JP7293811B2 - 化粧材 - Google Patents
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例えば特許文献1には、絵柄層及び/又は着色層の上に、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物からなる紫外線吸収剤を含有する表面保護層を積層した化粧シートが開示されている。
一方、有機系の紫外線吸収剤に代えて、無機系の紫外線吸収剤を用いた場合、無機系の紫外線吸収剤は、有機系の紫外線吸収剤と比較して経時劣化し難いため、紫外線吸収性能を長期間にわたって得られるものの、無機系の紫外線吸収剤は、有機系の紫外線吸収剤と比較して紫外線吸収能が低いため、所望の紫外線吸収性能を得るためには、当該無機系の紫外線吸収剤を多量に添加する必要がある。無機系の紫外線吸収剤を化粧材の表面保護層に多量に添加すると、外観が白濁したものとなり易く、基材(プラスチックシート)に施された色彩や模様等の意匠の視認性が損なわれ易いという問題があった。また、例えば表面保護層を架橋性の樹脂により形成した場合、無機系の紫外線吸収剤を多量に添加すると、表面保護層の架橋密度が十分に上がらず、耐候剤がブリードアウトし易くなるため、十分な耐候性が得られないという問題もあった。
一方、無機系紫外線吸収剤含有層を、表面保護層の直下の層に添加した場合、表面保護層が、当該表面保護層の直下の層に対して十分な密着性が得られないという問題があった。
前記低含有領域における前記無機系紫外線吸収剤の含有割合は、0~12質量%である、ことを特徴とする。
図1に示す化粧材10は、着色基材5の一方の面に、透明樹脂層6、無機系紫外線吸収剤含有層7、表面保護層8が、この順に積層されたものである。
図1に示す例では、透明樹脂層6、無機系紫外線吸収剤含有層7及び表面保護層8が、その直下の層の全面を被覆するように形成されている。
着色基材5としては、典型的には、前述した基材層1上に、後述する絵柄層3が設けられたものが挙げられる。
着色基材5の別の例としては、例えば図2に示すように着色層2を有するものであってもよいし、或いは、基材層1を着色したものであってもよい。
合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル樹脂あるいはアクリル樹脂が耐候性、耐水性等の各種物性、印刷適正、成型加工適正、価格の観点から好ましい。
基材層1は、透明又は半透明であってもよい。基材層1が透明又は半透明である場合には、基材に透視性があるので、基材層1の裏側、即ち、後述する無機系紫外線吸収剤含有層7が配置される側と反対側の面に、後述する絵柄層3を設けることができる。
また、基材層1として、紙類の基材を用いる場合には、坪量は、通常20~150g/m2程度、好ましくは30~100g/m2の範囲が好ましい。
着色層2の形成に用いられるインキ(以下、単に着色層形成用インキという)としては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。着色層2の形成に用いられるインキには、さらに、後述する無機系紫外線吸収剤や、有機系紫外線吸収剤を配合してもよい。
着色層2は、前述した各成分を含む着色層形成用インキを調製した後、公知の方法で印刷又は塗布し形成することができる。
着色層2を形成する場合、着色層2は、厚さ1~20μm程度のいわゆるベタ印刷層として形成することができる。
絵柄層3の厚さは、0.5~20μm程度が好ましく、1~10μmがより好ましく、2~5μmがさらに好ましい。
絵柄層3に形成される模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、皮表面の皮シボ柄、幾何学模様、文字、図形、またこれらを組合わせたものであってもよい。
絵柄層3の形成に用いる絵柄層形成用インキとしては、着色層形成用インキと同様のものを用いることができる。絵柄層3の形成に用いられる絵柄層形成用インキには、さらに、後述する無機系紫外線吸収剤や、有機系紫外線吸収剤を配合してもよい。
絵柄層3は、前述した各成分を含む絵柄層形成用インキを調製した後、例えばグラビア印刷等の公知の方法で印刷又は塗布し形成することができる。
透明樹脂層6は、透明性を有する樹脂製の層であれば特に制限なく用いることができる。
透明樹脂層6の形成に用いる樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられ、これらの中でも加工性の観点からポリオレフィン樹脂が好ましい。また、これらの各樹脂を2種類以上混合して使用してもよく、或いはこれらの各樹脂を用いて形成される層を複数積層してもよい。
透明樹脂層6には、後述する無機系紫外線吸収剤や有機系紫外線吸収剤を含有させることが可能である。透明樹脂層6に無機系紫外線吸収剤や有機系紫外線吸収剤を含有させることにより、透明樹脂層6や、透明樹脂層6よりも着色基材5側に設けられた層の耐候性を高めることができる。なお、ここで透明とは、完全に透明であることだけを意味するものでなく、半透明であることをも包含するものである。
透明樹脂層6の厚さは、通常20~150μm程度、好ましくは40~120μm、更に好ましくは60~100μmの範囲である。
また、接着性樹脂層4を設ける場合、その厚さは、通常0.1~30μm程度、好ましくは1~15μm、更に好ましくは2~10μmの範囲である。
アクリルポリオールは、(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位をポリマー主鎖中に有し、且つ、2以上の水酸基を有する重合体からなる樹脂である。なお、(メタ)アクリレート系モノマーの「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
アクリルポリオールは、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに必要に応じヒドロキシル基を有しない(メタ)アクリレート系モノマー又は(メタ)アクリレート系以外のビニル系モノマーを組み合わせて単独重合又は共重合することにより得られる。
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等を挙げることができる。
ポリエステルポリオールは、エステル結合を含む繰り返し単位をポリマー主鎖中に有し、且つ、2以上の水酸基を有する重合体からなる樹脂である。ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子ジオールとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオールや、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等がある。ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンヘキサブチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、エーテル結合を含む繰り返し単位をポリマー主鎖中に有し、且つ、2以上の水酸基を有する重合体からなる樹脂である。ポリエーテルポリオールは、グリコール、グリセリン、ソルビトール、スクロース等の多価アルコールに、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させることにより得られる。
エポキシポリオールは、ビスフェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂をアミン変性又はアミノアルコール変性することにより得られるポリオールである。ポリオレフィン系ポリオールは、ブタジエン等のオレフィンモノマー由来の繰り返し単位をポリマー主鎖中に有し、且つ、2以上の水酸基を有する重合体からなる樹脂である。フッ素含有ポリオールは、クロロフルオロエチレン等のフッ化オレフィンモノマー由来の繰り返し単位をポリマー主鎖中に有し、且つ、2以上の水酸基を有する重合体からなる樹脂である。
これらの中でも、脂肪族イソシアネートや脂環式イソシアネートを用いることが、耐候密着性の点で好ましい。
脂環式イソシアネートとしては、例えば、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、水素添加MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)、水素転化キシリレンジイソシアネート等を用いることができる。また、脂肪族イソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を用いることができる。
熱可塑性ウレタン樹脂の合成に用いるジイソシアネートとしては、例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタリンジイソシアネート、n-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、m-或いはp-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が使用される。或いは、これらのジイソシアネートの多量体又は付加体も使用できる。また、これらジイソシアネートは1種単独で使用してもよく、又は2種以上を混合して使用してもよい。
アクリルポリオール樹脂は、2液硬化型ウレタン樹脂の主剤として用いられる前記アクリルポリオールと同じものであり、(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位をポリマー主鎖中に有し、且つ、2以上の水酸基を有する重合体からなる樹脂である。
ウレタン-アクリレート系樹脂とは、ポリマー主鎖中にウレタン結合を有し、且つ、当該ポリマー主鎖の末端又は側鎖に(メタ)アクリル基を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上有する硬化性樹脂である。
これらの樹脂は(メタ)アクリル基を有するため、電離放射線を照射することにより硬化させることができる。
同様に、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリカーボネート系ウレタンアクリレート)は、ポリカーボネートポリオール(カーボネート結合を含む繰り返し単位をポリマー主鎖中に有し、且つ、ポリマー主鎖の末端及び側鎖のいずれかの位置に2個以上の水酸基を有する重合体からなるポリオール)とイソシアネートを反応させて得られた水酸基含有ウレタンポリマーに(メタ)アクリレートを反応させることにより、(メタ)アクリル基を導入したものである。
同様に、ポリエステル系ウレタン-アクリル共重合体(ポリエステル系ウレタンアクリレート)は、ポリエステルポリオール(ポリマー主鎖中にエステル結合を含む繰り返し単位をポリマー主鎖中に有し、且つ、ポリマー主鎖の末端及び側鎖のいずれかの位置に2個以上の水酸基を有する重合体からなるポリオール)とイソシアネートを反応させて得られた水酸基含有ウレタンポリマーに(メタ)アクリレートを反応させることにより、(メタ)アクリル基を導入したものである。
ウレタン-アクリレート系樹脂の合成に用いるイソシアネートとしては、前述した2液硬化型ウレタン樹脂のイソシアネート成分として用いられるジイソシアネートが好ましい。
ウレタン-アクリレート系樹脂を合成するために用いられる水酸基含有ウレタンポリマーと、(メタ)アクリル基を導入するための(メタ)アクリレートとの質量比は、特に制限されないが、耐候性、耐溶剤性の点で、水酸基含有ウレタンポリマー:(メタ)アクリレートの質量比を80:20~20:80の範囲とすることが好ましく、70:30~30:70の範囲とすることがより好ましい。
水酸基含有ウレタンポリマー及び(メタ)アクリレートの含有量が上記の範囲内であると過度に硬い塗膜となることがなく、十分な加工適性が得られ、折り曲げ加工時に樹脂表面上に白い筋(白化)が生じるといった問題が起こりにくい。
この場合、2液硬化型ウレタン樹脂の主剤であるポリオール成分にウレタン-アクリレート系樹脂を混合することにより、予め主剤組成物を調製する。また、これとは別に、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化剤であるイソシアネート成分を含む硬化剤組成物を調製する。そして、上記の主剤組成物と硬化剤組成物を混合することにより無機系紫外線吸収剤含有層を調製し、塗布に用いる。
例えば、電離放射線硬化性樹脂の樹脂組成物を用いてもよい。電離放射線硬化性の樹脂組成物は、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来より電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。
また、電離放射線硬化性樹脂組成物中には、上記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用することができる。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
他の硬化型樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などの硬化型樹脂と、必要に応じて添加する硬化剤又は架橋剤を含んでなるものが挙げられる。
これにより、着色基材5に含まれる絵柄層3や着色層2の劣化を長期間にわたって抑制することができる。即ち、着色基材5が有する色彩や模様の視認性を長期間にわたって維持することができ、優れた意匠性を維持することができる。また、無機系紫外線吸収剤含有層7の劣化や、当該無機系紫外線吸収剤含有層7よりも着色基材5側の層の劣化を抑制することができるため、長期間にわたって、表面材としての機能を良好な状態で維持することができ、優れた耐候性を得ることができる。
これに対し、本開示の化粧材は、当該無機系紫外線吸収剤含有層7の着色基材5側に、表面保護層8側よりも無機系紫外線吸収剤を多く含有している高含有領域7Bを有しており、且つ、当該無機系紫外線吸収剤含有層7の表面保護層8側に、着色基材5側における無機系紫外線吸収剤の含有割合よりも無機系紫外線吸収剤の含有割合が低い低含有領域7Aを有している。
このように、無機系紫外線吸収剤含有層7が、その表面保護層8側に、着色基材5側の高含有領域7Bにおける無機系紫外線吸収剤の含有割合よりも、無機系紫外線吸収剤の含有割合が低い低含有領域7Aを有することで、無機系紫外線吸収剤含有層7が、その低含有領域7A側の面において、表面保護層8に対して良好な密着性を有するものとすることができる。
即ち、本開示の化粧材は、前述した高含有領域7B及び低含有領域7Aを有する無機系紫外線吸収剤含有層7を、前記低含有領域7A側の面において表面保護層8と接触するように配置することで、高含有領域7Bが優れた耐候性を発揮し、且つ、低含有領域7Aが無機系紫外線吸収剤含有層7と表面保護層8との間で優れた密着性を発揮する。
このため、化粧材に入射した入射光が、無機系紫外線吸収剤に入射するときに生じる屈折率差は、樹脂成分の屈折率(概ね、1.5)と、無機系紫外線吸収剤の屈折率(概ね、2.0)との差(概ね、0.5)となり、比較的小さい値に抑えられる。このため、無機系紫外線吸収剤含有層7中の無機系紫外線吸収剤に光が到達したときの反射光の発生が抑制されるため、拡散反射に起因する白濁等の発生が抑制される。このため、着色基材5が有する模様や色彩を、表面保護層8側から明確に視認でき、意匠性に優れた化粧材とすることができる。
本開示の化粧材は、表面保護層8と着色基材5との間に配置した無機系紫外線吸収剤含有層7の高含有領域7Bに、後述する所定量の範囲で無機系紫外線吸収剤を含有させているため、表面保護層8に無機系紫外線吸収剤を添加しなくても、十分な紫外線吸収性能を得ることができる。このため、表面保護層8における架橋密度の低下や、これに伴う、表面保護層8における耐候剤のブリードアウトの発生を抑制することができ、優れた耐候性を得ることができる。
高含有領域7Bにおける紫外線吸収剤の含有割合を3~60質量%とすることにより、優れた耐候性を得ることができ、且つ、化粧材として優れた意匠性を得ることができる。紫外線を効率的に吸収する観点から、高含有領域における無機系紫外線吸収剤の含有割合の下限は、10質量%以上であることが好ましく、10~60質量%含有することが好ましく、20~60質量%含有することがより好ましく、30~60質量%含有することがより好ましい。特に、意匠性の低下を抑制しつつ、高い耐候性を得る観点から、高含有領域における無機系紫外線吸収剤の含有割合は、30~50質量%であることが好ましく、30~40質量%であることがより好ましい。
無機系紫外線吸収剤含有層7の高含有領域7Bにおける、無機系紫外線吸収剤の含有割合が3質量%未満であると、無機系紫外線吸収剤含有層7において十分な紫外線吸収性能を得られず、化粧材として十分な耐候性を得られなくなる。
一方、無機系紫外線吸収剤含有層7の高含有領域7Bにおける、無機系紫外線吸収剤の含有割合が60質量%を超えると、当該無機系紫外線吸収剤が無機系紫外線吸収剤含有層7に過度に存在することにより、表面保護層8側から化粧材を視認したときに白濁した外観となり、着色基材5が有する模様や色彩がぼやけて視認し難くなるため、意匠性が低下する。
また、無機系紫外線吸収剤含有層7の高含有領域7Bにおける、無機系紫外線吸収剤の含有割合が60質量%を超えると、紫外線吸収剤含有層が膜としての強度を十分に保てず、紫外線吸収剤含有層が凝集破壊して表面保護層と共に剥離することがある。
また、無機系紫外線吸収剤含有層7の高含有領域7Bにおける、無機系紫外線吸収剤の含有割合が60質量%を超えると、たとえ低含有領域7Aが存在していても、化粧材の外部から水分が高含有領域7Bに侵入することにより、無機系紫外線吸収剤の白化現象が生じることがある。
低含有領域7Aは、無機系紫外線吸収剤を含有していなくても良いが、無機系紫外線吸収剤含有層7による耐光性付与効果を向上させる観点から、適量の無機系紫外線吸収剤を含有することが好ましい。かかる観点から、低含有領域7Aにおける無機系紫外線吸収剤の含有割合は、0~12質量%とされる。
低含有領域7Aにおける紫外線吸収剤の含有割合が0~12質量%であることにより、無機系紫外線吸収剤含有層7が、その低含有領域7A側の面と接して配置される表面保護層8との間で、優れた密着性を得ることができる。低含有領域7Aにおける紫外線吸収剤の含有割合は、無機系紫外線吸収剤含有層7と表面保護層8との間の密着性を良好なものとし、且つ、意匠性の低下を抑制する観点から、0.1~12質量%であることが好ましく、0.1~10質量%が更に好ましい。
無機系紫外線吸収剤含有層7の低含有領域7Aにおける、無機系紫外線吸収剤の含有割合が12質量%を超えると、化粧材の使用時に表面保護層8の剥離が生じ易くなる、又は化粧材の製造段階において、表面保護層8を、無機系紫外線吸収剤含有層7に対して十分な密着性を有する状態で形成することが困難となり、歩留りが低下する等の不具合が生じ易くなる。
また、無機系紫外線吸収剤含有層7の低含有領域7Aにおける、無機系紫外線吸収剤の含有割合が12質量%を大きく超え、特に25質量%を超えると、表面保護層8側から化粧材を視認したときに白濁した外観となり、着色基材5が有する模様や色彩がぼやけて視認し難くなるため、意匠性が低下するという弊害もある。
一方、低含有領域7Aと高含有領域7Bを隣接させて形成するときに、高含有領域7Bを形成するための樹脂組成物に含有されていた無機系紫外線吸収剤の一部が、低含有領域7Aに微量に混入し易い。このため、無機系紫外線吸収剤含有層7の低含有領域7Aにおける、無機系紫外線吸収剤の含有割合は、通常、0.1質量%以上である。
高含有領域の層72の形成に用いる無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂と、低含有領域の層71の形成に用いる無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂とは、これらの層同士の密着性を向上させる観点から、同じ樹脂であることが好ましい。
なお、本開示において、高含有領域の厚さとは、化粧材が有する各層(着色基材5、透明樹脂層6、無機系紫外線吸収剤含有層7及び表面保護層8)の積層方向についての高含有領域7Bの厚さをいう。
高含有領域7Bの厚さが1μm未満である場合、無機系紫外線吸収剤含有層7において、当該無機系紫外線吸収剤含有層7の高含有領域7B、及び無機系紫外線吸収剤含有層7よりも着色基材5側に設けられた層の紫外線による劣化を十分に抑制することができず、化粧材において十分な耐候性を得られない虞がある。
なお、本開示において、低含有領域7Aの厚さとは、化粧材が有する各層(着色基材5、透明樹脂層6、無機系紫外線吸収剤含有層7及び表面保護層8)の積層方向についての低含有領域7Aの厚さをいう。
低含有領域7Aの厚さが1μm未満である場合、無機系紫外線吸収剤含有層7の表面保護層8に対する密着性を十分に得られない虞がある。
無機系紫外線吸収剤含有層7に含まれる無機系紫外線吸収剤の平均粒子径は、より好ましくは200nm以下であり、より好ましくは150nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下である。
無機系紫外線吸収剤の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量積算50%粒子径(D50)として求めることができる値である。
無機系紫外線吸収剤含有層7に、有機系紫外線吸収剤を補助的に含有させることで、無機系紫外線吸収剤含有層7、及び無機系紫外線吸収剤含有層7よりも着色基材5側に配置された層の紫外線による劣化を、より効果的に抑制することができる。
また、無機系紫外線吸収剤含有層7に有機系紫外線吸収剤を含有させることにより、無機系紫外線吸収剤含有層7自体に含まれる、無機系紫外線吸収剤の紫外線による励起や、これに伴う光触媒反応による樹脂成分の分解反応を抑制することができる。
2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、例えば2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3-[3-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。
また、無機系紫外線吸収剤含有層7に含有させる有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いてもよい。
当該無機系紫外線吸収剤含有層7に含まれる有機系紫外線吸収剤の含有割合を30質量%以下とすることで、当該有機系紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制されるため、紫外線吸収性能を長期間にわたって良好に保つことができる。
無機系紫外線吸収剤含有層7に配合する光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2’-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキロキシ-2,2,6,6-テトラメ チルピペリジン-4-yl)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3, 5-トリアジンなどが挙げられる。
第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物は、当該第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物全量に対し、固形分換算で、バインダー樹脂を20~75質量%、無機系紫外線吸収剤を3~60質量%含有するように配合することで、調製することができる。
まず、無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂、無機系紫外線吸収剤、及び必要に応じて、有機系紫外線吸収剤、光安定剤、その他、前述した各種添加剤を含む第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物を、そのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態としたものを、例えばグラビア印刷等の公知の印刷方法で印刷するか又はロールコート等の公知の塗布方法で塗布した後、適宜乾燥することにより、無機系紫外線吸収剤含有層7の高含有領域の層72を形成する。
次いで、無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂、及び必要に応じて、無機系紫外線吸収剤、有機系紫外線吸収剤、光安定剤、その他、前述した各添加剤を含む第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物を、そのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態としたものを、前述した高含有領域の層72上に公知の印刷方法で印刷するか又は公知の塗布方法で塗布することにより、無機系紫外線吸収剤含有層7の低含有領域の層71を形成する。
これにより、着色基材5側に高含有領域の層72を有し、表面保護層8側に低含有領域の層71を有する、無機系紫外線吸収剤含有層7(図3参照)を形成することができる。
次いで、前述した第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物を、例えばグラビア印刷等の公知の方法で印刷するか又はロールコート等の公知の方法で塗布した後、適宜乾燥することにより、無機系紫外線吸収剤含有層7の高含有領域の層72を形成する。これにより、離型フィルム上に、低含有領域の層71及び高含有領域の層72をこの順に有する積層体を得る。
次いで、離型フィルム上に形成された前記積層体の高含有領域の層72の表面を、着色基材5上に形成された層(例えば、透明樹脂層6)の表面に重ね合わせて押圧した後、離型フィルムを剥離して、前記積層体を転写する。これにより、着色基材5側に高含有領域の層72を有し、表面保護層8側に低含有領域の層71を有する、無機系紫外線吸収剤含有層7(図3参照)を形成することができる。
バインダー樹脂は、紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により架橋、硬化する電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、1液硬化型樹脂、或いは、2液硬化型ウレタン樹脂のような2液硬化型樹脂のような硬化反応性を有する樹脂であってもよい。
また塗膜形成時の組成物の形態としても、水系、エマルジョン系、溶剤系、無溶剤系など種々の形態のものが使用できる。
代表的には、耐候性及び密着性の観点から、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好適である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。
具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、
カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
この場合、無機系紫外線吸収剤含有層と表面保護層の両方に(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位が含まれているため、層間の密着性が向上する。
表面保護層のバインダー樹脂として、上記重合成分の中からウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いる場合には、無機系紫外線吸収剤含有層と表面保護層の両方にウレタン結合と(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位が含まれているため、さらに層間の密着性が向上する。
この場合、ウレタン-アクリレート系樹脂も(メタ)アクリル基を有する電離放射線硬化性樹脂であるから、ウレタン-アクリレート系樹脂を含む無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂組成物の塗膜上に、電離放射線硬化性樹脂を含有する表面保護層用樹脂組成物の塗膜を形成し、電離放射線を照射し硬化させることにより、無機系紫外線吸収剤含有層に対する密着性の高い表面保護層を形成することができる。
無機系紫外線吸収剤含有層7を形成するバインダー樹脂として、2液硬化型ウレタン樹脂とウレタン-アクリレート系樹脂を組み合わせて用いる場合には、2液硬化型ウレタン樹脂の2液硬化反応と、ウレタン-アクリレート系樹脂の電離放射線硬化反応が両方とも起こるため、無機系紫外線吸収剤含有層7と表面保護層8との密着性をさらに向上させることができる。
光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマー、又はカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等を用いることができる。
また、光増感剤としては、例えばp-ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本開示においては、電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は溶剤の使用量を低減することが可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
表面保護層8に有機系紫外線吸収剤を配合することで、表面保護層8に無機系紫外線吸収剤を多量に含有させなくても、高い紫外線吸収性能を得ることができる。このため、少なくとも表面保護層8自体の、紫外線による劣化を抑制することができ、かつ表面保護層8における白濁や白化現象が抑制され、表面保護層8としての透明性が高く、化粧材として高い意匠性を得ることができる。
表面保護層8を、電子線硬化性樹脂組成物により形成した場合、当該表面保護層に配合する有機系紫外線吸収剤としては、前述の無機系紫外線吸収剤含有層の説明において述べた、トリアジン系紫外線吸収剤を好適に用いることができる。
表面保護層8における、有機系紫外線吸収剤の含有割合は、無機系紫外線吸収剤の光触媒作用を抑制する効果を得つつ、当該吸収剤のブリードアウトを抑制する観点から、0.1質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上6質量%以下がさらに好ましい。
表面保護層8に含有させるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤としては、無機系紫外線吸収剤含有層7に含有させるものとして前述したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤と同様のものを用いることができる。
表面保護層8における耐候性を補い、且つ、表面保護層8の白化現象や白濁を抑制し、透明保護層8における透明性を得る点から、無機系紫外線吸収剤の含有割合は、0.1質量%以上、15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
表面保護層8に配合する光安定剤としては、前述の無機系紫外線吸収剤含有層の説明において述べた、ヒンダードアミン系光安定剤を好適に用いることができる。
本開示においては、このようにして調製された塗工液を、着色基材5上に形成された層の表面に、硬化後の厚さが1~20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
なお、硬化後の表面保護層の表面には、適宜エンボス加工等の表面処理を行ってもよい。
電子線を用いる場合の照射源としては、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。加速電圧は、通常70~300kV程度とする。照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy、好ましくは10~100kGyの範囲で選定される。
紫外線を用いる場合の照射源としては、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用い、波長190~380nmを含む紫外線を照射する。
化粧板は、種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材又は外装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等 の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
1.評価方法
(1)意匠性の評価(初期外観の目視観察)
得られた化粧材の意匠性(外観)を、目視により下記の基準で評価した。
A : ヘイズ無く、意匠性が十分保持されている
B : ややヘイズがあるが、意匠性は実使用上問題ない
C : ヘイズが高く、意匠性が大きく損なわれている
(2-1)第一の耐候性促進試験(初期外観からの外観変化の度合い)
アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製)を用いブラックパネル温度63℃にて、照度100mW/cm2、20時間照射し、4時間結露で試験した(以下、S-UV試験という)。このS-UV試験のサイクルを繰り返し、1000時間後に目視で観察をして、外観変化の度合いを評価した。
A : 外観変化は確認されなかった
B : 軽微な外観変化が確認された
C : 著しい艶低下、クラック等が確認された
(2-2)第二の耐候性促進試験(初期外観からの外観変化の度合い)
第一の耐候性促進試験を行った後、さらに、S-UV試験のサイクルを繰り返し、200時間後に目視で観察をして、初期外観からの外観変化の度合いを評価した。
A : 外観変化は確認されなかった
B : 軽微な外観変化が確認された
C : 著しい艶低下、クラック等が確認された
(3)密着性試験
密着試験は、JIS K 5600準拠して行った。
(1)の意匠性の評価を行った後、(2)の耐候性促進試験を行う前の、各化粧材の一部を切り出した。
切り出した各化粧材の裏面全体に両面テープを貼着し、土台(金属製の平板)に圧着した。化粧材のおもて面(表面保護層)に粘着テープ(ニチバン製「セロテープ(登録商標)」工業用24mm幅)を貼着し、綿布で擦って十分に密着させた。次に貼着した粘着テープを剥離角45°で急速に剥離した後、肉眼観察により表面保護層の剥離の有無を確認して評価した。評価基準は以下の通りである。
○:表面保護層の剥離が確認されなかった。
×:表面保護層の剥離が確認された。
(1)実施例1
基材としてポリプロピレン樹脂シート(厚さ:60μm)を準備した。該ポリプロピレン樹脂シート表面に、両面コロナ放電処理を施した後、当該基材の一方の面に、2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂をバインダーとして含有する印刷インキ(絵柄層形成用インキ)をグラビア印刷法により塗布して、木目模様の絵柄層(厚さ:3μm)を形成して、着色基材を形成した。
前記着色基材の絵柄層形成面とは反対側の面に、2液硬化型ウレタン-硝化綿混合樹脂(硬化剤として、樹脂100質量部に対して、ヘキサメチレンジイソシアネートを5質量部含有)を含む樹脂組成物を塗布して裏面プライマー層(厚さ:3μm)を形成した。
次いで、絵柄層の上に、透明樹脂であるポリウレタン樹脂系接着剤をグラビア印刷法により塗布して接着層(乾燥後の厚さ:3μm)を形成した後、透明樹脂であるポリプロピレン樹脂をTダイ押出機により加熱溶融押出しして、透明樹脂層(厚さ:80μm)を形成した。
次いで、透明樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、下記組成の第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂組成物の主剤100質量部と、第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂組成物の硬化剤ヘキサメチレンジイソシアネート1質量部とを混合した組成物を、グラビア印刷法により透明樹脂層の表面に塗布して、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域の層(乾燥後の厚さ:4μm)を形成した。
次いで、下記組成の第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂組成物(主剤)100質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)1質量部とを混合した組成物を、グラビア印刷法により、前述した高含有領域の層の表面に塗布して、無機系紫外線吸収剤含有層の低含有領域の層(乾燥後の厚さ:2μm)を形成した。
これにより、高含有領域の層7B上に、低含有領域の層7Aが積層された、無機系紫外線吸収剤含有層を形成した。
次に、無機系紫外線吸収剤含有層上に、下記組成の電離放射線硬化性樹脂組成物(表面保護層形成用組成物)をロールコート法により塗布して、未硬化樹脂層を形成し、電子線(加速電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射して未硬化樹脂層を架橋硬化させることにより、表面保護層(厚さ:5μm)を形成して、積層シートを得た。その後、積層シートの表面保護層側からエンボス加工を施して、表面保護層側の表面に、最大深さ50μmの凹部を有する木目導管模様を形成し、化粧材を得た。得られた化粧材について、上記の評価方法に基づき評価を行った。
<主剤>
主剤の全量に対する固形分換算での質量%は次のとおりである。
・バインダー樹脂(ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体及びアクリルポリオール樹脂の混合物):65質量%
・無機系紫外線吸収剤(酸化亜鉛、質量積算50%粒子径(D50)30nm):15質量%
・有機系紫外線吸収剤(有機系紫外線吸収剤A(ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN479」、BASF社製)):有機系紫外線吸収剤B(ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN400」、BASF社製)を有機系紫外線吸収剤A:有機系紫外線吸収剤B=3:12の質量比で混合した混合物):15質量%
・ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製):3質量%
・その他の添加剤:2質量%
<硬化剤>
・硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート):主剤100質量部に対し1質量部
主剤の全量に対する固形分換算での質量%は次のとおりである。
・バインダー樹脂(ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体及びアクリルポリオール樹脂の混合物):80質量%
・無機系紫外線吸収剤(酸化亜鉛、質量積算50%粒子径(D50)30nm):1質量%
・有機系紫外線吸収剤(有機系紫外線吸収剤A(ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(商品名「TINUVIN479」、BASF社製)):有機系紫外線吸収剤B(ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(商品名「TINUVIN400」、BASF社製)を有機系紫外線吸収剤A:有機系紫外線吸収剤B=3:12の質量比で混合した混合物):15質量%
・ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、商品名「TINUVIN123」、BASF社製):3質量%
・その他の添加剤:1質量%
<硬化剤>
・硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート):主剤100質量部に対し1質量部
・電離放射線硬化性樹脂(ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量:4,000、官能基数:3):75質量部(固形分換算、以下同じ)
・有機系紫外線吸収剤(ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、商品名「TINUVIN479」,BASF社製):1質量%
・ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、商品名「TINUVIN123」、BASF社製):2.5質量部
第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物(低含有領域)中の無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に増量し、その分、第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物中のバインダー樹脂の量を少なくしたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物(高含有領域)中の無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に変更し、その分、第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物中のバインダー樹脂の量を増加又は減少させたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
実施例1において、無機系紫外線吸収剤含有層における低含有領域の層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
実施例3において、無機系紫外線吸収剤含有層における低含有領域の層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
実施例4において、無機系紫外線吸収剤含有層における低含有領域の層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
実施例6において、無機系紫外線吸収剤含有層における低含有領域の層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物中の無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に増量し、その分、第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物中のバインダー樹脂の量を少なくしたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物(低含有領域)中の無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に増量し、その分、第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物中のバインダー樹脂の量を少なくしたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物(低含有領域)中の無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に増量し、その分、第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物中のバインダー樹脂の量を少なくしたこと以外は、実施例3と同様にして、化粧材を得た。
第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物(高含有領域)中の無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に減量し、その分、第一の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物中のバインダー樹脂の量を多くし、また、第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物(低含有領域)中の無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合(ゼロ)に変更し、その分、第二の無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物のバインダー樹脂の量を多くしたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
実施例1~6及び比較例1~8で得られた化粧材について、上記した評価方法に基づき、意匠性、耐候性及び密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
表中、密着性評価「-」と表示したものは、外観変化が著しいため密着性評価を中止したことを意味する。
※1 高含有領域層の凝集剥離
※2 高含有領域層の凝集剥離
※3 高含有領域層の凝集剥離
表1に示すように、無機系紫外線吸収剤である酸化亜鉛を、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域に3~60質量%の含有割合で配合し、低含有領域に0~12質量%の範囲で配合した実施例1~6の化粧材では、意匠性に優れ、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、高い耐候性を得られており、また、密着性も良好であることが確認できた。
特に、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域における、酸化亜鉛の含有量が30質量%未満である、実施例1、2、5では、1200時間経過後の耐候性がBであったのに対し、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域における、酸化亜鉛の含有量が30質量%以上である、実施例3、4、6では、1200時間経過後の耐候性がAと、実施例1、2、5と比較して優れていた。
一方、低含有領域の層を有していないこと以外、実施例1と同様の層構成を有する比較例1と、実施例1とを対比すると、実施例1の化粧材では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性は○と良好な結果を得られていたのに対し、比較例1では、1000時間経過後の密着性は○と良好であったが、1200時間経過後の密着性は×となり劣っていた。これは、比較例1では、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域(酸化亜鉛15質量%)が表面保護層に直接積層されていたため密着性が劣っており、長時間経過後に剥離が生じたと考えられる。
また、低含有領域の層を有していないこと以外、実施例3と同様の層構成を有する比較例2と、実施例3とを対比すると、実施例3の化粧材では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性は○と良好な結果を得られていたのに対し、比較例2では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性が×と劣っていた。これは、比較例2では、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域(酸化亜鉛30質量%)が表面保護層に直接積層されていたため密着性が劣っており、長時間経過後に剥離が生じたと考えられる。
なお、比較例1及び比較例2は、どちらも無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域が表面保護層に直接積層されているが、比較例2の高含有領域(酸化亜鉛30質量%)は、比較例1の高含有領域(酸化亜鉛15質量%)と比べて酸化亜鉛の含有量が大きいため、比較例1よりも早期(S-UV試験1000時間経過後)の段階で剥離が生じたと考えられる。
また、比較例2と実施例3とは、いずれも、無機系紫外線吸収剤の高含有領域において同等の量の酸化亜鉛を含有していたものの、高含有領域の層と表面保護層との間に、低含有領域の層を有する実施例3は意匠性(初期外観)がAであるのに対し、無機系紫外線吸収剤の高含有領域が表面保護層に直接積層している比較例2の意匠性(初期外観)はBとなり、実施例3と比べて劣っていた。
また、実施例3では、UV照射による外観変化が1000時間経過後、及び1200時間経過後のいずれもAとなり良好であったのに対し、比較例2では、UV照射による外観変化が1000時間経過後はAであったが、1200時間経過後はBとなり、実施例3と比べて劣っていた。これは、実施例3と比較例2とは、いずれも、無機系紫外線吸収剤の高含有領域において同等の量の酸化亜鉛を含有していたものの、比較例2は低含有領域の層が存在せず、無機系紫外線吸収剤の高含有領域が表面保護層に直接積層しているため、外部環境からの水分の侵入により外観劣化が早期に進行したためだと考えられる。
また、低含有領域の層を有していないこと以外、実施例4と同様の層構成を有する比較例3と、実施例4とを対比すると、実施例4の化粧材では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性は○と良好な結果を得られていたのに対し、比較例3では、1000時間経過後の時点において、すでに密着性が×となり劣っていた。これは、比較例3では、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域(酸化亜鉛45質量%)が表面保護層に直接積層されており、且つ、高含有領域の酸化亜鉛含有量が比較的大きいため、早期(S-UV試験1000時間経過後)の段階で剥離が生じたと考えられる。
また、比較例3と実施例4は、いずれも、無機系紫外線吸収剤の高含有領域が比較的多量の酸化亜鉛(45質量%)を含有していたため、高含有領域の層と表面保護層との間に低含有領域の層を有するか否かに拘わらず、比較例3と実施例4のどちらも意匠性(初期外観)がBであった。
また、実施例4では、UV照射による外観変化が1000時間経過後、及び1200時間経過後のいずれもAとなり良好であったのに対し、比較例3では、UV照射による外観変化が1000時間経過後はAであったが、1200時間経過後はBとなり、実施例4と比べて劣っていた。これは、実施例4と比較例3とは、いずれも、無機系紫外線吸収剤の高含有領域において同等の量の酸化亜鉛を含有していたものの、比較例3は低含有領域の層が存在せず、無機系紫外線吸収剤の高含有領域が表面保護層に直接積層しているため、外部環境からの水分の侵入により、比較的多量の酸化亜鉛(45質量%)を含有していたにもかかわらず、外観劣化が早期に進行したためだと考えられる。
また、低含有領域の層を有していないこと以外、実施例6と同様の層構成を有する比較例4と、実施例6とを対比すると、実施例6の化粧材では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性は○と良好な結果を得られていたのに対し、比較例4では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性が×と劣っていた。これは、比較例4では、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域(酸化亜鉛55質量%)が表面保護層に直接積層されていたため密着性が劣っており、長時間経過後に剥離が生じたと考えられる。
また、比較例4と実施例6とは、いずれも、無機系紫外線吸収剤の高含有領域において同等の量の酸化亜鉛を含有していたものの、高含有領域の層と表面保護層との間に、低含有領域の層を有する実施例6は意匠性(初期外観)がBであるのに対し、無機系紫外線吸収剤の高含有領域が表面保護層に直接積層している比較例4の意匠性(初期外観)はCとなり、実施例6と比べて劣っていた。比較例4は高含有領域の酸化亜鉛含有量が55質量%であり、比較例3の高含有領域の酸化亜鉛含有量(45質量%)よりも大きかったため、比較例3の意匠性(初期外観B)と比べて、さらに劣っていた。
また、実施例6では、UV照射による外観変化が1000時間経過後、及び1200時間経過後のいずれもAとなり良好であったのに対し、比較例4では、UV照射による外観変化が1000時間経過後はAであったが、1200時間経過後はBとなり、実施例6と比べて劣っていた。これは、実施例6と比較例4とは、いずれも、無機系紫外線吸収剤の高含有領域において同等の量の酸化亜鉛を含有していたものの、比較例4は低含有領域の層が存在せず、無機系紫外線吸収剤の高含有領域が表面保護層に直接積層しているため、外部環境からの水分の侵入により、比較的多量の酸化亜鉛(55質量%)を含有していたにもかかわらず、外観劣化が早期に進行したためだと考えられる。
比較例5は、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域における酸化亜鉛の含有量が75質量%と過大であること以外、実施例1と同様の層構成を有する。実施例1と比較例5とを対比すると、実施例1では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性は○と良好な結果を得られていたのに対し、比較例5では、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域における酸化亜鉛の含有量が75質量%と過大であったため、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性が×であり、低含有領域の層を有していても、密着性の点で劣っていた。これは、高含有領域における酸化亜鉛の含有量が75質量%と過大であるため、高含有領域の部分の強度が不充分となり、紫外線吸収剤含有層が凝集破壊して表面保護層と共に剥離したためだと考えられる。
また、比較例5では、高含有領域における酸化亜鉛の含有量が75質量%と過大であったため、高含有領域の層と表面保護層との間に、低含有領域の層を有しているにもかかわらず、意匠性(初期外観)がCとなり、劣っていた。
また、比較例5では、UV照射による外観変化が1000時間経過後はAであったが、1200時間経過後はBとなり、劣っていた。これは、比較例5は低含有領域の層を有しているにもかかわらず、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域における酸化亜鉛の含有量が75質量%であり、12質量%から大きく超えていたため、外部環境からの水分の侵入により、外観劣化が早期に進行したためだと考えられる。
比較例6は、無機系紫外線吸収剤含有層の低含有領域における酸化亜鉛の含有量が15質量%と過大であること以外、実施例1と同様の層構成を有する。実施例1と比較例6とを対比すると、実施例1では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性は○と良好な結果を得られていたのに対し、比較例6では、無機系紫外線吸収剤含有層の低含有領域における酸化亜鉛の含有量が12質量%を超えていたため、1000時間経過後の密着性は○と良好であったが、1200時間経過後の密着性は×となり劣っていた。
比較例7は、無機系紫外線吸収剤含有層の低含有領域における酸化亜鉛の含有量が30質量%であること以外、実施例3と同様の層構成を有する。実施例3と比較例7とを対比すると、実施例3では、1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性は○と良好な結果を得られていたのに対し、比較例7では、無機系紫外線吸収剤含有層の低含有領域における酸化亜鉛の含有量が30質量%であり、12質量%から大きく超えていたため、1000時間経過後、及び、1200時間経過後のいずれにおいても、密着性は×となり劣っていた。
また、比較例7では、無機系紫外線吸収剤含有層の低含有領域における酸化亜鉛の含有量が30質量%であり、12質量%から大きく超えていたため、意匠性(初期外観)がBとなり、実施例3の意匠性(初期外観A)と比べて劣っていた。
また、実施例3では、UV照射による外観変化が1000時間経過後、及び1200時間経過後のいずれもAとなり良好であったのに対し、比較例7では、UV照射による外観変化が1000時間経過後はAであったが、1200時間経過後はBとなり、実施例3と比べて劣っていた。これは、無機系紫外線吸収剤含有層の低含有領域における酸化亜鉛の含有量が30質量%であり、12質量%から大きく超えていたため、外部環境からの水分の侵入により、外観劣化が早期に進行したためだと考えられる。
また、比較例8では、無機系紫外線吸収剤含有層の高含有領域における酸化亜鉛の含有量が3質量%未満であったため、UV照射による外観変化が1000時間経過後、1200時間経過後のいずれにおいても、耐候性がCと劣っていた。
2 着色層
3 絵柄層
4 接着性樹脂層
5 着色基材
6 透明樹脂層
7 無機系紫外線吸収剤含有層
71 低含有領域の層
72 高含有領域の層
7A 低含有領域
7B 高含有領域
7D 境界
8 表面保護層
10 化粧材
11 接着剤層
12 基板
20 化粧板
Claims (7)
- 少なくとも基材層を有する着色基材上に、バインダー樹脂を含む表面保護層を有し、
前記着色基材と前記表面保護層との間に、バインダー樹脂及び無機系紫外線吸収剤を含有する無機系紫外線吸収剤含有層が、当該表面保護層と接して配置されており、
前記無機系紫外線吸収剤含有層は、前記着色基材側に、前記表面保護層側よりも前記無機系紫外線吸収剤を多く含有している高含有領域を有しており、且つ、
前記表面保護層側に、前記無機系紫外線吸収剤を含有しないか、又は、当該無機系紫外線吸収剤含有層の前記着色基材側における前記無機系紫外線吸収剤の含有割合よりも前記無機系紫外線吸収剤の含有割合が低い無含有乃至低含有領域を有しており、
前記高含有領域における前記無機系紫外線吸収剤の含有割合は、30~60質量%であり、
前記無含有乃至低含有領域における前記無機系紫外線吸収剤の含有割合は、0~12質量%であり、
前記無機系紫外線吸収剤含有層が、バインダー樹脂として、(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位を有する重合体からなるポリオール成分を用いた2液硬化型ウレタン樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含み、
前記表面保護層が、バインダー樹脂として、(メタ)アクリレート系モノマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、ことを特徴とする化粧材。 - 前記無機系紫外線吸収剤含有層が、バインダー樹脂として、(メタ)アクリレート系モノマー由来の繰り返し単位を有する重合体からなるポリオール成分を用いた2液硬化型ウレタン樹脂と、ポリマー主鎖中にウレタン結合を有し且つ当該ポリマー主鎖の末端又は側鎖に(メタ)アクリル基を少なくとも1つ有するウレタン-アクリレート系樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1に記載の化粧材。
- 前記表面保護層が、バインダー樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1又は2に記載の化粧材。
- 前記無機系紫外線吸収剤含有層が、有機系紫外線吸収剤をさらに含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化粧材。
- 前記表面保護層が、有機系紫外線吸収剤を10質量%以下の割合で含有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化粧材。
- 前記無機系紫外線吸収剤含有層に含まれる無機系紫外線吸収剤の質量積算50%粒子径(D50)が、300nm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の化粧材。
- 前記着色基材は、前記基材層の前記無機系紫外線吸収剤含有層が配置されている側に設けられた絵柄模様層をさらに有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化粧材。
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