JP7015770B2 - 振動発電素子および振動発電装置 - Google Patents

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Description

本発明は、振動発電素子および振動発電装置に関する。
近年、MEMS技術を利用した非常に小型の振動発電素子が開発されている。例えば、特許文献1では、櫛歯電極が形成された固定電極部に対して櫛歯電極が形成された可動電極部を振動させることで発電を行うようにしている。特許文献1に記載の振動発電素子では、可動電極部上に別途形成された錘を装着する構造を採用している。
特許6338071号公報
ところで、このような振動発電素子においては、小さな環境振動でも効率良く発電するために可動電極部の質量をより大きくすることが重要である。振動発電素子は空気の影響を避けるため真空パッケージ内に封止されるので、真空パッケージの大きさの制約から可動電極部上に配置される錘の高さを低く抑える必要があった。
本発明の第1の態様による振動発電素子は、平板状の錘装着部および前記錘装着部の側方に形成される複数の櫛歯電極を有する可動電極部と、前記可動電極部の複数の櫛歯電極に相対する複数の櫛歯電極を有する固定電極部と、前記可動電極部を弾性支持する支持部と、前記錘装着部に固定される錘とを備え、前記錘には、前記錘装着部に対向する対向部と、前記対向部の側方に一体に形成され前記錘装着部が対向しない領域まで伸延する伸延部とが設けられている。
本発明の第2の態様による振動発電装置は、前記振動発電素子と、前記振動発電素子を真空封止する筐体とを備える。
本発明によれば、振動発電素子の発電効率の向上を図ることができる。
図1は、真空パッケージに封入された振動発電素子を示す図である。 図2は、振動発電素子の各部の構成を示す図である。 図3は、図1のB-B断面図である。 図4は、錘の形状を示す図である。 図5は、錘の他の形状を示す図である。 図6は、錘の他の形状を示す図である。 図7は、図6に示す錘が装着された振動発電素子を示す図である。 図8は、振動平面内における重心位置のずれを説明する図である。 図9は、振動平面に垂直な方向の位置ずれを説明する図である。 図10は、錘の錘装着部への装着手順を示す図である。 図11は、振動発電素子のMEMS加工体の形成手順の一例を示す図である。 図12は、MEMS加工体の形成手順の図11に続く工程を示す図である。 図13は、位置決めピンを取り去らない構成を説明する図である。 図14は、位置決め機構の変形例を示す図である。 図15は、位置決め機構の他の変形例を示す図である。 図16は、図6に示した錘の他の形状を示す図である。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は真空状態のパッケージ2内に封入された振動発電素子1を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はA-A断面図である。なお、図1(a)の平面図ではパッケージ2の内部構造が分かるように、パッケージ2の上面側(z軸正方向側)に設けられた上蓋3の図示を省略した。
振動発電素子1は、固定部11と、可動電極部12と、可動電極部12を弾性支持する弾性支持部13と、可動電極部12の表裏両面に固着された一対の錘10a,10bとを備えている。振動発電素子1の固定部11は、ダイボンドによりパッケージ2に固定される。パッケージ2は、例えば、電気絶縁性の材料(例えば、セラミックス)で形成されている。パッケージ2の上端には、パッケージ2内を真空封入するための上蓋3がシーム溶接される。
固定部11上には固定電極部111が形成され、その固定電極部111には、x軸方向に延びる櫛歯電極110がy軸方向に複数形成されている。可動電極部12にも、x軸方向に延びる櫛歯電極120がy軸方向に複数形成されている。固定電極部111には電極パッド112が形成されている。可動電極部12は、固定部11上に形成された接続部114に弾性支持部13を介して機械的および電気的に接続されている。接続部114には電極パッド113が形成されている。電極パッド112,113は、ワイヤー22によってパッケージ2に設けられた電極21a,21bに接続されている。本実施の形態では可動電極部12はx軸方向に振動するように構成されており、可動電極部12がx軸方向に振動すると、固定電極部111の櫛歯電極110に対する櫛歯電極120の挿入量が変化して発電が行われる。
図2は振動発電素子1の各部の構成を示す図である。後述するように、振動発電素子1は、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて一般的なMEMS加工技術により形成される。SOI基板はSiの支持層とSiOのボックス層とSiの活性層とから成る3層構造の基板であり、固定部11は支持層により形成され、固定電極部111、可動電極部12、弾性支持部13および接続部114は活性層により形成される。
図2(a)は、振動発電素子1のMEMS加工体、すなわち錘10a,10bを固着する前の振動発電素子1を示す図である。図2(a)では、固定部11上の固定電極部111と、可動電極部12,弾性支持部13および接続部114とをハッチングを施して示した。可動電極部12は、錘10a,10bが装着される錘装着部12aと、錘装着部12aからy軸方向に延びる一対の櫛歯形成部12bと備えている。錘装着部12a上の一点鎖線123で示す領域(以下では、固着面123と呼ぶことにする)は錘10a,10bが固着される面であり、固着面123は錘装着部12aの表裏両面に形成されている。固着面123には、錘10a,10bを装着する際の位置決め用に使用される貫通孔122が形成されている。図2(a)に示す例では、貫通孔122は2つ形成されている。錘装着部12aの四隅は4組の弾性支持部13によって弾性支持されている。各弾性支持部13は、弾性変形可能な3本のビーム13a~13cを備えている。
各櫛歯形成部12bには、x軸正方向に伸延する複数の櫛歯電極120とx軸負方向に伸延する複数の櫛歯電極120とが、y軸方向に複数形成されている。固定電極部111は4組設けられており、各固定電極部111は、櫛歯形成部12bの片側に並んだ複数の櫛歯電極120に対向するようにそれぞれ配置されている。各固定電極部111にはx軸方向に延びる櫛歯電極110がy軸方向に複数形成されており、櫛歯電極110と櫛歯電極120とは、隙間を介して互いに噛合するように配置されている。
接続部114は、可動電極部12のx軸方向振動の範囲を制限する制限部としても機能する。接続部114の可動電極部12に対向する面には、突起114aが形成されている。可動電極部12のx軸方向端面が接続部114の突起114aに衝突することによって、可動電極部12の振動の振幅が制限される。なお、図2(a)では突起を接続部114に形成したが、可動電極部12側に形成しても良い。
図2(b)は、振動発電素子1の固定部11のみを示す図である。図2(b)の固定部11上に示したハッチング領域11Cは、固定電極部111が固定されている領域を示す。ビーム13aの端部は固定部11上に固定される。図2(b)の固定部11上に示したハッチング領域11Aは、ビーム13aの端部が固定されている領域を示す。ビーム13cの端部は、固定部11上に形成された接続部114に接続されている。図2(b)の固定部11上に示したハッチング領域11Bは、接続部114が固定されている領域を示す。
本実施の形態の振動発電素子1では、可動電極部12の質量を増やして発電効率をより向上させるために別体の錘10a,10bを可動電極部12に装着するようにしている。錘10a,10bの材料には、小さな体積でも大きな質量が得らえるようにSOI基板よりも比重の大きな材料が使用される。例えば、タングステン(比重19.25)、快削銅(比重8.94)、ステンレス鋼(比重7.93)や、メタルインジェクション法により形成されるタングステン部材(比重13~17)等の金属や、タングステン樹脂(比重11~13)のように樹脂に金属材を混入したものなどが用いられる。
図1のB-B断面図である図3に示すように、錘装着部12aの表裏両面には、断面形状がT字形状の錘10a,10bが固定されている。錘10a,10bは、櫛歯形成部12bに形成されている櫛歯電極120の上方にまで伸延している。図4は、錘10aの形状を示す図である。図4(a)は錘10aを錘装着部12a側から見た図であり、図4(b)はC1-C1断面図である。錘10aには、錘装着部12aに対向する領域である対向部104と、対向部104の側方に一体に形成され錘装着部12aが対向しない領域まで伸延する伸延部106とが設けられている。対向部104と伸延部106との段差hは、伸延部106が櫛歯電極110,120と接触しない程度、例えば、0.1mm程度に設定される。対向部104には位置決め用の貫通孔100が2つ形成されている。なお、錘10bも錘10aと同一形状に構成されている。
振動発電素子1はMEMS技術により加工され非常に微小な構造体であり、図1に示したパッケージ2の縦横寸法は数cmで高さ寸法は数mm程度である。櫛歯電極110,120の数が多ければ多いほど発電量が大きくなるので、可動電極部12において錘10a,10bが装着される錘装着部12aの面積は小さくなる傾向があり、例えば、錘装着部12aの幅寸法は1~2mm程度と小さなものになる。錘装着部12aと上蓋3との間の錘10aが配置できる空間には限りがあり、図1のように上蓋3の近傍まで錘10aの高さを設定しても、錘10aに要求される質量を満たすことができない場合が多い。そこで、本実施の形態では、図1,3,4に示すように錘10a,10bの伸延部106を櫛歯電極110、120の上方にまで伸延させることで、錘10a,10bの体積すなわち質量を必要十分な大きさとするようにした。
図5,6は錘10aの他の形状を示す図である。図5では、伸延部106が半円状に形成されている。図6では、枠形状の伸延部106が形成されている。図6において、(a)は錘装着部12aの側から見た平面図であり、(b)はC3-C3断面図である。図6(a)でハッチングを施した部分は、可動電極部12の錘装着部12aに対向する対向部104である。対向部104から側方(x方向およびy方向)に伸延する部分(ハッチングが施されていない部分)が伸延部106である。図6(b)に示すように、対向部104には高さhの段差部104aが形成されている。この段差部104aが錘装着部12aに固定される。なお、図6(b)において、符号104、106はC3-C3断面における対向部104の範囲および伸延部106の範囲を示す。
図7は、図6の錘10aが装着された振動発電素子1を示す図であり、(a)は平面図、(b)はD-D断面図である。枠形状の伸延部106は錘装着部12aが対向しない領域の内、すなわち錘装着部12aの側方領域の内、複数の櫛歯電極110,120に対向する側方領域を除く他の側方領域に伸延している。伸延部106は弾性支持部13および固定部11の上方に配置されている。そのため、可動電極部12に錘10aを装着した後においても、伸延部106の開口部から櫛歯電極110,120の状況を確認することができる。例えば、櫛歯電極110,120にゴミの付着が観察された場合には、レーザー照射によりゴミを燃焼させることでゴミを取り除くことができる。
なお、図7に示す例では、枠形状の伸延部106が固定部11の上方に配置されているので、図7(b)からも判るようにパッケージ2に干渉し錘装着部12aの裏面側には装着ができない。もちろん、伸延部106の大きさをパッケージ2に干渉しない大きさとすれば、枠形状であっても錘装着部12aの表裏両面に装着することができる。その場合、表面側の錘10aと裏面側の錘10bは、質量が等しく、錘装着部12aの固着面からの重心の高さも等しくなるように構成される。そのように裏面側にも表面側と同じ質量の錘を設けることにより、後述するような錘の重心位置Gのz方向の位置ずれを防止でき、振動発電素子1の信頼性向上が図れる。
図6に示す例では、錘装着部12aに固定される段差部104aのx方向の長さが錘装着部12aのx方向の長さよりも小さい場合を示したが、図16に示すように段差部104aの長さの方が大きくなるように設定しても良い。図16において、(a)は錘装着部12aの側から見た平面図であり、(b)はC4-C4断面図である。図16(b)の場合も、符号104、106はC4-C4断面における対向部104の範囲および伸延部106の範囲を示す。図16(a)の段差部104aが形成されている部分の内、両端領域を除くハッチングを施した部分が対向部104を構成している。その他のハッチングが施されていない部分は、符号Rで示す領域も含めて、対向部104の側方(x方向およびy方向)に一体に形成され錘装着部12aが対向しない領域まで伸延する伸延部106を構成している。
上述のように、別に形成された錘10a,10bを錘装着部12aに装着する構成の場合、錘装着部12aに装着した際の錘10a,10bの重心位置のずれが弾性支持部13の寿命に大きな影響を与えることが判った。図8および図9は、錘10a,10bの重心位置のずれの影響を説明する図である。図8は振動平面内(図1のxy平面内)での位置ずれを説明する図で、図9は振動平面に垂直な方向(図1のz軸方向)の位置ずれを説明する図である。
図8において、(a)は位置決めが適切に行われている場合を示し、(b)は位置決めが不適切な場合を示す。図8では錘10a,10bの図示を省略し、錘10a,10bの重心位置のみを符号Gで示した。なお、図7に示す例のように錘10a,10bの一方を装着した場合においても同様の議論が成り立つ。図8(a),(b)において、ラインL1は接続部114の突起114aの先端を通り振動方向(x軸方向)に平行な直線である。図8(a)に示す例では、xy平面上における錘10a,10bの重心位置GはラインL1上に位置している。そのため、振動により錘10a,10bの重心に働く力F1の方向は、ラインL1に沿った方向となっている。錘装着部12aが接続部114の突起114aに衝突すると突起114aから錘装着部12aに対して反作用の力F2が働くが、F1とF2は向きは逆であるが方向はラインL1に沿った方向である。そのため、錘装着部12aをxy面内で傾けるようなモーメントは発生しない。
なお、可動電極部12はラインL1に対して線対称にyプラス方向とyマイナス方向に可動櫛歯群が設けられており、質量に関してもラインL1に対して線対称となっている。したがって、ラインL1は可動電極部12の可動電極群が線対称となる基準線と定義することもできる。
一方、図8(b)に示す位置決めが不適切な場合、錘10a,10bの重心位置GはラインL1に対してy軸負方向に位置ずれしている。そのため、錘装着部12aが接続部114の突起114aに衝突すると、力F1および力F2を表すベクトルが同一ラインに沿った力ではないため錘装着部12aを矢印のように傾けるようなモーメントが作用し、錘装着部12aがxy面内で傾くことになる。その結果、ビーム13bに意図しない変形が生じビーム破損の原因となる。
振動平面に垂直な方向の位置ずれを説明する図9は、図8(a)のラインL1に沿ったxz断面を示したものである。図9は衝突時の状態を示す図であって、図9(a)は錘10a,10bの合計質量の重心位置GがラインL1上にある場合を示し、図9(b)は重心位置GがラインL1よりも図示下側(z軸負方向側)にある場合を示す。
錘10a,10bが同一材料かつ同一形状である場合には、それぞれの重心位置G1,G2の錘装着部12aからの高さ寸法は同一となる。そのため、xy平面上における重心位置G1,G2の位置ずれがあった場合でも、錘10a,10bの合計質量の重心位置GはラインL1を含むxy平面上に位置することになり、錘装着部12aが接続部114の突起114aに衝突した際にモーメントは発生しない。
ただし、錘10a,10bの形状が互いに異なる等の理由で、図9(b)に示すように合計質量の重心位置GがラインL1に対してz軸方向に位置ずれしていた場合、錘装着部12aに対する錘10a,10bのxy方向の位置決めが適正であっても、錘装着部12aが接続部114の突起114aに衝突した際に錘装着部12aを矢印のように傾けるようなモーメントが発生して、ビーム13bに意図しない変形が生じることになる。
本実施の形態では、錘装着部12aに対して錘10a,10bを予め設定した適正なxy位置に位置決めするための位置決め機構として、錘装着部12aおよび錘10a,10bに位置決めピン用の貫通孔122,100(図1参照)を形成するようにした。また、図1(b)のように可動電極部12の表裏両面に錘10a,10bを装着する場合には、z方向の重心位置GのラインL1からのずれを防止するために、錘10a,10bの重心位置G1,G1の錘装着部12aからの高さが等しくなるように設定する。すなわち、重心位置G1,G1が錘装着部12aに対して対称な位置となり、合計質量の重心位置GがラインL1上となるように、錘10a,10bを設定する。
錘10a,10bは同一材料で同一の形状で作成するのが好ましいが、表裏面の一対の錘10a,10bの質量が同一であり、錘10a,10bの重心位置G1,G2の各固着面からの高さが等しければ、材質、形状は異なっていても良い。
図10は、錘10a,10bの錘装着部12aへの装着手順を示す図である。本実施形態では、錘10a,10bは、接着剤を用いて錘装着部12aへ固着される。図10(a)の工程では、錘10bの固着面101に接着剤102をディスペンサにより点付けし、錘10bの貫通孔100の位置と錘装着部12aの貫通孔122の位置がほぼ一致するように、錘装着部12aの真上から貫通孔100、122の位置を目視で確認しながら、錘10bの上に図2(a)に示した振動発電素子1のMEMS加工体を載置する。
図10(b)の工程では、錘装着部12aの貫通孔122および錘10bの貫通孔100とに位置決めピン103を通して、錘装着部12aと錘10bとを正確に位置決めした後に、錘装着部12aの固着面123上に錘10aを固着する。この場合も、錘装着部12aの固着面123に接着剤102をディスペンサにより点付けし、位置決めピン103の位置と錘10aの貫通孔100の位置とを目視で確認しながら、錘装着部12aの固着面123上に錘10aを載置する。その後、図10(c)に示す状態を保持して、錘10a,10bの位置ずれを防止しつつ接着剤102を固化させる。接着剤102が固化したならば、位置決めピン103は抜き取る。以上のような手順で錘装着部12aへの錘10a,10bの装着が完了し、その後、錘10a,10bが装着された振動発電素子1は、ダイボンド工程においてパッケージ2内に固定される。
図11および図12は、振動発電素子1のMEMS加工体の形成手順の一例を示す図である。MEMS加工技術によりSOI基板から振動発電素子を形成する方法は周知の技術であり(例えば、特開2017-070163号公報等参照)、ここでは形成手順の概略を説明する。なお、図11および図12では、図2(a)の一点鎖線L2に沿った断面を模式的に示した。
図11(a)は、MEMS加工が行われる基板であるSOI基板の断面を示す図である。前述したように、SOI基板は、Siの支持層301とSiOのボックス層302とSiの活性層303とから成る。図11(b)に示す第1のステップでは、活性層303の表面に窒化膜(SiN膜)304を成膜する。図11(c)に示す第2のステップでは、窒化膜304をパターニングして、電極パッド112,113を形成する箇所を保護するための窒化膜パターン304aを形成する。
図11(d)に示す第3のステップでは、可動電極部12、固定電極部111、弾性支持部13および接続部114を形成するためのマスクパターンを形成し、活性層303をエッチングする。エッチング加工は、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)等によりボックス層302に達するまで行われる。このエッチング加工において、錘装着部12aの貫通孔122も同時に形成される。図11(d)において、符号B1で示す部分は固定電極部111に対応する部分で、符号B2で示す部分は可動電極部12に対応する部分で、符号B3で示す部分は接続部114に対応する部分である。
図12(a)に示す第4のステップでは、固定部11を形成するためのマスクパターンを支持層301の表面に形成し、支持層301をDRIE加工する。図12(b)に示す第5のステップでは、支持層301の側および活性層303の側に露出するSiOのBOX層を強フッ酸により除去する。図12(c)に示す第6のステップでは、熱酸化法によりSi層の表面にシリコン酸化膜305を形成する。図12(d)に示す第6のステップでは、窒化膜パターン304aを除去し、除去した領域にアルミ電極を成膜して電極パッド112,113を形成する。なお、電極パッド113については図12(d)に示す領域の外に形成されるので、図12(d)には表示されていない。
上述の加工手順により、エレクトレット未形成の振動発電素子1のMEMS加工体が形成される。その後、周知のエレクトレット形成方法(例えば、特許5627130号公報等参照)により、櫛歯電極110,120の少なくとも一方にエレクトレットを形成する。
前述したように、錘装着部12aの固着面123の幅寸法は1~2mm程度と小さなものになる。一方、固着面123の部分には静電力が加わるので、貫通孔122が大きいと残りの部分の寸法が小さくなって変形するおそれがある。そのため、貫通孔100,122は0.3~0.5mm程度が限度となる。
なお、上述した実施の形態では、錘10a,10bを錘装着部12aに固着した後に位置決めピン103を取り去る構成としたが、図13(a)のように位置決めピン103を残したままとしても良い。この場合、位置決めピン103は接着剤によって貫通孔100、122内に固着されるような構成とする。また、図13(b)に示すように貫通孔100に代えて非貫通の穴105を錘10a,10bに形成し、穴105と貫通孔122で形成される空間内に位置決めピン103を封入する構成としても良い。この場合も、位置決めピン103が上下に移動しないように接着剤によって錘10a,10bや錘装着部12aに固着される。
(変形例)
図14,15は、位置決め機構の変形例を示す図である。上述した実施の形態では、位置決めピンを錘10a,10bと錘装着部12aに形成された貫通孔122に通すことにより、錘装着部12aに対して錘10a,10bを位置決めした。一方、図14(a),(b)に示す変形例では、錘装着部12aの固着面123に形成された貫通孔123aに錘10a,10bの固着面101に形成された凸部101aを係合させることにより、錘10a,10bの位置決めを行うようにした。
錘10a,10bの装着の順序はピン位置決め構造の場合と同じで、最初に、図14(a)に示すように下側の錘10bの上に錘装着部12aを載置するように接着する。このとき、錘10bの凸部101aを錘装着部12aの貫通孔123aに係合させることで、錘10bの位置決めが行われる。次いで、図14(b)に示すように、錘10aを錘装着部12aに載置するように接着する。このとき、錘10aの凸部101aを錘装着部12aの貫通孔123aに係合させることで、錘10aの位置決めが行われる。
凸部101aおよび貫通孔123aは種々の形状が可能であり、図15は凸部形状の代表的な例を示したものである。図示は省略するが、錘装着部12aの貫通孔123aは、係合する凸部101aの形状に対応する同一横断面形状の貫通孔となる。図15(a)は、図14(a),(b)に示した凸部101aの断面形状である。凸部101aは、xy平面で断面した断面形状が円形の柱状体である。凸部101aの断面形状が円形の場合、重心位置Gが設定位置からずれないように位置決めするためには、凸部101aを2以上設ける必要がある。ただし、図5に示すように伸延部106が円板状であってその中心位置に重心がある場合は、凸部101aが貫通孔123aに対して回転ずれしても重心位置は変化しないので、凸部101aは一つでも良い。
図15(b),(c)は、凸部101aをxy平面で断面した断面形状が四角形の場合を示す。図15(b)の場合の断面形状は長辺が固着面101の長手方向に沿った長方形であり、図15(c)の場合の断面形状は長い方の固着面101の長手方向に沿った菱形である。図15(b),(c)では断面形状が四角形であったが、四角形に限らず断面形状が多角形や楕円の場合には、凸部101aを中心とする回転ずれを阻止できる。そのため、係合する凹凸部が一組であっても、重心位置Gがずれないように位置決めすることができる。
なお、図14に示す例では、可動電極部12の表裏両面に貫通孔123aを形成したが、貫通孔に代えて凹部を形成し、その凹部に錘10a,10bの凸部101aを係合させるようにしても良い。
上述した実施形態、変形例で説明した振動発電素子1をまとめて説明すると以下のとおりである。
(1)振動発電素子1は、平板状の錘装着部12aおよびその錘装着部12aの側方に形成される複数の櫛歯電極120を有する可動電極部12と、可動電極部12の複数の櫛歯電極120に相対する複数の櫛歯電極110を有する固定電極部111と、可動電極部12を弾性支持する弾性支持部13と、錘装着部12aに固定される錘10a,10bとを備え、錘10a,10bには、例えば図4に示すように、錘装着部12aに対向する対向部104と、対向部104の側方に一体に形成され錘装着部12aが対向しない領域まで伸延する伸延部106とが設けられている。このように、対向部104の側方の隙間空間に伸延部106を伸延させて隙間空間を有効利用することで、より重い錘10a,10bを錘装着部12aに固定することができ、振動発電素子の発電効率の向上を図ることができる。また、錘10a,10bを可動電極部12に固定する構成であるため、可動電極部12の形状や材料に制限されることなく比重および体積の大きな錘10a,10bを構成することができる。
また、錘装着部12aの表面側に装着される錘10aと錘装着部12aの裏面側に装着される錘10bとを備える場合、錘10aと錘10bは、質量が等しく、錘装着部12aの固着面からの重心の高さも等しくなるように構成するのが良い。好ましくは、図1,3に示すように、錘10a,10bの各々には、錘装着部12aに対向する対向部104と対向部104から側方に伸延する伸延部106とがそれぞれ形成される。
(2)伸延部106は、図1のように複数の櫛歯電極110,120の少なくとも一部と隙間を介して対向配置されるようにしても良いし、図7のように、伸延部106を対向部104の側方領域の内、複数の櫛歯電極110,120が対向する側方領域を除く他の側方領域に伸延するようにしても良い。
(3)また、錘10a,10bを、可動電極部12を構成する材料よりも比重の大きい材料で形成することにより、錘10a,10bをより小さくすることができ、振動発電素子1の小型化を図ることができる。
(4)振動発電素子1は、振動する可動電極部12に当接して可動電極部12の振動を制限する接続部114と、接続部114の当接箇所を通って振動方向に平行なラインL1の上に、錘10a,10bの重心位置Gを位置決めする位置決め機構を備える。そのように位置決めすることにより、重心位置Gを通る振動方向に平行なラインに関して弾性支持部13の配置が対称となり、振動方向がy方向にぶれるような不自然な振動が発生するのを防止することができる。また、可動電極部12が接続部114に当接したときに、可動電極部12をxy面内で傾けるようなモーメントが発生せず、ビーム13bに意図しない変形が生じるのを防止することができる。
位置決め機構としては、図10に示すように、錘10a,10bを錘装着部12aに位置決めするための位置決めピン用ピン孔である貫通孔100、122を、錘10a,10bおよび錘装着部12aに形成しても良いし、図14に示すように錘装着部12aに貫通孔123aを形成し、その貫通孔123aに錘10a,10bに形成された凸部101aを係合させるようにしても良い。いずれの場合も、重心位置Gがずれないように錘10a,10bを位置決めすることができる。
(5)図9(a)に示すように、錘10aの重心位置G1と錘10bの重心位置G2とが錘装着部12aに関して対称な位置にあるのが好ましい。そのように構成することで、可動電極部12が接続部114の突起114aと衝突した際に、図9(b)に示すような錘装着部12aをxz面内で傾けるようなモーメントの発生を防止することができる。
(6)上述した実施の形態では、振動発電素子1はパッケージ2と上蓋3とからなる筐体の内部に配置され、振動発電素子1が配置された筐体内は真空状態とされる。すなわち、振動発電素子1は真空封止されるので、振動発電素子1の振動に対する空気の粘性抵抗の影響を排除することができ、より高効率な振動発電素子を得ることができる。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
例えば、上述した実施の形態では、SOI基板により振動発電素子1を形成したが、シリコン基板を用いても良い。シリコン基板を用いる場合、例えば、導電率の小さな真性のシリコン基板の表面から所定厚さの領域にドーピングによりP型またはN型の導電層を形成し、導電層の下部の真性なシリコン層に固定部11を形成し、導電層に固定電極部111、可動電極部12、弾性支持部13を形成すれば良い。
また、上述したように、本発明は、可動電極部12の表裏両面に錘10a,10bを装着する構成の場合にも、表裏両面のいずれか一方に錘を装着する構成の場合にも適用することができる。
さらにまた、上述した振動発電素子1では、可動電極部12が櫛歯電極110、120の伸延方向(図1のx軸方向)に振動するような構成であったが、例えば、特許6338071号公報に記載の振動発電素子のように複数の櫛歯電極110が並置されている方向(図1のy軸方向)に振動するような構成であっても本発明は適用が可能である。
1…振動発電素子、2…パッケージ、10a,10b…錘、11…固定部、12…可動電極部、12a…錘装着部、12b…櫛歯形成部、13…弾性支持部、100,122,123a…貫通孔、101a…凸部、102…接着剤、103…位置決めピン、104…対向部、106…伸延部、110,120…櫛歯電極、111…固定電極部、114…接続部、114a…突起、123…固着面、G,G1,G2…重心位置

Claims (7)

  1. 平板状の錘装着部および前記錘装着部の側方に形成される複数の櫛歯電極を有する可動電極部と、
    前記可動電極部の複数の櫛歯電極に相対する複数の櫛歯電極を有する固定電極部と、
    前記可動電極部を弾性支持する支持部と、
    前記錘装着部に固定される錘とを備え、
    前記錘には、前記錘装着部に対向する対向部と、前記対向部の側方に一体に形成され前記錘装着部が対向しない領域まで伸延する伸延部とが設けられ
    前記伸延部は、前記可動電極部および前記固定電極部の複数の櫛歯電極の少なくとも一部と隙間を介して対向配置され、
    振動する前記可動電極部に当接して前記可動電極部の振動を制限する制限部と、
    前記制限部の当接箇所を通って振動方向に平行なラインの上に、前記錘の重心位置を位置決めする位置決め機構とを備える、振動発電素子。
  2. 平板状の錘装着部および前記錘装着部の側方に形成される複数の櫛歯電極を有する可動電極部と、
    前記可動電極部の複数の櫛歯電極に相対する複数の櫛歯電極を有する固定電極部と、
    前記可動電極部を弾性支持する支持部と、
    前記錘装着部に固定される錘とを備え、
    前記錘には、前記錘装着部に対向する対向部と、前記対向部の側方に一体に形成され前記錘装着部が対向しない領域まで伸延する伸延部とが設けられ、
    前記伸延部は、前記対向部の側方領域の内、前記可動電極部および前記固定電極部の複数の櫛歯電極が対向する側方領域を除く他の側方領域に伸延する、振動発電素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載の振動発電素子において、
    前記錘は前記可動電極部を構成する材料よりも比重の大きい材料で形成されている、振動発電素子。
  4. 請求項に記載の振動発電素子において、
    振動する前記可動電極部に当接して前記可動電極部の振動を制限する制限部と、
    前記制限部の当接箇所を通って振動方向に平行なラインの上に、前記錘の重心位置を位置決めする位置決め機構とを備える、振動発電素子。
  5. 請求項1に記載の振動発電素子において、
    前記錘は、前記錘装着部の表面側に装着される第1の錘と前記錘装着部の裏面側に装着される第2の錘とから成り、
    前記第1および第2の錘の各々には、前記錘装着部に対向する対向部と前記対向部から側方に伸延する伸延部とがそれぞれ形成されている、振動発電素子。
  6. 請求項に記載の振動発電素子において、
    前記第1の錘の重心位置と前記第2の錘の重心位置とが前記錘装着部に関して対称な位置にある、振動発電素子。
  7. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の振動発電素子と、
    前記振動発電素子を真空封止する筐体とを備える、振動発電装置。
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