JP7501057B2 - 加飾シート及び加飾樹脂成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、凹凸形状を備えており、優れた成形性と耐薬品性を兼ね備える加飾シート及び加飾樹脂成形品に関する。
車両内装部品、建材内装材、家電筐体等には、樹脂成形品の表面に加飾シートを積層させた加飾樹脂成形品が使用されている。このような加飾樹脂成形品の成形方法としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、該成形シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化するインサート成形法(例えば、特許文献1参照)、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させ、樹脂成形体表面に加飾を施す射出成形同時加飾法(例えば、特許文献2、特許文献3参照)などが知られている。
近年、消費者ニーズの多様化に伴って、様々な意匠性を備える加飾樹脂成形品が求められている。このように多様化する消費者ニーズに追従するために、表面の凹凸形状に基づく意匠感、手触り感などを備える加飾樹脂成形品の開発が望まれている。
表面に凹凸形状を備える加飾樹脂成形品の製造には、例えば、予め表面に凹凸形状が形成された加飾シートが使用されている。しかしながら、凹凸形状を有する加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造する場合、加飾シートを射出成形やそれに先立つ予備成形(真空成形)に供する際において、熱や圧力によって凹凸形状が変形、消失するなど、凹凸形状を維持することが難しいという問題がある。
特開2004-322501号公報 特公昭50-19132号公報 特公昭61-17255号公報
前記の通り、近年、表面の凹凸形状に基づく意匠感、手触り感などを備える加飾樹脂成形品の開発が望まれているが、凹凸形状を有する加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造する場合、加飾シートを射出成形やそれに先立つ予備成形(真空成形)に供する際において、熱や圧力によって凹凸形状が変形、消失するなど、凹凸形状を維持することが難しいという問題がある。
また、近年、加飾樹脂成形品の製造に使用される加飾シートには、成形性に加えて、日常生活において使用される種々の製品に対する耐汚染性を加飾樹脂成形品に付与する機能を備えていることが要求されている。とりわけ、近年、日焼け止め化粧料等のスキンケア用品、アルコールを含む薬品などが多用される傾向にあり、このようなスキンケア用品などを塗布した皮膚が加飾樹脂成形品と接触したり、アルコールを含む薬品が加飾樹脂成形品に付着する頻度が高まっており、加飾シートには、樹脂に対する表面浸食性の高い薬品に対する、さらに優れた耐薬品性を備えていることがより強く求められている。
このような状況下、本発明は、外側の表面に凹凸形状を備える加飾シートにおいて、成形によっても当該凹凸形状が好適に維持され、かつ、優れた耐薬品性を備える加飾シートを提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品、及びこれらの製造方法を提供することも目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、外側の表面に凹凸形状を有する加飾シートにおいて、外側から順に、少なくとも、前記凹凸形状を構成する第1保護層と、第2保護層とを設け、さらに、第1保護層を、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成し、かつ、第2保護層を、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成し、さらに、第2保護層は、23℃における引張弾性率が500MPa以下であり、かつ、200℃以下に熱軟化点が存在しないものとすることにより、成形によっても凹凸形状が好適に維持され、かつ、優れた耐薬品性が発揮されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 外側の表面に凹凸形状を有する加飾シートであって、
前記外側から順に、少なくとも、前記凹凸形状を構成している第1保護層と、第2保護層とを有しており、
前記第1保護層は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されており、
前記第2保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されており、
前記第2保護層は、23℃における引張弾性率が500MPa以下であり、かつ、200℃以下に熱軟化点が存在しない、加飾シート。
項2. 前記第2保護層は、前記第1保護層の前記凹凸形状に沿った凹凸形状を有している、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記第1保護層において、前記樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを10:90から25:75の質量比で含む、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 前記第1保護層において、前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、9万以上15万以下の範囲にある、項1~3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記第1保護層において、前記電離放射線硬化性樹脂に含まれるモノマーの官能基数が2~6の範囲にある、項1~4のいずれかに記載の加飾シート。
項6. 前記第1保護層において、前記電離放射線硬化性樹脂に含まれるモノマーの分子量が、200以上2000以下の範囲にある、項1~5のいずれかに記載の加飾シート。
項7. 前記第2保護層の前記第1保護層と反対側の面に、基材層が積層されている、項1~6のいずれかに記載の加飾シート。
項8. 前記第2保護層の前記第1保護層と反対側の面にプライマー層が積層されている、項1~7のいずれかに記載の加飾シート。
項9. 前記第1保護層は、23℃における引張弾性率が600MPa以上である、項1~8のいずれかに記載の加飾シート。
項10. インサート成形法または射出成形同時加飾法に用いられる、項1~9のいずれかに記載の加飾シート。
項11. 外側の表面に凹凸形状を有する加飾樹脂成形品であって、
前記外側から順に、少なくとも、前記凹凸形状を構成している第1保護層と、第2保護層と、成形樹脂層とを有しており、
前記第1保護層は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されており、
前記第2保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されており、
前記第2保護層は、23℃における引張弾性率が500MPa以下であり、かつ、200℃以下に熱軟化点が存在しない、加飾樹脂成形品。
項12. 項1~10のいずれかに記載の加飾シートの前記凹凸形状を有する表面と反対側の面に、樹脂を射出することにより成形樹脂層を積層する工程を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
本発明によれば、外側の表面に凹凸形状を備える加飾シートにおいて、成形によっても当該凹凸形状が好適に維持され、かつ、優れた耐薬品性を備える加飾シートを提供することができる。また、本発明によれば、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品、及びこれらの製造方法を提供することもできる。
本発明の加飾シートの一形態の断面構造の模式図である。 本発明の加飾シートの一形態の断面構造の模式図である。 本発明の加飾樹脂成形品の一形態の断面構造の模式図である。
1.加飾シート
本発明の加飾シートは、外側の表面に凹凸形状を有する加飾シートであって、外側から順に、少なくとも、前記凹凸形状を構成している第1保護層と、第2保護層とを有しており、第1保護層は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されており、第2保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されており、第2保護層は、23℃における引張弾性率が500MPa以下であり、かつ、200℃以下に熱軟化点が存在しないことを特徴とする。本発明の加飾シートは、このような特定の構成を備えていることにより、成形によっても凹凸形状が好適に維持され、かつ、優れた耐薬品性を発揮することができる。
以下、本発明の加飾シートについて詳述する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。また、本発明の加飾シートは、絵柄層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、外側の表面に凹凸形状を有しており、外側から順に、少なくとも、前記凹凸形状を構成している第1保護層と、第2保護層とが積層された積層構造を有する。
本発明の加飾シートにおいて、第2保護層の前記第1保護層と反対側の面には、加飾シートの保形性を高めることなどを目的として、基材層3が設けられていてもよい。また、第2保護層の前記第1保護層と反対側の面の直下には、第2保護層とその下に位置する層(例えば、基材層3、絵柄層5など)との密着性を向上するために、必要に応じてプライマー層4が設けられていてもよい。
また、第2保護層の前記第1保護層と反対側の面には、装飾性を付与する目的で、必要に応じて、絵柄層5を設けてもよい。例えば、基材層3とプライマー層4を設ける場合であれば、基材層3とプライマー層4の間に絵柄層5を設ければよい。
また、基材層3と第2保護層2の間には、基材層3の色の変化やバラツキを抑制する目的で、必要に応じて、隠蔽層(図示しない)が設けられていてもよい。例えば、プライマー層4を設ける場合であれば、当該隠蔽層は基材層3とプライマー層4の間に設ければよく、また、絵柄層5を設ける場合であれば、当該隠蔽層は、基材層3と絵柄層5の間に設ければよい。
更に、第2保護層の前記第1保護層と反対側の面には、耐摩耗性(耐傷付き性)を向上させる目的で、必要に応じて、透明樹脂層(図示しない)を設けてもよい。例えば、プライマー層4と絵柄層5を設ける場合であれば、当該透明樹脂層は、絵柄層5とプライマー層4の間に設ければよい。
更に、本発明の加飾シートにおいて、加飾シートの成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、加飾シートの裏面(第1保護層1とは反対側の面)には、必要に応じて、裏面接着層(図示しない)が設けられてもよい。
本発明の加飾シートの積層構造の例として、第2保護層/第1保護層が積層された積層構造;基材層3/第2保護層/第1保護層が積層された積層構造;基材層3/プライマー層4/第2保護層/第1保護層が順に積層された積層構造;基材層3/絵柄層5/第2保護層/第1保護層が順に積層された積層構造;基材層3/絵柄層5/プライマー層4/第2保護層/第1保護層が順に積層された積層構造;基材層3/絵柄層5/透明樹脂層/プライマー層4/第2保護層/第1保護層が順に積層された積層構造などが挙げられる。
図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層3/第2保護層/第1保護層が積層された加飾シートの断面図を示す。図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層3/絵柄層5/プライマー層4/第2保護層/第1保護層が順に積層された加飾シートの断面図を示す。
加飾シートの各層の組成
[基材層3]
基材層3は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)である。基材層3に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。当該熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂(以下「ASA樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂及びアクリル樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。また、基材層3は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
基材層3の曲げ弾性率については、特に制限されない。例えば、本発明の加飾シートをインサート成形法によって成形樹脂と一体化させる場合には、本発明の加飾シートにおける基材層3の25℃における曲げ弾性率が500~4,000MPa、好ましくは750~3,000MPaが挙げられる。ここで、25℃における曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定された値である。25℃における曲げ弾性率が500MPa以上であると、加飾シートは十分な剛性を備え、インサート成形法に供しても、表面特性と成形性がより一層良好になる。また、25℃における曲げ弾性率が3,000MPa以下であると、ロール トゥ ロールで製造する場合に十分な張力をかけることができ、たるみが発生し難くなるため、絵柄がずれることなく重ねて印刷することができ、所謂絵柄見当が良好となる。
基材層3は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層3の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層3の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層3を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、基材層3は公知の接着層を形成する等の処理を施してもよい。
更に、基材層3は、着色剤を用いて着色されていてもよく、着色されていなくてもよい。また、基材層3は、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれの態様であってもよい。基材層3に用いられる着色剤としては、特に制限されないが、好ましくは150℃以上の温度条件でも変色しない着色剤が挙げられ、具体的には、既存のドライカラー、ペーストカラー、マスターバッチ樹脂組成物等が挙げられる。
基材層3の厚みは、加飾シートの用途、成形樹脂と一体化させる成形法等に応じて適宜設定されるが、通常25~1000μm程度、50~700μm程度が挙げられる。より具体的には、本発明の加飾シートをインサート成形法に供する場合であれば、基材層3の厚みとして、通常50~1000μm程度、好ましくは100~700μm程度、更に好ましくは100~500μm程度が挙げられる。また、本発明の加飾シートを射出成形同時加飾法に供する場合であれば、基材層3の厚みとして、通常25~200μm程度、好ましくは50~200μm程度、更に好ましくは70~200μm程度が挙げられる。
[第1保護層1]
第1保護層1は、加飾シートの外側の表面の凹凸形状を構成している。また、第1保護層1は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されている。本発明の加飾シートにおいては、凹凸形状を有する第1保護層1を、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により構成した上で、さらに、後述の第2保護層2とを備えていることにより、成形後においても、成形前の凹凸形状が好適に維持され、かつ、優れた耐薬品性を発揮することができる。すなわち、本発明の加飾シートにおいては、外側から順に、第1保護層1と第2保護層2を特定の樹脂組成物の硬化物により形成することによって、凹凸形状の維持と、優れた耐薬品性とを両立することが可能となっている。
<凹凸形状>
本発明の加飾シートの外側の表面の凹凸形状は、第1保護層1の凹凸形状である。第1保護層1が備える凹凸形状については、特に制限されず、付与すべき意匠感等に応じて適宜設定すればよい。当該凹凸形状としては、例えば、ヘアライン模様、木目模様、幾何学模様(ドット、ストライプ、カーボン等)等が挙げられる。なお、後述の第2保護層2については、凹凸形状を有していなくてもよいが、第1保護層1の凹凸形状に沿った凹凸形状を有していることが好ましい。
また、第1保護層1が備える凹凸形状における凸部の高さ、凸部の幅、隣接する凸部間のピッチ、凹部の幅等については、加飾樹脂成形品に付与すべき意匠感等に応じて適宜設定すればよい。
例えば、第1保護層1の表面(すなわち、加飾シートの外側の表面)の算術平均粗さ(Ra)として、凹凸形状による優れた意匠感を付与するという観点から、通常1~20μm、好ましくは5~20μm、更に好ましくは10~20μmが挙げられる。
本発明の加飾シートにおいて、第1保護層1の凹凸形状は、加飾シートに凹凸形状による高い質感を付与するために、少なくとも一部の領域に形成すればよい。すなわち、本発明の加飾シートにおいては、外側表面の凹凸形状が一部の領域に形成されていてもよいし、全領域に形成されていてもよい。
第1の保護層1の凹凸形状の凹部は、第1保護層1の下に位置する第2保護層2、さらには、例えば、プライマー層4、絵柄層5、基材層3などにまで到達していてもよい。加飾シートの射出成形時における凹凸形状の消失、変形等を効果的に抑制する観点からは、凹凸形状の凹部が基材層3に到達していることが好ましい。
<組成>
第1保護層1は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されている。第1保護層1における電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との割合としては、質量比で、電離放射線硬化性樹脂:熱可塑性樹脂=10:90~25:75であることが好ましく、15:85~25:75程度であることがより好ましく、20:80~25:75程度であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、好ましくは、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、凹凸形状の維持と優れた耐薬品性とを両立する観点からは、特にアクリル樹脂が好ましい。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量としては、特に制限されないが、凹凸形状の維持と優れた耐薬品性とを両立する観点からは、好ましくは9万~15万程度、より好ましくは10万~14万程度、さらに好ましくは11万~13万程度が挙げられる。
なお、本明細書における熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
(電離放射線硬化性樹脂)
第1保護層1の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。なお、ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面層の形成において好適に使用される。
第1保護層を形成に使用される電離放射線硬化性樹脂として、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜混合したものが挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとともに、シラノール基を有するシリコーン化合物を反応させることにより得られる。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの電離放射線硬化性樹脂の中でも、凹凸形状の維持と優れた耐薬品性とを両立する観点からは、電離放射線硬化性樹脂に含まれるモノマーの官能基数が2~6の範囲にあることが好ましく、官能基数が2~4の範囲にあることがより好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂に含まれるモノマーの分子量としては、好ましくは200~2000程度、より好ましくは200~1500程度、さらに好ましくは200~1000程度が挙げられる。
さらに、これらのモノマーの中でも、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。
<他の添加剤>
また、第1保護層1の形成に使用される樹脂組成物には、第1保護層1に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、ワックス等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。なお、ワックスを配合することにより、耐傷性、耐摩耗性を向上させることができる。ワックスとしては、好ましくはポリエチレンワックス(PEワックス)などのオレフィンワックスが挙げられる。ワックスを配合する場合、硬化性樹脂組成物中の配合量としては、好ましくは0.1~5質量%程度、より好ましくは0.5~3質量%程度が挙げられる。
また、第1保護層1は、マット化剤を含んでいてもよい。マット化剤としては、特に制限されず、例えば、無機粒子、合成樹脂粒子などが挙げられる。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、これらの疎水処理物等が好ましく挙げられる。これらの無機粒子は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、合成樹脂粒子としては、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、シリコーンゴムビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリオレフィンワックス(ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、これらの混合物等)等が好ましく挙げられる。これらの合成樹脂粒子は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第1保護層1には、無機粒子及び合成樹脂粒子のいずれか一方を含有させてもよく、またこれらを組み合わせて含有させてもよい。無機粒子及び合成樹脂粒子の平均粒径は、意匠性向上の観点から、0.1~5μmが好ましく、1~5μmがより好ましく、2~5μmが更に好ましい。なお、無機粒子及び合成樹脂粒子の粒子径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式によるものを指す。
加飾シートの凹凸形状をより好適に維持する観点からは、第1保護層1の23℃における引張弾性率は、好ましくは約600MPa以上、より好ましくは約800MPa以上、さらに好ましくは約1000MPa以上、さらに好ましくは約1200MPa以上である。また、当該引張弾性率は、好ましくは約2500MPa以下、より好ましくは約2000MPa以下である。当該引張弾性率の好ましい範囲としては、600~2000MPa程度、600~1500MPa程度、800~2000MPa程度、800~1500MPa程度、1000~2000MPa程度、1000~1500MPa程度、1200~2000MPa程度、1200~1500MPa程度が挙げられる。
また、加飾シートの凹凸形状をより好適に維持する観点からは、第1保護層1の150℃における引張弾性率は、好ましくは約10MPa以上、より好ましくは約20MPa以上、さらに好ましくは約30MPa以上である。また、当該引張弾性率は、好ましくは約500MPa以下、より好ましくは約100MPa以下、さらに好ましくは約50MPa以下である。当該引張弾性率の好ましい範囲としては、10~500MPa程度、10~100MPa程度、10~50MPa程度、20~500MPa程度、20~100MPa程度、20~50MPa程度、30~500MPa程度、30~100MPa程度、30~50MPa程度が挙げられる。
第1保護層1の23℃又は150℃における引張弾性率の測定方法は、以下の通りである。第1保護層1を30μmの厚みで作製し、幅25mm、長さ80mmの試験サンプルとする。23℃又は150℃の環境において、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン万能材料試験機 RTC-1250A)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度1000mm/分の条件で、試験サンプルの引張弾性率を測定する。
<第1保護層1の厚み>
第1保護層1の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、凹凸形状の維持と、優れた耐薬品性とを両立する観点からは、第1保護層1の硬化後の厚みとして、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.1~15μm、更に好ましくは1~12μmが挙げられる。なお、第1保護層1の厚みとは、第1保護層1の凸部の厚みを意味する。
<第1保護層1の形成>
第1保護層1は、硬化性樹脂組成物の硬化物が凹凸形状を備えるようにして、第2保護層2の上に形成すればよく、その具体的方法については特に制限されるものではない。第1保護層1に凹凸形状を付与する方法としては、例えば、エンボス加工を施す方法が挙げられる。微細な凹凸形状を付与する観点からは、エンボス加工を施す方法が好ましい(例えば、後述の第1法または第2法)。
凹凸形状を有する第1保護層1の好ましい形成方法として、具体的には、以下の第1法及び第2法が挙げられる。
第1法:基材層3などを備えるシートを用意し、当該シートの第1保護層1及び第2保護層2を積層させる側にエンボス加工を施した後に、第2保護層2の形成に使用される樹脂組成物を塗布し、さらにその上から、第1保護層1の形成に使用される樹脂組成物を塗布して、これらの樹脂組成物を各層それぞれ、または、2層同時に硬化させる方法。
第2法:基材層3などを備えるシートを用意し、当該シートの第1保護層1及び第2保護層2を積層させる側に、第2保護層2の形成に使用される樹脂組成物を塗布し、さらにその上から、第1保護層1の形成に使用される樹脂組成物を塗布して、これらの樹脂組成物を硬化させた後に、第1保護層1側にエンボス加工を施す方法。
第1保護層1の形成に使用される樹脂組成物を塗布する方法については、特に制限されないが、例えば、前述の第1法または第2法であれば、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等が挙げられ、好ましくはグラビアコートが挙げられる。
このようにして塗布された樹脂組成物(未硬化樹脂層)に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して当該樹脂組成物を硬化させて第1保護層1を形成する。
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加する。第1保護層と第2保護層2を同時に硬化させる際には、電子線の透過深さと第1保護層1と第2保護層2の合計厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することが好ましい。また、第2保護層の前記第1保護層と反対側の面に設ける層(例えば、基材層など)として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと第1保護層1と第2保護層2の合計厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、下層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による下層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯等が挙げられる。
[第2保護層2]
第2保護層2は、第1保護層1の下(外側とは反対側)に位置している。第2保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されている。前記の通り、本発明の加飾シートにおいては、外側の凹凸形状を構成している第1保護層1を、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物とした上で、さらに、第2保護層2の23℃における引張弾性率を500MPa以下とし、第2保護層2として、200℃以下に熱軟化点が存在しないものとすることにより、凹凸形状の維持と優れた耐薬品性とを好適に両立することが可能となっている。
第2保護層2は、第1保護層1の凹凸形状に沿った凹凸形状を有していることが好ましい。第1保護層1の凹凸形状の詳細については、前記の通りである。
加飾シートの凹凸形状をより好適に維持する観点からは、第2保護層2の23℃における引張弾性率は、好ましくは約450MPa以下、より好ましくは約400MPa以下、さらに好ましくは約300MPa以下、さらに好ましくは約250MPa以下である。また、当該引張弾性率は、好ましくは約30MPa以上、より好ましくは約50MPa以上である。当該引張弾性率の好ましい範囲としては、30~500MPa程度、30~450MPa程度、30~400MPa程度、30~300MPa程度、30~250MPa程度、50~500MPa程度、50~450MPa程度、50~400MPa程度、50~300MPa程度、50~250MPa程度が挙げられる。
第2保護層2の23℃における引張弾性率の測定方法は、以下の通りである。第2の保護層2を30μmの厚みで作製し、幅25mm、長さ80mmの試験サンプルとする。23℃環境において、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン万能材料試験機 RTC-1250A)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度1000mm/分の条件で、試験サンプルの引張弾性率を測定する。
また、第2保護層2の熱軟化点の測定方法は、以下の通りである。第2の保護層2を30μmの厚みで作製し、幅25mm、長さ80mmの試験サンプルとする。熱分析装置(TMA)を用い、室温(25℃)から200℃まで昇温速度5℃/minで昇温して、試験サンプルの熱軟化点の有無を確認する。なお、25℃以下の温度に熱軟化点が存在することは考えられないことから、開始温度は25℃とする。
第2保護層2に使用される電離放射線硬化性樹脂としては、第2保護層2の23℃における引張弾性率を500MPa以下とし、かつ、200℃以下に熱軟化点が存在しないものであれば、特に制限されず、例えば第1保護層1で例示した電離放射線硬化性樹脂を使用することができる。第2保護層2に対してこのような特性を付与する観点から、第2保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂として、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、前記の通り、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものである。例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。この(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。
上記のポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、あるいは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法などが挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端あるいは側鎖に2個以上、好ましくは2~50個の、より好ましくは3~50個の水酸基を有する重合体である。このポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法である。原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式 HO-R1-OHで表される。ここで、R1は、炭素数2~20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらジオールは、それを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどのアルコール類を挙げることができる。さらに、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1~5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。多価アルコールは、これらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
カルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。その具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル類、ホスゲン、あるいはクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのハロゲン化ギ酸エステル類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネートポリオールは、前記したジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。例えば、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比は、50:50~99:1の範囲にあることが好ましく、また、カルボニル成分となる化合物(C)のジオール化合物(A)と多価アルコール(B)に対する仕込みモル比は、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して、0.2~2であることが好ましい。
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して3以上、好ましくは3~50、より好ましくは3~20である。この範囲であると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64-1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3-181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。本発明の加飾シートの凹凸形状の維持と優れた耐薬品性とを好適に両立するから、さらに好ましくは、2,000以上50,000以下であり、特に好ましくは、5,000~20,000である。
第2保護層の電離放射線硬化性樹脂組成物においては、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、多官能(メタ)アクリレートと共に用いることが好ましい。すなわち、電離放射線硬化性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレートをさらに含むことが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能(メタ)アクリレートの質量比としては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=98:2~50:50であることがより好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98:2より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して98質量%以下であると)、耐薬品性がさらに向上する。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が50:50より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して50質量%以上となると)、三次元成形性がさらに向上する。好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5~60:40である。
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ただし、硬化性の観点から3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでもよいが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
また、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。以上述べた多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能性(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有量(固形分)としては、特に制限されないが、本発明の加飾シートの凹凸形状の維持と優れた耐薬品性とを好適に両立する観点からは、好ましくは50~100質量%程度、より好ましくは65~100質量%程度が挙げられる。
<他の添加剤>
第2保護層2の形成に使用される樹脂組成物には、第2保護層2に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、前記の第1保護層1で例示したものと同じものが例示され、その配合量についても同様である。
<第2保護層2の厚み>
第2保護層2の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、凹凸形状の維持と優れた耐薬品性とを両立する観点からは、第2保護層2の硬化後の厚みとしては、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは12~20μm、更に好ましくは15~20μmが挙げられる。なお、第2保護層2が凹凸形状を有する場合、第2保護層2の厚みとは、第2保護層2の凸部の厚みを意味する。
<第2保護層2の形成方法>
第2保護層2は、硬化性樹脂組成物の硬化物が形成されるようにして形成すればよく、その具体的方法については特に制限されるものではない。第2保護層2の形成は、第1保護層1の形成方法で例示した方法(例えば、前述の第1法または第2法)により好適に形成することができる。
第2保護層2の形成に使用される樹脂組成物を塗布する方法についても、第1保護層1と同じ方法が挙げられる。また、塗布された樹脂組成物(第2保護層2の未硬化樹脂層)に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して当該樹脂組成物を硬化させて第2保護層2を形成する方法についても、第1保護層1と同様である。前記の通り、第1保護層と第2保護層2を同時に硬化させることが好ましい。
[プライマー層4]
プライマー層4は、第2保護層2の密着性を向上させること等を目的として、必要に応じて、第2保護層の前記第1保護層と反対側の面にプライマー層4を設けることができる。プライマー層4は、基材層3を有する場合であれば、基材層3と第2保護層2との間、絵柄層5を設ける場合には絵柄層5と第2保護層2との間及び/又は基材層3と絵柄層5の間等に、必要に応じて設けられる層である。
第2保護層2とその前記第1保護層と反対側の面側に位置する層との密着性を高める観点から、第2保護層2の直下にプライマー層4が設けられていることが好ましい。
プライマー層4を構成するプライマー組成物としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等をバインダー樹脂とするものが好ましく用いられ、これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、ウレタン樹脂とブチラール樹脂を混ぜて構成することも可能である。
架橋後の第2保護層2との密着性、第2保護層2を積層後の相互作用の生じ難さ、物性、成形性の面から、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせることが好ましく、特にアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせて用いることが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル-ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル-ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは9/1~1/9、より好ましくは8/2~2/8の範囲で調整することが好ましい。
プライマー層4の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.5~20μm程度であり、好ましくは、1~5μmが挙げられる。
プライマー層4は、プライマー組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法は、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
[絵柄層5]
絵柄層5は、加飾シートに装飾性を付与する目的で、第2保護層の前記第1保護層と反対側の面に、必要に応じて設けられる層である。絵柄層5は、基材層3を有する場合であれば、基材層3と第2保護層2の間、プライマー層4を設ける場合は、基材層3とプライマー層4の間、又は隠蔽層を設ける場合は隠蔽層と第2保護層2の間等に、必要に応じて設けられる層である。
絵柄層5は、例えば、インキ組成物を用いて所望の絵柄を形成した層とすることができる。絵柄層5の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
インキ組成物に使用されるバインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキ組成物に使用される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
絵柄層5によって形成される絵柄についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよく、あるいは単色無地(いわゆる全面ベタ)であってもよい。これらの絵柄は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
絵柄層の厚みは、特に制限されないが、例えば1~30μm、好ましくは1~20μmが挙げられる。
また、絵柄層5は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。金属薄膜層は全面に設けられても、部分的に設けられてもよい。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
[隠蔽層]
隠蔽層は、基材層3の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層3と第2保護層2の間、プライマー層4を設ける場合であれば基材層3とプライマー層4の間、又は絵柄層5を設ける場合であれば基材層3と絵柄層5の間に、必要に応じて設けられる層である。
隠蔽層は、基材層が加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するために設けられるため、一般的には、不透明色の層として形成される。
隠蔽層は、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。隠蔽層を形成するインキ組成物は、前述した絵柄層に使用されるものから適宜選択して使用される。
隠蔽層は、通常、厚みが1~20μm程度に設定され、所謂ベタ印刷層として形成されることが望ましい。
隠蔽層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等の通常の印刷方法;グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等の通常の塗布方法等によって形成される。
[透明樹脂層]
透明樹脂層は、耐薬品性や耐摩耗性を向上させる目的で、基材層3と第2保護層2の間、プライマー層4を設ける場合は基材層3とプライマー層4の間、絵柄層5を設ける場合は絵柄層5と第2保護層2の間、又は基材層3上にプライマー層4と絵柄層5をこの順に設ける場合はプライマー層4と絵柄層5の間等に、必要に応じて設けられる層である。透明樹脂層は、インサート成形法によって成形樹脂と一体化される加飾シートにおいて、好適に設けられる層である。
透明樹脂層を形成する樹脂成分としては、透明性、三次元成形性、形状安定性、耐薬品性等に応じて適宜選定されるが、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が使用される。これらの熱可塑性樹脂の中でも、耐薬品性、耐摩耗性等の観点から、好ましくは、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂;更に好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂;より好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられる。
透明樹脂層は、接面する他の層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。これらの物理的又は化学的表面処理は、基材層に施される表面処理と同様である。
透明樹脂層の厚みについては、特に制限されないが、例えば10~200μm、好ましくは15~150μmが挙げられる。
透明樹脂層は、接着剤を介して積層させてもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介して積層させる場合、使用される接着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコーン系樹脂等が挙げられる。また、接着剤を介さず積層させる場合には、押出し法、サンドラミネート法、サーマルラミネート法等の方法で行うことができる。
[裏面接着層]
裏面接着層(図示しない)は、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、加飾シートの外側表面とは反対側に、必要に応じて設けられる層である。
裏面接着層には、加飾樹脂成形品に使用される成形樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。
裏面接着層の形成に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、裏面接着層の形成に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、外側の表面に凹凸形状を有する加飾樹脂成形品であって、外側から順に、少なくとも、前記凹凸形状を構成している第1保護層と、第2保護層と、成形樹脂層6とを有しており、第1保護層は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されており、第2保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されており、第2保護層は、23℃における引張弾性率が500MPa以下であり、かつ、200℃以下に熱軟化点が存在しないことを特徴とする。
本発明の加飾樹脂成形品は、加飾シートの第1保護層1が備えている凹凸形状が好適に付与されている。射出成形時の熱と圧力によって、加飾シートの第1保護層1が備えている凹凸形状は、大きく変化し易いが、本発明の加飾シートにおいては、凹凸形状が効果的に維持される。加飾樹脂成形品において、第1保護層1の表面の算術平均粗さ(Ra)として、凹凸形状による優れた意匠感等を付与するという観点から、通常0.1~30μm、好ましくは1~30μm、更に好ましくは10~30μmが挙げられる。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2001の規定に準拠し、加飾樹脂成形品の第1保護層1の表面について、測定した値である。
図3に、本発明の加飾樹脂成形品の一態様について、その断面構造を示す。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートの第2保護層2側(凹凸形状を有する表面と反対側の面)に、樹脂を射出することにより成形樹脂層を形成する工程を備える方法により製造することができる。具体的には、本発明の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。
インサート成形法では、先ず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートの第2保護層2側を一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品(または熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品)が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを用いる場合であれば、通常100~250℃程度、好ましくは130~200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度、好ましくは220~280℃程度とすることができる。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートの第2保護層2側を一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品(または熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品)が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの第1保護層1側が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70~130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度、好ましくは220~280℃程度とすることができる。
また、本発明の加飾樹脂成形品(または熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品)は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの第2保護層2側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60~200℃程度とすることができる。
本発明の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた成形樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
成形樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、成形樹脂として使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、優れた耐薬品性、耐摩耗性等を有しているので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
基材層としてABS樹脂フィルム(厚み475μm)を用いた。基材層上に、アクリル樹脂を含むインキ組成物を用いて、絵柄層(ベタ柄層(厚さ5μm))をグラビア印刷により形成した。次に、絵柄層上に、主剤(アクリルポリオール/ウレタン、質量比9/1)100質量部と硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)7質量部を含む2液硬化型樹脂からなるバインダー樹脂を含むプライマー層用樹脂組成物を塗布し、乾燥させて厚みが2μmのプライマー層を形成し、基材層/絵柄層/プライマー層が順に積層された積層体を得た。
次に、得られた積層体のプライマー層側に、エンボス加工を行い、凹凸形状をプライマー層上に形成させた。エンボス版としては、ストライプ柄、エンボス版深40μmのものを用いた。次に、第2保護層を形成するために、電離放射線硬化性樹脂(後述のEB樹脂A1)を、硬化後の厚さ(第2保護層の凹凸形状の凸部の厚み)が10μmとなるように塗布して未硬化樹脂層を形成した。この未硬化樹脂層の上から、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)を照射して硬化させた。次に、第1保護層を形成するために、電離放射線樹脂(後述のEB樹脂B1)と熱可塑性樹脂(アクリル樹脂、重量平均分子量12万)とを質量比1:3で配合した樹脂組成物を、硬化後の厚さ(第1保護層の凹凸形状の凸部の厚み)が10μmとなるように塗布して未硬化樹脂層を形成した。第2保護層と同様に、この未硬化樹脂層の上から、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)を照射して硬化させ、凹凸形状を有する第1保護層及び第2保護層を形成し、加飾シートを得た。なお、表面層の凹凸形状は、プライマー層の凹凸形状に対応している。
次に、得られた加飾シートを用いて、加飾樹脂成形品を製造した。具体的には、加飾シートを赤外線ヒーターで280℃、20秒間加熱し、真空成形で金型内の形状(板状)に沿うように予備成形した(最大延伸倍率50%)。次に、予備成形品を金型にはめ込み、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、加飾シートと射出樹脂とを一体化成形し、金型から取り出して加飾樹脂成形品を得た。
実施例2
第2保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂として、後述のEB樹脂A2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例3
第2保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂として、後述のEB樹脂A3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例4
第1保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂として、後述のEB樹脂B2を用いたこと、及び電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との質量比を1:2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例5
第2保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂として、後述のEB樹脂A4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
比較例1
第2保護層を電離放射線硬化性樹脂(後述のEB樹脂C1)と熱可塑性樹脂(ブチラール樹脂)とを質量比1:1で配合した樹脂組成物で形成した以外は、実施例1と同様にして、加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
比較例2
第2保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂として、後述のEB樹脂C2を用いたこと、及び第2保護層を形成する熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
表1に記載の第1保護層及び第2保護層の樹脂は以下の通りである。
・EB樹脂A1は、ポリカーボネート骨格を有する2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量20,000)95質量部、及び6官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量3,000)5質量部
・EB樹脂A2は、ポリカーボネート骨格を有する2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量20,000)95質量部、及び6官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量3,000)5質量部
・EB樹脂A3は、ポリカーボネート骨格を有する2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量20,000)30質量部、及び6官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量3,000)70質量部
・EB樹脂A4は、ポリカーボネート骨格を有する2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量20,000)50質量部、及び6官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量3,000)50質量部
・EB樹脂B1は、2官能ウレタンアクリレートモノマー(分子量500)
・EB樹脂B2は、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量3000)
・EB樹脂C1は、6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量7000)
・EB樹脂C2は、2官能のポリエステルアクリレートオリゴマー(重量平均分子量10000)60質量部、及び6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量7000)40質量部
・アクリル樹脂は、ポリメタクリル酸メチル(重量平均分子量12万、軟化温度80℃)
・ブチラール樹脂は、ポリビニルブチラール(重量平均分子量5000、軟化温度60℃)
<引張弾性率>
第1保護層及び第2保護層の引張弾性率を以下の方法により測定した。第1の保護層又は第2の保護層を、それぞれ、30μmの厚みで作製し、幅25mm、長さ80mmの試験サンプルとした。具体的には、第1保護層及び第2保護層の形成に用いた電離放射線硬化性樹脂組成物を、それぞれ、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗工し、硬化させて30μmの厚みで硬化させて硬化膜とし、ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化膜を剥離して、前記所定のサイズに裁断して試験サンプルとした。23℃又は150℃の環境において、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン万能材料試験機 RTC-1250A)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度1000mm/分の条件で、試験サンプルの引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
<熱軟化点>
第2保護層の熱軟化点を以下の通り測定した。第2の保護層2を30μmの厚みで作製し、幅25mm、長さ80mmの試験サンプルとした。具体的には、第2保護層の形成に用いた電離放射線硬化性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗工し、硬化させて30μmの厚みで硬化させて硬化膜とし、ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化膜を剥離して、前記所定のサイズに裁断して試験サンプルとした。熱分析装置(TMA)を用い、室温(25℃)から200℃まで昇温速度5℃/minで昇温して、試験サンプルの熱軟化点の有無を確認した。なお、25℃以下の温度に熱軟化点が存在することは考えられないことから、開始温度は25℃とした。結果を表1に示す。
<成形性>
得られた加飾シートを真空成形に供して成形性を評価した。加飾シートを赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させた。次いで、真空成形用型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率200%)、型の内部形状に成形した。加飾シートを冷却後、型より加飾シートを離型して、以下の基準に基づいて成形性を評価した。結果を表1に示す。
○:三次元形状部又は最大延伸部に微細な塗膜割れ又は白化無し
△:三次元形状部又は最大延伸部の一部に軽微な塗膜割れ又は白化が発生
×:型の形状に追従できず、表面に塗膜割れ、白化が見られた
<凹凸維持性>
各加飾樹脂成形品の外観について、成形前の各加飾シートの外観からの変化を確認し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:成形前と比べて凹凸形状による意匠感に変化がない
○:成形前と比べて軽微な変化があるが、凹凸形状による意匠感に大きな変化はない
△:成形前と比べて、凹凸形状による意匠感が薄いと感じられる
×:凹凸形状による意匠感が失われている
<加飾シートの耐薬品性>
日焼け止め化粧料5mlを、上記で得られた各加飾シートの表面に滴下し、60℃のオーブン内に4時間放置した。次に、加飾シートを取り出し、中性洗剤液で表面を洗い流した後、滴下部分の状態を目視で観察して、加飾シートの耐薬品性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。用いた日焼け止め化粧料は、市販のものであり、成分として、アボベンゾン(3%)、ホモサレート(10%)、オクチサレート(5%)、オクトクリレン(2.8%)、オキシベンゾン(6%)を含有しており、樹脂表面の浸食性が高いものである。
◎:加飾シート表面の外観に変化がない
○:加飾シート表面に軽微な艶変化があるが、意匠を大きく損なわない
△:加飾シート表面に艶変化があるが、実使用上許容し得る
×:加飾シート表面に白化、膨潤、溶解があった
<耐傷付き性>
加飾シートの第1保護層側の表面を爪で10往復し、傷つき状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇;傷付き無し
△;軽微な傷付きが確認された
×;塗膜が削られ、著しい傷付きが確認された。
Figure 0007501057000001
1 第1保護層
2 第2保護層
3 基材層
4 プライマー層
5 絵柄層
6 成形樹脂層

Claims (12)

  1. 外側の表面に凹凸形状を有する加飾シートであって、
    前記外側から順に、少なくとも、前記凹凸形状を構成している第1保護層と、第2保護層とを有しており、
    前記第1保護層は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されており、
    前記第1保護層の前記電離放射線硬化性樹脂は、多官能(メタ)アクリレートモノマー及び多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの少なくとも一方を含み、
    前記第1保護層の前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂を含み、
    前記第1保護層において、前記樹脂組成物は、前記電離放射線硬化性樹脂と前記熱可塑性樹脂とを10:90から25:75の質量比で含み、
    前記第2保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されており、
    前記第2保護層の前記電離放射線硬化性樹脂組成物における、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有率が、50~100質量%であり、
    前記第2保護層は、23℃における引張弾性率が500MPa以下であり、かつ、200℃以下に熱軟化点が存在しない、加飾シート。
  2. 前記第2保護層は、前記第1保護層の前記凹凸形状に沿った凹凸形状を有している、請求項1に記載の加飾シート。
  3. 前記第1保護層において、前記樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを15:85から25:75の質量比で含む、請求項1または2に記載の加飾シート。
  4. 前記第1保護層において、前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、9万以上15万以下の範囲にある、請求項1~3のいずれかに記載の加飾シート。
  5. 前記第1保護層において、前記電離放射線硬化性樹脂に含まれるモノマーの官能基数が2~6の範囲にある、請求項1~4のいずれかに記載の加飾シート。
  6. 前記第1保護層において、前記電離放射線硬化性樹脂に含まれるモノマーの分子量が、200以上2000以下の範囲にある、請求項1~5のいずれかに記載の加飾シート。
  7. 前記第2保護層の前記第1保護層と反対側の面に、基材層が積層されている、請求項1~6のいずれかに記載の加飾シート。
  8. 前記第2保護層の前記第1保護層と反対側の面にプライマー層が積層されている、請求項1~7のいずれかに記載の加飾シート。
  9. 前記第1保護層は、23℃における引張弾性率が600MPa以上である、請求項1~8のいずれかに記載の加飾シート。
  10. インサート成形法または射出成形同時加飾法に用いられる、請求項1~9のいずれかに記載の加飾シート。
  11. 外側の表面に凹凸形状を有する加飾樹脂成形品であって、
    前記外側から順に、少なくとも、前記凹凸形状を構成している第1保護層と、第2保護層と、成形樹脂層とを有しており、
    前記第1保護層は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されており、
    前記第1保護層の前記電離放射線硬化性樹脂は、多官能(メタ)アクリレートモノマー及び多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの少なくとも一方を含み、
    前記第1保護層の前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂を含み、
    前記第1保護層において、前記樹脂組成物は、前記電離放射線硬化性樹脂と前記熱可塑性樹脂とを10:90から25:75の質量比で含み、
    前記第2保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されており、
    前記第2保護層の前記電離放射線硬化性樹脂組成物における、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有率が、50~100質量%であり、
    前記第2保護層は、23℃における引張弾性率が500MPa以下であり、かつ、200℃以下に熱軟化点が存在しない、加飾樹脂成形品。
  12. 請求項1~10のいずれかに記載の加飾シートの前記凹凸形状を有する表面と反対側の面に、樹脂を射出することにより成形樹脂層を積層する工程を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。

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