以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に向かう方向、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド面3を示す平面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、複数の溝10が形成されており、複数の溝10としては、タイヤ周方向に延びる周方向溝21と、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝22とが、それぞれ複数形成されている。本実施形態では、周方向溝21は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道線CLの両側に2本ずつが配設され、合計で4本が設けられている。また、幅方向溝22は、隣り合う周方向溝21同士の間や、タイヤ幅方向における最外側の2本の周方向溝21のタイヤ幅方向外側に配設され、複数がこれらの位置でタイヤ周方向に並んで設けられている。
また、各幅方向溝22は、周方向溝21に交差しており、即ち、端部が周方向溝21に連通している。つまり、隣り合う周方向溝21同士の間に配設される幅方向溝22は、当該幅方向溝22のタイヤ幅方向における両側に位置する周方向溝21に対して交差することにより、タイヤ幅方向における両端がそれぞれ周方向溝21に連通している。また、タイヤ幅方向における最外側の2本の周方向溝21のタイヤ幅方向外側に配設される幅方向溝22は、当該幅方向溝22のタイヤ幅方向内側に位置する周方向溝21に対して交差することにより、タイヤ幅方向における内側端部が周方向溝21に連通している。
トレッド面3には、周方向溝21と幅方向溝22とによって画成される陸部5が複数形成されている。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、このように陸部5が周方向溝21と幅方向溝22とによって画成されるため、溝10によってトレッド面3に形成されるトレッドパターンが、いわゆるブロックパターンになっている。
これらのように形成される溝10のうち、周方向溝21は、開口部の溝幅が8mm以上15mm以下の範囲内になっており、溝深さが9mm以上30mm以下の範囲内になっている。また、幅方向溝22は、溝幅が3mm以上15mm以下の範囲内になっており、溝深さが9mm以上30mm以下の範囲内になっている。また、周方向溝21と幅方向溝22とは、溝深さが同等の溝深さになっている。具体的には、周方向溝21と幅方向溝22とは、溝深さの差が、少なくとも一方の溝深さを基準として±10%の範囲内になっており、溝深さの差は±5%の範囲内であるのが好ましい。
なお、周方向溝21は、タイヤ周方向に沿って直線的に形成されていなくてもよく、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲したり湾曲したりしていてもよい。また、幅方向溝22は、タイヤ幅方向に沿って直線的に形成されていなくてもよく、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に傾斜したり、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に屈曲したり湾曲したりしていてもよい。また、周方向溝21は、内部にスリップサインであるトレッドウェアインジケータ表示義務を有する、いわゆる周方向主溝のみでなく、トレッドウェアインジケータ表示義務を有さずに、タイヤ周方向に延びる溝10も含まれる。また、トレッド面3に溝10は、周方向溝21と幅方向溝22の他に、これらの溝10以外の溝10が形成されていてもよい。
図2は、図1のA部詳細図である。トレッド面3に複数形成される幅方向溝22は、周方向溝21をタイヤ幅方向に貫通しておらず、1つの周方向溝21に対してタイヤ幅方向における両側から接続される複数の幅方向溝22は、タイヤ周方向における位置が全て異なる位置に配設されている。このため、互いに交差する周方向溝21と幅方向溝22とは、T字状に交差している。
図3は、図2のB-B断面及びC-C断面図である。周方向溝21と幅方向溝22とは、これらの溝10の延在方向に見た際における形状が、同等の形状で形成されている。以下の説明では、代表して周方向溝21を用いて説明する。周方向溝21は、対向する溝壁11がそれぞれ屈曲部14を有しており、屈曲部14を有することによって段付き部17を有して形成されている。具体的には、周方向溝21の溝壁11は、屈曲部14として、溝壁11における開口部13から連続する部分に形成される第1屈曲部15と、溝壁11における溝底12から連続する部分に形成される第2屈曲部16とを有している。
溝壁11において、第1屈曲部15から開口部13側に向かって形成される部分は、溝深さ方向に近い角度で形成されており、第1屈曲部15から溝底12側に向かって形成される部分は、溝幅方向に近い角度で形成されており、第1屈曲部15は、溝壁11におけるこれらの角度が異なる部分の交差部になっている。また、溝壁11において、第2屈曲部16から開口部13側に向かって形成される部分は、溝幅方向に近い角度で形成されており、第2屈曲部16から溝底12側に向かって形成される部分は、溝深さ方向に近い角度で形成されており、第2屈曲部16は、溝壁11におけるこれらの角度が異なる部分の交差部になっている。
また、第1屈曲部15と第2屈曲部16とは、溝深さ方向における位置がほぼ同じ位置になっており、第1屈曲部15よりも第2屈曲部16の方が、溝幅方向内側に位置している。このため、溝壁11における第1屈曲部15と第2屈曲部16との間の部分は、トレッド面3に対して平行に近い角度で形成された段付き部17になっており、周方向溝21の溝壁11は、トレッド面3対してほぼ平行な段付き部17を有するひな壇形状で形成されている。
これらのように、溝壁11の屈曲部14は、第1屈曲部15よりも第2屈曲部16の方が溝幅方向内側に位置しているため、周方向溝21は、屈曲部14よりも溝底12側の溝幅が、周方向溝21の開口部13の溝幅W1よりも狭くなっており、屈曲部14よりも溝底12側の部分は、溝幅が開口部13の溝幅W1よりも狭い幅で形成される幅狭部18になっている。換言すると、周方向溝21の溝壁11は、屈曲部14よりも溝底12側に位置する部分が、屈曲部14よりも開口部13側に位置する部分に対して、溝幅方向内側にせり出しており、溝壁11においてこのように溝幅方向内側にせり出している部分が、幅狭部18を形成している。なお、ここでいう溝幅方向内側とは、溝幅方向における中心側に向かう方向をいう。
また、周方向溝21は、開口部13の溝幅W1と、開口部13から溝底12までの溝深さHgの1/2の位置での溝幅W2との関係が、0<(W2/W1)≦0.5の範囲内になっている。本実施形態では、周方向溝21の溝深さHgの1/2の位置に第2屈曲部16が位置しているため、開口部13から溝底12までの溝深さHgの1/2の位置での溝幅W2は、第2屈曲部16の位置での溝幅W2になっている。
周方向溝21及び幅方向溝22の形状について、代表して周方向溝21を用いて説明したが、幅方向溝22も周方向溝21と同様の形状で形成されている。つまり、幅方向溝22も周方向溝21と同様に、屈曲部14として第1屈曲部15と第2屈曲部16とを有することにより幅狭部18を有しており、溝壁11に段付き部17が形成されている。これにより、幅方向溝22も、溝壁11がひな壇形状で形成されている。また、幅方向溝22も周方向溝21と同様に、開口部13の溝幅W1と、開口部13から溝底12までの溝深さHgの1/2の位置での溝幅W2との関係が、0<(W2/W1)≦0.5の範囲内になっている。
なお、周方向溝21や幅方向溝22の溝壁11に形成される屈曲部14は、それぞれ溝底12から開口部13側に向かって溝深さHgの30%以上60%以下の範囲内に位置するのが好ましい。
本実施形態では、陸部5における周方向溝21と幅方向溝22とが交差する角部に、面取り部6が形成されている。詳しくは、面取り部6は、幅方向溝22における周方向溝21に連通する部分の溝壁11に形成されている。幅方向溝22の溝壁11の面取り部6は、幅方向溝22における周方向溝21に連通する部分の近傍において、周方向溝21から離れた位置から周方向溝21に近付くに従って、幅方向溝22の溝幅が広がる形態で形成されている。幅方向溝22における周方向溝21に連通する部分に形成される面取り部6も、溝壁11の形状が面取り部6以外の溝壁11の形状と同様の形状で形成されている。即ち、面取り部6の溝壁11も、溝壁11に屈曲部14が形成されており、トレッド面3対してほぼ平行な段付き部17を有するひな壇形状で形成されている。
図4は、図2のD詳細図であり、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25についての説明図である。周方向溝21と幅方向溝22との交差部25には、周方向溝21や幅方向溝22の溝壁11から離間し、溝底12から突出する突起部30が設けられている。ここでいう交差部25は、周方向溝21に対して幅方向溝22が連通している位置において、周方向溝21の溝幅方向に亘って幅方向溝22の開口幅Woで幅方向溝22を延長することによりなる領域になっている。この場合における幅方向溝22の開口幅Woは、面取り部6も含んだ寸法になっている。
突起部30は、少なくとも一部が周方向溝21と幅方向溝22との交差部25に位置して形成されている。本実施形態では、突起部30は、平面視において台形状の形状で形成されている。台形状に形成される突起部30は、2本の底辺が周方向溝21の延在方向に平行な向きになり、且つ、2本の底辺のうち短い側の底辺が、周方向溝21における幅方向溝22が連通している側に位置する向きで配設されている。なお、この場合における平面視とは、溝10を溝深さ方向に見ることを示す。
図5は、図4のE-E断面図である。突起部30は、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25の溝底12から周方向溝21の開口部13側に向かって突出して形成されており、溝底12からの高さH1が、屈曲部14を有する溝10の屈曲部14から溝底12までの溝深さH0に対して、0.03≦(H1/H0)≦2.0の範囲内になっている。屈曲部14から溝底12までの溝深さH0は、周方向溝21と幅方向溝22との双方の溝10が屈曲部14を有する場合において屈曲部14から溝底12までの溝深さがそれぞれの溝10で異なる場合は、突起部30が設けられる溝底12に対して直接接続される溝壁11に設けられる屈曲部14から溝底12までの溝深さと、突起部30の高さH1とを比較するのが好ましい。
また、突起部30は、溝底12からの高さH1が、交差部25の位置での溝10の開口部13から溝底12までの溝深さHgに対して、0.1≦(H1/Hg)≦0.4の範囲内になっている。さらに、突起部30の高さH1は、1mm以上の高さを有している。また、突起部30は、溝底12に接続されている部分の形状と同じ形状で溝底12側から開口部13側に向かって突出しており、このため、突起部30の側面32は、溝10の溝深さ方向に延びる面になっている。
また、突起部30は、突起部30の先端部31から溝底12側に向かって突起部30の高さH1の0%以上30%以下の範囲Rp内の位置における、溝10の溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14を有する溝10の屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、1.2d1≧d2となる部分を少なくとも1箇所有している。
この場合における突起部30の先端部31は、突起部30における溝底12側の端部の反対側に位置する端部になっている。また、突起部30に対して最短距離d2となる溝壁11は、周方向溝21の溝壁11と幅方向溝22の溝壁11とのいずれでもよい。また、屈曲部14の位置での溝幅d1は、周方向溝21と幅方向溝22との双方の溝10が屈曲部14を有する場合において屈曲部14の位置での溝幅が異なる場合は、屈曲部14の位置での溝幅が大きい方の溝幅d1と最短距離d2とを比較するのが好ましい。
さらに、突起部30は、突起部30に対向する全ての溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、0<(d2/d1)≦1.5の範囲内で形成されるのが好ましい。つまり、突起部30は、突起部30に対向するいずれの溝壁11に対しても、先端部31から溝底12側に向かって突起部30の高さH1の0%以上30%以下の範囲Rp内の位置における溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、0<(d2/d1)≦1.5の範囲内で形成されるのが好ましい。
図6は、図2のD詳細図であり、突起部30と溝壁11との位置関係を円41を用いて規定する際の説明図である。突起部30は、溝10の平面視において対向する2つの溝壁11における屈曲部14よりも溝底12側の位置と、突起部30とに接する仮想の円41を設定した際に、当該円41の直径φdpが、屈曲部14を有する溝10の屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、0<(φdp/d1)≦1.2の範囲内になっている。つまり、突起部30は、溝10の幅狭部18の溝壁11との間に形成される空間の大きさが、屈曲部14を有する溝10の幅狭部18の溝幅に対して所定の範囲内になっている。なお、この場合における、円41が接する2つの溝壁11は、平行な溝壁11でなくてもよく、例えば、周方向溝21における幅方向溝22が連通する側の反対側の溝壁11と、幅方向溝22における面取り部6の溝壁11とであってもよい。
図7は、図6のF-F詳細図であり、突起部30の高さを円42を用いて規定する際の説明図である。突起部30は、周方向溝21と幅方向溝22との溝壁11のうち、突起部30の少なくとも一部を挟んで対向する2つの溝壁11と、突起部30の先端部31とに接する仮想の円42を設定した際に、当該円42の直径φdcが、屈曲部14を有する溝10における対向する屈曲部14同士の、円42と同一平面上での距離d4に対して、0<(φdc/d4)≦1.2の範囲内になっている。つまり、突起部30は、突起部30が設けられる溝底12からの高さH1が、突起部30を挟んで対向する2つの溝壁11との間隔に対して所定の範囲内になっている。なお、この場合における、円42が接する2つの溝壁11は、図2、図7で示す周方向溝21の溝壁11と、幅方向溝22における面取り部6の溝壁11とのように、平行な溝壁11でなくてもよい。
さらに、1つの溝10には、突起部30が複数設けられるが、隣り合う突起部30同士の距離Lp(図2参照)は、屈曲部14の位置での溝幅d1との関係が、(Lp/d1)≧5であるのが好ましい。
これらのように構成される本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、用途が重荷重用空気入りタイヤになっている。この空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で車両に装着する。リムホイールにリム組みした状態の空気入りタイヤ1は、例えばトラックやバス等の大型の車両に装着して使用される。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド面3と路面との間の水が周方向溝21や幅方向溝22等の溝10に入り込み、これらの溝10でトレッド面3と路面との間の水を排出しながら走行する。これにより、トレッド面3は路面に接地し易くなり、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
図8は、溝10に石50が入り込んだ状態を示す模式図である。車両が走行する路面には、石50が落ちていることがあり、車両の走行時には、このような路面上の石50が、トレッド面3の溝10に入り込むことがある。特に、車両によっては、アスファルト等によって舗装されずに多くの石が散在する、いわゆるオフロードを走行するものもあり、オフロード走行時には、より石50が周方向溝21や幅方向溝22等の溝10に入り易くなる。例えば、周方向溝21は、空気入りタイヤ1の回転時に路面に対して開口し続けるため、路面上の石50のタイヤ幅方向における位置と、周方向溝21の位置とが重なった場合には、この石50は周方向溝21に入り込む。また、幅方向溝22は、タイヤ幅方向に延在するため、トレッド面3の接地領域における広い領域で、石50の位置と幅方向溝22の位置とが重なり易くなっており、石50の位置と幅方向溝22の位置とが重なった場合には、この石50は幅方向溝22に入り込む。
これらのように、路面上の石50は、周方向溝21や幅方向溝22に入り込むことがあるが、これらの溝10は溝壁11に屈曲部14が形成されており、屈曲部14よりも溝底12の溝幅は、溝10の開口部13の溝幅よりも狭くなっている。このため、周方向溝21や幅方向溝22に入り込んだ石50は、屈曲部14の位置よりも溝底12側に入り込み難くなっている。具体的には、周方向溝21や幅方向溝22に入り込んだ石50は、溝壁11に屈曲部14が形成されることにより形成される段付き部17に接触し、段付き部17よりも幅狭部18側には入り込み難くなっている。これにより、周方向溝21や幅方向溝22に入り込んだ石50は、溝底12まで到達し難くなっており、溝10に入り込んだ石50が溝底12に食い込んで溝底12が損傷をする、いわゆるストンドリリングの発生を抑制することができる。
図9は、溝10の交差部25に石50が入り込んだ状態を示す模式図である。溝10の溝壁11に屈曲部14が形成される場合でも、周方向溝21と幅方向溝22とが交差する交差部25は、平面視における溝底12の面積が大きくなるため、溝10に入り込んだ石50は屈曲部14よりも溝底12側に向かい、溝底12まで到達し易くなる。これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25には、溝底12から突出する突起部30が設けられているため、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25に入り込んだ石50は突起部30に接触し、溝底12に直接接触し難くなっている。これにより、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25に入り込んだ石50は、平面視における溝底12の面積が大きい交差部25においても溝底12まで到達し難くなっており、交差部25に入り込んだ石50によってストンドリリングが発生することを抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性を向上させることができる。
また、周方向溝21と幅方向溝22とが同等の溝深さである場合、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25は、溝底12の面積が大きくなり易くなり、石50が入り込み易くなるが、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、交差部25に突起部30が設けられているため、交差部25に入り込んだ石50が溝底12まで到達するのを抑制することができる。これにより、周方向溝21と幅方向溝22との溝深さが同等であることにより石50が入り込み易い交差部25でのストンドリリングを抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、突起部30は、先端部31から溝底12側に向かって突起部30の高さH1の0%以上30%以下の範囲Rp内の位置における溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して1.2d1≧d2となる部分を少なくとも1箇所有するため、交差部25に入り込んだ石50が溝底12へ到達することを、より確実に抑制することができる。つまり、突起部30と溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して1.2d1≧d2となる部分を有さない場合は、突起部30のいずれの部分も溝壁11から離れ過ぎているため、交差部25に入り込んだ石50が突起部30と溝壁11との間に入り込み易くなる虞がある。この場合、交差部25に入り込んだ石50の溝底12への到達を、突起部30によって抑制し難くなる虞がある。
これに対し、突起部30と溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して1.2d1≧d2となる少なくとも1箇所有する場合は、交差部25に入り込んだ石50は、突起部30に接触し易くなるため、交差部25に入り込んだ石50が溝底12へ到達することを、突起部30によってより確実に抑制することができ、ストンドリリングの発生をより確実に抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、突起部30は、突起部30に対向する全ての溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、0<(d2/d1)≦1.5の範囲内で形成されるため、交差部25に入り込んだ石50の溝底12側への移動を、突起部30によってより確実に抑制することができる。つまり、突起部30に対向する全ての溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して(d2/d1)>1.5となる部分を有する場合は、突起部30と溝壁11との距離が大きい部分を有することになるため、交差部25に入り込んだ石50が、この突起部30と溝壁11との距離が大きい部分に入り込み易くなる虞がある。この場合、交差部25に入り込んだ石50の溝底12への到達を、突起部30によって抑制し難くなる虞がある。
これに対し、突起部30に対向する全ての溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、0<(d2/d1)≦1.5の範囲内である場合は、交差部25に入り込んだ石50の溝底12側への移動を、突起部30によってより確実に抑制することができ、ストンドリリングの発生をより確実に抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、突起部30は、溝底12からの高さH1が、屈曲部14を有する溝10の屈曲部14から溝底12までの溝深さH0に対して、0.03≦(H1/H0)≦2.0の範囲内であるため、交差部25に入り込んだ石50によって溝底12が損傷することを、突起部30によってより確実に継続的に抑制することができる。つまり、突起部30の高さH1が、屈曲部14から溝底12までの溝深さH0に対して、(H1/H0)<0.03である場合は、溝10の交差部25に入り込んだ石50が突起部30に接触して突起部30自体が損傷した際に、突起部30の高さH1が低過ぎるため、石50による損傷が溝底12まで及んでしまうことを抑制するのが困難になる虞がある。また、突起部30の高さH1が、屈曲部14から溝底12までの溝深さH0に対して、(H1/H0)>2.0である場合は、突起部30の高さH1が高過ぎるため、突起部30の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、溝10の交差部25に入り込んだ石50が突起部30に接触した際に、石50から付与される力によって突起部30に欠けやもげが発生する虞があり、交差部25に入り込んだ石50の溝底12への到達を、突起部30によって継続的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、突起部30の高さH1が、屈曲部14から溝底12までの溝深さH0に対して、0.03≦(H1/H0)≦2.0の範囲内である場合は、溝10の交差部25に入り込んだ石50が突起部30に接触した際に突起部30に欠けやもげが発生することを抑制することができ、交差部25に入り込んだ石50によって溝底12が損傷することを、突起部30によってより確実に継続的に抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、突起部30は、溝底12からの高さH1が、交差部25の位置での開口部13から溝底12までの溝深さHgに対して、0.1≦(H1/Hg)≦0.4の範囲内であるため、交差部25に入り込んだ石50によって溝底12が損傷することを、突起部30によってより確実に継続的に抑制することができる。つまり、突起部30の高さH1が、交差部25の位置での溝10の溝深さHgに対して、(H1/Hg)<0.1である場合は、溝10の交差部25に入り込んだ石50が突起部30に接触して突起部30自体が損傷した際に、突起部30の高さH1が低過ぎるため、石50による損傷が溝底12まで及んでしまうことを抑制するのが困難になる虞がある。また、突起部30の高さH1が、交差部25の位置での溝10の溝深さHgに対して、(H1/Hg)>0.4である場合は、突起部30の高さH1が高過ぎるため、突起部30の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、溝10の交差部25に入り込んだ石50が突起部30に接触した際に、石50から付与される力によって突起部30に欠けやもげが発生する虞があり、交差部25に入り込んだ石50の溝底12への到達を、突起部30によって継続的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、突起部30の高さH1が、交差部25の位置での溝10の溝深さHgに対して、0.1≦(H1/Hg)≦0.4の範囲内である場合は、溝10の交差部25に入り込んだ石50が突起部30に接触した際に突起部30に欠けやもげが発生することを抑制することができ、交差部25に入り込んだ石50によって溝底12が損傷することを、突起部30によってより確実に継続的に抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、屈曲部14を有する溝10は、開口部13の溝幅W1と、溝深さHgの1/2の位置での溝幅W2との関係が、0<(W2/W1)≦0.5の範囲内であるため、溝10に入り込んだ石50が溝底12に到達することを、より確実に抑制することができる。つまり、溝深さHgの1/2の位置での溝幅W2が、開口部13の溝幅W1に対して(W2/W1)>0.5である場合は、溝深さHgの1/2の位置での溝幅W2が大き過ぎるため、溝10に屈曲部14を設けても、溝10に入り込んだ石50が溝底12に到達することを抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、溝深さHgの1/2の位置での溝幅W2が、開口部13の溝幅W1に対して、0<(W2/W1)≦0.5の範囲内である場合は、溝10に入り込んだ石50が溝底12に到達することを、溝10に設けた屈曲部14によってより確実に抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、屈曲部14は、溝底12から開口部13側に向かって溝深さHgの30%以上60%以下の範囲内に位置するため、排水性の低下を抑制しつつ、溝底12の損傷をより確実に抑制することができる。つまり、屈曲部14の位置が、溝底12から開口部13側に向かって溝深さHgの30%未満である場合は、屈曲部14の位置が溝底12に近付き過ぎるため、溝10に入り込んだ石50を屈曲部14の位置で適切に食い止めるのが困難になる虞がある。この場合、石50が溝底12に対して大きな力で接触する虞があり、溝10に入り込んだ石50による溝底12の損傷を抑制するのが困難になる虞がある。また、屈曲部14の位置が、溝底12から開口部13側に向かって溝深さHgの60%を超える場合は、屈曲部14の位置が開口部13に近付き過ぎるため、幅狭部18の範囲が大きくなり過ぎ、溝10の容積が小さくなり過ぎる虞がある。この場合、溝10に入り込む水の量が少なくなるため、溝10による排水性が低下し、濡れた路面を走行する際における操縦安定性であるウェット操安性が低下する虞がある。
これに対し、屈曲部14の位置が、溝底12から開口部13側に向かって溝深さHgの30%以上60%以下の範囲内に位置する場合は、排水性の低下を抑制しつつ、溝10に入り込んだ石50をより確実に屈曲部14の位置で食い止めることができ、溝底12が石50によって損傷することをより確実に抑制することができる。この結果、ウェット操安性の低下を抑制しつつ、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、突起部30は、対向する2つの溝壁11における屈曲部14よりも溝底12側の位置と、突起部30とに接する円41の直径φdpが、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、0<(φdp/d1)≦1.2の範囲内であるため、交差部25に入り込んだ石50の溝底12側への移動を、突起部30によってより確実に抑制することができる。つまり、2つの溝壁11と突起部30とに接する円41の直径φdpが、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、(φdp/d1)>1.2である場合は、円41の直径φdpが屈曲部14の位置での溝幅d1に対して大き過ぎる虞があり、即ち、溝壁11と突起部30との距離が大き過ぎる虞がある。この場合、交差部25に入り込んだ石50が突起部30と溝壁11との間に入り込み易くなる虞があり、交差部25に入り込んだ石50の溝底12への到達を、突起部30によって抑制し難くなる虞がある。
これに対し、2つの溝壁11と突起部30とに接する円41の直径φdpが、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して、0<(φdp/d1)≦1.2の範囲内である場合は、交差部25に入り込んだ石50の溝底12側への移動を、突起部30によってより確実に抑制することができ、ストンドリリングの発生をより確実に抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、突起部30は、突起部30の少なくとも一部を挟んで対向する2つの溝壁11と、突起部30の先端部31とに接する円42の直径φdcが、屈曲部14を有する溝10における対向する屈曲部14同士の、円42と同一平面上での距離d4に対して、0<(φdc/d4)≦1.2の範囲内であるため、交差部25に入り込んだ石50によって溝底12が損傷することを、突起部30によってより確実に継続的に抑制することができる。つまり、2つの溝壁11と、突起部30の先端部31とに接する円42の直径φdcが、円42と同一平面上での屈曲部14同士の距離d4に対して、(φdc/d4)>1.2である場合は、円42の直径φdcが、円42と同一平面上での屈曲部14同士の距離d4に対して大き過ぎる虞があり、即ち、屈曲部14の位置に対して突起部30の高さH1が高過ぎる虞がある。この場合、突起部30の剛性が低くなり過ぎて、石50が突起部30に接触した際に突起部30に欠けやもげが発生する虞があり、交差部25に入り込んだ石50の溝底12への到達を、突起部30によって継続的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、2つの溝壁11と、突起部30の先端部31とに接する円42の直径φdcが、円42と同一平面上での屈曲部14同士の距離d4に対して、0<(φdc/d4)≦1.2の範囲内である場合は、溝10の交差部25に入り込んだ石50が突起部30に接触した際に突起部30に欠けやもげが発生することを抑制することができ、交差部25に入り込んだ石50によって溝底12が損傷することを、突起部30によってより確実に継続的に抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、隣り合う突起部30同士の距離Lpは、溝10の屈曲部14の位置での溝幅d1との関係が、(Lp/d1)≧5であるため、溝10の排水性が低下したり、耐久性が低下し易くなったりすることを抑制することができる。つまり、隣り合う突起部30同士の距離Lpが、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して(Lp/d1)<5である場合は、隣り合う突起部30同士の距離Lpが小さ過ぎるため、当該突起部30が設けられる溝10の排水性が低下する虞がある。また、隣り合う突起部30同士の距離Lpが小さ過ぎるということは、換言すると、突起部30の数が多いことになり、使用されるゴムの量が多いことになる。ゴムの量が多いと、空気入りタイヤ1の回転時に発熱し易くなるため、発熱によってゴムが劣化し易くなり、耐久性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、隣り合う突起部30同士の距離Lpが、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して(Lp/d1)≧5である場合は、隣り合う突起部30同士の距離Lpが小さくなり過ぎることを抑制でき、溝10の排水性が低下したり、耐久性が低下し易くなったりすることを抑制することができる。この結果、ウェット操安性の低下と耐久性の低下とを抑制しつつ、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
〔変形例〕
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、突起部30は、溝底12に接続されている部分の形状と同じ形状で溝底12側から開口部13側に向かって突出しているが、突起部30は、溝10の溝深さ方向における位置によって形状が異なっていてもよい。図10は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、突起部30の側面32が傾斜する場合の説明図である。周方向溝21と幅方向溝22との交差部25に設けられる突起部30は、図10に示すように、側面32が溝10の溝深さ方向に対して傾斜して形成されていてもよい。つまり、突起部30は、溝底12側から溝10の開口部13側に向かうに従って、平面視における面積が小さくなるように形成されていてもよい。または、突起部30は、先端部31が平坦な平面でなく、例えば、溝10の開口部13側に向かって凸となるような曲面状の形状で形成されていてもよい。これらの場合でも、突起部30は、先端部31から溝底12側に向かって突起部30の高さH1の0%以上30%以下の範囲Rp内の位置における溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して1.2d1≧d2となる部分を少なくとも1箇所有したり、突起部30に対向する全ての溝壁11との最短距離d2が0<(d2/d1)≦1.5の範囲内で形成されたりしていればよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、突起部30と溝壁11との最短距離d2は、屈曲部14の位置での溝幅d1と比較することによって、突起部30と溝壁11との相対関係を規定しているが、突起部30と溝壁11との相対関係は、これ以外の基準で規定してもよい。例えば、突起部30は、突起部30の先端部31から溝底12側に向かって突起部30の高さH1の0%以上30%以下の範囲Rp内の位置における溝壁11との最短距離d2が、屈曲部14を有する溝10における、溝底12から開口部13側に向かって溝深さHgの30%以上60%以下の範囲Rg(図10参照)内の位置での最小幅d3に対して、1.2d3≧d2となる部分を少なくとも1箇所有していればよい。このように、突起部30と溝壁11との最短距離d2が、溝10の溝深さHgの30%以上60%以下の範囲Rg内の位置での最小幅d3に対して、1.2d3≧d2となる部分を少なくとも1箇所有することにより、交差部25に入り込んだ石50が溝底12へ到達することを、突起部30によってより確実に抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性をより確実に向上させることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向溝21と幅方向溝22とは、第1屈曲部15と第2屈曲部16との2箇所の屈曲部14を有することにより、溝壁11がひな壇形状で形成されているが、周方向溝21と幅方向溝22とは、これ以外の形状で形成されていてもよい。図11は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、溝10の溝壁11の屈曲部14が1箇所である場合の説明図である。周方向溝21と幅方向溝22とは、各溝壁11に形成される屈曲部14は、図11に示すように、それぞれ1箇所ずつであってもよい。この場合、溝壁11における開口部13と屈曲部14との間の部分は、開口部13側から屈曲部14側に向かうに従って溝幅が狭くなる方向に傾斜している。つまり、溝壁11における開口部13と屈曲部14との間の部分は、開口部13側から屈曲部14側に向かうに従って、対向する溝壁11同士の間隔が小さくなる方向に傾斜している。また、溝壁11における屈曲部14と溝底12との間の部分は、溝深さ方向に近い角度で形成されており、対向する溝壁11同士の間隔である溝幅がほぼ一定になっている。屈曲部14は、溝壁11におけるこれらの角度が異なる部分の交差部になっている。また、溝壁11における屈曲部14と溝底12との間の部分は、溝壁11における開口部13と屈曲部14との間の部分よりも溝幅が狭くなった幅狭部18として形成されている。
周方向溝21や幅方向溝22の溝壁11は、このように開口部13から屈曲部14に向かうに従って溝幅が徐々に狭くなり、屈曲部14から溝底12側の部分は、屈曲部14から開口部13側の部分よりも溝幅が狭くなって形成される、ロート形状で形成されている。周方向溝21や幅方向溝22の溝壁11が、このようにそれぞれ1箇所の屈曲部14を有し、ロート形状で形成される場合でも、溝10に入り込んだ石50は、屈曲部14の位置で食い止めることができるため、石50が溝底12に到達してストンドリリングが発生することを抑制することができる。
図12は、図11に示す溝10の交差部25に突起部30が設けられる状態を示す説明図である。周方向溝21や幅方向溝22の溝壁11がロート形状で形成される場合でも、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25は、平面視における溝底12の面積が大きくなるため、溝10に入り込んだ石50は、交差部25で溝底12に到達し易くなる。このため、周方向溝21や幅方向溝22の溝壁11がロート形状で形成される場合でも、交差部25に突起部30を設けることにより、交差部25に入り込んだ石50を突起部30に接触させることができ、石50が溝底12に到達して溝底12が損傷することを、突起部30によって抑制することができる。この結果、溝10の耐ストンドリリング性を向上させることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、突起部30は平面視における形状が台形状の形状で形成されているが、突起部30の形状は、台形状以外の形状で形成されていてもよい。図13は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、突起部30が矩形の形状で形成される場合の説明図である。図14は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、突起部30が凹多角形の形状で形成される場合の説明図である。周方向溝21と幅方向溝22との交差部25に設けられる突起部30は、例えば、図13に示すように、平面視における形状が矩形の形状で形成されていてもよく、図14に示すように、凹多角形の形状で形成されていてもよい。突起部30の形状は、溝10の排水性やデザイン性等も考慮して、適宜設定するのが好ましい。
図15は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、突起部30が円形の形状で形成される場合の説明図である。図16は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、突起部30が楕円形の形状で形成される場合の説明図である。また、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25に設けられる突起部30は、図15に示すように、平面視における形状が円形の形状で形成されていてもよく、図16に示すように、楕円形の形状で形成されていてもよい。突起部30の平面視における形状を、円形や楕円形等、角部を有さない形状にすることにより、石50が突起部30に接触した際に突起部30に欠けやもげが発生することを抑制することができる。これにより、交差部25に入り込んだ石50によって溝底12が損傷することを、突起部30によって継続的に抑制することができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向溝21と幅方向溝22との双方の溝壁11が屈曲部14を有して形成されているが、溝壁11の屈曲部14は、交差部25で交差する周方向溝21と幅方向溝22とのうち少なくとも一方の溝10の溝壁11が有していればよい。例えば、溝幅が狭い場合は、石50は溝10に入り込み難くなるため、周方向溝21と幅方向溝22とのいずれかの溝10の溝幅が、石50が入り難い程度に狭い場合は、この溝10の溝壁11は屈曲部14を有していなくてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向溝21と幅方向溝22とは溝深さが同等になっているが、交差部25で交差する周方向溝21と幅方向溝22とは、互いに溝深さが異なっていてもよい。周方向溝21と幅方向溝22とで溝深さが異なっている場合でも、交差部25では平面視における溝底12の面積が大きくなり易いため、交差部25に突起部30を設けることにより、溝底12が石50によって損傷することを抑制することができ、溝10の耐ストンドリリング性を向上させることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、幅方向溝22における周方向溝21に連通する部分の溝壁11に面取り部6が形成されているが、面取り部6は形成されていなくてもよい。周方向溝21と幅方向溝22とが交差する部分に面取り部6が形成されていなくても、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25は、平面視における溝底12の面積が大きくなり易くなる。このため、周方向溝21と幅方向溝22とが交差する部分に面取り部6が形成されていなくても、交差部25に突起部30を設けることにより、溝底12が石50によって損傷することを抑制することができ、溝10の耐ストンドリリング性を向上させることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向溝21と幅方向溝22とは、T字状に交差しているが、周方向溝21と幅方向溝22とは、幅方向溝22が周方向溝21を横断して周方向溝21を貫通するように交差していてもよい。幅方向溝22が周方向溝21を貫通するように周方向溝21と幅方向溝22とが交差する場合でも、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25は、平面視における溝底12の面積が大きくなり易くなる。このため、幅方向溝22が周方向溝21を貫通する場合でも、交差部25に突起部30を設けることにより、溝底12が石50によって損傷することを抑制することができ、溝10の耐ストンドリリング性を向上させることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、突起部30は、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25のみに設けられているが、突起部30は、交差部25以外の位置に設けられていてもよい。交差部25以外の位置に設ける場合でも、隣り合う突起部30同士の距離Lpが、屈曲部14の位置での溝幅d1に対して(Lp/d1)≧5となる位置関係で配設することにより、ウェット操安性の低下と耐久性の低下とを抑制しつつ、溝10の耐ストンドリリング性を向上させることができる。
〔実施例〕
図17A、図17Bは、空気入りタイヤ1の性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例及び比較例の空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、溝10でのストンドリリングの発生のし難さについての性能である耐ストンドリリング性についての試験と、車両走行時における空気入りタイヤ1の発熱性についての試験とについて行った。
これらの性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが295/75R22.5サイズの空気入りタイヤ1をJATMAで規定される規定リムのリムホイールにリム組みし、空気圧をJATMAで規定される最大空気圧に調整し、2-D・4の試験車両(トラック)に装着してテスト走行をすることにより行った。
各試験項目の評価方法は、耐ストンドリリング性については、試験タイヤを装着した試験車両で採石場の定コースを20km/hで10周したときに、周方向溝21と幅方向溝22との交差部25で溝底12に到達している石50の個数を数え、溝底12に到達している石50の個数の逆数を、後述する従来例の個数を100とする指数で示した。この数値が大きいほど、交差部25で溝底12に到達している石50の数が少なく、耐ストンドリリング性が優れていることを示している。
また、発熱性については、試験タイヤを室内ドラム試験により、速度80km/hで24時間走行後のタイヤ表面温度を測定することにより行った。発熱性の評価結果は後述する従来例の温度を100とする指数で示した。指数は、測定した温度が高いほど数値が小さくなっている。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例と、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例10~14と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1、2と、参考例1~9との17種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤ1のうち、従来例の空気入りタイヤは、溝10の溝壁11に屈曲部14が設けられておらず、断面形状がU字状の溝10になっている。また、従来例の空気入りタイヤは、溝10の交差部25に突起部30が設けられていない。また、比較例1の空気入りタイヤは、溝10の溝壁11に屈曲部14が設けられて溝壁11がひな壇形状になっているものの、溝10の交差部25に突起部30が設けられていない。また、比較例2の空気入りタイヤは、溝10の交差部25に突起部30が設けられているものの、溝10の溝壁11に屈曲部14が設けられておらず、断面形状がU字状の溝10になっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例10~14は、全て溝10の溝壁11に屈曲部14が設けられており、溝10の交差部25に突起部30が設けられている。さらに、実施例10~14と、参考例1~9は、屈曲部14を有する溝10の形状がひな壇形状であるかロート形状であるか、突起部30と溝壁11との最短距離d2と、屈曲部14の位置での溝幅d1との関係、突起部30と溝壁11との最短距離d2が屈曲部14の位置での溝幅d1に対して0<(d2/d1)≦1.5となる範囲、溝10の屈曲部14から溝底12までの溝深さH0と、突起部30の高さH1との関係(H1/H0)、溝10の開口部13から溝底12までの溝深さHgと、突起部30の高さH1との関係(H1/Hg)、溝10の開口部13の溝幅W1と、溝10の溝深さHgの1/2の位置での溝幅W2との関係(W2/W1)、溝底12からの屈曲部14の位置、溝10の屈曲部14の位置での溝幅d1と、隣り合う突起部30同士の距離Lpとの関係(Lp/d1)が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図17A、図17Bに示すように、実施例10~14の空気入りタイヤ1は、従来例や比較例1、2に対して、発熱性を維持しつつ、耐ストンドリリング性が向上することが分かった。つまり、実施例10~14に係る空気入りタイヤ1は、溝10の耐ストンドリリング性を向上させることができる。