JP6974705B2 - コンクリート杭の使用方法 - Google Patents
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Description
非特許文献1及び2は、SC杭に軸力が作用している場合のSC杭の曲げ変形性能を報告している。非特許文献2の図1によれば、SC杭に軸力が作用している場合(No.2〜No.7)、軸力が作用していない場合(No.1)に比べ、部材角の増大に伴って杭頭曲げモーメントが急激に小さくなっており、SC杭の変形性能(靭性)が低下する。これに対し、SC杭の中空部にセメントミルクやコンクリートを充填材として充填した場合(No.8、No.9)、充填していない場合(No.2〜No.7)に比べ、SC杭の靱性が向上する。具体的には、セメントミルクやコンクリートが充填されたSC杭(No.8、No.9)は、塑性率(降伏時の曲率(部材角)に対する曲率(部材角)の比率)5倍まで最大曲げ耐力の約8割を保持する。
このため、SC杭を中実にせずに、SC杭の靭性を向上させる手段の開発が望まれる。
また、SC杭のみならず、外殻鋼管を備えていないPRC杭(プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭)やPHC杭(プレストレスト高強度コンクリート杭)等のコンクリート杭においても、中実にせずに、靭性を向上させる手段の開発が望まれる。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、軸力が作用している場合であっても、靭性が従来よりも改善される外殻鋼管付きコンクリート杭等の既製のコンクリート杭の設計方法を提供することにある。
また、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、軸力が作用している場合であっても、靭性が従来よりも改善される外殻鋼管付きコンクリート杭等の既製のコンクリート杭の使用方法を提供することにある。
更に、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、軸力が作用している場合であっても、靭性が従来よりも改善される外殻鋼管付きコンクリート杭等の既製のコンクリート杭を提供することにある。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るコンクリート杭の使用方法は、
コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体を備えるコンクリート杭の設計方法であって、前記コンクリート杭に対し作用する上限軸力を決定し、前記コンクリート杭に対し前記上限軸力が作用している状態で終局曲げモーメントが作用したときに前記杭体の内周面の圧縮歪みが降伏圧縮歪みを下回るように、前記コンクリート杭の仕様を決定するコンクリート杭の設計方法を用いて製造され、前記杭体は、コンクリートによって構成された円筒形状の外側部と、前記外側部よりも前記杭体の径方向にて内側に位置し、前記杭体の内周面を構成する円筒形状の最内側部と、を含み、前記コンクリート杭に対し前記上限軸力が作用している状態で終局曲げモーメントが作用したときに前記杭体の外側部の内周面の圧縮歪みが降伏圧縮歪み以上になるコンクリート杭の使用方法において、
前記杭体の最内側部の軸力及び曲げ耐力を無視して前記コンクリート杭に作用する軸力と終局曲げモーメントとの関係を表すNM曲線を用意し、
前記コンクリート杭に作用する軸力及び曲げモーメントが前記NM曲線によって規定された使用可能範囲に収まり、且つ、前記コンクリート杭に作用する軸力が前記上限軸力以下になるように前記コンクリート杭を使用する。
上記構成(1)によれば、コンクリート杭に対し作用する軸力が上限軸力を超えないので、杭体の内周面の圧縮歪みが降伏圧縮歪みを下回る。このため、軸力が作用している状態でも、コンクリート杭は優れた靱性を有する。
一方、NM曲線は、杭体の最内側部の軸力及び曲げ耐力を無視して作成されたものであるので、コンクリート杭の最低限の軸力及び終局曲げモーメントを想定したものであり、十分な安全を見込みながらコンクリート杭を使用することができる。
前記コンクリート杭は、中空で円筒形状の外殻鋼管を更に備え、
前記杭体は前記外殻鋼管の内周面に付着している。
前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延び、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の内部を前記杭体の周方向に延び、前記杭体の径方向にて前記緊張材よりも外側に配置された第1補強材と、を更に備える。
前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延びる第2補強材を更に備える。
前記第1補強材は前記外側部の内部に配置され、
前記外側部における前記第1補強材の体積比と降伏点の積は2.45N/mm2より大きい値である。
前記最内側部はコンクリートによって構成され、
前記コンクリート杭に対し前記上限軸力が作用している状態で終局曲げモーメントが作用したときに、前記杭体の径方向にて前記杭体の内周面から前記最内側部の厚さの4分の1以上離れた位置にて前記最内側部の圧縮歪みが降伏圧縮歪みを下回る。
この点、上記構成(6)によれば、最内側部の内周面から最内側部の厚さの4分の1以上離れた位置にて最内側部の圧縮歪みが降伏圧縮歪みを下回るので、最内側部のうちセメントミルクの含有率が高い領域を考慮せずとも、最内側部のうち骨材を十分に含む領域で、最外側部の内周面を覆い続けることができる。これにより、最内側部における骨材の濃度分布が不均一であったとしても、杭体の最内側部の体積変化を抑制することができる。この結果として、上記構成(6)によって設計・製造されるコンクリート杭は、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有する。
また本発明の少なくとも一実施形態によれば、軸力が作用していても、靭性が従来よりも改善される外殻鋼管付きコンクリート杭等の既製のコンクリート杭の使用方法が提供される。
更に本発明の少なくとも一実施形態によれば、軸力が作用していても、靭性が従来よりも改善される外殻鋼管付きコンクリート杭等の既製のコンクリート杭が提供される。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
図1及び図2に示したように、SC杭1Aは、外殻鋼管3と、杭体5Aとを備える。
外殻鋼管3は、中空で円筒形状を有しており、例えば、SKK材によって構成されている。外殻鋼管3は、例えば、300mm以上1500mm以下の外径Dを有し、外殻鋼管3の外径Dは、SC杭1Aの外径に相当する。また、外殻鋼管3は、例えば、4.5mm以上25mm以下の壁厚tsを有する。外殻鋼管3は、例えば、325N/mm2の降伏強度σstを有し、205000N/mm2の弾性係数Estを有する。
2つ以上の円筒部のうち、外殻鋼管3の内周面に付着する外側部9aは、コンクリートによって構成されている。例えば、外側部9aを構成するコンクリートは、80N/mm2、85N/mm2、105N/mm2、123N/mm2又は140N/mm2の設計基準強度Fcを有する。コンクリートの弾性係数Ectは、設計基準強度Fcの順序に対応して、40000N/mm2、40000N/mm2、42000N/mm2又は43000N/mm2である。
SC杭1Aの壁厚Hは、外殻鋼管3の壁厚tsと杭体5Aの壁厚tcとの和であり、杭体5Aが外側部9aと最内側部9bとによって構成されている場合、外殻鋼管3の壁厚tsと外側部9aの壁厚tcaと最内側部9bの壁厚tcbとの和(H=ts+tca+tcb)である。
図3に示したように、SC杭1Aの設計方法は、SC杭1Aに作用する軸力の上限値(上限軸力)Nmaxを決定する上限軸力決定工程S1と、上限軸力Nmaxに応じてSC杭1Aの仕様を決定する仕様決定工程S2とを備えている。
このような応力分布に起因して、従来のSC杭に軸力が作用している場合、SC杭の地震時の破壊モードは、非特許文献2の写真2に示されているように、外殻鋼管が圧縮力により座屈し、外殻鋼管の内周面付近のコンクリートが圧壊し、そして、コンクリートの最内周面が圧壊して崩落するという順序をたどる。このようにコンクリートの最内周面が崩落することで、コンクリートの体積が減少し、曲げ変形が繰り返されると靱性が低下してしまう。
そして、仕様決定工程S2では、SC杭1Aに対し上限軸力Nmaxが作用している状態で終局曲げモーメントMが作用したときに杭体5Aの内周面の圧縮歪みεiが降伏圧縮歪みεctを下回るように、SC杭1Aの仕様を決定する。
SC杭1Aの仕様としては、外殻鋼管3の外径D、壁厚ts及び材質(降伏歪み、弾性係数)、杭体5Aの外側部9aの壁厚tca及び材質(強度、降伏歪み、弾性係数)、並びに、杭体5Aの最内側部9bの壁厚tcb及び材質(強度、降伏歪み、弾性係数)等をあげることができる。
仕様決定工程S2では、平面保持仮定の下、SC杭1Aの直径方向にて、外殻鋼管3の圧縮側の内面の歪みが終局歪みに到達する歪みを設定する。終局歪みは、例えば0.005である。適当な仕様を見つけるために、歪みの分布は、圧縮側の外殻鋼管3の内面の歪みを終局歪みに固定した状態で、曲率φを変化させることで示される。ある歪みの分布において、SC杭1Aの横断面に作用する軸力Nは、以下のようにして求めることができる。
そして、各面積dSs、dScaに作用する軸力dNs、dNcaを、以下の式(1)〜(2)に示すように、面積dSs、dScaに、各区画での歪みε及び弾性係数Est、Ectを乗じて求める。
dNca=dSca×Ect×ε ・・・(2)
そして、以下の式(3)に示すように、すべての区画の軸力dNs、dNcaを足し合わせることにより、SC杭1Aに作用する軸力Nを求めることができる。
N=Σ(dNs+dNca) ・・・(3)
ただし、式(1)においてεの上限は降伏歪みεstとする。また、式(2)において、コンクリートの引張力は零として考慮せず、εの上限は降伏歪みεctとする。
なお、軸力Nに対応する終局曲げモーメントMを求めるには、まず以下の式(4)〜(5)に示すように、各面積dSs、dScaに作用する曲げモーメントdMs、dMcaを、軸力dNs、dNcaに図心からの距離yを乗じて求める。
dMs=dNs×y ・・・(4)
dMca=dNca×y ・・・(5)
そして、以下の式(6)に示すように、すべての区画の曲げモーメントdMs、dMcaを足し合わせることにより、各軸力Nに対応する終局曲げモーメントMを求めることができる。
M=Σ(dMs+dMca) ・・・(6)
なお、図8には、最内側部9bの軸力dNcb及び曲げモーメントdMcbを考慮した場合のNM曲線も参考のために示している。なお、軸力dNcbは、最内側部9bの面積dScbに、各区画での歪みε及び弾性係数Ectを乗じて求めることができる。曲げモーメントdMcbは、軸力dNcbに図心からの距離yを乗じて求めることができる。
M−φ曲線は、上限軸力Nmax以下の範囲で任意の軸力Nにおいて、曲率φを変化させながら各曲率φに対応する曲げモーメントMを求めることにより、求めることができる。
x:地表面からの深さ(m)
y:深さxでの杭の変位(m)
E:杭のヤング係数(kN/m2)
I:杭の断面2次モーメント(m4)
P(x):深さxでの水平地盤反力(kN/m)
ただし、P(x)は以下の式(8)で表される。
P(x)=khBy ・・・(8)
なお、式(8)中の記号は以下のものを表している。
B:杭幅
kh:水平地盤反力係数(kN/m3)単位面積の地盤を単位長さ変位させるのに要する力
このため、SC杭1Aは、軸力NがSC杭1Aに作用しているときに、水平力が作用してSC杭1Aに曲げモーメントMoが発生することを想定したときに、軸力N及び曲げモーメントMoを表す点が、NM曲線によって囲まれた使用可能領域内に収まり、且つ、軸力Nが上限軸力Nmax以下になるように使用される。例えば、SC杭1Aは、引き抜き力−Neが作用しているときの軸力Na−Neでの発生曲げモーメントMo及び押し込み力+Neが作用しているときの軸力Na+Neでの発生曲げモーメントMoが、NM曲線によって囲まれた使用可能領域内に収まり、且つ、軸力Na+Neが上限軸力Nmax以下になるように使用される(図8参照)。別の表現を使用すれば、SC杭1Aを含む複数の杭を用いる基礎杭を設計する場合、上述した条件を満たすように基礎杭が設計される。
一方、上述したように、NM曲線は、杭体5Aの最内側部9bの軸力Ncb及び曲げ耐力Mcbを無視して作成されたものであるので、SC杭1Aの最低限の軸力及び終局曲げモーメントを想定したものであり、十分な安全を見込みながらSC杭1Aを使用することができる。
上述したように、SC杭の破壊モードは外殻鋼管の座屈から始まるため、終局限界圧縮耐力Nu及び終局限界引張耐力Nulを用いれば、SC杭1Aの変形性能をより正確に求めることができる。
F:鋼材の基準強度(=σst(N/mm2)
t:鋼管の厚さ(腐食しろを考慮)(mm)
r:鋼管の半径(mm)
A:鋼管の断面積(腐食しろを考慮)(mm2)
図11に示したように、SC杭1Aの製造方法は、外殻鋼管準備工程S10と、第1打設工程S11と、第1遠心成形工程S12と、第2打設工程S13と、第2遠心成形工程S14とを備えている。
第1打設工程S11では、外殻鋼管3内に生コンクリートを充填する。この充填は外殻鋼管3内に挿入可能な径のスクリューフィーダー等によって行う。スクリューフィーダーは、ある程度生コンクリートが充填されてきた段階で、徐々に引き抜きながら生コンクリートを充填する。
第1遠心成形工程S12後に行われる第2打設工程S13では、第1遠心成形工程S12にて成形された生コンクリートの内側に、生コンクリートが更に充填される。
かかる場合に、最内側部9bは外側部9aに完全に付着していなくても良い。即ち付着力が無い状態でも良い。
以下の表1〜表6は、上述したSC杭の設計方法によって決定されたSC杭の仕様と径厚比に対応する軸力比の計算結果を表している。
径厚比は、SC杭の外径Dに対する、SC杭の壁厚Hの比H/Dである。軸力比は、SC杭の圧縮強度Ncに対する上限軸力Nmaxの比Nmax/Ncである。SC杭の圧縮強度Ncは、外殻鋼管3の断面積Ssに降伏強度σstを乗じた値と、外側部9aの断面積Scaにコンクリートの強度Fcを乗じた値とを足し合わせた値である。
以下の表1〜表6に示す仕様及び径厚比を有するSC杭は、表中の軸力比に対応する軸力N及び終局曲げモーメントが作用しても、最内側部9bの内周面の歪みεiが降伏歪みεctを下回る。
y=2.5862x−0.2087 ・・・(12)
同様に、表2〜6の各データから、軸力比yの最大値は、径厚比H/Dの関数として以下の式(13)〜(17)により求めることができる。
y=2.7207x−0.2377 ・・・(13)
y=2.5915x−0.2067 ・・・(14)
y=2.7992x−0.2562 ・・・(15)
y=2.4309x−0.148 ・・・(16)
y=2.4399x−0.1431 ・・・(17)
例えば、上述した実施形態では、杭体5Aが2つの円筒部によって構成されていたが、図12に示すSC杭1Bのように、杭体5Bが1つの円筒部によって構成されていてもよい。杭体5Bはコンクリートによって構成されている。あるいは、杭体が、3つ以上の円筒部によって構成されていてもよい。
また、杭体5Aが外側部9a及び最内側部9bによって構成されている場合、外側部9aの強度は、最内側部9bの強度と同じであっても、大きくても、あるいは小さくてもよい。なお、最内側部9bの強度を外側部9aの強度よりも大きくすれば、最内側部9bの壁厚tcbを薄くすることができ、SC杭1Aの軽量化を図ることができる。
また、上述した実施形態では、外側部9aの内周面全域が最内側部9bによって覆われていたが、SC杭1Aの軸線方向にて、相対的に大きな曲げモーメントが発生する領域にのみ最内側部9bを設けてもよい。つまり、SC杭1Aの軸線方向にて、外側部9aの内周面を最内側部9bによって部分的に覆ってもよい。
また更に、杭体5A及び5Bを構成するコンクリートは、無筋コンクリートであるが、鉄筋コンクリートであってもよい。
一方、上述した実施形態では、終局曲げモーメントが作用したときに杭体5A,5Bの内周面の圧縮歪みが降伏圧縮歪みを下回るが、好ましくは、SC杭1A,1Bの径方向にて、杭体5A,5Bの内周面の位置(ri)から10mm外側までの領域において、圧縮歪みが降伏圧縮歪みを下回る。
また、外殻鋼管3としては、SKK材のみならず、STK材、SM材、SS材を用いてもよい。
図16は、PRC杭10における図6に相当する図である。PRC杭10の場合、仕様決定工程S2では、平面保持仮定の下、PRC杭10の直径方向にて、杭体5Aの圧縮側の外面の歪みが終局歪みに到達する歪みを設定する。終局歪みは、例えば0.0035である。適当な仕様を見つけるために、歪みの分布は、圧縮側の杭体5Aの外面の歪みを終局歪みに固定した状態で、曲率φを変化させることで示される。ある歪みの分布において、PRC杭10の横断面に作用する軸力Nは、以下のようにして求めることができる。
そして、各面積dSca、dSp、dSrに作用する軸力dNca、dNp、dNrを、以下の式(18)〜(20)に示すように、面積dSca、dSp、dSrに、各区画での歪みε及び弾性係数Ect、Ept、Ertを乗じて求める。
なお、図16では、軸力や曲げモーメントの算出にあたり、計算を簡単にするために、異形鉄筋16を等価な断面積を有する薄肉鋼管16’にて代替し、PC鋼材12を等価な断面積を有する薄肉鋼管12’にて代替し、外側部9aの面積dScaをdScaoとdScaiに分けているが、必ずしもこれらの代替は必要ではない。
dNp=dSp×Ept×ε ・・・(19)
dNr=dSr×Ert×ε ・・・(20)
そして、以下の式(21)に示すように、すべての区画の軸力dNca、dNp、dNrを足し合わせることにより、PRC杭10に作用する軸力Nを求めることができる。なお、軸力Nの算出にあたり、せん断補強筋14に作用する軸力を考慮する必要は無い。
N=Σ(dNca+dNp+dNr) ・・・(21)
ただし、式(18)において、コンクリートの引張力は零として考慮せず、εの上限は降伏歪みεctとする。そして、式(20)においてεの上限は降伏歪みεrtとする。
なお、PC鋼材12には、例えば、PRC杭10の初期の状態で約0.005の引張歪みεpiが導入されている。PRC杭10の引張側の歪みの上限は、PC鋼材12の引張歪みεpによって規定され、引張歪みεpが0.05となるときの歪みが、PRC杭10の引張側の歪みの上限に設定される。
dMca=dNca×y ・・・(22)
dMp=dNp×y ・・・(23)
dMr=dNr×y ・・・(24)
M=Σ(dMca+dMp+dMr) ・・・(25)
上記構成によれば、杭体5Aの外側部9aにおける第1補強材としてのせん断補強筋14の体積比と降伏点の積が2.45N/mm2より大きい値であるので、杭体5Aの外側を確実に補強することができる。この結果として、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有する、外殻鋼管を有さないPRC杭10の設計方法が提供される。
PRC杭10の製造方法は、図11に示したSC杭1Aの製造方法と比べたときに、外殻鋼管準備工程S10に代えて、鉄筋かご準備工程S15を備えている。鉄筋かご準備工程S15では、PC鋼材12、せん断補強筋14及び異形鉄筋16からなる鉄筋かごを用意する。
また、PRC杭10の製造方法は、杭体5Aにプレストレスを導入するために、緊張工程S16及びプレストレス導入工程S17を更に備えている。
第2遠心成形工程S14の終了後に、所定の養生プログラムに沿って蒸気養生を行う。
蒸気養生を所定時間行った後、プレストレス導入工程S17において、PC鋼材12の引っ張り状態が解除される。つまり、緊張ナットが緩められる。これにより、引っ張られていたPC鋼材12が収縮しようとし、端板7,7及びPC鋼材12によって、杭体5Aにプレストレスが導入される。つまり、PRC杭10が実際に使用される前から、杭体5Aには予め圧縮力が作用させられる。
なお、プレストレス導入工程S17は、第1遠心成形工程S12と第2打設工程S13との間に行ってもよい。この場合、杭体5Aの外側部9aにのみプレストレスが導入される。
幾つかの実施形態では、杭体5Aの最内側部9bはコンクリートによって構成され、PRC杭10に対し上限軸力Nmaxが作用している状態で終局曲げモーメントMが作用したときに、図18に示したように、杭体5Aの径方向にて杭体5Aの内周面から最内側部9bの厚さtcbの4分の1以上離れた位置にて最内側部9bの圧縮歪みεi’が降伏圧縮歪みを下回る。
この点、上記構成によれば、最内側部9bの内周面から最内側部9bの厚さtcbの4分の1以上離れた位置にて最内側部9bの圧縮歪みεi’が降伏圧縮歪みεctを下回るので、最内側部9bのうちセメントミルクの含有率が高い領域を考慮せずとも、最内側部9bのうち骨材を十分に含む領域で、最外側部9aの内周面を覆い続けることができる。これにより、最内側部9bにおける骨材の濃度分布が不均一であったとしても、杭体5Aの最内側部9bの体積変化を抑制することができる。この結果として、上記構成によって設計・製造されるPRC杭10は、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有する。
また、PRC杭10において、各異形鉄筋16は、杭体5Aの全長に渡って延びているが、各異形鉄筋16の長さは、杭体5Aの全長よりも短くてもよい。
3 外殻鋼管
5A,5B 杭体
7 端板
9a 外側部
9b 最内側部
10 プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭(PRC杭)
12 PC鋼材(緊張材)
14 せん断補強筋(第1補強材)
16 異形鉄筋(第2補強材)
18 筒状材
20 節杭
22 節部
30 拡径杭(ST杭)
32 拡径部
Claims (6)
- コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体を備えるコンクリート杭の設計方法であって、前記コンクリート杭に対し作用する上限軸力を決定し、前記コンクリート杭に対し前記上限軸力が作用している状態で終局曲げモーメントが作用したときに前記杭体の内周面の圧縮歪みが降伏圧縮歪みを下回るように、前記コンクリート杭の仕様を決定するコンクリート杭の設計方法を用いて製造され、前記杭体は、コンクリートによって構成された円筒形状の外側部と、前記外側部よりも前記杭体の径方向にて内側に位置し、前記杭体の内周面を構成する円筒形状の最内側部と、を含み、前記コンクリート杭に対し前記上限軸力が作用している状態で終局曲げモーメントが作用したときに前記杭体の外側部の内周面の圧縮歪みが降伏圧縮歪み以上になるコンクリート杭の使用方法において、
前記杭体の最内側部の軸力及び曲げ耐力を無視して前記コンクリート杭に作用する軸力と終局曲げモーメントとの関係を表すNM曲線を用意し、
前記コンクリート杭に作用する軸力及び曲げモーメントが前記NM曲線によって規定された使用可能範囲に収まり、且つ、前記コンクリート杭に作用する軸力が前記上限軸力以下になるように前記コンクリート杭を使用する
ことを特徴とするコンクリート杭の使用方法。 - 前記コンクリート杭は、中空で円筒形状の外殻鋼管を更に備え、
前記杭体は前記外殻鋼管の内周面に付着している
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート杭の使用方法。 - 前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延び、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の内部を前記杭体の周方向に延び、前記杭体の径方向にて前記緊張材よりも外側に配置された第1補強材と、を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート杭の使用方法。 - 前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延びる第2補強材を更に備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のコンクリート杭の使用方法。 - 前記第1補強材は前記外側部の内部に配置され、
前記外側部における前記第1補強材の体積比と降伏点の積は2.45N/mm2より大きい値である
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のコンクリート杭の使用方法。 - 前記最内側部はコンクリートによって構成され、
前記コンクリート杭に対し前記上限軸力が作用している状態で終局曲げモーメントが作用したときに、前記杭体の径方向にて前記杭体の内周面から前記最内側部の厚さの4分の1以上離れた位置にて前記最内側部の圧縮歪みが降伏圧縮歪みを下回る
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のコンクリート杭の使用方法。
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