JP7278703B2 - コンクリート杭 - Google Patents
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Description
一方、SC杭のみならず、外殻鋼管を備えていないPRC杭(プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭)やPHC杭(プレストレスト高強度コンクリート杭)等のコンクリート杭においても、中実にせずに、靭性を向上させる手段の開発が望まれる。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、曲げ耐力及び靭性が従来よりも改善された既製のコンクリート杭を提供することにある。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るコンクリート杭は、
コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体を備えるコンクリート杭において、
前記杭体は、該杭体の軸線方向にて中間部に金属材によって覆われていない外周面を有し、
前記杭体の外径をDとし、前記杭体の厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、
次式:
0.24≦tc/D<0.5
で示される関係を満たし、
前記杭体の厚さtcは、前記杭体の軸線方向全体に渡って、前記杭体の軸線方向に直交する前記杭体の断面内において、各頂点が前記杭体の外周面に接しており60度の頂角を有する仮想の三角形の各辺が前記杭体内に含まれる厚さであり、
前記杭体は、同心に配置された2つ以上の円筒部を含み、
前記2つ以上の円筒部のうち最内周に位置する最内周円筒部を構成する材料は、最外周に位置する最外周円筒部を構成する材料よりも小さい圧縮強度を有し、
前記2つ以上の円筒部の各々は30N/mm 2 以上の圧縮強度を有する材料によって構成されている。
しかしながら、上記構成によれば、径厚比tc/Dが0.24以上であるので、径厚比tc/Dが0.24未満の場合に比べて、曲げ耐力及び靭性が向上する。
また、コンクリート杭は中空なので、杭孔に挿入する際に生じる浮力を低減できる。さらに、中実のコンクリート杭よりも重量が軽くなることで輸送や杭施工の負担を軽減することができる。
また、上記構成(1)によれば、最内周円筒部を構成する材料が、最外周円筒部を構成する材料よりも小さい圧縮強度を有しているので、最内周円筒部の材料コストを低減することができる。
上記構成(1)によれば、最外周円筒部を構成する材料の圧縮強度が最内周円筒部を構成する材料の圧縮強度よりも大きいので、最外周円筒部における亀裂の発生が抑制され、曲げ耐力及び靭性を向上させながら、コストを削減することができる。
また、上記構成(1)によれば、各円筒部を構成する材料は、30N/mm2以上の圧縮強度を有しているので、円筒部の圧縮強度が不足することはなく、曲げ耐力及び靭性を確実に向上させることができる。
前記最内周円筒部はセメントペースト又はモルタルによって構成されている。
上記構成(2)によれば、最内周円筒部が硬化性材料であるグラウトによって構成されているので、最内周円筒部の形成が容易である。
前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延び、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の内部を前記杭体の周方向に延び、前記杭体の径方向にて前記緊張材よりも外側に配置された第1補強材と、を更に備える。
前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延びる第2補強材を更に備える。
コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体と、
前記杭体の軸線方向に沿って前記杭体の内部に配置され、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の周方向に沿って前記杭体の内部に配置されて、前記緊張材よりも前記杭体の径方向の外側に配置された第1補強材と、
を備えるコンクリート杭において、
前記杭体は、該杭体の軸線方向の中間部に金属材によって覆われていない外周面を有し、
前記杭体の外径をDとし、前記杭体の厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、
次式:
0.24≦tc/D<0.5
で示される関係を満たし、
前記杭体の厚さtcは、前記杭体の軸線方向全体に渡って、前記杭体の軸線方向に直交する前記杭体の断面内において、各頂点が前記杭体の外周面に接しており60度の頂角を有する仮想の三角形の各辺が前記杭体内に含まれる厚さであり、 前記杭体は、
コンクリートによって構成された円筒形状の最外周円筒部と、
前記最外周円筒部よりも前記杭体の径方向にて内側に位置し、前記杭体の内周面を構成する円筒形状の最内周円筒部と、を含み、
前記第1補強材は前記最外周円筒部の内部に配置され、
前記最外周円筒部における前記第1補強材の体積比と降伏点の積は2.45N/mm2より大きい値である。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1~図3に示したように、SC杭1(1A,1B)は、外殻鋼管3と、杭体5(5A,5B)とを備える。
外殻鋼管3は、円筒形状を有しており、例えば、一般用圧延鋼材によって構成されている。外殻鋼管3は、例えば、300mm以上1500mm以下の外径Dを有し、外殻鋼管3の外径Dは、SC杭1(1A,1B)の外径に相当する。また、外殻鋼管3は、例えば、4.5mm以上25mm以下の肉厚tsを有する。
そして、SC杭1(1A,1B)にあっては、SC杭1(1A,1B)の外径Dに対する厚さTの比である径厚比T/D、換言すれば、外殻鋼管3の外径Dに対する、外殻鋼管3及び杭体5(5A,5B)の厚さの合計(ts+tc)の比である径厚比T/Dが、次式:
0.24≦T/D<0.5
で示される関係を満たしている。
しかしながら、上記構成によれば、径厚比T/Dが0.24以上であるので、径厚比T/Dが0.24未満の場合に比べて、曲げ耐力及び靭性が向上する。
図4(a)に示したように、径厚比T/Dが0.24未満である場合、SC杭1’に曲げモーメントが作用すると、杭体5’にて60度破壊が生じ、60度の頂角を有する破片10が剥離し易いものと考えられる。
このように、60度よりも大きな頂角を有するような大きい破片はもとより、60度の頂角を有するような小さい破片の剥離が防止されることで、径厚比T/Dが0.24以上である場合、径厚比T/Dが0.24未満の場合に比べて、曲げ耐力及び靭性が向上するものと考えられる。
そして、2つ以上の円筒部9a,9bのうち最内周に位置する最内周円筒部9aを構成する材料は、最外周に位置する最外周円筒部9bを構成する材料よりも小さい圧縮強度を有する。
そして更に、2つ以上の円筒部9a,9bの各々は30N/mm2以上の圧縮強度を有する材料によって構成されている。
また、上記構成によれば、最内周円筒部9aを構成する材料が、最外周円筒部9bを構成する材料よりも小さい圧縮強度を有しているので、最内周円筒部9aの材料コストを低減することができる。
なお、杭体5Bが複数の円筒部9a,9bによって構成されている場合、図3に示したように、杭体5Bの厚さtcは、各円筒部9a,9bの厚さtc1,tc2の合計(tc1+tc2)である。
上記構成によれば、最内周円筒部9aが硬化性材料であるグラウトによって構成されているので、最内周円筒部9aの形成が容易である。また、グラウトを用いることによって、材料コストの削減を図ることができる。
上記構成によれば、最内周円筒部9aに、最外周円筒部9bよりも圧縮強度の低いコンクリートを適用することで、材料コストの低減を図ることができる。
図5に示したように、SC杭1(1A)の杭製造方法は、外殻鋼管準備工程S1と、プレキャスト工程(第1プレキャスト工程)S2と、遠心成形工程(第1遠心成形工程)S3とを備えている。
プレキャスト工程S2では、外殻鋼管3内に生コンクリートを充填する。この充填は外殻鋼管3内に挿入可能な径のスクリューフィーダー等によって行う。スクリューフィーダーは、ある程度生コンクリートが充填されてきた段階で、徐々に引き抜きながら生コンクリートを充填する。
この後、生コンクリートがある程度強度を発現した段階で、外殻鋼管3を遠心成形装置の型枠から外し、蒸気養生を行うことにより円筒形状の杭体5(5A)が形成される。
図6に示したSC杭1(1B)の製造方法は、第2プレキャスト工程S4及び第2遠心成形工程S5を有する点において、図5に示したSC杭1(1A)の製造方法と異なっている。図6に示したSC杭1(1B)の製造方法によれば、第1遠心成形工程S3後に行われる第2プレキャスト工程S4にて、第1遠心成形工程S3にて成形された生コンクリートの内側に、生コンクリートが更に充填される。
この後、第1プレキャスト工程S2及び第2プレキャスト工程S4で充填された生コンクリートがある程度強度を発現した段階で、外殻鋼管3を遠心成形装置の型枠から外し、蒸気養生を行うことにより円筒形状の杭体5(5B)が形成される。
なお、第2プレキャスト工程S4の前に、第1プレキャスト工程S2で充填された生コンクリートの強度が発現している必要は必ずしもない。
以下、実施例について説明する。
1.試験体の準備
まず、比較例1、2及び実施例1、2の試験体として、以下の表1~3に示す仕様を有するSC杭を用意した。
試験装置20の概要を試験体としてSC杭1とともに図7に示す。試験は、単純梁方式の曲げ試験とし、一方向繰返し載荷とした。試験装置20は、試験体としてのSC杭1を支持点にて支持するための支持装置22と、試験体の両端及び中央の変位を測定するための変位計24と、試験体の中央部の2箇所に均等に荷重を加える荷重装置(不図示)とを備えている。
なお、部材角は、杭中央たわみ量を支持点から載荷点中央までの距離で割った値とする。
試験結果として、荷重と中央たわみの関係の包絡線図を図9に示し、各試験体の最大荷重と耐力比を表4に示し、各試験体の中央たわみ(残留変位)が100mm時の荷重と耐力低下率を表5に示す。
一方、図9及び表5から明らかなように、径厚比T/Dが0.24以上の実施例1及び実施例2のSC杭では、径厚比T/Dが0.24未満の比較例2のSC杭に比べて、中央たわみが100mm時の荷重が大きく、比較例2のSC杭に比べて耐力低下率が低い。これより、実施例1及び実施例2のSC杭は、比較例2のSC杭に比べて、良好な靭性を有することがわかる。
例えば、最内周円筒部9aの成形方法は、遠心成形に限定されることはなく、例えば、型枠を配置して振動詰めによって行ってもよい。
更に本発明は、SC杭に限定されることはなく、以下に述べるように、外殻鋼管を有さない既製のコンクリート杭にも適用可能である。なお、以下の説明において、上述した実施形態と同一又は類似の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
0.24≦tc/D<0.5
で示される関係を満たしている。
しかしながら、上記構成によれば、径厚比tc/Dが0.24以上であるので、径厚比tc/Dが0.24未満の場合に比べて、曲げ耐力及び靭性が向上する。
また、PRC杭30は中空なので、杭孔に挿入する際に生じる浮力を低減できる。さらに、中実のコンクリート杭よりも重量が軽くなることで輸送や杭施工の負担を軽減することができる。
上記構成によれば、杭体5Bの最外周円筒部9bにおける第1補強材としてのせん断補強筋34の体積比と降伏点の積が2.45N/mm2より大きい値であるので、杭体5Bの外側を確実に補強することができる。この結果として、外殻鋼管を有していなくても、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有するPRC杭30が提供される。
PRC杭30の製造方法は、図6に示したSC杭1Bの製造方法と比べたときに、外殻鋼管準備工程S1に代えて、鉄筋かご準備工程S6を備えている。鉄筋かご準備工程S6では、PC鋼材32、せん断補強筋34及び異形鉄筋36からなる鉄筋かごを用意する。
また、PRC杭30の製造方法は、杭体5Bにプレストレスを導入するために、緊張工程S7及びプレストレス導入工程S8を更に備えている。
PC鋼材32は、第1遠心成形工程S3、第2プレキャスト工程S4及び第2遠心成形工程S5の間、引っ張られた状態に保持される。
蒸気養生を所定時間行った後、プレストレス導入工程S8において、PC鋼材32の引っ張り状態が解除される。つまり、緊張ナットが緩められる。これにより、引っ張られていたPC鋼材32が収縮しようとし、端板7,7及びPC鋼材32によって、杭体5Bにプレストレスが導入される。つまり、PRC杭30が実際に使用される前から、杭体5Bには予め圧縮力が作用させられる。
なお、プレストレス導入工程S8は、第1遠心成型工程S3と第2プレキャスト工程S4との間に行ってもよい。この場合、杭体5Bの最外周円筒部9bにのみプレストレスが導入される。
例えば、上述した実施形態において、PRC杭30は第2補強材として複数の異形鉄筋36を備えていたが、異形鉄筋36を備えていなくてもよい。つまり、本発明は、PRC杭30のみならず、既製のコンクリート杭の一種であるプレストレスト高強度コンクリート杭(PHC杭)にも適用可能である。
また、PRC杭30において、各異形鉄筋36は、杭体5Bの全長に渡って延びているが、各異形鉄筋36の長さは、杭体5Bの全長よりも短くてもよい。
3 外殻鋼管
5(5A,5B) 杭体
7 端板
9 円筒部
9a 最内周円筒部
9b 最外周円筒部
10 破片
20 試験装置
22 支持装置
24 変位計
30 プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭(PRC杭)
32 PC鋼材(緊張材)
34 せん断補強筋(第1補強材)
36 異形鉄筋(第2補強材)
38 筒状材
40 節杭
42 節部
50 拡径杭(ST杭)
52 拡径部
Claims (5)
- コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体を備えるコンクリート杭において、
前記杭体は、該杭体の軸線方向の中間部に金属材によって覆われていない外周面を有し、
前記杭体の外径をDとし、前記杭体の厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、
次式:
0.24≦tc/D<0.5
で示される関係を満たし、
前記杭体の厚さtcは、前記杭体の軸線方向全体に渡って、前記杭体の軸線方向に直交する前記杭体の断面内において、各頂点が前記杭体の外周面に接しており60度の頂角を有する仮想の三角形の各辺が前記杭体内に含まれる厚さであり、
前記杭体は、同心に配置された2つ以上の円筒部を含み、
前記2つ以上の円筒部のうち最内周に位置する最内周円筒部を構成する材料は、最外周に位置する最外周円筒部を構成する材料よりも小さい圧縮強度を有し、
前記2つ以上の円筒部の各々は30N/mm2以上の圧縮強度を有する材料によって構成されていることを特徴とするコンクリート杭。 - 前記最内周円筒部はセメントペースト又はモルタルによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート杭。
- 前記杭体の軸線方向に沿って前記杭体の内部に配置され、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の周方向に沿って前記杭体の内部に配置されて、前記緊張材よりも前記杭体の径方向の外側に配置された第1補強材と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート杭。 - 前記杭体の軸線方向に沿って前記杭体の内部に配置された第2補強材を更に備えることを特徴とする請求項3に記載のコンクリート杭。
- コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体と、
前記杭体の軸線方向に沿って前記杭体の内部に配置され、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の周方向に沿って前記杭体の内部に配置されて、前記緊張材よりも前記杭体の径方向の外側に配置された第1補強材と、
を備えるコンクリート杭において、
前記杭体は、該杭体の軸線方向の中間部に金属材によって覆われていない外周面を有し、
前記杭体の外径をDとし、前記杭体の厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、
次式:
0.24≦tc/D<0.5
で示される関係を満たし、
前記杭体の厚さtcは、前記杭体の軸線方向全体に渡って、前記杭体の軸線方向に直交する前記杭体の断面内において、各頂点が前記杭体の外周面に接しており60度の頂角を有する仮想の三角形の各辺が前記杭体内に含まれる厚さであり、
前記杭体は、
コンクリートによって構成された円筒形状の最外周円筒部と、
前記最外周円筒部よりも前記杭体の径方向の内側に位置し、前記杭体の内周面を構成する円筒形状の最内周円筒部と、を含み、
前記第1補強材は前記最外周円筒部の内部に配置され、
前記最外周円筒部における前記第1補強材の体積比と降伏点の積は2.45N/mm2より大きい値である
ことを特徴とするコンクリート杭。
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