以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがあり、また、寸法比率等は現実のものと必ずしも一致しない。
また、各図には、説明の便宜のために、直交座標系xyzを付している。なお、直交座標系xyzは、センサ素子(圧電体)の形状に基づいて定義されている。すなわち、x軸、y軸及びz軸は、結晶の電気軸、機械軸及び光軸を示すとは限らない。
同一又は類似する構成については、「第1駆動腕11A」、「第2駆動腕11B」のように、同一名称に対して互いに異なる番号及びアルファベットを付して呼称することがあり、また、この場合において、単に「駆動腕11」といい、これらを区別しないことがある。
図1は、本発明の実施形態に係るセンサ素子1の圧電体3を示す斜視図である。図2は、圧電体3上の電極配置を説明するためのセンサ素子1の斜視図である。図2において、圧電体3は、一部が省略されることなどにより、図1よりも模式的に示されている。
センサ素子1は、例えば、y軸回りの角速度を検出する角速度センサ101を構成するものである。角速度センサ101は、圧電振動式のものであり、センサ素子1は、x軸方向に励振され、z軸方向にコリオリの力が生じるように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
センサ素子1は、圧電体3と、圧電体3に電圧を印加するための第1励振電極5A及び第2励振電極5B(図2)と、圧電体3に生じた電気信号を取り出すための第1検出電極7A及び第2検出電極7B(図2)とを有している。
圧電体3は、その全体が一体的に形成されている。圧電体3は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。また、圧電体3の材料は適宜に選択されてよく、例えば、水晶(SiO2)、LiTaO3、LiNbO3、PZTである。
圧電体3において、電気軸乃至は分極軸(以下、両者を代表して分極軸のみに言及することがある。)は、x軸に一致するように設定されている。なお、分極軸は、所定の範囲(例えば15°以内)でx軸に対して傾斜していてもよい。また、圧電体3が単結晶である場合において、機械軸及び光軸は、適宜な方向とされてよいが、例えば、機械軸はy軸方向、光軸はz軸方向とされている。
圧電体3は、x軸方向に延びる基部9と、基部9からy軸方向の正側又は負側に延びる各種の腕(10A〜10D(図1)、11A〜11D、並びに、13A及び13B)とを有している。
第1駆動腕11A〜第4駆動腕11Dは、電圧(電界)が印加されることによってx軸方向(以下、「励振方向」ということがある。)に励振される部分である。第1検出腕13A及び第2検出腕13Bは、コリオリの力によってz軸方向(以下、「検出方向」ということがある。)に振動され、角速度に応じた電気信号を生成する部分である。基部9は、これら駆動腕11及び検出腕13を支持する部分である。第1実装腕10A〜第4実装腕10Dは、基部9を支持する部分である。これらの位置及び形状等は、例えば、以下のように設定されている。
圧電体3は、例えば、全体として厚さ(z軸方向)が一定にされており、また、例えば、y軸方向に延びる中心線CL0(図1)に対して線対称の形状に形成されている。
基部9は、例えば、概ね直方体状とされている。基部9の3軸方向の寸法比率は適宜に設定されてよい。例えば、基部9は、x軸方向の大きさ>y軸方向の大きさ>z軸方向の大きさに設定されている。すなわち、基部9は、x軸方向を長手方向とし、z軸方向を厚み方向とする概ね長方形の板状とされている。なお、例えば、x軸方向の大きさ>z軸方向の大きさ≧y軸方向の大きさとされてもよい。
4本の実装腕10は、基部9の両端部9aからy軸方向の両側に延びている。換言すれば、4本の実装腕10は、駆動腕11及び検出腕13のx軸方向の外側にてこれらの腕に並列に延びている。4本の実装腕10は、例えば、x軸方向及びy軸方向のいずれにおいても線対称の配置及び形状となるように設けられている。実装腕10の具体的形状は適宜に設定されてよい。例えば、実装腕10は、概略矩形の板状に形成されている。
実装腕10の先端部のz軸方向の正側又は負側(本実施形態では正側)の面には、第1パッド15A〜第4パッド15D(模式図である図2において基部9の4隅に示す。なお、本実施形態とは異なり、実装腕10を設けずに、図2のようにパッド15を設けてもよい。)が設けられている。パッド15は、不図示の実装基体(例えばプリント配線基板)に設けられたパッドに対向し、当該パッドに対して半田乃至は導電性接着剤からなるバンプにより接着される。これにより、センサ素子1と実装基体との電気的な接続がなされ、また、センサ素子1(圧電体3)は、駆動腕11及び検出腕13が振動可能な状態で支持される。
なお、基部9及び実装腕10は、駆動腕11及び検出腕13等を揺動可能に支持する支持部8を構成している。
複数の駆動腕11は、互いに同一方向(y軸方向の正側)に互いに並列に(平行に)延びており、その先端は自由端とされている。駆動腕11の数は、偶数(本実施形態では4)である。偶数本の駆動腕11は、中心線CL0に対して互いに線対称に配置されている。また、偶数本の駆動腕11は、その形状も、中心線CL0に対して線対称とされている。すなわち、第1駆動腕11Aと第4駆動腕11Dとは、中心線CL0に対して互いに線対称の配置及び形状とされ、第2駆動腕11Bと第3駆動腕11Cとは、中心線CL0に対して互いに線対称の配置及び形状とされている。
後述するように、中心線CL0の一方側の複数の駆動腕11(11A及び11B)は、共に同一側へ湾曲するように振動するから、全体として一つの仮想駆動腕を構成する。同様に、中心線CL0の他方側の複数の駆動腕11(11C及び11D)は、全体として一つの仮想駆動腕を構成する。上述のような線対称の形状及び配置の結果、2本の仮想駆動腕は、振動に係る特性が互いに線対称である。換言すれば、中心線CL0に対して互いに対称に横方向の正負を定義すれば、両者の振動に係る特性は互いに同一であり、固有振動数等も互いに同一である。
駆動腕11の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、駆動腕11は、いわゆるハンマ形状とされている。すなわち、駆動腕11は、基部9から延びる本体部11cと、その先端に位置し、本体部11cよりも幅(x方向)が広い幅広部11dとを有している。
本体部11cは、例えば、概略、y軸方向を長手方向とする直方体状とされている。幅広部11dは、例えば、幅方向(x方向)の一方のみに広がっており、また、その広がる方向は、隣接する駆動腕11同士において互いに逆側である。これにより、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいては、互いに隣接する2つの駆動腕11(11A及び11B、又は、11C及び11D)の本体部11cを互いに近付けることができる。なお、幅広部は、両側に広がるように形成されてもよいし、全く設けられなくてもよい。
本体部11cの幅(x軸方向)が大きくなると、駆動腕11の励振方向(x軸方向)における固有振動数は高くなり、本体部11cの長さ(質量)又は幅広部11dの質量が大きくなると、駆動腕11の励振方向における固有振動数は低くなる。従って、駆動腕11の各種の寸法は、励振させたい周波数に応じて設定される。なお、駆動腕11のx軸方向の固有振動数とz軸方向の固有振動数とは等しくされることが好ましい。
複数の検出腕13は、複数の駆動腕11の延びる方向とは反対方向(y軸方向の負側)に互いに並列に(平行に)延びており、その先端は自由端とされている。検出腕13の数は、偶数(本実施形態では2)であり、また、例えば、駆動腕11の数よりも少ない。偶数本の検出腕13は、中心線CL0に対して互いに線対称に配置されている。また、偶数本の検出腕13は、その形状も、中心線CL0に対して互いに線対称とされている。
従って、駆動腕11と同様に、中心線CL0の一方側と他方側とで、検出腕13の振動特性は、互いに対称である。換言すれば、中心線CL0に対して互いに対称に横方向の正負を定義すれば、両者の振動に係る特性は互いに同一であり、固有振動数等も互いに同一である。
検出腕13の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、検出腕13は、駆動腕11と同様に、いわゆるハンマ形状とされている。すなわち、検出腕13は、基部9から延びる本体部13cと、その先端に位置し、本体部13cよりも幅(x方向)が広い幅広部13dとを有している。
本体部13cの概略形状は、直方体とされている。この直方体においては、例えば、y軸方向の大きさ>x軸方向の大きさ>z軸方向の大きさである。すなわち、本体部13cは、y軸方向を長手方向とし、z軸方向を厚み方向とする概ね長方形の板状とされている。従って、検出腕13は、相対的に、励振方向(x軸方向)には振動しにくく、検出方向(z軸方向)に振動しやすくなっている。
また、例えば、検出腕13の本体部13cは、当該本体部13cをz軸方向に貫通し、y軸方向に延びる1又は複数(本実施形態では複数)の貫通溝13a(図4(b)も参照)が形成された形状とされている。別の観点では、本体部13cは、基部9からy軸方向に延び、x軸方向に並べられ、先端が互いに固定された複数の分割腕13bを有している。分割腕13b(貫通溝13a)のxz断面の形状は例えば概略矩形である。貫通溝13aの根元側端部は、好ましくは基部9に到達している。
検出腕13の幅広部13dは、例えば、検出腕13の中心線に対して線対称の形状となるように、幅方向(x方向)の両側に広がっている。なお、検出腕の幅広部は、一方にのみ広がるように形成されてもよいし(特に本実施形態とは異なり検出腕の本数が4本以上の場合)、全く設けられなくてもよい。
駆動腕11と同様に、検出腕13の各種の寸法は、検出腕13の固有振動数を規定することから、コリオリの力による振動の方向であるz軸方向の固有振動数が適宜なものとなるように設定される。なお、当該固有振動数は、駆動腕11のx軸方向の固有振動数と等しくされる(離調周波数が小さくされる)ことが好ましい。
駆動腕11のx軸方向の位置と検出腕13のx軸方向の位置との相対関係は、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの振動によって第1検出腕13Aを振動させ、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの振動によって第2検出腕13Bを振動させることが可能に適宜に設定されている。
例えば、第1駆動腕11Aと第2駆動腕11Bとの中間位置を通るこれらの腕に平行な線(不図示)と、第1検出腕13Aの中心線(不図示)とは一致している。同様に、第3駆動腕11Cと第4駆動腕11Dとの中間位置を通るこれらの腕に平行な線(不図示)と、第2検出腕13Bの中心線(不図示)とは一致している。ただし、これらはずれていてもよい。
なお、各腕の中心線は、例えば、本体部のxz断面の重心をy軸方向に連ねた線である。また、中心線CL0の一方側又は他方側の複数の腕(仮想腕)全体としての中心線を定義することもできる。例えば、第1駆動腕11Aの本体部11c及び第2駆動腕11Bの本体部11cの全体のxz断面の重心をy軸方向に連ねた線を、中心線CL0の一方側の駆動腕11全体(仮想駆動腕)の中心線と定義できる。
上記のように複数の腕全体としての中心線を定義すると、本実施形態では、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、複数の駆動腕11の全体としての中心線(不図示)と、1以上の検出腕13の中心線(不図示)とが一致していると捉えることができる。この概念は、駆動腕及び検出腕の本数が本実施形態とは異なる場合にも適用できる。例えば、1本の検出腕13に対応する駆動腕11の数が3本の場合に、3本の駆動腕全体の中心線を考え、この中心線を検出腕13の中心線と一致させてよい。また、例えば、3本の駆動腕11と2本の検出腕13とが対応している場合に、3本の駆動腕11全体の中心線と、2本の検出腕全体の中心線とを一致させてよい。
中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、2本の駆動腕11間の距離(例えば、中心間距離:各駆動腕11の中心線同士の距離)は適宜に設定される。
本実施形態では、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、その全体としてのx軸方向の外側面(第1駆動腕11Aのx軸方向の負側の面及び第2駆動腕11Bのx軸方向の正側の面)が、第1検出腕13Aのx軸方向の外側面に一致するように配置されている。第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dも同様である。これにより、検出腕13の幅方向(x軸方向)全体に振動を伝達させやすくなる。また、駆動腕11の配置範囲は検出腕13の配置範囲に収まり、圧電体3が小型化される。ただし、駆動腕11間の距離は、本実施形態よりも短くされたり、長くされたりしてもよい。
また、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、互いに隣接する駆動腕11同士の中心間距離は、例えば、中心線CL0を挟んで互いに隣接する駆動腕11同士の中心間距離よりも短くされている。これにより、中心線CL0に対するx軸方向の一方側又は他方側において隣接する駆動腕11間の相互影響は、中心線CL0を挟んで互いに隣接する駆動腕11間の相互影響よりも大きい。ただし、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおける駆動腕11同士の中心間距離が中心線CL0を挟んで互いに隣接する駆動腕11同士の中心間距離よりも長くてもよい。
また、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、複数本(本実施形態では2本)の駆動腕11の中心間距離は、検出腕13同士の中心間距離よりも短くされている。これにより、中心線CL0の一方側及び他方側のそれぞれにおける、2本の駆動腕11間の相互影響は、中心線CL0を挟んで互いに隣接する2本の検出腕13間の相互影響よりも大きい。ただし、中心線CL0に対するx軸方向の一方側及び他方側のそれぞれにおける駆動腕11間の中心間距離は、検出腕13間の中心間距離よりも長くてもよい。
図3は、一の駆動腕11を拡大して示す平面図である。
駆動腕11のz軸方向(駆動腕11の延在方向及び並び方向に直交する方向)に面する表面には、複数の凹部11aが形成されている。なお、図3は、z軸方向の正側を示す平面図であるが、z軸方向の負側も同様に、複数の凹部11aが形成されている。
複数の凹部11aは、例えば、複数列(本実施形態では3列)で、駆動腕11の延在方向(y軸方向)に配列されている。複数の凹部11aのy軸方向のピッチは、例えば、一定である。凹部11aの列同士の距離(x軸方向)は、例えば、一定である。凹部11aの列は、例えば、y軸方向の位置が互いに一致している(複数の凹部11aは行列状に配置されている)。複数の凹部11aの形状及び大きさは、例えば、互いに同一である。各凹部11aの開口面の形状は、多角形、円形、楕円等の適宜な形状とされてよく、図3では矩形を例示している。各凹部11aの立体形状は、錐体のように底面側のxy断面の面積が小さくなる形状であってもよいし、xy断面の面積が深さ方向において一定又は大きくなる形状であってもよい。本実施形態では、錐体を例示する(図4(a)参照)。
凹部11aの各種寸法は適宜に設定されてよい。例えば、凹部11aの深さは、1μm以上であり、より好ましくは、4μm以上である。なお、この深さは、比較的小型の水晶片の一般的な表面粗さ(例えばnmオーダー)に比較して明らかに大きい。また、凹部11aの深さの上限は、駆動腕11のz軸方向の両面の凹部11aが互いに連通されない大きさであり、例えば、駆動腕11の厚さの半分未満である。なお、両面の凹部11aの位置が平面視において互いにずれていれば、凹部11aの深さを駆動腕11の厚さの半分以上とすることも可能である。
図4(a)は、図1のIVa−IVa線における断面図である。図4(a)においては、第4駆動腕11Dの断面を示しているが、他の駆動腕11の断面も同様である。
図2、図3及び図4(a)に示すように、励振電極5は、駆動腕11の表面に形成された層状電極である。励振電極5は、例えば、Cu,Al等の適宜な金属によって形成されている。
図4(a)に示すように、第1励振電極5Aは、各駆動腕11において、z軸方向の正側の面及びz軸方向の負側の面にそれぞれ設けられている。これらの面には、上述のように複数の凹部11aが形成されており、各面において、第1励振電極5Aは、複数の凹部11aに亘って設けられるとともに、複数の凹部11aの内部表面(例えば底面及び内壁面)に設けられている。また、第2励振電極5Bは、各駆動腕11において、x軸方向の正側の面及びx軸方向の負側の面にそれぞれ設けられている。
2つの第1励振電極5A及び2つの第2励振電極5Bは、例えば、駆動腕11の各面を概ね覆うように設けられている。ただし、第1励振電極5A及び第2励振電極5Bは、互いに短絡しないように、少なくとも一方(本実施形態では第1励振電極5A)が各面よりも幅方向において小さく形成されている。
各駆動腕11において、2つの第1励振電極5Aは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの第1励振電極5Aは、圧電体3上の配線等により互いに接続されている。また、各駆動腕11において、2つの第2励振電極5Bは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの第2励振電極5Bは、圧電体3上の配線等により互いに接続されている。
なお、励振電極5の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、例えば、後述するように、一の駆動腕11の第1励振電極5Aと、他の駆動腕11の第1励振電極5Aとは同電位とは限らない。
図4(b)は、図1のIVb−IVb線における断面図である。図4(b)においては、第2検出腕13Bの一部の分割腕13bの断面を示しているが、第2検出腕13Bの他の分割腕13b、及び、第1検出腕13Aの分割腕13bの断面も同様である。
図2及び図4(b)に示すように、検出電極7は、検出腕13(分割腕13b)の表面に形成された層状電極である。検出電極7は、例えば、Cu,Al等の適宜な金属によって形成されている。
検出電極7は、各分割腕13bに設けられている。すなわち、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の外側面だけでなく、複数の貫通溝13aの内壁面にも設けられている。
より具体的には、第1検出電極7Aは、各分割腕13bにおいて、x軸方向の負側の面のうちのz軸方向の正側の領域、及び、x軸方向の正側の面のうちのz軸方向の負側の領域にそれぞれ設けられている。第2検出電極7Bは、各分割腕13bにおいて、x軸方向の負側の面のうちのz軸方向の負側の領域、及び、x軸方向の正側の面のうちのz軸方向の正側の領域にそれぞれ設けられている。分割腕13bの各面において、第1検出電極7A及び第2検出電極7Bは、互いに短絡しないように適宜な間隔を空けて、分割腕13bに沿って延びている。
各検出腕13において、複数の第1検出電極7Aは、例えば、圧電体3上の配線等により接続されている。各検出腕13において、複数の第2検出電極7Bは、例えば、圧電体3上の配線等により接続されている。
なお、励振電極5と同様に、検出電極7の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、例えば、後述するように、第1検出腕13Aの第1検出電極7Aと、第2検出腕13Bの第1検出電極7Aとは、(本実施形態では)接続されない。
図4(a)及び図4(b)に示すように、角速度センサ101は、励振電極5に電圧を印加する励振回路103と、検出電極7からの電気信号を検出する検出回路105とを有している。
励振回路103は、例えば、発振回路や増幅器を含んで構成されており、所定の周波数の交流電圧を第1励振電極5Aと第2励振電極5Bとの間に印加する。なお、周波数は、角速度センサ101内にて予め定められていてもよいし、外部の機器等から指定されてもよい。
検出回路105は、例えば、増幅器や検波回路を含んで構成されており、第1検出電極7Aと第2検出電極7Bとの電位差を検出し、その検出結果に応じた電気信号を外部の機器等に出力する。より具体的には、例えば、上記の電位差は、交流電圧として検出され、検出回路105は、検出した交流電圧の振幅に応じた信号を出力する。この振幅に基づいてy軸回りの角速度が特定される。また、検出回路105は、励振回路103の印加電圧と検出した電気信号との位相差に応じた信号を出力する。この位相差に基づいてy軸回りの回転の向きが特定される。
なお、励振回路103及び検出回路105は、全体として制御回路107を構成している。制御回路107は、例えば、チップICによって構成されており、センサ素子1が実装される回路基板又は適宜な形状の実装基体に実装されている。
(動作説明)
図5(a)は、駆動腕11における電位等を説明する図であり、図4(a)に対応する模式図である。図5(b)は、検出腕13における電位等を説明する図であり、図4(b)に対応する模式図である。
第1励振電極5Aに正の電位が付与され、第2励振電極5Bに負の電位(又は基準電位)が付与されると、同図において矢印で示すような電界が生じる。一方、分極軸は、x軸方向に一致している。従って、電界のx軸方向の成分に着目すると、駆動腕11のうちx軸方向の一方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは一致し、他方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは逆になる。
その結果、駆動腕11のうちx軸方向の一方側部分はy軸方向において収縮し、他方側部分はy軸方向において伸長する。そして、駆動腕11は、バイメタルのようにx軸方向の一方側へ湾曲する。第1励振電極5A及び第2励振電極5Bに印加される電圧が逆にされると、駆動腕11は逆方向に湾曲する。このような原理により、交流電圧が第1励振電極5A及び第2励振電極5Bに印加されると、駆動腕11はx軸方向において振動する。
センサ素子1がy軸回りに回転されると、x軸方向において振動している駆動腕11には、慣性力の一つである、その角速度に応じた大きさのコリオリの力が加わる。その結果、駆動腕11はz軸方向において振動する。駆動腕11及び検出腕13は基部9によって連結され、互いに力の相互作用を及ぼすから、検出腕13は、z軸方向において、駆動腕11とは逆位相で振動する(駆動腕11の湾曲方向とは逆方向に湾曲する。)。
検出腕13がz軸方向に湾曲すると、図5(b)において矢印で示すように、z軸方向に平行な電界が生じる。電界の向きは、x軸(電極軸)方向の正側部分と負側部分とで互いに逆である。また、電界の向きは、電極軸の向きと、湾曲の向き(z軸方向の正側又は負側)とで決定される。この電圧(電界)が第1検出電極7A及び第2検出電極7Bに出力される。検出腕13がz軸方向に振動すると、電圧は交流電圧として検出される。
ここで、上述のように、検出腕13には複数の貫通溝13aが形成されており、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の正側及び負側の面だけでなく、その貫通溝13aの内壁面にも設けられている。従って、検出電極7は、検出腕13のx軸方向の外側面だけに設けられている場合に比較して、全体としての面積が大きくなっている。その結果、検出腕13において生じる電荷を効率的に電気信号として取り出すことができる。
図6(a)は、4本の駆動腕11のx軸方向における励振を説明するための模式的な平面図である。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、励振方向(x軸方向)において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。例えば、第1駆動腕11Aの第1励振電極5Aと第2駆動腕11Bの第1励振電極5Aとは接続され、第1駆動腕11Aの第2励振電極5Bと第2駆動腕11Bの第2励振電極5Bとは接続され、これらの第1励振電極5Aと、第2励振電極5Bとの間に交流電圧が印加される。
同様に、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。この励振も、上記と同様に、2本の駆動腕11間において、第1励振電極5A同士が接続され、第2励振電極5B同士が接続されることなどにより実現されてよい。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、励振方向において互いに逆側へ変形するように互いに逆の位相(180°ずれた位相)で励振される。例えば、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第1励振電極5Aと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第2励振電極5Bとが接続され(第1の電極群)、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第2励振電極5Bと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第1励振電極5Aとが接続され(第2の電極群)、第1の電極群と第2の電極群との間に交流電圧が印加される。
なお、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、x軸方向において逆位相で振動していることから、圧電体3全体としては、これらグループのx軸方向の力は互いに打ち消し合う。
図6(b)は、4本の駆動腕11及び2本の検出腕13のz軸方向における振動を説明するための模式的な斜視図である。より具体的には、図6(b)は、図6(a)に示したように駆動腕11が湾曲している圧電体3が、中心線CL0回り(y軸回り)に矢印y5で示す方向へ回転した場合における、駆動腕11及び検出腕13の湾曲状態を示す斜視図である。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bは、回転中心(中心線CL0)に対して、その半径方向(x軸方向)の同一側に配置されている。また、両駆動腕11は、図5(a)に示したように、その半径方向(励振方向、x軸方向)において共に外側又は内側へ湾曲するように励振される。従って、両駆動腕11においてコリオリの力の向きは互いに同一である。その結果、図6(b)に示すように、両駆動腕11はz軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。同様に、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dは、コリオリの力によって、z軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。
第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bのグループと、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dのグループとは、回転中心(中心線CL0)に対して、その半径方向(x軸方向)において互いに逆側に配置されており、ひいては、回転によるz軸方向の移動の向きは互いに逆である。また、図6(a)に示したように、一方のグループが半径方向において外側(又は内側)へ湾曲するとき、他方のグループも半径方向において外側(又は内側)へ湾曲するように、両グループは励振される。従って、両グループにおいてコリオリの力の向きは互いに逆となる。その結果、図6(b)に示すように、両グループはz軸方向において互いに逆側へ湾曲するように振動する。
駆動腕11及び検出腕13は、基部9によって連結されている。従って、駆動腕11の振動は、基部9を介して検出腕13に伝達され、検出腕13も振動する。具体的には、第1検出腕13Aは、z軸方向において第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bとは逆側へ湾曲するように振動する。また、第2検出腕13Bは、z軸方向において第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dとは逆側へ湾曲するように振動する。
第1検出腕13A及び第2検出腕13Bは、z軸方向において互いに逆側に湾曲するように振動する。従って、両者は、x軸方向の一方側部分(又は他方側部分)において生じる電圧がz軸方向において互いに逆向きである。従って、例えば、第1検出腕13Aの第1検出電極7Aと第2検出腕13Bの第2検出電極7Bとが接続され、第1検出腕13Aの第2検出電極7Bと第2検出腕13Bの第1検出電極7Aとが接続されることにより、両検出腕13において生じた電気信号は加算される。
(配線の一例)
上記の動作説明においては、複数の励振電極5及び複数の検出電極7の接続関係について言及した。この接続関係を実現する配線の一例を図7に示す。
図7は、センサ素子1の斜視図である。ただし、この図は、配線を視認しやすいようにセンサ素子1を図2よりも更に模式的に示している。例えば、圧電体3の形状は単純化されて示され、また、各種の電極は小さく示されている。
この例において、第1パッド15A及び第2パッド15Bは、複数の励振電極5に印加される電圧が入力されるパッドである。また、第3パッド15C及び第4パッド15Dは、複数の検出電極7からの信号を出力するためのパッドである。
第1パッド15Aからは、第1配線17Aが延びている。第1配線17Aは、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第1励振電極5A、並びに、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第2励振電極5Bに接続されている。また、第2パッド15Bからは、第2配線17Bが延びている。第2配線17Bは、第1駆動腕11A及び第2駆動腕11Bの第2励振電極5B、並びに、第3駆動腕11C及び第4駆動腕11Dの第1励振電極5Aに接続されている。
第3パッド15Cからは、第3配線17Cが延びている。第3配線17Cは、第1検出腕13Aの第1検出電極7A及び第2検出腕13Bの第2検出電極7Bに接続されている。また、第4パッド15Dからは、第4配線17Dが延びている。第4配線17Dは、第1検出腕13Aの第2検出電極7B及び第2検出腕13Bの第1検出電極7Aに接続されている。
配線17は、互いに交差しないように、基部9の4面及び各種の腕部の根元側部分及び先端側部分の4面等に適宜に配置され、また、適宜に分岐又は合流している。
なお、図7に示す配線は、あくまで一例であり、他の種々のパターンによって、動作説明において言及した電極の接続関係が実現されてよい。4本の実装腕10と、その上に設けられる4種のパッド15(図7では便宜上、基部9の2つの端部9a上に示している。)との組み合わせも変更されてよい。配線17は、絶縁体を介して互いに立体交差するように設けられてもよい。
(センサ素子の製造方法)
図8(a)〜図8(d)は、センサ素子1の製造方法の要部を示す模式図である。図8(a)、図8(b)及び図8(d)は、図4(a)に示す断面図よりも広い範囲を示し、図8(c)は、図8(b)の領域VIIIcの拡大図である。
まず、図8(a)に示すように、圧電体3となる圧電基板151を用意する。圧電基板151は、例えば、センサ素子1が多数個取りされる母基材(ウェハ)である。また、圧電基板151の両主面に、圧電基板151をエッチングするためのエッチングマスク153を配置する。エッチングマスク153の材料及び形成方法(フォトリソグラフィーの利用等)は、公知のものと同様でよい。また、圧電基板151の上下方向の厚みは、例えば、100μm〜400μmとなっている。
エッチングマスク153は、圧電基板151がエッチングされる領域に開口する(一の圧電体3につき)1以上の第1開口153a及び複数の第2開口153bを有している。第1開口153aは、圧電体3となる部分の周囲をエッチングして圧電体3の外縁を形成するためのものであり、基本的に、圧電体3となるべき部分と重ならない領域に開口している。第2開口153bは、複数の凹部11aを形成するためのものであり、その形状及び大きさは、例えば、形成されるべき複数の凹部11aの開口面の形状及び大きさと概略同等とされている。
第2開口153bの径は、比較的小さく設定されている。例えば、第2開口153bの径は、第1開口153aの径よりも小さい。なお、径の比較は、例えば、第2開口153bの最大径と、第1開口153aの最小径とによってなされてよい。ただし、最小径は、面取り等のために縮径している特殊な部分を除く。また、径の比較は、例えば、全ての方向について、同一方向の径同士で比較されてもよい。
次に、図8(b)に示すように、エッチングマスク153を介して圧電基板151をエッチングする(エッチングステップ)。エッチングは、残渣が低減されるように比較的長い時間(例えば10時間)に亘って行われる。なお、エッチングに利用される薬液等は公知のものと同様とされてよい。
圧電基板151が両面から第1開口153aを介してエッチングされていくと、その両面に形成された凹部はやがてつながり、貫通孔(貫通溝)が形成される。これにより、基部9、駆動腕11、検出腕13及び実装腕10が形成される。なお、エッチングの時点では、圧電体3の外縁が完全に形成されていなくてもよい。例えば、圧電体3の一部は、圧電基板151の枠状に残った部分に接続されていてよい。
また、第2開口153bを介したエッチングにより、複数の凹部11aが形成される。ただし、両面に形成された凹部11aは互いにつながらず、貫通孔は形成されない。具体的には、以下のとおりである。
図8(c)に示すように、第2開口153bを介して圧電基板151の主面のエッチングが進むと、水晶のエッチングに対する異方性によって、例えば、第1結晶面3s及び第2結晶面3tが現れる。第1結晶面3s及び第2結晶面3tは、結晶格子の幾何学的規則性に起因して光軸、電気軸及び機械軸に対して水晶に固有の角度で形成される面である。なお、便宜上、xz断面で、且つ、単純な形状で説明しているが、実際には、適宜な方向に面する3以上の結晶面が現われてよい。
図8(c)において実線で示すように、エッチングの初期においては、断面視において、第1結晶面3s及び第2結晶面3tを脚とする台形状に凹部が形成される。その後、エッチングが更に進むと、点線及び矢印で示すように、台形の脚が延びるようにエッチングが進む。そして、脚同士が互いに接すると、エッチングの速度は急激に低下する(別の観点では、基本的にエッチングは停止する。)。
第2開口153bの径(凹部11aの開口面の径)は、上記のようにエッチングの進行が停止するときの凹部11aの深さが比較的浅くなるように(例えば駆動腕11の厚さの半分未満となるように)、比較的小さく設定されている。一方、第1開口153aの径は、例えば、上記のようなエッチングの停止が生じる前に、両面の凹部が連通されて貫通孔が形成されるように比較的大きく設定されている。
従って、第1開口153aを介したエッチングによって圧電体3の周囲部分には貫通孔が形成され、その一方で、第2開口153bを介したエッチングでは駆動腕11には、貫通孔ではなく、凹部11aが形成される。
なお、第1開口153a及び第2開口153bの具体的な寸法は、圧電基板151の厚み、これらの開口の形状、及び、水晶のカット角(エッチングによって現れる結晶面)等に応じて適宜に設定されてよい。長時間に亘るエッチングにおいては、図8(c)において2点鎖線で示すように、エッチングマスク153の真下の領域がエッチングされる(アンダーカットが生じる)こともある。また、第1結晶面3s及び第2結晶面3tもエッチングされ、他の結晶面が現れることもある。第2開口153b及び第1開口153aの形状及び径は、このような事情も考慮した上で設定されてもよい。例えば、第1開口153aは、x軸と平行な向きの大きさが40〜70μmとなっている。第2開口153bは、x軸と平行な向きの大きさが2〜5μmとなっており、y軸と平行な向きの大きさが5〜20μmとなっている。
エッチングが完了すると、エッチングマスク153は除去される。
その後、図8(d)に示すように、第1励振電極5Aが形成される部分に開口が形成された成膜用マスク155を形成し、その開口を介して導電材料を成膜する(成膜ステップ)。これにより、第1励振電極5Aを形成する。成膜用マスク155の開口は、複数の凹部11aに亘る広さを有しており、第1励振電極5Aは、複数の凹部11aに亘って設けられるとともに複数の凹部11aの内部表面に設けられる。第1励振電極5Aが形成されると、成膜用マスク155は除去される。
なお、成膜用マスク155の材料及び形成方法、成膜用マスク155を介した成膜方法等は公知の方法と同様でよい。特に図示しないが、第1励振電極5Aの成膜の前、後又は同時に、第1励振電極5Aと同様にして、第2励振電極5B及び検出電極7も成膜される。
以上のとおり、本実施形態では、センサ素子1は、圧電体3と、圧電体3の駆動腕11の表面に設けられた励振電極5と、検出腕13の表面に設けられた検出電極7と、を有している。駆動腕11の一の面(例えばz軸方向の正側の面)には複数の凹部11aが形成されている。第1励振電極5Aは、複数の凹部11aの配置範囲に亘って設けられているとともに複数の凹部11aの内部表面に設けられている。
従って、例えば、複数の凹部11aが形成されない場合に比較して、第1励振電極5Aの電極面積が確保される。その結果、例えば、等価直列抵抗値を小さくすることができる。等価直列抵抗値を小さくすることにより、例えば、駆動腕11に対して電圧を印加し始めてから駆動腕11の振動が安定化するまでの時間(起動時間)が短くなる。起動時間が短くなることにより、例えば、必要に応じて角速度センサを起動する運用が可能となる。
また、本実施形態では、複数の凹部11aは、駆動腕11の延在方向に並べられている。
従って、例えば、駆動腕11のうちの凹部11a間の部分は、第1励振電極5Aのうちの各凹部11aの壁面に形成された部分に挟まれる。その結果、例えば、凹部11aに挟まれた部分に第1励振電極5Aから第2励振電極5Bへの電界が形成されやすくなる。また、例えば、凹部11aは、長尺の駆動腕11に沿って延びる形状ではないことから、その最大径が小さくされる。その結果、例えば、長時間のエッチングによって凹部11aが貫通孔とされるおそれが低減される。
また、本実施形態では、複数の凹部11aは、複数列で駆動腕11の延在方向に並べられている。
従って、上記の電極面積の増大の効果、凹部11a間における電界形成の容易化、及び、凹部11aが貫通孔とされるおそれの低減の効果等が一層奏される。
また、本実施形態では、複数の凹部11aそれぞれの深さは、1μm以上である。
従って、複数の凹部11aが設けられている表面は、水晶片の一般的な表面粗さ(例えば、nmオーダー)と比較し明らかに大きくなっている。このため、第1励振電極5Aの電極面積をより大きくすることができる。この結果、例えば、等価直列抵抗値をより小さくすることが可能となり、駆動腕11に対して電圧を印加し始めてから駆動腕11の振動が安定するまでの時間(起動時間)を短くすることができる。
また、本実施形態では、4本以上の偶数本のみの駆動腕11が、所定の対称軸(中心線CL0)に平行に延び、中心線CL0の側方に並べられ、中心線CL0に対して線対称に配置されている。また、2本以上の偶数本のみの検出腕13が、駆動腕11とは反対方向に延び、駆動腕11の並び方向(x軸方向)に並べられ、中心線CL0に対して線対称に配置されている。励振回路103は、線対称の一方側の複数の駆動腕(11A及び11B)がx軸方向において互いに同一側へ共に変形するようにこれら駆動腕11を互いに同一の位相で励振し、線対称の他方側の複数の駆動腕(11C及び11D)がx軸方向において互いに同一側へ共に変形するようにこれら駆動腕11を互いに同一の位相で励振し、線対称の一方側の複数の駆動腕(11A及び11B)と、線対称の他方側の複数の駆動腕(11C及び11D)とが、x軸方向において互いに逆側に変形するように、線対称の一方側の複数の駆動腕11と線対称の他方側の複数の駆動腕11とを互いに逆の位相で励振する。別の観点では、センサ素子1は、偶数本の駆動腕11間で互いに同一の位置に設けられた複数の第1励振電極5Aと、偶数本の駆動腕11間で互いに同一の位置に設けられ、複数の第1励振電極5Aとの間に電圧が印加されることにより、偶数の駆動腕11をその並び方向に励振可能な複数の第2励振電極5Bと、を有し、線対称の一方側の複数の駆動腕11における複数の第1励振電極5A、及び、線対称の他方側の複数の駆動腕11における複数の第2励振電極5Bは互いに接続されており、線対称の一方側の複数の駆動腕11における複数の第2励振電極5B、及び、線対称の他方側の複数の駆動腕11における複数の第1励振電極5Aは互いに接続されている。
上記のような構成においては、さらに起動時間を短くすることができる(例えば、20ms〜50ms)。この起動時間が短くなる理由としては、例えば、以下の事項が考えられる。駆動腕11の本数が比較的多く設けられ、ひいては、駆動腕11同士が比較的近くに配置されることから、複数の駆動腕11は振動に関して相互影響が比較的大きい(独立に振動し難い)。その結果、唸りが早期に収束する。また、並列に電圧印加がなされる駆動腕11の本数が比較的多くされることから、全体としての抵抗値(共振インピーダンス、R1、CI)が低下する。起動時間は抵抗値に依存するから、抵抗値の低下によって起動時間が短くなる。また、複数の駆動腕11は、線対称に配置され、線対称の一方側と他方側とで互いに逆方向に湾曲するように振動されるから、基部9の中央が振動の節となる。換言すれば、比較的多く設けられた駆動腕11に対して振動の節が共通化される。その結果、複数の駆動腕11が独立に振動することが抑制され、振動が早期に安定する。
また、本実施形態では、センサ素子1の製造方法は、エッチングマスク153の第1開口153aを介して圧電基板151(圧電体)をエッチングして貫通孔を形成することにより、基部9並びに基部9から延びる駆動腕11及び検出腕13を形成するエッチングステップ(図8(a)及び図8(b))と、エッチングステップにより形成された駆動腕11の表面に励振電極5を形成する成膜ステップ(図8(d))と、を有している。エッチングマスク153は、駆動腕11となる部分と重なり、第1開口153aよりも径が小さい複数の第2開口153bを有する。エッチングステップでは、第1開口153aを介した圧電基板151のエッチングと同時に、第2開口153bを介して駆動腕11となる部分をエッチングすることにより、駆動腕11に複数の凹部11aを形成する。成膜ステップでは、複数の凹部11aに亘って、且つ、複数の凹部11aの内部表面に第1励振電極5Aを成膜する。
従って、例えば、上述の種々の効果を奏する凹部11aを駆動腕11等の外縁の形成と同時に形成することができる。その結果、例えば、製造コストが削減される。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
本発明の駆動腕に設けられる複数の凹部は、駆動腕及び検出腕を有するあらゆる角速度センサに適用可能である。従って、角速度センサの基本構成(例えば、駆動腕及び検出腕の本数、位置及び形状、並びに、電極の位置及び接続関係)は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、角速度センサは、実施形態と同様に、y軸方向の互いに逆側に延びる1以上の駆動腕及び1以上の検出腕を含む圧電体を有し、実施形態とは異なり、x軸又はz軸の回転を検出するように電極及び回路が構成されたものであってもよい。また、例えば、角速度センサは、y軸方向の同一側に延びる1以上の駆動腕及び1以上の検出腕を含む圧電体を有し、x軸回り、y軸回り又はz軸回りの回転を検出するように電極及び回路が構成されたものであってもよい。駆動腕及び検出腕の一方が他方に対して傾斜するものであってもよい。駆動腕及び検出腕の本数も適宜に設定されてよい。
複数の凹部の数、配置、形状及び大きさも適宜に設定されてよい。例えば、複数の凹部は、ランダムに分散されて配置されてもよいし、1列、又は、3列以外の複数列で駆動腕の延在方向に配列されてもよいし、駆動腕の幅方向にのみ配列されてもよいし、隣り合う列同士で位置が互いに違いとなるように(千鳥状に)配列されてもよいし、ピッチが変化してもよい。また、複数の凹部は、形状、開口面積及び/又は深さが互いに異なっていてもよい。
実施形態では、駆動腕に凹部が形成されたが、駆動腕に代えて又は加えて検出腕に凹部が形成されてもよい。
複数の凹部の形成方法は、貫通孔を形成するエッチングと同時にエッチングを行うものに限定されない。例えば、貫通孔を形成するエッチングとは別に凹部を形成するエッチングが行われてもよいし、切削乃至はレーザ加工が行われてもよい。