JP7448917B2 - 二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル、及びその復元力特性のモデル化方法 - Google Patents
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Description
従来のSC杭は、最大耐力以降の耐力低下が著しく、変形性能が乏しいため、基礎杭に用いる場合には、損傷を許容し変形性能に期待した設計は行わず、設計外力によりSC杭に発生する曲げモーメントが、SC杭の最大または降伏曲げ耐力以内に収まっていることを確認する強度型設計が行われていた。
そこで、本発明では、設計に用いるための復元力特性モデルとして、簡便で扱い易いモデルとするために、最大耐力(最大曲げ耐力)の所定の割合、例えば80%の値で頭打ちにするバイリニア型モデルを原型として採用することとした。
一致しない理由としては、二重鋼管構造による拘束効果によって、コンクリート強度およびコンクリートの終局ひずみが増加する現象などが考えられる。
このため、二重鋼管付きコンクリート杭のバイリニア型モデルを作成する場合、二重鋼管付きコンクリート杭の最大耐力の所定の割合、例えば80%に相当する値を如何にして求めるかが課題となる。
中空で円筒形状の外鋼管と、
前記外鋼管の内側に配置された中空で円筒形状の内鋼管と、
前記外鋼管と前記内鋼管との間に前記外鋼管に接して配置され、コンクリートによって構成された円筒形状のコンクリート部と、を備える二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデルであって、
前記コンクリート部の径方向にて最外縁における前記コンクリート部の圧縮歪みが所定の値であると仮定して平面保持仮定に基づく断面解析により求められた、所定の軸力における前記二重鋼管付きコンクリート杭の最大耐力の所定の割合に相当する信頼強度時曲げモーメントと、
前記二重鋼管付きコンクリート杭の初期剛性の理論値に基づいて求められ、前記二重鋼管付きコンクリート杭の等積割線剛性に相当する弾性剛性と、
を原型とする。
前記外鋼管及び前記内鋼管の座屈を考慮に入れて前記断面解析が行なわれる。
二重鋼管付きコンクリート杭が大きく変形した場合、外鋼管及び内鋼管は座屈している可能性が高い。上記構成(2)によれば、外鋼管及び内鋼管の座屈を考慮に入れて断面解析を行うことで、大変形時に外鋼管及び内鋼管に生じる座屈状況も考慮に入れながら、信頼強度時曲げモーメントを高精度に求めることができる。
前記初期剛性の理論値をcKn1としたとき、前記初期剛性の理論値cKn1は以下の式(1):
cKn1=3EI/L ・・・(1)
(ただし、式(1)中、Lは要素長(m)であり、EIは前記二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)である。)
によって求められる。
上記構成(3)によれば、初期剛性の理論値cKn1を式(1)によって高精度且つ容易に求めることができる。
前記初期剛性の理論値をcKn2としたとき、前記初期剛性の理論値cKn2は以下の式(2)及び式(3):
cKn2=(N×L×tankL)/(tankL-kL) ・・・(2)
k=(N/EI)^0.5 ・・・(3)
(ただし、式(2)及び式(3)中、Lは要素長(m)であり、Nは軸力(kN)であり、EIは前記二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)である。)
によって求められる。
上記構成(4)によれば、初期剛性の理論値cKn2を式(2)及び(3)によって高精度且つ容易に求めることができる。
前記コンクリート部の圧縮歪みの所定の値は、試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の載荷試験を行って決定されたものである。
上記構成(5)によれば、コンクリート部の圧縮歪みの所定の値を、試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の載荷試験結果を行って決定することで、信頼強度時曲げモーメントを高精度に求めることができる。
前記載荷試験は、前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の一端側をスタブ内に固定して行った片持ち梁式の載荷試験であり、
前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の部材角又は曲率を求める際に、前記スタブ内での前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の変形が考慮されている。
上記構成(6)によれば、試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の部材角又は曲率を求める際に、スタブ内での試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の変形(歪み)を考慮することで、復元力特性のモデルの精度を高めることができる。
中空で円筒形状の外鋼管と、
前記外鋼管の内側に配置された中空で円筒形状の内鋼管と、
前記外鋼管と前記内鋼管との間に前記外鋼管に接して配置され、コンクリートによって構成された円筒形状のコンクリート部と、を備える二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル化方法であって、
所定の軸力における前記二重鋼管付きコンクリート杭の最大耐力の所定の割合に相当する信頼強度時曲げモーメントを、前記コンクリート部の径方向にて最外縁における前記コンクリート部の圧縮歪みが所定の値であると仮定して平面保持仮定に基づく断面解析により求める信頼強度時曲げモーメント演算工程と、
前記二重鋼管付きコンクリート杭の等積割線剛性に相当する弾性剛性を、前記二重鋼管付きコンクリート杭の初期剛性の理論値に基づいて求める弾性剛性演算工程と、
を備える。
前記信頼強度時曲げモーメント演算工程において、前記外鋼管及び前記内鋼管の座屈を考慮に入れて前記断面解析を行う。
二重鋼管付きコンクリート杭が大きく変形した場合、外鋼管及び内鋼管は座屈している可能性が高い。上記構成(8)によれば、外鋼管及び内鋼管の座屈を考慮に入れて断面解析を行うことで、大変形時に外鋼管及び内鋼管に生じる座屈状況も考慮に入れながら、信頼強度時曲げモーメントを高精度に求めることができる。
前記弾性剛性演算工程において、前記初期剛性の理論値をcKn1としたとき、前記初期剛性の理論値cKn1を以下の式(1):
cKn1=3EI/L ・・・(1)
(ただし、式(1)中、Lは要素長(m)であり、EIは前記二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)である。)
によって求める。
上記構成(9)によれば、初期剛性の理論値cKn1を式(1)によって高精度且つ容易に求めることができる。
前記弾性剛性演算工程において、前記初期剛性の理論値をcKn2としたとき、前記初期剛性の理論値cKn2を以下の式(2)及び式(3):
cKn2=(N×L×tankL)/(tankL-kL) ・・・(2)
k=(N/EI)^0.5 ・・・(3)
(ただし、式(2)及び式(3)中、Lは要素長(m)であり、Nは軸力(kN)であり、EIは前記二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)、である。)
によって求める。
上記構成(10)によれば、初期剛性の理論値cKn2を式(2)及び式(3)によって高精度且つ容易に求めることができる。
前記信頼強度時曲げモーメント演算工程において、前記コンクリート部の圧縮歪みの所定の値を、試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の載荷試験を行って決定する。
上記構成(11)によれば、コンクリート部の圧縮歪みの所定の値を、試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の載荷試験を行って決定することで、信頼強度時曲げモーメントを高精度に求めることができる。
前記載荷試験は、前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の一端側をスタブ内に固定して行った片持ち梁式の載荷試験であり、
前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の部材角又は曲率を求める際に、前記スタブ内での前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の変形が考慮されている。
上記構成(12)によれば、試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の部材角又は曲率を求める際に、スタブ内での試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の変形(歪み)を考慮することで、復元力特性のモデルの精度を高めることができる。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。同様に、数式は、同じ効果が得られる範囲であれば表現が多少異なっていてもよく、数値についても、同じ効果が得られる範囲で幅を有していてもよいものとする。
外鋼管3は、中空で円筒形状を有しており、例えば、SKK材によって構成されている。外鋼管3は、例えば、300mm以上1500mm以下の外径Dsoを有し、外鋼管3の外径Dsoは、WSC杭1の外径Dpに相当する。また、外鋼管3は、例えば、4.5mm以上25mm以下の厚さ(板厚)tsoを有する。外鋼管3は、例えば、325N/mm2の降伏強度Fsoyを有し、205000N/mm2の弾性係数Esoを有する。
充填部9は、例えばセメントやモルタル等のグラウト又はコンクリートによって構成される。グラウトは、例えば、20N/mm2以上50N/mm2以下の強度を有する。
また、外鋼管3及び内鋼管4の両方に端板7が溶接されていてもよいが、一方のみに溶接され、他方には溶接されていなくてもよい。例えば、外鋼管3にのみ端板7が溶接され、内鋼管4には端板7が溶接されていなくてもよい。なお、端板7が取り付けられている場合、WSC杭1の長さは、端板7の外面間の長さである。WSC杭1は、例えば、2m以上の長さを有する。
好ましくは、内鋼管4の厚さtsiは外径Dsiの0.02倍以上(2%以上)である。
図5のバイリニア型モデルは、所定の軸力におけるWSC杭1における最大耐力(最大曲げモーメント)Mmaxの所定の割合の値、例えば80%の値である0.8Mmaxと、等積割線剛性aKnと、によって構成されている。
なお、正負交番載荷試験の測定値は、後述するように段階的に供試体の最大部材角を大きくしていくため、部材角Rと曲げモーメントMとの関係を示す複数の履歴スループによって構成されており、包絡曲線は、部材角が小さい領域(試験体によって異なるが少なくとも最大耐力の近傍まで)では最も幅が小さい履歴ループ(最大部材角が小さい履歴ループ)に沿うように引かれ、部材角が大きい領域(最大耐力を超えた領域)では、最大部材角での曲げモーメントの値を結ぶように引かれたものである。
従って、図5のバイリニア型モデルは、測定値から直接的に求めることができるものである。
なお、最大耐力Mmaxの所定の割合、例えば80%である0.8Mmaxに相当する信頼強度時曲げモーメントrMuを得られる信頼強度時圧縮歪みεcrの値は、予め実験により求めておくのが好ましいが、既知であれば実験は不要である。
また、信頼強度時曲げモーメントrMuを平面保持仮定に基づく断面解析により求める際、充填部9の寄与を無視してもよい。
cKn1=3EI/L ・・・(1)
(ただし、式(1)中、Lは要素長(m)であり、EIは二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)である。)
によって求められる。
式(1)は、スタブ13とWSC杭1との境界条件を固定とした片持ち梁モデルのためのものであり、軸力Nを考慮していないものである。
上記構成によれば、初期剛性の理論値cKn1を式(1)によって高精度且つ容易に求めることができる。
cKn2=M/θ=(N×L×tankL)/(tankL-kL) ・・・(2)
k=(N/EI)^0.5 ・・・(3)
M=-P/k×(sinkL/coskL) ・・・(4)
δ=P/Nk=(tankL-kL) ・・・(5)
θ=δ/L ・・・(6)
そして、本実施形態では、距離Lは、地震力を受けるWSC杭1の曲げモーメント分布において、地中部曲げモーメントがゼロとなる深さを模擬するように所定の値に設定される。
なお、WSC杭1の曲げ剛性EIは、充填部9の寄与を考慮せずに算出してもよい。また、曲げ剛性EIは、WSC杭1の全断面を有効として算出してもよいが、軸力比に応じて、引張力が作用するコンクリート部6の領域の寄与を考慮せずに算出してもよい。
WSC杭1が大きく変形した場合、外鋼管3及び内鋼管4は座屈している可能性が高い。上記構成によれば、外鋼管3及び内鋼管4の座屈を考慮に入れて断面解析を行うことで、大変形時に外鋼管3及び内鋼管4に生じる座屈状況も考慮に入れながら、信頼強度時曲げモーメントrMuを高精度に求めることができる。
F:鋼材の基準強度(=Fsoy又はFsiy)(N/mm2)
t:鋼管の厚さ(腐食しろを考慮)(mm)
r:鋼管の半径(mm)
A:鋼管の断面積(腐食しろを考慮)(mm2)
図7は、モデル化方法の概略的な手順を示すフローチャートである。図7に示したように、モデル化方法は、信頼強度時曲げモーメント演算工程S1と、弾性剛性演算工程S2と、を備える。
弾性剛性演算工程S2では、WSC杭1の初期剛性の理論値cKnに基づいてWSC杭1の弾性剛性dKnを求める。WSC杭1の初期剛性の理論値cKnとしては、例えば式(1)によって求められる理論値cKn1や、式(2)及び式(3)によって求められる理論値cKn2を用いることができる。
1.供試体の作製
表1に示す仕様を有するWSC杭1を供試体として用意した。なお、コンクリート部6と内鋼管4の間の充填部9は、グラウトによって構成されている。
なお、表1中の軸力比N/Nuに含まれる終局軸力Nuは、以下の式(9)により求めることができる。
Nu=Aso×σoy+Ac×σc+Asi×σiy ・・・(9)
ここで、Asoは外鋼管3の断面積、Acはコンクリート部6の断面積、Asiは内鋼管4の断面積である。式(9)から明らかなように、本実施例では終局軸力Nuの算出にあたって充填部9の寄与を見込んでいない。これにより、WSC杭1の設計を安全側で行うことができるが、充填部9の寄与を見込んでもよい。
図8は、各供試体の正負交番載荷試験(以下、単に試験ともいう)に用いられた正負交番載荷試験装置の概略的な構成を説明するための図である。WSC杭1には、下端部(杭頭部)がスタブ13に埋設されて固定された状態で、上端部に水平力P及び軸力Nが加えられる。従って、試験は、片持ち梁式の載荷試験である。
軸力Nは10,000kN用ジャッキ(引き3,000kN用ジャッキ)で導入し、水平力Pは押/引3,000kN用ジャッキを用いて正負交番で作用させた。軸力用ジャッキ上部にはリニアスライダーを設置して、供試体の水平移動に追従するようにした。
信頼強度時曲げモーメント演算工程S1では、WSC杭1の最大耐力(最大曲げモーメント)Mmaxの所定の割合、例えば80%に相当する信頼強度時曲げモーメントrMuを演算により求める。そのために、図9に示したように、信頼強度時曲げモーメント演算工程S1は、コンクリート部信頼強度時圧縮歪み設定工程S10と、断面解析工程S12とを備えている。
断面解析工程S12では、設定されたコンクリート部6の信頼強度時圧縮歪みεcrを用いて平面保持仮定に基づく断面解析を行い、信頼強度時曲げモーメントrMuを求める。
なお、既に信頼強度時圧縮歪みεcrが設定されていれば、コンクリート部信頼強度時圧縮歪み設定工程S10は省略可能である。
表4に示したように、最外縁圧縮歪みεcpが4000μのとき、0.8MmaxとcMu4との比は約1.0である。このため、WSC杭1では、コンクリート部6の信頼強度時圧縮歪みεcrは4000μに設定され、これに対応して平面保持仮定の下で断面解析により求められる曲げモーメント計算値cMu4が、0.8Mmaxに相当する信頼強度時曲げモーメントrMuであるとされる。
なお、表4の曲げモーメント計算値cMu3,cMu4は、断面解析の際に充填部9の寄与を見込んで求めたものであるが、安全側で設計するために、基礎杭の設計に供されるバイリニア型モデルBLMに示される信頼強度時曲げモーメントrMuについては、信頼強度時圧縮歪みεcrをそのままとして(本実施例の場合εcr=4000μのまま)、充填部9の寄与を見込まないものとしてもよい。
弾性剛性演算工程S2では、WSC杭1の初期剛性の理論値cKn1,cKn2を上述した式(1)~式(3)により求める。供試体C-1~C-5について、演算により求めた初期剛性の理論値cKn1,cKn2、正負交番載荷試験の測定値から求めた等積割線剛性aKn、及びこれらの比α1,α2を表5に示す。なお、理論値cKn1は、軸力Nを考慮していない理論値であり、理論値cKn2は軸力Nを考慮している理論値であり、軸力比が-0.31以上0.32以下の範囲では、理論値cKn1と理論値cKn2は略同じであることがわかる。また、理論値cKn1,cKn2に対する等積割線剛性aKnの比α1及びα2の各平均値は略1.0であり、理論値cKn1,cKn2を等積割線剛性aKnに等しいとみなすことができるがわかる。
一方、表5中、軸力比-0.31の供試体C-3の初期剛性理論値cKn1,cKn2は、曲げ剛性EIの算出にあたり外鋼管3及び内鋼管4の寄与のみを考慮して求めたものであり、このため、比α1、α2が他の供試体に比べ大きくなっている。供試体C-3についても、曲げ剛性EIの算出にあたり、コンクリート部6の圧縮領域の寄与を見込めば、初期剛性理論値cKn1が1.12×105kN・m/radとなり、比α1が0.99となる。つまり、曲げ剛性EIの算出にあたり、コンクリート部6の圧縮領域の寄与を適切に見込めば、初期剛性理論値cKn1,cKn2を適切に求めることができることがわかる。
図10に、試験で得られた供試体C-1、C-4の外鋼管3と内鋼管4のひずみ分布を示す。ひずみ分布は、正側加力時に外鋼管3が降伏に達した時点(実線)および最大耐力時(破線)の分布であり、外鋼管3の降伏ひずみを縦実線で、内鋼管4の降伏ひずみを縦破線で併記している。外鋼管3の降伏時のひずみは、外鋼管3より内鋼管4の方が小さいが、最大耐力Mmax時には、内鋼管4も降伏していることがわかる。また、0mm以深のスタブ13内に着目すると、スタブ13下方から上方に向けて線形的に増加するひずみが発生しており、スタブ13内でもWSC杭1が抜け出していたと考えられる。
θb=0.5×φb×Lb ・・・(10)
ここに、Lbはスタブ13内の杭長(m)である。
また、表8中、供試体C-3について、終局部材角Ruの値を()内に示したのは、供試体C-3については実験終了時の曲げモーメントが0.8Mmaxまで低下しなかったため、実験終了時の部材角Rを終局部材角Ruに代えて参考値として示してあるためである。
なお、供試体D-1の仕様は、充填部9を構成するグラウトの圧縮強度σgが20N/mm2である点においてのみ、供試体C-2の仕様と異なっている。供試体D-1の結果から明らかなように、グラウトの強度が相対的に小さくても、塑性率6以上を確保できることがわかる。
例えば、上述した実施形態では、曲げモーメントMと部材角R(若しくは修正部材角mR)との関係(Mθ関係)でバイリニア型モデルBLMを作成したが、各部材角R(若しくは修正部材角mR)に対応するWSC杭1の曲率φを求めて、曲げモーメントMと曲率φとの関係(Mφ関係)でバイリニア型モデルBLMを作成してもよい。この場合の初期剛性の理論値cKnを理論値cKn3としたとき、理論値cKn3として例えばEIを用いることができる。
φ=((δ+-δs+)/L’+(δ--δs-)/L’)/D’ ・・・(11)
式(11)によれば、スタブ13内におけるWSC杭1の変形量の影響を除外して、スタブ13上端近傍でのWSC杭1の曲率φを的確に求めることができる。
なお式(11)中、D’は、加力方向両側の変位計19の水平方向での距離である。
なお、表9中、供試体C-3について、終局曲率φu等の値を()内に示したのは、供試体C-3については、実験終了時の曲げモーメントが0.8Mmaxまで低下しなかったため、実験終了時の曲率φを終局曲率φu等に代えて参考値として示してあるためである。
つまり、復元力特性のモデルは、傾斜部分aと水平部分bによって構成されるバイリニア型モデルそのもの(原型)であってもよいし、該バイリニア型モデルを原型としながらそれを近似するように多少の変形を加えたもの(近似型モデル)であってもよい。
また、外鋼管3としては、SKK材のみならず、STK材、SM材、SS材、国土交通大臣認定の材料を用いてもよい。同様に、内鋼管4としては、STK材のみならず、SKK材、SM材、SS材、国土交通大臣認定の材料を用いてもよい。
3 外鋼管
4 内鋼管
5 杭体
6 コンクリート部
7 端板
9 充填部
13 スタブ
15 反力床
17 歪みゲージ
19 変位計
Claims (12)
- 中空で円筒形状の外鋼管と、
前記外鋼管の内側に配置された中空で円筒形状の内鋼管と、
前記外鋼管と前記内鋼管との間に前記外鋼管に接して配置され、コンクリートによって構成された円筒形状のコンクリート部と、を備える二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデルであって、
前記コンクリート部の径方向にて最外縁における前記コンクリート部の圧縮歪みが所定の値であると仮定して平面保持仮定に基づく断面解析により求められた、所定の軸力における前記二重鋼管付きコンクリート杭の最大耐力の所定の割合に相当する信頼強度時曲げモーメントと、
前記二重鋼管付きコンクリート杭の初期剛性の理論値に基づいて求められ、前記二重鋼管付きコンクリート杭の等積割線剛性に相当する弾性剛性と、
を原型とする
ことを特徴とする二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル。 - 前記外鋼管及び前記内鋼管の座屈を考慮に入れて前記断面解析が行われることを特徴とする請求項1に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル。
- 前記初期剛性の理論値をcKn1としたとき、前記初期剛性の理論値cKn1は以下の式(1):
cKn1=3EI/L ・・・(1)
(ただし、式(1)中、Lは要素長(m)であり、EIは前記二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)である。)
によって求められることを特徴とする請求項1又は2に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル。 - 前記初期剛性の理論値をcKn2としたとき、前記初期剛性の理論値cKn2は以下の式(2)及び式(3):
cKn2=(N×L×tankL)/(tankL-kL) ・・・(2)
k=(N/EI)^0.5 ・・・(3)
(ただし、式(2)及び式(3)中、Lは要素長(m)であり、Nは軸力(kN)であり、EIは前記二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)である。)
によって求められることを特徴とする請求項1又は2に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル。 - 前記コンクリート部の圧縮歪みの所定の値は、試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の載荷試験を行って決定されたものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル。
- 前記載荷試験は、前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の一端側をスタブ内に固定して行った片持ち梁式の載荷試験であり、
前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の部材角又は曲率を求める際に、前記スタブ内での前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の変形が考慮されている
ことを特徴とする請求項5に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル。 - 中空で円筒形状の外鋼管と、
前記外鋼管の内側に配置された中空で円筒形状の内鋼管と、
前記外鋼管と前記内鋼管との間に前記外鋼管に接して配置され、コンクリートによって構成された円筒形状のコンクリート部と、を備える二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル化方法であって、
所定の軸力における前記二重鋼管付きコンクリート杭の最大耐力の所定の割合に相当する信頼強度時曲げモーメントを、前記コンクリート部の径方向にて最外縁における前記コンクリート部の圧縮歪みが所定の値であると仮定して平面保持仮定に基づく断面解析により求める信頼強度時曲げモーメント演算工程と、
前記二重鋼管付きコンクリート杭の等積割線剛性に相当する弾性剛性を、前記二重鋼管付きコンクリート杭の初期剛性の理論値に基づいて求める弾性剛性演算剛性工程と、
を備える
ことを特徴とする二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル化方法。 - 前記信頼強度時曲げモーメント演算工程において、前記外鋼管及び前記内鋼管の座屈を考慮に入れて前記断面解析を行うことを特徴とする請求項7に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル化方法。
- 前記弾性剛性演算工程において、前記初期剛性の理論値をcKn1としたとき、前記初期剛性の理論値cKn1を以下の式(1):
cKn1=3EI/L ・・・(1)
(ただし、式(1)中、Lは要素長(m)であり、EIは前記二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)である。)
によって求めることを特徴とする請求項7又は8に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル化方法。 - 前記弾性剛性演算工程において、前記初期剛性の理論値をcKn2としたとき、前記初期剛性の理論値cKn2を以下の式(2)及び式(3):
cKn2=(N×L×tankL)/(tankL-kL) ・・・(2)
k=(N/EI)^0.5 ・・・(3)
(ただし、式(2)及び式(3)中、Lは要素長(m)であり、Nは軸力(kN)であり、EIは前記二重鋼管付きコンクリート杭の曲げ剛性(kN・m2)、である。)
によって求めることを特徴とする請求項7又は8に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル化方法。 - 前記信頼強度時曲げモーメント演算工程において、前記コンクリート部の圧縮歪みの所定の値を、試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の載荷試験を行って決定することを特徴とする請求項7乃至10の何れか1項に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル化方法。
- 前記載荷試験は、前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の一端側をスタブ内に固定して行った片持ち梁式の載荷試験であり、
前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の部材角又は曲率を求める際に前記スタブ内での前記試験用の二重鋼管付きコンクリート杭の変形を考慮する
ことを特徴とする請求項11に記載の二重鋼管付きコンクリート杭の復元力特性のモデル化方法。
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