JP7024948B2 - コンクリート杭及びその設計方法 - Google Patents
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Description
非特許文献1及び2は、SC杭に軸力が作用している場合のSC杭の曲げ変形性能を報告している。非特許文献2の図1によれば、SC杭に軸力が作用している場合(No.2~No.7)、軸力が作用していない場合(No.1)に比べ、部材角の増大に伴って杭頭曲げモーメントが急激に小さくなっており、SC杭の変形性能(靭性)が低下する。これに対し、SC杭の中空部にセメントミルクやコンクリートを充填材として充填した場合(No.8、No.9)、充填していない場合(No.2~No.7)に比べ、SC杭の靱性が向上する。具体的には、セメントミルクやコンクリートが充填されたSC杭(No.8、No.9)は、塑性率(降伏時の曲率(部材角)に対する曲率(部材角)の比率)5倍まで最大曲げ耐力の約8割を保持する。
この点、特許文献2が開示するSC杭によれば、内殻鋼管を設けたことによって中空部を確保することができ、SC杭を埋め込み工法に容易に適用可能である。
また、SC杭のみならず、外殻鋼管を備えていないPRC杭(プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭)やPHC杭(プレストレスト高強度コンクリート杭)等のコンクリート杭においても、中実にせずに、靭性を向上させる手段の開発が望まれる。
上述の事情に鑑みて、本発明の目的は、軸力が作用している場合であっても、内殻鋼管の座屈が抑制され、靭性が従来よりも改善される外殻鋼管付きコンクリート杭等の既製のコンクリート杭を提供することにある。
また、本発明の目的は、軸力が作用している場合であっても、内殻鋼管の座屈が抑制され、靭性が従来よりも改善される外殻鋼管付きコンクリート杭等の既製のコンクリート杭の設計方法を提供することにある。
中空で円筒形状の内殻鋼管と、
前記内殻鋼管の周りに配置され、コンクリートを少なくとも一部に含む円筒形状の杭体と、
中空で円筒形状の外殻鋼管と、を備え、
前記内殻鋼管の外径をDsiとし、
前記内殻鋼管の厚さをtsiとしたとき、次式:
tsi≧0.02×Dsi
で示される関係を満たし、
前記杭体は、前記外殻鋼管と前記内殻鋼管との間に配置され、前記外殻鋼管の内側に付着しており、
前記外殻鋼管の厚さをtsoとしたときに、次式:
tsi≧tso
で示される関係を満たしている。
この点、特許文献2のSC杭においても、従来と同様、内殻鋼管の座屈については特に考慮されておらず、コンクリート片の移動さえ防止できればよいと考えられていたと思われる。
しかしながら、本発明者らが種々検討を重ねた結果、内殻鋼管が座屈した場合、コンクリート片の移動を十分に抑制できなくなり、当初期待した通りの靱性を得られない場合があることがわかった。
この点、上記構成(1)によれば、内殻鋼管の厚さを外径の0.02倍以上とすることで、内殻鋼管の局部座屈を抑制することができる。これにより、杭体に含まれるコンクリート片が剥離、圧壊したとしても、コンクリート杭の中空部内へのコンクリート片の移動を抑制することができる。この結果として、上記構成(1)によれば、靭性が従来よりも改善される中空のコンクリート杭を提供することができる。
この点、上記構成(1)によれば、内殻鋼管の厚さを外殻鋼管の厚さ以上とすることで、外殻鋼管付コンクリート杭の靭性を低コストにて向上させることができる。
前記杭体は、
前記外殻鋼管の内周面に付着し、コンクリートによって構成された円筒形状のコンクリート部と、
前記内殻鋼管の外周面及び前記コンクリート部の内周面に付着している円筒形状の充填部と、を含む。
中空で円筒形状の内殻鋼管と、
前記内殻鋼管の周りに配置され、コンクリートを少なくとも一部に含む円筒形状の杭体と、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延び、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の内部を前記杭体の周方向に延び、前記杭体の径方向にて前記緊張材よりも外側に配置された第1補強材と、を備え、
前記内殻鋼管の外径をDsiとし、
前記内殻鋼管の厚さをtsiとしたとき、次式:
tsi≧0.02×Dsi
で示される関係を満たし、
前記杭体は、
コンクリートによって構成された円筒形状のコンクリート部と、
前記内殻鋼管の外周面及び前記コンクリート部の内周面に付着している円筒形状の充填部と、を含み、
前記第1補強材は前記コンクリート部の内部に配置され、
前記コンクリート部における前記第1補強材の体積比と降伏点の積は2.45N/mm 2 より大きい値である。
そして、上記構成(3)によれば、杭体のコンクリート部における第1補強材の体積比と降伏点の積が2.45N/mm 2 より大きい値であるので、杭体の外側を確実に補強することができる。この結果として、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有する、外殻鋼管を有さないPRC杭やPHC杭等のコンクリート杭が提供される。
前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延びる第2補強材を更に備える。
上記構成(1)乃至(4)の何れか1つに記載のコンクリート杭の設計方法であって、
前記コンクリート杭に作用する軸力と終局曲げモーメントとの関係を表すNM曲線を用意する工程を備え、
前記NM曲線を用意する工程において、
前記コンクリート杭に所定の曲率の終局曲げが発生しているときに前記内殻鋼管の圧縮領域が負担する軸力をPsiとし、
前記内殻鋼管の代わりに前記杭体の内側に所定強度の中詰部が充填されていると仮定した場合に、前記コンクリート杭に前記所定の曲率の終局曲げが発生しているときに前記中詰部の圧縮領域が負担する軸力をPciとしたときに、
前記軸力Pciに対する前記軸力Psiの比Psi/Pciに基づいて、前記NM曲線によって規定される前記コンクリート杭の使用可能範囲のうち軸力に関する上限値を設定する。
かくして上記構成(5)によれば、NM曲線によって規定されるコンクリート杭の使用可能範囲の軸力に関する上限値が、軸力Pciに対する軸力Psiの比Psi/Pciに基づいて設定されているので、コンクリート杭が高い靱性を示す範囲でコンクリート杭を使用可能である。
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係るコンクリート杭の設計方法は、
中空で円筒形状の内殻鋼管と、前記内殻鋼管の周りに配置され、コンクリートを少なくとも一部に含む円筒形状の杭体と、を備え、前記内殻鋼管の外径をDsiとし、前記内殻鋼管の厚さをtsiとしたとき、次式:
tsi≧0.02×Dsi
で示される関係を満たすコンクリート杭の設計方法であって、
前記コンクリート杭に作用する軸力と終局曲げモーメントとの関係を表すNM曲線を用意する工程を備え、
前記NM曲線を用意する工程において、
前記コンクリート杭に所定の曲率の終局曲げが発生しているときに前記内殻鋼管の圧縮領域が負担する軸力をPsiとし、
前記内殻鋼管の代わりに前記杭体の内側に所定強度の中詰部が充填されていると仮定した場合に、前記コンクリート杭に前記所定の曲率の終局曲げが発生しているときに前記中詰部の圧縮領域が負担する軸力をPciとしたときに、
前記軸力Pciに対する前記軸力Psiの比Psi/Pciに基づいて、前記NM曲線によって規定される前記コンクリート杭の使用可能範囲のうち軸力に関する上限値を設定する。
(7)幾つかの実施形態では、上記構成(6)において、
前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延び、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の内部を前記杭体の周方向に延び、前記杭体の径方向にて前記緊張材よりも外側に配置された第1補強材と、を更に備える。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、軸力が作用していても、内殻鋼管の座屈が抑制され、靭性が従来よりも改善される外殻鋼管付きコンクリート杭等の既製のコンクリート杭の設計方法が提供される。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
図1及び図2に示したように、SC杭1は、外殻鋼管3と、内殻鋼管4と、杭体5とを備える。
外殻鋼管3は、中空で円筒形状を有しており、例えば、SKK材によって構成されている。外殻鋼管3は、例えば、300mm以上1500mm以下の外径Dsoを有し、外殻鋼管3の外径Dsoは、SC杭1の外径Dpに相当する。また、外殻鋼管3は、例えば、4.5mm以上25mm以下の厚さ(板厚)tsoを有する。外殻鋼管3は、例えば、325N/mm2の降伏強度σsoyを有し、205000N/mm2の弾性係数Esoを有する。
なお、充填部9bの材料を充填するための開口を端板7や内殻鋼管4に設ける等により、充填部9bの材料を充填可能であれば、端板7a,7bの内径は同一であってもよく、内殻鋼管4の両端が端板7に溶接されていてもよい。
また、外殻鋼管3及び内殻鋼管4の両方に端板7が溶接されていてもよいが、一方のみに溶接され、他方には溶接されていなくてもよい。例えば、外殻鋼管3にのみ端板7が溶接され、内殻鋼管4には端板7が溶接されていなくてもよい。なお、端板7が取り付けられている場合、SC杭1の長さLは、端板7の外面間の長さである。SC杭1は、例えば、2m以上の長さLを有する。
tsi≧0.02×Dsi ・・・(1)
で示される関係が満たされている。つまり内殻鋼管4の厚さtsiは外径Dsiの0.02倍以上である。
tsi≧tso ・・・(2)
で示される関係を満たしている。つまり、内殻鋼管4の厚さtsiは外殻鋼管3の厚さtso以上である。
外殻鋼管3も厚くすることができれば、外殻鋼管3の座屈を抑制することも可能であり、靱性の向上には有効であると考えられる。しかしながら、外殻鋼管3の外径Dsoは大きいため、局部座屈の抑制に必要な厚さが内殻鋼管4に比べ大きく、外殻鋼管3を厚くした場合、外殻鋼管3の価格が大幅に上昇し、ひいては外殻鋼管付きコンクリート杭の価格が大幅に上昇してしまう。
この点、上記構成によれば、内殻鋼管4の厚さtsiを外殻鋼管3の厚さtso以上とすることで、SC杭1の靭性を低コストにて向上させることができる。
tsi≧Dsi・σsiy/(0.057・Esi) ・・・(3)
で示される関係を満たす。
なお、式中、σsiyは内殻鋼管4の降伏強度であり、Esiは内殻鋼管4の弾性係数である。
εmax=0.44t/D ・・・(4)
が示されている。
この式に、H形断面の場合と同様の考えで、εmax≧8・εsiy(ただし、εsiyは内殻鋼管4の降伏歪み)を代入すれば、強度的にも変形能力的にも安全である径厚比を与える上式(3)が得られる。
かくして、内殻鋼管4の厚さtsiが式(3)によって示される関係を満足することで、より靱性の高いSC杭1を得ることができる。具体的には、塑性率μu=εmax/εsiyとすると、式(3)を満たしていれば、塑性率μuが8.0以上であるSC杭1が得られる。
設計方法は、上述したSC杭1の設計方法であり、内殻鋼管4の厚さtsiが外径Dsiの0.02倍以上になるようにSC杭1を設計する。
このような応力分布に起因して、従来のSC杭に軸力が作用している場合、SC杭の地震時の破壊モードは、非特許文献2の写真2に示されているように、外殻鋼管が圧縮力により座屈し、外殻鋼管の内周面付近のコンクリートが圧壊し、そして、コンクリートの最内周面が圧壊して崩落するという順序をたどる。このようにコンクリートの最内周面が崩落し、コンクリート片が移動することで、コンクリートの体積が減少し、曲げ変形が繰り返されると靱性が低下してしまう。
より詳しくは、図5は、SC杭1に所定の曲率φの終局曲げが発生しているときに内殻鋼管4の圧縮領域が負担している軸力をPsiとしたときに、負担軸力Psiを求める方法を説明するための図である。
そして、各面積dSso、dSc、dSg、dSsiに作用する軸力dNso、dNc、dNg、dNsiを、以下の式(5)~(8)に示すように、面積dSs、dSc、dSm、dSsoに、各区画での歪みε及び弾性係数Eso、Ec、Eg、Esiを乗じて求める。なお、各区画での歪みεは、平面保持仮定の下、y軸における位置に依存する関数である。
dNc=dSc×Ec×ε ・・・(6)
dNg=dSg×Eg×ε ・・・(7)
dNsi=dSsi×Esi×ε ・・・(8)
N=Σ(dNso+dNc+dNg+dNsi) ・・・(9)
かくして、圧縮側の外殻鋼管3の内面の歪みを終局歪みに固定した状態で、曲率φに応じて軸力Nを求めることができる。
Psi=ΣdNsi ・・・(10)
ただし式(10)において、dNsiは、内殻鋼管4の圧縮領域の区画(図5中にハッチングで示した圧縮歪みが対応している区画)に対応するものについてのみ積算する。
dNci=dSci×Eci×ε ・・・(11)
Pci==ΣdNci ・・・(12)
なお、式(11)中、dSciは、各区間における中詰部11の断面積であり、Eciは、中詰部11の弾性係数である。式(12)においても、dNciは、中詰部11の圧縮領域の区画(図7中にハッチングで示した圧縮歪みが対応している区画)に対応するものについてのみ積算する。
dMso=dNso×y ・・・(13)
dMc=dNc×y ・・・(14)
dMg=dNg×y ・・・(15)
dMsi=dNsi×y ・・・(16)
M=Σ(dMso+dMc+dMg+dMsi) ・・・(17)
図8に示したように、SC杭1は、発生曲げモーメントMoがNM曲線によって規定される範囲内に収まるように設計・使用されるが、SC杭1を使用可能な軸力比Nmax2/Nmax1が0.30以上、好ましくは0.35以上であることで、より大きな軸力Nが作用している状態でも、SC杭1を使用することができる。
上述したように、SC杭の破壊モードは外殻鋼管の座屈から始まるため、終局限界圧縮耐力Nu及び終局限界引張耐力Nulを用いれば、SC杭1の変形性能をより正確に求めることができる。
F:鋼材の基準強度(=σsoy又はσsiy)(N/mm2)
t:鋼管の厚さ(腐食しろを考慮)(mm)
r:鋼管の半径(mm)
A:鋼管の断面積(腐食しろを考慮)(mm2)
図9及び図10は、実施例1及び比較例1~5のSC杭の仕様を示す表である。
図11は、実施例1及び比較例1~5のSC杭の仕様から求められるNM曲線、及び、正負交番載荷試験の際に加えられる軸力を示している。
図12は、正負交番載荷試験装置により実施例1及び比較例1~5のSC杭に加えられる水平力及び軸力を説明するための図である。SC杭には、下端部(杭頭部)がスタブ13に埋設されて固定された状態で、水平力及び軸力が加えられる。
図13に示すように、内殻鋼管4の厚さtsiが外径Dsiの0.02倍以上である実施例1のSC杭は、優れた靱性を示す。
これに対し、図14~図18に示すように、内殻鋼管4の厚さtsiが外径Dsiの0.02倍未満である比較例1~5のSC杭は、実施例1よりも低い靱性を示す。すなわち、部材角が大きくなると、曲げ耐力(杭頭発生曲げモーメントMo)が大きく減少する。
これに対し、SC杭の仕様自体は相互に同じである比較例1~4を比較すると、図14~図17に示すように、加えられる軸力が小さくなるほどPNが1.15に近づき、高い靱性を示すことがわかる。
例えば、上述した実施形態では、杭体5が2つの円筒形状の部分によって構成されていたが、杭体5が1つの円筒部によって構成されていてもよい。杭体5が1つの円筒部によって構成されている場合、杭体5はコンクリートによって構成されている。あるいは、杭体が、3つ以上の円筒部によって構成されていてもよい。
また、杭体5がコンクリート部9a及び充填部9bによって構成されている場合、コンクリート部9aの強度は、充填部9bの強度と同じであっても、大きくても、あるいは小さくてもよい。
また、外殻鋼管3としては、SKK材のみならず、STK材、SM材、SS材、国土交通大臣認定の材料を用いてもよい。同様に、内殻鋼管4としては、STK材のみならず、SKK材、SM材、SS材、国土交通大臣認定の材料を用いてもよい。
図19は、SC杭1の製造方法の一例の概略的な手順を示すフローチャートである。
図19に示したように、SC杭1の杭製造方法は、外殻鋼管準備工程S10と、打設工程S11と、遠心成形工程S12と、内殻鋼管挿入工程S13と、充填工程と14とを備えている。
打設工程S11では、外殻鋼管3内に生コンクリートを充填する。この充填は外殻鋼管3内に挿入可能な径のスクリューフィーダー等によって行う。スクリューフィーダーは、ある程度生コンクリートが充填されてきた段階で、徐々に引き抜きながら生コンクリートを充填する。
この後、生コンクリートがある程度強度を発現した段階で、外殻鋼管3を遠心成形装置の型枠から外し、蒸気養生を行うことにより円筒形状の杭体5のコンクリート部9aが形成される。
tsi≧0.02×Dsi ・・・(1)
で示される関係が満たされている。つまり内殻鋼管4の厚さtsiは外径Dsiの0.02倍以上である。
上記構成によれば、杭体5のコンクリート部9aにおける第1補強材としてのせん断補強筋24の体積比と降伏点の積が2.45N/mm2より大きい値であるので、杭体5の外側を確実に補強することができる。この結果として、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有する、外殻鋼管を有さないPRC杭20が提供される。
より詳しくは、図23は、PRC杭20における図5に相当する図であり、PRC杭20に所定の曲率φの終局曲げが発生しているときに内殻鋼管4の圧縮領域が負担している軸力をPsiとしたときに、負担軸力Psiを求める方法を説明するための図である。
そして、各面積dSc、dSg、dSsi、dSp、dSrに作用する軸力dNc、dNg、dNsi、dNp、dNrを、以下の式(21)~(25)に示すように、面積dSc、dSg、dSsi、dSp、dSrに、各区画での歪みε及び弾性係数Ec、Eg、Esi、Ept、Ertを乗じて求める。
なお、図23では、軸力や曲げモーメントの算出にあたり、計算を簡単にするために、異形鉄筋26を等価な断面積を有する薄肉鋼管26’にて代替し、PC鋼材22を等価な断面積を有する薄肉鋼管22’にて代替し、コンクリート部9aの面積dScをdScoとdSciに分けているが、必ずしもこれらの代替は必要ではない。
dNg=dSg×Eg×ε ・・・(22)
dNsi=dSsi×Esi×ε ・・・(23)
dNp=dSp×Ept×ε ・・・(24)
dNr=dSr×Ert×ε ・・・(25)
ただし、式(23)において歪みεの上限は降伏歪みεsiyとする。なお、内殻鋼管4については、引張力を考慮してもよいが、引張力を零として考慮しなくてもよい。引張力を考慮するか否かは、内殻鋼管4に引張力が作用するようにPRC杭20が設計されているか否かによる。また、式(21)、(22)において、コンクリートやグラウトの引張力は零として考慮せず、εの上限は降伏歪みεcy、εgyとする。そして、式(25)においてεの上限は降伏歪みεrtとする。
なお、PC鋼材22には、例えば、PRC杭20の初期の状態で約0.005の引張歪みεpiが導入されている。PRC杭20の引張側の歪みの上限は、PC鋼材22の引張歪みεpによって規定され、引張歪みεpが0.05となるときの歪みが、PRC杭20の引張側の歪みの上限に設定される。
かくして、圧縮側の杭体5の外面の歪みを終局歪みに固定した状態で、曲率φに応じて軸力Nを求めることができる。
Psi=ΣdNsi ・・・(27)
ただし式(27)において、dNsiは、内殻鋼管4の圧縮領域の区画(図23中にハッチングで示した圧縮歪みが対応している区画)に対応するものについてのみ積算する。
dNci=dSci×Eci×ε ・・・(28)
Pci==ΣdNci ・・・(29)
なお、式(28)中、dSciは、各区間における中詰部11の断面積であり、Eciは、中詰部11の弾性係数である。式(29)においても、dNciは、中詰部11の圧縮領域の区画(図24中にハッチングで示した圧縮歪みが対応している区画)に対応するものについてのみ積算する。
dMc=dNc×y ・・・(30)
dMg=dNg×y ・・・(31)
dMsi=dNsi×y ・・・(32)
dMp=dNp×y ・・・(33)
dMr=dNr×y ・・・(34)
M=Σ(dMc+dMg+dMsi+dMp+dMr) ・・・(35)
なお、上記説明では、軸力N及び終局曲げモーメントMの算定、つまりNM曲線の算定にあたり、充填部9b及び内殻鋼管4に作用する軸力dNg、dNsi及び曲げモーメントdMg、dMsiを考慮したが、これら軸力dNg、dNsi及び曲げモーメントdMg、dMsiを無視してNM曲線を算定してもよい。換言すれば、外殻鋼管3及びコンクリート部9aに作用する軸力dSo、dNc及び曲げモーメントdMso、dMcのみを考慮してNM曲線を算定してもよい。
PRC杭20の製造方法は、図19に示したSC杭1の製造方法と比べたときに、外殻鋼管準備工程S10に代えて、鉄筋かご準備工程S15を備えている。鉄筋かご準備工程S15では、PC鋼材22、せん断補強筋24及び異形鉄筋26からなる鉄筋かごを用意する。
また、PRC杭20の製造方法は、杭体5にプレストレスを導入するために、緊張工程S16及びプレストレス導入工程S17を更に備えている。
遠心成形工程S12の終了後に、所定の養生プログラムに沿って蒸気養生を行う。
蒸気養生を所定時間行った後、プレストレス導入工程S17において、PC鋼材22の引っ張り状態が解除される。つまり、緊張ナットが緩められる。これにより、引っ張られていたPC鋼材22が収縮しようとし、端板7,7及びPC鋼材22によって、杭体5にプレストレスが導入される。つまり、PRC杭20が実際に使用される前から、杭体5には予め圧縮力が作用させられる。
例えば、上述した実施形態において、PRC杭20は第2補強材として複数の異形鉄筋26を備えていたが、異形鉄筋26を備えていなくてもよい。つまり、本発明は、PRC杭20のみならず、既製のコンクリート杭の一種であるプレストレスト高強度コンクリート杭(PHC杭)にも適用可能である。
また、PRC杭20において、各異形鉄筋26は、杭体5の全長に渡って延びているが、各異形鉄筋26の長さは、杭体5の全長よりも短くてもよい。
3 外殻鋼管
4 内殻鋼管
5 杭体
7、7a、7b 端板
9a コンクリート部
9b 充填部
11 中詰部
13 スタブ
20 プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭(PRC杭)
22 PC鋼材(緊張材)
24 せん断補強筋(第1補強材)
26 異形鉄筋(第2補強材)
28 筒状材
30 節杭
32 節部
40 拡径杭(ST杭)
42 拡径部
Claims (7)
- 中空で円筒形状の内殻鋼管と、
前記内殻鋼管の周りに配置され、コンクリートを少なくとも一部に含む円筒形状の杭体と、
中空で円筒形状の外殻鋼管と、を備え、
前記内殻鋼管の外径をDsiとし、
前記内殻鋼管の厚さをtsiとしたとき、次式:
tsi≧0.02×Dsi
で示される関係を満たし、
前記杭体は、前記外殻鋼管と前記内殻鋼管との間に配置され、前記外殻鋼管の内側に付着しており、
前記外殻鋼管の厚さをtsoとしたときに、次式:
tsi≧tso
で示される関係を満たしている
ことを特徴とするコンクリート杭。 - 前記杭体は、
前記外殻鋼管の内周面に付着し、コンクリートによって構成された円筒形状のコンクリート部と、
前記内殻鋼管の外周面及び前記コンクリート部の内周面に付着している円筒形状の充填部と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート杭。 - 中空で円筒形状の内殻鋼管と、
前記内殻鋼管の周りに配置され、コンクリートを少なくとも一部に含む円筒形状の杭体と、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延び、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の内部を前記杭体の周方向に延び、前記杭体の径方向にて前記緊張材よりも外側に配置された第1補強材と、を備え、
前記内殻鋼管の外径をDsiとし、
前記内殻鋼管の厚さをtsiとしたとき、次式:
tsi≧0.02×Dsi
で示される関係を満たし、
前記杭体は、
コンクリートによって構成された円筒形状のコンクリート部と、
前記内殻鋼管の外周面及び前記コンクリート部の内周面に付着している円筒形状の充填部と、を含み、
前記第1補強材は前記コンクリート部の内部に配置され、
前記コンクリート部における前記第1補強材の体積比と降伏点の積は2.45N/mm 2 より大きい値である
ことを特徴とするコンクリート杭。 - 前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延びる第2補強材を更に備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のコンクリート杭。 - 請求項1乃至4の何れか1項に記載のコンクリート杭の設計方法であって、
前記コンクリート杭に作用する軸力と終局曲げモーメントとの関係を表すNM曲線を用意する工程を備え、
前記NM曲線を用意する工程において、
前記コンクリート杭に所定の曲率の終局曲げが発生しているときに前記内殻鋼管の圧縮領域が負担する軸力をPsiとし、
前記内殻鋼管の代わりに前記杭体の内側に所定強度の中詰部が充填されていると仮定した場合に、前記コンクリート杭に前記所定の曲率の終局曲げが発生しているときに前記中詰部の圧縮領域が負担する軸力をPciとしたときに、
前記軸力Pciに対する前記軸力Psiの比Psi/Pciに基づいて、前記NM曲線によって規定される前記コンクリート杭の使用可能範囲のうち軸力に関する上限値を設定する
ことを特徴とするコンクリート杭の設計方法。 - 中空で円筒形状の内殻鋼管と、前記内殻鋼管の周りに配置され、コンクリートを少なくとも一部に含む円筒形状の杭体と、を備え、前記内殻鋼管の外径をDsiとし、前記内殻鋼管の厚さをtsiとしたとき、次式:
tsi≧0.02×Dsi
で示される関係を満たすコンクリート杭の設計方法であって、
前記コンクリート杭に作用する軸力と終局曲げモーメントとの関係を表すNM曲線を用意する工程を備え、
前記NM曲線を用意する工程において、
前記コンクリート杭に所定の曲率の終局曲げが発生しているときに前記内殻鋼管の圧縮領域が負担する軸力をPsiとし、
前記内殻鋼管の代わりに前記杭体の内側に所定強度の中詰部が充填されていると仮定した場合に、前記コンクリート杭に前記所定の曲率の終局曲げが発生しているときに前記中詰部の圧縮領域が負担する軸力をPciとしたときに、
前記軸力Pciに対する前記軸力Psiの比Psi/Pciに基づいて、前記NM曲線によって規定される前記コンクリート杭の使用可能範囲のうち軸力に関する上限値を設定する
ことを特徴とするコンクリート杭の設計方法。 - 前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延び、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の内部を前記杭体の周方向に延び、前記杭体の径方向にて前記緊張材よりも外側に配置された第1補強材と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項6に記載のコンクリート杭の設計方法。
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