以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
<画像形成装置の構成>
図1は、第1の実施の形態の画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、電子写真法を用いてカラー画像を形成するプリンタである。
図1に示すように、画像形成装置1は、印刷用紙等の印刷媒体Pを供給する媒体供給部5と、トナー像(現像剤像)を形成する画像形成部100と、画像形成部100で形成したトナー像を印刷媒体Pに転写する転写ユニット6と、トナー像を印刷媒体Pに定着する定着装置7と、印刷媒体Pを排出する媒体排出部8とを備える。
媒体供給部5は、印刷媒体Pを収容する給紙トレイ50と、給紙トレイ50に収容された印刷媒体Pに当接するように配置されたピックアップローラ51と、ピックアップローラ51に隣接して配置されたフィードローラ52と、フィードローラ52に対向するように配置されたリタードローラ53とを有する。
給紙トレイ50は、印刷用紙等の印刷媒体Pを積載状態で収容する。ピックアップローラ51は、給紙トレイ50の印刷媒体Pに当接して回転し、給紙トレイ50から印刷媒体Pを繰り出す。フィードローラ52は、ピックアップローラ51によって繰り出された印刷媒体Pを搬送路F1に送り出す。リタードローラ53は、フィードローラ52による送り出し方向とは逆方向に回転し、印刷媒体Pに搬送抵抗を付与して重送を防止する。
媒体供給部5は、また、印刷媒体Pの搬送路F1に沿って、レジストローラ対54および搬送ローラ対55を有する。レジストローラ対54は、互いに当接する一対のローラで構成され、印刷媒体Pの先端が両ローラのニップ部に当接してから所定のタイミングで回転を開始することにより、印刷媒体Pのスキューを矯正して搬送する。搬送ローラ対55は、互いに当接する一対のローラで構成され、レジストローラ対54からの印刷媒体Pを画像形成部100に搬送する。
画像形成部100は、マゼンタ、イエロー、ブラックおよびシアンの捺染トナー(捺染色材:現像剤)によりトナー像を形成する画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cを有する。プロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cは、印刷媒体Pの搬送方向(図1の右から左)に沿って、この順に配列されている。
プロセスユニット10M(第1の画像形成ユニット)は、捺染マゼンタトナー(第1の捺染色材)により、マゼンタ画像(第1の画像)を形成する。プロセスユニット10Y(第3の画像形成ユニット)は、捺染イエロートナー(第3の捺染色材)により、イエロー画像(第3の画像)を形成する。プロセスユニット10K(第4の画像形成ユニット)は、捺染ブラックトナー(第4の捺染色材)により、ブラック画像(第4の画像)を形成する。プロセスユニット10C(第2の画像形成ユニット)は、捺染シアントナー(第2の捺染色材)により、シアン画像(第2の画像)を形成する。
なお、ここでは4つのプロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cが設けられているが、プロセスユニット10の数は2つ以上であればよい。また、プロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cの配列は、図1に示した配列に限定されるものではない(後述する図25,26参照)。
プロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cは、特に区別する必要がない場合には、「プロセスユニット10」と称する。
プロセスユニット10は、トナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム11と、帯電部材としての帯電ローラ12と、現像剤担持体としての現像ローラ14と、供給部材としての供給ローラ15と、現像剤規制部材としての現像ブレード16とを有する。また、感光体ドラム11に対向するように、露光装置としての印刷ヘッド13が配置されている。
感光体ドラム11は、円筒状の導電性支持体と、導電性支持体の表面(外周面)に形成された感光層とを有する。導電性支持体は、例えば、アルミニウム、アルニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属、または、導電性粉体(例えば、金属、カーボンまたは酸化錫)を添加した樹脂によって構成される。感光体ドラム11は、駆動モータ19(図2)により図中時計回りに回転する。
帯電ローラ12は、感光体ドラム11の表面に接するように設けられ、感光体ドラム11の回転に追従して回転する。帯電ローラ12は、例えば、金属製のシャフトの表面に半導電性エピクロロヒドリンゴム層を形成したものである。帯電ローラ12は、帯電電圧電源111(図2)により帯電電圧が印加され、感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
印刷ヘッド13は、複数のLED(発光ダイオード)を一方向に配列した発光素子アレイと、複数のレンズを一方向に配列したレンズアレイとを有する。印刷ヘッド13は、各LEDの光がレンズによって感光体ドラム11の表面に集光するように配置される。印刷ヘッド13は、ヘッド制御部116(図2)によって駆動され、感光体ドラム11の表面を露光して静電潜像を形成する。
現像ローラ14は、感光体ドラム11の表面に接するように設けられ、感光体ドラム11の回転方向と反対方向に(すなわち、現像ローラ14と感光体ドラム11との対向部での表面の移動方向が順方向となるように)回転する。現像ローラ14は、例えば、金属製のシャフトの表面に半導電性ウレタンゴム層を形成したものである。現像ローラ14は、現像電圧電源112(図2)により現像電圧が印加され、感光体ドラム11の表面の静電潜像を現像する。
供給ローラ15は、現像ローラ14の表面に接するように設けられ、現像ローラ14の回転方向と同方向に(すなわち、供給ローラ15と現像ローラ14との対向部での表面の移動方向が逆方向となるように)回転する。供給ローラ15は、例えば、金属製のシャフトの表面に半導電性ウレタンゴム層を形成したものである。供給ローラ15には、供給電圧電源113(図2)により供給電圧が印加され、現像ローラ14にトナーを供給する。
現像ブレード16は、例えば、ステンレス等の金属で形成された長尺の板状部材を、長手方向に直交する断面が略L字状となるように屈曲したものである。現像ブレード16は、屈曲部分の外側の面が現像ローラ14の表面に当接するように配置されている。現像ブレード16には、ブレード電圧電源114(図2)によりブレード電圧が印加され、現像ローラ14上のトナー層の厚さおよび帯電量を規制する。
プロセスユニット10において、現像ローラ14、供給ローラ15および現像ブレード16を含む部分、すなわち静電潜像の現像に寄与する部分は、現像部を構成する。プロセスユニット10の現像部の上方には、現像剤収容体としてのトナーカートリッジ18が着脱可能に取り付けられている。トナーカートリッジ18は、捺染トナーを収容し、現像部に捺染トナーを補給する。
転写ユニット6は、無端状の転写ベルト62と、転写ベルト62が張架されたベルト駆動ローラ63およびアイドルローラ64と、転写ベルト62を介してプロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cのそれぞれの感光体ドラム11に対向配置された転写部材としての転写ローラ61とを有する。
転写ローラ61は、感光体ドラム11との間で転写ベルト62を挟むように設けられ、感光体ドラム11の回転に追従して回転する。転写ローラ61は、例えば、金属製のシャフトの表面に、例えば、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)等の発泡ゴム層を形成したものである。転写ローラ61は、転写電圧電源115(図2)により転写電圧が印可され、感光体ドラム11の表面のトナー像を印刷媒体Pに転写する。
転写ベルト62は、表面に印刷媒体Pを静電気力により吸着保持して、矢印F2で示す方向に走行する。ベルト駆動ローラ63は、ベルトモータ65(図2)により回転し、転写ベルト62を走行させる。アイドルローラ64は、転写ベルト62に張力を付与する。転写ベルト62、ベルト駆動ローラ63およびベルトモータ65は、印刷媒体Pをプロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cに沿って搬送する搬送機構を構成する。
定着装置7は、印刷媒体Pの搬送方向において画像形成部100の下流側に配置されている。トナー像が転写された印刷媒体Pは、転写ベルト62によって定着装置7に搬送される。
定着装置7は、定着ローラ72と、定着ローラ72の周囲に設けられた定着ベルト71と、定着ベルト71を介して定着ローラ72に押圧される加圧ローラ73とを有する。定着ローラ72は、ハロゲンランプ等の発熱体74(図2)を内蔵し、定着モータ76(図2)によって回転する。加圧ローラ73は定着ローラ72に押圧され、定着ベルト71と加圧ローラ73との間に定着ニップが形成される。定着ベルト71、定着ローラ72および加圧ローラ73は、印刷媒体Pに転写されたトナー像に熱と圧力を加え、印刷媒体Pに定着する。なお、定着ベルト71を有さない構成も可能である。
媒体排出部8は、印刷媒体Pの搬送方向において定着装置7の下流側に配置され、2対のローラ対である排出ローラ対81,82を備える。排出ローラ対81,82は、定着装置7から送り出された印刷媒体Pを排出搬送路F3に沿って搬送し、画像形成装置1の外部に排出する。画像形成装置1の上部には、排出ローラ対81,82によって排出された媒体を積載するスタッカ部84が設けられている。
画像形成装置1は、また、トナー像が定着した印刷媒体Pを、両面印刷の場合には反転させて(重ね印刷の場合には反転させずに)上述したレジストローラ対54まで搬送する再搬送機構9を備える。なお、両面印刷とは、印刷媒体Pのトナー像が定着した面(表面)とは反対側の面(裏面)にトナー像を形成(転写、定着)する印刷モードである。重ね印刷とは、印刷媒体Pのトナー像が定着した面と同じ面にトナー像を重ねて形成する印刷モードである。
印刷媒体Pの搬送方向において定着装置7の下流側には、定着装置7から送り出された印刷媒体Pを、媒体排出部8または再搬送機構9に選択的に案内する切り替えガイド91が備えられている。
再搬送機構9は、切り替えガイド91からの印刷媒体Pをさらに搬送する搬送ローラ92と、搬送ローラ92を通過した印刷媒体Pの進行方向を切り替える切り替えガイド93とを有する。切り替えガイド93は、実線で示す位置にあるとき(両面印刷時)には、印刷媒体Pを一時退避路F4に案内し、その後、逆向きに送り出された印刷媒体Pを戻り搬送路F5に案内する。また、切り替えガイド93は、破線で示す位置(重ね印刷時)にあるときには、印刷媒体Pを一時退避路F4には案内せずに戻り搬送路F5に案内する。
一時退避路F4には、搬送ローラ94が配置されている。搬送ローラ94は、両面印刷時に一時退避路F4に送り込まれた印刷媒体Pを、表裏を反転させて逆向きに送り出す。搬送ローラ94から逆向きに送り出された印刷媒体Pは、上述した切り替えガイド93によって戻り搬送路F5に案内される。
戻り搬送路F5に沿って、搬送ローラ95,96,97,98,99が配置されている。搬送ローラ95〜99は、印刷媒体Pを戻り搬送路F5に沿って搬送する。戻り搬送路F5は、上述したレジストローラ対54の上流側で搬送路F1に合流している。
なお、画像形成装置1が両面印刷機能を有さない場合は、再搬送機構9を設けない構成も可能である。
図1において、感光体ドラム11の回転軸の方向を、X方向とする。X方向は、印刷媒体Pの幅方向でもある。上述した媒体供給部5、プロセスユニット10、転写ユニット6、定着装置7、媒体排出部8および再搬送機構9の各ローラの軸方向は、X方向と平行である。プロセスユニット10を通過する際の印刷媒体Pの搬送方向を、Y方向(より具体的には+Y方向)とする。XY面は、ここでは水平面である。また、XY面に直交する方向、ここでは鉛直方向を、Z方向とする。
<捺染トナー>
本実施の形態では、プロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cにおいて、マゼンタ、イエロー、ブラックおよびシアンの、昇華転写性を有する捺染トナー(捺染色材:捺染現像剤)を用いる。捺染トナーは、捺染染料または捺染顔料(ここでは、捺染染料)を含む。
捺染マゼンタトナーは、捺染マゼンタ染料と、結着剤と、帯電制御剤とを含む。捺染マゼンタ染料は、例えば、C.L Reactive Red3、C.L Disperse Red50およびC.L Disperse Red92などである。
結着剤は、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびスチレン−ブタジエン系樹脂などである。帯電制御剤は、例えば、アゾ系錯体、サリチル酸系錯体、およびカリックスアレン系錯体などである。また、上記の染料、結着剤および帯電制御剤の他に、離型剤を含んでも良い。
捺染イエロートナーは、捺染イエロー染料と、結着剤と、帯電制御剤とを含む。捺染イエロー染料は、例えば、C.L.Reactive Yellow2、C.L.Disperse Yellow54、Disperse Yellow160、またはC.L.Yellow114などである。結着剤および帯電制御剤は、捺染マゼンタトナーと同様である。
捺染ブラックトナーは、捺染ブラック染料と、結着剤と、帯電制御剤とを含む。捺染ブラック染料は、例えば、C.L Reactive Black5などである。但し、捺染ブラック染料は、例えば、捺染イエロー染料と捺染マゼンタ染料と捺染シアン染料との混合物でもよい。結着剤および帯電制御剤は、捺染マゼンタトナーと同様である。
捺染シアントナーは、捺染シアン染料と、結着剤と、帯電制御剤とを含む。捺染シアン染料は、例えば、C.L Disperse Blue60、C.L Reactive Blue15、C.L Disperse Blue359、C.L Solvent Blue63、C.L Disperse Blue165、またはCibacronTurquoiseBlueFGF−Pなどである。結着剤および帯電制御剤は、捺染マゼンタトナーと同様である。
捺染染料(捺染マゼンタ染料、捺染イエロー染料、捺染ブラック染料または捺染シアン染料)の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤100重量部に対して2重量部〜25重量部、好ましくは2重量部〜15重量部である。
離型剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤100重量部に対して0.1重量部〜20重量部、好ましくは0.5重量部〜12重量部である。
帯電制御剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤100重量部に対して0.05重量部〜15重量部である。外添剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤100重量部に対して0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.05重量部〜8重量部である。
捺染トナーは、粉砕法または重合法によって製造することができる。ここでは、粉砕法を用いる場合について説明する。
まず、捺染染料(捺染マゼンタ染料、捺染イエロー染料、捺染ブラック染料または捺染シアン染料)と、結着剤と、帯電制御剤とを、ヘンシェルミキサを用いて混合する。得られた混合物を、二軸混練機により溶融混練し、冷却する。
得られた混練物を、直径2mmのスクリーンを備えたカッタミルを用いて粗砕化し、衝突板式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製のディスパージョンセパレータ)を用いて粉砕することにより、粉砕物を得る。さらに、風力分級機を用いて粉砕物を分級することにより、トナー母粒子を得る。
最後に、トナー母粒子に外添剤を混合し、混合物をヘンシェルミキサを用いて3分間撹拌する。これにより、捺染トナーが得られる。なお、捺染トナーは、粉砕法または重合法に限らず、他の方法を用いても良く、複数の方法を組み合わせても良い。重合法は、例えば、乳化重合凝集法および溶解懸濁法などである。
ここで説明する捺染トナーは、例えば、一成分現像方式の負帯電トナーである。すなわち、捺染トナーは負の帯電極性を有している。一成分現像方式とは、トナーに電荷を付与するためのキャリア(磁性粒子)を用いずに、そのトナー自身に適切な帯電量を付与する方式である。これに対し、二成分現像方式とは、キャリアとトナーとを混合することにより、キャリアとトナーとの摩擦を利用してトナーに適切な帯電量を付与する方式である。
この実施の形態では、捺染トナーは、キャリアを用いない一成分現像方式の現像剤である。但し、捺染トナーとキャリアとを用いる二成分現像方式の現像剤を使用してもよい。
捺染トナーに用いられる染料(捺染染料)は、通常のカラートナーに用いられる染料あるいは顔料とは特性が異なる。具体的には、熱および圧力を加えることで、捺染トナーに含まれる捺染染料が気化する昇華性を有している。
印刷用紙等の印刷媒体Pに形成された捺染トナー画像は、Tシャツ等の布地である被捺染媒体Lに重ね合わせてアイロンなどで加熱することにより、捺染染料が昇華して被捺染媒体Lに移行し、被捺染媒体Lにトナー画像が転写される。これを、昇華転写という。
図1に示した例では、印刷媒体Pの搬送方向に沿って、マゼンタ、イエロー、ブラックおよびシアンのプロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cの順に配列されている。この順は、捺染トナーに含まれる捺染染料の昇華性の高い順である。捺染染料の昇華性は、捺染トナーの重量変化開始温度(重量減少開始温度)あるいは昇温速度(昇華転写効率の温度変化率)によって表されるが、これらについて後述する。
<制御系>
次に、画像形成装置1の制御系について説明する。図2は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。画像形成装置1は、装置全体の動作を制御する制御装置101と、I/F(インタフェース)制御部102と、受信メモリ103と、画像データ編集メモリ104と、操作パネル105と、センサ群106とを備える。
制御装置101は、例えば、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等を有する。制御装置101は、例えば、パーソナルコンピュータ等の上位装置からI/F制御部102を介して印刷データおよび制御コマンドを受信し、画像形成装置1の印刷動作(画像形成)のための制御を行う。
I/F制御部102は、画像形成装置1の情報(プリンタ情報)を上位装置に送信すると共に、上位装置から受信したコマンドを解析し、また、上位装置から受信したデータを処理する。
受信メモリ103は、I/F制御部102を介して上位装置から入力された印刷データを、色毎に一時的に格納する。画像データ編集メモリ104は、受信メモリ103に一時的に格納された印刷データをイメージデータとして編集し、格納する。
操作パネル105は、画像形成装置1の状態を表示するための表示部(例えばLED表示部)と、操作者が画像形成装置1に対する指示を入力する操作部とを有し、例えばタッチパネルとして構成される。なお、表示部と操作部とを別々に設けてもよい。
センサ群106は、画像形成装置1の動作状態を監視するための各種センサ、例えば、印刷媒体Pの搬送位置を検知する複数の媒体位置センサ(走行センサ)、温度センサ、湿度センサ、および、濃度測定用の濃度センサ等を含む。センサ群106の出力は、制御装置101に入力される。
画像形成装置1は、さらに、電源制御部110と、ヘッド制御部116と、駆動制御部117と、ベルト駆動制御部118と、定着制御部119と、給紙搬送制御部120とを有する。
電源制御部110は、制御装置101の指示に基づき、帯電電圧電源111と、現像電圧電源112と、供給電圧電源113と、ブレード電圧電源114と、転写電圧電源115とを制御する。
帯電電圧電源111は、帯電ローラ12に帯電電圧を印加する。現像電圧電源112は、現像ローラ14に現像電圧を印加する。供給電圧電源113は、供給ローラ15に供給電圧を印加する。ブレード電圧電源114は、現像ブレード16にブレード電圧を印加する。転写電圧電源115は、転写ローラ61に転写電圧を印加する。
ヘッド制御部116は、制御装置101の指示に基づき、画像データ編集メモリ104に記録された各色のイメージデータに基づき、感光体ドラム11の表面を露光するために印刷ヘッド13を発光させる。
駆動制御部117は、制御装置101の指示に基づき、プロセスユニット10の駆動源である駆動モータ19を駆動制御する。駆動モータ19の駆動力は、感光体ドラム11と、現像ローラ14と、供給ローラ15とに伝達される。また、帯電ローラ12は、感光体ドラム11の回転に追従して回転する。
ベルト駆動制御部118は、制御装置101の指示に基づき、ベルト駆動ローラ63を回転させるベルトモータ65を駆動制御する。
定着制御部119は、制御装置101の指示および定着装置7に設けられたサーミスタ75の検出温度に基づき、定着ローラ72に内蔵された発熱体74をオンオフ制御し、定着ローラ72の表面温度を一定温度に保つ。定着制御部119は、また、定着ローラ72を回転させる定着モータ76を駆動制御する。なお、定着モータ76の回転は、排出ローラ対81,82にも伝達される。
給紙搬送制御部120は、制御装置101の指示に基づき、ピックアップローラ51、フィードローラ52およびリタードローラ53を回転させる給紙モータ56と、レジストローラ対54および搬送ローラ対55を回転させる搬送モータ57と、これらの動力伝達のための各クラッチを制御する。
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置1の動作について、図1および図2を参照して説明する。画像形成装置1の制御装置101は、上位装置からI/F制御部102を介して印刷コマンドと印刷データを受信すると、印刷動作(画像形成)を開始する。制御装置101は、受信メモリ103に印刷データを一時的に格納し、格納した印刷データを編集処理してイメージデータを生成し、画像データ編集メモリ104に記録する。
制御装置101は、また、給紙搬送制御部120により給紙モータ56を駆動する。これにより、ピックアップローラ51が回転して給紙トレイ50から印刷媒体Pを繰り出し、フィードローラ52およびリタードローラ53が回転して印刷媒体Pを搬送路F1に送り出す。さらに、搬送モータ57によりレジストローラ対54が所定のタイミングで回転を開始して、印刷媒体Pのスキューを矯正しながら搬送し、搬送ローラ対55が印刷媒体Pを搬送路F1に沿って転写ベルト62まで搬送する。
転写ベルト62は、ベルト駆動ローラ63の回転によって走行し、印刷媒体Pを吸着保持して、プロセスユニット10M,10Y,10K,10Cの順に搬送する。
制御装置101は、各プロセスユニット10において、各色のトナー像の形成を行う。すなわち、帯電電圧電源111、現像電圧電源112、供給電圧電源113およびブレード電圧電源114により、帯電ローラ12、現像ローラ14、供給ローラ15および現像ブレード16に、帯電電圧、現像電圧、供給電圧およびブレード電圧をそれぞれ印加する。
制御装置101は、また、駆動制御部117により駆動モータ19を駆動し、感光体ドラム11を回転させる。感光体ドラム11の回転に伴って、帯電ローラ12、現像ローラ14および供給ローラ15も回転する。帯電ローラ12は、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。
制御装置101は、さらに、画像データ編集メモリ104に記録されているイメージデータに基づき、ヘッド制御部116を発光制御する。ヘッド制御部116は、印刷ヘッド13から感光体ドラム11の表面に光を照射し、静電潜像を形成する。
感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ14に付着したトナーによって現像され、感光体ドラム11の表面にトナー像が形成される。感光体ドラム11の回転により、トナー像が転写ベルト62の表面に接近すると、転写電圧電源115が転写ローラ61に転写電圧を印加する。これにより、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が、転写ベルト62上の印刷媒体Pに転写される。
このように、プロセスユニット10M,10Y,10K,10Cで形成された各色のトナー像が印刷媒体Pに順次転写され、互いに重ね合わされる。各色のトナー像が転写された印刷媒体Pは、転写ベルト62によってさらに搬送され、定着装置7に到達する。定着装置7では、印刷媒体Pは定着ベルト71と加圧ローラ73との間の定着ニップで加圧および加熱され、トナー像が印刷媒体Pに定着される。
トナー像が定着した印刷媒体Pは、排出ローラ対81,82より、画像形成装置1の外部に排出され、スタッカ部84上に積載される。これにより、印刷媒体Pへのカラー画像の形成が完了する。
<作用>
次に、第1の実施の形態の画像形成装置1の作用について説明する。マゼンタ、イエロー、ブラックおよびシアンのうち、複数色の捺染トナーを重ねて混色画像を形成する場合がある。例えば、ブルーの画像は、捺染マゼンタトナーで形成したマゼンタ画像と、捺染シアントナーで形成したシアン画像とを重ね合わせて得られる。
図3は、画像形成装置1によって印刷媒体P上に形成したブルーの画像(印刷画像)20を示す。画像形成装置1では、印刷媒体Pの搬送方向において、シアンのプロセスユニット10Cがマゼンタのプロセスユニット10Mよりも下流側に配置されている。そのため、印刷媒体Pには、先にマゼンタ画像20Mが転写され、そのマゼンタ画像20Mの上にシアン画像20Cが転写される。この状態で、マゼンタ画像20Mおよびシアン画像20Cが印刷媒体Pに定着し、印刷画像20となる。印刷媒体Pに印刷画像20が形成されたものを、着色媒体(または捺染媒体)2と称する。
図4は、印刷媒体Pから被捺染媒体Lへの捺染工程を示す図である。被捺染媒体Lは、例えば、Tシャツ等の布地であり、ここではポリエステル繊維で形成されている。捺染転写には、熱プレス機4を用いる。熱プレス機4は、アイロンプレス機またはヒートプレス機とも称される。
熱プレス機4は、上側に位置するアイロン上部41と、下側に位置するアイロン下部42とを有する。アイロン上部41は、アイロン下部42に面する平坦な加熱面41aを有する。アイロン上部41の内部には、加熱面41aを加熱する熱源43が組み込まれている。熱プレス機4では、加熱面41aの表面温度を所望の温度に保つように、熱源43の発熱量が制御される。
アイロン下部42は、アイロン上部41に面する載置面42aを有する。載置面42aは、布等の被捺染媒体Lが載置される平坦面である。
また、熱プレス機4は、アイロン上部41を、加熱面41aを載置面42aに対向させた状態で上下に変位させる変位機構を有する。これにより、アイロン上部41をアイロン下部42に押し付け、またアイロン上部41をアイロン下部42から引き離すことができる。熱プレス機4は、アイロン上部41をアイロン下部42に押し付ける際の圧力(加圧力)を設定できるように構成されている。
ここでは、熱プレス機4として、太陽精機株式会社製の「TP−608M」を用いる。また、捺染工程における熱プレス機4の加熱面41aの表面温度(すなわち加熱温度)および加熱時間を適宜変更する。
印刷媒体Pでは、上記の通り、シアン画像20Cがマゼンタ画像20Mの上に形成されている。そのため、印刷画像20が形成された印刷媒体P(すなわち着色媒体2)と被捺染媒体Lとを重ね合わせると、図3に示すように、シアン画像20Cが被捺染媒体L側に位置し、シアン画像20Cの上にマゼンタ画像20Mが位置する。
図5は、マゼンタ画像20Mおよびシアン画像20Cに含まれる各染料の昇華転写状態を模式的に示す図である。捺染マゼンタトナーの捺染マゼンタ染料と、捺染シアントナーの捺染シアン染料とを比較すると、捺染マゼンタ染料の昇華性が高く、捺染シアン染料の昇華性が低い。この昇華性の違いにより、捺染マゼンタ染料(図5に符号21Mで示す)は速やかに被捺染媒体Lに移行するが、捺染シアン染料(図5に符号21Cで示す)は遅れて被捺染媒体Lに移行する。
そのため、シアン画像20Cを被捺染媒体L側に形成することにより、捺染マゼンタ染料が被捺染媒体Lの内部に移行するのを捺染シアン染料によって遅らせることができる。その結果、被捺染媒体Lの表面には、捺染マゼンタ染料と捺染シアン染料とが概ね均等に残る。すなわち、被捺染媒体Lの表面でマゼンタおよびシアンの濃度低下が抑制される。これにより、印刷媒体P上の画像の配色と、被捺染媒体L上の画像の配色とを同等にし、色再現性を向上することができる。
この点について、比較例との対比によりさらに説明する。図6は、比較例の画像形成装置1Dの基本構成を示す図である。比較例の画像形成装置1Dは、印刷媒体Pの搬送方向に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのプロセスユニット10Bk,10Y,10C,10Mの順に配列されており、その他の点では、第1の実施の形態の画像形成装置1(図1)と同様に構成されている。
図7は、比較例の画像形成装置1で印刷媒体P上に形成したブルーの印刷画像20を示す図である。上記の通り、画像形成装置1では、印刷媒体Pの搬送方向において、マゼンタ画像20Mのプロセスユニット10Mがシアンのプロセスユニット10Cよりも下流側に配置されている。そのため、印刷媒体Pには、先にシアン画像20Cが転写され、その上にマゼンタ画像20Mが転写される。この状態で、シアン画像20Cおよびマゼンタ画像20Mが印刷媒体Pに定着し、印刷画像20となる。
図8は、比較例における印刷媒体Pから被捺染媒体Lへの捺染工程を示す図である。印刷媒体Pでは、上記の通り、マゼンタ画像20Mがシアン画像20Cの上に形成されている。そのため、印刷画像20が形成された印刷媒体P(すなわち着色媒体2)と被捺染媒体Lとを重ね合わせると、図8に示すように、マゼンタ画像20Mが被捺染媒体L側に位置し、マゼンタ画像20Mの上にシアン画像20Cが位置する。
図9は、比較例におけるマゼンタ画像20Mおよびシアン画像20Cに含まれる捺染染料の昇華転写状態を模式的に示す図である。マゼンタ画像20Mが被捺染媒体Lに近い側に位置するため、昇華性の高い捺染マゼンタ染料(符号21Mで示す)は速やかに被捺染媒体Lの内部まで移行するのに対し、昇華性の低い捺染シアン染料(符号21Cで示す)は遅れて被捺染媒体Lに移行する。その結果、被捺染媒体Lの表面において、マゼンタの濃度とシアンの濃度との差が大きくなり、印刷媒体P上の画像の配色と被捺染媒体L上の画像の配色との相違が大きくなる。すなわち、色再現性が低下する。
図10(A)〜(C)は、捺染染料の被捺染媒体Lへの移行状態を示す模式図である。昇華した捺染染料を、符号3で示す。捺染染料3は、熱を受けて昇華が始まり、図10(A)に示すように被捺染媒体Lの表面から移行を開始する。
図10(B)に示すように、時間の経過と共に、被捺染媒体Lの内部に捺染染料3が移行し、被捺染媒体Lの表面における捺染染料の量が増加する。
さらに時間が経過すると、図10(C)に示すように、捺染染料3が被捺染媒体Lのさらに内部(あるいは裏面)に移行し、被捺染媒体Lの表面における捺染染料の量は減少する。
図11(A)〜(D)は、比較例における捺染マゼンタ染料21Mおよび捺染シアン染料21Cの被捺染媒体Lへの移行状態を示す模式図である。図11(A)〜(D)では、昇華性の高い捺染マゼンタ染料21Mを小さい粒子として示し、昇華性の低い捺染シアン染料21Cを大きい粒子として示す。
比較例では、図11(A)に示すように、昇華性の高い捺染マゼンタ染料21Mが被捺染媒体Lに近い位置にあり、昇華性の低い捺染シアン染料21Cが被捺染媒体Lから遠い位置にある。
そのため、図11(B)および(C)に示すように、捺染マゼンタ染料21Mは被捺染媒体Lの内部に速やかに移行していくのに対し、捺染シアン染料21Cは被捺染媒体Lにゆっくり移行していく。
その結果、図11(D)に示すように、被捺染媒体Lの表面でシアンの濃度がある程度高くなった時点では、捺染マゼンタ染料21Mは被捺染媒体Lの内部まで入り込んでいる。すなわち、図10(C)を参照して説明したように、被捺染媒体Lの表面でマゼンタの濃度が低下した状態にある。
図12(A)〜(D)は、第1の実施の形態における捺染マゼンタ染料21Mおよび捺染シアン染料21Cの被捺染媒体Lへの移行状態を示す模式図である。第1の実施の形態では、図12(A)に示すように、昇華性の低い捺染シアン染料21Cが被捺染媒体Lに近い位置にあり、昇華性の高い捺染マゼンタ染料21Mが被捺染媒体Lから遠い位置にある。
そのため、図12(B)および(C)に示すように、捺染マゼンタ染料21Mが被捺染媒体Lの内部に移行するのを、捺染シアン染料21Cが遅れさせる。
その結果、図12(D)に示すように、被捺染媒体Lの表面でシアンの濃度がある程度高くなった時点でも、被捺染媒体Lの表面に捺染マゼンタ染料が多く残っており、マゼンタの濃度低下が抑制される。なお、捺染マゼンタ染料21Mは第1の捺染染料(第1の着色剤)に相当し、捺染シアン染料21Cは第2の捺染染料(第2の着色剤)に相当する。
このように、この第1の実施の形態では、昇華性の低い捺染シアントナー(捺染シアン染料21C)で形成されるシアン画像20Cを、昇華性の高い捺染マゼンタトナー(捺染マゼンタ染料21M)で形成されるマゼンタ画像20Mよりも被捺染媒体Lに近い側に位置させることにより、被捺染媒体Lの表面における各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
なお、ここでは、捺染マゼンタ染料と捺染シアン染料との組み合わせについて説明したが、印刷媒体P上で、昇華性の低い捺染染料を昇華性の高い捺染染料よりも上層に形成できれば、他の色の組み合わせでもよい。
特に、第1の実施の形態の画像形成装置1(図1)では、印刷媒体Pの搬送方向に、マゼンタ、イエロー、ブラック、シアンのプロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cが、捺染染料の昇華性の高い順に並んでいる。
そのため、例えば、捺染マゼンタトナーと捺染イエロートナーを用いてレッド(R)の画像を形成する場合には、印刷媒体P上で、捺染イエロートナーが捺染マゼンタトナーの上に形成される。これにより、被捺染媒体L上では、昇華性の低い捺染イエロートナーが被捺染媒体Lに近い側に位置し、昇華性の高い捺染マゼンタトナーが被捺染媒体Lから遠い側に位置する。従って、上述したシアンとマゼンタの場合と同様、各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
捺染イエロートナーと捺染シアントナーを用いてグリーン(G)の画像を形成する場合も、同様である。
<捺染トナーの昇華性>
次に、捺染トナーの昇華性の指標である熱特性について説明する。ここでは、熱示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用いて測定した、捺染染料の重量減少開始温度について説明する。
熱示差熱−熱重量同時測定装置としては、セイコーインスツルメンツ株式会社製「TG−DTA6200 EXSTAR6000」を用いた。捺染マゼンタトナー、捺染イエロートナー、捺染ブラックトナーおよび捺染シアントナーを、いずれも窒素雰囲気中に置き、25℃〜600℃の温度範囲で、昇温速度20℃/分で加熱した。
図13(A)は、捺染マゼンタトナーの重量変化を示すグラフである。縦軸は重量変化(すなわち常温での重量に対する相対重量)を示し、横軸は温度を示す。図13(B)は、図13(A)において重量変化があった部分(図中破線で示す)を拡大して示すグラフである。
同様に、図14(A),(B)は、捺染イエロートナーの重量変化を示すグラフである。図15(A),(B)は、捺染ブラックトナーの重量変化を示すグラフである。図16(A),(B)は、捺染シアントナーの重量変化を示すグラフである。
図13(B)において、重量変化開始前のベースラインを延長した延長線と、重量変化開始後の曲線に対する最大傾斜の接線との交点の温度を、捺染マゼンタトナーの重量減少開始温度(重量変化開始温度)とした。捺染マゼンタトナーの重量減少開始温度は、337.7℃であった。
同様に、図14(B)から、捺染イエロートナーの重量減少開始温度は、348.0℃であった。また、図15(B)から、捺染ブラックトナーの重量減少開始温度は、357.8℃であった。図16(B)から、捺染シアントナーの重量減少開始温度、359.3℃であった。
すなわち、重量減少開始温度が低い方から、マゼンタ、イエロー、ブラックおよびシアンの順となる。重量減少開始温度が低いほど昇華しやすいため、被捺染媒体Lを染め易い。一方、重量減少開始温度が高いほど昇華しにくいため、被捺染媒体Lを染めにくい。
次に、各捺染トナーを用いた印刷実験とその結果について説明する。印刷実験は、図1に示した画像形成装置1を用いて行った。具体的には、株式会社沖データ製のカラープリンタ「C841」を用いた。
図17は、印刷実験に用いた印刷パターンを示す図である。この印刷パターンは、印刷媒体Pの搬送方向(矢印Fで示す)に直交する方向に、ブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C),レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)およびプロセスブラック(PB)の8つのパターンを形成したものである。
ブラック(Bk)のパターン部分は、画像形成装置1のプロセスユニット10Bkによって形成し、イエロー(Y)のパターン部分は、プロセスユニット10Yによって形成し、マゼンタ(M)のパターン部分は、プロセスユニット10Mによって形成し、シアン(C)のパターン部分は、プロセスユニット10Cによって形成した。
また、レッド(R)のパターン部分は、プロセスユニット10M,10Yによって形成し、グリーン(G)のパターン部分は、プロセスユニット10Y,10Cによって形成し、ブルー(B)のパターン部分は、プロセスユニット10M,10Cによって形成し、プロセスブラック(PB)のパターン部分は、プロセスユニット10M、10Y,10Cによって形成した。
各色のパターン部分の印刷画像密度は、以下の通りである。印刷画像密度は、以下の式で定義する。
印刷画像密度=〔Cm(i)/(Cd×C0)〕×100
式(1)において、Cm(i)は、感光体ドラム11がCd回転する間に発光した印刷ヘッド13のドットの数である。COは、感光体ドラム11が1回転する間に発光可能な印刷ヘッド13のドット数である。Cd×C0は、感光体ドラム11がCd回転する間に発光可能な印刷ヘッド13のドット数である。
ブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)のパターン部分の印刷画像密度は、100%とした。レッド(R)、グリーン(G)およびブルー(B)のパターン部分の印刷画像密度は、200%(例えばレッドの場合、マゼンタとイエローの印刷画像密度が、それぞれ100%)とした。プロセスブラック(PB)のパターン部分の印刷画像密度は、240%(マゼンタ、イエローおよびシアンの印刷画像密度が、それぞれ80%)とした。
印刷媒体Pとしては、株式会社沖データ製の「エクセレントホワイトA4」(70kg紙、秤量80g/m2)を使用した。
また、後述する条件で測定した印刷媒体PのL*a*b*表色系におけるL*値、a*値、b*値を、それぞれL*(W)、a*(W)、b*(W)で表すと、
96.3≦L*(W)≦96,8、且つ、*
1.7≦a*(W)≦2.0、且つ、
−5.6≦b*(W)≦−5.2
であった。
画像形成装置1における印刷媒体Pの搬送速度は、200mm/秒とした。また、定着装置7における定着温度は、定着ベルト71のY方向中央部で155±5℃であり、加圧ローラ73のY方向中央部で135±5°Cであった。
このようにして形成した第1の実施の形態(図3)と比較例(図7)の印刷画像を、図4に示した熱プレス機4を用いて、被捺染媒体Lに捺染した。被捺染媒体Lとしては、ポリエステル布地のTシャツ(ノーブランド品)を用いた。熱プレス機4の加熱面41aの表面温度すなわち加熱温度は200℃とし、加熱時間を30秒から240秒まで8通りに変化させた。
また、熱プレス機4の加熱面41aと載置面42aとの間の圧力(すなわち加圧力)は、61.9g/cm2とした。この加圧力は、ニッタ株式会社製の圧力分布測定システム「PINCH」のセンサシートを、熱プレス機4の加熱面41aと載置面42aとの間に挿入し、加圧開始から30秒後に測定した値である。センサシートの挿入位置は、熱プレス機4の加熱面41aおよび載置面42aの中央部である。
被捺染媒体L上に捺染された画像のブルー部分の濃度を測定した。濃度測定位置は、図17に符号A7で示す位置に対応している。
濃度測定には、X−rite社製の分光濃度計 「X−Rite528」を用いた。分光濃度計「X−Rite528」の測定モードは「濃度測定モード」に設定し、ステータスは「ステータスI」に設定した。また、白色基準を「絶対白色基準」に設定し、「偏光フィルタ無し」を選択し、濃度測定前に白色校正板でキャリブレーションを行った。
なお、「ステータスI」は、評価する波長領域の設定であり、「ISO5−3“Photograpby and graphic technology−Density measurements−Part3:Spectralconditions」で規定されている。
濃度測定の際には、被捺染媒体Lの下に、黒色紙(黒色の紙媒体)を敷いた。黒色紙のL*a*b*表色系におけるL*値、a*値、b*値を、それぞれL*(Bk)、a*(Bk)、b*(Bk)と表すと、
25.1≦L*(Bk)≦25.9、
0.2≦a*(Bk)≦0.3、
0.5≦b*(Bk)≦0.7
を満足する黒色紙を使用した。具体的には、北越紀州製紙株式会社製の黒色紙「色上質紙黒」を使用した。
分光濃度計「X−Rite528」による画像濃度は、V値(Visua1 Value)、M値(Magenta Value)、Y値(Yellow Value)およびC値(Cyan Value)の4つの数値として得られる。
このようにして得られた画像のV値、Y値、M値およびC値を、画像濃度としての光学濃度(OD:Optical Density)と定義する。
図18には、比較例の転写画像におけるマゼンタとシアンの光学濃度(M値とC値)の測定結果と加熱時間との関係を示す。図19には、第1の実施の形態の転写画像におけるマゼンタとシアンの光学濃度(M値とC値)の測定結果と加熱時間との関係を示す。
図18および図19では、縦軸には光学濃度(OD値)を示し、横軸には加熱時間(秒)を示す。また、三角形のプロットはマゼンタの光学濃度(M値)を示し、四角形のプロットはシアンの光学濃度(C値)を示す。
図18および図19のいずれにおいても、マゼンタの光学濃度は、加熱時間が短いときには高く、加熱時間が長くなると共に低下する。一方、シアンの光学濃度は、加熱時間が短いときには低く、加熱時間が長くなると共に上昇する。これは、被捺染媒体に対する捺染マゼンタ染料の移行が速く、捺染シアン染料の移行が遅いためである。
比較例(図18)と第1の実施の形態(図19)とを比較すると、第1の実施の形態では比較例よりもマゼンタの光学濃度の低下が抑えられていることが分かる。特に、シアンの光学濃度が十分な濃度まで上昇する加熱時間Tを90秒とすると、この90秒時点でのマゼンタの光学濃度は、第1の実施の形態の方が比較例よりも高い。
これは、図12(A)〜(D)を参照して説明したように、捺染マゼンタ染料の被捺染媒体Lへの移行が、被捺染媒体Lに近い側に存在する捺染シアン染料によって遅れた結果、被捺染媒体Lの表面におけるマゼンタの光学濃度の低下が抑えられたことによる。
次に、捺染トナーの昇華速度について説明する。被捺染媒体Lへの各色の捺染トナーの昇華速度を評価するため、画像形成装置1(株式会社沖データ製のカラープリンタ「C841」)を用いて、図17に示した印刷パターンを印刷した。
画像形成装置1では、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)およびシアン(C)の印刷画像の濃度(上述した分光濃度計による)がいずれも1.40になるように、現像ローラ14に印加する現像電圧を設定し、印刷媒体P上の捺染トナー量を調整した。
その後、図4に示した熱プレス機4を用いて、加熱時間を60秒と一定にし、加熱温度を100℃、120℃、140℃、l60℃、180℃と変更し、ポリエステル布地のTシャツ(ノーブランド品)に画像を捺染した。加圧力は、上記の通り、61.9g/cm2とした。
その後、被捺染媒体Lに捺染された画像において、図17に示したA1,A2,A3,A4における濃度を測定し、各色の捺染染料の昇華転写効率を求めた。昇華転写効率(%)は、以下の(1)式により算出した。
昇華転写効率=(被捺染媒体L上の画像の光学濃度/印刷媒体P上の画像の光学濃度)×100 ・・・(1)
図20には、各色の捺染染料について、加熱温度毎に、被捺染媒体L上の画像の光学濃度と、印刷媒体P上の画像の光学濃度と、昇華転写効率とを示す表である。
図21は、各色の捺染染料について、昇華転写効率と加熱温度との関係を示すグラフである。縦軸は昇華転写効率を示し、横軸は加熱温度を示す。
図21において、各色の捺染染料の昇華転写効率を1次関数(y=ax+b)で近似し、1次関数の傾きaを求めた。傾きaが大きいほど、捺染トナーが被捺染媒体Lを染め易い、すなわち捺染トナーの昇華性が高いと言うことができる。逆に、傾きaが小さいほど、捺染トナーが被捺染媒体Lを染めにくい、すなわち昇華性が低いということができる。そのため、傾きaは、昇華速度(または昇華転写効率の温度変化率)と称する。
図21の結果から、捺染マゼンタトナーの昇華速度は0.8582(1/℃)であり、捺染イエロートナーの昇華速度は0.8492(1/℃)である。捺染ブラックトナーの昇華速度は0.6401(1/℃)であり、捺染シアントナーの昇華速度は0.5384(1/℃)である。すなわち、昇華速度が速い方から、マゼンタ、イエロー、ブラックおよびシアンの順となる。
図22には、以上のように求めた重量減少開始温度および昇華速度を、色毎に示す表である。図22に示すように、重量減少開始温度が低い順と昇華速度が速い順は同じであり、いずれもマゼンタ、イエロー、ブラックおよびシアンの順となる。
すなわち、捺染トナーの重量現象開始温度が低く、昇華速度が速いほど、捺染トナーに含まる捺染染料の昇華性が高いということができる。逆に、捺染トナーの重量現象開始温度が高く、昇華速度が遅いほど、捺染トナーに含まる捺染染料の昇華性が低いということができる。
<実施の形態の効果>
以上説明したように、第1の実施の形態の画像形成装置1は、捺染マゼンタ染料を含む捺染マゼンタトナー(第1の捺染色材)を有してマゼンタ画像(第1の画像)を形成するプロセスユニット10M(第1の画像形成部)と、捺染マゼンタ染料よりも昇華性が低い捺染シアン染料を含む捺染シアントナー(第2の捺染色材)を有してシアン画像(第2の画像)を形成するプロセスユニット10C(第2の画像形成部)とを有する。印刷媒体P上でマゼンタ画像とシアン画像とを重ねて形成するときには、マゼンタ画像上にシアン画像を形成する。そのため、被捺染媒体Lへの捺染時には、シアン画像が被捺染媒体Lに近い側に位置する。これにより、昇華性の高い捺染マゼンタ染料の被捺染媒体Lへの移行が、昇華性の低い捺染シアン染料によって遅らされる。従って、被捺染媒体L上での各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
印刷媒体P上でマゼンタ画像とイエロー画像とを重ねて形成する場合、あるいは印刷媒体Pでイエロー画像とシアン画像とを重ねて形成する場合も、同様である。
また、捺染ブラックトナーを、画像の色を調整する目的で、他色の捺染トナーと組み合わせる場合もある。この場合も、印刷媒体P上で、捺染ブラック染料よりも昇華性の低い捺染染料を含む捺染トナーにより形成される画像(例えば、ブラック画像とマゼンタ画像の場合には、ブラック画像)を上層に形成すれば、上述したように捺染時の色再現性を向上することができる。
特に、第1の実施の形態の画像形成装置1では、プロセスユニット10M,10Y,10Bk,10Cが、印刷媒体Pの搬送方向に沿って、昇華性が高い順(重量減少開始温度が低い順、昇華速度が速い順)に配列されている。そのため、複数色のどの組み合わせにおいても、印刷媒体P上では、昇華性の低い捺染トナーが上層に位置する。そのため、被捺染媒体上での各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
なお、ここでは、2色の捺染トナー(例えば、捺染マゼンタトナーと捺染シアントナー)を組み合わせる場合について説明した。しかしながら、3色以上の捺染トナーを組み合わせてもよい。
例えば、図23に示す例では、捺染マゼンタトナー、捺染イエロートナー、捺染シアントナーを用いて、印刷媒体P上に、マゼンタ画像20M,イエロー画像20Yおよびシアン画像20Cを順に形成している。シアン画像20Cは最上層(最上部)に位置する。
捺染工程では、図24に示すように、シアン画像20C、イエロー画像20Yおよびマゼンタ画像20Mが被捺染媒体Lに順に転写され、プロセスブラック(PB)の画像が得られる。シアン画像20Cが最も被捺染媒体Lの近くに位置し、シアン画像20Cの上にイエロー画像20Yが位置し、その上にマゼンタ画像20Mが位置する。
上記の通り、捺染イエロー染料(第3の捺染染料:第3の着色剤)は、捺染マゼンタ染料よりも昇華性が低く、捺染シアン染料よりも昇華性が高い。シアン画像20Cが最も被捺染媒体Lの近くに位置するため、捺染シアン染料が、捺染マゼンタ染料および捺染イエロー染料の被捺染媒体Lの内部への移行を遅らせる。そのため、被捺染媒体Lの表面における各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
すなわち、3色以上の捺染トナーを用いて画像を形成する場合には、印刷媒体P上で、最も昇華性の低い捺染トナーによって形成される画像を最上層に形成すればよい。
第1の変形例.
図25は、第1の実施の形態の第1の変形例の画像形成装置1Aを示す図である。第1の変形例では、印刷媒体Pの搬送方向に沿って、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンのプロセスユニット10Bk,10Y,10M,10Cが順に配列されている。
昇華性が最も低いシアンのプロセスユニット10Cが、プロセスユニット10Bk,10Y,10M,10Cの最下流に配置されている。そのため、捺染シアントナーとそれ以外の色の捺染トナーとを組み合わせて画像(例えばブルー、グリーン等)を形成する場合には、印刷媒体P上でシアン画像が最上層に形成される。そのため、被捺染媒体Lの表面における各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
一方、捺染シアンを用いずに画像を形成する場合、例えば捺染マゼンタトナーと捺染イエロートナーを用いてレッドの画像を形成する場合には、印刷媒体P上にマゼンタ画像を形成したのち、上述した再搬送機構9を利用した重ね印刷(印刷媒体Pを反転させず、同一面に画像を重ねて形成する印刷モード)により、マゼンタ画像の上にイエロー画像を重ねて形成すればよい。
この第1の変形例の画像形成装置1Aでは、ブラックのプロセスユニット10Bkが最上流に配置されている。ブラックのプロセスユニット10Bkは使用頻度が高いため、モノクロ印刷時にはブラック以外のプロセスユニット10Y,10M,10Cを転写ユニット6から離間させる離間機構を設ける場合がある。この第1の変形例のようにブラックのプロセスユニット10Bkが最上流(または最下流)に配置されている方が、離間機構の構成が容易になるというメリットがある。
第2の変形例.
図26は、第1の実施の形態の第2の変形例の画像形成装置1Bを示す図である。第2の変形例では、印刷媒体Pの搬送方向に沿って、ブラック、マゼンタ、イエローおよびシアンのプロセスユニット10Bk,10M,10Y,10Cが順に配列されている。
この第2の変形例の画像形成装置1Bでは、第1の実施の形態の画像形成装置1と同様、昇華性が最も低いシアンのプロセスユニット10Cが、プロセスユニット10Bk,10Y,10M,10Cの最下流に配置されている。そのため、捺染シアントナーとそれ以外の色の捺染トナーとを組み合わせて画像(例えばブルー、グリーン等)を形成する場合には、シアン画像が最上層に形成される。そのため、被捺染媒体Lの表面における各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
また、この第2の変形例の画像形成装置1Bでは、ブラックのプロセスユニット10Bkを除き、マゼンタ、イエローおよびシアンのプロセスユニット10M,10Y,10Cが、昇華性の高い順に配列されている。そのため、捺染マゼンタトナー、捺染イエロートナーおよび捺染シアントナーのうちの2以上を組み合わせる場合には、印刷媒体P上で、最も昇華性の低い捺染トナーが最上層に位置する。そのため、被捺染媒体Lの表面における各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
上述した第1の実施の形態および変形例では、捺染トナーについて説明したが、捺染染料、捺染顔料、または熱拡散性染料を含むインクを用いてもよい。すなわち、印刷媒体P上に、捺染染料または捺染顔料を含むインク(色材)で形成した画像を、被捺染媒体に捺染してもよい。
第3の変形例.
図27は、第1の実施の形態の第3の変形例の画像形成装置1Cを示す図である。上述した第1の実施の形態では、感光体ドラム11上のトナー像を印刷媒体Pに直接転写する直接転写方式の画像形成装置1(図1)について説明した。これに対し、第3の変形例の画像形成装置1Cは、中間転写体としての中間転写ベルト62Aを用いて、印刷媒体Pに画像を転写する中間転写方式である。
画像形成装置1Cは、印刷媒体Pを供給する媒体供給部5と、トナー像を形成する画像形成部100と、画像形成部100で形成したトナー像を中間転写ベルト62Aを介して印刷媒体Pに転写する中間転写ユニット6Aと、トナー像を印刷媒体Pに定着する定着装置7と、印刷媒体Pを排出する媒体排出部8とを備える。
媒体供給部5は、実施の形態1で説明した給紙トレイ50と、ピックアップローラ51と、フィードローラ52と、リタードローラ53と、レジストローラ対54とを有する。また、実施の形態1で説明した1対の搬送ローラ対55に代えて、2対の搬送ローラ対58,59を有する。
画像形成部100は、シアン、ブラック、イエローおよびマゼンタの捺染トナー(捺染色材:現像剤)によりトナー像を形成する画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット10C,10Bk,10Y,10Mを有する。プロセスユニット10C,10Bk,10Y,10Mは、中間転写ベルト62Aの移動方向(図27の左から右)に沿って、この順に配列されている。
プロセスユニット10C,10Bk,10Y,10Mの個々の構成は、実施の形態1で説明したとおりである。
中間転写ユニット6Aは、無端状の中間転写ベルト62Aを有する。中間転写ユニット6Aは、また、中間転写ベルト62Aが掛け渡されたベルト駆動ローラ63、アイドルローラ64、2次転写バックアップローラ68およびガイドローラ69を有する。ベルト駆動ローラ63およびアイドルローラ64は、実施の形態1で説明した通りである。
中間転写ベルト62Aの外側には、2次転写バックアップローラ68との間で中間転写ベルト62Aを挟み込むように、2次転写ローラ67が設けられている。2次転写ローラ67と2次転写バックアップローラ68とで、2次転写部66が構成される。
定着装置7は、印刷媒体Pの搬送方向において、2次転写部66の下流側に配置されている。定着装置7は、定着ローラ72と、定着ローラ72に押圧される加圧ローラ73とを有する。定着ローラ72および加圧ローラ73は、印刷媒体Pに転写されたトナー像に熱と圧力を加え、印刷媒体Pに定着する。図1に示した定着ベルト71を備えてもよい。
媒体排出部8は、印刷媒体Pの搬送方向において定着装置7の下流側に配置され、3対のローラ対である排出ローラ対81,82,83を備える。排出ローラ対81,82,83は、定着装置7から送り出された印刷媒体Pを排出搬送路F3に沿って搬送し、画像形成装置1の外部に排出する。画像形成装置1の上部には、排出された媒体を積載するスタッカ部84が設けられている。
画像形成装置1Cでは、印刷動作が開始されると、ピックアップローラ51が回転して給紙トレイ50から印刷媒体Pを繰り出し、フィードローラ52およびリタードローラ53が回転して印刷媒体Pを搬送路に送り出す。さらに、レジストローラ対54が所定のタイミングで回転を開始して、印刷媒体Pのスキューを矯正しながら搬送し、搬送ローラ対58,59が印刷媒体Pを2次転写部66に向けて搬送する。
また、ベルト駆動ローラ63の回転によって、中間転写ベルト62Aが図中矢印Bで示す方向に走行する。各プロセスユニット10では、各色のトナー像の形成が行われる。感光体ドラム11に形成されたトナー像は、転写ローラ61(1次転写ローラ)により、中間転写ベルト62Aに1次転写される。
中間転写ベルト62A上のトナー像と、搬送ローラ対58,59によって搬送される印刷媒体Pは、同時に2次転写部66に到達する。2次転写部66には2次転写電圧が印加され、中間転写ベルト62A上のトナー像が印刷媒体Pに2次転写される。
2次転写部66でトナー像が2次転写された印刷媒体Pは、定着装置7に搬送される。定着装置7では、印刷媒体Pは定着ローラ72と加圧ローラ73との間の定着ニップで加圧および加熱され、トナー像が印刷媒体Pに定着される。
トナー像が定着した印刷媒体Pは、排出ローラ対81,82,83により、画像形成装置1の外部に排出され、スタッカ部84上に積載される。これにより、印刷媒体Pへのカラー画像の形成が完了する。
画像形成装置1Cのプロセスユニット10C,10Bk,10Y,10Mは、中間転写ベルト62Aの移動方向に、捺染染料の昇華性の低い順に配列されている。そのため、例えばマゼンタ画像とシアン画像とを重ねて形成する場合には、中間転写ベルト62A上で、捺染トナーの昇華性の低いシアン画像がマゼンタ画像の下に形成される。
そのため、2次転写部66でトナー像が印刷媒体Pに転写されると、捺染トナーの昇華性の低いシアン画像がマゼンタ画像の上に形成される。これにより、実施の形態1と同様に捺染工程を行うことができる。マゼンタ画像とイエロー画像とを重ねて形成する場合、あるいはイエロー画像とシアン画像とを重ねて形成する場合も、同様である。
ここでは、プロセスユニット10C,10Bk,10Y,10Mは、中間転写ベルト62Aの移動方向に、捺染染料の昇華性の低い順に配列されている。しかしながら、上述した第1の変形例(図25)および第2の変形例(図26)のように、ブラックのプロセスユニット10Bkを配列方向の端部に配置してもよい。
この第3の変形例の画像形成装置1Cでは、マゼンタ画像とシアン画像とを重ねて形成するときには、中間転写ベルト62A上でシアン画像をマゼンタ画像よりも下に形成する。そのため、中間転写ベルト62Aから印刷媒体Pに画像を転写すると、マゼンタ画像上にシアン画像が位置し、被捺染媒体Lへの捺染時には、シアン画像が被捺染媒体Lに近い側に位置する。これにより、実施の形態1と同様に、被捺染媒体L上での各色の濃度低下を抑制し、色再現性を向上することができる。
以上、本発明の各実施の形態および変形例について説明したが、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形または改変が可能である。
本発明は、電子写真方式を利用して媒体に画像を形成する画像形成装置(例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ、複合機等)に利用することができる。