JP7035711B2 - 金属板、セパレータ、セル、および燃料電池 - Google Patents

金属板、セパレータ、セル、および燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、金属板、この金属板を備えるセパレータ、このセパレータを備えたセル、およびこのセルを備える燃料電池に関する。
導電性に優れた金属材料の用途として、電池の集電体がある。燃料電池用途では、このような金属材料は、セパレータとして利用される。たとえば、固体高分子形燃料電池では、固体高分子電解質膜を挟むように、1対のセパレータが配置される。セパレータは、燃料電池で発生した電流を集めて取り出す集電体としての機能を有する。
1対のセパレータの一方には、固体高分子電解質膜に対向する面に、燃料ガスを流すための流路としての溝が形成されている。また、1対のセパレータの他方には、固体高分子電解質膜に対向する面に、酸化性ガスを流すための流路としての溝が形成されている。セパレータにおいて、溝が形成された面には、ガス拡散層(GDL;Gas Diffusion Layer)が重ねられる。セパレータの溝を流れる燃料ガスまたは酸化性ガスは、ガス拡散層に供給される。燃料電池では、燃料ガスおよび酸化性ガスの反応により発電する。以下、燃料ガスと酸化性ガスとを総称して、「反応ガス」という。
溝に垂直なセパレータの断面において、溝の断面積が大きいほど、反応ガスを多く流すことができる。この場合、燃料ガスおよび酸化性ガスの反応量が多くなり、燃料電池から取り出すことができる電流が大きくなる。しかし、セパレータにおいて、溝の幅を大きくすることにより溝の断面積を増やすと、ガス拡散層に接触する部分(以下、「GDL接触部」という。)の面積は小さくなる。この場合、セルとしての電気抵抗が高くなる。このため、発電量が増えても、電導時のジュール熱として損失が生じる。
溝を深く形成すれば、GDL接触部の面積を小さくすることなく、溝の断面積を増やすことができる。しかし、この場合、セパレータの厚さが増大し、燃料電池の体積が増大する。その結果、燃料電池の容積あたりの発電量は低下してしまう。
GDL接触部は、電気を取り出すための領域である。GDL接触部に供給される反応ガスの量は、溝に供給される反応ガスの量よりも少ない。その結果、局所的な発電量は、GDL接触部では溝に比して少ない。一方、溝では、反応ガスの供給量が多いため、効率的な発電が生じる。しかし、溝では電気を取り出すことができない。このように、セパレータにおいて、発電部と通電部とは分離している。この分離の大きさは、溝のピッチ程度であり、セパレータの板厚に比してかなり大きい。このため、燃料電池の発電効率を十分に高くすることはできなかった。
このような課題に対して、特許文献1では、反応ガスの流れを調整することが試みられている。その手段として、セパレータには、凹凸部が連続的に形成されたコレクタが備えられている。凹凸部により、反応ガスを三次元的に拡散させ、発電部および通電部それぞれで反応ガスの拡散むらが生じることを抑制できる。
特許文献2には、セパレータの溝の側面に微細溝を形成することが開示されている。このセパレータでは、微細溝での毛細管現象により、微細溝を介して、水素と酸素との反応により生じた水が外部に排出される。
特許文献3には、セパレータ基板上にガス流路リブが形成された、燃料電池用セパレータが開示されている。ガス流路リブは、カーボンナノウォールを気相成長させて得られる。燃料電池内で、ガス流路リブの上端(セパレータ基板とは反対側の端部)は、ガス拡散層に接触する。すなわち、ガス流路リブの上端は、GDL接触部として機能する。
特開2009-21022号公報 特開2010-238645号公報 特開2006-120621号公報
神戸製鋼技報、Vol.65、No.2、p.21-24 (2015)
しかし、特許文献1のセパレータでは、発電部と通電部との距離は、部材の厚さに比して著しく大きくなる。たとえば、セパレータの厚さが0.1mm程度であるとすると、発電部と通電部との距離は、少なくとも1mmオーダーとなる。また、特許文献2のセパレータの微細溝は、水を排出するための構造である。このため、特許文献1および2のセパレータは、通電部と発電部の分離を小さくする方法とはならない。
特許文献3のセパレータを製造する際、カーボンナノウォールはセパレータ基板に対してほぼ垂直に成長する。このため、隣接した2つのガス流路リブの間を流れる燃料ガスまたは酸化性ガスは、ガス流路リブ内には導入されにくい。したがって、ガス流路リブの形成領域内では発電は生じ難い。また、カーボンナノウォールに形成された微細孔の多くは、ガス流路リブを厚さ方向に貫通してセパレータ基板に到達している。したがって、燃料電池内の腐食環境に対して、ガス流路リブによってはセパレータ基板を保護することはできない。このため、このセパレータの耐食性は低い。さらに、カーボンナノウォールは、セパレータ基板にほぼ垂直な壁状の構造物であるので、電流を取り出すための頂部の面積は小さい。このため、カーボンナノウォールのガス拡散層に対する接触抵抗は大きく、電流を取り出す効率が低い。
そこで、本発明の目的は、燃料電池のセパレータに用いたときに、セルおよび燃料電池の発電効率を向上させることができる金属板を提供することである。本発明の他の目的は、セルおよび燃料電池の発電効率を向上させることができるセパレータを提供することである。本発明のさらに他の目的は、発電効率が向上されたセルおよび燃料電池を提供することである。
本発明の実施形態の金属板は、
金属からなる基材と、
前記基材の表面の少なくとも一部に設けられ、導電性を有し、多孔質である炭素層と、
を備えた金属板であって、
前記炭素層の厚さが、0.01μm以上5μm以下であり、
下記式(1)で定義されるR値が3.5以上である、金属板。
R=(S2-X)/(S1-X) …(1)
ただし、S1は、前記金属板の見かけの表面積であり、S2は、BET法により測定された前記金属板の表面積である実表面積であり、Xは、前記金属板の表面において前記炭素層が形成されていない領域の見かけの表面積である。
本発明の実施形態の、燃料電池用のセパレータは、
前記金属板を備え、
前記金属板が、相互に隣接する凸条および溝を備え、
前記炭素層は、前記凸条の頂面に形成されている。
本発明の実施形態の、燃料電池のセルは、
前記セパレータと、
前記凸条の頂面に接触するガス拡散層と、
を備える。
本発明の実施形態の燃料電池は、前記セルを備える。
本発明の金属板は、燃料電池のセパレータに用いたときに、セルおよび燃料電池の発電効率を向上させることができる。本発明のセパレータは、セルおよび燃料電池の発電効率を向上させることができる。本発明のセルおよび燃料電池は、発電効率が向上されている。
図1Aは、本発明の一実施形態に係るセパレータを含む固体高分子形燃料電池の斜視図である。 図1Bは、燃料電池のセル(単セル)の分解斜視図である。 図2は、金属板の断面図である。 図3は、本発明例12の金属板表面のSEM像である。 図4は、試料の接触抵抗を測定する装置の構成を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明で、特に断りがない限り、化学組成について、「%」は質量%を意味する。
[燃料電池およびセル]
図1Aは、本発明の一実施形態に係るセパレータを含む固体高分子形燃料電池の斜視図である。図1Bは、固体高分子形燃料電池のセル(単セル)の分解斜視図である。図1Aおよび図1Bに示すように、固体高分子形燃料電池(以下、単に「燃料電池」という。)1は単セルの集合体である。燃料電池1において、複数のセルが積層され直列に接続されている。
図1Bに示すように、単セルでは、固体高分子電解質膜2の一面および他面に、それぞれ、燃料電極膜(アノード)3、および酸化剤電極膜(カソード)4が積層されている。そして、この積層体の両面にそれぞれセパレータ5a、5bが重ねられている。図1Bでは、セパレータ5a、5bの周縁部は図示を省略している。
固体高分子電解質膜2を構成する代表的な材料として、水素イオン(プロトン)交換基を有するふっ素系イオン交換樹脂膜がある。燃料電極膜3および酸化剤電極膜4は、カーボンシートからなるガス拡散層と、ガス拡散層の固体高分子電解質膜2側の表面に接するように設けられた触媒層とを備えている。カーボンシートは、カーボン繊維から構成される。カーボンシートとしては、カーボンペーパ、またはカーボンクロスが用いられる。触媒層は、粒子状の白金触媒と、触媒担持用カーボンと、水素イオン(プロトン)交換基を有するふっ素樹脂とを有する。固体高分子電解質膜2、燃料電極膜3、および酸化剤電極膜4は、これらが貼り合わされた一体的な構成部材であるMEA(Membrane Electrode Assembly)として用いられることがある。
セパレータ5aは、固体高分子電解質膜2に対向する面(以下、「対向面」という。)に、凸条の頂部としてのガス拡散層接触部(以下、「GDL接触部」という。)7aと、GDL接触部7aに隣接する溝6aとを有する。GDL接触部7aは、燃料電極膜3のガス拡散層に接触する。溝6aには、燃料ガス(水素または水素含有ガス)G1が流される。これにより、燃料電極膜3のガス拡散層に燃料ガスG1が供給される。燃料電極膜3では、燃料ガスG1はガス拡散層を透過して触媒層に至る。
セパレータ5bは、対向面に、凸条の頂部としてのGDL接触部7bと、GDL接触部7bに隣接する溝6bとを有する。GDL接触部7bは、酸化剤電極膜4のガス拡散層に接触する。溝6bには、空気等の酸化性ガスG2が流される。これにより、酸化剤電極膜4のガス拡散層に酸化性ガスG2が供給される。酸化剤電極膜4では、酸化性ガスG2はガス拡散層を透過して触媒層に至る。
燃料ガスG1と酸化性ガスG2とにより、電気化学反応が生じて、燃料電極膜3と酸化剤電極膜4との間に、直流電圧が発生する。
固体高分子電解質膜2とセパレータ5bとの間では、水素イオンと酸素イオンとの反応により、水が生成する。セパレータ5bに形成された溝6bは、生成した水を外部に排出する流路としても機能する。
[金属板]
セパレータ5a、5bは、以下に説明する金属板を含む。図2は、金属板の断面図である。金属板8は、基材9と、基材9の表面に設けられた炭素層10とを含む。基材9は板状である。図2には、基材9の厚さ方向に沿う断面を示している。この実施形態では、炭素層10は、基材9の両面に、実質的に全面に渡って形成されている。炭素層10は、基材9の端面には形成されていない。基材9の上には、酸化皮膜等、金属以外の元素と基材を構成する金属との化合物層が形成されていてもよい。この場合、「基材の表面」とは、その化合物層の表面を意味する。
〈基材〉
基材9は、金属からなる。基材9を構成する金属は、高い導電性、燃料電池内の腐食環境に耐えうる耐食性、およびプレス加工により流路形状に成形できる加工性を有し、安価で入手が容易であることが好ましい。このような金属として、たとえば、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、Ni基合金、Co基合金、およびアルミニウム合金を挙げることができる。これらのうち、純チタン、チタン合金、およびステンレス鋼は、上記の要件を十分に満たすので、好ましい。耐食性が高い点で、純チタン、およびチタン合金が特に好ましい。
ここで、「純チタン」とは、98.8%以上のTiを含有し、残部が不純物からなる金属材を意味する。純チタンとして、たとえば、JIS1種~JIS4種の純チタンを用いることができる。これらのうち、JIS1種およびJIS2種の純チタンは、経済性に優れ、加工しやすいという利点を有する。「チタン合金」とは、70%以上のTiを含有し、残部が合金元素と不純物元素とからなる金属材を意味する。チタン合金は、80%以上のTiを含有することが好ましい。チタン合金として、たとえば、耐食用途のJIS11種、13種、もしくは17種、または高強度用途のJIS60種を用いることができる。
〈炭素層〉
炭素層10は、導電性を有する。炭素層10を構成する炭素は、グラファイト構造を有することが好ましい。この場合、ラマン分光分析で、Gバンドのピークを検出可能である。ここで、「検出可能」とは、ラマンスペクトルにおいてノイズの大きさに対するピーク強度の比が1以上であることをいう。また、Gバンドのピークとは、グラファイトに起因して観測され、1590cm-1(1.59×10-1)付近に現れるピークである。
炭素層10の厚さは、0.01μm以上5μm以下である。炭素層10の厚さが0.01μm以上であることにより、所定の比表面積(後述)を有する金属板8を得やすい。このような効果を十分に奏するために、炭素層10の厚さは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。一方、炭素層10は、基材9に比して導電性が低い。このため、炭素層10の厚さが5μmを超えると、炭素層10の厚さ方向の抵抗値が無視できない程度に高くなる。炭素層10の厚さが5μm以下であることにより、炭素層10の厚さ方向の抵抗値を低く保つことができる。このような効果を十分に奏するために、炭素層10の厚さは、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
炭素層10は、多孔質である。また、炭素層10に形成された孔は、炭素層10をその厚さ方向に貫通しておらず、炭素層10の表面に開口する孔は基材9には到達していない。このため、燃料電池内の腐食環境に対して、炭素層10により基材9を保護することができる。すなわち、炭素層10により、金属板8の耐食性は向上されている。
基材9の上に形成された炭素層10について、炭素層10の表面に開口する孔が基材9に到達していないことを直接的に確認することは困難である。しかし、炭素層10が多孔性を有することが確認され、さらに、金属板8の耐食性が確保できていることが確認されれば、炭素層10の表面に開口するいずれの孔も、実質的に基材9に到達していないといえる。炭素層10の多孔性については、たとえば、BET法により測定した比表面積が一定値以上であり、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)により炭素層10の表面に微細孔が開口していることが確認されれば、炭素層10は多孔性を有すると判断することができる。
耐食性は、金属板8を腐食環境に晒す前後の接触抵抗の比により評価することができる。炭素層10を厚さ方向に貫通し基材9に到達している孔(以下、「貫通孔」という。)が形成されていると、腐食環境で基材9を構成する成分が溶解し、炭素層10の表面上で絶縁性酸化物として析出して、接触抵抗を上昇させるからである。耐食性試験を行うことによる接触抵抗の上昇率が50%以下であれば、炭素層10には、貫通孔は形成されていないものとする。この上昇率が50%を超えれば、炭素層10には、貫通孔が形成されているものとする。
耐食性試験は、金属板8を、90℃、pH2のHSO水溶液に96時間浸漬することにより行うものとする。基材9表面に炭素層10が形成されていない部分がある場合は、接触抵抗は、炭素層10が形成されている部分で測定する。上昇率ΔR(%)は、(Rc1-Rc0)/Rc0×100で定義される。ただし、Rc0は耐食性試験を行う前の接触抵抗であり、Rc1は耐食性試験を行った後の接触抵抗である。
〈金属板の比表面積〉
金属板8について、下記式(1)で定義されるR値は、3.5以上である。
R=(S2-X)/(S1-X) …(1)
ただし、S1は、金属板8の見かけの表面積であり、S2は、BET法により測定された金属板8の表面積である実表面積であり、Xは、金属板8の表面において炭素層が形成されていない領域(以下、「非形成領域」という。)の見かけの表面積(以下、「非形成領域見かけ表面積」という。)である。S1、S2およびXの単位は、同じである。たとえば、S1、S2およびXの単位は、いずれも、mである。Rは、金属板8の表面において、炭素層10が形成されている領域について、見かけの表面積に対する実表面積の比を意味する。以下、このように定義されるRを、金属板8について「比表面積」という。
以下、金属板8の表面が複数の平面からなるとみなせるものとする。金属板8の見かけの表面積S1は、金属板8の各平面を垂直に見たときのその平面の面積(その平面に平行な面への金属板の投影面積)を合計したものである。同様に、非形成領域見かけ表面積Xは、金属板8の各平面を垂直に見たときのその平面における非形成領域の面積(その平面に平行な面への非形成領域の投影面積)を合計したものである。
たとえば、金属板8が直方体状であり、主面の長辺の長さがL1であり、主面の短辺の長さがL2であり、厚さがL3であるとする。この場合、金属板8の見かけの表面積S1は、2×L1×L2+2×L1×L3+2×L2×L3である。炭素層10が、金属板8の表面の全面に形成されている場合は、Xは0である。炭素層10が、1つの主面にのみ形成されている場合は、Xは、S1-L1×L2、すなわち、L1×L2+2×L1×L3+2×L2×L3である。
なお、厚さL3が長辺の長さL1および短辺の長さL2に比して、無視できる程小さい場合は、金属板8の見かけの表面積S1は、2×L1×L2とすることができる。この場合、非形成領域見かけ表面積Xは、主面における炭素層10の非形成領域見かけ表面積の合計とすることができる。
実表面積S2は、BET多点法により測定した表面積とする。R値が大きいほど、炭素層10に形成された孔の内表面積は大きい。
[セパレータ]
図1Bおよび図2を参照して、セパレータ5a、5bは、金属板8を含む。炭素層10は、GDL接触部7a、7bの表面(凸条の頂面)の少なくとも一部に形成されている。炭素層10は、GDL接触部7a、7b表面の全面に形成されていてもよい。炭素層10による後述の効果を十分に奏するために、GDL接触部7a、7b表面の面積に対する炭素層10の形成領域の面積の割合は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
セパレータ5a、5bは、シール材等、金属板8以外の部分を含んでもよい。セパレータ5a、5bにおいて金属板8からなる部分は、上記(1)式を満たす。セパレータ5a、5bの実質的に全体が金属板8からなる場合は、セパレータ5a、5bの見かけの表面積は、GDL接触部7a、7bの表面、および溝6a、6bの内面を含む各平面の表面積を合計したものとする。
溝6a,6bの幅は、1~3mmであることが好ましい。溝6a、6bの幅が1mm以上であれば、溝6a、6bにおいてガスの導入部と排出部との間の圧力損失を小さくし、反応ガスの流量を十分に確保することができる。その結果、ガスの滞留、および結露を生じ難くすることができる。
一方、燃料電池内では、セパレータ5a、5bの対向面には、それぞれ、燃料電極膜3、酸化剤電極膜4のガス拡散層が押しつけられている。このとき、ガス拡散層を構成するカーボン繊維が変形して、カーボン繊維の一部が溝6a、6b内に入り込むことがある。この場合、溝6a、6bの横断面積(溝6a、6bの長さ方向に垂直な断面における溝6a、6bの面積)は、実質的に小さくなる。これにより、溝6a、6bに流れる反応ガスの流量が低下する。溝6a、6bの幅が3mm以下であれば、溝6a、6b内に入り込むカーボン繊維の量を少なくして、反応ガスの流量を十分に確保することができる。
溝6a、6bの深さは、溝6a、6bの幅の半分程度、すなわち、0.5~1.5mmであることが好ましい。溝6a、6bの深さが0.5mm以上であれば、溝6a、6bにおいてガスの導入部と排出部との間の圧力損失を小さくし、反応ガスの流量を十分に確保することができる。溝6a、6bの深さが1.5mm以下であれば、セルの厚さを十分に薄くすることができる。
対向面を垂直に見て、溝6a、6bの面積とGDL接触部7a、7bの面積とは、ほぼ同じであることが好ましい。対向面において、溝6a、6b以外の部分は、大部分、GDL接触部7a、7bである。対向面を垂直に見て、対向面の面積に占める溝6a、6bの面積の割合は、たとえば、40~60%であることが好ましい。この場合、GDL接触部7a、7bとガス拡散層との接触による通電量と、溝6a、6bを流れる燃料ガスまたは酸化性ガスによる発電量とのバランスを保ち、セルとしての発電量を大きくすることができる。
図1Bおよび図2を参照して、溝6aを流れる燃料ガスG1および溝6bを流れる酸化性ガスG2(図1Bを参照)の一部は、炭素層10に形成された孔を介して、それぞれ、燃料電極膜3のガス拡散層および酸化剤電極膜4のガス拡散層に供給される。その結果、GDL接触部7a、7bの領域内で発電が生じる。このように、炭素層10により、従来は燃料ガスG1または酸化性ガスG2が実質的に供給されなかった部分に、燃料ガスG1または酸化性ガスG2を供給して発電することができる。
R値が3.5以上であることにより、炭素層10の孔を介してガス拡散層に供給される燃料ガスG1または酸化性ガスG2の量は、GDL接触部7a、7bの領域内での発電量の増加が認められる程度に多くなる。したがって、セパレータ5a、5bは、セルおよび燃料電池1の発電効率を向上させることができる。また、セパレータ5a、5bを備えたセルおよび燃料電池1は、発電効率が向上されている。このような効果を十分に奏するため、R値は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
R値は100以下であることが好ましい。これは、以下の理由による。R値が100を超える場合には、主として、下記(i)~(iii)の場合がある。
(i) R値が100以下である場合と同様の径の孔が形成されているが、その数が多いか、その長さが長いために実表面積が大きい場合。
(ii) R値が100以下である場合に比して、全体的に孔の径が小さく、かつ、孔の数が多いために実表面積が大きい場合。
(iii) R値が100以下である場合と同様の大きさ(径および長さ)の孔が形成されているが、孔の内表面の極微細な凹凸により実表面積が大きい場合。
上記(i)の場合、貫通孔が生じる可能性が高くなる。これにより、炭素層10により基材9を保護する効果が得られにくくなる。その結果、金属板8の耐食性が低くなる。また、上記(i)の場合、炭素層10の見かけ密度(かさ密度)が小さくなるため、炭素層10内で実質的に導電経路となり得る部分は、少なくなる。その結果、炭素層10全体として、電気伝導性が下がり、電気抵抗が上昇する。
上記(ii)の場合、孔を通過する燃料ガスまたは酸化性ガスの圧力損失が大きくなる。上記(iii)の場合は、孔の内表面の極微細な凹凸が、孔内を流れる燃料ガスまたは酸化性ガスの抵抗となる。したがって、上記(ii)および(iii)の場合は、孔は、燃料ガスまたは酸化性ガスの流路としては、十分に機能しなくなる。
したがって、上記(i)~(iii)のいずれの場合でも、R値が100を超える金属板8を備えるセパレータをセルに用いると、そのセルの発電効率を十分に向上させることはできない。換言すれば、R値が100以下である金属板8を備えたセパレータをセルに用いると、そのセルの発電効率を十分に向上させることができる。このような効果を十分に奏するためには、R値は、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
以上、燃料電池が固体高分子形燃料電池である場合について説明したが、燃料電池は、それ以外の燃料電池、たとえば、固体電解質形、溶融炭酸塩形、またはリン酸形の燃料電池であってもよい。
[金属板の製造方法]
本発明の金属板を製造する方法は、特に限定されない。本発明の金属板は、たとえば、基材の表面に炭素源を供給する炭素源供給工程と、表面に炭素源が供給された基材を熱処理する熱処理工程とを含む方法により製造することができる。熱処理工程により、炭素源から炭素層を得ることができる。ここで、「基材の表面」とは、基材の上に酸化皮膜等、金属以外の元素と基材を構成する金属との化合物層が形成されている場合は、その化合物層の表面を意味する。
炭素源供給工程では、炭素源として、熱処理工程で分解して炭化する物質を用いる。換言すれば、熱処理工程では、炭素源が分解して炭化する熱処理条件を採用する。熱処理工程で分解して炭化する物質として、たとえば、CとHとで構成された物質、たとえば、ポリビニールアルコール(以下、「PVA」という。)、およびカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」という。)を挙げることができる。
炭素源の残炭率は、1~50%であることが好ましい。残炭率は、基材の表面に供給した炭素源の質量に対する、熱処理後に残る炭素層の質量の割合である。したがって、残炭率は、熱処理工程で採用する熱処理条件に依存する。残炭率Rc(100分率)は、下記式により求められる。
Rc=(W2-W0)÷(W1-W0)×100
W0:炭素源を供給する前の基材の質量
W1:表面に供給された炭素源を含めた基材の質量(炭素源を供給した後、熱処理工程を実施する前に測定した基材および炭素源の質量)
W2:表面に形成された炭素層を含めた基材の質量(熱処理工程を実施した後に測定した基材および炭素層の質量)
炭素源の残炭率が1~50%であることにより、炭素源が分解して炭化するときに、分解により生成したガスが、炭素源(炭素層)から十分に抜ける。その結果、R値が3.5~100となる多孔性が炭素層に与えられやすくなる。このような効果を十分に奏するため、残炭率は、10~40%であることがより好ましい。
ただし、炭素層の多孔性は、残炭率のみによっては決まらず、たとえば、基材の表面に供給した炭素源の厚さにも依存する。基材の表面に供給した炭素源の厚さが厚いほど、炭素層に占める孔の割合は増え、金属板のR値が大きくなる傾向がある。
〈基材が純チタンまたはチタン合金からなる場合〉
基材が、純チタンまたはチタン合金からなる場合は、金属板の製造方法は、炭素源供給工程の前に、基材の表層部を酸化して酸化皮膜を形成する酸化工程を含むことが好ましい。酸化工程により、基材の表層部にTiOを主成分とする酸化皮膜が形成される。TiOは実質的に導電性を有さないので、この酸化皮膜は実質的に導電性を有さない。
そこで、酸化工程の後、熱処理工程を低酸素分圧雰囲気(たとえば、酸素分圧が10-2Pa以下の雰囲気)中で実施する。これにより、酸化皮膜を構成するTiOを還元する。TiOを還元して得られるTiO、Ti、Ti、Ti等の低次酸化物(Ti(2n-1))は導電性を有する。したがって、熱処理工程を低酸素分圧雰囲気で行うことにより、酸化皮膜に導電性を付与することができる。
熱処理により、一例として、以下の反応が生じる。
2TiO+C→Ti+CO↑
以下、純チタンまたはチタン合金からなる基材を備える金属板の製造方法を詳細に説明する。
酸化工程は、たとえば、酸化性雰囲気(たとえば、大気雰囲気)中で熱処理する工程、または陽極酸化処理をする工程とすることができる。陽極酸化により、酸化性雰囲気中での熱処理を行う場合に比して、均質で厚い(たとえば、厚さが10nm以上の)酸化皮膜を形成することができる。金属板において、均質で厚い酸化皮膜により、基材を保護することができる。これにより、燃料電池内の腐食環境に対して、仮に、炭素層により基材が十分に保護されなかった場合でも、酸化皮膜により基材をある程度保護することができる。このため、酸化工程では、陽極酸化処理を行うことが好ましい。
陽極酸化処理は、チタンの一般的な陽極酸化に用いられる水溶液、たとえば、リン酸水溶液、硫酸水溶液等を用いて実施することが可能である。陽極酸化の電圧は、15V以上で、絶縁破壊を起こさない上限の電圧(約150V)未満とする。TiOの結晶構造がアナターゼ型である場合は、TiOがルチル型またはブルッカイト型である場合に比して、次に実施する熱処理工程での還元で、より多くの低次酸化物を生成できる。陽極酸化の電圧を40V以上とすることにより、酸化皮膜のTiOの結晶構造をアナターゼ型にすることができる。このため、陽極酸化の電圧は、40V以上とすることが好ましい。陽極酸化の電圧は、115V以下とすることが好ましい。115Vは、工業的に容易にチタンの陽極酸化が可能な上限の電圧である。
炭素源供給工程で、基材の表面に炭素源を供給する方法として、たとえば、表層部に酸化皮膜を形成した基材に対して、圧延油を用いたスキンパス圧延(圧下率が5%以下の圧延)を施すことが挙げられる。これにより、炭素源としての圧延油を、酸化皮膜の表面に付着させることができる。圧下率が5%を超えると、酸化皮膜が破壊されて、基材を構成する金属が露出する。金属が露出した部分に、後に酸化皮膜が形成されたとしても、その酸化皮膜は、十分に厚くはならない。このため、圧延油を付着させるための圧延として、スキンパス圧延を採用することが好ましい。
炭素源供給工程で、基材の表面に炭素源を供給する他の方法として、たとえば、炭素源を溶媒に溶解した溶液、または、炭素源の微粒子を液体に分散させた塗料を、基材の表面に塗布することが挙げられる。PVAおよびCMCは、水に溶解する。したがって、この場合、溶媒として水を用いることができる。PVAおよびCMCの水溶液は適度の粘度を有するので、塗布しやすい。炭素源の微粒子を液体に分散させた塗料としては、たとえば、炭素源としてのアクリル樹脂の微粒子を水に分散させたアクリル塗料を挙げることができる。
また、塊状(ブロック状等)の導電性炭素材を酸化皮膜に対して摺動させることによって、酸化皮膜に導電性炭素材を付着させてもよい。これによっても、酸化皮膜を、炭素源としての導電性炭素材で被覆することができる。経済性が許せば、蒸着により、酸化皮膜をCで被覆してもよい。
熱処理(還元処理)の温度は、600℃以上850℃以下とすることが好ましい。熱処理の温度が600℃未満であると、TiOの還元がほとんど進行しない。また、熱処理の温度が850℃を超えると、基材中へのCの拡散速度が大きくなり、炭化チタン(TiC)が形成される可能性がある。炭化チタンは、酸性環境で溶解する。燃料電池内は酸性環境であるので、炭化チタンが形成されたセパレータは、耐食性に乏しい。
熱処理の時間は、所定の温度に到達してからの保持時間として、10秒以上10分以下であることが好ましい。保持時間が10秒未満であると、TiOの還元がほとんど進行しない。保持時間が10分を超えると、炭化チタンが形成される可能性がある。
また、熱処理により、炭素源が分解して、分解生成物のガスが生じる。分解生成物は、たとえば、炭化水素(たとえば、メタン)、および窒素を含む物質(たとえば、N)等である。同時に、TiOの還元反応により、CO、COなどの酸素を含むガスが生じる。これらのガスが炭素源(炭素層)から抜ける際に孔が形成される。これにより、炭素層は多孔質となる。ただし、一度形成された孔は、その後に他の孔が形成される際等に、途中で塞がれることがある。このため、酸化皮膜の上に、炭素源をある程度厚く供給しておくことにより、炭素層に貫通孔が形成されないようにすることができる。
TiOを還元するのに適した上述の熱処理条件、すなわち、低酸素分圧雰囲気中、600℃以上850℃以下の温度で、10秒以上10分以下保持することにより、適切に選択された炭素源を十分に分解させ、多孔質の炭素層を得ることができる。
〈基材が純チタンおよびチタン合金以外の金属からなる場合〉
基材が純チタンおよびチタン合金以外の金属(以下、「非チタン系金属」という。)からなる場合は、酸化工程を実施することなく、炭素源供給工程および熱処理工程を実施することにより、金属板を製造することができる。これにより、酸化皮膜を実質的に含まず、基材の上に直接炭素層が形成された金属板が得られる。
炭素源供給工程では、基材が純チタンまたはチタン合金からなる場合と同様に、炭素源として、PVA、CMC、またはアクリル樹脂等を用いることができる。ただし、基材が非チタン系金属からなる場合は、基材が純チタンまたはチタン合金からなる場合と同様の条件で、炭素源供給工程および熱処理工程を実施しても、必ずしも、残炭率は1~50%(または、10~40%)とはならない。基材が非チタン系金属からなる場合は、熱処理の温度は、基材が変質しない温度範囲で、たとえば、500℃~900℃とすることができる。
本発明の効果を確認するため、金属板およびセパレータの試料を作製して評価した。
[試料の作製]
表1に、用いた基材を構成する材料を示す。基材を構成する材料は、純チタン(基材A)、チタン合金(基材B)、ステンレス鋼(基材C~F)、およびニッケル基合金(基材G)であった。表2に、基材AおよびBの組成(単位は、質量%)を示す。基材は、いずれも、厚さが0.1mmの平板材であった。基材の主面は、矩形状であった。
Figure 0007035711000001
Figure 0007035711000002
各基材に対して、炭素源供給工程および熱処理工程を実施した。基材Aおよび基材Bに対しては、炭素源供給工程を実施する前に、酸化工程を実施した。基材C~Gに対しては、酸化工程は実施しなかった。表3に、試料の作製条件および評価結果を示す。基材Aまたは基材Bを用いた試料の一部(本発明例8、12、13、15~18、および比較例2)については、酸化工程を実施しなかった。
Figure 0007035711000003
酸化工程は、陽極酸化により実施した。陽極酸化は、10質量%硫酸水溶液中で行った。このとき、白金製の対極を用い、直流安定化電源により、対極と基材との間に、表3に示す電圧を印加した。電圧印加後、対極と基材との間に流れる電流が除々に小さくなり低位に安定してから30秒間保持して、処理を終了した。
炭素源供給工程は、以下に説明する炭素源を、塗布液として用いて実施した。炭素源は、下記の水溶液Vおよび水溶液Aのいずれか単独、または、これらの水溶液を所定の比で混合したものを用いた。
水溶液V:10質量%PVA水溶液。PVAは、は、キシダ化学社製の試薬を用いた。このPVAの重合度は500であった。このPVAのけん化度は、86.5~89であった。
水溶液A:市販のアクリル塗料に、5体積%の純水を添加したもの。市販のアクリル塗料は、ニッペホーム社製のヘキサコートPS-K水性プライマーであった。
水溶液Vと水溶液Aとの混合は、テフロン(登録商標)で被覆した撹拌子を用いた回転攪拌機で24時間以上撹拌することにより行った。水溶液Vの体積と水溶液Aの体積との合計に対する水溶液Vの体積の割合を、「塗布液PVA比」として、表3に示す。得られた塗布液に基材を浸漬し、塗布液から基材を引き上げることにより、基材に、塗布液を塗布した。これにより、基材の表面の全面に、炭素源を供給した。その後、得られた試料を、1日、大気乾燥した。
熱処理工程は、バッチ式の雰囲気制御赤外炉を用いて、試料をアルゴン雰囲気中720℃で30秒加熱することにより行った。アルゴン雰囲気の酸素分圧は、10-2Paであった。これにより、炭素源を炭化して炭素層を形成するとともに、基材Aおよび基材Bの表層部に形成された酸化皮膜を還元した。炭素源を基材表面の全面に供給したことにより、炭素層は、基材表面の全面に形成された。残炭率Rcは、本発明例6では3%であり、本発明例13では16%であった。
[試料の評価]
以上の工程により得られた金属板の試料について、以下の評価をした。
〈炭素層の性状〉
炭素層の表面を、SEMにより観察した。いずれの金属板の炭素層も、多孔質であることが確認された。一例として、図3に、本発明例12の金属板について、炭素層表面のSEM像を示す。炭素層の表面には、直径が0.1μm程度の孔が多数形成されていた。炭素層が多孔質であることは、後述の比表面積の測定結果からも確認された。
また、炭素層に貫通孔が形成されているか否かを、上述の耐食性試験による接触抵抗の上昇率を測定することにより評価した。本発明例の金属板については、上昇率は、いずれも10%未満であった。すなわち、本発明例の金属板に形成された炭素層は、耐食性試験に用いた酸溶液に対して、高いバリア性を有した。これにより、炭素層に貫通孔が形成されていないことを確認した。
一方、比較例1の金属板の接触抵抗は、耐食性試験前には、10mΩ・cm未満と低かったが、耐食性試験により約10倍に上昇した。このため、比較例1の金属板の炭素層には、貫通孔が形成されていると判断した。比較例2の金属板の接触抵抗の上昇率は10%未満であった。このため、比較例2の金属板の炭素層には貫通孔は形成されていないと判断した。
〈接触抵抗〉
試料として、セパレータ形状にプレスする前の平板状の金属板を、耐食性試験として、90℃、pH2のHSO水溶液に96時間浸漬した。すなわち、炭素層に貫通孔が形成されているか否かを確認するための耐食性試験と同じ条件を採用した。耐食性試験は、接触抵抗を測定するための試料についてのみ行った。その後、試料を水洗して乾燥させた。そして、下記の方法で試料に応力を繰り返し与え、その後、接触抵抗測定を行った。以下、繰り返し荷重の付与および接触抵抗の測定の具体的な方法を説明する。
図4は、試料の接触抵抗を測定する装置の構成を示す図である。図4を参照して、まず、作製した試料Sを、燃料電池用のガス拡散層として使用される1対のカーボンペーパ(東レ株式会社製TGP-H-90)12で挟み込み、これを1対の白金電極13で挟んだ。各カーボンペーパ12の面積は、1cmであった。
そして、1対の白金電極13の間に荷重を加えた。図4に、荷重を加えた方向を白抜き矢印で示す。荷重は、5kgf/cm(4.90×10Pa)と20kgf/cm(19.6×10Pa)との間で繰り返し10回変化させた。荷重を5kgf/cmから20kgf/cmへ変更する途中、および20kgf/cmから5kgf/cmへ変更する途中で、荷重が10kgf/cm(9.81×10Pa)の状態で、数秒保持した。
荷重を繰り返し変化させたのは、燃料電池運転中にセパレータ表面にかかる荷重が繰り返し変化することを模擬するためである。燃料電池内では、燃料電池に接続された電気的負荷の大きさが変動することに伴うガス流量および圧力の変動、燃料電池の起動および停止による温度変化などにより、セパレータ表面にかかる荷重が繰り返し変化する。セパレータの材料によっては、そのような荷重の変動を受けると、セパレータの接触抵抗が徐々に上昇することがある。
次に、各試料の接触抵抗を測定した。接触抵抗の測定は、非特許文献1に記載されている方法に準じて行った。1対の白金電極13の間に、10kgf/cmの荷重を加えた。この状態で、1対の白金電極13の間に一定の電流を流し、このとき生じるカーボンペーパ12と試料Sとの間の電圧降下を測定した。電流値および電圧降下の測定には、東陽テクニカ社製のデジタルマルチメータKEITHLEY 2001を用いた。この結果に基づいて抵抗値を求めた。得られた抵抗値は、試料Sの両面の接触抵抗を合算した値となるため、これを2で除して、試料Sの片面あたりの接触抵抗値とした。
表3で、「耐食性試験後接触抵抗」の「評価」の欄における符号の意味は、以下の通りである。
◎:接触抵抗が10mΩ・cm未満(耐食性は良好であった。)
〇:接触抵抗が10mΩ・cm以上、20mΩ・cm未満
□:接触抵抗が20mΩ・cm以上50mΩ・cm未満
×:接触抵抗が50mΩ・cm以上(発電効率を著しく低下させる程度に接触抵抗が増大した。)
〈比表面積の測定〉
セパレータ形状にプレスする前の平板状の金属板から、短辺が8mmで長辺が25mmの矩形状の試験片を、1つの金属板から5個採取した。試験片の厚さは、長辺および短辺の長さに比して無視できるので、各試料の見かけの表面積S1は、2×8mm×25mm=400mmとした。炭素層が基材表面の全面に形成されていたことにより、金属板表面において炭素層が形成されていない領域の見かけの表面積Xは、0であった。
この試験片について、カンタクローム社製Autosorb(登録商標)iQを用いて、BET多点法で実表面積S2を求めた。脱気処理として、減圧下で250℃1時間保持した。吸着ガスとして、Krガスを用いた。そして、上記式(1)に基づき、比表面積Rの値を求めた。
〈セパレータ形状への成形〉
次に、平板材としての試料を、最終的なセパレータ形状、すなわち、溝およびGDL接触部を有する形状に、プレス加工により成形した。セパレータ(成形後の試料)の形態は、以下の通りとした。成形後の試料の発電部の外形は、長辺が14cmで、短辺が7cmの矩形状であった。したがって、平面視において、この試料の発電部の面積は98cmであった。
セパレータには、主たる溝を3本含むサーペンタイン流路が形成されていた。溝の内側面は、GDL接触部の表面に対して75°傾斜していた。このため、溝の幅は、溝の深さ方向に変化していた。同様に、凸条(セパレータにおいて隣接する2つの主たる溝の間に存在する部分)の幅は、凸条の高さ方向に変化していた。溝の幅、およびGDL接触部の幅は、これらの長さ方向に関しては、実質的に変化していなかった。
溝の深さ方向に関する平均幅は、1.5mmであった。凸条の高さ方向の平均幅は、1.5mmであった。すなわち、溝の平均ピッチは、3.0mmであった。溝の開口部における幅は、1.7mmであった。凸条の表面(GDL接触部)における幅は、1.3mmであった。溝の深さは、0.7mmであった。
〈燃料電池単セルの出力電圧〉
炭素層により燃料電池の発電効率が向上することを確認するため、単セルの燃料電池を作製し、出力電圧を測定した。
まず、固体高分子形燃料電池のMEAを、以下のようにして作製した。固体高分子電解質膜(イオン交換膜)として、ナフィオン膜(Dupont社製NR211)を用いた。そして、Pt担持黒鉛触媒(田中貴金属社製TEC10E50E)をナフィオン分散溶液(Dupont社製DE521)に分散させたインクを作製した。このインクを、この固体高分子電解質膜の両面に塗布した。この状態の固体高分子電解質膜を、1対のガス拡散層(SGLカーボン社製35BC)で挟んで、120℃、5MPaで10分ホットプレスした。これにより、MEAを得た。
セパレータを2枚用い、これらのセパレータでMEAを挟んで単セルを作製した。各セパレータのGDL接触部を、MEAの電極膜(ガス拡散層)に接触させた。
作製した単セルを用いて、以下の条件で運転した。セル温度は、68℃とした。酸化性ガスとしての空気を、3L/分の流量で、一方のセパレータの溝に導入した。燃料ガスとしての水素を、6L/分の流量で、他方のセパレータの溝に導入した。空気および水素の流量は、いずれも、25℃、1気圧におけるものであった。空気および水素は、いずれも、68℃の純水にバブリングして用いた。得られた空気および水素は、単セルまで、68℃以上に加熱した配管で供給した。これにより、単セルに供給される空気および水素を、100%加湿ガスとした。
この状態で、電子負荷装置(菊水電子社製PLZ664WA)を用いて、単セルを運転した。電子負荷装置は、電流制御モードに設定して用いた。これにより、50A(約0.5A/cm)の定電流を生じさせた。この状態で、単セルの出力電圧を測定した。出力電圧が高いほど、単セルの発電効率は高い。運転を開始した直後の出力は安定しないので、500時間運転後の出力電圧を評価した。
表3で、「出力電圧」の「評価」の欄における符号の意味は、以下の通りである。
◎:出力電圧が0.37V以上、0.375V以下(発電効率向上の効果が十分にあった。)
〇:出力電圧が0.36V以上、0.37V未満
□:出力電圧が0.34V以上、0.36V未満
×:出力電圧が0.34V未満(発電効率向上の効果が実質的になかった。)
〈評価結果〉
本発明例の金属板のR値は、いずれも3.5以上であった。本発明例の金属板に形成された炭素層の厚さは、いずれも、0.01μm以上5μm以下であった。本発明例の金属板の耐食性試験後の接触抵抗は、いずれも、許容できる程度に低かった。本発明例の金属板を備えるセパレータは、いずれも、燃料電池単セルに用いたときの出力電圧(発電効率)の向上が認められた。すなわち、R値が3.5以上である金属板を、セパレータが含むことにより、燃料電池(セル)の発電効率が向上することが確認された。以上の効果は、純チタンまたはチタン合金からなる基材を用いた試料(本発明例1~18)と、非チタン系金属からなる基材を用いた試料(本発明例19~24)とのいずれについても認められた。
本発明例では、炭素層がある程度薄いと、R値が小さく、出力電圧(発電効率)向上の効果が小さい傾向がある。また、炭素層がある程度厚いと、R値は大きいが、腐食性試験後の接触抵抗が高く、出力電圧が低い傾向がある。また、非チタン系金属からなる基材を用いた試料(本発明例19~24)でも、高い出力電圧が得られた。
本発明例18の金属板の耐食性試験後の接触抵抗は、48mΩ・cmと、本発明例の他の金属板の接触抵抗に比して大きかった。これは、金属板のR値が100を超えたことにより、炭素層の見かけ密度(かさ密度)が小さく、炭素層10全体として電気抵抗が高かったためと考えられる。
比較例1の金属板の耐食性試験後の接触抵抗は、50mΩ・cmを超えており、高かった。これは、炭素層の厚さが0.01μm未満と小さいことにより、HSO水溶液に対して、炭素層により基材を十分に保護することができず、基材の表面に腐食生成物が形成されたためと考えられる。すなわち、炭素層に貫通孔が形成されており、この貫通孔を介してHSO水溶液が基材表面に到達したことにより腐食生成物が形成された。また、比較例1の金属板を備えるセパレータを用いた燃料電池単セルの出力電圧は、0.34V未満と低かった。これは、比較例1の金属板のR値が3.5未満と小さかったことから、炭素層の孔に、燃料ガスまたは酸化性ガスが十分に流れなかったためと考えられる。
比較例2の金属板の耐食性試験後の接触抵抗は、50mΩ・cmを超えており高かった。これは、炭素層の厚さが5μmを超えており大きいことにより、炭素層自体の抵抗値が高かったためと考えられる。また、比較例2の金属板を備えるセパレータを用いた燃料電池単セルの出力電圧は、0.34V未満と低かった。比較例2の金属板に形成された炭素層が厚かったことにより、炭素層の孔による発電効率向上の効果はあったと予想される。しかし、炭素層自体の抵抗値が高かったことにより、発電効率が大幅に低下し、結果として、出力電圧が低かったと考えられる。
1:固体高分子形燃料電池
3:燃料電極膜
4:酸化剤電極膜
5a、5b:セパレータ
6a、6b:溝
7a、7b:ガス拡散層(GDL)接触部
8:金属板
9:基材
10:炭素層

Claims (6)

  1. 純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、Ni基合金、Co基合金、またはアルミニウム合金からなる基材と、
    前記基材の表面の少なくとも一部に設けられ、導電性を有し、多孔質である炭素層と、を備えた、燃料電池のセパレータ用の金属板であって、
    前記炭素層の厚さが、0.01μm以上5μm以下であり、
    下記式(1)で定義されるR値が3.5以上である、金属板。
    R=(S2-X)/(S1-X) …(1)
    ただし、S1は、前記金属板の見かけの表面積であり、S2は、BET法により測定された前記金属板の表面積である実表面積であり、Xは、前記金属板の表面において前記炭素層が形成されていない領域の見かけの表面積である。
  2. 請求項1に記載の金属板であって、
    前記R値が100以下である、金属板。
  3. 金属からなる基材と、
    前記基材の表面の少なくとも一部に設けられ、導電性を有し、多孔質である炭素層と、を備えた金属板であって、
    前記炭素層の厚さが、0.01μm以上5μm以下であり、
    下記式(1)で定義されるR値が3.5以上である、前記金属板を備え、
    前記金属板が、相互に隣接する凸条および溝を備え、
    前記炭素層は、前記凸条の頂面に形成されている、燃料電池用のセパレータ。
    R=(S2-X)/(S1-X) …(1)
    ただし、S1は、前記金属板の見かけの表面積であり、S2は、BET法により測定された前記金属板の表面積である実表面積であり、Xは、前記金属板の表面において前記炭素層が形成されていない領域の見かけの表面積である。
  4. 請求項3に記載の燃料電池用のセパレータであって、
    前記R値が100以下である、燃料電池用のセパレータ。
  5. 請求項3または4に記載のセパレータと、
    前記凸条の頂面に接触するガス拡散層と、
    を備える、燃料電池のセル。
  6. 請求項に記載のセルを備える、燃料電池。
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