JP7278703B2 - コンクリート杭 - Google Patents

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Description

本開示は中空のコンクリート杭に関する。
既製杭の一種である外殻鋼管付きコンクリート杭(SC杭)は、一般的に、外殻鋼管と、外殻鋼管によって覆われた中空で円筒形状のコンクリートとによって構成されている(例えば特許文献1参照)。
特許第5265447号公報
SC杭は、外殻鋼管を有することから、外殻鋼管を有さない通常のコンクリート杭よりも、高い曲げ耐力及び靭性を有する。しかしながら、そのようなSC杭に対しても、曲げ耐力及び靭性の更なる向上が望まれている。
一方、SC杭のみならず、外殻鋼管を備えていないPRC杭(プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭)やPHC杭(プレストレスト高強度コンクリート杭)等のコンクリート杭においても、中実にせずに、靭性を向上させる手段の開発が望まれる。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、曲げ耐力及び靭性が従来よりも改善された既製のコンクリート杭を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討を重ねた結果、外殻鋼管付きコンクリート杭が所定の径厚比を有する場合、曲げ耐力及び靭性が向上することを見出した。そして更に、当該径厚比を、外殻鋼管を備えていないコンクリート杭に適用しても、曲げ耐力及び靭性が向上することを見出し、本発明に想到した。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るコンクリート杭は、
コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体を備えるコンクリート杭において、
前記杭体は、該杭体の軸線方向にて中間部に金属材によって覆われていない外周面を有し、
前記杭体の外径をDとし、前記杭体の厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、
次式:
0.24≦tc/D<0.5
で示される関係を満たし、
前記杭体の厚さtcは、前記杭体の軸線方向全体に渡って、前記杭体の軸線方向に直交する前記杭体の断面内において、各頂点が前記杭体の外周面に接しており60度の頂角を有する仮想の三角形の各辺が前記杭体内に含まれる厚さであり、
前記杭体は、同心に配置された2つ以上の円筒部を含み、
前記2つ以上の円筒部のうち最内周に位置する最内周円筒部を構成する材料は、最外周に位置する最外周円筒部を構成する材料よりも小さい圧縮強度を有し、
前記2つ以上の円筒部の各々は30N/mm 以上の圧縮強度を有する材料によって構成されている。
上記構成(1)によれば、径厚比tc/Dが0.5未満であって、杭体は円筒形状を有して完全には中実ではなく、径方向中央に円柱形状の空洞を有する。このため、杭体に亀裂が発生すると、杭体の内面の一部が剥落し、コンクリート杭の曲げ耐力及び靭性が低下する虞がある。
しかしながら、上記構成によれば、径厚比tc/Dが0.24以上であるので、径厚比tc/Dが0.24未満の場合に比べて、曲げ耐力及び靭性が向上する。
また、コンクリート杭は中空なので、杭孔に挿入する際に生じる浮力を低減できる。さらに、中実のコンクリート杭よりも重量が軽くなることで輸送や杭施工の負担を軽減することができる。
更に、上記構成(1)によれば、杭体は同心に配置された2つ以上の円筒部によって構成されているので、例えば遠心成形を用いて、最外周円筒部の成形後に最内周円筒部の成形を行うことが可能であり、杭体の成形が容易である。
また、上記構成(1)によれば、最内周円筒部を構成する材料が、最外周円筒部を構成する材料よりも小さい圧縮強度を有しているので、最内周円筒部の材料コストを低減することができる。
上記構成(1)によれば、最外周円筒部を構成する材料の圧縮強度が最内周円筒部を構成する材料の圧縮強度よりも大きいので、最外周円筒部における亀裂の発生が抑制され、曲げ耐力及び靭性を向上させながら、コストを削減することができる。
また、上記構成(1)によれば、各円筒部を構成する材料は、30N/mm以上の圧縮強度を有しているので、円筒部の圧縮強度が不足することはなく、曲げ耐力及び靭性を確実に向上させることができる。
2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記最内周円筒部はセメントペースト又はモルタルによって構成されている。
上記構成(2)によれば、最内周円筒部が硬化性材料であるグラウトによって構成されているので、最内周円筒部の形成が容易である。
3)幾つかの実施形態では、上記構成(1)又は(2)において、
前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延び、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の内部を前記杭体の周方向に延び、前記杭体の径方向にて前記緊張材よりも外側に配置された第1補強材と、を更に備える。
上記構成(3)によれば、杭体の周方向に延びる第1補強材によって、杭体の外側が補強される。この結果として、外殻鋼管を有していなくても、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有するPHC杭等のコンクリート杭が提供される。
4)幾つかの実施形態では、上記構成(3)において、
前記コンクリート杭は、
前記杭体の内部を前記杭体の軸線方向に延びる第2補強材を更に備える。
上記構成(4)によれば、杭体の軸線方向に延びる第2補強材によって、曲げ耐力を高めることができ、より高い靱性を有するPRC杭等のコンクリート杭が提供される。
5)本発明の少なくとも一実施形態に係るコンクリート杭は、
コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体と、
前記杭体の軸線方向に沿って前記杭体の内部に配置され、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
前記杭体の周方向に沿って前記杭体の内部に配置されて、前記緊張材よりも前記杭体の径方向の外側に配置された第1補強材と、
を備えるコンクリート杭において、
前記杭体は、該杭体の軸線方向の中間部に金属材によって覆われていない外周面を有し、
前記杭体の外径をDとし、前記杭体の厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、
次式:
0.24≦tc/D<0.5
で示される関係を満たし、
前記杭体の厚さtcは、前記杭体の軸線方向全体に渡って、前記杭体の軸線方向に直交する前記杭体の断面内において、各頂点が前記杭体の外周面に接しており60度の頂角を有する仮想の三角形の各辺が前記杭体内に含まれる厚さであり、 前記杭体は、
コンクリートによって構成された円筒形状の最外周円筒部と、
前記最外周円筒部よりも前記杭体の径方向にて内側に位置し、前記杭体の内周面を構成する円筒形状の最内周円筒部と、を含み、
前記第1補強材は前記最外周円筒部の内部に配置され、
前記最外周円筒部における前記第1補強材の体積比と降伏点の積は2.45N/mmより大きい値である。
上記構成(5)によれば、杭体の最外周円筒部における第1補強材の体積比と降伏点の積が2.45N/mmより大きい値であるので、杭体の外側を確実に補強することができる。この結果として、外殻鋼管を有していなくても、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有する、PRC杭やPHC杭等のコンクリート杭が提供される
本発明の少なくとも一実施形態によれば、外周に外殻鋼管を備えていなくても、曲げ耐力及び靭性が従来よりも改善されたコンクリート杭が提供される。
本発明の一実施形態に係る外殻鋼管付きコンクリート杭の概略的な縦断面図である。 図1のII-II線に沿う概略的な断面図である。 本発明の一実施形態に係る外殻鋼管付きコンクリート杭の図2に相当する断面図である。 径厚比T/Dを0.24以上に設定することによる効果を説明するための図である。 図1に示した外殻鋼管付きコンクリート杭の製造方法の一例の概略的な手順を示すフローチャートである。 図3に示した外殻鋼管付きコンクリート杭の製造方法の一例の概略的な手順を示すフローチャートである。 外殻鋼管付きコンクリート杭の試験装置の概略的な構成を外殻鋼管付きコンクリート杭とともに示す図である。 試験体への載荷ステップを示すグラフである。 実施例及び比較例における荷重と中央たわみの関係の包絡線図である。 本発明の他の一実施形態に係るプレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭の概略的な縦断面図である。 図10のXI-XI線に沿う概略的な断面図である。 図10に示したプレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭の製造方法の一例の概略的な手順を示すフローチャートである。 本発明の他の一実施形態に係る既製のコンクリート杭の一種である節杭の概略的な縦断面である。 本発明の他の一実施形態に係る既製のコンクリート杭の一種である拡径杭の概略的な縦断面図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る外殻鋼管付きコンクリート杭(以下、SC杭とも称する)1(1A)の構成を概略的示す縦断面図である。図2は、図1中のII-II線に沿う概略的な断面図である。図3は、本発明の他の一実施形態に係るSC杭1(1B)の図2に対応する横断面図である。
図1~図3に示したように、SC杭1(1A,1B)は、外殻鋼管3と、杭体5(5A,5B)とを備える。
外殻鋼管3は、円筒形状を有しており、例えば、一般用圧延鋼材によって構成されている。外殻鋼管3は、例えば、300mm以上1500mm以下の外径Dを有し、外殻鋼管3の外径Dは、SC杭1(1A,1B)の外径に相当する。また、外殻鋼管3は、例えば、4.5mm以上25mm以下の肉厚tsを有する。
杭体5(5A,5B)は、外殻鋼管3の内周面に付着した状態で外殻鋼管3内に配置され、コンクリートを少なくとも一部に含む。杭体5(5A,5B)は、円筒形状を有し、例えば硬化性の材料を硬化させて形成され、図2及び図3に示したように、横断面でみて厚さtcを有する。例えば、外殻鋼管3の両端には円環形状の端板7が溶接によって取り付けられ、杭体5(5A,5B)は、外殻鋼管3の軸線方向にて2つの端板7間に渡って延びている。なお、端板7が取り付けられている場合、SC杭1(1A,1B)の長さLは、端板7の外面間の長さである。SC杭1(1A,1B)は、例えば、2m以上15m以下の長さLを有する。
ここで、SC杭1(1A,1B)の厚さTは、図2及び図3に示したように、外殻鋼管3の厚さtsと杭体5(5A,5B)の厚さtcの和(ts+tc)であり、SC杭1(1A,1B)の外径Dと内径dの差の半分である。
そして、SC杭1(1A,1B)にあっては、SC杭1(1A,1B)の外径Dに対する厚さTの比である径厚比T/D、換言すれば、外殻鋼管3の外径Dに対する、外殻鋼管3及び杭体5(5A,5B)の厚さの合計(ts+tc)の比である径厚比T/Dが、次式:
0.24≦T/D<0.5
で示される関係を満たしている。
上記構成によれば、径厚比T/Dが0.5未満であって、杭体5(5A,5B)は円筒形状を有して完全には中実ではなく、径方向中央に円柱形状の空洞を有する。このため、杭体5(5A,5B)の内周面に亀裂が発生すると、杭体5(5A,5B)の内周面付近の一部が剥落し、SC杭1(1A,1B)の曲げ耐力及び靭性が低下する虞がある。
しかしながら、上記構成によれば、径厚比T/Dが0.24以上であるので、径厚比T/Dが0.24未満の場合に比べて、曲げ耐力及び靭性が向上する。
ここで、図4(a)及び図4(b)は、径厚比T/Dを0.24以上に設定することによる効果を説明するための図である。
図4(a)に示したように、径厚比T/Dが0.24未満である場合、SC杭1’に曲げモーメントが作用すると、杭体5’にて60度破壊が生じ、60度の頂角を有する破片10が剥離し易いものと考えられる。
これに対し、図4(b)に示したように、径厚比T/Dが0.24以上である場合、SC杭1(1A,1B)に曲げモーメントが作用しても、杭体5(5A,5B)での60度破壊が抑制され、60度の頂角を有する破片の剥離が防止されるものと考えられる。
このように、60度よりも大きな頂角を有するような大きい破片はもとより、60度の頂角を有するような小さい破片の剥離が防止されることで、径厚比T/Dが0.24以上である場合、径厚比T/Dが0.24未満の場合に比べて、曲げ耐力及び靭性が向上するものと考えられる。
上記実施形態では、径厚比T/Dの下限は、0.24に設定されているが、好ましくは0.245に設定され、より好ましくは0.25に設定され、更により好ましくは0.26に設定される。
幾つかの実施形態では、図3に示したように、杭体5Bは、同心に配置された2つ以上の円筒部9a,9bを含む。2つ以上の円筒部9a,9bは相互に付着している。
そして、2つ以上の円筒部9a,9bのうち最内周に位置する最内周円筒部9aを構成する材料は、最外周に位置する最外周円筒部9bを構成する材料よりも小さい圧縮強度を有する。
そして更に、2つ以上の円筒部9a,9bの各々は30N/mm以上の圧縮強度を有する材料によって構成されている。
上記構成によれば、杭体5Bは同心に配置された2つ以上の円筒部9a,9bによって構成されているので、例えば遠心成形を用いて、最外周円筒部9bの成形後に最内周円筒部9aの成形を行うことが可能であり、杭体5Bの成形が容易である。
また、上記構成によれば、最内周円筒部9aを構成する材料が、最外周円筒部9bを構成する材料よりも小さい圧縮強度を有しているので、最内周円筒部9aの材料コストを低減することができる。
上記構成によれば、最外周円筒部9bを構成する材料の圧縮強度が最内周円筒部9aを構成する材料の圧縮強度よりも大きいので、最外周円筒部9bにおける亀裂の発生が抑制され、曲げ耐力及び靭性を向上させながら、コストを削減することができる。
また、上記構成によれば、各円筒部9a,9bを構成する材料は、30N/mm以上の圧縮強度を有しているので、円筒部9a,9bの圧縮強度が不足することはなく、曲げ耐力及び靭性を確実に向上させることができる。
なお、杭体5Bが複数の円筒部9a,9bによって構成されている場合、図3に示したように、杭体5Bの厚さtcは、各円筒部9a,9bの厚さtc1,tc2の合計(tc1+tc2)である。
幾つかの実施形態では、最外周円筒部9bはコンクリートによって構成され、最内周円筒部9aはグラウトによって構成されている。グラウトは、例えばセメントペーストやモルタルである。
上記構成によれば、最内周円筒部9aが硬化性材料であるグラウトによって構成されているので、最内周円筒部9aの形成が容易である。また、グラウトを用いることによって、材料コストの削減を図ることができる。
幾つかの実施形態では、最内周円筒部9a及び最外周円筒部9bはそれぞれコンクリートによって構成され、最内周円筒部9aは、最外周円筒部9bよりも小さい圧縮強度を有するコンクリートによって構成されている。
上記構成によれば、最内周円筒部9aに、最外周円筒部9bよりも圧縮強度の低いコンクリートを適用することで、材料コストの低減を図ることができる。
なお、図3に示した杭体5Bのように、杭体5Bが2つ以上の円筒部9a,9bを含む場合、杭体Bの厚さTに対する、最外周円筒部9bの厚さtc2の比tc2/Tは、例えば0.4~0.6に設定されるが、これに限定されることはない。
図5は、SC杭1(1A)の製造方法の一例の概略的な手順を示すフローチャートである。
図5に示したように、SC杭1(1A)の杭製造方法は、外殻鋼管準備工程S1と、プレキャスト工程(第1プレキャスト工程)S2と、遠心成形工程(第1遠心成形工程)S3とを備えている。
外殻鋼管準備工程S1では外殻鋼管3を用意する。
プレキャスト工程S2では、外殻鋼管3内に生コンクリートを充填する。この充填は外殻鋼管3内に挿入可能な径のスクリューフィーダー等によって行う。スクリューフィーダーは、ある程度生コンクリートが充填されてきた段階で、徐々に引き抜きながら生コンクリートを充填する。
遠心成形工程S3では、生コンクリートが充填された外殻鋼管3を遠心成形装置の型枠内に入れ、型枠の回転により生コンクリートの遠心成形を行う。
この後、生コンクリートがある程度強度を発現した段階で、外殻鋼管3を遠心成形装置の型枠から外し、蒸気養生を行うことにより円筒形状の杭体5(5A)が形成される。
図6は、SC杭1(1B)の製造方法の一例の概略的な手順を示すフローチャートである。
図6に示したSC杭1(1B)の製造方法は、第2プレキャスト工程S4及び第2遠心成形工程S5を有する点において、図5に示したSC杭1(1A)の製造方法と異なっている。図6に示したSC杭1(1B)の製造方法によれば、第1遠心成形工程S3後に行われる第2プレキャスト工程S4にて、第1遠心成形工程S3にて成形された生コンクリートの内側に、生コンクリートが更に充填される。
そして、第2遠心成形工程S5では、第1遠心成形工程S3と同様にして、生コンクリートが更に充填された外殻鋼管3を遠心成形装置の型枠内に入れ、型枠の回転により生コンクリートの遠心成形を行う。
この後、第1プレキャスト工程S2及び第2プレキャスト工程S4で充填された生コンクリートがある程度強度を発現した段階で、外殻鋼管3を遠心成形装置の型枠から外し、蒸気養生を行うことにより円筒形状の杭体5(5B)が形成される。
なお、第2プレキャスト工程S4の前に、第1プレキャスト工程S2で充填された生コンクリートの強度が発現している必要は必ずしもない。
〔実施例〕
以下、実施例について説明する。
1.試験体の準備
まず、比較例1、2及び実施例1、2の試験体として、以下の表1~3に示す仕様を有するSC杭を用意した。
Figure 0007278703000001
Figure 0007278703000002
Figure 0007278703000003
2.試験方法
試験装置20の概要を試験体としてSC杭1とともに図7に示す。試験は、単純梁方式の曲げ試験とし、一方向繰返し載荷とした。試験装置20は、試験体としてのSC杭1を支持点にて支持するための支持装置22と、試験体の両端及び中央の変位を測定するための変位計24と、試験体の中央部の2箇所に均等に荷重を加える荷重装置(不図示)とを備えている。
試験体への載荷ステップを図8に示す。部材角が2.5/1000rad~50/1000radの範囲では、各部材角になるまで、各試験体に対し2回繰返し載荷を行った。部材角が80/1000,100/1000radでは、各部材角になるまで、各試験体に対し1回載荷を行った。ただし、前回部材角時の荷重を上回らない場合は、それ以降の載荷ステップを1回載荷とした。
なお、部材角は、杭中央たわみ量を支持点から載荷点中央までの距離で割った値とする。
3.試験結果
試験結果として、荷重と中央たわみの関係の包絡線図を図9に示し、各試験体の最大荷重と耐力比を表4に示し、各試験体の中央たわみ(残留変位)が100mm時の荷重と耐力低下率を表5に示す。
Figure 0007278703000004
Figure 0007278703000005
図9及び表4から明らかなように、径厚比T/Dが0.24以上の実施例1及び実施例2のSC杭では、径厚比T/Dが0.24未満の比較例2のSC杭に比べて、大きな最大荷重が発現している。このため、実施例1及び実施例2のSC杭は、比較例2のSC杭に比べて、良好な耐力を有することがわかる。
一方、図9及び表5から明らかなように、径厚比T/Dが0.24以上の実施例1及び実施例2のSC杭では、径厚比T/Dが0.24未満の比較例2のSC杭に比べて、中央たわみが100mm時の荷重が大きく、比較例2のSC杭に比べて耐力低下率が低い。これより、実施例1及び実施例2のSC杭は、比較例2のSC杭に比べて、良好な靭性を有することがわかる。
特に、径厚比T/Dが0.33の実施例2のSC杭では、径厚比T/Dが0.50の比較例1のSC杭と比べても、同等の最大荷重が発現しているとともに、中央たわみ100mm時の荷重も略同等であり、実施例2のSC杭は、特に良好な耐力及び靭性を有することがわかる。
本発明は上述した幾つかの実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、最内周円筒部9aの成形方法は、遠心成形に限定されることはなく、例えば、型枠を配置して振動詰めによって行ってもよい。
更に本発明は、SC杭に限定されることはなく、以下に述べるように、外殻鋼管を有さない既製のコンクリート杭にも適用可能である。なお、以下の説明において、上述した実施形態と同一又は類似の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
図10は、本発明の他の一実施形態に係るPRC杭(プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭)30の概略的な縦断面図である。図11は、図10のXI-XI線に沿う概略的な断面図である、なお、図10は、図11のX-X線に沿う概略的な断面図である。
図10及び図11に示したように、PRC杭30は、外殻鋼管を有さない点においてSC杭1Aと異なっている。一方、PRC杭30は、緊張材としての複数のPC鋼材(PC鋼棒)32と、第1補強材としてのせん断補強筋34と、第2補強材としての複数の異形鉄筋36とを備えている。
複数のPC鋼材32は、それぞれ、杭体5Bの内部を杭体5Bの軸線方向に延び、両端に配置された端板7,7間に架け渡されている。複数のPC鋼材32は、杭体5Bの軸線方向でみて、同心上に配置されている。複数のPC鋼材32の両端は、端板7,7に係合され、複数のPC鋼材32は、端板7,7とともに、杭体5Bに含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる。PC鋼材32は、例えば、6本以上24本以下配置され、杭体5Bの周方向にて等間隔で配置される。PC鋼材32は、例えば10mm以上12mm以下の直径を有する。
第1補強材としてのせん断補強筋34は、杭体5Bの内部を杭体5Bの周方向に延び、杭体5Bの径方向にてPC鋼材32よりも外側に配置されている。本実施形態では、せん断補強筋34は、杭体5Bの内部を螺旋状に延びており、杭体5Bの軸線方向に延設されている。せん断補強筋34は、例えば、5.0mm以上7.5mm以下の直径を有し、785N/mmの強度を有し、50mm以上100mm以下のピッチの螺旋状に延びている。なお、せん断補強筋34は、螺旋状ではなく、杭体5Bの周方向に延びるリング状のものを杭体5Bの軸方向に沿って複数設けることとしてもよい。また、せん断補強筋34は、丸鋼や異形鉄筋によって構成されていてもよい。
第2補強材としての複数の異形鉄筋36は、それぞれ、杭体5Bの内部を杭体5Bの軸線方向に延び、両端に配置された端板7,7間に配置されている。複数の異形鉄筋36は、杭体5Bの軸線方向でみて、同心上に配置され、杭体5Bの周方向にてPC鋼材32の中間に配置されている。例えば、異形鉄筋36が配置される円の直径は、PC鋼材32が配置される円の直径と等しいか、わずかに小さい。
そして、PRC杭30は、PRC杭30の外径、すなわち杭体5Bの外径をDとし、杭体5Bの厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、次式:
0.24≦tc/D<0.5
で示される関係を満たしている。
上記構成によれば、径厚比tc/Dが0.5未満であって、杭体5Bは円筒形状を有して完全には中実ではなく、径方向中央に円柱形状の空洞を有する。このため、杭体5Bに亀裂が発生すると、杭体5Bの内面の一部が剥落し、PRC杭30の曲げ耐力及び靭性が低下する虞がある。
しかしながら、上記構成によれば、径厚比tc/Dが0.24以上であるので、径厚比tc/Dが0.24未満の場合に比べて、曲げ耐力及び靭性が向上する。
また、PRC杭30は中空なので、杭孔に挿入する際に生じる浮力を低減できる。さらに、中実のコンクリート杭よりも重量が軽くなることで輸送や杭施工の負担を軽減することができる。
上記実施形態では、径厚比tc/Dの下限は、0.24に設定されているが、好ましくは0.245に設定され、より好ましくは0.25に設定される。
なお、PRC杭30は、杭体5Bの両端部の外周面を保護するための筒状材38を更に備えていてもよい。各筒状材38は、例えば端板7に溶接により固定され、杭体5Bの外周面の一端部を覆う。つまり、PRC杭30の杭体5Bは、金属材によって覆われていない外周面を軸線方向の中間部に部分的にでも有していればよく、また、PRC杭30の一部が外殻鋼管によって覆われていてもよい。
幾つかの実施形態では、最内周円筒部9a及び最外周円筒部9bのうち少なくとも最外周円筒部9bはコンクリートによって構成され、緊張材としてのPC鋼材32、第1補強材としてのせん断補強筋34及び第2補強材としての異形鉄筋36は最外周円筒部9bの内部に配置されている。
幾つかの実施形態では、第1補強材としてのせん断補強筋34は杭体5Bの最外周円筒部9bの内部に配置され、最外周円筒部9bにおける第1補強材の体積比と降伏点(降伏強度)の積は2.45N/mmより大きい値である。
上記構成によれば、杭体5Bの最外周円筒部9bにおける第1補強材としてのせん断補強筋34の体積比と降伏点の積が2.45N/mmより大きい値であるので、杭体5Bの外側を確実に補強することができる。この結果として、外殻鋼管を有していなくても、軸力が作用している状態でも優れた靱性を有するPRC杭30が提供される。
図12は、PRC杭30の製造方法の手順を概略的に示すフローチャートである。
PRC杭30の製造方法は、図6に示したSC杭1Bの製造方法と比べたときに、外殻鋼管準備工程S1に代えて、鉄筋かご準備工程S6を備えている。鉄筋かご準備工程S6では、PC鋼材32、せん断補強筋34及び異形鉄筋36からなる鉄筋かごを用意する。
また、PRC杭30の製造方法は、杭体5Bにプレストレスを導入するために、緊張工程S7及びプレストレス導入工程S8を更に備えている。
緊張工程S7は、第1プレキャスト工程S2の後に行われる。緊張工程S7では、ジャッキによってPC鋼材32を軸線方向に引っ張り、そのまま引っ張られた状態に保持する。具体的には、端板7にアダプタを取り付け、アダプタをジャッキで引っ張る。アダプタは、端板7の外面にボルトで固定される円盤形状の緊張板と、緊張板と一体に設けられ、型枠の端面を貫通して延びる緊張ロッドと、緊張ロッドに螺合可能な緊張ナットとからなる。ジャッキによって緊張ロッドを引っ張りながら、緊張ナットを型枠の端面に当接するまでねじ込むことで、PC鋼材32を引っ張られた状態に保持することができる。
PC鋼材32は、第1遠心成形工程S3、第2プレキャスト工程S4及び第2遠心成形工程S5の間、引っ張られた状態に保持される。
第2遠心成形工程S5の終了後に、所定の養生プログラムに沿って蒸気養生を行う。
蒸気養生を所定時間行った後、プレストレス導入工程S8において、PC鋼材32の引っ張り状態が解除される。つまり、緊張ナットが緩められる。これにより、引っ張られていたPC鋼材32が収縮しようとし、端板7,7及びPC鋼材32によって、杭体5Bにプレストレスが導入される。つまり、PRC杭30が実際に使用される前から、杭体5Bには予め圧縮力が作用させられる。
なお、プレストレス導入工程S8は、第1遠心成型工程S3と第2プレキャスト工程S4との間に行ってもよい。この場合、杭体5Bの最外周円筒部9bにのみプレストレスが導入される。
図13は、本発明の他の一実施形態に係る既製のコンクリート杭の一種である節杭40の概略的な縦断面図である。節杭40は、杭体5Bの外周面から突出する1つ以上の節部42を有する点においてPRC杭30と異なっている。節部42は、コンクリートによって最外周円筒部9bと一体に形成されている。なお、節杭40において、杭体5Bの厚さtcや外径Dを定める横断面の位置は、杭体5Bの軸線方向にて、節部42が設けられていない位置とする。
図14は、本発明の他の一実施形態に係る既製のコンクリート杭の一種である拡径杭(ST杭)50の概略的な縦断面図である。ST杭50は、杭体5Bの一端部(拡径部52)の外径が、杭体5Bの中間部よりも大きくなっている点において、PRC杭30と異なっている。拡径部52は、節部42と同様に、コンクリートによって最外周円筒部9bと一体に形成されている。なお、ST杭50において、杭体5Bの厚さtcや外径Dを定める横断面の位置は、杭体5Bの軸線方向にて、拡径部52が設けられていない位置とする。
なお、図14のST杭50は、一端部のみが拡径されているが、本発明は、杭体5Bの両端部が拡径された拡径杭や、杭体5Bの軸線方向中間部が拡径された中間拡径杭にも適用可能である。また、図14のST杭50は、節部42を有していないが、ST杭50は、節部42を有していてもよい。
最後に、本発明は上述した幾つかの実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した実施形態において、PRC杭30は第2補強材として複数の異形鉄筋36を備えていたが、異形鉄筋36を備えていなくてもよい。つまり、本発明は、PRC杭30のみならず、既製のコンクリート杭の一種であるプレストレスト高強度コンクリート杭(PHC杭)にも適用可能である。
また、PRC杭30において、各異形鉄筋36は、杭体5Bの全長に渡って延びているが、各異形鉄筋36の長さは、杭体5Bの全長よりも短くてもよい。
1(1A,1B) 外殻鋼管付きコンクリート杭(SC杭)
3 外殻鋼管
5(5A,5B) 杭体
7 端板
9 円筒部
9a 最内周円筒部
9b 最外周円筒部
10 破片
20 試験装置
22 支持装置
24 変位計
30 プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭(PRC杭)
32 PC鋼材(緊張材)
34 せん断補強筋(第1補強材)
36 異形鉄筋(第2補強材)
38 筒状材
40 節杭
42 節部
50 拡径杭(ST杭)
52 拡径部

Claims (5)

  1. コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体を備えるコンクリート杭において、
    前記杭体は、該杭体の軸線方向の中間部に金属材によって覆われていない外周面を有し、
    前記杭体の外径をDとし、前記杭体の厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、
    次式:
    0.24≦tc/D<0.5
    で示される関係を満たし、
    前記杭体の厚さtcは、前記杭体の軸線方向全体に渡って、前記杭体の軸線方向に直交する前記杭体の断面内において、各頂点が前記杭体の外周面に接しており60度の頂角を有する仮想の三角形の各辺が前記杭体内に含まれる厚さであり、
    前記杭体は、同心に配置された2つ以上の円筒部を含み、
    前記2つ以上の円筒部のうち最内周に位置する最内周円筒部を構成する材料は、最外周に位置する最外周円筒部を構成する材料よりも小さい圧縮強度を有し、
    前記2つ以上の円筒部の各々は30N/mm以上の圧縮強度を有する材料によって構成されていることを特徴とするコンクリート杭。
  2. 前記最内周円筒部はセメントペースト又はモルタルによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート杭。
  3. 前記杭体の軸線方向に沿って前記杭体の内部に配置され、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
    前記杭体の周方向に沿って前記杭体の内部に配置されて、前記緊張材よりも前記杭体の径方向の外側に配置された第1補強材と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート杭。
  4. 前記杭体の軸線方向に沿って前記杭体の内部に配置された第2補強材を更に備えることを特徴とする請求項3に記載のコンクリート杭。
  5. コンクリートを少なくとも一部に含む中空で円筒形状の杭体と、
    前記杭体の軸線方向に沿って前記杭体の内部に配置され、前記杭体に含まれるコンクリートに圧縮力を作用させる緊張材と、
    前記杭体の周方向に沿って前記杭体の内部に配置されて、前記緊張材よりも前記杭体の径方向の外側に配置された第1補強材と、
    を備えるコンクリート杭において、
    前記杭体は、該杭体の軸線方向の中間部に金属材によって覆われていない外周面を有し、
    前記杭体の外径をDとし、前記杭体の厚さをtcとし、径厚比をtc/Dとしたとき、
    次式:
    0.24≦tc/D<0.5
    で示される関係を満たし、
    前記杭体の厚さtcは、前記杭体の軸線方向全体に渡って、前記杭体の軸線方向に直交する前記杭体の断面内において、各頂点が前記杭体の外周面に接しており60度の頂角を有する仮想の三角形の各辺が前記杭体内に含まれる厚さであり、
    前記杭体は、
    コンクリートによって構成された円筒形状の最外周円筒部と、
    前記最外周円筒部よりも前記杭体の径方向の内側に位置し、前記杭体の内周面を構成する円筒形状の最内周円筒部と、を含み、
    前記第1補強材は前記最外周円筒部の内部に配置され、
    前記最外周円筒部における前記第1補強材の体積比と降伏点の積は2.45N/mmより大きい値である
    ことを特徴とするコンクリート杭。
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