JP6957934B2 - 化粧シート及びこれを用いた化粧材 - Google Patents

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Description

本発明は、化粧シート及びこれを用いた化粧材に関するものである。
壁、天井、床、玄関ドア等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装用部材には、一般的に、鋼板等の金属部材、樹脂部材、木質部材を被着材として、これらの被着材に化粧シートを貼り合わせたものが用いられる。これらの部材に用いられる化粧シートには、使用に伴う劣化を防止するため、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤が通常用いられる。
このような化粧シートとして、基材シート、絵柄層、透明樹脂層及び表面保護層を有し、表面保護層が電離放射線硬化型樹脂を含む組成物から形成され、透明樹脂層が凹凸を有し、該凹凸の凹部に所定の樹脂を用いた着色樹脂層が形成された化粧シートが提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2006−095992号公報
しかしながら、特許文献1に記載される化粧シートは、例えば、玄関ドア等の外装用部材、窓枠、扉等の建具といった直射日光に晒される環境等、特に厳しい環境下で用いられる部材に用いようとすると、使用に伴い、色調変化、各層間の浮き、割れ等が生じてしまい、長期的な耐候性に劣るものであった。耐候性を向上させるための手段としては、化粧シートを構成する各層、好ましくはより表層、特許文献1に記載される化粧シートであれば表面保護層に紫外線吸収剤等の耐候剤をより多量に含有させることが挙げられる。紫外線吸収剤を多量に用いることで、短期的には優れた耐候性が得られる。しかし、使用するにつれて、紫外線吸収剤が表面保護層から漏れ出る、いわゆるブリードアウト(bleed out移行ともいう。)が発生し、化粧シート中の紫外線吸収剤が減少することにより、耐候剤が低下し、また化粧シート表面のべた付きといった弊害が生じることとなる。
本発明は、このような状況下になされたもので、優れた耐候性を有する化粧シート、これを用いた化粧材を提供することを目的とするものである。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の構成を有する化粧シート、及びこれを用いた化粧材に係る発明により前記課題を解決できることを見出した。
[1]基材と中間樹脂層と表面保護層とを順に有し、該表面保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該中間樹脂層と該表面保護層とが紫外線吸収剤を含有し、該中間樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(M)が、該表面保護層を構成する樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(M)よりも大きい、化粧シート。
[2]被着材と上記[1]に記載の化粧シートとを有する化粧材。
本発明によれば、優れた耐候性を有する化粧シート、これを用いた化粧材を提供することができる。
本発明の化粧シートの一例の断面を示す模式図である。 本発明の化粧シートの一例の断面を示す模式図である。 本発明の化粧材の層構成の一例を示す断面模式図である。
〔化粧シート〕
本発明の化粧シートは、基材と中間樹脂層と表面保護層とを順に有し、該表面保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該中間樹脂層と該表面保護層とが紫外線吸収剤を含有し、該中間樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(M)が、該表面保護層を構成する樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(M)よりも大きいことを特徴とするものである。
本発明の化粧シートの構成を、図1及び2を用いて説明する。図1は、本発明の化粧シート10の一例の断面を示す模式図であり、基材11、中間樹脂層14、表面保護層15を有しており、中間樹脂層14及び表面保護層15には紫外線吸収剤17が含まれており、中間樹脂層14中の紫外線吸収剤17の含有量の方が多いことが示されている。
図2は、本発明の化粧シート10の好ましい態様の一例の断面を示す模式図であり、該化粧シート10は、基材11、装飾層12、接着層13、中間樹脂層14(樹脂層14a、プライマー層14b)、及び表面保護層15を順に有し、基材11の表面保護層15側の面とは反対側の面には裏面プライマー層16を有し、基材11及び装飾層12には白色顔料18が含まれている。図2において、中間樹脂層14は、樹脂層14a及びプライマー層14bという二つの層からなり、これらの層中には紫外線吸収剤17が含まれており、かつこれらの層中に含まれる紫外線吸収剤17の含有量は、いずれも表面保護層15中の紫外線吸収剤17の含有量よりも多いことが示されている。また、図2においては、表面保護層15の基材11とは反対側の面(最表面)に凹部19を有しており、凹部19には、表面保護層15内に留まるもの、中間樹脂層14に至るもの、基材11に至るもの等があることが示されている。
(紫外線吸収剤の含有量)
本発明の化粧シートは、中間樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(M)(以下、単に「含有量(M)」と称することがある。)が、該表面保護層を構成する樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(M)(以下、単に「含有量(M)」と称することがある。)よりも大きいこと、すなわち下記の不等式により示される関係を有することを特徴とする。
含有量(M)>含有量(M
化粧シートを直射日光に晒される厳しい環境下で用いる場合、化粧シートの劣化を抑制するには、化粧シートを通過する紫外線量を低減させる観点から、直射日光に直接晒される最表面の層、すなわち表面保護層に紫外線吸収剤をより多く含有させることが好ましい。しかし、紫外線吸収剤を表面保護層中に多量に含有させると、長期間の使用の間に、紫外線吸収剤がブリードアウトしてしまい、化粧シート中に保持される紫外線吸収剤の含有量が減り、耐候性が低下してしまう。本発明では、表面保護層と基材とに挟まれる中間樹脂層に紫外線吸収剤をより多く含有させ、かつ表面保護層を硬化性樹脂組成物の硬化物とすることにより、表面保護層だけでなく中間樹脂層中の紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制し、長期的な使用によっても化粧シート中に保持される紫外線吸収剤の含有量を保持できるため、優れた耐候性が得られる。
本発明において、含有量(M)が含有量(M)よりも大きいことの意味は、中間樹脂層の構成により以下の態様に大別される。(i)中間樹脂層が一層構成の場合は、該中間樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量を「含有量(M)」とし、該含有量(M)が含有量(M)よりも大きい、(ii)中間樹脂層が少なくとも二層を有する多層構成であって、該中間樹脂層を構成する一層に紫外線吸収剤が含有されている場合、該一層中の紫外線吸収剤の含有量を「含有量(M)」とし、該含有量(M)が含有量(M)よりも大きい、(iii)中間樹脂層が少なくとも二層を有する多層構成であって、該中間樹脂層を構成する二層以上に紫外線吸収剤が含有されている場合、その少なくとも一層における紫外線吸収剤の含有量が、含有量(M)よりも大きければよく、これらの層中の紫外線吸収剤の含有量が最も多い層中の紫外線吸収剤の含有量を「含有量(M)」とし、該含有量(M)が含有量(M)よりも大きい、ことを意味する。
上記(iii)の場合、耐候性の向上の観点から、より多くの層中の紫外線吸収剤の含有量が、表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量(M)より大きいことが好ましく、中間樹脂層を構成する全ての層中の紫外線吸収剤の含有量が、表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量(M)よりも大きいことが好ましい。また、中間樹脂層を構成する各層について、基材に一番近い層中の紫外線吸収剤の含有量が最大となり、以下、基材側から表面保護層側に向かって、順次各層中の紫外線吸収剤の含有量が減少し、かつ表面保護層に一番近い側に位置する層の紫外線吸収剤の含有量(中間樹脂層を構成する層で、紫外線吸収剤の含有量が最小となる層の、紫外線吸収剤の含有量)がなお表面保護層の含有量(M)より大きいことが更に好ましい。なお、中間樹脂層を構成する層については後述する。
中間樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量(M)と表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量(M)との合計(M+M)は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましく、10質量部以上が更に好ましい。また上限としては、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下が更に好ましい。ここで、含有量(M)は、上記(i)〜(iii)に応じて決定されるものである。合計(M+M)が上記範囲内であると、中間樹脂層、表面保護層の機能を阻害することがなく、優れた耐候性が得られる。なお、本明細書において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」に係る数値は任意に組み合わせることができる数値である。
中間樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量(M)と表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量(M)との比(M/M)は、1.1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が特に好ましい。また、上限としては、35以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましく、20以下が特に好ましい。ここで、含有量(M)は、上記(i)〜(iii)に応じて決定されるものである。比(M/M)が上記範囲内であると、中間樹脂層、表面保護層の機能を阻害することがなく、優れた耐候性が得られる。
紫外線吸収性能は、下記関係式で示されるランベルト・ベールの法則により、紫外線吸収剤を含む層の厚さに比例することが知られている。
−log(I/IO)=ε×c×d
(ここで、IOは入射光の強度、Iは透過光の強度、−log(I/IO)は吸光度、εは光係数、cは紫外線吸収剤の濃度、dは紫外線吸収剤を含む層の厚さを示す。)
このランベルト・ベールの法則を示す上記関係式から分かるように、紫外線吸収剤を含む層における紫外線吸収剤の濃度と厚みとには一定の関係性があることから、中間樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量(M)と該中間樹脂層の厚さ(T)との積(M×T)が、表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量(M)と該表面保護層の厚さ(T)との積(M×T)よりも大きいこと、すなわち下記の不等式により示される関係を有することが好ましい。
積(M×T)>積(M×T
積(M×T)が積(M×T)よりも大きいと、優れた耐候性及び耐傷性とが得られる。含有量(M)は、上記(i)〜(iii)に応じて決定され、厚さ(T)は該含有量(M)を有する層の厚さとなる。また、中間樹脂層が二層以上を有する多層構成である場合、少なくとも一層が上記関係を有していればよく、優れた耐候性を得る観点から、複数の層が上記関係を有していていることが好ましく、中間樹脂層を構成する全ての層が上記関係を有していることがより好ましい。なお、本発明において、中間樹脂層が多層構成であり、含有量(M)を有する層より小さい含有量であるにも関わらず、該層の厚さ(T)よりも厚いことで、含有量と厚さの積が、積(M×T)よりも大きくなる場合があるが、そのような場合であっても、積(M×T)は、あくまで含有量(M)を有する層に対応する積とする。
また、これと同様の観点から、積(M×T)と積(M×T)との比((M×T)/(M×T))は、1より大きいことが好ましく、1.1以上がより好ましく、1.5以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、5以上が特に好ましい。また上限としては特に制限はないが、30以下であればよい。
以下、本発明の化粧シートを構成する各層について説明する。
(基材)
基材は、通常化粧シートの基材として用いられるものを制限なく採用することができ、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂基材が使用される。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などが使用される。これらの中で、加工特性を考慮すると、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂が好ましく、特にポリオレフィン樹脂が好ましい。本発明においては、これらの樹脂を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。中でも、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体が好ましい。
本発明の化粧シートは、基材及び表面保護層の少なくとも一方が白色顔料を含むことが好ましい。この場合、白色顔料は基材のみに含まれてもよいし、表面保護層のみに含まれてもよいし、基材及び表面保護層に含まれてもよい。
本発明においては、基材が白色顔料を含んだ着色樹脂基材であることが好ましい。白色顔料により着色された樹脂基材を用いることで、化粧シートを貼着する被着材の表面色相がばらついている場合に、表面色相を良好に隠蔽しやすく、より優れた意匠性が得られ、所望に応じて設けられる装飾層の色調の安定性を向上させることができる。
白色顔料としては、酸化チタン(チタン白)、鉛白、アンチモン白、二酸化チタン被覆雲母等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。本発明においては、隠蔽性(発色)、取り扱いの容易さ等を考慮すると、酸化チタン(チタン白)が好ましい。
酸化チタンには、アナターゼ型、ブルッカイト型及びルチル型があり、いずれも用いることができるが、隠蔽性(発色)に優れ、耐候性を考慮すると、ルチル型が好ましい。ルチル型の酸化チタンは、光触媒活性が低いため、直射日光に晒される環境下で用いても、光触媒反応が生じにくく、光触媒反応による基材及び表面保護層、またその他の任意で設けられる層の劣化が生じにくく、結果として耐候性が向上する。
白色顔料は、耐候性への影響を考慮して、表面処理されたものであることが好ましい。表面処理された白色顔料としては、例えば、無機金属含水酸化物で表面処理されて、無機含水酸化物微粒子で表面が覆われたものが好ましく挙げられる。無機金属含水酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニアの他、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛等が好ましく挙げられる。また、表面が未処理の酸化チタン、又は上記の無機金属含水酸化物で表面処理された酸化チタンを、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等のカップリング剤、又はシリコーンオイル、フッ素系オイル等で表面処理して、表面を疎水性や親油性にしたものも好ましく挙げられる。本発明においては、上記の表面処理を単独で施されたもの、又は複数の表面処理を組み合わせて施された白色顔料を用いることができる。
本発明においては、優れた隠蔽性を得る観点から、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛による表面処理が好ましく、アルミナ、シリカによる表面処理がより好ましく、特にアルミナ及びシリカによる表面処理が好ましい。
白色顔料の一次粒子の平均粒径は、0.02μm以上1.5μm以下が好ましく、0.15μm以上0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.3μm以下が更に好ましい。白色顔料の平均粒径が上記範囲内であると、優れた発色が得られ、高い隠蔽性とともに、意匠性が得られる。ここで、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求めることができる値である。
基材は、白色顔料を含んだ着色樹脂基材である場合、着色の態様には特に制限はなく、透明着色であってもよいし、不透明着色(隠蔽着色)であってもよく、これらは任意に選択できる。例えば、化粧シートを貼着する鋼板などの被着材の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、化粧材に用いられる被着材の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
白色顔料の含有量は、透明着色とするか、不透明着色(隠蔽着色)とするかに応じて適宜調整すればよく、例えば、基材を構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下が好ましく、3質量部以上40質量部以下がより好ましく、5質量部以上30質量部以下が更に好ましく、5質量部以上20質量部以下が特に好ましい。
基材は、白色顔料以外の着色剤を含んでもよい。例えば、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤が挙げられる。
基材には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機充填剤、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、特に加工特性を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
本発明の化粧シートの耐候性を向上させる観点から、上記添加剤の中でも、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましく、光安定剤を用いることが好ましい。
基材は、化粧材とした場合に表面保護層と被着材との間に位置する層であるため、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤のブリードアウトによる耐候性の低下への影響は、他の層に比べて小さいものといえる。基材に用いられる紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。また、例えば、後述する中間樹脂層に特に好ましく用いられるものとして例示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、更に特定の一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、例えば、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル(メタ)アクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)−2−n−ブチルマロネート等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のデカン二酸(セバシン酸)由来のヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、紫外線吸収剤、光安定剤は、光安定剤の一つとして上記に例示するように、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。
基材中の紫外線吸収剤の含有量は、基材を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上2質量部以下が更に好ましい。また、基材中の光安定剤の含有量は、基材を構成する樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上8質量部以下がより好ましく、3質量部以上6質量部以下が更に好ましい。基材中の紫外線吸収剤、光安定剤の含有量が上記範囲内であると、ブリードアウトすることなく、優れた添加効果が得られる。
基材は、上記樹脂の単層、あるいは同種又は異種樹脂による複層のいずれの構成であってもよい。
基材の厚さは、特に加工特性を考慮すると、20μm以上150μm以下が好ましく、25μm以上120μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下が更に好ましく、特に40μm以上80μm以下が好ましい。
また、基材は、基材と他の層との層間密着性の向上、各種の被着材との接着性の強化等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。
酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン−紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が、表面処理の効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
また、基材と他の層との層間密着性の向上、各種の被着材との接着性の強化、更には白色顔料による劣化の抑制等のために、基材にプライマー層、裏面プライマー層を形成する等の処理を施してもよい。これらのプライマー層については、後述する。
(中間樹脂層)
中間樹脂層は、基材と表面保護層との間に設けられる層であり、紫外線吸収剤を含有し、かつその含有量(M)が、表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量(M)よりも大きいことを要する層である。
中間樹脂層は一層構成でもよく、少なくとも二層を有する多層構成であってもよく、例えば、化粧シートとしての性能向上の観点から、樹脂層、プライマー層を有することが好ましい。
(樹脂層)
樹脂層は、後述する装飾層の保護、加工特性、耐傷性の向上の観点から、好ましく設けられる層である。樹脂層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましく、中間樹脂層が樹脂層による一層構成の場合は、紫外線吸収剤を含有することを要する。樹脂層が紫外線吸収剤を含むことで、より優れた耐候性が得られる。
樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が好ましく挙げられる。中でも、加工特性と、耐傷性及び耐候性の向上の観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、基材を構成し得るものとして例示した樹脂が挙げられ、中でもポリプロピレン樹脂が好ましい。
樹脂層は、本発明の化粧シートが装飾層を有する場合、装飾層を保護する観点から、装飾層と表面保護層との間に設けられる、すなわち、中間樹脂層は装飾層と表面保護層との間に設けられることが好ましい。
樹脂層は透明であっても不透明でもよく、装飾層と表面保護層との間に設けられる場合は、装飾層をより鮮明に視認できるようにする観点から、透明であることが好ましい。ここで、透明とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むものである。また、着色されている場合、用いられる着色剤としては、上記の基材に用いられる着色剤と同様のものが好ましく挙げられ、白色顔料を好ましく用いることができる。
樹脂層に用いられる紫外線吸収剤としては、基材に用い得るものとして例示した紫外線吸収剤、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤の中でも、トリアジン環に、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基及びこれらの基を含む有機基から選ばれる少なくとも一つの有機基が三つ連結したヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましく、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が更に好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、分岐構造を有するため、中間樹脂層からブリードアウトしにくくなることが期待され、より長期的に優れた耐候性が得られる。
Figure 0006957934
一般式(1)中、R11は2価の有機基であり、R12は−C(=O)OR15で示されるエステル基であり、R13、R14及びR15は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1〜5の整数である。
11の2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が挙げられ、耐候性の観点から、アルキレン基が好ましく、その炭素数は、1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上8以下が更に好ましく、1以上4以下が特に好ましい。アルキレン基、アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、2,2−プロピレン等の各種プロピレン基(以下、「各種」は、直鎖状、分岐状、及びこれらの異性体のものを含むものを示す。)、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種へプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基、各種ウンデシレン基、各種ドデシレン基、各種トリデシレン基、各種テトラデシレン基、各種ペンタデシレン基、各種ヘキサデシレン基、各種ヘプタデシレン基、各種オクタデシレン基、各種ノナデシレン基、各種イコシレン基が挙げられる。
13及びR14の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基が好ましい。中でも、R13及びR14の1価の有機基としては、フェニル基が好ましい。
アリール基としては、好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下のアリール基、例えば、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等が挙げられる。アリールアルキル基としては、好ましくは炭素数7以上20以下、より好ましくは炭素数7以上12以下、更に好ましくは炭素数7以上10以下のアリールアルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基、各種メチルベンジル基、各種エチルベンジル基、各種プロピルベンジル基、各種ブチルベンジル基、各種ヘキシルベンジル基等が挙げられる。
15の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。すなわち、R12としては、アルキルエステル基、アルケニルエステル基が好ましく、アルキルエステル基がより好ましい。
アルキル基としては、好ましくは炭素数1以上20以下、より好ましくは2以上16以下、更に好ましくは6以上12以下のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種イコシル基が挙げられる。
アルケニル基としては、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは3以上16以下、更に好ましくは6以上12以下のアルケニル基、例えば、ビニル基、各種プロペニル基、各種ブテニル基、各種ペンテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ウンデセニル基、各種ドデセニル基、各種トリデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基が挙げられる。
一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物としては、より具体的には、R11が炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数1以上20以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上20以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましく、R11が炭素数1以上12以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数2以上16以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上12以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物がより好ましく、R11が炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、R12がR15及び炭素数6以上12以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上10以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が更に好ましく、R11が炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数8のアルキル基であるエステル基であり、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が特に好ましい。
一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物としては、更に具体的には、下記化学式(2)で示される、R11がエチレン基であり、R12及びR15がイソオクチル基であるエステル基であり、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物、すなわち2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンが好ましく、このヒドロキシフェニルトリアジン化合物は、例えば、市販品(「TINUVIN479」、BASF社製)として入手可能である。
Figure 0006957934
樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の向上の観点から、該樹脂層を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下が好ましく、0.2質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下が更に好ましい。
樹脂層は、耐候性を向上させる観点から、光安定剤を含むことが好ましい。光安定剤としては、基材に用い得るものとして例示した、光安定剤を挙げることができる。光安定剤の含有量は、耐候性の向上の観点から、基材中の含有量と同じ範囲を例示することができる。
また、樹脂層は、必要に応じて、上記の紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤の他、他の添加剤が配合されていてもよく、上記基材中に配合し得る添加剤、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機充填剤、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤等が挙げられる。
樹脂層の厚さは、装飾層の保護、加工特性と、耐傷性及び耐候性の向上の観点から、10μm以上150μm以下が好ましく、30μm以上120μm以下がより好ましく、50μm以上100μm以下が更に好ましい。
また、装飾層を保護し、かつ優れた耐傷性を得る観点から、基材シートよりも厚くすることが好ましい。
樹脂層は、樹脂層と他の層との層間密着性の向上等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。これらの物理的または化学的表面処理としては、上記の基材の表面処理と同じの方法が好ましく例示される。
また、樹脂層と他の層との層間密着性の向上、更には白色顔料の耐候性への影響の抑制効果を得る等のために、樹脂層の片面又は両面にプライマー層を形成する等の処理を施してもよい。このプライマー層については、後述する。
(プライマー層)
プライマー層は、設けられる箇所に応じて求められる効果が異なっており、主に層間密着性の向上効果、及び白色顔料の耐候性への影響の抑制効果を得るために設けられる。プライマー層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましく、中間樹脂層がプライマー層による一層構成の場合は、紫外線吸収剤を含有することを要する。プライマー層が紫外線吸収剤を含むことで、より優れた耐候性が得られる。
例えば、中間樹脂層がプライマー層の一層構成であり、基材と表面保護層との間に設けられる場合、基材と表面保護層との層間密着性の向上効果が得られる。また基材及び表面保護層の少なくとも一方が白色顔料を含む場合は、化粧シートを直射日光に晒される環境下で用いると、耐候性への懸念があるが、プライマー層を有することで、該白色顔料の耐候性への影響を抑制し、優れた耐候性が得られる。
装飾層が設けられ、かつ中間樹脂層がプライマー層と樹脂層とを有する場合であって、プライマー層が該樹脂層と表面保護層との間に設けられる場合は、該樹脂層と該表面保護層との層間密着性の向上効果が得られる。基材、装飾層、表面保護層の少なくとも一層が白色顔料を含む場合は、白色顔料の耐候性への影響の抑制を抑制し、優れた耐候性が得られる。プライマー層が装飾層と樹脂層との間に設けられる場合は、装飾層と樹脂層との層間密着性の向上効果が得られる。また、装飾層が白色顔料を含む場合は、白色顔料の耐候性への影響を抑制し、優れた耐候性が得られる。
以上の観点から、中間樹脂層は、樹脂層とプライマー層とを有することが好ましく、本発明の化粧シートは、例えば、基材、中間樹脂層(樹脂層、プライマー層)、表面保護層の順に有するものであることが好ましく、基材、装飾層、中間樹脂層(樹脂層、プライマー層)、表面保護層の順に有するものであることがより好ましい。また、中間樹脂層は、プライマー層と樹脂層とプライマー層とを順に有する樹脂層であることも好ましい。
プライマー層の形成には、例えば、バインダーに紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合した、プライマー層形成用樹脂組成物が用いられる。
紫外線吸収剤としては、上記樹脂層に含まれ得るものとして例示した紫外線吸収剤、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤の中でもヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましく、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が更に好ましい。
プライマー層中の紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上40質量部以下が好ましく、5質量部以上35質量部以下がより好ましく、10質量部以上30質量部以下が更に好ましく、15質量部以上25質量部以下が特に好ましい。
プライマー層は、耐候性を向上させる観点から、光安定剤を含むことが好ましい。光安定剤としては、基材に用い得るものとして例示した、光安定剤を挙げることができる。光安定剤の含有量は、耐候性の向上の観点から、プライマー層を構成する樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上20質量部以下が好ましく、1質量部以上15質量部以下がより好ましく、1.5質量部以上10質量部以下が更に好ましく、2質量部以上8質量部以下が特に好ましい。
バインダーとしては、例えば、上記の装飾層に用い得るバインダーとして例示したもの、すなわち、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン−アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン−アクリル共重合体)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。例えば、ポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体とアクリルポリオール樹脂との混合物をバインダーとして用いることができる。
また、1液硬化型の他、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPID)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
本発明においては、中間樹脂層中により多くの紫外線吸収剤を含有させる観点から、プライマー層の形成に用いられるバインダーとして、2液硬化型の硬化性樹脂を用いることが好ましい。プライマー層のバインダーとして硬化性樹脂を用いることにより、紫外線吸収剤をより強固に層中に保持することが可能となり、また紫外線吸収剤として上記の分岐構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いることで、相乗的にプライマー層中により強固に紫外線吸収剤が保持されることが期待されるため、より多くの紫外線吸収剤を含有させることができる。
プライマー層の厚さは、層間密着性の向上、耐候性の向上、更には白色顔料の耐候性への影響の抑制効果を得る観点から、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上8μm以下がより好ましく、3μm以上6μm以下が更に好ましい。
(表面保護層)
表面保護層は、硬化性樹脂組成物の硬化物であり、紫外線吸収剤を含有し、かつその含有量(M)が、中間樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量(M)よりも小さいことを要する層である。また、表面保護層は、中間樹脂層上に設けられる、本発明の化粧シートの最表面に位置する層であり、耐候性とともに、耐傷性等の表面特性の発現を担う層である。
表面保護層は、硬化性樹脂を含有する樹脂組成物の硬化物で構成される。
表面保護層の形成に用いられる硬化性樹脂としては、2液硬化型樹脂等の熱硬化性樹脂の他、電離放射線硬化性樹脂等が好ましく用いられ、これらを用いて組み合わせた、例えば、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用する、又は硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用する、いわゆるハイブリッドタイプであってもよい。
硬化性樹脂としては、表面保護層を構成する樹脂の架橋密度を高めて、表面保護層だけでなく中間樹脂層中の紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制し、優れた耐候性を得ることができ、更には耐傷性等の表面特性を向上させる観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。また、無溶媒で塗布することができ、取り扱いが容易との観点から、電子線硬化性樹脂がより好ましい。
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基を有するものである。ここで、電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
耐候性及び耐傷性、更には加工特性を向上させる観点から、官能基数は2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下が更に好ましく、特に2以上3以下が好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。耐候性及び耐傷性、更には加工特性を向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、耐候性及び耐傷性、更には加工特性を向上させる観点から、2以上8以下のものが好ましく、上限としては、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、特に3以下が好ましい。
また、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、2,500以上7,500以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましく、3,500以上6,000以下が更に好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。本発明においては、このような重量平均分子量を有し、かつ官能基数を有する重合性オリゴマーを用いることにより、表面保護層だけでなく中間樹脂層中の紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制し、より優れた耐候性を得ることができ、更には適度な硬度を有する表面保護層となるため、耐傷性、加工特性を向上させることができる。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレート等とともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂としては、耐候性及び耐傷性、更には加工特性を向上させる観点から、重合性オリゴマーを含むものであることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂中の重合性オリゴマーの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
表面保護層は、紫外線吸収剤を含むことを要する。
紫外線吸収剤としては、基材に用い得るものとして例示した紫外線吸収剤、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤の中でもヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましく、上記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が更に好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、分岐構造を有するため、ブリードアウトしにくく、また表面保護層を構成する硬化性樹脂組成物の硬化物による紫外線吸収剤の保持効果との相乗効果により、更にブリードアウトしにくくなることが期待され、より長期的に優れた耐候性が得られる。
また、本発明の化粧シートの耐候性を向上させる観点から、光安定剤を含むことが好ましい。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、基材に用い得る光安定剤として例示したヒンダードアミン系光安定剤を用いることができ、耐候性の観点から、デカン二酸(セバシン酸)由来のヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、紫外線吸収剤、光安定剤は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。
表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量(M)は、上記中間樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量(M)より小さければ特に制限はないが、より優れた耐候性を得る観点から、表面保護層を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上3質量部以下が更に好ましく、特に0.5質量部以上2質量部以下が好ましい。
また、表面保護層中の光安定剤の含有量は、より優れた耐候性を得る観点から、表面保護層を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上8質量部以下がより好ましく、1質量部以上5質量部以下が更に好ましく、1.5質量部以上3質量部以下が特に好ましい。
表面保護層には、添加剤として、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤の他、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、ブロッキング防止剤、滑剤、溶剤、着色剤等を添加することができる。
また、着色剤としては、上記の通り、白色顔料が含まれていることが好ましい。この場合、表面保護層中の白色顔料の含有量は、表面保護層を構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上30質量部以下が好ましく、3質量部以上20質量部以下がより好ましく、5質量部以上10質量部以下が更に好ましい。
本発明の化粧シートは、表面保護層のマルテンス硬度が9N/mm以上25N/mm以下であることが好ましい。マルテンス硬度が上記範囲内であると、化粧シートを曲げ加工等の加工を施した際に表面保護層に微細なクラックが発生しにくくなり、長期かつ厳しい環境下においても表面保護層中の紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制され、更には中間樹脂層等に含まれる紫外線吸収剤のブリードアウトも抑制される。そのため、優れた耐候性とともに、優れた加工特性も得られる。また、マルテンス硬度が上記範囲内であると、基材、表面保護層等に白色顔料が含まれる場合、白色顔料の耐候性への影響を低減することができ、優れた耐傷性も得られる。
本発明において、マルテンス硬度の測定は、具体的には超微小硬度計を用いて測定される値であり、室温(23℃)において、荷重を連続的に増加させながらピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(表面保護層の面)に押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより算出される値である。なお、超微小硬度計としては、例えば、微小硬さ試験機「ピコデンターHM−500」(フィッシャー・インスツルメント社製)等を用いればよい。
耐候性、更には加工特性及び耐傷性を向上させる観点から、マルテンス硬度は10N/mm以上22N/mm以下が好ましく、12N/mm以上20N/mm以下がより好ましい。
マルテンス硬度は、主に基材、表面保護層の諸構成により調整することが可能であり、例えば、上記の基材及び表面保護層の材料、厚さ等の諸構成より任意に選択することで、マルテンス硬度を上記範囲内とすることが可能である。
表面保護層の厚さは、耐候性、更には加工特性及び耐傷性を向上させる観点から、1.5μm以上20μm以下が好ましく、2μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上10μm以下が更に好ましい。
(装飾層)
本発明の化粧シートは、意匠性を向上させる観点から、装飾層を有することが好ましい。装飾層は、基材と表面保護層との間であれば特に制限はないが、装飾層を保護する観点から、基材と中間樹脂層との間に設けられることが好ましい。
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよいし、またこれらを組み合わせたものであってもよい。例えば、被着材の地色を着色隠蔽する場合には、ベタ着色層とすることで、着色隠蔽しつつ、意匠性を向上させることができるし、更に意匠性を向上させる観点から、ベタ着色層と絵柄層とを組み合わせてもよいし、一方、被着材の地模様を生かす場合は、ベタ着色層とせずに絵柄層のみを設ければよい。
装飾層に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン−アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン−アクリル共重合体)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、1液硬化型の他、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPID)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
着色剤としては、被着材の地色を着色隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、上記の基材に用いられる着色剤として例示した白色顔料が好ましく用いられる。装飾層中の白色顔料の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下が更に好ましい。
また、白色顔料以外の着色剤、例えば、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤を用いることもできる。
装飾層は、耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を含むことが好ましく、光安定剤を含むことがより好ましい。
紫外線吸収剤、光安定剤としては、上記基材、中間樹脂層、表面保護層に含まれ得るものとして例示した、紫外線吸収剤、光安定剤を挙げることができる。紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の向上の観点から、表面保護層中の含有量と同じ範囲を例示することができる。また、表面保護層中の光安定剤の含有量は、表面保護層を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上3質量部以下が更に好ましく、特に0.5質量部以上2質量部以下が好ましい。
装飾層として絵柄層を有する場合、その模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
装飾層の厚さは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を着色隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下が更に好ましい。
(裏面プライマー層)
本発明の化粧シートは、基材の表面保護層側とは反対側の面に、プライマー層(「裏面プライマー層」とも称する。)を有することが好ましい。基材と被着材との層間密着性の向上効果が得られる。また、基材が白色顔料を含む場合、白色顔料の被着材への影響を抑制する効果が得られ、化粧シート及び化粧材について、優れた耐候性が得られる。なお、この裏面プライマーは、上記のプライマー層とは異なり、中間樹脂層に含まれ得る層ではない。
裏面プライマー層は、上記プライマー層を構成する樹脂組成物を用いて形成すればよく、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を含んでいてもよい。
裏面プライマー層の厚さは、層間密着性の向上、白色顔料による被着材への影響を抑制する観点から、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上8μm以下がより好ましく、3μm以上6μm以下が更に好ましい。
(接着層)
本発明の化粧シートは、必要に応じて接着層を有することができる。特に、本発明の化粧シートが中間樹脂層として樹脂層を有する場合、該樹脂層と装飾層との層間密着性を向上させるため、接着層を設けることは有効である。接着層を構成する接着剤としては、通常化粧シートで用いられる接着剤を制限なく用いることができる。
接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、なかでも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。なお、ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、上記の各種イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。また、アクリル−ポリエステル−塩酢ビ系樹脂等も加熱により容易に接着性を発現し、高温での使用でも接着強度を維持し得る好適な接着剤である。
接着層の厚さは、十分な接着性が得られる観点から、0.1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下が更に好ましい。
(凹部)
本発明の化粧シートは、表面保護層の基材側の面とは反対側の面(「表面側の面」とも称される。)に凹部を有することが好ましい。本発明の化粧シートは凹部を有することで、質感(触感)の向上に伴う高級感が得られ、意匠性が向上する。
凹部は、図2に示されるように、表面保護層の基材側とは反対側の面に存在していればよく、凹部の深さは表面保護層内に留まるものであってもよいし、また基材まで至るものがあってもよい。優れた質感(触感)を得る観点から、表面保護層内に留まるものだけでなく、中間樹脂層まで至るもの、装飾層まで至るもの、基材まで至るものが組み合わされていることが好ましい。
凹部の最大深さDと化粧シートの総厚さTとは、意匠性を向上させる観点から、0.15×T≦D≦Tの関係を有することが好ましい、すなわち、凹部の深さDと化粧シートの総厚Tとの比率D/Tが、0.15以上1以下が好ましい。また、これと同様の観点から、凹部の深さDと化粧シートの総厚さTとの関係は、0.2×T≦D≦0.9×Tがより好ましく、0.25×T≦D≦0.8×Tが更に好ましい。すなわち、凹部の深さDと化粧シートの総厚Tとの比率D/Tは0.2以上0.9以下が好ましく、0.25以上0.8以下が更に好ましい。
また、凹部の最大深さは、化粧シートの総厚さTに応じて相対的に変わり得るが、より具体的な深さとしては、10μm以上120μm以下が好ましく、20μm以上110μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下が更に好ましい。このような最大深さを有することで、凹部の加工、例えばエンボス加工の際に化粧シートが破断してしまうことがなく、凹部が潰れたように仕上がってしまうこともなく、質感(触感)の向上に伴う高級感が得られ、意匠性が向上する。
ここで、凹部の最大深さDの測定は、任意の30点の凹形状について、該凹部の最下点から表面保護層の表面までの高さを、表面粗さ形状測定機を用いて、カットオフ値:2.50mm、カットオフフィルタの種類:2RC、傾斜補正方法:直線の測定条件で測定し、最も深いものを最大深さとした。
凹部の模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。意匠性を向上させる観点から、凹部の模様は、装飾層の絵柄と同調させた模様であることが好ましい。例えば、絵柄層が木目模様の場合は、凹部の模様として木目板導管溝を選択し、かつ絵柄層の木目と凹部の木目とを同調させると、よりリアルで質感に溢れた、高級感のある化粧シート、化粧材が得られる。
(化粧シートの製造方法)
本発明の化粧シートの製造方法について、本発明の化粧シートとして好ましい態様の一つである、裏面プライマー層、基材、装飾層、接着層、中間樹脂層(樹脂層及びプライマー層)、及び表面保護層を順に有する化粧シートを例にとって、その製造方法を説明する。
本発明の化粧シートは、例えば、基材に装飾層を設ける工程(1)、該装飾層上に樹脂層を設ける工程(2)、及び該樹脂層上に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成する工程(3)を順に経ることにより製造することができる。
工程(1)は、基材上に装飾層を設ける工程である。装飾層は、基材上に装飾層の形成に用いられるインキを塗布して所望の着色層、絵柄層を設けることにより形成される。該インキの塗布は、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式、好ましくはグラビア印刷法により行う。
また、基材に表面処理を施す場合は、装飾層を形成する場合であって、基材と装飾層との間にプライマー層を設ける場合、装飾層の形成前に設ければよく、また基材の装飾層側とは反対側の面(裏面)に裏面プライマー層を設ける場合は、装飾層の形成後に設けてもよい。プライマー層の形成は、プライマー層を構成する樹脂組成物を、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布して形成することができる。
工程(2)は、装飾層上に樹脂層を設ける工程である。樹脂層は、上記の装飾層を有する基材に必要に応じて接着剤を塗布して接着層を形成した後に、樹脂層を構成する樹脂組成物を用いて、樹脂層を押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーション等の方法により接着及び圧着させて積層して形成することができる。
樹脂層に表面処理を施す場合は、樹脂層を設けた後に表面処理を行えばよい。
また、樹脂層と表面保護層との間にプライマー層を設ける場合、樹脂層を設けた後にプライマー層を構成する樹脂組成物を用いてプライマー層を設ければよい。
工程(3)は、樹脂層上に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成する工程である。
表面保護層は、上記の電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を、樹脂層あるいは該樹脂層上に所望に応じて設けられたプライマー層の上に塗布し、硬化させて得られる。なお、樹脂層を設けない場合は、基材シートに装飾層を設けた後、硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成すればよい。
表面保護層を形成するための、樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが所定の厚さとなるように、好ましくはグラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式により、より好ましくはグラビアコートにより行う。
表面保護層の形成に電離放射線樹脂組成物を用いる場合、該樹脂組成物の塗布により形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して硬化物とすることで、表面保護層となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
表面保護層の形成に熱硬化性樹脂組成物を用いる場合は、使用する樹脂組成物に応じた熱処理を施して、硬化させて表面保護層を形成すればよい。
表面保護層に凹部を形成する場合、例えば、作業の容易さを考慮すると、エンボス加工を採用することが好ましい。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を使用する通常の方法により行えばよい。
エンボス加工を行う場合、例えば、化粧シートを好ましくは80℃以上260℃以下、より好ましくは85℃以上160℃以下、更に好ましくは100℃以上140℃以下に加熱し、化粧シートにエンボス版を押圧して、エンボス加工を行うことができる。
〔化粧材〕
本発明の化粧材は、被着材と上記の本発明の化粧シートとを有するものであり、具体的には、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材側の面とを対向させて積層したものである。すなわち、本発明の化粧材は、少なくとも、被着材、基材、及び表面保護層を順に有するものである。図3に、本発明の化粧材の好ましい態様の一例の断面を示す模式図を示す。図3に示される本発明の化粧材20は、被着材21、接着剤層22、及び本発明の化粧シート10を順に有する。
(被着材)
被着材としては、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。例えば、杉、檜、松、ラワン等の各種木材からなる木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として用いられる木質部材;鉄、アルミニウム等の板材や鋼板、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として用いられる窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
被着材は、上記のなかから用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましく、玄関ドア等の外装用部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mmがより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
(接着剤層)
被着材と化粧シートとは、優れた接着性を得るため、接着剤層を介して貼り合わせられることが好ましい。すなわち、本発明の化粧材は、少なくとも被着材、接着剤層、基材、及び表面保護層を順に有する部材であることが好ましい。
接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができ、例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。この接着剤層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤も適用し得る。
また、接着剤層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して用いることができる。
接着剤層は、上記の樹脂を溶液、あるいはエマルジョン等の塗布可能な形態にしたものを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
(化粧材の製造方法)
化粧材は、化粧シートと被着材とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、本発明の化粧シートとを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材側の面とを対向させて積層する。被着材と化粧シートとの積層する方法としては、例えば、接着剤を間に介して化粧シートを板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法、接着剤を間に介して化粧シートを供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、被着材を構成する複数の側面に順次化粧シートを加圧接着して積層していくラッピング加工、また、固定枠に固定した化粧シートが軟化する所定の温度になるまでシリコーンゴムシートを介してヒーターで加熱し、加熱され軟化した化粧シートに真空成形金型を押し付け、同時に真空成形金型から真空ポンプ等で空気を吸引し化粧シートを真空成形金型に密着させる真空成形加工等が好ましく挙げられる。
ラミネート加工やラッピング加工において、ホットメルト接着剤(感熱接着剤)を用いる場合、接着剤を構成する樹脂の種類にもよるが、加温温度は160℃以上200℃以下が好ましく、反応性ホットメルト接着剤では100℃以上130℃以下が好ましい。また、真空成形加工の場合は加熱しながら行うことが一般的であり、80℃以上130℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上120℃以下である。
以上のようにして得られる化粧材は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。また、化粧シートを鋼板等に貼着した後、Vカット加工、ラッピング加工等の曲げ加工を施すこともできる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装用部材等に用いることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価及び測定方法)
(1)耐候性の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧材について、サンシャインウェザーメーター(「WEL−300」、スガ試験機株式会社製)を用いて、ブラックパネル温度63℃、120分中18分降雨の条件下で6000時間放置する耐候試験を行った。耐候試験後の化粧材の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、本明細書において、表中に以下基準とともに、「+」が記載される場合、「+」は「より優れているが、一段階上の評価には至らない」ことを示すものとする。例えば、「B」であれば、「B」よりも優れているが、「A」には至らないことを示す。
A:外観変化は確認されなかった。
B:極軽微な色調変化は確認された。
C:軽微な色調変化が確認された。
D:顕著な色調変化、各層間の浮き、割れの少なくともいずれかが確認された。
(2)耐傷性の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、その表面に対して、スチールウール(「ボンスター#0000」、日本スチールウール株式会社製)を用いて、300g/mの荷重で10往復させて、ラビング試験を行った。試験後の表面の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:傷付きがなく、艶の変化が確認されなかった。
B:極軽微な傷付き、及び極軽微な艶の変化が確認された。
C:軽微な傷付き、及び軽微な艶の変化が確認された。
D:傷付きが確認され、著しい艶変化が確認された。
(3)加工特性(ラッピング加工)の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧材について、角部(曲げ部)の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:角部(曲げ部)において、外観変化は確認されなかった。
B:角部(曲げ部)において、軽微な白化は確認されたが、クラックは確認されなかった。
C:角部(曲げ部)において、軽微な白化及びクラックが確認された。
D:角部(曲げ部)において、著しい白化及びクラックが確認された。
(4)意匠性の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧材について、意匠性を以下の基準で評価した。
A:凹部による優れた質感による、高い意匠性が確認された。
B:凹部による質感による、十分な意匠性が確認された。
C:凹部による質感が少ないが、意匠性が確認された。
D:凹部による質感がなく、意匠性が低かった。
(5)マルテンス硬度の測定
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、マルテンス硬度を以下の方法により測定した。
超微小硬度計(微小硬さ試験機、「ピコデンターHM−500」、フィッシャー・インスツルメント社製)を用いて、室温(23℃)において、荷重を連続的に増加させながらピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(表面保護層の面)に押し込み、押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を測定し、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより、マルテンス硬度を算出した。
実施例1
両面コロナ放電処理を施したポリプロピレン樹脂シート(厚さ:60μm、白色の着色樹脂シート(白色顔料:ルチル型酸化チタン(平均粒径:0.25μm)、含有量:10質量%))を基材とし、該基材の一方の面に2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂をバインダーとする印刷インキ(白色顔料としてルチル型酸化チタン(平均粒径:0.25μm)を40質量%含有)をグラビア印刷法で塗布して木目模様の装飾層(厚さ:3μm)を設け、他方の面に2液硬化型ウレタン−硝化綿混合樹脂組成物を塗布して裏面プライマー層(厚さ:2μm)を形成した。
装飾層の上に、透明のポリウレタン樹脂系接着剤を塗布して接着層(乾燥後の厚さ:3μm)を形成し、透明なポリプロピレン樹脂をTダイ押出機により加熱溶融押出しして、透明な樹脂層(厚さ:80μm)を形成した。
次いで、樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、下記のプライマー層形成用樹脂組成物100質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)5質量部とを混合した組成物を、グラビア印刷法で塗布してプライマー層(乾燥後の厚さ:4μm)を形成した。
さらに、プライマー層上に、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をロールコート法により塗布して未硬化樹脂層を形成し、電子線(加圧電圧:175KeV、5Mrad(50kGy))を照射して未硬化樹脂層を硬化させて、表面保護層(厚さ:5μm)を得た。その後、表面保護層側からエンボス加工を施して、最大深さ50μmの凹部を有する木目導管模様を形成し、化粧シートを得た。
得られた化粧シートの基材に、ポリウレタン系感熱接着剤(ホットメルト接着剤、「PUR704」、株式会社クライベリットジャパン製)を塗布して接着剤層(厚さ:20μm)を形成し、接着剤層が固化する前に、断面形状がL字型の被着材(材質;塩化ビニル)に化粧シートを追従させるようにして、被着材と化粧シートとを貼着し、化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
(プライマー層形成用樹脂組成物)
バインダー:ポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体及びアクリルポリオール樹脂の混合物
紫外線吸収剤A:上記一般式(2)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN479」、BASF社製)3質量%(上記樹脂の混合物100質量部に対して3.7質量部)
紫外線吸収剤B:下記一般式(3)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN400」、BASF社製)12質量%(上記樹脂の混合物100質量部に対して14.6質量部)
Figure 0006957934
光安定剤a:ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製)3質量%
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
電離放射線硬化性樹脂A:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:4,000、官能基数:3)
紫外線吸収剤A:上記一般式(2)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN479」,BASF社製)1質量%(上記樹脂の混合物100質量部に対して1.0質量部)
光安定剤a:ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製)2質量%
実施例2、3
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂を下記の電離放射線硬化性樹脂B、Cとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2、3の化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
電離放射線硬化性樹脂B:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:7,000、官能基数:3)
電離放射線硬化性樹脂C:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:3,000、官能基数:3)
実施例4
実施例1において、基材に上記の光安定剤a(ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製))を1質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
実施例5
実施例1において、装飾層の形成に用いる印刷インキに、上記の光安定剤a(ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製))を1質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
実施例6
実施例1において、基材及び装飾層の形成に用いる印刷インキに、上記光安定剤a(ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製))を1質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
実施例7
実施例1において、プライマー層形成用樹脂組成物を、光安定剤aを含まない樹脂組成物に代え、凹部の最大深さが140μmのエンボス加工を施した以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
実施例8
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の紫外線吸収剤Aを紫外線吸収剤C(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(5−クロロ−ベンゾトリアゾリル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール、「TINUVIN326」、BASF社製)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例8の化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
実施例9
実施例1において、凹部の最大深さが10μmのエンボス加工を施した以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
実施例10
実施例1において、プライマー層形成用樹脂組成物中の紫外線吸収剤A及びBの含有量3質量%及び12質量%を各々3.1質量%及び6.9質量%とし(樹脂100質量部に対して、各々3.6質量部、7.9質量部で合計11.5質量部)、電離放射線硬化性樹脂組成物中の紫外線吸収剤Aの含有量1質量%を7.1質量%とした(電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して7.8質量部)以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
実施例11
実施例1において、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、上記紫外線吸収剤Aを3質量部添加した以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の紫外線吸収剤Aを除いた以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、
プライマー層形成用樹脂組成物の紫外線吸収剤A及びBの含有量をいずれも1質量%とし(樹脂100質量部に対して、各々1.1質量部、1.1質量部で合計2.2質量部)、電離放射線硬化性樹脂組成物中の紫外線吸収剤Aの含有量を15質量%とした(樹脂100質量部に対して、18.1質量部)以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧材を作製した。得られた化粧シート、及び化粧部材について、上記の評価を行い、その評価結果を第1表に示す。
Figure 0006957934
実施例1〜11の結果から、本発明の化粧シート、該化粧シートを用いた化粧材は耐候性に優れるものであることが確認された。また、耐傷性、加工特性、及び意匠性にも優れていることが確認された。実施例1と10との対比から、化粧シート中に含まれる紫外線吸収剤の含有量が同じである場合、中間樹脂層中に含まれる紫外線吸収剤の含有量がより多い実施例1の方が、耐候性に優れていることが確認された。また、実施例1と11との対比から、中間樹脂層における樹脂層中に紫外線吸収剤を含有させることにより、より優れた耐候性が得られることが確認された。
実施例8では電離放射線硬化性樹脂組成物中の紫外線吸収剤をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としたが、他の実施例との対比により、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、特に、一般式(2)で示される特定のヒドロキシフェニルトリアジン化合物を用いると、より優れた耐候性が得られることが確認された。
また、凹部最大深さ(D)について、50μm(凹部最大深さ(D)は、化粧シート厚さ(T)と(D)=0.32×(T)((D)/(T)=0.32)の関係を有する。)とした実施例1〜6の化粧シート、及び140μm((D)=0.90×(T)、(D)/(T)=0.90)とした実施例7の化粧シートは、実施例9の10μm((D)=0.06×(T)、(D)/(T)=0.06)としたものよりも、豊かな質感が得られ、意匠性に優れるものであることが確認された。
一方、表面保護層中に紫外線吸収剤を含まない比較例1の化粧シートは、耐候性が得られず、またプライマー層中の紫外線吸収剤の含有量が表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量よりも小さい比較例2の化粧シートも、耐候性が得られなかった。
本発明の化粧シートは、優れた加工特性と、耐候性及び耐傷性とを有するものであり、これを用いた化粧材は、優れた耐候性及び耐傷性を有するものである。よって、壁、天井、床等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装用部材に好適に用いられる。とりわけ、その優れた耐傷性及び耐候性をいかして、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具といった直射日光に晒される環境で用いられる部材に好適に用いられる。
10.化粧シート
11.基材
12.装飾層
13.接着層
14.中間樹脂層
14a.樹脂層
14b.プライマー層
15.表面保護層
16.裏面プライマー層
17.紫外線吸収剤
18.白色顔料
19.凹部
20.化粧材
21.被着材
22.接着剤層

Claims (22)

  1. 基材と中間樹脂層と表面保護層とを順に有し、
    該基材と該表面保護層との間に装飾層を有し、
    該表面保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該中間樹脂層と該表面保護層とが紫外線吸収剤を含有し、該中間樹脂層を構成する樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(M)が、該表面保護層を構成する樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(M)よりも大きく、該Mは、該表面保護層を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であり、
    該基材、該表面保護層及び該装飾層から選ばれる少なくとも1層が、白色顔料を含み、
    該白色顔料が、ルチル型酸化チタンである化粧シート。
  2. 前記含有量(M)と含有量(M)との合計(M+M)が、0.5質量部以上40質量部以下である請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記含有量(M)と含有量(M)との比(M/M)が、1.1以上35以下である請求項1又は2に記載の化粧シート。
  4. 基材及び表面保護層の少なくとも一方が、白色顔料を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧シート。
  5. 基材及び装飾層が、白色顔料を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧シート。
  6. 基材中の白色顔料の含有量が、該基材を構成する樹脂100質量部に対して1質量部以上50質量部以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の化粧シート。
  7. 装飾層中の白色顔料の含有量が、該装飾層を構成する樹脂100質量部に対して5質量部以上90質量部以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧シート。
  8. 表面保護層中の白色顔料の含有量が、該表面保護層構成する樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧シート。
  9. 前記中間樹脂層及び表面保護層の少なくとも一方の層に含まれる紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧シート。
  10. 前記トリアジン系紫外線吸収剤が、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含む請求項9に記載の化粧シート。
    Figure 0006957934

    (一般式(1)中、R11は2価の有機基であり、R12は−C(=O)OR15で示されるエステル基であり、R13、R14及びR15は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1〜5の整数である。)
  11. 紫外線吸収剤が、一般式(1)において、R11が炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数1以上20以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上20以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物である請求項10に記載の化粧シート。
  12. 前記硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂である請求項1〜11のいずれか1項に記載の化粧シート。
  13. 前記硬化性樹脂組成物が、官能基数が2以上8以下であり、重量平均分子量が2,500以上7,500以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂である請求項1〜12のいずれか1項に記載の化粧シート。
  14. 基材及び表面保護層の少なくとも一方が、光安定剤を含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の化粧シート。
  15. 装飾層が、光安定剤を含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の化粧シート。
  16. 光安定剤が、ヒンダードアミン系光安定剤である請求項14又は15に記載の化粧シート。
  17. 表面保護層の基材側の面とは反対側の面に凹部を有する請求項1〜16のいずれか1項に記載の化粧シート。
  18. 凹部の最大深さDと化粧シートの厚さTとが、0.15×T≦D≦Tの関係を有する凹部を有する請求項17に記載の化粧シート。
  19. 前記基材が、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル樹脂及び塩化ビニル樹脂から選ばれる樹脂からなる樹脂基材である請求項1〜18のいずれか1項に記載の化粧シート。
  20. 前記中間樹脂層が、少なくとも1層の樹脂層と少なくとも1層のプライマー層を含む請求項1〜19のいずれか1項に記載の化粧シート。
  21. 被着材と請求項1〜20のいずれか1項に記載の化粧シートとを有する化粧材。
  22. 被着材が、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなる請求項21に記載の化粧材。
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