JP7009887B2 - 化粧シート及びこれを用いた化粧材 - Google Patents

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Description

本発明は、化粧シート及びこれを用いた化粧材に関するものである。
壁、天井、床、玄関ドア、屋根等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装用部材には、一般的に、鋼板等の金属部材、樹脂部材、木質部材を被着材として、これらの被着材に化粧シートを貼り合わせたものが用いられる。化粧シートを鋼板等の被着材に貼り合わせる際に、また化粧シートを被着体に貼り合わせた後に、Vカット加工、ラッピング加工等の曲げ加工を行うことが一般的であるが、化粧シートの加工特性が低いと、曲げ加工部分にクラックが入り、白化が生じるという問題が生じてしまう。
このような問題を解決するため、基材上に、柄印刷層、透明樹脂層、プライマー層及び表面保護層を有し、該基材及びプライマー層が所定の樹脂材料を用いたものであり、該プライマー層及び表面保護層が所定の紫外線吸収剤を含む化粧シートが提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2008-238444号公報
しかしながら、特許文献1に記載される化粧シートは、例えば、外壁、玄関ドア、屋根等の外装用部材、窓枠、扉等の建具又は造作部材といった直射日光に晒される環境等、特に厳しい環境下で用いられる部材に用いようとすると、化粧シートを構成する各層の熱収縮の程度の多少に伴う艶の低下、クラックの発生等による外観の変化が生じる場合があり、耐候性に対する要求性能は年々厳しくなっている。
ところで、外装用部材、建具、造作部材等の部材に用いられる化粧シートは、凹み傷等の傷が付きやすい環境で用いられるため、傷付きによる外観の低下を抑制するため、耐傷性も求められる。一般に、耐傷性を向上させるためには、化粧シートを構成する各層をより高硬度の層とすることで対応することができ、また、耐候性を向上させるためには、紫外線吸収剤を含む層を適度に高硬度とし、紫外線吸収剤をより強固に保持することで対応することができる。しかし、化粧シートを構成する各層をより高硬度の層とすると、加工特性が低下し、曲げ加工部分にクラックが入り、白化が生じることによる、外観の低下を招来することになる。このように、化粧シートの加工特性と、耐候性、耐傷性とは、相反する特性であり、より厳しい環境下においても、これらの特性を両立することが要望されている。
本発明は、このような状況下になされたもので、優れた加工特性と、耐候性及び耐傷性とを有する化粧シート、これを用いた化粧材を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の構成を有する化粧シート、及びこれを用いた化粧材に係る発明により前記課題を解決できることを見出した。
[1]基材と、マルテンス硬度が10N/mm以上30N/mm以下であり、紫外線吸収剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される表面保護層と、を有し、弾性率が400MPa以上1,800MPa以下である化粧シート。
[2]更に樹脂層及びプライマー層を有し、基材、樹脂層、プライマー層、及び表面保護層を順に有する上記[1]に記載の化粧シート。
[3]更に装飾層を、基材と表面保護層との間に有する上記[1]又は[2]に記載の化粧シート。
[4]被着材と上記[1]~[3]のいずれか1に記載の化粧シートとを有する化粧材。
本発明によれば、優れた加工特性と、耐候性及び耐傷性とを有する化粧シート、これを用いた化粧材を提供することができる。
本発明の化粧シートの一例の断面を示す模式図である。 本発明の化粧シートの一例の断面を示す模式図である。 本発明の化粧材の層構成の一例を示す断面模式図である。
〔化粧シート〕
本発明の化粧シートは、基材と、マルテンス硬度が10N/mm以上30N/mm以下であり、紫外線吸収剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される表面保護層と、を有し、弾性率が400MPa以上1,800MPa以下である、というものである。本発明の化粧シートの構成を、図1及び2を用いて説明する。図1は、本発明の化粧シート10の一例の断面を示す模式図であり、基材11、表面保護層16を有しており、表面保護層16には紫外線吸収剤18が含まれている。図2は、本発明の化粧シート10の好ましい態様の一例の断面を示す模式図であり、該化粧シート10は、基材11、装飾層12、接着層13、樹脂層14、プライマー層15、及び表面保護層16を順に有し、基材11の表面保護層16側の面とは反対側の面には裏面プライマー層17を有している。また、図2には、表面保護層16の基材11とは反対側の面(最表面)に凹部19を有しており、凹部19には、表面保護層16内に留まるもの、樹脂層14に至るもの、基材11に至るもの等があることが示されている。
(マルテンス硬度と弾性率)
本発明の化粧シートは、表面保護層のマルテンス硬度が10N/mm以上30N/mm以下であることを要し、かつ化粧シートの弾性率が400MPa以上1,800MPa以下であることを要する。
化粧シートの弾性率が400MPa未満であると、化粧シートとして柔らかいため、優れた加工特性は得られるが、表面保護層を高硬度としても凹み傷等の傷への耐性が低下して、耐傷性が得られない。一方、化粧シートの弾性率が1,800MPaを超えると、化粧シートとして硬くなるため、表面保護層の硬度に応じた凹み傷等の傷への耐性が向上して耐傷性は得られるが、加工特性が得られない。
化粧シートの弾性率が400MPa以上1,800MPa以下であっても、表面保護層のマルテンス硬度が10N/mm未満であると、加工特性は得られるが、表面保護層の硬度不足により、耐傷性が得られない。また、化粧シートを構成する各層(特に、基材と表面保護層)の熱収縮の差が大きくなり、厳しい環境下での使用に伴い、熱収縮の差に起因した艶の低下、クラックの発生等による外観の変化が生じるため、耐候性も得られない。逆に、表面保護層のマルテンス硬度が30N/mmを超えると、耐傷性は得られるが、表面保護層が硬くなりすぎるために加工特性が得られず、また厳しい環境下での使用に伴い、熱収縮の差に起因した艶の低下、クラックの発生等による外観の変化が生じるため、耐候性も得られない。
本発明の化粧シートは、加工特性と、耐候性、耐傷性という、相反する特性を、化粧シートとしての弾性率と、表面保護層のマルテンス硬度とのバランスにより、同時に優れたものとすることを可能としている。
本発明において、マルテンス硬度の測定は、具体的には超微小硬度計を用いて測定される値であり、室温(23℃)において、荷重を連続的に増加させながらピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(表面保護層の面)に押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより算出される値である。なお、超微小硬度計としては、例えば、微小硬さ試験機「ピコデンターHM-500」(フィッシャー・インスツルメント社製)等を用いればよい。
表面保護層のマルテンス硬度は、化粧シートの弾性率との関係で、10N/mm以上30N/mm以下の範囲から適宜選択すればよいが、より優れた加工特性と、耐候性、耐傷性とを得る観点から、12N/mm以上が好ましく、15N/mm以上がより好ましく、18N/mm以上が更に好ましい。また、上限としては、28N/mm以下が好ましく、27N/mm以下がより好ましく、25N/mm以下が更に好ましい。なお、本明細書において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」に係る数値は任意に組み合わせることができる数値である。
表面保護層のマルテンス硬度は、押込み深さが2μmに到達したときに測定されるというマルテンス硬度の測定の性質上、主に表面保護層の構成、例えば表面保護層の厚さ、表面保護層を形成する硬化性樹脂組成物の材料等によって調整することができる。
化粧シートの弾性率は、400MPa以上1,800MPa以下であることを要する。化粧シートの弾性率は、表面保護層のマルテンス硬度との関係で、上記範囲内から適宜選択すればよいが、より優れた加工特性と、耐候性、耐傷性とを得る観点から、450MPa以上が好ましく、500MPa以上がより好ましく、550MPa以上が更に好ましい。また、上限としては、1,700MPa以下が好ましく、1,600MPa以下がより好ましく、1,500MPa以下が更に好ましい。本発明において、化粧シートの弾性率は、以下の測定方法により測定される引張弾性率を意味する。
(弾性率の測定方法)
JIS K7127に準拠したダンベル型に打ち抜いた試験片を用意し、25℃の温度環境下において、引張試験機を用いて、引張速度50mm/分、チャック間距離80mm、幅10mmの条件で測定して得られた引張応力-ひずみ曲線の初めの直接部分から、次の式により算出したE(引張弾性率)である。
引張弾性率=Δρ/Δε
Δρ:直線上の2点間の元平均断面積による応力差
Δε:同じ2点間のひずみ差
化粧シートの弾性率は、主に基材の厚さ、該基材を構成する樹脂の種類等によって調整することができる。また、樹脂層を設ける場合は、樹脂層によっても調整することができる。
以下、本発明の化粧シートを構成する各層について説明する。
(基材)
基材は、通常化粧シートの基材として用いられるものを制限なく採用することができ、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂基材が使用される。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などが使用される。
これらの中で、より優れた加工特性と、耐候性、耐傷性とを得る観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂が好ましく、化粧シートの弾性率の調整しやすさを考慮すると、特にポリオレフィン樹脂が好ましい。本発明においては、これらの樹脂を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。中でも、より優れた加工特性と、耐候性、耐傷性とを得る観点から、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体が好ましく、化粧シートの弾性率の調整しやすさを考慮すると、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体等のポリプロピレン樹脂がより好ましい。
基材は、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよく(透明でもよく)、着色されている場合、着色の態様には特に制限はなく、透明着色であってもよいし、不透明着色(隠蔽着色)であってもよく、これらは任意に選択できる。例えば、化粧シートを貼着する鋼板などの被着材の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、化粧材に用いられる被着材の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
基材は、着色されている場合、着色剤としては、例えば、チタン白等の白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤が挙げられる。中でも、化粧シートを貼着する被着材の表面色相がばらついている場合に、表面色相を良好に隠蔽しやすく、より優れた意匠性が得られ、所望に応じて設けられる装飾層の色調の安定性を向上させることができることから、白色顔料等の無機顔料を含むことが好ましい。
白色顔料等の無機顔料を用いる場合、その含有量は、透明着色とするか、不透明着色(隠蔽着色)とするかに応じて適宜調整すればよく、例えば、基材を構成する樹脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、上限として好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。
基材には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機充填剤、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、特に加工特性を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
本発明の化粧シートの耐候性を向上させる観点から、上記添加剤の中でも、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましい。
基材は、化粧材とした場合に表面保護層と被着材との間に位置する層であるため、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤のブリードアウトによる耐候性の低下への影響は、他の層に比べて小さいものといえる。基材に用いられる紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。また、例えば、後述する表面樹脂層に特に好ましく用いられるものとして例示される特定のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル(メタ)アクリレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジル)-2-n-ブチルマロネート等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート等のデカン二酸(セバシン酸)由来のヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、紫外線吸収剤、光安定剤は、光安定剤の一つとして上記に例示するように、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。
基材中の紫外線吸収剤の含有量は、基材を構成する樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上であり、上限として好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。また、基材中の光安定剤の含有量は、基材を構成する樹脂100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、上限として好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。基材中の紫外線吸収剤、光安定剤の含有量が上記範囲内であると、ブリードアウトしにくく、優れた添加効果が得られる。
基材は、上記樹脂の単層、あるいは同種又は異種樹脂による複層のいずれの構成であってもよい。
基材の厚さは、より優れた加工特性と、耐候性、耐傷性とを得る観点、また化粧シートの弾性率の調整しやすさを考慮すると、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。上限としては、200μm以下が好ましく、160μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。
基材は、基材と他の層との層間密着性の向上、各種の被着材との接着性の強化等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。
酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が、表面処理の効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
また、基材と他の層との層間密着性の向上、各種の被着材との接着性の強化等のために、基材にプライマー層、裏面プライマー層を形成する等の処理を施してもよい。これらのプライマー層については、後述する。
(表面保護層)
表面保護層は、10N/mm以上30N/mm以下のマルテンス硬度を有し、硬化性樹脂の硬化物で構成される層であり、基材上に直接、又は他の層、例えば、必要に応じて設けられる装飾層、基材又は装飾層と表面保護層との層間密着性を向上させるためのプライマー層等の上に設けられる、本発明の化粧シートの最表面に位置する層である。このような表面保護層を有することで、本発明の化粧シートは優れた加工特性を有し、かつ耐傷性及び耐候性を有するものとなる。
表面保護層は、硬化性樹脂を含有する樹脂組成物の硬化物で構成される層である。
表面保護層の形成に用いられる硬化性樹脂としては、2液硬化型樹脂等の熱硬化性樹脂の他、電離放射線硬化性樹脂等が好ましく用いられ、これらの複数種を組み合わせた、例えば、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用する、又は硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用する、いわゆるハイブリッドタイプであってもよい。
硬化性樹脂としては、表面保護層を構成する樹脂の架橋密度を高め、より優れた加工特性と耐傷性及び耐候性とを得る観点、また表面保護層のマルテンス硬度の調整しやすさを考慮すると、電離放射線硬化性樹脂が好ましく、また、取り扱いが容易との観点から、電子線硬化性樹脂がより好ましい。
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基を有するものである。ここで、電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、より優れた加工特性と耐傷性及び耐候性とを得る観点、表面保護層のマルテンス硬度の調整しやすさを考慮すると、アクリロイル基を有するアクリレートモノマーが好ましい。
より優れた加工特性と耐傷性及び耐候性とを得る観点、また表面保護層のマルテンス硬度の調整のしやすさを考慮すると、官能基数は好ましくは2以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンジオールウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。より優れた加工特性と耐傷性及び耐候性とを得る観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンジオールウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンジオールウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、表面保護層のマルテンス硬度の調整しやすさを考慮すると、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、特にウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。また、耐加水分解性が高く、表面保護層のクラック等からの紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤のブリードアウトを抑制し、より優れた耐候性を得る観点から、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、特にポリカーボネートアクリレートオリゴマーが好ましい。
より優れた加工特性と耐傷性及び耐候性とを得る観点、また表面保護層のマルテンス硬度の調整のしやすさを考慮すると、これらの重合性オリゴマーの官能基数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、より優れた加工特性と耐傷性及び耐候性とを得る観点、また表面保護層のマルテンス硬度の調整のしやすさを考慮すると、2,500以上が好ましく、2,750以上がより好ましく、2,900以上が更に好ましい。また、上限としては、15,000以下が好ましく、12,500以下がより好ましく、10,000以下が更に好ましく、特に6,000以下が好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
特に表面保護層のマルテンス硬度の調整のしやすさを考慮すると、2種以上の電離放射線硬化性樹脂を組み合わせて用いることが好ましく、例えば、重量平均分子量2,500以上3,500未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「(メタ)アクリレートオリゴマー1」と称することがある。)と、重量平均分子量3,500以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも一種の重量平均分子量3,500以上の(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「(メタ)アクリレートオリゴマー2」と称することがある。)と、を併用することが好ましい。
(メタ)アクリレートオリゴマー1の重量平均分子量としては、2,750以上が好ましく、2,900以上がより好ましく、また上限としては3,400以下が好ましく、3,300以下がより好ましく、3,200以下が更に好ましい。また、(メタ)アクリレートオリゴマー2の重量平均分子量としては、3,600以上が好ましく、3,800以上がより好ましく、4,100以上が更に好ましい。また上限としては、15,000以下が好ましく、12,500以下がより好ましく、10,000以下が更に好ましく、特に6,000以下が好ましい。
また、これらを併用する場合、(メタ)アクリレートオリゴマー1と(メタ)アクリレートオリゴマー2との配合比(質量比)は、1:99~90:10が好ましく、5:95~85:15がより好ましい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレート等とともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂としては、加工特性と耐傷性及び耐候性を向上させる観点から、重合性オリゴマーを含むものであることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂中の重合性オリゴマーの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
表面保護層を構成する硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含む。表面保護層が紫外線吸収剤を含むこと、また表面保護層が所定のマルテンス硬度を有し、かつ化粧シートが所定の弾性率を有することで、表面保護層中に紫外線吸収剤が安定して保持されるので、厳しい環境下においても、優れた耐候性が得られる。
紫外線吸収剤としては、基材に含まれ得る紫外線吸収剤として例示した、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。より具体的には、トリアジン系紫外線吸収剤の中でも、トリアジン環に、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基及びこれらの基を含む有機基から選ばれる少なくとも一つの有機基が三つ連結したヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましく、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が更に好ましい。表面保護層は、化粧シートの最表面に位置する層であるため、層からブリードアウトしにくいものが好ましく、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は分岐構造を有するため、ブリードアウトしにくくなることが期待され、耐候性能の観点から、表面保護層に用いられる紫外線吸収剤として特に好ましいものである。
Figure 0007009887000001
一般式(1)中、R11は2価の有機基であり、R12は-C(=O)OR15で示されるエステル基であり、R13、R14及びR15は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。
11の2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が挙げられ、耐候性の観点から、アルキレン基が好ましく、その炭素数は、好ましくは1以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。アルキレン基、アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,1-エチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン、1,2-プロピレン、2,2-プロピレン等の各種プロピレン基(以下、「各種」は、直鎖状、分岐状、及びこれらの異性体のものを含むものを示す。)、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種へプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基、各種ウンデシレン基、各種ドデシレン基、各種トリデシレン基、各種テトラデシレン基、各種ペンタデシレン基、各種ヘキサデシレン基、各種ヘプタデシレン基、各種オクタデシレン基、各種ノナデシレン基、各種イコシレン基が挙げられる。
13及びR14の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基が好ましい。中でも、R13及びR14の1価の有機基としては、フェニル基が好ましい。
アリール基としては、炭素数が好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下のアリール基、例えば、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等が挙げられる。アリールアルキル基としては、炭素数が好ましくは7以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下のアリールアルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基、各種メチルベンジル基、各種エチルベンジル基、各種プロピルベンジル基、各種ブチルベンジル基、各種ヘキシルベンジル基等が挙げられる。
15の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。すなわち、R12としては、アルキルエステル基、アルケニルエステル基が好ましく、アルキルエステル基がより好ましい。
アルキル基としては、炭素数が好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種イコシル基が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数が好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下のアルケニル基、例えば、ビニル基、各種プロペニル基、各種ブテニル基、各種ペンテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ウンデセニル基、各種ドデセニル基、各種トリデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基が挙げられる。
一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物としては、より具体的には、R11が炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数1以上20以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上20以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましく、R11が炭素数1以上12以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数2以上16以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上12以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物がより好ましく、R11が炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数6以上12以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上10以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が更に好ましく、R11が炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数8のアルキル基であるエステル基であり、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が特に好ましい。
一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物としては、更に具体的には、下記化学式(2)で示される、R11がエチレン基であり、R12及びR15がイソオクチル基であるエステル基であり、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物、すなわち2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジンが好ましく、このヒドロキシフェニルトリアジン化合物は、例えば、市販品(「TINUVIN479」、BASF社製)として入手可能である。
Figure 0007009887000002
表面保護層を構成する硬化性樹脂組成物は、耐候性を向上させる観点から、光安定剤を含むことが好ましい。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、基材に用い得る光安定剤として例示したヒンダードアミン系光安定剤を用いることができ、耐候性の観点から、デカン二酸(セバシン酸)由来のヒンダードアミン系光安定剤、また1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル(メタ)アクリレート等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有する光安定剤が好ましい。
表面保護層において、これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、紫外線吸収剤、光安定剤は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。表面保護層を構成する硬化性樹脂との相互作用により、ブリードアウトしにくくなるため、より多量に用いることができ、より優れた耐候性が得られる。
表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量は、表面保護層を構成する硬化性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が更に好ましく、特に0.5質量部が好ましい。また上限としては、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
表面保護層中の光安定剤の含有量は、表面保護層を構成する硬化性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。また上限としては、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましく、3質量部以下が特に好ましい。表面保護層中の紫外線吸収剤、光安定剤の含有量が上記範囲内であると、ブリードアウトすることなく、また優れた加工特性が得られ、かつ優れた添加効果が得られる。
表面保護層には、添加剤として、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の紫外線吸収剤、光安定剤の他、紫外線遮蔽剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、ブロッキング防止剤、滑剤、溶剤等を添加することができる。
また、表面保護層には、意匠性向上の観点から、チタン白等の白色顔料、その他、基材に含み得る着色剤として例示した無機顔料等の着色剤が含まれていてもよい。白色顔料等の無機顔料が表面保護層に含まれる場合、無機顔料の含有量は、表面保護層を構成する樹脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、上限として好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。無機顔料の含有量が上記範囲内であると、優れた加工特性が得られ、かつ無機顔料の使用による優れた意匠性も得られる。
表面保護層の厚さは、加工特性と耐傷性及び耐候性とを向上させる観点から、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、4μm以上が更に好ましい。また上限としては、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が更に好ましい。
(装飾層)
本発明の化粧シートは、意匠性を向上させる観点から、基材と表面保護層との間に装飾層を有することが好ましい。装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよいし、またこれらを組み合わせたものであってもよい。例えば、被着材の地色を着色隠蔽する場合には、ベタ着色層とすることで、着色隠蔽しつつ、意匠性を向上させることができるし、更に意匠性を向上させる観点から、ベタ着色層と絵柄層とを組み合わせてもよいし、一方、被着材の地模様を生かす場合は、ベタ着色層とせずに絵柄層のみを設ければよい。
装飾層に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、1液硬化型の他、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPID)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
装飾層においては、例えば、チタン白等の白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤を用いることもできる。
装飾層は、耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を含んでいてもよい。
紫外線吸収剤、光安定剤としては、基材に含まれ得るものとして例示した、紫外線吸収剤、光安定剤を挙げることができる。紫外線吸収剤及び光安定剤の含有量は、耐候性の向上の観点から、表面保護層中の含有量と同じ範囲を例示することができる。
装飾層として絵柄層を有する場合、その模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
装飾層の厚さは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を着色隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上が更に好ましく、また上限としては、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。
(樹脂層)
樹脂層は、装飾層の保護、加工特性と、耐傷性及び耐候性の向上の観点から、所望に応じて好ましく設けられる層である。
樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が好ましく挙げられる。中でも、加工特性と、耐傷性及び耐候性の向上の観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、基材を構成し得るものとして例示した樹脂が挙げられ、中でもポリプロピレン樹脂が好ましい。
樹脂層は基材シートと表面保護層との間に設けられていればよく、装飾層を有する場合、装飾層を保護する観点から、装飾層と表面保護層との間に設けられていることが好ましい。
樹脂層は透明であっても不透明でもよく、装飾層と表面保護層との間に設けられる場合は、装飾層をより鮮明に視認できるようにする観点から、透明であることが好ましい。ここで、透明とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むものである。また、着色されている場合、用いられる着色剤としては、上記の基材に用いられる着色剤と同様のものが好ましく挙げられる。
樹脂層は、必要に応じて、添加剤が配合されていてもよく、例えば、上記基材中に配合し得る添加剤として例示したものを用いることができる。本発明の化粧シートの耐候性を向上させる観点から、上記添加剤の中でも、紫外線吸収剤、光安定剤といった耐候剤を用いることが好ましい。
紫外線吸収剤、光安定剤としては、基材、表面保護層に用い得るものとして例示した、紫外線吸収剤、光安定剤を挙げることができる。これらの耐候剤の含有量は、耐候性の向上の観点から、基材中の含有量と同じ範囲を例示することができる。
樹脂層の厚さは、装飾層の保護、加工特性と、耐傷性及び耐候性の向上の観点から、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましい。上限としては、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。また、装飾層を保護し、かつ優れた耐傷性を得る観点から、基材と同等以上の厚さとすることが好ましい。
樹脂層は、樹脂層と他の層との層間密着性の向上等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。これらの物理的または化学的表面処理としては、上記の基材の表面処理と同じの方法が好ましく例示される。
また、樹脂層と他の層との層間密着性の向上のために、樹脂層の片面又は両面にプライマー層を形成する等の処理を施してもよい。このプライマー層については、後述する。
(プライマー層)
本発明の化粧シートは、所望に応じてプライマー層を設けることができる。プライマー層は、主に層間密着性の向上効果を得るために設けられる層であるが、本発明においては各層の熱収縮の緩和効果も得られるため、各層の熱収縮の多少に伴う艶の低下、クラックの発生等による外観の変化を抑制し、優れた耐候性も得られる。また、プライマー層が、基材の表面保護層側とは反対側の面に設けられる場合(このような場合のプライマー層は、「裏面プライマー層」とも称される。)は、基材と被着材との層間密着性の向上効果の他、ブロッキング効果を得ることができる。
プライマー層は、基材と表面保護層との間、樹脂層を有する場合は樹脂層と表面保護層との間、また基材の表面保護層側とは反対側の面に設けられることが好ましい。
プライマー層の形成には、バインダーに硬化剤、また紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を適宜混合した樹脂組成物が用いられる。
バインダーとしては、例えば、上記の装飾層に用い得るバインダーとして例示したもの、すなわち、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。例えば、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体とアクリルポリオール樹脂との混合物をバインダーとして用いることができる。
また、1液硬化型の他、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPID)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
プライマー層は、耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤、光安定剤としては、基材、表面保護層に含まれ得るものとして例示した、紫外線吸収剤、光安定剤を挙げることができる。
プライマー層における紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また上限として好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。
また、プライマー層における光安定剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、特に好ましくは2質量部以上であり、また上限として好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下である。プライマー層中の紫外線吸収剤及び光安定剤の含有量が上記範囲内であると、プライマー層としての優れた性能とともに、優れた耐候性が得られる。
また、プライマー層は、製造時及び保管時の化粧シート同士のブロッキング防止の観点から、ブロッキング防止剤を含むことが好ましい。ブロッキング防止剤としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸等のケイ酸塩;その他、カオリン、タルク、珪藻土等の無機化合物系のブロッキング防止剤;等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。が挙げられる。
上記の無機化合物系のブロッキング防止剤において、その平均粒子径としては、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、上限としては、8μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。ブロッキング防止剤の平均粒子径が上記範囲内であると、ブロッキング防止効果が得られ、かつ化粧シート同士が擦れた際に傷がつきにくくなる。
ブロッキング防止剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。また、上限としては、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。
プライマー層の厚さは、層間密着性の向上効果、更には各層の熱収縮の緩和効果を得る観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上が更に好ましい。また、上限としては、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下が更に好ましい。
(接着層)
本発明の化粧シートは、必要に応じて接着層を有することができる。特に、本発明の化粧シートが樹脂層を有する場合、該樹脂層と装飾層との層間密着性を向上させるときに、接着層を設けることは有効である。接着層を構成する接着剤としては、通常化粧シートで用いられる接着剤を制限なく用いることができる。
接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。なお、ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートジオール等の各種ポリオール化合物と、上記の各種イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。また、アクリル-ポリエステル-塩酢ビ系樹脂等も加熱により容易に接着性を発現し、高温での使用でも接着強度を維持し得る好適な接着剤である。
接着層の厚さは、十分な接着性が得られる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限として好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
(凹部)
本発明の化粧シートは、表面保護層の基材側の面とは反対側の面(「表面側の面」とも称される。)に凹部を有することが好ましい。本発明の化粧シートは凹部を有することで、質感(触感)の向上に伴う高級感が得られ、意匠性が向上する。
凹部は、図2に示されるように、表面保護層の基材側とは反対側の面に存在していればよく、凹部の深さは表面保護層内に留まるものであってもよいし、また基材まで至るものがあってもよい。優れた質感(触感)を得る観点から、表面保護層内に留まるものだけでなく、樹脂層まで至るもの、装飾層まで至るもの、基材まで至るものが組み合わされていることが好ましい。
凹部の最大深さDと化粧シートの総厚さTとは、意匠性を向上させる観点から、0.15×T≦D≦Tの関係を有することが好ましい、すなわち、凹部の深さDと化粧シートの総厚Tとの比率D/Tが、0.15以上1以下が好ましい。また、これと同様の観点から、凹部の深さDと化粧シートの総厚さTとの関係は、0.2×T≦D≦0.9×Tがより好ましく、0.25×T≦D≦0.8×Tが更に好ましい。すなわち、凹部の深さDと化粧シートの総厚Tとの比率D/Tは0.2以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、また0.9以下が好ましく、0.8以下が更に好ましい。
また、凹部の最大深さは、化粧シートの総厚さTに応じて相対的に変わり得るが、より具体的な深さとしては、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上が更に好ましく、上限としては、120μm以下が好ましく、110μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。このような最大深さを有することで、凹部の加工、例えばエンボス加工の際に化粧シートが破断してしまうことがなく、凹部が潰れたように仕上がってしまうこともなく、質感(触感)の向上に伴う高級感が得られ、意匠性が向上する。
ここで、凹部の最大深さDの測定は、任意の30点の凹形状について、該凹部の最下点から表面保護層の表面までの高さを、表面粗さ形状測定機を用いて、カットオフ値:2.50mm、カットオフフィルタの種類:2RC、傾斜補正方法:直線の測定条件で測定し、最も深いものを最大深さとした。
凹部の模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。意匠性を向上させる観点から、凹部の模様は、装飾層の絵柄と同調させた模様であることが好ましい。例えば、絵柄層が木目模様の場合は、凹部の模様として木目板導管溝を選択し、かつ絵柄層の木目と凹部の木目とを同調させると、よりリアルで質感に溢れた、高級感のある化粧シート、化粧材が得られる。
(化粧シートの製造方法)
本発明の化粧シートの製造方法について、本発明の化粧シートとして好ましい態様の一つである、基材、装飾層、接着層、樹脂層、プライマー層、及び表面保護層を順に有する化粧シートを例にとって、その製造方法を説明する。
本発明の化粧シートは、例えば、基材に装飾層を設ける工程(1)、該装飾層上に樹脂層を設ける工程(2)、及び該樹脂層上に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成する工程(3)を順に経ることにより製造することができる。
工程(1)は、基材上に装飾層を設ける工程である。装飾層は、基材上に装飾層の形成に用いられるインキを塗布して所望の着色層、絵柄層を設けることにより形成される。該インキの塗布は、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式、好ましくはグラビア印刷法により行う。
また、基材に表面処理を施す場合は、装飾層を形成する場合であって、基材と装飾層との間にプライマー層を設ける場合、装飾層の形成前に設ければよく、また基材の装飾層側とは反対側の面(裏面)に裏面プライマー層を設ける場合は、装飾層の形成前後のいずれに設けてもよい。プライマー層の形成は、プライマー層を構成する樹脂組成物を、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布して形成することができる。
工程(2)は、装飾層上に樹脂層を設ける工程である。樹脂層は、上記の装飾層を有する基材に必要に応じて接着剤を塗布して接着層を形成した後に、樹脂層を構成する樹脂組成物を用いて、樹脂層を押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーション等の方法により接着及び圧着させて積層して形成することができる。
樹脂層に表面処理を施す場合は、樹脂層を設けた後に表面処理を行えばよい。
また、樹脂層と表面保護層との間にプライマー層を設ける場合、樹脂層を設けた後にプライマー層を構成する樹脂組成物を用いてプライマー層を設ければよい。
工程(3)は、樹脂層上に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成する工程である。
表面保護層は、上記の電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を、樹脂層あるいは該樹脂層上に所望に応じて設けられたプライマー層の上に塗布し、硬化させて得られる。なお、樹脂層を設けない場合は、基材シートに装飾層を設けた後、硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成すればよい。
表面保護層を形成するための、樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが所定の厚さとなるように、好ましくはグラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式により、より好ましくはグラビアコートにより行う。
表面保護層の形成に電離放射線樹脂組成物を用いる場合、該樹脂組成物の塗布により形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して硬化物とすることで、表面保護層となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
表面保護層の形成に熱硬化性樹脂組成物を用いる場合は、使用する樹脂組成物に応じた熱処理を施して、硬化させて表面保護層を形成すればよい。
表面保護層に凹部を形成する場合、例えば、作業の容易さを考慮すると、エンボス加工を採用することが好ましい。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を使用する通常の方法により行えばよい。
エンボス加工を行う場合、例えば、化粧シートを好ましくは80℃以上260℃以下、より好ましくは85℃以上160℃以下、更に好ましくは100℃以上140℃以下に加熱し、化粧シートにエンボス版を押圧して、エンボス加工を行うことができる。
〔化粧材〕
本発明の化粧材は、被着材と上記の本発明の化粧シートとを有するものであり、具体的には、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材側の面とを対向させて積層したものである。すなわち、本発明の化粧材は、少なくとも、被着材、基材、及び表面保護層を順に有するものである。図3に、本発明の化粧材の好ましい態様の一例の断面を示す模式図を示す。図3に示される本発明の化粧材20は、被着材21、接着剤層22、及び本発明の化粧シート10を順に有する。
(被着材)
被着材としては、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。例えば、杉、檜、松、ラワン等の各種木材からなる木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として用いられる木質部材;鉄、アルミニウム等の板材や鋼板、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として用いられる窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
被着材は、上記の中から用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床、玄関ドア、屋根等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましく、外壁、玄関ドア、屋根等の外装用部材、窓枠、扉等の建具又は造作部材を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
(接着剤層)
被着材と化粧シートとは、優れた接着性を得るため、接着剤層を介して貼り合わせられることが好ましい。すなわち、本発明の化粧材は、少なくとも被着材、接着剤層、基材、及び表面保護層を順に有する部材であることが好ましい。
接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができ、例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。この接着剤層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤も適用し得る。
また、接着剤層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して用いることができる。
接着剤層は、上記の樹脂を溶液、あるいはエマルジョン等の塗布可能な形態にしたものを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
(化粧材の製造方法)
化粧材は、化粧シートと被着材とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、本発明の化粧シートとを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材側の面とを対向させて積層する。被着材と化粧シートとの積層する方法としては、例えば、接着剤を間に介して化粧シートを板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法、接着剤を間に介して化粧シートを供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、被着材を構成する複数の側面に順次化粧シートを加圧接着して積層していくラッピング加工、また、固定枠に固定した化粧シートが軟化する所定の温度になるまでシリコーンゴムシートを介してヒーターで加熱し、加熱され軟化した化粧シートに真空成形金型を押し付け、同時に真空成形金型から真空ポンプ等で空気を吸引し化粧シートを真空成形金型に密着させる真空成形加工等が好ましく挙げられる。
ラミネート加工やラッピング加工において、ホットメルト接着剤(感熱接着剤)を用いる場合、接着剤を構成する樹脂の種類にもよるが、加温温度は160℃以上200℃以下が好ましく、反応性ホットメルト接着剤では100℃以上130℃以下が好ましい。また、真空成形加工の場合は加熱しながら行うことが一般的であり、80℃以上130℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上120℃以下である。
以上のようにして得られる化粧材は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。また、化粧シートを鋼板等に貼着した後、Vカット加工、ラッピング加工等の曲げ加工を施すこともできる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床、玄関ドア、屋根等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装用部材等に用いることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価及び測定方法)
(1)マルテンス硬度の測定
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、マルテンス硬度を以下の方法により測定した。
超微小硬度計(微小硬さ試験機、「ピコデンターHM-500」、フィッシャー・インスツルメント社製)を用いて、室温(23℃)において、荷重を連続的に増加させながらピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(表面保護層の面)に押し込み、押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を測定し、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより、マルテンス硬度を算出した。
(2)耐候性の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧材について、以下の試験条件下で500時間放置する耐候試験を行った。耐候試験後の化粧材の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。また、本実施例の評価において、「A」評価よりも優れている場合は「A」と、「B」評価よりも優れているが「A」評価には至らない場合は「B」というように、「+」を追記する場合がある。
A:外観変化は確認されなかった。
B:軽微な艶変化が確認された。
C:顕著な艶変化、クラックの少なくともいずれかが確認された。
(耐候性試験 試験条件)
500時間の試験時間中、以下の照射条件、シャワー、結露条件、及びシャワーの順番で繰返した。
試験装置:超促進耐候性試験機(アイスーバーUVテスター SUV-W261、岩崎電気株式会社製)
照射条件
照度:100mW/cm
ブラックパネル温度:63℃
湿度:50%
時間:20時間
結露条件
照度:0mW/cm
湿度:98%
時間:4時間
シャワー:30秒間
(3)耐傷性(鉛筆硬度)の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、ペンシル型引掻き硬度計(「Model318」、エリクセン社製)を用いて、引掻き試験を行った。試験後の外観を下記の基準で評価した。
A:5Nの硬度で試験を行い、外観変化がほとんどなかった。
B:5Nの硬度で試験を行い、塗膜表面に微かな凹みが発生したが、傷はほとんどなかった。
C;5Nの硬度で試験を行い、塗膜表面に微かな凹み及び傷の少なくともいずれかが発生したが、目立たない程度であった。
D:5Nの硬度で試験を行い、塗膜表面に著しい傷が発生した。
(4)加工特性(90度曲げ加工)の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧材について、JIS K6744に準拠し、試験温度25±5℃、外側半径2.0mmでの90度曲げ試験を実施した後、加工部分を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:角部(曲げ部)において、外観変化は確認されなかった。
B:角部(曲げ部)において、軽微な白化が確認された。
C:角部(曲げ部)において、顕著な白化、クラックの少なくともいずれかが確認された。
(5)耐温水試験による評価
各実施例及び比較例で得られた化粧材について、蓋付きのビンに、化粧材と水とを入れて、オーブン(60℃)中で200時間放置した後、化粧材の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:外観変化は確認されなかった。
B:軽微な艶変化が確認された。
C:外観変化が確認されたが、目立たない程度であった。
D:顕著な外観変化が確認された。
実施例1
両面コロナ放電処理を施したポリプロピレン樹脂シート(厚さ:60μm)を基材とし、該基材の一方の面に2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂をバインダーとする印刷インキをグラビア印刷法で塗布して木目模様の装飾層(厚さ:3μm)を設け、他方の面に、2液硬化型ウレタン-硝化綿混合樹脂(硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネートを樹脂100質量部に対して5質量部含有)を含む樹脂組成物を塗布して、裏面プライマー層(厚さ:3μm)を形成した。
装飾層の上に、透明のポリウレタン樹脂系接着剤を塗布して接着層(乾燥後の厚さ:3μm)を形成し、透明なポリプロピレン樹脂をTダイ押出機により加熱溶融押出しして、透明な樹脂層(厚さ:80μm)を形成した。
次いで、樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、下記のプライマー層形成用樹脂組成物100質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)5質量部とを混合した組成物を、グラビア印刷法で塗布してプライマー層(乾燥後の厚さ:4μm)を形成した。
さらに、プライマー層上に、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をロールコート法により塗布して未硬化樹脂層を形成し、電子線(加圧電圧:175KeV、5Mrad(50kGy))を照射して未硬化樹脂層を硬化させて、表面保護層(厚さ:5μm)を得た。その後、表面保護層側からエンボス加工を施して、最大深さ50μmの凹部を有する木目導管模様を形成し、化粧シートを得た。
得られた化粧シートの基材に、ポリウレタン系感熱接着剤を塗布して接着剤層(厚さ:20μm)を形成し、接着剤層が固化する前に、厚さ0.4mmの亜鉛メッキ鋼板に貼付し、化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
(プライマー層形成用樹脂組成物)
バインダー:ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体及びアクリルポリオール樹脂の混合物
紫外線吸収剤A:上記一般式(2)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN479」、BASF社製)バインダー100質量部に対して3質量部
紫外線吸収剤B:下記一般式(3)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN400」、BASF社製)バインダー100質量部に対して12質量部
Figure 0007009887000003
光安定剤a:ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製)バインダー100質量部に対して3質量部
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー1):ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:3,000、官能基数:3)70質量部
電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー2):ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:10,000、官能基数:2)30質量部
紫外線吸収剤A:上記一般式(2)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN479」,BASF社製)電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して2質量部
光安定剤a:ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製)電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して2質量部
実施例2~5、比較例1~5
実施例1において、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー1)及び(オリゴマー2)の配合量を第1表に示される配合量とし、化粧シートの弾性率を第1表に示される弾性率とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5、比較例1~5の化粧シート及び化粧材を作製した。
実施例6
実施例1において、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中の光安定剤aを下記の分子中にエチレン性二重結合を有する反応性官能基(メタクリロイル基)を有する反応性の光安定剤bとした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の化粧シート及び化粧材を作製した。
光安定剤b:1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート(「サノール LS-3410(商品名)」、日本乳化剤株式会社製)
実施例7
実施例1において、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー1)及び(オリゴマー2)を各々下記の電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー3)及び(オリゴマー4)とし、光安定剤aを下記の分子中にエチレン性二重結合を有する反応性官能基(メタクリロイル基)を有する反応性の光安定剤bとした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の化粧シート及び化粧材を作製した。
電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー3):ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:3,000、官能基数:2)
電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー4):ポリカーボネートウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:4,200、官能基数:2)
光安定剤b:1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート(「サノール LS-3410(商品名)」、日本乳化剤株式会社製)
上記実施例及び比較例で得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
Figure 0007009887000004
実施例1~5の結果より、本発明の化粧シートは優れた加工特性と、耐候性及び耐傷性とを有することが確認された。
また、メタクリロイル基を有する光安定剤を用いた実施例6では、実施例1に比べて耐候性(超促進耐候性試験)及び耐温水試験の評価において向上効果が確認された。この向上効果は、光安定剤が有するメタクリロイル基と電離放射線硬化性樹脂のアクリロイル基との反応により、光安定剤がより強固に保持されることによるものと考えられる。更に電離放射線硬化性樹脂としてポリカーボネートウレタンアクリレートを用いた実施例7では、更に優れた耐候性(超促進耐候性試験及び耐温水試験)の向上効果が確認された。この向上効果は、ポリカーボネートウレタンアクリレートの優れた耐加水分解性の効果により、紫外線吸収剤及び光安定剤といった耐候剤がより強固に保持されることによるものと考えられる。
一方、化粧シートの弾性率が300MPaと小さい比較例1の化粧シートは、表面保護層のマルテンス硬度が本発明の規定範囲である21N/mmであっても耐傷性が得られず、また、表面保護層のマルテンス硬度が8N/mmと小さい比較例4の化粧シートは、化粧シートの弾性率が700MPaと本発明の規定範囲であっても耐傷性が得られなかった。化粧シートの弾性率が1,900MPaと大きい比較例2の化粧シートは、表面保護層のマルテンス硬度が本発明の規定範囲である21N/mmであっても加工特性は得られなかった。表面保護層のマルテンス硬度が32N/mmと大きい比較例3の化粧シートは、化粧シートの弾性率が700MPaと本発明の規定範囲であっても、表面保護層が硬すぎて加工特性が得られず、また表面保護層に微細なクラックがあるため、使用とともに各層の熱収縮の違いに起因した顕著な艶変化、クラックが発生してしまった。また、紫外線吸収剤を用いなかった比較例5は、耐候性が得られなかった。
本発明の化粧シートは、優れた加工特性と、耐候性及び耐傷性とを有するものであり、これを用いた化粧材は、優れた耐候性及び耐傷性を有するものである。よって、壁、天井、床、玄関ドア、屋根等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装用部材に好適に用いられる。その優れた耐傷性及び耐候性をいかして、とりわけ、外壁、玄関ドア、屋根等の外装用部材、窓枠、扉等の建具又は造作部材といった直射日光に晒される環境で用いられる部材に好適に用いられる。
10.化粧シート
11.基材
12.装飾層
13.接着層
14.樹脂層
15.プライマー層
16.表面保護層
17.裏面プライマー層
18.紫外線吸収剤
19.凹部
20.化粧材
21.被着材
22.接着剤層

Claims (16)

  1. 基材と、マルテンス硬度が10N/mm以上30N/mm以下であり、紫外線吸収剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される表面保護層と、を有し、弾性率が400MPa以上1,800MPa以下であり、前記紫外線吸収剤が、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含む化粧シート。
    Figure 0007009887000005

    (一般式(1)中、R11は2価の有機基であり、R12は-C(=O)OR15で示されるエステル基であり、R13、R14及びR15は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。)
  2. 前記ヒドロキシフェニルトリアジン化合物が、一般式(1)において、R 11 が炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R 12 及びR 15 が炭素数1以上20以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R 13 及びR 14 が炭素数6以上20以下のアリール基であり、n 11 及びn 12 が1の化合物である請求項1に記載の化粧シート。
  3. 基材と、マルテンス硬度が10N/mm 以上30N/mm 以下であり、紫外線吸収剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される表面保護層と、を有し、弾性率が400MPa以上1,800MPa以下であり、前記表面保護層の厚さが、3μm以上10μm以下である化粧シート。
  4. 更に透明樹脂層及びプライマー層を有し、基材、透明樹脂層、プライマー層、及び表面保護層を順に有する請求項に記載の化粧シート。
  5. 更に装飾層を、基材と表面保護層との間に有する請求項又はに記載の化粧シート。
  6. 前記硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂組成物である請求項のいずれか1項に記載の化粧シート。
  7. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂が、重量平均分子量2,500以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項に記載の化粧シート。
  8. 前記電離放射線硬化性樹脂が、重量平均分子量2,500以上3,500未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも一種の重量平均分子量3,500以上の(メタ)アクリレートオリゴマーと、を含む請求項に記載の化粧シート。
  9. 前記重量平均分子量2,500以上3,500未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、重量平均分子量3,500以上の(メタ)アクリレートオリゴマーと、の配合比(質量比)が、1:99~90:10である請求項に記載の化粧シート。
  10. 前記紫外線吸収剤が、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含む請求項のいずれか1項に記載の化粧シート。
    Figure 0007009887000006

    (一般式(1)中、R11は2価の有機基であり、R12は-C(=O)OR15で示されるエステル基であり、R13、R14及びR15は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。)
  11. 前記ヒドロキシフェニルトリアジン化合物が、一般式(1)において、R11が炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数1以上20以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上20以下のアリール基であり、n11及びn12が1の化合物である請求項10に記載の化粧シート。
  12. 基材が、オレフィン樹脂基材である請求項11のいずれか1項に記載の化粧シート。
  13. 基材と、マルテンス硬度が10N/mm 以上30N/mm 以下であり、紫外線吸収剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される表面保護層と、を有し、弾性率が400MPa以上1,800MPa以下であり、
    前記硬化性樹脂組成物が、重量平均分子量2,500以上3,500未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも一種の重量平均分子量3,500以上の(メタ)アクリレートオリゴマーと、を含む電離放射線硬化性樹脂組成物である化粧シート。
  14. 前記重量平均分子量2,500以上3,500未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、重量平均分子量3,500以上の(メタ)アクリレートオリゴマーと、の配合比(質量比)が、1:99~90:10である請求項13に記載の化粧シート。
  15. 被着材と請求項1~14のいずれか1項に記載の化粧シートとを有する化粧材。
  16. 被着材が、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなる請求項15に記載の化粧材。
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