JP6194571B2 - 加飾シート、及び加飾樹脂成形品 - Google Patents

加飾シート、及び加飾樹脂成形品 Download PDF

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Description

本発明は、成形性及び耐薬品性に優れた加飾シート、及び当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品に関する。
車両内装部品、建材内装材、家電筐体等には、樹脂成形品の表面に加飾シートを積層させさせた加飾樹脂成形品が使用されている。従来、加飾樹脂成形品の製造には、予め意匠性が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法が用いられている。加飾樹脂成形品には、三次元曲面等の複雑な表面形状を有するものもあり、加飾シートには、加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る成形性が求められている。
また、加飾樹脂成形品の製造に使用される加飾シートは、成形性に加えて、日常生活において使用される種々の製品に対して耐汚染性を備えていることが要求されている。とりわけ、近年、日焼け止め化粧料等のスキンケア用品が多用される傾向にあり、このようなスキンケア用品を塗布した皮膚が加飾樹脂成形品と接触する頻度も高まっており、加飾シートにはスキンケア用品に対する耐薬品性を備えていることが強く求められている。
従来、加飾シートに成形性及び耐薬品性を備えさせる技術について幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、基材シートの片面に離型層及び表面保護層をこの順に有する加飾シートにおいて、表面保護層を、分子量が175〜1000の多官能(メタ)アクリレートモノマー及び重量平均分子量が1万〜10万未満の熱可塑性樹脂を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物で形成し、且つ当該樹脂組成物中の該多官能(メタ)アクリレートモノマーと該熱可塑性樹脂との質量比を10:90〜75:25にすることにより、日焼け止めクリームに対する耐汚染性や成形性を備え得ることが開示されている。
特許文献1に記載の技術は、優れた成形性及び耐薬品性を備える加飾シートを製造する上では有用であるが、加飾樹脂成形品に対する消費者の要望は昨今高度化・多様化しており、これに追従していくには、加飾シートに対して優れた成形性及び耐薬品性を備えさせる新たな技術の創出が必要とされている。
特開2012−91498号公報
後述する樹脂硬さ指数は、架橋点間分子量や架橋密度の指標となり得る物性値であり、当該樹脂硬さ指数に着目して、優れた成形性と耐薬品性を備える新規な加飾シート及び加飾樹脂成形品の創出のために種々の検討を行った。その結果、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物で形成した表面保護層を基材層上に積層させた加飾シートにおいて、当該硬化物の樹脂硬さ指数を4600以上にして架橋密度を低くすると、成形性が向上する反面、耐薬品性の低下という特有の課題が生じることが明らかになった。
そこで、本発明は、架橋密度が低い上記硬化物で形成された表面保護層を有する加飾シートにおける上記特有の課題を解決して、優れた成形性と耐薬品性を両立できる加飾シートを提供することを目的とする。更に、本発明は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、基材層上に、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物で形成された表面保護層を少なくとも有する加飾シートにおいて、当該硬化物にアクリルビーズを含有させ、且つ後述する樹脂硬さ指数が4600以上となるよう当該硬化物を設計することにより、優れた成形性と耐薬品性を兼ね備えさせ得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 基材層上に、少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、
前記表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つ
前記硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする、加飾シート:
Yi=[Mi÷(Xi×Zi)]×Wi
n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。
項2. 前記アクリルビーズの平均粒子径が0.1〜10μmである、項1に記載の加飾シート。
項3. 電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、前記アクリルビーズが1〜50質量部の割合で含まれる、項1又は2に記載の加飾シート。
項4. 前記電離放射線硬化性樹脂として、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む、項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートが、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜100000である、項4に記載の加飾シート。
項6. 前記電離放射線硬化性樹脂として、更にシリコーン変性ウレタンアクリレートを含む、項4又は5に記載の加飾シート。
項7. 前記シリコーン変性ウレタンアクリレートが、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜50000である、項6に記載の加飾シート。
項8. 基材層上に、プライマー層、絵柄層、及び表面保護層が順に積層されてなる、項1〜7のいずれかに記載の加飾シート。
項9. 少なくとも、射出樹脂層、基材層、及び表面保護層を順に有しており、
前記表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つ
前記硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする、加飾樹脂成型品:
Yi=[Mi÷(Xi×Zi)]×Wi
n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。
項10. 下記工程を含む加飾樹脂成形品の製造方法:
項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
項11. 下記工程を含む加飾樹脂成形品の製造方法:
項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
本発明の加飾シートは、耐薬品性に優れており、日焼け止め化粧料等のスキンケア用品を塗布した皮膚と接触しても、表面保護層に付着痕が残ったり、表面保護層が溶解したりすることがないので、外観性状を安定に維持することができる。また、本発明の加飾シートは、優れた成形性を備えており、加飾樹脂成形品の生産効率の向上に資することができる。更に、本発明の加飾シートは、表面保護層にアクリルビーズを添加することによって、粒子のムラが生じにくく、ザラツキの少ない良好な触感を有する均一な層を形成できることに加え、アクリルビーズの含有量を調節することによって艶消し効果によって低艶感が表出できるので、プラスチック感を感じさせない高級感のある優れた意匠性も備えることができる。
本発明の加飾シートの一形態の断面構造を示す図である。 本発明の加飾シートの一形態の断面構造を示す図である。 本発明の加飾シートの一形態の断面構造を示す図である。
1.加飾シート
本発明の加飾シートは、基材層上に少なくとも表面保護層を有しており、当該表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つ当該硬化物の後述する樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする。以下、本発明の加飾シートについて、詳述する。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、基材層上に、少なくとも表面保護層を有する積層構造を有する。
本発明の加飾シートにおいて、基材層と表面保護層の間には、各層同士の接着性を高める目的で、必要に応じてプライマー層が設けられていてもよい。
また、基材層と表面保護層の間には、装飾性を付与する目的で、必要に応じて、絵柄層を設けてもよい。プライマー層を設ける場合には、基材層とプライマー層の間に絵柄層を設ければよい。
表面保護層の下面(基材層側)と接面する層として、低艶感を高めることを目的として、必要に応じて低艶絵柄層を設けてもよい。装飾性の付与の観点から、絵柄層及び低艶絵柄層の内、少なくとも一方が設けられていることが望ましい。
また、基材層と表面保護層の間には、基材層の色の変化やバラツキを抑制する目的で、必要に応じて隠蔽層が設けられていてもよい。プライマー層を設ける場合であれば、当該隠蔽層は基材層とプライマー層の間に設ければよく、また、絵柄層を設ける場合であれば、当該隠蔽層は、基材層と絵柄層の間に設ければよい。
更に、基材層と表面保護層の間には、耐傷付き性を向上させる目的で、必要に応じて、透明樹脂層を設けてもよい。プライマー層を設ける場合であれば、当該透明樹脂層は、絵柄層とプライマー層の間に設ければよい。
更に、本発明の加飾シートにおいて、加飾樹脂製品の成形の際に射出樹脂との密着性を高めることを目的として、基材層の裏面(表面保護層とは反対側の面)には、必要に応じて、接着層が設けられてもよい
本発明の加飾シートの積層構造の例として、基材層/絵柄層/表面保護層が順に積層された積層構造;基材層/絵柄層/プライマー層/表面保護層が順に積層された積層構造;基材層/プライマー層/低艶絵柄層/表面保護層が順に積層された積層構造;基材層/絵柄層/プライマー層/低艶絵柄層/表面保護層が順に積層された積層構造;基材層/絵柄層/透明樹脂層/プライマー層/表面保護層が順に積層された積層構造;基材層/絵柄層/透明樹脂層/プライマー層/低艶絵柄層/表面保護層が順に積層された積層構造等が挙げられる。図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/絵柄層/プライマー層/表面保護層が順に積層された加飾シートの断面図を示す。図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/絵柄層/透明樹脂層/プライマー層/表面保護層が順に積層された加飾シートの断面図を示す。また、図3に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/絵柄層/プライマー層/低艶絵柄層/表面保護層が順に積層された加飾シートの断面図を示す。
加飾シートを形成する各層組成
[基材層]
基材層は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす。基材層に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や射出樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。該熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸エステル樹脂(以下「ASA樹脂」表記することもある)、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。また、基材層は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
基材層の曲げ弾性率については、特に制限されないが、例えば、25℃における曲げ弾性率が500〜4,000MPa、好ましくは750〜3,000MPaが挙げられる。ここで、25℃における曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定された値である。25℃における曲げ弾性率が500MPa以上であると、加飾シートは十分な剛性を備え、表面特性と成形性がより一層良好になる。また、25℃における曲げ弾性率が3,000MPa以下であると、ロール トゥ ロールで製造する場合に十分な張力をかけることができ、たるみが発生し難くなるため、絵柄がずれることなく重ねて印刷することができ、所謂絵柄見当が良好となる。
基材層は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、基材層は公知の接着層を形成する等の処理を施してもよい。
更に、基材層は、着色剤を用いて着色されていてもよく、着色されていなくてもよい。また、基材層は、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれの態様であってもよい。基材層に用いられる着色剤としては、特に制限されないが、好ましくは150℃以上の温度条件でも変色しない着色剤が挙げられ、具体的には、既存のドライカラー、ペーストカラー、マスターバッチ樹脂組成物等が挙げられる。
基材層の厚さは、加飾シートの用途等に応じて適宜設定されるが、通常50〜1000μm程度、好ましくは100〜700μm、更に好ましくは100〜500μmが挙げられる。基材層の厚さが上記範囲内であると、より一層優れた表面物性、三次元成形性及び意匠性を備えさせることができ、印刷作業性(生産性)も良好になり、コストの観点からも有利になる。
[隠蔽層]
隠蔽層は、基材層の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層と表面保護層の間、プライマー層を設ける場合であれば基材層とプライマー層の間、又は絵柄層を設ける場合であれば基材層と絵柄層の間に、必要に応じて設けられる層である。
隠蔽層は、基材層が加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するために設けられるため、一般的には、不透明色の層として形成される。
隠蔽層は、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。隠蔽層を形成するインキ組成物は、後述する絵柄層に使用されるものから適宜選択して使用される。
隠蔽層は、通常、厚さが1〜20μm程度に設定され、所謂ベタ印刷層として形成されることが望ましい。
隠蔽層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等の通常の印刷方法;グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等の通常の塗工方法等によって形成される。
[絵柄層]
絵柄層は、加飾シートに装飾性を付与する目的で、基材層とプライマー層の間、又は隠蔽層を設ける場合は隠蔽層とプライマー層の間に、必要に応じて設けられる層である。
絵柄層は、インキ組成物を用いて所望の絵柄を形成した層である。絵柄層の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
インキ組成物に使用されるバインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキ組成物に使用される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
絵柄層によって形成される模様についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよい。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
絵柄層の厚さは、特に制限されないが、例えば1〜30μm、好ましくは1〜20μmが挙げられる。
絵柄層は、インキ組成物を用いて所望の絵柄となるように印刷することにより形成される。絵柄層を形成するための印刷方法については、特に制限されないが、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
[透明樹脂層]
透明樹脂層は、耐薬品性や耐傷付き性を向上させる目的で、基材層と表面保護層の間、プライマー層を設ける場合は基材層とプライマー層の間、絵柄層とプライマー層を設ける場合は絵柄層とプライマー層の間に、必要に応じて設けられる層である。
透明樹脂層を形成する樹脂成分としては、透明性、三次元成形性、形状安定性、耐薬品性等に応じて適宜選定されるが、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が使用される。これらの熱可塑性樹脂の中でも、耐薬品性、耐傷付き性等の観点から、好ましくは、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂;更に好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂;より好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられる。
透明樹脂層は、接面する他の層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。これらの物理的又は化学的表面処理は、基材層に施される表面処理と同様である。
透明樹脂層の厚さについては、特に制限されないが、例えば10〜200μm、好ましくは15〜150μmが挙げられる。
透明樹脂層は、接着剤を介して積層させてもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介して積層させる場合、使用される接着剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン樹脂等が挙げられる。また、接着剤を介さず積層させる場合には、押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の方法で行うことができる。
[プライマー層]
プライマー層は、基材層と表面保護層の間、絵柄層を設ける場合は絵柄層と表面保護層の間、低艶絵柄層を設ける場合は基材層と低艶絵柄層の間、絵柄層と低艶絵柄層を設ける場合は絵柄層と低艶絵柄層の間、透明樹脂層を設ける場合であれば透明樹脂層と表面保護層の間、又は透明樹脂層と低艶絵柄層を設ける場合は透明樹脂層と低艶絵柄層の間に設けられる。なお、低艶絵柄層を設ける場合、プライマー層は、図1及び3に示されるように、低艶絵柄層と表面保護層の双方に接面することがある。
プライマー層は、バインダー樹脂を含むプライマー組成物を用いて形成される。プライマー層は、表面保護層の延伸部に微細な割れや白化を生じ難くする作用を発揮する。
プライマー組成物に使用されるバインダー樹脂としては、特に制限されないが、必要に応じて設けられる低艶絵柄層で使用される熱可塑性樹脂や、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂との相互作用を生じ難い性質を有する樹脂が好ましく、このような樹脂として、例えば熱硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル/ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのバインダー樹脂の中でも、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル/ウレタン共重合体樹脂が好ましい。また、必要に応じて設けられる低艶絵柄層と表面保護層とによる艶差発現の効果をより顕著に奏させるという観点から、プライマー層の形成は、好ましくは架橋剤を用いて行われる。
上記ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の表面保護層との密着性の向上、表面保護層を積層後の相互作用の低減、物性の向上、成形性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋材としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせ;更に好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
上記(メタ)アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(メタ)アクリル/ウレタン共重合体樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が挙げられる。また、硬化剤としては、前述する各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン比(質量比)として、9/1〜1/9、好ましくは8/2〜2/8が挙げられる。
また、プライマー層の物性として、加飾シートの真空成形時において表面保護層の延伸部に微細な割れや白化を生じ難くするという観点から、下記測定条件で測定した120℃における破断伸度が、好ましくは50%以上、更に好ましくは200%以上が挙げられる。
(破断伸度測定の測定条件)
JIS K 7127:1999に準拠し、プライマー層を構成するプライマー組成物を架橋硬化(50℃72時間加熱)して製膜した幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ40±10μmのサンプルを120℃のオーブン投入後、120秒放置した後、引張速度:50mm/minで破断伸度を測定する。
プライマー層の厚さについては、特に制限されないが、例えば0.1〜10μm、好ましくは1〜10μmが挙げられる。プライマー層がこのような厚さを充足することにより、質感のある豊かな低艶感を効果的に表出できると共に、表面保護層の割れ、破断、白化等を有効に抑制することができる。
プライマー層は、プライマー組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
[低艶絵柄層]
低艶絵柄層は、表面の凹凸模様を良好に表出させて低艶感を強調する目的で、表面保護層の下面(基材シート側)と接面する層として、必要に応じて設けられる層である。即ち、低艶絵柄層は、基材層と表面保護層の間、プライマー層を設ける場合はプライマー層と表面保護層の間等に設けられる。
低艶絵柄層とは、当該低艶絵柄層を形成する樹脂組成物と、該低艶絵柄層上に設けられる表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂との間で生じる溶出、分散、混合等の相互作用により当該低艶絵柄層の直上部又は直上部を含むその近傍(以下単に「直上部及びその近傍」と称することがある)において低艶を呈する低光沢領域を形成させる層である。なお、この相互作用は必然的に生じるものであって、上記近傍の範囲を制御することはできない。また、当該低艶絵柄層は、電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用により低艶を発現するものであり、低艶絵柄層単独でのグロス値が高くても、当該低艶絵柄層と表面保護層の相互作用によって加飾シートに低艶感がある意匠性を表出させることができる。
上記の通り、低艶絵柄層は、その直上部及びその近傍において低光沢領域を形成する(図3参照)。従って、表面保護層側から加飾シートを見ると、相対的に低光沢領域が発現した部分が視覚的に凹部として認識されるようになり、その他の領域は視覚的に凸部として認識されるようになるため、全体として視覚的に凹凸模様として認識される。よって、上記低艶絵柄層を形成した直上部及びその近傍に対応する表面保護層の最表面においては、低艶絵柄層に起因した凸形状を設けなくても凹凸の視覚的効果が得られる。ただし、上記凹凸の視覚的効果が得られる部分に物理的な凹凸形状を形成しておいてもよい。低艶絵柄層の周りに凸形状を形成した場合には、この凸形状により光散乱される表面積が増加して光沢度がより一層低下し、かつ低艶が認識できる視野角も広がるため、低艶絵柄層の効果と協調してさらに視覚的な凹凸感が強調される。なお、上記凹凸形状を設ける場合の凸形状の高さについては、特に制限されないが、通常2〜3μmが挙げられる。当該低艶絵柄層の意匠は、絵柄模様に形成していてもよいし、一様均一な模様、即ちベタ模様であってもよい。
低艶絵柄層に使用されるインキは、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂との間で相互作用を発現し得る性質を有するバインダー樹脂であることを要し、そのようなバインダー樹脂としては、通常イソシアネート等の架橋剤を併用しないで使用される樹脂、好ましくは架橋剤を使用していない熱可塑性樹脂が挙げられる。
低艶絵柄層に使用される熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硝化綿等のニトロセルロース樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、後述する表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の電離放射線硬化性樹脂として採用されるポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートとの相性、即ち白化等を生じ難くするという観点から、好ましくは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿等のニトロセルロース樹脂、更に好ましくは、アクリル樹脂が挙げられる。
上記アクリル樹脂の分子量については、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量が10,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜700,000、更に好ましくは70,000〜500,000が挙げられる。このような重量平均分子量を充足することにより、チクソ性が良好で低艶絵柄層の凹凸感を表出し易くなり、印刷時の被膜形成性や転移性も良好になる。
なお、低艶絵柄層には、必要に応じて、低光沢領域の発現の程度、低艶層とその周囲との艶差のコントラストを調整するため、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又は塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体等が含まれていてもよい。
また、低艶絵柄層には、必要に応じてシリカ等の多孔質粒子が含まれていてもよい。低艶絵柄層にシリカを含有させることにより、低艶絵柄層の直上部及びその近傍において、より大きな凹凸が形成されて光が大きく散乱するようになるため、低光沢領域の低艶化をより一層促進することができる。低艶絵柄層に用いる多孔質粒子は、吸油量が180〜220ml/100g、平均粒径1〜8μmであるものが好ましい。なお、多孔質粒子の平均粒径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式により測定される値である。
低艶絵柄層に多孔質粒子を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、低艶絵柄層中の樹脂100質量部に対して、20〜150質量部、好ましくは20〜120質量部が挙げられる。多孔質粒子の含有量が上記範囲を満たすことによって、低艶絵柄層による意匠性を一層効果的に表出でき、更には低艶絵柄層に所望の柔軟性を具備させて成形性をより一層向上させることが可能になる。
低艶絵柄層の厚さについては、特に制限されないが、例えば、0.1〜10μm、好ましくは0.6〜7μmが挙げられる。このような厚さを充足することにより、表面保護層との相互作用が十分になり、低艶を発現する低光沢領域を十分に形成でき、しかもインキの印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利になる。
[表面保護層]
表面保護層は、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つ当該硬化物の後述する樹脂硬さ指数が4600以上である層であり、加飾シートの最表面に設けられる。
表面保護層が、特定組成の樹脂組成物の硬化物であって、その樹脂硬さ指数が4600以上を満たすことにより、表面保護層の架橋密度を下げて、加飾樹脂成形品の製造時の成形性を向上させることができる。また、合成樹脂粒子や無機粒子の中でも、アクリルビーズを選択し、これを上記硬化物で形成されている表面保護層に含有させることによって、良好な成形性を維持しつつ、優れた耐薬品性を備えせることが可能になる。更に、表面保護層にアクリルビーズを含有させることによって、表面保護層に粒子のムラが生じにくく、ザラツキの少ない良好な触感を有する均一な層を形成することも可能になる。
(アクリルビーズ)
アクリルビーズは、良好な成形性を維持しつつ、優れた耐薬品性を備えさせる作用に加えて、本発明の加飾シートの低艶感を表出させるのにも寄与する。本発明で使用されるアクリルビーズは、架橋型又は非架橋型のいずれであってもよいが、好ましくは架橋型が挙げられる。
また、本発明で使用されるアクリルビーズの比重については、特に制限されないが、例えば、0.7〜1.5g/cm3、好ましくは0.8〜1.2g/cm3、更に好ましくは0.85〜1.15g/cm3が挙げられる。
アクリルビーズの平均粒子径については、特に制限されないが、耐薬品性をより一層向上させ、加飾シートの表面を均質にしてムラやザラツキを低減するという観点から、通常0.1〜10μm、好ましくは0.3〜3μm、更に好ましくは0.5〜2.5μmが挙げられる。ここで、アクリルビーズの平均粒子径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式により測定される値である。
また、表面保護層におけるアクリルビーズの含有量については、備えさせるべき耐薬品性、表出させる低艶感等を勘案して適宜設定されるが、例えば、表面保護層中の電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して1〜50質量部、好ましくは5〜45質量部、更に好ましく15〜40質量部が挙げられる。
(電離放射線硬化性樹脂)
表面保護層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。なお、ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層の形成において好適に使用される。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂は、表面保護層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600以上になることを限度として特に制限されず、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている樹脂の中から適宜選択して使用することができる。電離放射線硬化性樹脂の中でも、所定の樹脂硬さ指数を充足させるという観点から、重合性オリゴマーが好適に使用される。
<重合性オリゴマー>
上記重合性オリゴマーとは、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートとは、カーボネート結合を有するポリマー主鎖の末端又は側鎖を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物である。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートとは、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、且つ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基)を1分子中に2個以上有する化合物である。エポキシ(メタ)アクリレートとは、ビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物である。ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等の多価アルコールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物である。シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートとは、ウレタン(メタ)アクリレートの側鎖の一部をシリコーンで変性させた化合物である。ポリエステル(メタ)アクリレートとは、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物である。ポリエーテル(メタ)アクリレートとは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物である。ポリブタジエン(メタ)アクリレートとは、ポリブタジエンオリゴマーの末端又は側鎖に(メタ)アクリレート基が置換している化合物である。シリコーン(メタ)アクリレートとは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリレート基が置換している化合物である。
これらの重合性オリゴマーの官能基数については、当該重合性オリゴマーの分子量、備えさせるべき樹脂硬さ指数等を勘案して設定されるが、通常1〜10が挙げられ、成形性及び耐薬品性をより一層向上させるという観点から、好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜6が挙げられる。
また、これらの重合性オリゴマーの分子量については、当該重合性オリゴマーの官能基数、備えさせるべき樹脂硬さ指数等を勘案して設定されるが、通常1000〜100000、好ましくは3000〜50000、更に好ましくは5000〜30000が挙げられる。
これらの重合性オリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、これらの重合性オリゴマーの中でも、好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、及びシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。とりわけ、重合性オリゴマーとして、ポリカーボネート(メタ)アクリレート単独で、又はポリカーボネート(メタ)アクリレートとシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて使用すると、成形性及び耐薬品性をより一層向上させることができる。
以下に、本発明の表面保護層の形成において重合性オリゴマーとして好適に使用されるポリカーボネート(メタ)アクリレート、及びシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートについて、詳述する。
ポリカーボネート(メタ)アクリレート
電離放射線硬化性樹脂として使用されるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであれば、特に制限されない。
上記ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、或いは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法等が挙げられる。
上記ポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端又は側鎖に2個以上、好ましくは2〜50個、更に好ましくは3〜50個の水酸基を有する重合体である。当該ポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式HO−R1−OHで表される。ここで、R1は、炭素数2〜20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいても良い。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
上記ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのジオールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、ポリカーボネートポリオールの原料として用いられる3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトール等のアルコール類が挙げられる。また、当該3価以上の多価アルコールは、上記多価アルコールの水酸基に対して、1〜5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるカルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。当該化合物として、具体的には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸ジエステル類;ホスゲン;クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニル等のハロゲン化ギ酸エステル類等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリカーボネートポリオールは、上記ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比は、例えば、50:50〜99:1の範囲に設定すればよい。また、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)とに対する、カルボニル成分となる化合物(C)の仕込みモル比は、例えば、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して0.2〜2当量の範囲に設定すればよい。
上記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)としては、例えば、1分子中に平均して3以上、好ましくは3〜50、更に好ましくは3〜20が挙げられる。このような等量数を充足すると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64−1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3−181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
また、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの官能基数及び分子量については、所定の樹脂硬さ指数を充足させるという観点から、適宜設定されるが、成形性及び耐薬品性をより一層向上させる上で、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜100000;好ましくは1分子当たりの官能基数が2〜5であり、且つ重量平均分子量が5000〜50000;更に好ましくは1分子当たりの官能基数が2であり、且つ重量平均分子量が8000〜30000が挙げられる。
なお、本明細書におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
シリコーン変性ウレタンアクリレート
電離放射線硬化性樹脂として使用されるシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、ウレタン(メタ)アクリレートの側鎖の一部をシリコーンで変性させた化合物であればよい。
シリコーン変性ウレタンアクリレートの官能基数及び分子量については、例えば、1分子当たりの官能基数が1〜10、好ましくは2〜8、更に好ましくは3〜6であり、且つ重量平均分子量が1000〜50000、好ましくは3000〜30000、更に好ましくは5000〜10000であるものが挙げられる。
<他の電離放射線硬化性樹脂>
また、表面保護層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂としては、その硬化物の樹脂硬さ指数が所定範囲を充足する限り、上記重合性オリゴマーと共に、重合性モノマー及び/又はプレポリマーを使用することもできる。
上記重合性モノマーとは、分子中にラジカル重合性不飽和基(官能基)を持つオリゴマーであり、好ましくは、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ単官能性又は多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、更に好ましくは多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートは、分子内にエチレン性不飽和結合(官能基)を2個以上有する(メタ)アクリレートである限り、特に制限されないが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、単官能性(メタ)アクリレートは、分子内にエチレン性不飽和結合(官能基)を1個有する(メタ)アクリレートである限り、特に制限されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの重合性モノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<電離放射線硬化性樹脂の好適な組み合わせ態様>
上記電離放射線硬化性樹脂の中でも、所定の樹脂硬さ指数を充足させ、成形性及び耐薬品性をより一層向上させるという観点から、好ましくは2種以上の重合性オリゴマーの組み合わせ、更に好ましくはポリカーボネート(メタ)アクリレートと他の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの組み合わせ、特に好ましくはポリカーボネート(メタ)アクリレートとシリコーン変性ウレタンアクリレートの組み合わせが挙げられる。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートとシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、これらの分子量、官能基数、備えさせるべき樹脂硬さ指数等を勘案して設定すればよいが、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート100質量部当たり、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートが1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、更に好ましくは3〜10質量部が挙げられる。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートとシリコーン変性ウレタンアクリレートの組み合わせの好適な具体例として、1分子当たりの官能基数が1〜5、好ましくは2であり、且つ重量平均分子量が1000〜30000、好ましくは5000〜30000のポリカーボネート(メタ)アクリレート(以下、ポリカーボネート(メタ)アクリレートA)と、1分子当たりの官能基数が1〜10、好ましくは3〜6、特に好ましくは6であり、且つ重量平均分子量が1000〜20000、好ましくは3000〜10000のシリコーン変性ウレタンアクリレート(以下、シリコーン変性ウレタンアクリレートD)の組み合わせが挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートAとシリコーン変性ウレタンアクリレートDを組み合わせて使用する場合、その比率については、特に制限されないが、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレートA100質量部当たり、シリコーン変性ウレタンアクリレートDが1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部、更に好ましくは3〜7重量部となる比率が挙げられる。
また、ポリカーボネート(メタ)アクリレートとシリコーン変性ウレタンアクリレートの組み合わせの好適な他の具体例としては、具体的には、1分子当たりの官能基数が1〜5、好ましくは2であり、且つ重量平均分子量が1000〜15000、好ましくは5000〜15000のポリカーボネート(メタ)アクリレート(以下、ポリカーボネート(メタ)アクリレートB)と、1分子当たりの官能基数が1〜5、好ましくは2であり、且つ重量平均分子量が15000超〜50000、好ましくは15000超〜30000のポリカーボネート(メタ)アクリレート(以下、ポリカーボネート(メタ)アクリレートC)と、1分子当たりの官能基数が1〜10、好ましくは3〜6、特に好ましくは4であり、且つ重量平均分子量が1000〜20000、好ましくは3000〜10000のシリコーン変性ウレタンアクリレート(以下、シリコーン変性ウレタンアクリレートE)の組み合わせが挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートB、C及びシリコーン変性ウレタンアクリレートEを組み合わせて使用する場合、それらの比率については、特に制限されないが、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレートB100重量部当たり、ポリカーボネート(メタ)アクリレートCが10〜80重量部、好ましくは20〜70重量部、更に好ましくは30〜60重量部;シリコーン変性ウレタンアクリレートEが1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部、更に好ましくは3〜6重量部が挙げられる。
(他の樹脂成分)
表面保護層を形成する樹脂組成物には、所定の樹脂硬さ指数を満たすことを限度として、電離放射線硬化性樹脂以外に、必要に応じて、他の樹脂成分が含まれていてもよい。このような電離放射線硬化性樹脂以外の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂;ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂;ウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂;エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリイミド;ポリ乳酸;ポリビニルアセタール樹脂;液晶性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面保護層を形成する樹脂組成物に、電離放射線硬化性樹脂以外の他の樹脂を含有させる場合、当該他の樹脂の含有量については、後述する樹脂硬さ指数を満たす範囲で適宜設定すればよいが、例えば、表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総量100質量部当たり、当該他の樹脂が50質量部以下、好ましくは20質量部以下、更に好ましくは1〜20質量部、特に好ましくは1〜10質量部が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂以外の他の樹脂が上記範囲を満たす含有量となるように設定することにより、より一層優れた成形性を備えさせることが可能になる。
(樹脂硬さ指数)
表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物で形成され、当該硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上を満たすように設計される。当該樹脂硬さ指数は、架橋点間分子量の指標となる物性値であり、当該樹脂硬さ指数が大きい値を示す程、架橋点間分子量も大きな値になる。即ち、当該樹脂硬さ指数が大きい値を示す程、架橋密度が低くなる。
このように表面保護層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数を大きくして、架橋密度が低くなるように設定し、且つアクリルビーズを組み合わせることにより、優れた成形性と耐薬品性を具備させることが可能になる。当該樹脂硬さ指数として、より一層優れた成形性と耐薬品性を兼ね備えさせるという観点から、好ましくは4600〜10000、更に好ましくは4600〜8000が挙げられる。
本発明において、上記硬化物の樹脂硬さ指数は、下記式に従って算出される値である。
Yi=[Mi÷(Xi×Zi)]×Wi
n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。
ここで、Mi、「電離放射線硬化性樹脂の分子量」とは、表面保護層の形成に使用されている電離放射線硬化性樹脂の分子量であり、電離放射線硬化性樹脂がモノマーである場合にはその分子量を示し、電離放射線硬化性樹脂がオリゴマーである場合にはその重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値)を示す。
Zi中、「樹脂成分の総質量」とは、表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂とその他の樹脂の質量の合計を示し、例えば、当該樹脂組成物に樹脂成分として電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂が含まれる場合には、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の合計質量に該当する。
また、Zi及びWi中、「電離放射線硬化性樹脂の総質量」とは、表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の質量の合計を示し、例えば、当該樹脂組成物に2種の電離放射線硬化性樹脂が含まれる場合には、2種の電離放射線硬化性樹脂の合計質量に該当する。
即ち、例えば、表面保護層の形成に使用される樹脂組成物中の樹脂成分が、重量平均分子量がM1で官能基数がX1の電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー)のみである場合には、表面保護層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数は、M1/X1になる。また、表面保護層の形成に使用される樹脂組成物中の樹脂成分が、重量平均分子量がM1で官能基数がX1の電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー)70質量部と、重量平均分子量がM2で官能基数がX2の電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー)30質量部である場合には、表面保護層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数は、[(M1/X1)×0.7)]+[(M2/X2)×0.3)]になる。また、表面保護層の形成に使用される樹脂組成物中の樹脂成分が、重量平均分子量がM1で官能基数がX1の電離放射線硬化性樹脂60質量部と、重量平均分子量がM2で官能基数がX2の電離放射線硬化性樹脂(オリゴマー)20質量部と、熱可塑性樹脂20質量部である場合には、表面保護層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数は、{[M1/(X1×0.8)]×0.75}+{[M2/(X2×0.8)]×0.25}になる。
表面保護層を形成する硬化物の上記樹脂硬さ指数を充足させるには、表面保護層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂を、重量平均分子量と官能基数を勘案して適宜選定すればよい。
(他の添加成分)
また、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、添加剤として反応性シリコンを配合すると、耐傷付き性を付与したり、表面保護層を平滑で良好な面状態に仕上げることもできる。
(表面保護層の厚さ)
表面保護層の硬化後の厚さについては、特に制限されないが、例えば、1〜1000μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmが挙げられる。このような範囲の厚さを満たすと、耐薬品性を効果的に備えさせることができると共に、電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。更に、表面保護層の硬化後の厚さが上記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な3次元形状に対して高い追従性を得ることができる。
(表面保護層の形成)
表面保護層の形成は、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本発明においては、調製された塗布液を、上記厚さとなるように、プライマー層又は必要に応じて設けられる低艶絵柄層の上に、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材層として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
かくして形成された表面保護層には、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
[接着層]
接着層は、加飾樹脂製品の成形の際に射出樹脂との密着性を高めることを目的として、基材層の裏面(表面保護層とは反対側の面)に、必要に応じて設けられる層である。
接着層には、加飾樹脂製品に使用される射出樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。
接着層の形成に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、接着層の形成に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに射出樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも射出樹脂層、基材層、プライマー層、及び表面保護層を順に有しており、当該表面保護層が、艶消し剤及び電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つプライマー層が疎水処理シリカ粒子を含有していることを特徴とする。
より具体的には、本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。
インサート成形法では、先ず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
上記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、上記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、上記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
本発明の加飾樹脂成形品において、射出樹脂層は、用途に応じた射出樹脂を選択して形成すればよい。射出樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
射出樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、射出樹脂として使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、耐薬品性に優れており、低艶感が表出された意匠性を有しており、複雑な形状にも成形可能であるので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
加飾シートの製造(実施例1〜15及び比較例1〜17)
基材として厚さ400μmのABS樹脂フィルムを用い、該フィルムの表面に、アクリル系樹脂組成物からなる印刷インキを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層(厚さ5μm)を形成した。次いで、絵柄層の表面にアクリル樹脂(アクリル酸エステルの単独重合体)からなるプライマー層をグラビアコートにより塗工した。プライマー層の厚さは3μmであった。次に、プライマー層の表面に、表1に示す組成の樹脂組成物を硬化後の厚さが10μmとなるようにグラビアコートにより塗工した。このプライマー層上の樹脂組成物に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して樹脂組成物を硬化させて、表面保護層を形成した。斯して、基材/絵柄層/プライマー層/表面保護層が順に積層された加飾シートを得た。
各加飾シートの性能評価
各実施例、比較例、参考例で得られた加飾シートについて、以下の示す方法で、成形性、耐薬品性、艶、表面性状を評価した。
<成形性の評価>
加飾シートを2.5cm×9cmの大きさに裁断し、テンシロン万能試験機(高千穂精機株式会社)を用いて1000mm/分で試験片を引張り、表面保護層に亀裂が生じた時の伸度(%)を測定した。なお、当該伸度の測定は、160℃の恒温槽内で行った。
<耐薬品性>
5cm×5cmの大きさに切断した各加飾シートに、以下に示す日焼け止め化粧料A又はBを0.5g均一に塗布し、その塗布部の全面を覆うようにガーゼを乗せ、更にガーゼの上にアルミ板を乗せた状態にして80℃で1時間放置した。その後、各加飾シートの表面から日焼け止め化粧料を拭き取り、各加飾シートの表面の外観を観察し、以下の判定基準に従って、耐薬品性を評価した。
(耐薬品性の判定基準)
◎:ガーゼ跡がほとんど見られない。
○:わずかにガーゼ跡が見られるが、表面の溶解は見られない。
×:表面全体にガーゼ跡が見られるが、溶解は見られない。
××:表面の溶解が見られる。
[日焼け止め化粧料A]
市販品の日焼け止め化粧料であり、次に示す成分を含有している:シクロペンタシロキサン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクタメチルトリシロキサン、ポリメチルシルセスキオキサン。
[日焼け止め化粧料B]
市販品の日焼け止め化粧料であり、次に示す成分を含有している: 1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3-プロパンジオン 3%、サリチル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル 10%、サリチル酸2-エチルヘキシル 5%、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル 10%。
<艶>
各加飾シートの木目柄の導管部の3カ所について、JIS K 7105に準拠してグロスメーターを用いて、60°グロス値を測定し、その平均値を求めた。
<表面性状>
各加飾シートの表面を手触りにて感触を確認し、以下の判定基準に従って、表面性状を評価した。
(表面性状の判定基準)
◎:表面が滑らかな手触りで、粒子のムラが感じられず良好である。
○:表面が滑らかな手触りで、わずかに粒子のムラが感じられる。
△:表面が僅かにざらつきがあり、わずかに粒子のムラが感じられる。
×:表面にざらつきがあり、顕著な粒子のムラが感じられる。
<評価結果>
結果を表1及び2に示す。以上の結果から、表面層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600を下回る場合には、優れた耐薬品性が認められるものの、粒子の配合の有無に拘わらず成形性が著しく劣ることが確認された(比較例1−3、16及び17参照)。一方、表面層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600以上であって、表面層に有機又は無機粒子を配合していない場合には、優れた成形性が認められるものの、耐薬品性が著しく劣ることが確認された(比較例4、7及び8参照)。また、表面層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600以上であって、表面保護層にアクリルビーズ以外の有機又は無機粒子を配合した場合も、優れた成形性が認められるものの、耐薬品性が著しく劣っており、有機又は無機粒子の配合による耐薬品性の向上は認められなかった(比較例5、6、9−15参照)。これに対して、表面層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600以上であって、表面層にアクリルビーズを配合した場合には、優れた成形性と耐薬品性を兼ね備えることができていた。また、実施例1−15の加飾シートでは、いずれも、表面が滑らかでムラがなく、優れた表面性状であった。更に、表面保護層において、電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、平均粒子径が0.5〜3.0μmのアクリルビーズを15質量部以上配合した場合には、優れた艶消し効果が認められ、良好な低艶感が表出されていた(実施例1、3、5、8、及び12−15参照)。
[表1及び2の脚注]
樹脂
表面保護層は、下記に示すEB1〜EB/TP−2に、所定の配合粒子、添加剤を添加した樹脂組成物を用いて形成した。
(EB1、樹脂硬さ指数:4,760)
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):94質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):6質量部
(EB2、樹脂硬さ指数:4,880)
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):97質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):3質量部
(EB3、樹脂硬さ指数:6,510)
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):64.7質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;20,000):32.3質量部
4官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):3質量部
(EB4、樹脂硬さ指数:1,000)
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):100質量部
(EB5、樹脂硬さ指数:3,433)
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):60.8質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):39.2質量部
(EB6、樹脂硬さ指数:3,433)
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):37.72質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;20,000):18.86質量部
4官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):1.75質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):41.67質量部
(EB/TP−1、樹脂硬さ指数:2,000)
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):50質量部
熱可塑性樹脂:50質量部
(EB/TP−2、樹脂硬さ指数:4,551)
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):41質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):31質量部
熱可塑性樹脂:28質量部
配合粒子
表面保護層に配合した各粒子は以下の通りである。
アクリル:架橋型アクリル製のビーズ
シリコーンゴム:架橋型シリコーンゴム
ウレタン:ウレタン樹脂製のビーズ(比重1.1〜1.2g/cm3、ガラス転移点-20〜-30℃)
ウレタン(分散):ウレタン樹脂製のビーズの分散性を向上させたもの
シリコーン:シリコーン製のビーズ
アクリル・シリコン:コア(アクリル)・シェル(シリコン)型ビーズ
シリカ:シリカ粒子(表面処理なし)
1 基材層
2 絵柄層
3 プライマー層
4 低艶模様層
5 表面保護層
6 低光沢領域
7 透明樹脂層

Claims (11)

  1. 基材層上に、少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、
    前記表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、
    前記樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総量100質量部当たり、電離放射線硬化性樹脂以外の他の樹脂が20質量部以下であり、
    前記電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、前記アクリルビーズが15〜50質量部の割合で含まれ、且つ
    前記硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする、加飾シート:
    Yi=[Mi÷(Xi×Zi)]×Wi
    n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
    Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
    Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
    Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
    Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
    Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。
  2. 前記アクリルビーズの平均粒子径が0.1〜10μmである、請求項1に記載の加飾シート。
  3. 電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、前記アクリルビーズが15〜40質量部の割合で含まれる、請求項1又は2に記載の加飾シート。
  4. 前記電離放射線硬化性樹脂として、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
  5. 前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートが、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜100000である、請求項4に記載の加飾シート。
  6. 前記電離放射線硬化性樹脂として、更にシリコーン変性ウレタンアクリレートを含む、請求項4又は5に記載の加飾シート。
  7. 前記シリコーン変性ウレタンアクリレートが、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜50000である、請求項6に記載の加飾シート。
  8. 基材層上に、プライマー層、絵柄層、及び表面保護層が順に積層されてなる、請求項1〜7のいずれかに記載の加飾シート。
  9. 少なくとも、射出樹脂層、基材層、及び表面保護層を順に有しており、
    前記表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、
    前記樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総量100質量部当たり、電離放射線硬化性樹脂以外の他の樹脂が20質量部以下であり、
    前記電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、前記アクリルビーズが15〜50質量部の割合で含まれ、且つ
    前記硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする、加飾樹脂成型品:
    Yi=[Mi÷(Xi×Zi)]×Wi
    n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
    Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
    Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
    Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
    Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
    Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。
  10. 下記工程を含む加飾樹脂成形品の製造方法:
    請求項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
    真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
    前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
  11. 下記工程を含む加飾樹脂成形品の製造方法:
    請求項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
    成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
    可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
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