電正接tanδの最大値をβMaxとしたとき、
0.027≦αMax≦0.040 (1)
|100×(βMax−αMax)/αMax|≦12 (2)
を満足することを特徴とする。
また、上記(1)式においてαMaxの値は、0.027≦αMax≦0.035の関係を満たすことが好ましい。更に、上記(2)式において|100×(βMax−αMax)/αMax|≦6の関係を満たすことが好ましく、より好ましくは|100×(βMax−αMax)/αMax|≦4である。
本発明のトナーは従来のトナーと比較して、カーボンブラックの分散状態が良好であるため、αMAXが静電オフセットに対して最適な値であり、且つ|100×(βMax−αMax)/αMax|が小さいことが特徴である。
本発明のトナーはαMAXが最適な値であり、また、|100×(βMax−αMax)/αMax|、即ちαMAXとβMaxの変化率が小さいために高速域でのプリントアウトを行っても安定して静電オフセットを良好なものとすることができる。
本発明において上記(1)、(2)式を満足するための手法としては、カーボンブラックの分散工程の強度をコントロールすることで達成できる。具体的には、分散工程や調整工程等にて超音波発振装置等の強分散を行い、分散強度や分散時間を調整する方法が挙げられる。また更にカーボンブラックの分散性を向上させ、耐静電オフセットを良好にするためにはカーボンブラックの分散剤を添加する方法が挙げられる。
また本発明のトナーを水系媒体中で製造する場合、後述する極性樹脂を添加することによって、極性樹脂がトナー粒子表層に存在し、耐久性を向上させると共にトナー粒子表面にカーボンブラックが露出するのを防ぐことができる。
トナーが上記(1)及び(2)式を満足することにより、高速でプリントアウトを実施しても耐静電オフセットが良好であり、多数枚のプリントアウトを実施しても現像性と転写性を良好なものとすることができる。
本発明において、αMax及びβMaxの値は定着工程でのトナーの誘電正接の値を意味するものである。昇温して誘電正接を測定すると、トナーの誘電正接の最大値αMax及びβMaxは、温度100乃至140℃に現れる。このうちαMaxの値は熱が加わる定着工程での耐静電オフセットレベルの指標となり、適度な値を有することで耐静電オフセットが良好なものとなる。
本発明のトナーにおいて、αMaxの値が0.027未満の場合、定着工程におけるトナーの帯電量が高すぎるために定着ローラへの帯電的なトナーの移行が発生しやすい。またαMaxの値が0.040を超えると定着工程においてトナーの帯電量が低すぎるため転写材からトナーが離れやすくなり、αMaxの値が0.027未満と同様に定着ローラにトナーが移行しやすくなる。いずれの場合も静電オフセットが悪化する傾向がある。
また本発明のトナーにおいて、耐静電オフセットを良好にするためには更に|100×(βMax−αMax)/αMax|の値を12以下とすることが必要である。|100×(βMax−αMax)/αMax|の値は高速域でのプリントアウトにおいても安定して静電オフセットが発生しないための指標である。この値が小さいほど安定して静電オフセットが発生しない。
更に本発明のトナーにおいては、上記(3)及び(4)式を満足することにより、耐静電オフセットを一層良好なものとすることができる。
本発明において、αMin及びβMin値は現像工程及び転写工程でのトナーの誘電正接の値を意味するものである。
本発明のトナーにおいて、100×(αMax−αMin)/αMin、及び100×(βMax−βMin)/βMinの値が500未満の場合、現像工程で帯電したトナーが、定着工程においても高い帯電量を保持するため定着ローラへトナーが移行しやすく、2000を超えると現像工程で帯電したトナーの帯電量が低下して転写材からトナーが離れやすく、いずれの場合も静電オフセットしやすい。
本発明のトナーにおいて、誘電正接の測定は4284AプレシジョンLCRメーター(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、周波数10+5Hz及び10+6Hzにおける複素誘電率の測定値から誘電正接(tanδ=ε”/ε’)を算出した。
トナーを0.5g秤量し、21560kPa(220kg/cm2)の荷重を1分間かけて、直径25mm,厚さ1mm以下(好ましくは0.5乃至0.9mm)の円盤状の測定試料に成型する。この測定試料を直径25mmの誘電率測定治具(電極)を装着したARES(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)に装着し、0.49N(50g)の荷重をかけた状態で周波数を一定として、温度30から毎分5℃の昇温速度で30秒毎に測定値を取り込みながら、温度140℃まで加熱する。これにより得られたトナーの温度−誘電正接曲線は、温度100乃至140℃の範囲にピークを持ち、図2のような曲線となる。この曲線から周波数10+5Hz及び10+6Hzで測定したtanδの最小値と最小値をそれぞれ読み取り、αMax、αMin、βMax、及びβMinの値を得た。
本発明のトナーは、微小圧縮試験において、測定温度25℃で、前記トナー1粒子に負荷速度9.8×10-5N/secで荷重を加え、2.94×10-4Nの最大荷重に達したときに得られる変位量(μm)を変位量X2、前記最大荷重に達した後、前記最大荷重で0.1秒間放置して得られる変位量(μm)を最大変位量X3、前記0.1秒間放置後、除荷速度9.8×10-5N/secで荷重を減らし、荷重が0 Nとなったときに得られる変位量(μm)を変位量X4、前記最大変位量X3と変位量X4との差を弾性変位量(X3−X4)とし、前記弾性変位量(X3−X4)の前記最大変位量X3に対する百分率[{(X3−X4)/X3}×100:復元率]をZ(25)(%)としたときに、Z(25)は、40≦Z(25)≦80、の関係を満足することを特徴とする。
上記Z(25)は、40≦Z(25)≦70の関係を満たすことが好ましい。
上記トナーに対する微小圧縮試験において、上記Z(25)の値が上記関係を満足することで、多数枚のプリントアウトを実施しても良好な現像性や転写性を維持することができ、耐久性が向上する。
上記Z(25)の値が上記関係を満足することで、トナー粒子は最適な硬さのシェル層を有する構造をとるため耐久性が向上すると共に、コア層を十分に柔らかく設計することができ、低温定着性や画像光沢性等の向上も実現することができる。
本発明におけるトナーに対する微小圧縮試験は、トナー1粒子に対して最大荷重2.94×10-4Nという従来の測定法と比較して小さな荷重をかけて評価を行うことでトナーの表面近傍の復元率を測定するものである。
本発明のトナーにおいて、Z(25)の値は測定温度25℃において最大荷重をかけた後に除荷した場合に、どの程度トナー表層がもとの状態に戻ろうとするかを表す指標である。Z(25)の値が40未満の場合、現像機装置内で受けるストレスによってトナーが変形しやすくなり、現像性及び転写性が低下しやすい。一方、Z(25)の値が80を超えると、トナー粒子表面が変形しにくくなるため、トナー粒子表面に外添剤が付着しにくく、多数枚のプリントアウトを行うとトナー表面の外添剤が遊離しやすくなり、現像性や転写性が低下する傾向がある。
更に耐久性と定着性を両立させるうえで、本発明のトナーにおいてはX3が0.20μm以上0.60μm以下であることが好ましい。
上記Z(25)の値は、例えば、下記手法を用いることで上記関係を満足させることが可能であるがこれらに限定されない。
(1)トナー粒子を水系媒体中で製造する場合は、トナー粒子に後述する極性樹脂を含有させ、極性樹脂によるシェル層を形成させる。更に、該極性樹脂は、コア層を形成する結着樹脂との相溶性を考慮して選定する。
(2)トナー粒子を水系媒体中でコア粒子を製造した後、極性樹脂を構成するモノマーを添加してシード重合することによりシェル層を形成する。
(3)コア粒子よりも体積平均粒子径が小さい極性樹脂微粒子をコア粒子に機械的に付着させる。或いは水系媒体中で体積平均粒子径が小さい極性樹脂微粒子をコア粒子に凝集により付着させ加熱により固着させる。
次に、図1を参照しながら微小圧縮試験の測定方法について説明する。
図1は微小圧縮試験で本発明のトナーを測定した際のプロファイル(荷重−変位曲線)であり、横軸はトナーが変形した変位量、縦軸はトナーにかけている荷重量を表している。
本発明における微小圧縮試験は、(株)エリオニクス製 超微小硬度計ENT1100を用いた。使用圧子は20μm×20μm四方の平圧子を用いて測定した。図中の1−1は試験を始める前の最初の状態(原点)であり、最大荷重2.94×10-4Nに対し、9.8×10-5N/secの負荷速度で荷重を掛ける。最大荷重に到達直後は1−2の状態であり、このときの変位量をX2(μm)とする。1−2の状態で0.1秒間、その荷重で放置する。放置終了直後の状態が1−3を示しており、このときの最大変位量をX3(μm)とし、さらに最大荷重を経て9.8×10-5N/secの除荷速度で荷重を減らし、荷重が0 Nになったときが1−4の状態である。このときの変位量をX4(μm)とする。
弾性変位量(X3−X4)の最大変位量X3に対する百分率(以下、復元率(%)とも称する)を示すZ(25)は{(X3−X4)/X3}×100として求めた。
実際の測定は、セラミックセル上にトナーを塗布し、トナーがセラミックセル上に分散するようにエアーを吹き付けた後に、そのセラミックセルを超微小硬度計にセットして測定する。
また、測定の際にはセラミックセルを温度制御が可能な状態にし、このセラミックセルの温度を測定温度とした。すなわちZ(25)はセルの温度を25℃として測定した。なお、セラミックセルの温度調整は、セラミックセルを超微小硬度計に設置し、セラミックセルが測定温度に到達してから10分以上放置した後、測定を開始した。
測定は超微小硬度計に付帯する顕微鏡を覗きながら測定用画面(横幅:160μm 縦幅:120μm)にトナーが1粒子で存在しているもの選択した。変位量の誤差を極力無くすため、トナーの個数平均粒径D1の±0.2μmのものを選択して測定した。なお、測定用画面から任意のトナーを選択するが、測定画面上でのトナーの粒子径の測定手段は超微小硬度計ENT1100付帯のソフトを用いてトナー粒子の長径と短径を測定し、それらから求められるアスペクト比[(長径+短径)/2]の値がD1の±0.2μmとなるトナーを選択して測定した。
測定データに関しては任意の粒子100個を選んで測定し、測定結果として得られたZ(25)について、最大値、最小値からそれぞれ10個を除いた残り80個をデータとして使用し、その80個の相加平均値としてZ(25)を求めた。
本発明のトナーは着色剤としてカーボンブラックを用いることが必須である。
カーボンブラックは、平均一次粒子径が10nm以上100nm以下とすることでトナー粒子中のカーボンブラックの分散性が向上し、転写性が向上し、更には静電オフセットも一層良好なレベルとなる。平均一次粒子径が10nm未満の場合、トナー粒子中のカーボンブラックの分散性が低下し、100nmを超えると、十分な着色力が得られない。
さらに、本発明のカーボンブラックのpHは5以上10以下であることが好ましい。カーボンブラックのpHを上記範囲内とすることで、カーボンブラックの分散性が向上する。カーボンブラックのpHが5未満の場合、またpHが10を超える場合、いずれの場合もトナーの帯電特性が悪化し、転写性や耐静電オフセットが悪化する。
また、本発明のカーボンブラックのDBP吸油量が35ml/100g以上150ml/100g以下であることが好ましい。DBP吸油量が35ml/100g未満の場合、トナー粒子表面の抵抗が上がるため、チャージアップに伴う静電オフセットが悪化する。150ml/100gを超えた場合、トナー粒子表面の抵抗が下がるため外添剤が遊離しやすく耐久性が低下する。
次に、本発明に係る各種測定方法について説明する。
(1)カーボンブラックの平均一次粒径の測定
透過型顕微鏡で、30,000倍の倍率で断面の拡大写真をとり、100個粒子の平均値を算出する。
(2)カーボンブラックのDBP吸油量の測定
DIN 53601に準じて測定する。
(3)カーボンブラックのpHの測定
DIN ISO 787/9に準じて測定する。
本発明のトナーはトナー粒子中のカーボンブラックの分散性を向上させる目的でスルホン酸基、スルホン酸塩基、又はスルホン酸エステル基を含有する重合体又は共重合体(以下「重合体A」と称す。)を含有させることが好ましい形態である。
本発明に係る重合体Aを製造するための単量体としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸等或いは、下記構造を有するマレイン酸アミド誘導体、マレイミド誘導体、スチレン誘導体がある。
重合体Aは、上記単量体の単重合体であっても構わないが、上記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。上記単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
本発明のトナーに好適な帯電性を得る上では、上記単量体のうちスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
本発明の重合体Aを重合する際に用いられるモノマー量は、2乃至8質量%の範囲が、トナーにおける好適な帯電量を達成できるので好ましい。
単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトンが挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
重合体Aの製造方法は、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、イオン重合等があるが、操作性などの面から溶液重合が好ましい。
重合体Aとしては、下記の構造を有するスルホン酸基を有する重合体を例示することもできる。
X(SO3 -)n・mYk+
(X:前記重合性単量体に由来する重合体部位を表し、Yk+:カウンターイオンを表し、kはカウンターイオンの価数であり、m及びnは整数であり、n=k×mである。)
この場合、カウンターイオンとしては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンなどであることが好ましい。
更に、重合体Aとして、下記の構造を有するスルホン酸エステル基を有する重合体を例示することもできる。
X−SO3−R
(X:前記重合性単量体に由来する重合体部位を表し、Rは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基である。)
重合体Aは、結着樹脂100質量部当り0.5乃至10質量部含有されていることが良い。好ましくは1乃至8質量部が良い。また、本発明のトナーにおいては、重合体Aを単独で用いても良いし、異なる2種類以上を併用しても良い。
本発明において、トナー粒子中に金属フタロシアニン及び/又は金属フタロシアニン誘導体を含有させることで、トナー粒子中でのカーボンブラックの分散状態が著しく改善される。この理由に関して、本発明者等は以下のように考えている。
即ち、本発明で用いる中心金属が[Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Mn、Mg、Al]からなる群から選ばれるいずれかである金属フタロシアニン及び/又は金属フタロシアニン誘導体(以下、これらを「金属フタロシアニン類」と称す)は、大環状化合物であるフタロシアニン環に対し、axial方向に配位子を配位することが可能な5配位構造又は6配位構造をとることが可能である。
本発明で用いる金属フタロシアニン類に高分子配位子が配位して得られる高分子錯体は、フタロシアニン環の部位がカーボンブラックと良好な親和性を呈すると共に、重合体部位は結着樹脂や他のトナー構成材料との親和性を呈するだけでなく、立体障害により再凝集も防止するので、良好な分散状態を生み出すことができるのだと考えている。
本発明に用いられる金属フタロシアニン類は、5配位構造又は6配位構造である必要性から、2価の金属、又は3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を中心金属とするものであり、具体的には、[Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Mn、Mg、Al]からなる群から選ばれるいずれかである。上記金属フタロシアニン類の中心金属は軸配位子の取り込み易さを考慮すると[Cr、Fe、Co、Zn、Mn]からなる群から選ばれるいずれかであることが好ましい。これらの中でも、5配位構造をとることが可能な下記構造式(4)で示されるZnを中心金属にもつZn化合物(亜鉛フタロシアニン)が特に好ましく選択される。本発明で用いられる重合体と下記構造式(4)によって構成される高分子錯体は、本発明で用いられるカーボンブラックとの吸着特性が特に良好であり、トナー中でのカーボンブラックの分散性を良好にすることができる。
本発明に用いられる金属フタロシアニン類としては公知のものを用いることができる。即ち、フタロシアニン骨格を有するものであれば特に限定されず、例えば、4つあるイソインドール部分にカルボン酸やスルホン酸等の置換基を導入したものや、芳香族系、脂肪族系、エーテル、アルコール等の置換基を導入したものが用いられる。但し、それ自身が、フタロシアニン環と着色剤の吸着性や軸配位子の取り込み易さに影響を及ぼすものは好ましくない。
本発明において、金属フタロシアニン類の具体的な添加量は、同時に用いられるカーボンブラックの種類と添加量にもよるが、結着樹脂100質量部に対して0.01乃至0.5質量部、好ましくは0.03乃至0.3質量部である。
本発明に用いられるトナー粒子を懸濁重合法により製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加することが好ましい。極性樹脂を添加することにより、カーボンブラックがトナー粒子表面に露出するのを未然に防ぐことができ、静電オフセットや現像性、転写性が良好になる。トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、極性樹脂の存在状態を制御することができる。即ち、添加した極性樹脂をトナー粒子の表面に薄層のコアを形成させたり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在させたりすることが可能である。また、極性樹脂の添加により、コアシェル構造のシェル部分の強度を自由に制御することができる。そのため、トナーの耐久性を最適化することができる。
極性樹脂の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であり、好ましくは10質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは15質量部以上30質量部以下である。1質量部未満ではトナー粒子中での極性樹脂の存在状態が不均一となりやすく、トナーの摩擦帯電分布がブロードになりやすい。一方、30質量部を超えるとトナー粒子の表面に形成される極性樹脂の薄層が厚くなり定着性が低下しやすくなる。
本発明に用いられる極性樹脂としては、具体的には、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体が挙げられる。特に極性樹脂として、3,000以上50,000以下のピーク分子量を有するスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体がトナー製造時の添加量を自由に制御できるので好ましい。また、極性樹脂として、スチレン−メタクリル酸共重合体、又はスチレン−アクリル共重合体を用いた場合、トナーの結着樹脂との相溶性がさらに良好になるため好ましい。その結果、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在しやすくなりコア層とシェル層との密着性が高まり、トナーの耐久性が向上する。
上述のように、本発明のトナーの有する好ましい態様として、トナー粒子において、コアシェル構造が形成されていること、コア層とシェル層との密着性が高められていること、常温ではトナーの加圧時の外的要因に対する強靭性が大きいこと、トナーの加熱時にコア成分(特にワックス)がブリード性を有することが挙げられる。トナー粒子のこれら特性は、現像特性、転写特性、定着特性、及び保存安定性に貢献しているものと思われる。
本発明に用いられる結着樹脂としては、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。上記結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が挙げられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
上記重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアクリル酸エステル系単量体或いはメタクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミドの如きエン系単量体。
これらは、単独、または、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139乃至192(John Wiley&Sons製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)を参考にして単量体を適宜混合して用いられる。
また本発明のトナーを製造する場合においては、本発明のトナーを好ましい分子量分布にするために、低分子量ポリマーを添加することが好ましい。低分子量ポリマーは、粉砕法でトナーを製造する場合には、結着樹脂等と溶融混練する際に添加することができ、また懸濁重合法によってトナーを製造する場合には、重合性単量体組成物中に添加することができる。該低分子量ポリマーとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が2,000以上5,000以下の範囲で、且つ、Mw/Mnが4.5未満、好ましくは3.0未満のものが好ましい。
低分子量ポリマーの例としては、低分子量ポリスチレン、低分子量スチレン−アクリル酸エステル共重合体、低分子量スチレン−アクリル共重合体が挙げられる。
本発明において、上述の結着樹脂と共にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂の如き極性樹脂を併用することができる。
本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナーの結着樹脂の分子量を制御するために、結着樹脂を合成する時に架橋剤を用いてもよい。
本発明に用いられる架橋剤としては、2官能の架橋剤として、以下のものが挙げられる。
ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。
これらの架橋剤の添加量は、前記重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、10質量部以下より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。
本発明に用いられる離型剤(ワックス成分)としては以下のものが挙げられる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム如きの石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロップシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸;酸アミドワックス;エステルワックス;硬化ヒマシ油及びその誘導体;植物系ワックス;動物性ワックス。
上記誘導体としては酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物などが挙げられる。
この中で特に、離型性に優れるという観点からエステルワックス及び炭化水素ワックスが好ましい。更に本発明のトナーにおいてコアシェル構造を制御し易く本発明の効果を発現しやすくするためには炭化水素ワックスを用いることがより好ましい。
上記ワックス成分の含有量は、結着樹脂100質量部に対して4質量部以上25質量部以下であることが好ましい。ワックス成分が4質量部以上25質量部以下の場合には、トナーの加熱加圧時に適度なワックスのブリード性を持てることにより、耐巻きつき性が向上する。さらに、現像時や転写時のトナーが受けるストレスに対してもトナー表面へのワックスの露出が少なく、トナー個々が均一な摩擦帯電性を得ることができる。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に混合して用いることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に摩擦帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
上記荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
一方、荷電制御剤として、トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
これら荷電制御剤の中でも、本発明の効果を十分に発揮するためには、金属を含むサリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。しかしながら、本発明のトナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナーの層厚規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
本発明のトナーは、流動化剤として無機微粉体が外添されている。
本発明のトナー粒子に外添する無機微粉体は、少なくともシリカ微粉体を含むことが好ましい。該シリカ微粉体の個数平均一次粒径は、4nm以上80nm以下であることが好ましい。本発明において個数平均一次粒径が上記範囲にあることで、トナーの流動性が向上すると共に、トナーの保存安定性も良好になる。
上記無機微粉体の個数平均一次粒径は、次のようにして測定される。
個数平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡で観察し、視野中の100個の無機微粉体の粒子径を測定して平均粒子径を求める。
また無機微粉体として、シリカ微粉体と酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物の微粉体を併用することができる。併用される無機微粉体としては、酸化チタンが好ましい。
上記シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカの両者の微粉体が含まれる。該シリカとしては、表面及びシリカの内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。シリカはそれらも包含する。
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の摩擦帯電の均一化のために添加される。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの摩擦帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上等の機能を付与することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナー粒子に外添された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての摩擦帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、以下のものが挙げられる。未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物。これらの如き処理剤は単独で或いは併用して用いても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナー粒子の摩擦帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
本発明に用いられるトナー粒子は、どのような手法を用いて製造されても構わないが、懸濁重合法、乳化重合法、懸濁造粒法の如き、水系媒体中で造粒する製造法によって製造されたものであることが好ましい。トナー粒子は、結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体、着色剤、及びワックス成分を少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散し、造粒し、重合性単量体を重合することにより得られるトナー粒子であることが特に好ましい。
以下、本発明に用いられるトナー粒子を得る上で好適な懸濁重合法を例示して、該トナー粒子の製造方法を説明する。トナー粒子は、上記結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体、着色剤、ワックス成分及び必要に応じた他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機に依って均一に溶解または分散させ、これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を分散剤含有の水系媒体中に懸濁して重合を行うことによってトナー粒子は製造される。上記重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
上記分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。
具体的には、無機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
一方、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、分散剤として、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
上記分散剤としては、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散剤を用いることが好ましい。
また、本発明においては、難水溶性無機分散剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300質量部以上3,000質量部以下の水を用いて水系分散媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系分散媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散剤粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、上記難水溶性無機分散剤を生成させて水系分散媒体を調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することが挙げられる。
上記懸濁重合法でトナーを製造する場合に本発明に用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートの如き過酸化物系重合開始剤。
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、上記重合性単量体100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下である。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に選定され、単独又は混合して使用される。
本発明のトナーは懸濁重合法にてトナーを製造する場合、以下に述べる超音波発振装置を用いて、カーボンブラックを重合性単量体に分散させることが好ましい。超音波発振装置を用いて分散させることで従来に比べ、カーボンブラックの分散性は飛躍的に向上し、静電オフセット、現像性及び転写性といった諸問題を大幅に改善することができる。
図7は超音波発振装置の拡大断面図、図8は装置本体を組み込んだシステム図である。
図7について以下に説明する。
(1):超音波発振機、(2):超音波振動子、(3):超音波照射部である。
図8について以下に説明する。
(11):分散タンク。
(12):溶解タンク。
(13):調整タンク、(13−1):送液ポンプ、(13−2):圧力計、(13−3):温度計、(13−4):撹拌装置、(13−5):背圧弁、(13−6):循環ラインである。
(14):超音波発振機、(14−1)超音波振動子、(14−2):上部に処理物の流入口を有し、下部に処理物の流出口を有する超音波処理室である。
また、(11):分散タンク、(12):調整タンク、(13):溶解タンク、(14−2):超音波処理室は、ジャケット構造であるため、処理物の冷却・加熱が可能である。
図9は、超音波装置が直列に2ケ設置されている。その他は、図8と同等の装置構成である。
図10は本発明に使用可能な他の超音波発振装置の拡大断面図、図11は図10の超音波発振装置を組み込んだシステム図である。
図12は、循環ラインの調整タンク内出口位置が処理物上部に位置している。その他は、図8と同等の装置構成である。
また、図8のシステムは本発明の一例であって、調整タンクは分散タンクまたは溶解タンクと兼用しても良い。その一例を図13に示す。
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
図8は装置本体を組み込んだシステム図である。分散タンク(11)より、重合性単量体に少なくとも着色剤が分散している微粒状着色剤含有単量体を、溶解工程(12)より、重合性単量体に少なくとも樹脂が溶解している樹脂含有単量体処理物を、調整タンク(13)内に投入する。撹拌装置(13−4)により撹拌を行ないながら、ポンプ(13−1)を運転し、循環ライン(13−6)、超音波処理室(14−2)内に処理物を循環させ、超音波発振装置を始動させる。また、超音波分散時は、調整タンク(13)及び超音波処理室(14−2)のジャケットにより、処理物は、任意の温度に調整される。
本発明に用いられる超音波発振装置の形状の一例を、図7及び図10に示す。本発明に好ましく用いられる超音波発振装置は、図7の様に円周方向に同心円状の凸部を複数有している円柱状の構造を有する超音波を照射するための振動子を有していることである。この構造は、処理物が超音波処理室(14−2)内を通過する時、超音波照射部の段数に相当する回数分を超音波処理されるため、処理物の分散ムラが非常に少なく、均一でかつ従来に比べ短時間で所定の分散状態に達することができる。
ついで、ポンプ(13−1)、超音波処理室(14−2)内の圧力を調節する背圧弁(13−5)により、循環量と超音波処理室(14−2)内の圧力を調整する。処理物中の微小な気泡は、振動子の動きに伴い、膨張と収縮を繰り返す。この時、真空状態近くまで、減圧され膨張した微小気泡が、再び加圧され、崩壊する時キャビテーションが生じる。このキャビテーションの効果は、圧力差が大きいほど有効であるため、超音波処理室(14−2)内の圧力は、最適な加圧状態に徴することが好ましい。すなわち、該調整工程時の超音波処理室(14−2)内の圧力は、20kPa以上200kPa以下の範囲であることが好ましい。20kPa未満では、処理物(49)内に含まれる気泡の収縮、分裂にエネルギーが吸収されるため分散の効率が低下し好ましくない。200kPa超では、超音波発振装置が過負荷状態に陥りやすく、安全性および装置信頼性の面で好ましくない。
該調整工程時、該超音波処理された処理物が、該調整タンク内部へ再び排出される部分が、該調整タンク内の処理物中に位置し、超音波処理された処理物が、気体を巻き込まずに処理物中に戻ることが好ましい。処理物の発泡は、超音波処理の効率を低下すると同時に、次工程である造粒工程においても、悪影響を与える。すなわち、調整液を水系分散体に分散して重合性単量体組成物の粒子を生成する造粒工程において、発泡により調整液中に気泡が混入していると、気泡の収縮・膨張に粒子生成のためのせん断力が吸収され、粒度分布のブロード化の原因になるため好ましくない。
該調整工程において、該超音波発振装置1台当たりの出力をA(w)、該超音波発振装置1台当たりの超音波照射部面積をB(cm2)とした時、A≧2000かつ、A/Bが25≦A/B≦70の範囲であることが好ましい。Aが2000未満では、量産機としてスケールが小さすぎるため、設置台数が多くなり、メンテナンス性の悪化及び設置スペース増加により、生産効率が低いため、好ましくない。A/Bが25未満では、超音波のエネルギーが小さく、分散効率が悪く、70超では、エロージョンによる振動子の消耗が激しく、消耗に伴う出力の変化による、品質の振れの増大、及び製品へのコンタミネーションが大きく、好ましくない。
該調整工程において超音波処理される調整液量をC(kg)、超音波発振装置の合計出力をD(kw)とした時、50≦C/D≦200の範囲であることが好ましい。C/Dが200超の領域では、照射エネルギーが小さすぎるため、所望の分散レベルを達成するのが困難である。また、50未満では、分散状態が飽和傾向示し、過剰エネルギーとなるため、省エネ上好ましくない。
本発明において、スケールUP時においては、超音波発振装置を、直列にもしくは並列に、もしくは直列かつ並列に複数個使用することにより、処理物への超音波の照射効率を低下することなく、大容量の処理にも対応できる。本発明において、特に好ましいのは、直列に複数個使用した場合であり、図9は、超音波発生装置を直列につないだ一例である。超音波装置を直列に複数個使用すると、処理物の超音波照射部における滞留時間が長くなる。その場合、超音波発振装置1ケで分散した場合に比べ、ワンパス当たりの分散レベルが高いため、再びピグメントショックを生じにくく、最終的な分散レベルが高くなる。
また、本発明で使用される超音波発振装置の変換機部(高周波電力を機械振動に変換する)の冷却構造は、水冷式よりも空冷式が好ましい。防爆エリアにおいて、超音波発振装置を使用する場合、変換部の冷却を水冷により行うと、冷却水が漏れた場合、漏電の可能性があり、危険であるため、好ましくない。
上記超音波発振装置の具体的なものとしては、ドクターヒールシャー社(ドイツ)から商品化されているUIPシリーズ等がある。この中で好ましくは、UIP1000,2000,4000,8000,16000等が超音波処理能力が大きく、量産化に対応しやすく好ましい。
また、該調整工程において、樹脂の含有量が重合性単量体100質量部に対して15質量部以上55質量部以下であることが好ましい。15質量部未満では、分散工程において作製した重合性単量体に少なくとも着色剤を分散させた微粒状着色剤含有単量体と、溶解工程において重合性単量体に少なくとも樹脂を溶解させた樹脂含有単量体とを、該調整工程において混合した場合、該調整液中にピグメントショックが生じにくい。生じた場合でも、公知の撹拌翼等のせん断力で、再分散可能であるレベルであるため、超音波装置を設置するメリットが少ない。55質量部超では、該調整液の粘度が大幅に増加するため、配管中に調整液が残存しやすい。その結果、次工程である、調整液を水系分散体に分散して重合性単量体組成物の粒子を生成する造粒工程への、該調整液の排出量の振れが大きくなり、重合性単量体組成物の粒子の粒度分布の振れが大きくなり、良品率が低下するため好ましくない。さらには、付着の進行による配管の閉塞などの問題も懸念されるため好ましくない。
本発明の重合法トナーの製造方法としては、懸濁重合方法が好ましい。分散工程において、公知の分散方法により重合性単量体に少なくとも着色剤を分散させ微粒状着色剤含有単量体を得る。溶解工程においては、重合性単量体に少なくとも樹脂を溶解させ樹脂含有単量体を得る。調整工程において、該分散工程と該溶解工程において得られた、微粒状着色剤含有単量体と樹脂含有単量体とを混合し、図7から図12に示される超音発振装置によって均一に溶解または分散せしめた調整液を得る。該調整工程において得られた調整液を、分散安定剤を含有する水相中にクレアミックス又はホモミキサー等の高せん断力を有する撹拌機により分散せしめ、重合性単量体組成物からなる液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度および時間を調製し造粒する。
懸濁重合法においては、通常、重合性単量体組成物100質量部にたいして水100乃至3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持されるため、粒子の沈降が起こらない程度の撹拌を行えば良い。
懸濁重合法においては、通常、重合性単量体組成物100質量部にたいして水100乃至3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持されるため、粒子の沈降が起こらない程度の撹拌を行えば良い。
重合温度は40℃以上、一般的には50乃至90℃の温度に設定して重合を行う。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温しても良く、更に、未反応の重合性単量体,副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を蒸留操作により留去しても良い。蒸留操作は常圧もしくは減圧下で行うことができる。重合反応または引き続く蒸留操作終了後、生成したトナー粒子をろ過/洗浄するが、この工程の前段もしくは後段で酸および/またはアルカリ処理により、得られた粒子状表面の分散安定剤の除去を行うこともできる。最終的に液相と分離されたトナー粒子は公知の方法により乾燥される。
次に本発明で用いられる画像形成方法についてその一例を、図面を参照しながら以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図3は、本発明の画像形成方法を適用した画像形成装置に好適に用いることのできる、プロセスカートリッジ7(以下、「カートリッジ」ともいう。)の断面模式図である。
カートリッジ7は、感光体ドラム1と、帯電手段2及びクリーニング手段6を備えたクリーナユニット50と、感光体ドラム1に形成された静電潜像を現像する現像手段4を有する現像ユニット4Aとを有する。クリーナユニット50を構成するクリーニング枠体31には、感光体ドラム1が軸受部材(不図示)を介して回転自在に取り付けられている。
感光体ドラム1には、感光体ドラム1の外周面に設けられた感光層を一様に帯電させるための帯電ローラー2、転写後に感光体ドラム1上に残った現像剤(残留トナー)を除去するためのクリーニングブレード60が接触している。クリーニングブレード60によって感光体ドラム1表面から除去されたトナー(除去トナー)は、クリーニング枠体31に設けられた除去トナー収納室35に納められる。
現像ユニット4Aは、トナーを収容する現像枠体45(45a、45b、45e)を有しており、現像ローラー40(矢印Y方向に回転)が軸受部材を介して回転自在に現像枠体45に支持されている。また、現像ローラー40と接触してトナー供給ローラー43(矢印Z方向に回転)とトナー規制部材44がそれぞれ設けられている。さらに現像枠体45には収容されたトナーを撹拌するとともにトナー供給ローラー43に搬送するためのトナー搬送機構42が設けられている。
そして、現像ユニット4Aがクリーナユニット50に対して揺動自在に支持されている。すなわち、現像枠体45の両端に設けた結合穴47、48とクリーナユニット50のクリーニング枠体31両端に設けた支持穴(不図示)を合わせ、クリーナユニット50両端からピン(不図示)を差し込んでいる。
また、支持穴を回転軸中心として現像ローラー40が感光体ドラム1に接触するように加圧バネ(不図示)によって現像ユニット4Aが常に付勢されている。
現像時には、トナー容器41内に収納されたトナーがトナー攪拌機構42によってトナー供給ローラー43へ搬送される。トナー供給ローラー43が、現像ローラー40との摺擦によって現像ローラー40にトナーを供給し、現像ローラー40上にトナーを付着させる。現像ローラー40上に付着されたトナーは、現像ローラー40の回転にともなってトナー規制部材44のところに至る。そして、トナー規制部材44がトナーを規制して所定のトナー薄層を形成し、所望の帯電電荷量を付与する。現像ローラー40上で薄層化されたトナーは、現像ローラー40の回転につれて、感光体ドラム1と現像ローラー40とが接近した現像部に搬送される。そして、現像部において、電源(不図示)から現像ローラー40に印加した現像バイアスにより、感光体ドラム1の表面に形成されている静電潜像に付着して、潜像を現像化する。静電潜像の現像化に寄与せずに現像ローラー40の表面に残留したトナーは、現像ローラー40の回転にともなって現像枠体45内に戻される。そして、トナー供給ローラー43との摺擦部で現像ローラー40から剥離、回収される。回収されたトナーは、トナー攪拌機構42により残りのトナーと撹拌混合される。
ここで現像ローラー40には弾性ローラーを用い、これを感光体ドラム1表面と接触させる方法を用いることができる。一般にトナー担持体と感光体が接触する現像方式においては、トナーの破損、変形が生じやすくなるが、本発明記載のトナーを用いた場合にはこうした変化を効果的に抑制することが出来るため、好ましい。
トナー担持体と感光体が接触する現像方式では、トナーを介して感光体と感光体表面に対向する弾性ローラー間に働く電界によって現像が行われる。従って弾性ローラー表面或いは表面近傍が電位を持ち、感光体表面とトナー担持体表面の狭い間隙で電界を有する必要性がある。このため、弾性ローラーの弾性ゴムが中抵抗領域に抵抗制御されて感光体表面との導通を防ぎつつ電界を保つか、または導電性ローラーの表面層に薄層の絶縁層を設ける方法が利用できる。さらには、該導電性ローラー上に感光体表面に対向する側を絶縁性物質により被覆した導電性樹脂スリーブ或いは、絶縁性スリーブで感光体に対向しない側に導電層を設けた構成も可能である。また、トナー担持体として剛体ローラーを用い、感光体をベルトの如きフレキシブルな物とした構成も可能である。トナー担持体としてのローラーの抵抗値としては102乃至109Ω・cmの範囲が好ましい。
トナー担持体の表面形状としては、その表面粗さRa(μm)を0.1乃至3.0となるように設定すると、高画質及び高耐久性を両立できる。該表面粗さRaはトナー搬送能力及びトナー帯電能力と相関する。該トナー担持体の表面粗さRaが3.0を超えると、該トナー担持体上のトナー層の薄層化が困難となるばかりか、トナーの帯電性が改善されないので画質の向上は望めない。3.0以下にすることでトナー担持体表面のトナーの搬送能力を抑制し、該トナー担持体上のトナー層を薄層化すると共に、該トナー担持体とトナーの接触回数が多くなるため、該トナーの帯電性も改善されるので相乗的に画質が向上する。一方、表面粗さRaが0.1よりも小さくなると、トナーコート量の制御が難しくなる。
本発明において、トナー担持体の表面粗さRaは、日本工業規格(JIS)B06014.2.1項(改正年月日2001年1月20日、確認年月日2005年7月20日)に定める算術平均粗さである。本発明においては、表面粗さ測定器(小坂研究所社製サーフコーダSE3500)を用い、トナー担持体表面の任意の1点より、トナー担持体回転軸と平行となる方向に測定を行った。なお、カットオフ値は0.8mm、測定長さは2.5mm、測定速度は0.1mm/秒とした。
図3の画像形成方法においては、トナー担持体は感光体の周速同方向に回転しているが、逆方向に回転していてもよい。その回転が同方向である場合、トナー担持体の周速を感光体の周速に対し1.05乃至3.0倍となるように設定することが好ましい。
トナー担持体の周速が、感光体の周速に対し1.05倍未満であると、感光体上のトナーの受ける撹拌効果が不十分となり、良好な画像品質が望めない。また、周速比が3.0倍を超える場合には、機械的ストレスによるトナーの劣化やトナー担持体へのトナー固着が発生、促進され、好ましくない。
トナー担持体が弾性ローラーである場合、表面に弾性層を有する構造のものが好ましく用いられる。該弾性ローラーに使用される弾性層の材料の硬度としては、30乃至60度(ASKER−C/荷重1kg)のものが好適に使用される。
また、トナーコート量はトナー規制部材44により制御されるが、このトナー規制部材44はトナー層を介して現像ローラー40に接触している。この時のトナー規制部材44と現像ローラー40との接触圧は、線圧として0.05N/cm以上0.5N/cm以下が好ましい範囲である。
尚、線圧とはトナー規制部材の長さ当たりに加えられる荷重のことであり、例えば1mの当接長さを有するトナー規制部材に1.2Nの荷重を加えて現像ローラーに接触させた場合、線圧は1.2N/mとなる。線圧が0.05N/cmよりも小さいとトナーコート量の制御に加え均一な摩擦帯電も難しくなり、カブリの悪化等の原因となる。一方、線圧が0.5N/cmよりも大きくなるとトナー粒子が過剰な負荷を受けるため、粒子の変形やトナー規制部材或いは現像ローラーへのトナーの融着等が発生しやすくなり、好ましくない。
トナー規制部材44の自由端部はどのような形状でもよく、例えば断面形状が直線状のもの以外にも、先端近傍で屈曲したL字形状のものや、先端近傍が球状に膨らんだ形状のもの等が好適に用いられる。
トナー規制部材としては、基材としてステンレス、鋼、リン青銅の如き金属弾性体を用い、スリーブ当接部に当る部位に樹脂を接着あるいはコーティング塗布したものが好適に用いられる。
またさらに、トナー規制部材に直流電場及び/または交流電場を印加することによっても、トナーへのほぐし作用のため、均一薄層塗布性、均一帯電性がより向上し、充分な画像濃度の達成及び良質の画像を得ることができる。
図4は、本発明の画像形成方法を適用した画像形成装置の一例を示す断面模式図である。画像形成装置100は4個の画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdを縦方向に並設している。そして、各画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdには、各々、装着手段(不図示)によってプロセスカートリッジ7(7a、7b、7c、7d)が着脱可能に装着される。なお、マゼンタ色、シアン色、イエロー色、ブラック色の各カートリッジ7a、7b、7c、7dは同一構成である。
本模式図では、画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdは、縦方向に僅かに傾斜して並設されているが、傾斜することなく縦方向に整列して設けてもよい。また、プロセスカートリッジ7は、図3に例示したものと同じであっても良いし、異なっていても良い。
各カートリッジ7(7a、7b、7c、7d)は、感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)を備えている。感光体ドラム1は、駆動手段(不図示)によって、同図中、反時計回りに回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には、その回転方向に従って順に以下の手段が設けられている。(A)感光体ドラム1表面を均一に帯電する帯電手段2(2a、2b、2c、2d)。(B)画像情報に基づいてレーザービームを照射し感光体ドラム1に静電潜像を形成するスキャナユニット3(3a、3b、3c、3d)。(C)静電潜像に現像剤(以下、「トナー」という。)を付着させてトナー像として現像する現像手段4(4a、4b、4c、4d)。(D)感光体ドラム1上のトナー像を記録媒体Sに転写させる転写装置5。(E)転写後の感光体ドラム1表面に残ったトナーを除去するクリーニング手段6(6a、6b、6c、6d)。
ここで、感光体ドラム1と、プロセス手段である、帯電手段2、現像手段4、クリーニング手段6は、カートリッジ枠体により一体的に構成してカートリッジ化されカートリッジ7を構成している。
感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)は、シリンダの外周面に感光層を設けて構成したものである。感光体ドラム1は、その両端部を支持部材によって回転自在に支持されている。そして、一方の端部に駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより、反時計周りに回転駆動される。
上記感光体としては、a−Se、CdS、ZnO2、OPC、a−Siの様な光導電絶縁物質層を持つ感光体ドラムが好適に使用される。また、上記OPC感光体における有機系感光層の結着樹脂は、特に限定するものではない。中でもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂が特に、転写性に優れ、感光体へのトナーの融着、外添剤のフィルミングが起こりにくいため好ましい。
帯電手段2(2a、2b、2c、2d)としては、接触帯電方式のものを使用している。帯電手段2は、ローラー状に形成された導電性ローラーである。このローラーを感光体ドラム1表面に当接させるとともに、このローラーに帯電バイアス電圧を印加する。これにより、感光体ドラム1表面を一様に帯電させる。
帯電ローラーを用いた時の好ましいプロセス条件としては、ローラーの当接圧が線圧として0.05乃至5N/cmである。また印加電圧としては、直流電圧或いは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好適に用いられる。直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いた時には、交流電圧=0.5乃至5dVpp、交流周波数=50Hz乃至5kHz、直流電圧=±0.2乃至±1.5kVであることが好ましい。また、直流電圧を用いた時には、直流電圧=±0.2乃至±5kVであることが好ましい。
帯電ローラー以外の帯電手段としては、帯電ブレードを用いる方法や、導電性ブラシを用いる方法がある。これらの接触帯電手段は、非接触のコロナ帯電に比べて、高電圧が不必要になったり、オゾンの発生が低減するといった効果がある。接触帯電手段としての帯電ローラー及び帯電ブレードの材質としては、導電性ゴムが好ましく、その表面に離型性被膜を設けても良い。離型性被膜としては、ナイロン系樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)などが適用可能である。
スキャナユニット3(3a、3b、3c、3d)は、レーザーダイオード(不図示)によって画像信号に対応する画像光が、高速回転されるポリゴンミラー(不図示)及び結像レンズ(不図示)を介して帯電済みの感光体ドラム1表面を画像情報に応じ露光する。これによって、感光体ドラムに静電潜像を形成する。
現像手段4(4a、4b、4c、4d)は、マゼンタ色、シアン色、イエロー色、ブラック色の各色のトナーを夫々収納したトナー容器41から構成され、トナー容器41内のトナーを送り機構42によってトナー供給ローラー43へ送り込む。
前記トナー供給ローラー43は、図示時計方向に回転し、トナー担持体としての現像ローラー40へのトナーの供給、及び、静電潜像の現像化に寄与せず現像ローラー40上に残留したトナーのはぎとりを行う。
現像ローラー40へ供給されたトナーは、現像ローラー40外周に圧接されたトナー規制部材44によって現像ローラー40(時計回り方向に回転)の外周に塗布され、且つ電荷を付与される。そして、潜像が形成された感光体ドラム1と対向した現像ローラー40に現像バイアスを印加する。そして、潜像に応じて感光体ドラム1上にトナー現像を行う。
転写装置5には、すべての感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)に対向し、接するように循環移動する静電転写ベルト11が設けられている。この転写ベルト11は、駆動ローラー13、従動ローラー14a、14b、テンションローラー15に張架されていて、図中左側の外周面に記録媒体Sを静電吸着する。そして、転写ベルト11は、感光体ドラム1に記録媒体Sを接触させるべく循環移動する。これにより、記録媒体Sは転写ベルト11により転写位置まで搬送され、感光体ドラム1上のトナー像を転写される。
この転写ベルト11の内側に当接し、4個の感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)に対向した位置に転写ローラー12(12a、12b、12c、12d)が並設される。これら転写ローラー12には、転写時にバイアスが印加されて、電荷が静電転写ベルト11を介して記録媒体Sに印加される。このとき生じた電界により、感光体ドラム1に接触中の記録媒体Sに、感光体ドラム1上のトナー像が転写される。
給送部16は、画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdに記録媒体Sを給送搬送するものである。給送部16には、複数枚の記録媒体Sがカセット17に収納されている。画像形成時には給送ローラー18(半月ローラー)、レジストローラー19が画像形成動作に応じて駆動回転する。給送ローラー18は、カセット17内の記録媒体Sを1枚毎に分離給送した後、レジストローラー19に記録媒体S先端を突き当てて一旦停止させる。その後レジストローラー19は、転写ベルト11の回転と画像書出し位置の同期をとって、記録媒体Sを静電転写ベルト11へと給送する。
定着部20は、記録媒体Sに転写された複数色のトナー画像を定着させるものである。そして、定着部20は、加熱ローラー21aと、これに圧接して記録媒体Sに熱及び圧力を与える加圧ローラー21bとを有する。即ち、感光体ドラム1に形成されたトナー像を転写された記録媒体Sは定着部20を通過する際に、加圧ローラー21bで搬送されるとともに、加熱ローラー21aによって熱及び圧力を与えられる。これによって複数色のトナー像が記録媒体S表面に定着される。
画像形成の動作としては、カートリッジ7(7a、7b、7c、7d)が、画像形成タイミングに合わせて順次駆動される。そして、その駆動に応じて感光体ドラム1a、1b、1c、1dが、反時計回り方向に回転駆動される。そして、各々のカートリッジ7に対応するスキャナユニット3が順次駆動される。この駆動により、帯電ローラー2は感光体ドラム1の周面に一様な電荷を付与する。そして、スキャナユニット3は、その感光体ドラム1周面に画像信号に応じて露光を行って感光体ドラム1周面に静電潜像を形成する。現像手段4内の現像ローラー40は、静電潜像の低電位部にトナーを転移させて感光体ドラム1周面上にトナー像を形成(現像)する。
最上流の感光体ドラム1の周面上に形成されたトナー像の先端が、転写ベルト11との対向点に回転搬送されてくるタイミングで、その対向点に記録媒体Sの印字開始位置が一致するようにレジストローラー19が回転し記録媒体Sを転写ベルト11へ給送する。
記録媒体Sは吸着ローラー22と転写ベルト11とによって挟み込むようにして転写ベルト11の外周に圧接される。そして、転写ベルト11と吸着ローラー22との間に電圧を印加する。そして、誘電体である記録媒体Sと転写ベルト11の誘電体層に電荷を誘起して、記録媒体Sを転写ベルト11の外周に静電吸着させている。これにより、記録媒体Sは静電転写ベルト11に安定して吸着され、最下流の転写部まで搬送される。
このように搬送されながら記録媒体Sは、各感光体ドラム1と転写ローラー12との間に形成される電界によって、各感光体ドラム1のトナー像を順次転写される。
4色のトナー像を転写された記録媒体Sは、ベルト駆動ローラー13の曲率により静電転写ベルト11から曲率分離され、定着部20に搬入される。記録媒体Sは、定着部20で上記トナー像を熱定着された後、排紙ローラー23によって、排紙部24から画像面を下にした状態で本体外に排出される。
図4においては、定着部20に加熱ローラーを用いる方法を例示したが、本発明の画像形成方法には他の定着方法も好適に用いることができる。図5および図6には、発熱体を用いて耐熱性高分子フィルムを加熱し、トナー像の定着を行う装置を示す。
図5はフィルムに常にテンションが加わっている構造の定着装置である。
本発明において、発熱体はその熱容量が小さく、線状あるいは面状の加熱部を有するもので、加熱部の最高温度は100乃至300℃であることが好ましい。
また、フィルムは、厚さ1乃至100μmの耐熱性のシートであることが好ましく、これら耐熱性シートとしては耐熱性の高い、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリアミド等のポリマーシートの他、アルミニウム等の金属シート及び金属シートとポリマーシートから構成されたラミネートシートが用いられる。
より好ましいフィルムの構成としては、これら耐熱性シートが離型層及び/又は低抵抗層を有していることである。
51は装置に固定支持された加熱体であって、ヒータ基板52、通電発熱抵抗体(発熱体)53・検温素子54等よりなる。
ヒータ基板52は耐熱性・絶縁性・低熱容量・高熱伝導性の部材であり、例えば、厚み1mm・巾10mm・長さ240mmのアルミナ基板である。
発熱体53はヒータ基板52の下面(フィルム55との対面側)の略中央部に長手に沿って、電気抵抗材料を厚み約10μm・巾1乃至3mmの線状または細帯状にスクリーン印刷等により塗工したものである。電気抵抗材料としては例えば、Ag/Pd(銀パラジウム)、Ta2N、RuO2等が用いられる。
検温素子54は一例としてヒータ基板52の上面(発熱体53を設けた面とは反対側面)の略中央部にスクリーン印刷等により塗工して具備させたPt膜等の低熱容量の測温抵抗体である。低熱容量のサーミスタなども使用できる。
本例の加熱体51の場合は、線状又は面状をなす発熱体53に対し画像形成スタート信号により所定のタイミングにて通電して発熱体53を略全長にわたって発熱させる。通電はAC100Vであり、検温素子54の検知温度に応じてトライアックを含む不図示の通電制御回路により通電する位相角を制御することにより供給電力を制御している。
加熱体51はその発熱体53への通電により、ヒータ基板52・発熱体53の熱容量が小さいので加熱体表面が所要の定着温度(例えば140乃至200℃)まで急速に温度上昇する。
そしてこの加熱体51に耐熱性フィルム55が当接している。
熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、フィルム55には総厚100μm以下、20μm以上の耐熱性・離型性、強度・耐久性等のある単層或は複合層のフィルムを使用できる。
例えば、ポリイミド・ポリエーテルイミド(PEI)・ポリエーテルサルホン(PES)・4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)・ポリパラバン酸(PPA)、或いは複合層フィルム例えば20μm厚のポリイミドフィルムの少なくとも画像当接面側にPTFE(4フッ化エチレン樹脂)・PAF・FEP等のフッ素樹脂・シリコン樹脂等、更にはそれに導電材(カーボンブラック・グラファイト・導電性ウイスカなど)を添加した離型性コート層を10μm厚に施したものなどである。
回転体たる支持ローラー58は例えばシリコンゴム等の離型性のよいゴム弾性体からなり、加熱体51にフィルム55を介して圧接され、ニップ部を形成すると共に、フィルム55を所定速度に移動駆動する。フィルム55との間に被加熱材としての記録材シートが導入されたときには、その記録材シートをフィルム55面に密着させて加熱体51に圧接し、フィルム55と共に移動駆動させる。
発熱体を用いて耐熱性高分子フィルムを加熱し、トナー像の定着を行う装置の他の形態について示す。
図6はフィルムにテンションが加わらない状態がある構造を有する、定着装置である(テンションフリータイプ)。
本発明において、発熱体はその熱容量が小さく、線状あるいは面状の加熱部を有するもので、加熱部の最高温度は100乃至300℃であることが好ましい。
また、フィルムは、厚さ1乃至100μmの耐熱性のシートであることが好ましく、これら耐熱性シートとしては耐熱性の高い、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリアミド等のポリマーシートの他、アルミニウム等の金属シート及び金属シートとポリマーシートから構成されたラミネートシートが用いられる。
より好ましいフィルムの構成としては、これら耐熱性シートが離型層及び/又は低抵抗層を有していることである。
64は装置に固定支持された低熱容量線状加熱体であって、ヒータ基板64a、通電発熱抵抗体(発熱体)64b・表面保護層64c・検温素子64d等よりなる。
ヒータ基板64aは耐熱性・絶縁性・低熱容量・高熱伝導性の部材であり、例えば、厚み1mm・巾10mm・長さ240mmのアルミナ基板である。
発熱体64bはヒータ基板64aの下面(フィルム65との対面側)の略中央部に長手に沿って、電気抵抗材料を厚み約10μm・巾1乃至3mmの線状または細帯状に塗工し、その上に表面保護層64cとして耐熱ガラスを約10μmコートしたものである。電気抵抗材料としては例えば、Ag/Pd(銀パラジウム)、Ta2N、RuO2等が用いられる。また、電気抵抗材料の塗工方法としては、スクリーン印刷する方法等が用いられる。
検温素子64dは一例としてヒータ基板64aの上面(発熱体64bを設けた面とは反対側面)の略中央部にスクリーン印刷等により塗工して具備させたPt膜等の低熱容量の測温抵抗体である。低熱容量のサーミスタなども使用できる。
本例の加熱体64の場合は、線状又は面状をなす発熱体64bに対し画像形成スタート信号により所定のタイミングにて通電して発熱体64bを略全長にわたって発熱させる。
通電はAC100Vであり、検温素子64dの検知温度に応じてトライアックを含む不図示の通電制御回路により通電する位相角を制御することにより供給電力を制御している。
加熱体64はその発熱体64bへの通電により、ヒータ基板64a・発熱体64b・表面保護層64cの熱容量が小さいので加熱体表面が所要の定着温度(例えば140乃至200℃)まで急速に温度上昇する。
そしてこの加熱体64に耐熱性フィルム65が当接している。
熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、フィルム65には総厚100μm以下、20μm以上の耐熱性・離型性、強度・耐久性等のある単層或は複合層のフィルムを使用できる。
例えば、ポリイミド・ポリエーテルイミド(PEI)・ポリエーテルサルホン(PES)・4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)・ポリパラバン酸(PPA)、或いは複合層フィルム例えば20μm厚のポリイミドフィルムの少なくとも画像当接面側にPTFE(4フッ化エチレン樹脂)・PAF・FEP等のフッ素樹脂・シリコン樹脂等、更にはそれに導電材(カーボンブラック・グラファイト・導電性ウイスカなど)を添加した離型性コート層を10μm厚に施したものなどである。
回転体たる支持ローラー62は例えばシリコンゴム等の離型性のよいゴム弾性体からなり、加熱体64にフィルム65を介して圧接され、ニップ部を形成すると共に、フィルム65を所定速度に移動駆動する。フィルム65との間に被加熱材としての記録材シートが導入されたときには、その記録材シートをフィルム65面に密着させて加熱体64に圧接し、フィルム65と共に移動駆動させる。