JP2014084605A - 圧延h形鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る圧延H形鋼1は、上フランジ3、下フランジ5、ウェブ7を有する二軸対称断面の圧延H形鋼1であり、H形鋼の高さをH、フランジ幅をB、ウェブ厚さをt1、フランジ厚さをt2、内法高さをd(=H−2×t2)、設計基準強度をF(N/mm2)とした場合、以下の1)〜3)に示す断面形状寸法及び強度を満たし、かつ引張強さが400〜670N/mm2であることを特徴とするものである。
1) 6.0≦B/(2×t2)≦11.1
2) 75.2≦d/t1≦1.35×1100/F1/2
3) 235≦F≦385
【選択図】 図1
Description
・引張強さが400〜510N/mm2で、フランジ幅Bと梁高さHの比が0.77以下、フランジ幅厚比B/(2×t2)が11.1を超えて215/F1/2以下、Fの値が235以上で275以下を満足すことを特徴とする圧延H形鋼(特許文献1の請求項1参照)。
なお、t2はフランジ厚さ、Fは通常は設計基準強度(N/mm2)と同等の設計用降伏応力度である。
また、上記圧延H形鋼において、ウェブ幅厚比(H−2×t2)/t1が63.5を超えて1100/F1/2以下であることを特徴とする圧延H形鋼(特許文献1の請求項2参照)。
なお、t1はウェブ厚さである。
さらに、上記圧延H形鋼において、t1/t2の比が0.75を超えて1.0未満であることを特徴とする圧延H形鋼(特許文献1の請求項3参照)。
なお、図4のグラフは、横軸がスパンLをH形鋼の高さHで除して無次元化したL/Hであり、縦軸が許容設計荷重WにH3/Iを乗じて次元を変えた相当許容荷重を示している。
図4には、許容設計荷重として変形制限による許容荷重Wdと曲げ耐力で決まる許容荷重Wb(設計基準強度F=235,295,325,385,440N/mm2の場合)を併せて示している。
両端ピン支持で等分布荷重を受ける梁の最大たわみδmaxがL/300以下であることから下式(1)となる。
最大曲げ応力度σmaxがF/1.5以下であることから下式(2)となる。
ところで、鋼構造の小梁の設計では、一般に梁せいHとスパンLの比、H/Lを1/18〜1/15又は1/20〜1/10程度として部材断面を選定する(例えば、「JSCA版S造構造の設計,p52,株式会社オーム社,2010.12.20」、「新構造設計の実務 知っておきたい根拠と常識,p46,株式会社建築技術,2006.7.1」)。すなわち、L/Hの下限値は一般に10〜15程度であるといえる。
このL/Hの下限値においては、図4のグラフで示されるように、曲げ耐力によって許容設計荷重Wが決まるので、許容設計荷重を大きくするために設計基準強度Fを、F=325〜440(N/mm2)程度まで大きくすることが有効であることがわかる。
すなわち、特許文献1に開示された圧延H形鋼では、断面積を低減して、軽量化できたとしても、設計基準強度Fの上限が小さいため、本来であれば更に小梁等の軽量化が図れるところが制限されてしまうとういう問題がある。
つまり、特許文献1では、請求項1に規定する「フランジ幅Bと梁高さHの比が0.77以下、フランジ幅厚比B/(2×t2)が11.1を超えて215/F1/2以下」という要件を満たせば、JIS G 3192の既往の圧延H形鋼よりも、断面性能を低下させることなく、断面積を低減して、圧延H形鋼を軽量化することができるという効果を奏するとされている。
しかしながら、特許文献1における実施例として示されたH形鋼の断面寸法の内、F=235(N/mm2)の実施例においては、上述した[請求項1]の「フランジ幅Bと梁高さHの比が0.77以下、フランジ幅厚比B/(2×t2)が11.1を超えて215/F1/2以下」の条件と[請求項2]の「ウェブ幅厚比(H−2×t2)/t1が63.5を超えて1100/F1/2以下」の条件の両方を満たすものが示されている。この特許文献1に例示されたH形鋼の断面寸法および断面積Aを表1の(1)欄に示す。なお、表1の(2)欄には特許文献1にF=275(N/mm2)の実施例として例示されたH形鋼の断面寸法および断面積A及び表1の(3)欄には既往のJIS断面例を併せて記載している。
また、表2には、既往のJIS寸法を示すと共に、従来例とJIS例、従来例改とJIS例、従来例改’とJIS例のそれぞれについての断面積A(cm2)、断面二次モーメントIx(cm4)及び断面係数Zx(cm3)の比を記載している。
また、従来例A〜H改’では、断面性能の増加の程度はせいぜい2〜3%程度であり、実質、既往のJIS断面サイズの断面性能と大差がないことがわかる。
また、F=275(N/mm2)の従来技術の実施例では、表1の(2)欄に示されるように、ウェブ幅厚比は[請求項2]のウェブ幅厚比の下限値以下であり、請求項1の範囲のみを満たすものではあるが、表1の(3)欄のJIS断面サイズよりもウェブ幅厚比が大きくなっているほか、フランジ幅厚比はF=235の実施例よりも同等以下の値となっている。さらに、断面積は、F=235よりF=275の場合の方が大きいという結果になっている。
以上の検討から分かるように、フランジ幅厚比を大きくすることは、断面性能の向上にはほとんど寄与せず、特許文献1の請求項1において規定している「フランジ幅Bと梁高さHの比が0.77以下、フランジ幅厚比B/(2×t2)が11.1を超えて215/F1/2以下」という要件のみでは、既往の圧延H形鋼よりも、断面性能を低下させることなく、断面積を低減して、圧延H形鋼を軽量化することができるという効果を奏することはできないと解される。
1) 6.0≦B/(2×t2)≦11.1
2) 75.2≦d/t1≦1.35×1100/F1/2
3) 235≦F≦385
まず、B/(2×t2)の上限値を11.1とした理由を説明する。
特許文献1においては、フランジ幅厚比B/(2×t2)の範囲として11.1超としていることから、この範囲を含まないようにするため、B/(2×t2)の上限値を11.1とした。
後述するように、全断面有効の断面係数をZ、ウェブの無効部分を考慮した有効断面係数をZeとすると、フランジ幅厚比及びF値が小さくなると、Ze/Zの低下率が大きくなる。ウェブの無効部分を考慮する係数としてのαの値を1.35に設定し、F値を本発明の下限値である235N/mm2に設定した場合、フランジ幅厚比の下限値を6.0とすることで、Ze/Zの低下率を1%以下にすることができる。
まず、d/t1の上限値を1.35×1100/F1/2とした理由を説明する。
日本建築学会「鋼構造設計規準−許容応力度設計法−」において、梁のウェブプレートの幅厚比は、d/t=d/t1≦2.4(E/F)1/2を満足すれば局部座屈の影響を考慮しなくても良いとされている。
そこで、d/t1の上限値として局部座屈の影響を考慮しなくともよい範囲とするため、d/t1≦2.4(E/F)1/2を満足させるとするならば、鋼材のヤング率としてE=205,000(N/mm2)を2.4(E/F)1/2に代入して、d/t1の上限値はほぼ1100/F1/2となる。
また、幅厚比の制限は、構造上塑性化する恐れのある大梁について、建築基準法やそれに関する告示で制限やランク付けなどされているが、弾性範囲で使用される小梁等については、法令上特に制限は定められておらず、日本建築学会などの規準があるだけである。
したがって、幅厚比が規定値を超える場合であっても、当該部分を無効とみなす場合の影響が小さい場合には、幅厚比の上限値を上げることが断面二次モーメント及び断面係数としては有利になる。そこで、規定値を超える部分を無効と見なす場合の影響について検討した。
ウェブの無効部分のとり方は、図5の斜線で示すようにウェブの中心部分から上下対称にとる。このため、ウェブ幅厚比を超える無効部分がH形鋼の断面性能に与える影響は一般に小さくなると考えられるが、より具体的な検討を以下のように行った。
例1:F=235、t1=t、t2=t(β=1.0)、B=22.2×t2
例2:F=235、t1=t、t2=t(β=1.0)、B=16.0×t2
例3:F=235、t1=t、t2=t(β=1.0)、B=12.0×t2
例4:F=325、t1=t、t2=t(β=1.0)、B=22.2×t2
例5:F=325、t1=t、t2=t(β=1.0)、B=16.0×t2
例6:F=325、t1=t、t2=t(β=1.0)、B=12.0×t2
例7:F=235、t1=t、t2=2t(β=2.0)、B=22.2×t2
例8:F=235、t1=t、t2=2t(β=2.0)、B=16.0×t2
例9:F=235、t1=t、t2=2t(β=2.0)、B=12.0×t2
例10:F=325、t1=t、t2=2t(β=2.0)、B=22.2×t2
例11:F=325、t1=t、t2=2t(β=2.0)、B=16.0×t2
例12:F=325、t1=t、t2=2t(β=2.0)、B=12.0×t2
そこで、断面効率がほとんど低下しないように、断面係数の低下率が1%以下に抑えられる範囲として、ウェブ幅厚比d/t1を1.35×1100/F1/2以下と設定した。
ウェブの断面を無視した場合、フランジ断面積が一定であれば、概略、断面二次モーメントはフランジ中心間距離の2乗に比例し、断面係数はフランジ中心間距離に比例する。このため、断面積に対する断面性能の効率を向上させるには、H形鋼の高さH(=d+2×t2)を大きくしてウェブ断面積を小さくすること、すなわちウェブ幅厚比d/t1を大きくすることが有効である。ところで、従来技術である特許文献1では[請求項1]及び[請求項2]から、ウェブ幅厚比の最大値はF=235の時の1100/F1/2であり、そのときのウェブ幅厚比は71.76となる。
また、圧延H形鋼には特許文献1で示されたものの他に、以前より外法一定H形鋼が製造されており、この外法一定H形鋼のフランジ及びウェブ幅厚比の関係を示したものが図7である。外法一定H形鋼のウェブ幅厚比の最大値は75.11であり、この値以上のウェブ幅厚比を有する圧延H形鋼は、特許文献1および既存の圧延H形鋼では存在しない。
そこで、ウェブ幅厚比の下限値をd/t1≧75.2と設定することで、従来技術には存在せず、かつ断面積に対する断面性能効率の良い圧延H形鋼を提供できることになる。
まず、Fの上限値を385とした理由を説明する。
前述したように、L/H≧10(すなわちH/L≦1/10)の範囲を考慮した場合、曲げ耐力による許容荷重WbはF=440(N/mm2)程度まで変形制限の許容荷重Wdを下回る場合がある(図4参照)。そのため、曲げ耐力による許容荷重Wbを大きくすることで意味がある範囲として設計基準強度Fの上限値としてはF=440(N/mm2)とすることも可能である。
一方で、F値はウェブ幅厚比に関係しているので、この点から考察する。
表3に、α=1.35としたときの各F値に対応するウェブ幅厚比の最大値を示す。
本発明のフランジ幅厚比およびウェブ幅厚比の規定により、断面積を低減して従来例(特許文献1に示されたもの)よりも断面二次モーメントおよび断面係数を有利にできる。
ところで、従来例である特許文献1ではFの範囲を235以上、275以下としている。
そこで、従来例の圧延H形鋼よりも同等以上の曲げ耐力を確保するため、Fを特許文献1で示された下限値である235以上とした。
さらに、ウェブ幅厚比d/t1の上限値を大きくしたことにより、断面形状を変化させることなく設計基準強度Fを大きくして、曲げ耐力を大きくできる。このため、強度が異なるH形鋼を製造する場合でも、断面形状に関する圧延設備を変更する必要がなく、従来技術より製造設備コスの低減及び製造効率が向上する利点がある。
1) 6.0≦B/(2×t2)≦11.1
2) 75.2≦d/t1≦1.35×1100/F1/2
3) 235≦F≦385
また、表6においては、A、Ix、Zxe(JIS及び従来技術ではZxe=Zx)について、本発明例とJIS 断面並びに従来技術例との比を示した。
また、表7においては表6の内容に加えて各F値の曲げ耐力Maを示した。なお、断面係数は本発明例のZxeとJIS断面のZxe(=Zx)の比を、曲げ耐力Maについては本発明例のF=275,295,325の場合の各耐力とF=275の従来技術例の耐力との比を示した。
また、特許文献1に示された従来技術例との比較では(表6のa/c欄参照)、断面積の減少率は5%未満であるが、断面二次モーメント及び有効断面係数は同等以上(Ixで最大20%程度、Zexで最大10%弱)となっている。
また、特許文献1における従来技術例との比較では(表7のa/c欄参照)、断面積は5%以上減少し、曲げ耐力Maは従来技術例と同じF=275でも同等以上であり、F値が295N/mm2,325N/mm2と大きくなると曲げ耐力はそれぞれ約10%,20%大きくなることがわかる。
図3に示されるように、本発明例によれば既往の外法一定H形鋼を含まないことが分かる。
3 上フランジ
5 下フランジ
7 ウェブ
9 無効部分
11 床スラブ
12 小梁
Claims (2)
- 上下フランジとウェブを有する二軸対称断面の圧延H形鋼であり、H形鋼の高さをH、フランジ幅をB、ウェブ厚さをt1、フランジ厚さをt2、内法高さをd(=H−2×t2)、設計基準強度をF(N/mm2)とした場合、以下の1)〜3)に示す断面形状寸法及び強度を満たし、かつ引張強さが400〜670N/mm2であることを特徴とする圧延H形鋼。
1) 6.0≦B/(2×t2)≦11.1
2) 75.2≦d/t1≦1.35×1100/F1/2
3) 235≦F≦385 - 一方向曲げを受けるピン接合の梁材であって、圧縮側のフランジが拘束されている小梁に適用されることを特徴とする請求項1記載の圧延H形鋼。
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