JP2010095846A - 既製コンクリート杭の杭頭部接合構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】アンカー筋に引張り力が作用した際、中詰めコンクリートの杭体コンクリートに対する杭軸方向のずれを防止し、アンカー筋の耐力を十分に発揮させることができる既製コンクリート杭の杭頭部接合構造を提供する。
【解決手段】杭頭部に形成される内側空間15に構造物基礎と接合するためのアンカー筋14が挿入配置されるとともに、中詰めコンクリート12が充填される既製コンクリート杭10の杭頭部接合部構造であって、杭頭部の内周に、外周部分が杭体コンクリート内に埋め込まれかつ内周部分が中詰めコンクリート12に突出する環状突起21が周方向に沿って設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

この発明は、既製コンクリート杭の杭頭部接合構造に関し、さらに詳細には、杭頭部と構造物基礎との接合部に作用する引張り力に対応するための技術に関する。
近年、短工期とローコスト化の潮流から、既製コンクリート杭の高支持力化が進み、従来の埋め込み杭工法と比較すると同径の杭で2〜3倍の支持力をもつようになった。このため、地震時に1本の杭が負担する水平力も従来より大きくなり、小口径でも大きな耐力をもつSC杭(外殻鋼管付きコンクリート杭)やPRC杭(遠心力プレストレスト鉄筋コンクリート杭)を採用する事例が増えてきた。このような高耐力の杭を使用することで、杭体の曲げ耐力は確保できるが、杭頭接合部はRC構造となるため、接合部破壊を防止することが困難であった。
これを解決するため、杭頭に拡頭リングを設けて接合部耐力を確保して、杭頭破壊を防止する工法が開発されている。しかしながら、この工法は杭頭に拡頭リングをかぶせコンクリートを充填して両者を一体化させるため、大きな引張り力には対応できないという問題があった。
また、拡頭リングを用いない既製コンクリート杭の杭頭接合部の場合、引張り力に対応するためには杭頭に鉄筋(基礎へのアンカー筋)を現場溶接する方法が採用されている。しかしながら、現場溶接の信頼性が低く接合部の品質を確保する観点から、今後は現場溶接しない工法が求められてくる状況にある。例えば、今回改訂された「杭基礎設計便覧 平成18年度改訂版」(平成19年1月 社団法人 日本道路協会)では、道路橋示方書で解説された意図を踏まえ杭頭接合部の設計において杭外周に溶接される鉄筋を1次設計(許容応力度設計)では考慮しないこととしている。
従来、現場溶接によらない杭頭接合部として図7に示すような構造が知られている。既製コンクリート杭10は、杭施工に伴って内部にソイルセメント13が満たされ、杭頭部には杭頭部内側空間15が形成される。既製コンクリート杭10は、この杭頭部内側空間15に挿入される複数本のアンカー筋14及び杭頭部内側空間15に打設される中詰めコンクリート12を介して構造物基礎であるパイルキャップ16と一体的に接合される。17はアンカー筋14の周囲に巻かれる帯筋、18は下側主筋を示している。
上記のような従来の杭頭接合構造の場合、アンカー筋14(中詰め補強鉄筋)に作用する引張り力は中詰めコンクリート12とコンクリート杭10の杭体コンクリート内面との付着により杭体に伝達される。しかし、遠心成形される杭体の内面は滑らかで凹凸が小さく、この付着は一般的なコンクリート打継ぎ面よりかなり小さなものとなる。このため、引張り力が作用した際、アンカー筋14が引張り耐力に達する前に、杭体内面と中詰めコンクリート12との付着が切れてしまうおそれがある。この出願の出願人による実験によれば、ピストン内でシリンダーが動くように、早期に中詰めコンクリート12が杭体に対して杭軸方向に離間してずれてしまうという現象が見出された。
この出願の発明に関連する先行技術情報としては以下に記載のようなものがある。特許文献1には杭頭部内周にコッタープレートを設けた既製コンクリート杭が開示されている。しかしながら、同文献に開示の技術は杭頭部と中詰めコンクリートとの付着力を高めるもので、引張り力については何ら言及がない。
特許第2576755号公報
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、アンカー筋に引張り力が作用した際、中詰めコンクリートの杭体コンクリートに対する杭軸方向のずれを防止し、アンカー筋の耐力を十分に発揮させることができる既製コンクリート杭の杭頭部接合構造を提供することにある。
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、杭頭部に形成される内側空間に構造物基礎と接合するためのアンカー筋が挿入配置されるとともに、中詰めコンクリートが充填される既製コンクリート杭の杭頭部接合部構造であって、
杭頭部の内周に、外周部分が杭体コンクリート内に埋め込まれかつ内周部分が前記中詰めコンクリートに突出する環状突起が周方向に沿って設けられていることを特徴とする既製コンクリート杭の杭頭部接合構造にある。
前記環状突起は杭軸方向に間隔を置いて複数段設けられている構成を採用することができる。
前記既製コンクリート杭は杭体コンクリートの外周に鋼管を有する杭であり、
前記環状突起は、前記鋼管の内周に取り付けられて前記杭体コンクリート内に埋め込まれた複数の保持部材に固着されている。
前記保持部材は、頂部と、この頂部から延びる2本の脚部をもつトラス状鉄筋からなり、2本の脚部はそれぞれ上下に位置するように配置されてその先端が前記鋼管に取り付けられ、前記頂部に前記環状突起が固着されている。
前記既製コンクリート杭は杭体コンクリートの上端に鋼製端板を有する杭であり、
前記環状突起は、前記端板に取り付けられて前記杭体コンクリート内に杭軸方向に埋め込まれた複数の保持部材に固着されている。
この発明によれば、アンカー筋に引張り力が作用した場合、環状突起が中詰めコンクリートと杭体コンクリートとの間で支圧抵抗による「シャーキー」として機能するので、両者間にずれが生じることなく一体化が保たれ、アンカー筋の耐力を十分に発揮させることができる。そして、環状突起の設置段数を増すことにより、耐力をさらに増すことも可能である。
また、環状突起は中詰めコンクリートを介してアンカー筋から伝達される圧縮力の水平方向成分に対して円周方向力により抵抗するので(フープテンション)、杭体コンクリートの引張割裂破壊を防止することができる。さらに、環状突起はその保持部材も含めて安価な材料を用いることができるので、安価に製造することができ、施工も従来と同様な態様を採ることができる。
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、上述のSC杭やPRC杭、PHC杭(遠心力高強度プレストレストコンクリート杭)を含む既製コンクリート杭10を包括的に示し、この発明による杭頭部接合構造の要旨を示す図である。図1において、図7に示した従来例と同様な部材については同一符合を付してある。この発明は、既製コンクリート杭10の杭頭部の内周に、外周部分が杭体コンクリート内に埋め込まれかつ内周部分が前記中詰めコンクリートに突出する環状突起21を周方向に沿って設けたことを要旨とする。以下、既製コンクリート杭の杭種ごとに具体的な実施形態を説明する。
図2,図3は、この発明の第1実施形態を示し、図1は軸方向断面図、図2は水平断面図である。この実施形態は既製コンクリート杭10として、杭体コンクリート20の外周に鋼管11を有するSC杭にこの発明を適用した例である。
環状突起21は単数でもよいが、杭軸方向に間隔を置いて複数段(この実施形態では2段)設けるようにしてもよい。環状突起21は所定の厚み、幅を有する断面矩形のものであり、平鋼を閉じた円環状に加工することによって得ることができる。環状突起21は完全には閉じずに幾分か開いた略C字状のものや、スパイラル状(螺旋状)のものとしてもよい。
杭頭部内側空間15は、杭施工に伴って杭内部に充填されるソイルセメント13の上方に形成される空間である。この杭頭部内側空間15に図1に示した構造物基礎であるパイルキャップ16と接合するための複数本のアンカー筋14が挿入され、中詰めコンクリート12(図1参照)が充填される。環状突起21は、このアンカー筋14の下端部よりも上方位置に設けられる。アンカー筋14は、その先端部を拡大して中詰めコンクリートに対する定着性能を高めることもできる。具体的には、図示のように、アンカー筋14として先端に拡径部14aを有する鉄筋を使用したり、ねじ鉄筋を使用して先端にプレート付きナットを取り付ける方法を採用することができる。これにより、アンカー筋14の定着長さを低減させ、中詰めコンクリートを浅くすることができる。
環状突起21は、図4に拡大して示すように、その外周部分21aが杭体コンクリート20に埋め込まれ、内周部分21bが杭頭部内側空間15に突出するように設けられる。杭体コンクリート20を遠心成形する際、環状突起21の位置決めをするために、杭体コンクリート20にはその周方向に間隔を置いて複数の保持部材22が埋め込まれる。保持部材22は、この実施形態ではトラス状(V字状)に加工された鉄筋からなり、頂部22aと、頂部22aから延びる2本の脚部22bを有している。2本の脚部22bはそれぞれ上下に位置するように配置されて、その先端が鋼管11の内周に溶接により固着されている。環状突起21は頂部22aに溶接により固着されている。
上記のような形状に加工された保持部材22は弾発力を有することから、その弾発力によって脚部22bを鋼管11の内周に取り付けるようにしてもよい。また、保持部材22はW字状とし、その2つの頂部に上下2段の環状突起21を固着するようにしてもよい。また、杭体コンクリート20は遠心成形の際、環状突起21の中空部への突出長さを確保し、突出部分21bにモルタル成分が付着しないように、発泡スチロール等で養生しておくことが好ましい。
保持部材22の上側脚部22bに隣接して、鋼管11の内周にストッパーリング23が設けられている。このストッパーリング23は、後述する杭体コンクリート20に伝達される引張応力を受け止めるための部材であり、鋼管内周全体に亘って溶接されている。このストッパーリング23は、保持部材22に伝達される引張応力によって、保持部材22が上方にずれるのを阻止する役目もなす。
次に、上記のような杭頭部接合構造の作用について説明する。アンカー筋14に引張り力が作用すると、この引張り力は中詰めコンクリートの圧縮を介して環状突起21の突出部分21bに支圧力として作用する。その結果、環状突起21の杭体コンクリート20への埋込み部分21aに支圧反力が生じ、引張り力は杭体コンクリート20に伝達され、さらにその圧縮や鋼管11との付着力により鋼管11に伝達される。すなわち、環状突起21は、中詰めコンクリートと杭体コンクリートとの間で支圧抵抗による「シャーキー」として機能するので、中詰めコンクリートのずれ止め防止効果を発揮し、両者間の付着切れが防止される。したがって、アンカー筋の耐力を十分に発揮させることができる。
また、環状突起21は中詰めコンクリートを介してアンカー筋14から伝達される圧縮力に対して円周方向力により抵抗するので(フープテンション)、杭体コンクリート20の引張割裂破壊を防止することができる。
杭体コンクリート20中の応力伝達の方向は図中矢印で示すように斜め上方向きとなる。一方、引張り力は杭体コンクリート20を介してのみならず、保持部材22、具体的には上側の脚部22bを介しても鋼管11に伝達される。この場合、保持部材22をトラス状のものとすることにより、脚部22bを応力伝達の方向とほぼ一致させることができ、脚部22bの軸方向力として鋼管11に伝達することができる。
図5,図6は、この発明の第2実施形態を示し、図5は軸方向断面図、図6は水平断面図である。この実施形態は既製コンクリート杭10として、杭体コンクリート20の内部に鉄筋24が配筋され、また杭頭部の端部に鋼製端板25を有するPRC杭やPHC杭にこの発明を適用した例である。
杭頭部の内周に環状突起21が周方向に沿って、また軸方向に複数段設けられている点は第1実施形態と同様である。また、環状突起21はその外周部分が杭体コンクリート20に埋め込まれ、外周部分が杭頭部内側空間15に突出するように設けられる点も第1実施形態と同様である。この実施形態では、環状突起21の保持部材26は杭体コンクリート20内に杭軸方向に埋め込まれた直線状の鉄筋からなる。保持部材26下端にフック部27を有し、上端が端板25に溶接されている。環状突起21は保持部材26の周面に溶接により固着されている。この実施形態の場合も、環状突起21により第1実施形態と同様の効果を期待することができる。
この実施形態の場合、杭頭部に作用するフープテンションに対抗させるために、杭頭部の天端付近にフープ筋を配筋するか、もしくは補強バンド28の長さを長くすることが望ましい。
上記各実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。例えば、上記各実施形態では環状突起は2つ設けられているが、1つあるいは3つ以上でもよい。
既製コンクリート杭を包括的に示し、この発明による杭頭部接合構造の要旨を示す軸方向断面図である。 この発明の第1実施形態を示す軸方向断面図である。 同実施形態のものの水平断面図である。 この発明の要部を拡大して示す断面図である。 この発明の第2実施形態を示す軸方向断面図である。 同実施形態のものの水平断面図である。 従来の杭頭部接合構造を示す軸方向断面図である。
符号の説明
10 既製コンクリート杭
11 鋼管
14 アンカー筋
14a 拡径部
15 杭頭部内側空間
16 パイルキャップ(構造物基礎)
17 リング部材
20 杭体コンクリート
21 環状突起
22 保持部材
22a 頂部
22b 脚部
25 鋼製端板
26 保持部材

Claims (5)

  1. 杭頭部に形成される内側空間に構造物基礎と接合するためのアンカー筋が挿入配置されるとともに、中詰めコンクリートが充填される既製コンクリート杭の杭頭部接合部構造であって、
    杭頭部の内周に、外周部分が杭体コンクリート内に埋め込まれかつ内周部分が前記中詰めコンクリートに突出する環状突起が周方向に沿って設けられていることを特徴とする既製コンクリート杭の杭頭部接合構造。
  2. 前記環状突起は杭軸方向に間隔を置いて複数段設けられていることを特徴とする請求項1記載の既製コンクリート杭の杭頭部接合構造。
  3. 前記既製コンクリート杭は杭体コンクリートの外周に鋼管を有する杭であり、
    前記環状突起は、前記鋼管の内周に取り付けられて前記杭体コンクリート内に埋め込まれた複数の保持部材に固着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の既製コンクリート杭の杭頭部接合構造。
  4. 前記保持部材は、頂部と、この頂部から延びる2本の脚部をもつトラス状鉄筋からなり、2本の脚部はそれぞれ上下に位置するように配置されてその先端が前記鋼管に取り付けられ、前記頂部に前記環状突起が固着されていることを特徴とする請求項3記載の既製コンクリート杭の杭頭部接合構造。
  5. 前記既製コンクリート杭は杭体コンクリートの上端に鋼製端板を有する杭であり、
    前記環状突起は、前記端板に取り付けられて前記杭体コンクリート内に杭軸方向に埋め込まれた複数の保持部材に固着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の既製コンクリート杭の杭頭部接合構造。
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