JP3703714B2 - 高曲げ靱性高強度杭 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高曲げ靱性高強度杭に関する。
【0002】
【従来の技術】
JIS A5337「プレテンション方式遠心力高強度プレストレストコンクリート杭(PHC杭)」は、軸に平行な多数のPC鋼材をコンクリート中に埋設し、このPC鋼材を緊張してコンクリートにプレストレスを付与した高強度杭である。この杭は、コンクリートの圧縮強度が80MPa以上で、有効プレストレス力が4〜10MPaである。
【0003】
兵庫県南部地震では構造物の上部構造が著しい被害を受けたが、被害調査が進むにしたがって、基礎杭についても甚大な被害が数多く発見され、杭の耐震設計法の早急な見直しが必須の状況にある。改善を要する主要点を挙げると次の通りである。
【0004】
▲1▼杭体の被害は杭頭付近の破壊ばかりではなく、杭先端支持部、中間層付近にも破壊、ひびわれなどの著しい被害が認められる。このことは、上杭ばかりでなく中および下杭についても耐震性に優れた杭を用いる必要性があることを示唆するものである。
【0005】
▲2▼杭先端支持部、中間層付近の杭体被害は、杭頭地震水平力の他に、地盤そのものの振動(せん断変形)によって杭体が地盤に押され、力を受けることによって生ずるものと認められる。
【0006】
▲3▼現在慣用の杭基礎の耐震設計法には、ベースせん断係数0.2の地震水平力に対する許容応力度設計(弾性設計)が規定されている。上部構造ではベースせん断係数0.3以上に対して終局強度設計を行っているが、これと同等の終局限界状態設計法(強度と靱性を保証する設計)に早急に移行すべきである。さらに、杭先端部および中間層付近の杭体耐震安全性を検討するために、杭頭水平力に加え、地震による地盤変形に基づく杭体応力を考慮する設計法に移行することが肝要である。
【0007】
▲4▼PHC杭体コンクリートの破壊様相からみて、杭体に使用しているオートクレーブ養生コンクリートそのものの力学的健全性に疑問がある。理由はオートクレーブ養生によりマイクロクラックが多数発生するからである。
【0008】
▲5▼JISPHC杭にはせん断補強筋が全く配置されていない。主筋を組立てている組立筋はあるがこれはせん断補強には無力でせん断補強筋とは言えない。せん断補強筋の配置が必須である。
【0009】
以上述べたように、今後の地震力に対する基礎杭の設計は終局限界に基づく設計に移行する必要があり、終局強度設計と靱性設計とを組み合わせた靱性型設計法とする必要がある。
【0010】
コンクリートの曲げ圧縮限界ひずみを増大させる技術として、コンクリートの横拘束がある。図10、図11はこれを説明する説明図である。図10は通常の無拘束コンクリートの圧縮破壊の機構を模式図に示したものである。コンクリート40に圧縮力41を作用させると、圧縮破壊直前に図10に示すようなひびわれが発生し、上下端面付近の斜めひびわれによってできるコーン状のコンクリート塊42が中央部分のコンクリート43を左右に押し広げて割り裂き、破壊に至る。そこで、図11に示すようにコンクリート40の外周面に鉄筋のタガ(横拘束筋)44をはめて横からコンクリート体を拘束すると、圧縮力41を作用させて図10と同様なひびわれがコンクリート内部に発生しても、無拘束コンクリートの場合とは異なり上下コーン状のコンクリート塊46による横方向へのコンクリートのはらみだしを鉄筋のタガ44が締付力45によって防止し、コンクリート40は圧縮応力を持続したままさらに圧縮変形し、圧縮限界ひずみが増大する。だだし、横拘束筋44が降伏すると締付力45が減少するので、横拘束効果が半減する。本発明者の研究によると、このような横拘束筋の降伏を防止するためには、降伏点強度800MPaの高強度横拘束筋を使用しなければならない。降伏点強度が400MPa程度の普通鉄筋では横拘束筋の降伏を阻止することは、通常、困難である。
【0011】
従来のPHC杭の靱性を改善した高靱性高強度PHC杭がある。このような高靱性高強度PHC杭には降伏点強度800MPa以上の高強度横拘束筋が使用されている。この横拘束筋の杭体への配置には防錆のために厚さ20mm以上のかぶりコンクリートを設けなければならない。このかぶりコンクリートは曲げまたは曲げと圧縮を同時に受けて曲げ破壊に至る過程で剥落する。従って断面欠損がおこり、耐荷能力の減少を起したまま塑性変形することになる。すなわち、横拘束筋より内部のコンクリートを最終的な有効断面として耐震設計しなければならなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決し、かぶりコンクリートを要しない高曲げ靱性高強度杭を開発し、これを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、次の技術手段を講じたことを特徴とする高曲げ靱性高強度杭である。
【0014】
すなわち、本発明は、プレテンション方式遠心力高強度プレストレストコンクリート杭において、せん断補強筋としてカーボンファイバ強化プラスチック(以下CFRPと記す)線材束からなる横拘束筋(CFRP横拘束筋)を杭外表面に配設したことを特徴とする高曲げ靱性高強度杭である。CFRP線材束は例えば直径7μmのカーボンファイバ12000本をプラスチックと複合した線材を40〜80本まとめたものである。
【0015】
CFRP横拘束筋は耐食性に優れ、基本的にはかぶりコンクリートを必要としないため、かぶりコンクリートの剥離による断面欠損を避けることができ、杭体コンクリート全断面を終局に至るまで有効に使用することができる。
【0016】
上記高曲げ靱性高強度杭は中空部に一軸圧縮強さが10MPa以上の充填材を中詰めするとさらに高強度となり横拘束筋の靱性向上効果をさらに高めることができるので、好適である。一軸圧縮強さが10MPa以上の充填材としてはコンクリート、モルタル、土砂と固化剤との混合物、ベントナイトを混合した材料などを挙げることができる。10MPa以上としたのは10MPa未満では中詰めの効果が乏しいからである。さらに、本発明では、主筋に高一様伸びPC鋼材を用い、このPC鋼材に8MPa以上の高プレストレスを導入することにより、さらに曲げ靱性が高く強度の大きいすぐれた杭を得ることができ好適である。8MPa以上としたのは少なくとも8MPaを付与することが高一様伸びPC鋼材の効果を発揮させるのに必要であるからであり、さらに好ましくは20MPa以上とするとよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず横拘束によるコンクリート部材の圧縮限界ひずみの増大について図面を参照して説明する。図12は図10、図11で説明した横拘束によるコンクリートの圧縮靱性改善の一例を示すものである。供試体は200×200×600mmのコンクリート柱体である。この供試体に圧縮力を加えたときの圧縮応力度(MPa)と圧縮ひずみ(%)との関係及び拘束応力(MPa)と圧縮ひずみ(%)とのそれぞれの関係を示したものである。
【0018】
(a)図中一点鎖線で示す無拘束コンクリート柱体は、圧縮応力度27MPa程度、圧縮ひずみ0.15%程度で降伏し、破壊に至っている。
【0019】
(b)φ9.2mm角形横拘束筋、ピッチ50mm、降伏点σy=1275MPa、容積比ρw=2.7%の横拘束コンクリート柱体は実線で示す圧縮応力度曲線及び拘束応力曲線のようにコンクリートの圧縮ひずみが増大するに従ってコンクリートに生ずる拘束応力が大となり、降伏応力が増大し圧縮ひずみが増大する。
【0020】
(c)φ9mm角形横拘束筋、ピッチ50mm、降伏点σy=355MPa、容積比ρw=2.5%の横拘束コンクリート柱体の圧縮応力度曲線及び拘束応力曲線を破線で示した。この場合上記(b)よりも拘束応力は小さいが、降伏応力、圧縮ひずみが増大している。
【0021】
上記(b)(c)の例では、高強度筋で横拘束したコンクリートの圧縮限界ひずみは3.1%に達している。
【0022】
次に、CFRP横拘束筋による遠心締固めPHC杭の靱性改善に関する基礎研究の実験例について説明する。
【0023】
〔実験例1〕
CFRP横拘束筋による遠心締固めPHC杭の靱性改善に関する基礎研究として、CFRP横拘束筋の横拘束効果を確認するために、CFRP横拘束を施した直径φ200mm×高さ300mmH×厚さ40mmの遠心締固めコンクリート体の圧縮試験を行った。かぶりコンクリート厚さを公称0mmとしたCFRP横拘束筋の靱性改善効果を確認すると同時に、供試体中空部を中詰めすることによる靱性改善効果に及ぼす影響についても確認実験を行った。
【0024】
実験の概要は次の通りである。
【0025】
▲1▼供試体の形状・寸法
図4に横拘束遠心締固め供試体20の形状を示す。図4(a)は供試体20の横断面図、図4(b)は縦断面図である。供試体20は外径200mm、内径120mm、肉厚40mm、高さ300mmのPHC杭用遠心締固めコンクリート22からなる中空円筒供試体に、CFRP横拘束筋21をかぶり厚さ1mm、ピッチ50mmで配置した横拘束遠心供試体である。中空部23を中空のまま残したCFRP横拘束遠心供試体と、コンクリートまたはモルタルで中詰めした横拘束中詰め遠心供試体とを用意し、3シリーズに分けて実験を行った。尚、各シリーズには標準供試体として無拘束遠心供試体を同時に製造し、圧縮試験を行った。
【0026】
▲2▼実験
実験は表1に示す3シリーズに分けて行った。実験1ではCFRP横拘束筋をかぶりコンクリート無しで配置した場合の、コンクリートの圧縮靱性改善の安定性を確かめた。実験2では中詰めコンクリートのCFRP横拘束筋圧縮靱性改善効果の有無を確認した。実験3は中詰めコンクリート強度の圧縮靱性改善効果に及ぼす影響を確認した。
【0027】
▲3▼使用材料の性質
使用したCFRP横拘束筋は外径194mm、内径186mm、断面5mm×4mmのリング状のCFRP横拘束筋でカーボンファイバ投入量を26本とした。このCFRP横拘束筋は、800MPa級φ4mm鋼横拘束筋と圧縮弾性剛性が同等になるように設計したCFRP横拘束筋である。
【0028】
供試体20のコンクリート及び中詰めコンクリートの配合を表2に示した。また実験時のφ200×300mmH無拘束遠心締め固め供試体のコンクリートの物理的性質を表3及び図5に示した。また、中詰めコンクリートの物理的性質を表4及び図6に示した。
【0029】
▲4▼実験1の結果を表5及び図7に示した。
【0030】
【表1】
Figure 0003703714
【0031】
【表2】
Figure 0003703714
【0032】
【表3】
Figure 0003703714
【0033】
【表4】
Figure 0003703714
【0034】
【表5】
Figure 0003703714
【0035】
表5及び図7から以下の通りのことがわかる。
【0036】
(1)CFRP横拘束供試体No.1−2の最大荷重到達点(図7中に〇で示した)までの圧縮荷重(圧縮応力)ひずみ曲線は無拘束供試体No.1−1と同等である。
【0037】
(2)CFRP横拘束供試体No.1−2は最大荷重到達後もその荷重を保持したまま塑性変形し、CFRP横拘束筋によって安定した靱性改善が可能であることが示された。
【0038】
(3)ただし、中空供試体であるために、圧縮ひずみが0.535%(図7中の△印)に達したとき、コンクリート体に発生した斜めひびわれ(無拘束コンクリートに生じる圧縮破壊すべり線)が肉厚部を貫通し、コンクリート本体の圧縮破壊を招いた。CFRP横拘束筋は破壊時のショックで2〜3本の素線切れが見られた程度で極めて健全であった。
【0039】
▲5▼実験2の結果を表6及び図8に示した。得られた結果は以下の通りである。
【0040】
(1)中詰めなしCFRP横拘束遠心供試体No.2−2は、実験1の供試体No.1−2(図7)と同様な挙動を示し、圧縮ひずみ0.588%で斜めひびわれ(すべり線)が生じ、これが本体肉厚部を貫通して破壊に至った。
【0041】
(2)これに対して中空部に中詰めコンクリートを打設したCFRP横拘束遠心供試体No.2−3では、無拘束供試体の最大荷重時ひずみに到達したとき、厚さ3mmのかぶりコンクリートの剥落による一時的、かつ、わずかな耐荷能力の低下が起こったが、その後は載荷圧縮荷重の増大を伴いながら著しい塑性変形が計測された。すなわち、中詰めコンクリートの打設によって、CFRP横拘束筋の横拘束効果が著しく改善されることが確認された。本実験では圧縮ひずみ1.206%に到達しても破壊せず、実験を中止した。
【0042】
【表6】
Figure 0003703714
【0043】
▲6▼実験3の結果を表7及び図9に示す。得られた結果は以下の通りである。
【0044】
(1)実験3に用いたCFRP横拘束筋は実験1および2で使用したCFRP横拘束筋を再利用したもので、横拘束筋のCFRP素線の一部が破断または傷付けたものがあった。そのため、実験3の横拘束供試体No.3−2およびNo.3−3では、最大荷重到達後の早い時期からCFRP横拘束筋の一部素線の破断が発生し、耐力低下を起こしながら塑性変形するという圧縮荷重ひずみ関係が得られている。比較的安定した塑性変形挙動を示した供試体No.3−4においても、圧縮ひずみ0.773%に至ったときに横拘束筋素線の破断が起こって横拘束効果が急速に減少し、破壊に至っている。
【0045】
(2)しかし、中詰めによってCFRP横拘束筋の靱性改善効果を著しく増大させることが可能であること、とくに、一軸圧縮強さが10MPaという低強度の中詰めモルタルを施した供試体No.3−2でも大きい靱性改善効果の増大が望めることは特記に値する。
【0046】
(3)試験終了後のCFRP横拘束筋の破断箇所の調査によると、素線破断は横拘束筋竜編み用組立鉄筋との交点付近で発生している。この交点では組立筋がCFRP素線を局部的に押すためと判断される。事実、CFRP素線は素線の軸と直角方向の局部圧力には著しく弱い特性があり、CFRP横拘束筋の実用化にあたってはこの点に注意を払う必要がある。
【0047】
【表7】
Figure 0003703714
【0048】
〔曲げ靱性改善の説明〕
次に、部材の曲げ靱性改善について説明する。図13は、曲げ靱性を改善する基本的技術を長方形断面PC部材30を例にとって説明したものである。図13(a)は長方形コンクリート部材30の断面図で、コンクリート31の断面内の下縁側にPC鋼材32が配設されている。図13(b)はこの断面における応力と歪を示す説明図である。通常の部材では、曲げモーメントMの作用により部材のコンクリート断面各部には直線B−B’で表されるひずみが生じる。ABで表されるコンクリート断面圧縮縁ひずみεcがコンクリートの曲げ圧縮限界ひずみεcu1に達すると、圧縮側コンクリートが圧壊し、部材は曲げ破壊に至る。
【0049】
この部材の靱性を改善するためには、コンクリートの曲げ圧縮限界ひずみの値がさらに大きくなるように改善すればよい。図13では、無拘束コンクリートの曲げ圧縮限界ひずみがAB(ひずみεcu)から横拘束コンクリートの圧縮縁ひずみAC(ひずみεcu2)に改善された場合の断面ひずみ分布をC−C’で示してある。
【0050】
図13の部材曲げ靱性改善説明図において、コンクリート31の横拘束による圧縮側コンクリートの曲げ圧縮ひずみ(圧縮縁ひずみ)εcをABからACに改善すると、曲げ破壊時には引張側PC鋼材32の伸びひずみも通常の曲げ破壊時の状態(長さobで与えられる伸びひずみεb)よりも長さbcで表される伸びひずみだけさらに伸び、PC鋼材32の伸びひずみは長さocで表される伸びひずみεeまで増大する。したがって、PC鋼材32の最大伸びひずみが長さocで表される伸びひずみよりも大きい場合には、横拘束コンクリートの圧縮縁ひずみεcが曲げ圧縮破壊ひずみεcu1に到達する前にPC鋼材32の破断がおこり、横拘束によるコンクリート31の曲げ圧縮破壊ひずみεcu1の改善効果を100%利用することができなくなる。さらに、PC鋼材32の破断はPC部材30の完全崩壊をもたらし、構造的見地から最も危険な破壊形態となる。したがって、横拘束効果を100%発揮させるためには、圧縮側コンクリートの圧壊がおこるまでPC鋼材32が伸びてくれることが必須条件である。
【0051】
従来のPC鋼棒は少なくとも7〜10%の破断伸びを持つので、上記の条件を充たしているものと判断しがちである。ところが破断伸びは構造設計上は何の意味も持たない数値である。図14にPC鋼材の伸びの説明図を示した。図14(a)は引張りにより絞り(くびれ)51が生じたPC鋼材50の側面図、図14(b)は引張応力と引張ひずみとの関係を示すグラフである。PC鋼材50を引張ると降伏点52に達し、次いで塑性伸びを生じ最大引張強度53に達し、以後鋼材の一部に絞り(くびれ)51が生じ破断に至る。最大引張強度53に達するまでの伸びが一様伸び55である。コンクリート系構造部材ではPC鋼材50の伸びひずみが図14の一様伸びひずみεuniに到達すると、破断が起るのである。一様伸びひずみεuniはPC鋼材50の応力ひずみ曲線における最大引張強度53に対応するひずみであって、部材が曲げモーメントを受けてPC鋼材50が一様伸びひずみまで引っ張られた後は、PC鋼材の負担引張応力が減少しながらPC鋼材が伸び、曲げモーメントを負担出来なくなり、部材は一挙にPC鋼材の破断による曲げ破壊に至る。すなわち、部材の曲げ破壊からみたPC鋼材の破断伸びは図14(b)中の最大引張強度53のひずみであって、絞りの起る範囲56を含めた破断点54のひずみではない。
【0052】
現在のPHC杭に慣用されているPC鋼材の一様伸びひずみは2%程度である。研究によると、上記の条件を充たすためには少なくとも4〜5%の一様伸びひずみを持つPC鋼材が必要である。したがって、PHC杭の曲げ靱性改善には、コンクリートの横拘束と同時に4〜5%の一様伸びひずみを持つ高一様伸びPC鋼材を併用することが大切である。
【0053】
次に一様伸びについての実験例を説明する。
【0054】
〔実験例2〕
図15〜図17は上記の事実を実験で確認した実験例である。図15は実験に用いたD400mm横拘束PHC杭を示すもので図15(a)は曲げ試験供試体60の側面図、図15(b)はその断面図である。
【0055】
図15(a)は曲げ試験供試体60の側面図で、供試体の長さの1/2(中心位置61から左方半分)を示している。2点の支持点62で支持し、2点の荷重点63に荷重を負荷して、中央部の曲げを測定する。供試体の寸法は、外径400mm、内径250mm、長さ5000mmで、主筋67としてD9.2mmのPC鋼棒16本を用い、φ5mmの横拘束筋(σy=1000MPa)68を外周に巻回している。支点62と供試体の端部との距離64は700mm、支点62と荷重点63との距離65は1300mm、荷重点63と中心位置61との距離66は500mmである。図16は実験に使用した一様伸び2%の従来の慣用異形PC鋼棒および別途開発した一様伸び5%の高一様伸び鋼棒の応力ひずみ曲線である。図16中〇印は降伏点、●は引張強度(一様伸び)を示している。図17は杭の曲げ試験から得られた横拘束杭の曲げモーメント−曲率曲線実測結果を比較してそれぞれ示してある。図17の実験結果をまとめて記述すると次のようになる。
【0056】
無拘束杭(No.11)(一様伸び2%の慣用PC鋼棒使用)
曲げ破壊時曲率実測値;3.5×10-41/cm
曲げ破壊;圧縮側コンクリートの圧壊、PC鋼棒破断せず
横拘束杭(No.12)(一様伸び2%の慣用PC鋼棒使用):
曲げ破壊時曲率実測値;5×10-41/cm
曲げ破壊;鋼棒破断による曲げ破壊時鋼棒伸びひずみ;1.9%
横拘束杭(No.13)(一様伸び5%の高一様伸びPC鋼棒使用):
曲げ破壊時曲率実測値;16×10-41/cm(供試杭2本の平均)
曲げ破壊;鋼棒破断による曲げ破壊時鋼棒伸びひずみ;4.6%(供試杭2本の平均)
図17に示す上記実験結果から明らかなように、いずれの杭も引張側PC鋼材の破断が起こり、コンクリートの横拘束と高一様伸び鋼棒を併用しなければ、横拘束による大幅な靱性改善は望めないことがわかる。ちなみに、この実験では横拘束杭(No.12)の曲げ破壊時の曲率靱性改善率は無拘束杭(No.11)の曲げ破壊時曲率の1.43倍、横拘束杭(No.13)では4.57倍である。なお、上記の実験では、PC鋼棒の一様伸びひずみの重要性を確認するために、PC鋼棒破断による杭の曲げ破壊が起こるよう、十分な横拘束筋量の供試杭を用いている。
【0057】
【実施例】
図3に実施例の直径φ400mmの高曲げ靱性高強度杭の断面図を示した。この高曲げ靱性高強度杭は外径φ400mm、内径φ260mm、肉厚70mm、縦筋は表8に示す高一様伸び仕様の直径φ15.2mm×7本よりポストテンションストランド8本(シース内径は21mm以上)、及び表9に示すD10.7mm高一様伸びプレテンション異形PC鋼棒4本を用いた。杭外周にφ6mm高強度鋼横拘束筋と等価なCFRP横拘束筋を杭軸方向配置ピッチ50mmで配設した。公称プレストレス20MPaを導入した。
【0058】
この杭を曲げ試験に供した。図1は載荷荷重と中央曲げスパン内曲率との関係を示す実測値を示すグラフ、図2は載荷荷重と中央たわみ曲線との関係を示す実測値の比較グラフである。比較のために、同仕様で無拘束のPHC標準杭を破線で示し、直径φ6mmの高強度横拘束筋をピッチ50mmで配設した従来の高曲げ靱性高強度杭を細線で示した。また、この従来の高曲げ靱性高強度杭と等価なCFRP横拘束筋を使用した実施例を太線で示した。
【0059】
無拘束のPHC標準杭は載荷荷重が最大荷重に達すると曲げ破壊しエネルギー吸収量は極めて少なく、粘りのない脆性破壊を示している。これに比し、横拘束筋を使用した従来の杭は大きく塑性変形し大きなエネルギー吸収能を有しているが実施例のCFRP横拘束筋を使用したものでは曲率の増加又は中央たわみの増加に対して荷重の低下がなく、横拘束筋を使用した従来の杭よりもさらに大きなエネルギー吸収能を示している。
【0060】
【表8】
Figure 0003703714
【0061】
【表9】
Figure 0003703714
【0062】
【発明の効果】
本発明の高曲げ靱性高強度杭は以上のように構成されているので、従来のPHC杭に比し、耐震性が極めてすぐれ、大地震に対してエネルギー吸収能力の極めて大きく寄与するところが大であるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の高曲げ靱性高強度杭の特性を示すグラフである。
【図2】実施例の高曲げ靱性高強度杭の特性を示すグラフである。
【図3】実施例の高曲げ靱性高強度杭の断面図である。
【図4】供試体の寸法図である。
【図5】試験結果を示すグラフである。
【図6】試験結果を示すグラフである。
【図7】試験結果を示すグラフである。
【図8】試験結果を示すグラフである。
【図9】試験結果を示すグラフである。
【図10】無補強コンクリートの圧縮破壊の説明図である。
【図11】横補強コンクリートの圧縮破壊の説明図である。
【図12】横補強コンクリートの圧縮破壊の靱性改善の例を示すグラフである。
【図13】コンクリートの横拘束による部材曲げ靱性改善の説明図である。
【図14】一様伸びの説明図である。
【図15】供試体の(a)側面図、(b)断面図である。
【図16】供試PC鋼棒の応力ひずみ曲線である。
【図17】曲げ試験の結果を示す実測曲げモーメント図である。
【符号の説明】
20 供試体
21 CFRP横拘束筋
22 遠心締固めコンクリート
23 中空部
30 長方形断面PC部材
31 コンクリート
32 PC鋼材
33 重心軸
40 コンクリート
41 圧縮力
42 コーン状のコンクリート塊
43 中央部分のコンクリート
44 鉄筋のタガ(横拘束筋)
45 締付力
46 コーン状のコンクリート塊
50 PC鋼材
51 絞り(くびれ)
52 降伏点
53 最大引張強度(最大応力)
54 破断点
55 一様伸び
56 絞りの起る範囲
60 曲げ試験供試体
61 中心位置
62 支持点
63 荷重点
64、65、66 距離
67 主筋
68 横拘束筋

Claims (3)

  1. プレテンション方式遠心力高強度プレストレストコンクリート杭において、せん断補強筋としてカーボンファイバ強化プラスチック線材束からなる横拘束筋を杭外表面に配設したことを特徴とする高曲げ靱性高強度杭。
  2. 中空部に一軸圧縮強さが10MPa以上の充填材を中詰めしたことを特徴とする請求項1記載の高曲げ靱性高強度杭。
  3. 主筋に高一様伸びPC鋼材を用い、該PC鋼材に8MPa以上の高プレストレスを導入したことを特徴とする請求項1又は2記載の高曲げ靱性高強度杭。
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