JP2020180522A - 外殻鋼管付コンクリートパイル及び、その設計方法 - Google Patents

外殻鋼管付コンクリートパイル及び、その設計方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外殻鋼管又はコンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、外殻鋼管及びコンクリートがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するときのひずみを互いに近づけるようにした外殻鋼管付コンクリートパイル並びに設計方法を提供する。【解決手段】外殻鋼管に490材を用い、コンクリートにヤング係数Ecが、36000[N/mm2]≦Ec≦50000[N/mm2]のものを用いる。コンクリートの設計基準強度Fcを(105/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<(123/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)の範囲とした、外殻鋼管付コンクリートパイルとする。【選択図】図3

Description

この発明は、外殻鋼管付コンクリートパイル及び、その設計方法に関する。
例えば特許文献1に開示されているように、外殻鋼管とコンクリートとで構成された外殻鋼管付コンクリートパイルが知られている。
特開2012−57342号公報
外殻鋼管に400材(短期許容圧縮応力度fs=235[N/mm]、ヤング係数Es=205000[N/mm])を用い、コンクリートの設計基準強度Fc=105[N/mm]、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のものを用いるとする。この場合、コンクリートの短期許容圧縮応力度fcは、
fc=Fc×2/3.5=105×2/3.5=60[N/mm
となる。
外殻鋼管に生じる応力(応力度)が短期許容圧縮応力度fs=235[N/mm]に達するときのひずみεsは、
εs=fs/Es=235/205000=1146×10−6
であり、そのときのコンクリートに生じる圧縮応力度fcは、
fc=εs・Ec=1146×10−6×40000=45.85[N/mm]・・・(1)式
となる。
ここで、外殻鋼管付コンクリートパイルの圧縮側耐力は、外殻鋼管とコンクリートとの弱い方の強度で決まる。このため、高強度のコンクリートを外殻鋼管の内壁に打設しても、外殻鋼管付コンクリートパイルの圧縮側耐力は、コンクリートの短期許容圧縮応力度fc=60[N/mm]ではなく、(1)式より算出された45.85[N/mm]となる。すなわち、外殻鋼管に生じる応力が短期許容圧縮応力度fs=235[N/mm]に達しても、コンクリートの圧縮耐力には余裕がある。
同様に、外殻鋼管に490材(短期許容圧縮応力度fs=325[N/mm]、ヤング係数Es=205000[N/mm])を用い、コンクリートの設計基準強度Fc=123[N/mm]、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のものを用いるとする。この場合、コンクリートの短期許容圧縮応力度fcは、
fc=123×2/3.5=70[N/mm
となる。
外殻鋼管に生じる応力(応力度)が短期許容圧縮応力度fs=325[N/mm]に達するときのひずみεsは、
εs=fs/Es=325/205000=1585×10−6
であり、そのときのコンクリートに生じる圧縮応力度fcは、
fc=εs・Ec=1585×10−6×40000=63.4[N/mm]・・・(2)式
となる。
このため、高強度のコンクリートを外殻鋼管の内壁に打設しても、外殻鋼管付コンクリートパイルの圧縮側耐力は、コンクリートの短期許容圧縮応力度fc=70[N/mm]ではなく、(2)式より算出された63.4[N/mm]となる。すなわち、外殻鋼管に生じる応力が短期許容圧縮応力度fsに達しても、コンクリートの圧縮耐力には余裕がある。
一方、素材の選択によっては、外殻鋼管に生じる応力が短期許容圧縮応力度fsに達する前に、コンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度fcに達する場合もある。このときには、外殻鋼管の圧縮耐力には余裕がある。
このように、外殻鋼管付コンクリートパイルに圧縮力が作用し、ひずみが増していったとき、外殻鋼管付コンクリートパイルの外殻鋼管に生じる応力が短期許容圧縮応力度に達するときのひずみ、及び、コンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達するときのひずみには差があり、従来の外殻鋼管付コンクリートパイルでは、外殻鋼管又はコンクリートに必要以上に大きな強度を与えている場合がある。
この発明の目的は、外殻鋼管又はコンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、外殻鋼管及びコンクリートがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するときのひずみを互いに近づけた外殻鋼管付コンクリートパイル、及び、その設計方法を提供することである。
本発明の一態様に係る、外殻鋼管付きコンクリートパイルは、外殻鋼管にいわゆる490材を用い、コンクリートにヤング係数Ecが、36000[N/mm]≦Ec≦50000[N/mm]のものを用いる。そして、コンクリートの設計基準強度Fcを
(105/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<(123/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
の範囲とした。
本態様によれば、外殻鋼管又はコンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、鋼管及びコンクリートがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するときのひずみを互いに近づけた外殻鋼管付コンクリートパイルが提供される。
上述した一態様において、コンクリートパイルは、係数αを(105/111.0)<α<1とし、係数βを1<β<(123/111.0)としたとき、前記コンクリートの前記設計基準強度Fcをα×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<β×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)の範囲とした。
本態様によれば、外殻鋼管又はコンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、外殻鋼管及びコンクリートがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するときのひずみを互いに近づけた外殻鋼管付コンクリートパイルが提供される。
上述した一態様において、コンクリートパイルは、前記コンクリートの前記設計基準強度Fcを、Fc=fs/(Es/Ec)×(3.5/2)とし、前記外殻鋼管付コンクリートパイルへの圧縮荷重により、前記外殻鋼管付コンクリートパイルへのひずみを増やしていったときに、同一又は略同一のひずみで、前記外殻鋼管の短期許容圧縮応力度fsと前記コンクリートの短期許容圧縮応力度fcとがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するようにした。
本態様によれば、外殻鋼管又はコンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、外殻鋼管及びコンクリートがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するときのひずみを互いに、同一又は略同一にした外殻鋼管付コンクリートパイルが提供される。
本発明の他の一態様に係る、外殻鋼管付きコンクリートパイルの設計方法は、外殻鋼管に490材を用い、コンクリートにヤング係数Ecが、36000[N/mm]≦Ec≦50000[N/mm]のものを用いる場合、前記コンクリートの設計基準強度Fcを、(105/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<(123/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)の範囲に設定する。
本態様によれば、外殻鋼管又はコンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、外殻鋼管及びコンクリートがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するときのひずみを互いに近づけた外殻鋼管付コンクリートパイルの設計方法が提供される。
上述した他の一態様において、コンクリートパイルの設計方法は、前記コンクリートの前記設計基準強度Fcを、Fc=fs/(Es/Ec)×(3.5/2)とし、前記外殻鋼管付コンクリートパイルへの圧縮荷重により、前記外殻鋼管付コンクリートパイルへのひずみを増やしていったときに、同一又は略同一のひずみで、前記外殻鋼管の短期許容圧縮応力度fsと前記コンクリートの短期許容圧縮応力度fcとがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するようにする。
本態様によれば、外殻鋼管又はコンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、外殻鋼管及びコンクリートがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するときのひずみを互いに、同一又は略同一にする外殻鋼管付コンクリートパイルの設計方法が提供される。
この発明によれば、外殻鋼管又はコンクリートに生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、外殻鋼管及びコンクリートがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するときのひずみを互いに近づけた外殻鋼管付コンクリートパイル、及び、その設計方法を提供することができる。
図1は、外殻鋼管付コンクリートパイル(SC杭)の概略図である。 図2は、横軸にひずみ、縦軸に圧縮応力(圧縮応力度)をとったときの、SC杭の490材の外殻鋼管(ヤング係数Es=205000[N/mm])及びコンクリート(ヤング係数Ec=40000[N/mm])の応力‐ひずみ線図である。 図3は、横軸にSC杭のコンクリートのヤング係数Ecを、縦軸にコンクリートの設計基準強度Fcを取ったときの、ヤング係数Ecが36000[N/mm]≦Ec≦50000[N/mm]のときの、参照例1のSC杭のコンクリートの設計基準強度Fc(一点鎖線の直線)、参照例2のSC杭のコンクリートの設計基準強度Fc(破線の直線)、及び、外殻鋼管に対するコンクリートの圧縮側耐力の無駄を最も小さくしたSC杭のコンクリートの設計基準強度Fc(実線の直線)を示す概略的なグラフである。 図4は、横軸に軸力Nを、縦軸に許容曲げモーメントMを示す、参照例1のSC杭、参照例2のSC杭、及び、外殻鋼管に対するコンクリートの圧縮側耐力の無駄を最も小さくしたSC杭のMN線図である。
図1から図4を用いて、外殻鋼管付コンクリートパイル10及び外殻鋼管付コンクリートパイル10の設計方法について説明する。
図1には、外殻鋼管付コンクリートパイル(以下、主にSC杭という)10の部分断面、及び、上端と下端との間の適宜の位置でのSC杭10の横断面を示す。図1に示すように、SC杭10は、外殻鋼管(以後、単に鋼管と称する)12と、鋼管12の内側のコンクリート(コンクリート管)14とを含む。図1中の符号DはSC杭10の杭径であり、tは鋼管12及びコンクリート14を合わせた肉厚であり、tsは鋼管12の肉厚である。SC杭10の杭径D、鋼管12の肉厚ts、コンクリート14の肉厚(t−ts)は適宜に設定可能である。
ここでは、鋼管12として、引張強さの規格値を示す490材(短期許容圧縮応力度fs=325[N/mm]、ヤング係数Es=205000[N/mm])を用いる例について説明する。
なお、本実施形態に係るSC杭10の鋼管12の短期許容圧縮応力度fsは、例えば235[N/mm]よりも大きく、350[N/mm]よりも小さい(235[N/mm]<fs<350[N/mm])、適宜の範囲であってもよい。
まず、鋼管として490材を用いた、従来から存在するSC杭の例を、参照例1、参照例2として説明する。
(参照例1)
参照例1として、鋼管に490材を用い、コンクリートに設計基準強度Fc=105[N/mm]、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のものを用いる、SC杭(以下、主にHSC105と称する)を考慮する。
鋼管及びコンクリートにおけるそれぞれの応力−ひずみ曲線は図2に示される。ここで、横軸はひずみ(×10−6)であり、縦軸は圧縮応力([N/mm])である。この関係から、鋼管及びコンクリートのひずみεが大きくなるにつれて、それぞれの圧縮応力度σ(fs,fc)は略線形的に大きくなることが認識される。
コンクリートの短期許容圧縮応力度fcは
fc=Fc×2/3.5=105×2/3.5=60[N/mm
となる。
ここで、コンクリートの長期許容圧縮応力度([N/mm])は設計基準強度Fc/3.5とし、短期許容圧縮応力度fc([N/mm])は設計基準強度Fc×2/3.5とする。これは、国土交通省告示第1113号(平成13年7月2日)(最終改正 平成19年9月告示第1232号)に記載されている。
鋼管に生じる応力が短期許容圧縮応力度fs=325[N/mm]に達するときのひずみεsは、
εs=fs/Es=325/205000=1585×10−6
である。
そのときのコンクリートに生じる圧縮応力度fcは、
fc=εs・Ec=1585×10−6×40000=63.4[N/mm]>60[N/mm
となる。
HSC105のSC杭への圧縮荷重により、HSC105へのひずみを増やす。ひずみεsが1585×10−6のときのコンクリートの圧縮応力度fcは63.4[N/mm]であり、すでにコンクリートの短期許容圧縮応力度である60[N/mm]を超えている。したがって、同一のひずみ(1585×10−6)で、鋼管よりもコンクリートが先に短期許容圧縮応力度fcに達する。このため、鋼管とコンクリートとの圧縮側耐力は、コンクリートにより決まる。
(参照例2)
参照例2として、鋼管に490材を用い、コンクリートに設計基準強度Fc=123[N/mm]、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のものを用いる、SC杭(以下、主にHSC123と称する)を考慮する。
コンクリートの短期許容圧縮応力度fcは
fc=123×2/3.5=70[N/mm
となる。
鋼管に生じる応力が短期許容圧縮応力度fs=325[N/mm]に達するときのひずみεsは、上述したように、
εs=fs/Es=325/205000=1585×10−6
である。
そのときのコンクリートに生じる圧縮応力度fcは、
fc=εs・Ec=1585×10−6×40000=63.4[N/mm]<70[N/mm
となる。
HSC123のSC杭への圧縮荷重により、HSC123へのひずみを増やす。ひずみεsが1585×10−6のときのコンクリートの圧縮応力度fcは63.4[N/mm]であり、コンクリートの短期許容圧縮応力度である70[N/mm]に達していない。したがって、同一のひずみ(1585×10−6)で、コンクリートよりも鋼管が先に短期許容圧縮応力度fsに達する。このため、鋼管とコンクリートとの圧縮側耐力は、鋼管により決まる。
次に、SC杭10に対する圧縮荷重により、SC杭10に発生するひずみεを増やしたときに、同一のひずみで、鋼管12とコンクリート14とがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達する例を実施例として説明する。なお、本明細書では、「同一のひずみ」というときには、例えば数パーセントなどの誤差があるひずみ(これを略同一のひずみという)を含むものとする。
(実施例)
鋼管12のヤング係数Esと、コンクリート14のヤング係数Ecとの比である、ヤング係数比nは、
n=Es/Ec
となる。鋼管12の短期許容圧縮応力度fsに達するひずみ、及び、コンクリート14の短期許容圧縮応力度fcに達するひずみが一致する場合、コンクリート14の短期許容圧縮応力度fcは鋼管12の短期許容圧縮応力度fsを用いると、
fc=fs/n=fs/(Es/Ec)
として表現される。
このときのコンクリート14の設計基準強度Fcは、
Fc=fc×3.5/2
となる。これを、図3中に実線として描く。図3中の実線は、490材の鋼管12を用いたとき、同一のひずみで、鋼管12及びコンクリート14がそれぞれの短期許容圧縮応力度に達する場合の、コンクリート14のヤング係数Ec及び設計基準強度Fcの関係を示す。
ここで、鋼管12の応力が短期許容圧縮応力度fs=325[N/mm]に達するときのひずみεsは、上述したように、
εs=fs/Es=325/205000=1585×10−6
である。コンクリート14のヤング係数Ec=40000[N/mm]とすると、そのときのコンクリート14に生じる短期許容圧縮応力度fcは、
fc=εs・Ec=1585×10−6×40000=63.4[N/mm
となる。そして、コンクリート14の設計基準強度Fcは
Fc=63.4×3.5/2=111.0[N/mm
となる。
鋼管12に490材を用い、コンクリート14として、ヤング係数Ec=40000[N/mm]、設計基準強度Fc=111.0[N/mm]のものを用いる場合、圧縮荷重によりSC杭10へのひずみεを増やしていくと、同一のひずみεで、鋼管12及びコンクリート14が同時又は略同時にそれぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達する。ヤング係数をEc=40000[N/mm]とし、設計基準強度をFc=111.0[N/mm]としたときの例を第1の一致例として図3中に図示する。これは図3中の実線の直線上にある。
鋼管12に490材を用い、コンクリート14として、ヤング係数Ec=40000[N/mm]、設計基準強度Fc=111.0[N/mm]に設計し、製造したSC杭10を考慮する。圧縮荷重によりSC杭10へのひずみεを増やしていくと、同一のひずみεで、鋼管12及びコンクリート14が同時又は略同時にそれぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達することになる。鋼管12及びコンクリート14が同時又は略同時にそれぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達するので、鋼管12及びコンクリート14の圧縮側耐力に無駄をなくすことができる。
このように、鋼管12の強度(短期許容圧縮応力度fs)に合わせて、コンクリート14の強度(fc、Fc)を設定する。すなわち、鋼管12に490材を用い、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のコンクリート14を用いる場合、コンクリート14の設計基準強度Fc=111.0[N/mm]のものを開発し、用いることで、鋼管12及びコンクリート14の圧縮側耐力に無駄をなくすことができる。
SC杭10において、490材の鋼管12に対し、圧縮耐力の観点で最もよいコンクリート14の設計基準強度Fcは、
Fc=fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
の式で求められる。
この場合、コンクリート14のヤング係数Ecを例えば36000[N/mm]から50000[N/mm]の間で適宜に設定できると仮定すると、図3に示す実線の直線が得られる。コンクリート14のヤング係数Ec([N/mm])と、設計基準強度Fc([N/mm])との関係が実線の直線の状態である場合、圧縮荷重によりSC杭10へのひずみεを増やしていくと、同一のひずみεで、鋼管12及びコンクリート14が、それぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達する。
このように、490材の鋼管に対し、図3中に実線の直線で示す性能を有するコンクリート14を用いることにより、鋼管12及びコンクリート14の圧縮側耐力に無駄をなくすことができる。
なお、通常、SC杭10のコンクリート14のヤング係数Ecとして、
Ec=40000[N/mm
が用いられる。適宜の素材を用いることにより、設計の際に、Ec=40000[N/mm]よりも大きい、又は、小さい、適宜のヤング係数Ecを選択することは可能である。また、上述した適宜の範囲の適宜のヤング係数Ecのコンクリート14を製造することは可能であると想定される。
コンクリートのヤング係数Ecを例えば、
Ec=44300[N/mm
とする。このとき、ヤング係数比nは、
n=Es/Ec=205000/44300=4.628
となる。コンクリート14の短期許容圧縮応力度fcは、
fc=εs・Ec=1585×10−6×44300=70.2[N/mm
となる。そして、コンクリート14の設計基準強度Fcは
Fc=fc×3.5/2=70.2×3.5/2=122.9[N/mm
となる。
鋼管12に490材を用い、コンクリート14として、ヤング係数Ec=44300[N/mm]、設計基準強度Fc=122.9[N/mm]のものを用いる場合、圧縮荷重によりSC杭10へのひずみεを増やしていくと、同一のひずみεで、鋼管12及びコンクリート14が同時又は略同時にそれぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達する。ヤング係数をEc=44300[N/mm]とし、設計基準強度をFc=122.9[N/mm]としたときの例を第2の一致例として図3中に図示する。これは図3中の実線の直線上にある。
このように、鋼管12に490材を用い、コンクリート14として、ヤング係数Ec=44300[N/mm]、設計基準強度Fc=122.9[N/mm]に設計し、製造したSC杭10において、圧縮荷重によりSC杭10へのひずみεを増やしていくと、同一のひずみεで、鋼管12及びコンクリート14が同時又は略同時にそれぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達することになる。鋼管12及びコンクリート14が同時又は略同時にそれぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達するので、鋼管12及びコンクリート14の圧縮側耐力に無駄をなくすことができる。
このように、鋼管12に490材を用い、コンクリート14のヤング係数Ecを36000[N/mm]から50000[N/mm]の範囲で適宜に設定し、コンクリート14の設計基準強度Fcが図3中の実線の直線上にあるとき、SC杭10は、鋼管12及びコンクリート14の圧縮側耐力に無駄をなくすことができる。
図3中の実線の直線よりも下の、Fc<fs/(Es/Ec)×(3.5/2)の範囲のコンクリートを用いたSC杭10では、ひずみεを増やすと、鋼管12よりもコンクリート14が先に短期許容圧縮応力度fcに達する。このため、実線の直線よりも下の範囲のSC杭10では、鋼管12とコンクリート14との圧縮側耐力は、コンクリート14により決まる。
なお、上述した(参照例1)で説明したように、490材の鋼管に対し、設計基準強度Fc=105[N/mm]、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のコンクリートを用いる場合、設計基準強度の比=105/111.0=0.946である。490材の鋼管に対し、設計基準強度Fc=105[N/mm]のコンクリートを用いる場合、ヤング係数Ecと設計基準強度Fcとの関係は、
Fc=0.946×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
の式から得られる。これは、図3中に一点鎖線の直線で示される。
図3中の一点鎖線の直線上には、(参照例1)で説明した、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のコンクリートを用いるSC杭の例をプロットしている。
SC杭10のコンクリート14の設計基準強度Fcが
105[N/mm]<Fc≦111.0[N/mm
の範囲で、Ec=40000[N/mm]である場合、(参照例1)で説明した例(HSC105)のSC杭よりも、SC杭10は、コンクリート14に対する鋼管12の強度の無駄を小さくすることができる。
そして、鋼管12に490材を用い、コンクリート14のヤング係数Ecを36000[N/mm]から50000[N/mm]の範囲で適宜に設定し、コンクリート14の設計基準強度Fcが、図3中の実線の直線と、それよりも下側の一点鎖線の直線との間にあるとき、SC杭10は、(参照例1)で示したSC杭よりも、鋼管12及びコンクリート14の強度に無駄をなくすことができる。
図3中の実線の直線よりも上の、Fc>fs/(Es/Ec)×(3.5/2)の範囲のコンクリートを用いたSC杭10では、ひずみεを増やすと、コンクリート14よりも鋼管12が先に短期許容圧縮応力度fsに達する。このため、図3中の実線の直線よりも上の範囲のSC杭10では、鋼管12とコンクリート14との圧縮側耐力は、鋼管12により決まる。
上述した(参照例2)で説明したように、490材の鋼管に対し、設計基準強度Fc=123[N/mm]、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のコンクリートを用いる場合、設計基準強度の比=123/111.0=1.108である。490材の鋼管12に対し、設計基準強度Fc=123[N/mm]のコンクリートを用いる場合、ヤング係数Ecと設計基準強度Fcとの関係は、
Fc=1.108×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
の式から得られる。これは、図3中に破線の直線で示される。
図3中の破線の直線は、(参照例2)で説明した、ヤング係数Ec=40000[N/mm]のコンクリートを用いるSC杭の例をプロットしている。
SC杭10のコンクリート14の設計基準強度Fcが
111.0[N/mm]≦Fc<123[N/mm
の範囲で、Ec=40000[N/mm]である場合、(参照例2)で説明した例(HSC123)のSC杭よりも、SC杭10は、鋼管12に対するコンクリート14の強度の無駄を小さくすることができる。
そして、鋼管12に490材を用い、コンクリート14のヤング係数Ecを36000[N/mm]から50000[N/mm]の範囲で適宜に設定し、コンクリート14の設計基準強度Fcが、図3中の実線の直線と、それよりも上側の破線の直線との間にあるとき、SC杭10は、(参照例2)で示したSC杭よりも、鋼管12及びコンクリート14の強度に無駄をなくすことができる。
以上説明したように、本実施例では、SC杭10は、490材の鋼管12を用い、コンクリート14の設計基準強度Fcを
(105/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<(123/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
の範囲とすることが好適である。
SC杭10への圧縮荷重により、SC杭10へのひずみεを増やしていくときに、コンクリート14のヤング係数Ecが40000[N/mm]で、コンクリート14の設計基準強度Fcが105[N/mm]のもの(HSC105)よりもコンクリート14が短期許容圧縮応力度fcに達するときのひずみεを、鋼管12が短期許容圧縮応力度fsに達するときのひずみεに近づけることができる。すなわち、鋼管12が短期許容圧縮応力度fsに達するときのひずみεと、コンクリート14が短期許容圧縮応力度fcに達するときのひずみεとの差を、HSC105を用いる場合に比べて小さくすることができる。また、コンクリート14のヤング係数Ecが40000[N/mm]で、コンクリート14の設計基準強度Fcが123[N/mm]のもの(HSC123)よりもコンクリート14が短期許容圧縮応力度fcに達するときのひずみεを、鋼管12が短期許容圧縮応力度fsに達するときのひずみεに近づけることができる。すなわち、鋼管12が短期許容圧縮応力度fsに達するときのひずみεと、コンクリート14が短期許容圧縮応力度fcに達するときのひずみεとの差を、HSC123用いる場合に比べて小さくすることができる。
したがって、490材の鋼管12を用い、コンクリート14の設計基準強度Fcを
(105/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<(123/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
の範囲とするSC杭10を用いることで、従来からあるHSC105及びHSC123よりも鋼管12に対するコンクリート14の強度の無駄、コンクリート14に対する鋼管12の強度の無駄を小さくすることができる。
このため、本実施例によれば、鋼管12又はコンクリート14に生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、鋼管12に対するコンクリート14の圧縮側耐力の無駄を省くことが可能な、SC杭(外殻鋼管付コンクリートパイル)10を提供することができる。また、本実施例によれば、鋼管12又はコンクリート14に生じる応力が短期許容圧縮応力度に達する場合に、コンクリート14に対する鋼管12の圧縮側耐力の無駄を省くことが可能な、SC杭10の設計方法を提供することができる。
特に、490材の鋼管12を用い、コンクリート14の設計基準強度Fcを
Fc=fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
とする場合、鋼管12に対するコンクリート14の強度の無駄を最も小さくすることができる。すなわち、鋼管12及びコンクリート14がそれぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達するときのそれぞれのひずみεを最も近づけるようにしたSC杭10が提供され、また、鋼管12及びコンクリート14がそれぞれの短期許容圧縮応力度fs,fcに達するときのそれぞれのひずみεを近づけるSC杭10の設計方法が提供される。
コンクリート14のヤング係数Ecが
Ec=40000[N/mm
であり、コンクリート14の設計基準強度Fcが
Fc=111.0[N/mm
に対して例えば±数%程度の相違であれば、従来のSC杭よりも鋼管12に対するコンクリート14の強度の無駄を少なくすることができる。
上述した±数%は適宜に設定される。コンクリート14の設計基準強度Fcが−(マイナス)5%と+(プラス)5%であるなど、設計基準強度Fcに対する上側の割合及び下側の割合が同じであってもよい。また、コンクリート14の設計基準強度Fcが−(マイナス)5%と+(プラス)6%であるなど、設計基準強度Fcに対する上側の割合及び下側の割合が異なっていてもよい。ここでは、コンクリート14の各ヤング係数Ecに対して設計基準強度Fcが上述した、
(105/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<(123/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
を超えない、略−(マイナス)5.4%から略+(プラス)11.1%の範囲において、適宜の割合を設定できる。すなわち、係数αを(105/111.0)<α<1とし、係数βを1<β<(123/111.0)としたとき、コンクリート14の設計基準強度Fcを
α×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<β×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
の範囲に設定することが好適である。なお、コンクリート14の設計基準強度Fcが
Fc=α×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
である場合、図示しないが、図3中の実線の直線と一点鎖線の直線との間にある直線として描かれる。コンクリート14の設計基準強度Fcが
Fc=β×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
である場合、図示しないが、図3中の実線の直線と破線の直線との間にある直線として描かれる。これら設計基準強度Fcの直線の傾きは、α,βを適宜に設定することにより決められる。
また、コンクリート14の構成成分や製造方法から、ヤング係数Ecを44300[N/mm]と設定するなど、ヤング係数Ecも一律でなく、適宜に設定することができる。このため、本実施例のSC杭10では、ヤング係数Ecの設計の際の自由度を増し、鋼管12の内側に最適なコンクリート14に設計することができるとともに、そのように設計したSC杭10を製造することができる。
図4には、NM曲線を示す。ここで、杭径Dを800[mm]、鋼管12及びコンクリート14を合わせた肉厚tを110[mm]、鋼管厚tsを6[mm]、腐食代1[mm]、鋼管を490材とする。
SC杭10に対し、490材の鋼管12が共通であるため、引張時の耐力は、同じとなっている。
HSC105、HSC123のSC杭、Fc=111.0[N/mm]のSC杭10(図3中の第1の一致例)は、ヤング係数EcがEc=40000[N/mm]で同じである。軸力Nが大きくなると、コンクリート14が負担する比率が大きくなる。このため、HSC105のSC杭に比べて、HSC123のSC杭、Fc=111.0[N/mm]のSC杭10は大きな短期許容曲げモーメントMを設定することができる。
図4中のコンクリート14の設計基準強度Fcが111.0[N/mm](Ec=40000[N/mm])のSC杭10(図3中の第1の一致例)を製造する場合、従来のHSC105のSC杭を製造するのに対して少しのコストアップで製造できる。そして、第1の一致例のSC杭10の性能は、HSC123のSC杭の性能に追いついている。
また、Fc=123[N/mm]のSC杭10(図3中の第2の一致例)は、ヤング係数EcがEc=44300[N/mm]である。HSC105、HSC123のSC杭、Fc=111.0[N/mm]のSC杭10に比べてFc=123[N/mm]のSC杭10は、より大きな短期許容曲げモーメントMを設定することができる。
図4中のコンクリート14の設計基準強度Fcが123[N/mm](Ec=44300[N/mm])のSC杭10(図3中の第2の一致例)を製造する場合、従来のHSC123のSC杭と同程度のコストで製造できる。そして、第2の一致例のSC杭10の性能は、HSC123のSC杭の性能を追い越している。
このため、図3中に示す第1の一致例、第2の一致例のSC杭10は、それぞれ従来のSC杭(HSC105、HSC123)に対して、大きなコストアップをすることなく、良好な性能を発揮することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
10…外殻鋼管付コンクリートパイル(SC杭)、12…外殻鋼管(鋼管)、14…コンクリート(コンクリート管)。

Claims (5)

  1. 外殻鋼管付コンクリートパイルであって、
    外殻鋼管に490材を用い、コンクリートにヤング係数Ecが、36000[N/mm]≦Ec≦50000[N/mm]のものを用いる場合、
    前記コンクリートの設計基準強度Fcを
    (105/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<(123/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
    の範囲とした、外殻鋼管付コンクリートパイル。
  2. 係数αを(105/111.0)<α<1とし、係数βを1<β<(123/111.0)としたとき、
    前記コンクリートの前記設計基準強度Fcを
    α×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<β×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
    の範囲とした、請求項1に記載の外殻鋼管付コンクリートパイル。
  3. 前記コンクリートの前記設計基準強度Fcを、
    Fc=fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
    とし、
    前記外殻鋼管付コンクリートパイルへの圧縮荷重により、前記外殻鋼管付コンクリートパイルへのひずみを増やしていったときに、同一又は略同一のひずみで、前記外殻鋼管の短期許容圧縮応力度fsと前記コンクリートの短期許容圧縮応力度fcとがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するようにした、請求項1に記載の外殻鋼管付コンクリートパイル。
  4. 外殻鋼管付コンクリートパイルの設計方法であって、
    外殻鋼管に490材を用い、コンクリートにヤング係数Ecが、36000[N/mm]≦Ec≦50000[N/mm]のものを用いる場合、
    前記コンクリートの設計基準強度Fcを、
    (105/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)<Fc<(123/111.0)×fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
    の範囲に設定する、外殻鋼管付コンクリートパイルの設計方法。
  5. 前記コンクリートの前記設計基準強度Fcを、
    Fc=fs/(Es/Ec)×(3.5/2)
    とし、
    前記外殻鋼管付コンクリートパイルへの圧縮荷重により、前記外殻鋼管付コンクリートパイルへのひずみを増やしていったときに、同一又は略同一のひずみで、前記外殻鋼管の短期許容圧縮応力度fsと前記コンクリートの短期許容圧縮応力度fcとがそれぞれの短期許容圧縮応力度に達するようにする、請求項4に記載の外殻鋼管付コンクリートパイルの設計方法。
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