JP2006161363A - 杭の設計システム - Google Patents

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Akira Otsuki
明 大槻
Kazuhiko Isoda
和彦 磯田
Keiji Nakanishi
啓二 中西
Hiromasa Tanaka
宏征 田中
Yoichi Kobayashi
洋一 小林
Yukihiro Kurio
幸弘 栗生
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Abstract

【課題】 変形指向型設計法による杭の設計作業を自動化した杭の設計システムを構築し、以て杭基礎の設計業務を大幅に短縮することを目的とする。
【解決手段】 第一データ入力部1において荷重データ、杭データ、および地盤データを入力すると、第一解析モデル生成部4において線形な地盤・杭系モデルを生成し、第一評価部6において線形な地盤・杭系モデルについて静的解析を実施して中小地震に対する杭の評価を行い、その結果を第一出力部8より出力する。引き続き、第二解析モデル生成部5において非線形な地盤・杭系モデルを生成し、第二評価部7において非線形な地盤・杭系モデルについて地震荷重に対する静的増分解析を実施して杭の終局耐力および変形量を評価し、その結果を第二出力部9より出力する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、杭の設計システムに関し、特に、杭の変形性能を考慮した杭の設計システムに関する。
建築構造物の基礎杭として場所打ちコンクリート杭や既製杭が広く用いられているが、経済的理由から近年では、柱を一つの杭で支持する一柱一杭の構造形式が多数用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
一柱一杭基礎は、1本の杭で大きな鉛直荷重を支持するため、地震時に杭頭付近に極めて大きな断面力(曲げモーメント、せん断力)が生じる傾向にある。このため、建物を支えるのに十分な杭径よりさらに大きな杭径としたり、杭頭補強が必要となったりする。例えば、杭頭付近の拡径(拡頭場所打ち杭)や鋼管巻き(耐震場所打ち杭)による高耐力杭を用いた設計が一般的である。
他方、東海地震や南海地震あるいは都市直下地震など都市の安全性を脅かす地震が近い将来起きることが予想されている。厚い堆積地盤上に立地している大都市に大地震が発生した場合、地盤が大きく揺れ、液状化が起こりやすい。設計地震動の大規模化を考えると、杭頭部の断面性能のさらなる向上が必要となる。
しかし、杭の高剛性・高耐力化は杭に大きな曲げモーメントを発生させるため、杭径や杭頭補強の増大を招く従来設計法(杭耐力で地震荷重に耐える設計:耐力指向型設計法)には限界がある(非特許文献2参照)。
今本 泰久、外3名、「一柱一杭工法」、NKK技報、2000年3月、No.169、p.47−51 「地震力に対する建築物の基礎の設計指針」、財団法人日本建築センター、1995年
従来の耐力指向型設計法は以下のような課題を有している。
(a)中高層建物の基礎として場所打ちコンクリート杭は一般的工法であるが、耐力指向型設計法を用いると、液状化地盤や軟弱地盤では、杭剛性に比例して杭頭付近の曲げモーメントが増大する。このため、二重配筋の主筋を有する拡頭杭や鋼管巻き場所打ちコンクリート杭が用いられるが、杭頭の曲げモーメントが増大するため、接合部や基礎梁の設計・施工に苦慮することが多く、杭を含む基礎のコストアップの要因となっている。
(b)近年、高強度コンクリートを用いることにより大きな鉛直荷重を負担できるコンクリート既製杭が実用化されており、10MN以下の常時軸力に適用可能となっている。しかし、この杭を耐力指向型設計法で評価した場合、地震荷重に耐えられる杭径は建物荷重を支持するのに必要な杭径よりも大幅に大きなものとなる。このため、杭頭曲げモーメントの増大に伴い、場所打ちコンクリート杭と同様の課題が生じる。
(c)杭の損傷により10cm以上の沈下が生じると、建物にとって有害な傾斜が発生し、基礎の補修無しでは建物の継続使用が困難となる。このような被害を防止するためには、杭断面を大きくして耐力を増大させる耐力指向型設計法だけでなく、変形を許容する新しい設計理念(杭の変形エネルギーで地震荷重に耐える設計:変形指向型設計法)を導入することにより、基礎の安全余裕度を確保し、杭の損傷を防止する必要がある。
(d)建設コストの削減の観点から近年、杭頭と基礎梁間の接合構造の合理化が進められている。具体的には、大地震時に杭頭と基礎梁間の僅かな残留変形を許容することにより、杭体や杭頭接合部の合理化が可能である。そして、この新しい基礎の安全性を確保するためには、耐力だけでなく杭頭の変形(回転量)の評価が重要となる。即ち、変形許容型の基礎の設計には変形指向型設計法が必要となる。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、変形指向型設計法による杭の設計作業を自動化した杭の設計システムを構築し、以て杭基礎の設計業務を大幅に短縮することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る杭の設計システムは、杭が有する変形性能を考慮した杭の設計システムであって、杭に作用する層せん断力や軸力等の荷重データ、杭径や杭長等の杭データ、および地盤データを入力するデータ入力部と、前記入力データに基づいて、非線形な曲げモーメント−曲率関係を有する杭モデルおよび当該杭モデルに連結された地盤ばねからなる地盤・杭系モデルを生成する解析モデル生成部と、前記地盤・杭系モデルについて静的増分解析を実施し、杭の終局耐力および変形量を終局限界曲線を用いて評価する評価部と、前記評価結果を出力する出力部とを備えることを特徴とする。
ここで、終局限界曲線とは、終局限界曲げモーメントMと終局限界圧縮耐力Nの相関曲線のことである。杭の最大変形量は杭の最大耐力に対応しており、杭について変形指向型設計をする際、終局限界曲線を用いて杭断面力が終局耐力以内にあるかどうかを判定すればよい。
本発明に係る杭の設計システムに荷重データ、杭データ、および地盤データを入力すれば、杭の設計システムが、当該入力データに基づいて、非線形な曲げモーメント−曲率関係を有する杭モデルおよび当該杭モデルに連結された地盤ばねからなる地盤・杭系モデルを生成し、当該地盤・杭系モデルについて静的増分解析を実施して杭の終局耐力および変形量を自動的に評価する。これにより、設計者は変形指向型設計法による杭の設計を容易に行うことができ、その結果、杭基礎の設計業務を大幅に短縮することができる。
また、本発明に係る杭の設計システムでは、鋼管内にコンクリートが充填されてなる杭を対象とする場合、前記曲げモーメント−曲率関係は、圧縮側鋼管降伏時、引張側鋼管降伏時、および最大耐力点を折れ点とするトリリニア型であって、前記最大耐力点は、前記コンクリートの圧縮縁歪ε’が(1)式に示す値に達したときの杭耐力であることを特徴とする。
Figure 2006161363
但し、α=1.2〜1.8、β=0.003〜0.009、D:鋼管径、t:鋼管厚、σsy:鋼管の降伏強度、E:鋼管の弾性係数
ここで、鋼管内にコンクリートが充填されてなる杭には、コンクリート充填鋼管杭だけでなく、杭断面に中空部を有するSC杭( 外殻鋼管付遠心力コンクリート杭)なども含んでいる。
本発明では、鋼管内にコンクリートが充填されてなる杭について実施した圧縮曲げせん断試験の試験結果に基づいて定量的に評価した杭の曲げモーメント−曲率関係を杭モデルに適用することにより、安全に建物荷重を支持することができる変形性能を有する杭を自動的に設計することが可能となる。
また、本発明に係る杭の設計システムでは、前記杭モデルは負のばね定数を有する水平ばねを備えていてもよい。
杭頭部が大きく水平変形すると、杭頭部に作用する鉛直荷重によって杭体に転倒モーメントが生じる。この現象はPΔ効果と呼ばれ、変形指向型設計法では、このPΔ効果の影響を評価することが重要となる。
杭が水平変形すると、それを押し戻そうとする反力が発生するが、負のばね定数を有する水平ばねが付加された杭モデルの場合には、杭モデルが水平変形する方向に付勢力が作用する。即ち、杭モデルに負のばね定数を有する水平ばねを付加することにより、杭に作用するPΔ効果を模擬することができる。これにより、PΔ効果の影響を考慮した杭の設計が可能となる。
本発明に係る杭の設計システムに荷重データ、杭データ、および地盤データを入力すれば、杭の設計システムが、当該入力データに基づいて、非線形な曲げモーメント−曲率関係を有する杭モデルおよび当該杭モデルに連結された地盤ばねからなる地盤・杭系モデルを生成し、当該地盤・杭系モデルについて静的増分解析を実施して杭の終局耐力および変形量を自動的に評価するので、変形指向型設計法による杭の設計が容易となり、杭基礎の設計業務を大幅に短縮することができる。
以下、本発明に係る杭の設計システムについて図面に基づいて説明する。
本発明に係る杭の設計システムでは、現行設計法に加えて変形指向型設計法に基づいた杭の設計を行うことができる。変形指向型設計法は、PHC杭( プレテンション方式による遠心力高強度コンクリート杭)などの変形性能の低い耐力杭よりも、コンクリート充填鋼管杭やSC杭などの地盤変形に追随可能な変形性に富む靭性杭に適した評価法である。変形指向型設計法の特長を以下に示す。
(1)耐震余裕度のある設計を行うことにより、数百年に一度の大地震による杭基礎の被害を防止することができる。
(2)杭の非線形性と杭周辺地盤の非線形性を最大限に活用することにより、合理的な杭の設計が可能である。
(3)杭基礎のコストダウンが図れる。例えば、変形指向型の設計を行うと、曲げモーメントの大きさが現行設計法の半分になる。
本実施形態による杭の設計システムでは、先ず杭の1次設計を行い、引き続き杭の2次設計を行う。1次設計は中小地震を対象とし、杭の断面力が短期許容応力度以内に収まるようにする。1次設計は現行設計法に相当し、杭耐力で外力に耐える評価法である。
また、2次設計は大地震を対象とし、杭頭部の変形が限界曲率(杭の最大変形時の曲率)以内に収まるようにする。杭頭部付近に若干の残留変形が生じるが、鉛直支持力を十分確保でき、建物の継続使用が可能である。
そのため、本システムは、1次設計、2次設計それぞれについてデータ入力部、解析モデル生成部、評価部、出力部を備えている。
図1および2は、本発明に係る杭の設計システムの概略手順を示すフロー図である。以下、フロー図に基づき、本システムの概要について説明する。
先ず、第一データ入力部1において、杭に作用する層せん断力・常時軸力・変動軸力等の荷重データの設定(S1)、並びに杭種・杭配置・杭頭条件・杭長等の杭データおよび層厚・土質名・単位体積重量・N値・水位深度等の地盤データの設定(S2)を行う。
本システムでは、支持杭や摩擦杭を含む全杭種を対象とし、変形指向型の杭ばかりでなく耐力指向型の杭の設計も行うことができる。
第一データ入力部1における初期データの入力が完了すると、最初に杭の1次設計が行われる。
第二データ入力部2において杭径や鋼管厚などを入力し(S3)、第一解析モデル生成部4において解析モデルが生成される。図3は解析モデルの概略立断面図である。
図3に示すように、本解析モデルでは上部構造と下部構造は分離され、基礎Fと杭モデルPからなる下部構造と地盤Gを一体にモデル化した地盤・杭系モデルの生成を行う(S6)。
基礎Fは剛基礎を仮定し、全ての杭モデルP…の水平方向の変形量は全て同じであると仮定している。
杭モデルPは線形な梁要素からなり(S4)、基礎Fとの接合部は完全剛または完全ピンのいずれかを選択することができる。また、杭モデルP全長に亘って線形な地盤ばねSが連結され、杭モデルPの先端部には杭先端部の固定条件を考慮した回転ばねSが連結されている。ここで、線形な地盤ばねSの値は、N値による推定値や原位置載荷試験結果に基づくヤング率などに基づき、深さ方向に応じた地盤ばねSが自動的に設定される(S5)。
線形な地盤・杭系モデルが生成されると、第一評価部6において、線形な地盤・杭系モデルについて静的解析を実施し、杭の断面力が短期許容応力度以内に収まっているかどうか応力評価が行われる。
先ず、使用限界時(S7)、即ち鉛直荷重が杭耐力内かどうか支持力のチェックが行われる(S8)。そして、鉛直荷重が杭の支持力を超えていた場合には第二データ入力部2に戻り、杭径、杭種、鋼管厚あるいは杭頭部補強長などの再設定を行い(S3)、再び、使用限界時の評価を行う(S7、8)。
一方、鉛直荷重が杭の支持力以内である場合は、曲げモーメントMと軸力Nの相関曲線であるMN曲線を用いて中小地震に対する杭の応力評価を行う(S9、10)。図4に使用するMN曲線を示す。同図には、短期MN曲線Lと終局MN曲線(終局限界曲線)Lが示されているが、1次設計では、杭の断面力が短期MN曲線L内に収まっているかどうかのチェックが行われる(S10)。杭の断面力が短期MN曲線Lを超えていた場合には第二データ入力部2に戻り、杭径等の再設定を行い(S3)、再び、使用限界時(S7、8)および中小地震に対する検討(S9、10)を行う。
杭の断面力が短期MN曲線L内に収まっている場合は、第一出力部8において、短期MN曲線L上に杭の断面力がプロットされた図、深さ方向の変位分布図、応力分布図、並びに計算値が出力され(S11)、杭の2次設計に移行する。
杭の2次設計は変形指向型設計法に基づいて行われる。
最初に、第二解析モデル生成部5において解析モデルの生成が行われる。解析モデルは、1次設計の場合と同様、図3に示した基礎Fと杭モデルPからなる下部構造と地盤Gを一体にモデル化した地盤・杭系モデルである(S15)。但し、2次設計では、杭モデルPおよび地盤ばねSには非線形要素を使用する。
杭モデルPは非線形な曲げモーメント−曲率関係を有するものとし、杭ごとに深さ方向に応じた曲げモーメント−曲率関係が自動的に設定される(S12)。特に、コンクリート充填鋼管杭やSC杭などの鋼管内にコンクリートが充填された杭の場合には、図5に示すトリリニア型の曲げモーメント−曲率関係を有する杭モデルPを使用する。図中、Kは圧縮側鋼管降伏時、Kは引張側鋼管降伏時、Kは最大耐力点(限界曲率C時)にそれぞれ対応しており、最大耐力点は、鋼管内コンクリートの圧縮縁歪ε’が(2)式に示す値に達したときの杭耐力である。
Figure 2006161363
但し、α=1.2〜1.8(最適値1.474)、β=0.003〜0.009(最適値0.006)、D:鋼管径、t:鋼管厚、σsy:鋼管の降伏強度、E:鋼管の弾性係数
本システムでは、上記トリリニア型の曲げモーメント−曲率関係を、杭断面における平面保持を仮定し、ファイバーモデルを用いて算出している。ファイバーモデルは、部材断面を複数の繊維状の要素に分割し、それぞれの要素について応力−歪関係を定義して解析する断面分割法である。ここでは、鋼材の応力−歪関係は完全弾塑性とし、コンクリートの応力−歪関係では、一軸圧縮強度到達後の強度と鋼管によるコンファインド効果を無視している。
一方、地盤ばねSは、上限値を設定してバイリニア型やトリリニア型の非線形ばねを選択することができる(S13、14)。
なお、終局状態における杭モデルPの崩壊メカニズムは、杭頭ヒンジのみ許容し、2点ヒンジおよびせん断破壊は許容しないものとしている。
これまでの研究では、建築物の柱としてのコンクリート充填鋼管の耐荷力、鋼管によるコンクリートの拘束効果に関する成果は多数あるが、変形性能に着目した実験は極めて少ない。その中で、鉄道構造物の設計指針作成に当たって実施された一連の実験は耐荷力のみならず変形性能にも着目し、各種条件に応じたコンクリート充填鋼管杭柱の耐力、塑性変形性能の定量的評価法を提示している(村田清満、外5名、「コンクリート充填円形鋼管柱の変形性能の再評価」、土木学会論文集、No.640/I−50、2001年1月、p.149−163)。
しかしながら、鉄道構造物の実験は高架橋の橋脚への適用を想定しており、杭への適用を考えた場合、杭として重要な条件である軸力比が0.3以上の範囲とせん断スパン比が6以上の範囲についてその適用性が確認されていない。そこで、発明者らは、これらのパラメータを考慮した杭の載荷実験を実施し、杭の曲げモーメント−曲率関係や安全に建物荷重を支持することのできる杭の最大水平変形量を評価する方法を構築した。
非線形な地盤・杭系モデルが生成されると、第二評価部7において、大地震に対する杭の安全性の評価が行われる。
第二評価部7では、先ず、地盤変形を考慮するかどうか選択する(S17)。地盤変形を考慮する場合は、別途、重複反射理論に基づく一次元地震応答解析プログラムSHAKEなどによって得られた地盤の最大変形分布値を本システムに入力する(S18)。
その後、第二解析モデル生成部5において生成された地盤・杭系モデルを用いて地震荷重に対する静的増分解析を実施して杭の塑性化を追跡することにより、大地震に対する杭の安全性の検討を行う(S19)。この際、杭の水平変形に伴うPΔ効果を考慮する場合には(S20)、地盤・杭系モデル生成時に、杭モデルとして図6に示すモデルを使用する。
この杭モデルPは、負のばね定数を有する水平ばねSを各梁要素Bに付加したものである。梁要素Bに水平方向の相間変形が生じると、負のばね定数を有する水平ばねSによって、水平変形する方向に付勢力が作用するものである。ここで、負のばね定数は、−(杭重量/杭長)で与えられる。
静的増分解析によって得られた杭断面力が終局耐力内にあるかどうか、また変形量が杭の最大変形性能内かどうかなどは、図4のMN曲線によって評価される(S21)。具体的には、杭の断面力が終局MN曲線L内に収まっているかどうかにより杭の安全性が判断される。杭の断面力が終局MN曲線Lを超えていた場合には、第三データ入力部3に戻り、杭径等の再設定を行い(S16)、再度、第二評価部7において安全限界時の検討が行われる(S19、21)。
一方、杭の断面力が終局MN曲線L内に収まっている場合は、第二出力部9において、終局MN曲線L上に杭の断面力がプロットされた図、深さ方向の変位分布図、応力分布図、塑性率分布図、並びに計算値が出力され(S22)、杭の設計が終了する(S23)。本システムでは、終局MN曲線L上に杭の断面力がプロットされた図から終局時の杭の耐震余裕度を、深さ方向の塑性率から杭の損傷部位をそれぞれ簡便に評価することができる。
次に、本実施形態による杭の設計システムを用いて設計したコンクリート充填鋼管場所打ち杭と現行設計による拡頭場所打ち杭とのコスト比較を行う。
主な設計条件を以下に示す。
地盤のN値は3、5、10とし、杭頭震度は0.17、中柱下の杭を想定し、常時軸力で断面を検討する。コンクリート強度は27N/mm、鋼管にはSKK490を使用し、概略コストは、場所打ちコンクリート杭で一式3万円/m(残土費含む)、鋼材11万2千円/tで算出する。
N値3の場合の両杭の諸元とコストを表1に示す。
Figure 2006161363
また、杭長50mの場合について地盤条件をパラメータとしたコスト比較結果を図7に示す。図中、Nは軸力5MNの場合、Nは軸力10MNの場合、Nは軸力15MNの場合をそれぞれ示している。同図より、広範囲の地盤条件下で、常時軸力が大きい場合、コンクリート充填鋼管場所打ち杭は拡頭場所打ち杭に対して大きなコストメリットを有しており、2〜3割程度のコスト低減を図れる可能性があることがわかる。
本実施形態による杭の設計システムは、現行設計法である1次設計(中小地震対応)に加えて2次設計(大地震対応)が可能なシステムであり、本システムに荷重データ、杭データ、および地盤データを入力すれば、当該システムが、入力データに基づいて、非線形な曲げモーメント−曲率関係を有する杭モデルおよび当該杭モデルに連結された地盤ばねからなる地盤・杭系モデルを生成し、当該地盤・杭系モデルについて静的増分解析を実施して杭の終局耐力および変形量を自動的に評価する。これにより、変形指向型設計法による杭の設計が容易となり、杭基礎の設計業務を大幅に短縮することができる。
また、本実施形態による杭の設計システムでは、少ない入力データに基づいて複雑な解析モデルを自動的に構築するので利用者の負担が軽減されるうえ、出力結果も可視化されており、ユーザーフレンドリーなシステムとなっている。
さらに、本実施形態による杭の設計システムでは、杭頭変位の増大によって生じるPΔ効果を考慮することができるので、大地震時における杭の大変形を高精度で評価することができる。
なお、本発明に係る杭の設計システムは、Microsoft Excel(登録商標)などの表計算ソフトウェア上で実現することが可能であり、費用対効果の高いシステムである。
以上、本発明に係る杭の設計システムの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明に係る杭の設計システムの概略手順を示すフロー図である。 本発明に係る杭の設計システムの概略手順を示すフロー図である。 解析モデルの概略立断面図である。 杭のMN曲線図である。 変形指向型設計に用いる杭の曲げモーメント−曲率関係を示す図である。 PΔ効果を考慮した杭モデルの概略図である。 拡頭場所打ち杭とコンクリート充填鋼管場所打ち杭の地盤条件の違いによるコスト比較図である。
符号の説明
1 第一データ入力部
2 第二データ入力部
3 第三データ入力部
4 第一解析モデル生成部
5 第二解析モデル生成部
6 第一評価部
7 第二評価部
8 第一出力部
9 第二出力部
P 杭モデル
F 基礎
G 地盤
地盤ばね
回転ばね
負のばね定数を有する水平ばね
短期MN曲線
終局MN曲線(終局限界曲線)
C 限界曲率
B 梁要素

Claims (3)

  1. 杭が有する変形性能を考慮した杭の設計システムであって、
    杭に作用する層せん断力や軸力等の荷重データ、杭径や杭長等の杭データ、および地盤データを入力するデータ入力部と、
    前記入力データに基づいて、非線形な曲げモーメント−曲率関係を有する杭モデルおよび当該杭モデルに連結された地盤ばねからなる地盤・杭系モデルを生成する解析モデル生成部と、
    前記地盤・杭系モデルについて静的増分解析を実施し、杭の終局耐力および変形量を終局限界曲線を用いて評価する評価部と、
    前記評価結果を出力する出力部とを備えることを特徴とする杭の設計システム。
  2. 鋼管内にコンクリートが充填されてなる杭を対象とし、
    前記曲げモーメント−曲率関係は、圧縮側鋼管降伏時、引張側鋼管降伏時、および最大耐力点を折れ点とするトリリニア型であって、前記最大耐力点は、前記コンクリートの圧縮縁歪ε’が(1)式に示す値に達したときの杭耐力であることを特徴とする請求項1に記載の杭の設計システム。
    Figure 2006161363
    但し、α=1.2〜1.8、β=0.003〜0.009、D:鋼管径、t:鋼管厚、σsy:鋼管の降伏強度、E:鋼管の弾性係数
  3. 前記杭モデルは負のばね定数を有する水平ばねを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の杭の設計システム。
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