JP6194571B2 - 加飾シート、及び加飾樹脂成形品 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、架橋密度が低い上記硬化物で形成された表面保護層を有する加飾シートにおける上記特有の課題を解決して、優れた成形性と耐薬品性を両立できる加飾シートを提供することを目的とする。更に、本発明は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することを目的とする。
項1. 基材層上に、少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、
前記表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つ
前記硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする、加飾シート:
n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。
項2. 前記アクリルビーズの平均粒子径が0.1〜10μmである、項1に記載の加飾シート。
項3. 電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、前記アクリルビーズが1〜50質量部の割合で含まれる、項1又は2に記載の加飾シート。
項4. 前記電離放射線硬化性樹脂として、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む、項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートが、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜100000である、項4に記載の加飾シート。
項6. 前記電離放射線硬化性樹脂として、更にシリコーン変性ウレタンアクリレートを含む、項4又は5に記載の加飾シート。
項7. 前記シリコーン変性ウレタンアクリレートが、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜50000である、項6に記載の加飾シート。
項8. 基材層上に、プライマー層、絵柄層、及び表面保護層が順に積層されてなる、項1〜7のいずれかに記載の加飾シート。
項9. 少なくとも、射出樹脂層、基材層、及び表面保護層を順に有しており、
前記表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つ
前記硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする、加飾樹脂成型品:
n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。
項10. 下記工程を含む加飾樹脂成形品の製造方法:
項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
項11. 下記工程を含む加飾樹脂成形品の製造方法:
項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
本発明の加飾シートは、基材層上に少なくとも表面保護層を有しており、当該表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つ当該硬化物の後述する樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする。以下、本発明の加飾シートについて、詳述する。
本発明の加飾シートは、基材層上に、少なくとも表面保護層を有する積層構造を有する。
表面保護層の下面(基材層側)と接面する層として、低艶感を高めることを目的として、必要に応じて低艶絵柄層を設けてもよい。装飾性の付与の観点から、絵柄層及び低艶絵柄層の内、少なくとも一方が設けられていることが望ましい。
[基材層]
基材層は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす。基材層に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や射出樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。該熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸エステル樹脂(以下「ASA樹脂」表記することもある)、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。また、基材層は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
隠蔽層は、基材層の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層と表面保護層の間、プライマー層を設ける場合であれば基材層とプライマー層の間、又は絵柄層を設ける場合であれば基材層と絵柄層の間に、必要に応じて設けられる層である。
絵柄層は、加飾シートに装飾性を付与する目的で、基材層とプライマー層の間、又は隠蔽層を設ける場合は隠蔽層とプライマー層の間に、必要に応じて設けられる層である。
透明樹脂層は、耐薬品性や耐傷付き性を向上させる目的で、基材層と表面保護層の間、プライマー層を設ける場合は基材層とプライマー層の間、絵柄層とプライマー層を設ける場合は絵柄層とプライマー層の間に、必要に応じて設けられる層である。
プライマー層は、基材層と表面保護層の間、絵柄層を設ける場合は絵柄層と表面保護層の間、低艶絵柄層を設ける場合は基材層と低艶絵柄層の間、絵柄層と低艶絵柄層を設ける場合は絵柄層と低艶絵柄層の間、透明樹脂層を設ける場合であれば透明樹脂層と表面保護層の間、又は透明樹脂層と低艶絵柄層を設ける場合は透明樹脂層と低艶絵柄層の間に設けられる。なお、低艶絵柄層を設ける場合、プライマー層は、図1及び3に示されるように、低艶絵柄層と表面保護層の双方に接面することがある。
(破断伸度測定の測定条件)
JIS K 7127:1999に準拠し、プライマー層を構成するプライマー組成物を架橋硬化(50℃72時間加熱)して製膜した幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ40±10μmのサンプルを120℃のオーブン投入後、120秒放置した後、引張速度:50mm/minで破断伸度を測定する。
低艶絵柄層は、表面の凹凸模様を良好に表出させて低艶感を強調する目的で、表面保護層の下面(基材シート側)と接面する層として、必要に応じて設けられる層である。即ち、低艶絵柄層は、基材層と表面保護層の間、プライマー層を設ける場合はプライマー層と表面保護層の間等に設けられる。
表面保護層は、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つ当該硬化物の後述する樹脂硬さ指数が4600以上である層であり、加飾シートの最表面に設けられる。
アクリルビーズは、良好な成形性を維持しつつ、優れた耐薬品性を備えさせる作用に加えて、本発明の加飾シートの低艶感を表出させるのにも寄与する。本発明で使用されるアクリルビーズは、架橋型又は非架橋型のいずれであってもよいが、好ましくは架橋型が挙げられる。
表面保護層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。なお、ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層の形成において好適に使用される。
上記重合性オリゴマーとは、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
電離放射線硬化性樹脂として使用されるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであれば、特に制限されない。
電離放射線硬化性樹脂として使用されるシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、ウレタン(メタ)アクリレートの側鎖の一部をシリコーンで変性させた化合物であればよい。
また、表面保護層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂としては、その硬化物の樹脂硬さ指数が所定範囲を充足する限り、上記重合性オリゴマーと共に、重合性モノマー及び/又はプレポリマーを使用することもできる。
上記電離放射線硬化性樹脂の中でも、所定の樹脂硬さ指数を充足させ、成形性及び耐薬品性をより一層向上させるという観点から、好ましくは2種以上の重合性オリゴマーの組み合わせ、更に好ましくはポリカーボネート(メタ)アクリレートと他の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの組み合わせ、特に好ましくはポリカーボネート(メタ)アクリレートとシリコーン変性ウレタンアクリレートの組み合わせが挙げられる。
表面保護層を形成する樹脂組成物には、所定の樹脂硬さ指数を満たすことを限度として、電離放射線硬化性樹脂以外に、必要に応じて、他の樹脂成分が含まれていてもよい。このような電離放射線硬化性樹脂以外の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂;ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂;ウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂;エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリイミド;ポリ乳酸;ポリビニルアセタール樹脂;液晶性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物で形成され、当該硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上を満たすように設計される。当該樹脂硬さ指数は、架橋点間分子量の指標となる物性値であり、当該樹脂硬さ指数が大きい値を示す程、架橋点間分子量も大きな値になる。即ち、当該樹脂硬さ指数が大きい値を示す程、架橋密度が低くなる。
n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。
また、Zi及びWi中、「電離放射線硬化性樹脂の総質量」とは、表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の質量の合計を示し、例えば、当該樹脂組成物に2種の電離放射線硬化性樹脂が含まれる場合には、2種の電離放射線硬化性樹脂の合計質量に該当する。
また、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、添加剤として反応性シリコンを配合すると、耐傷付き性を付与したり、表面保護層を平滑で良好な面状態に仕上げることもできる。
表面保護層の硬化後の厚さについては、特に制限されないが、例えば、1〜1000μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmが挙げられる。このような範囲の厚さを満たすと、耐薬品性を効果的に備えさせることができると共に、電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。更に、表面保護層の硬化後の厚さが上記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な3次元形状に対して高い追従性を得ることができる。
表面保護層の形成は、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
接着層は、加飾樹脂製品の成形の際に射出樹脂との密着性を高めることを目的として、基材層の裏面(表面保護層とは反対側の面)に、必要に応じて設けられる層である。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに射出樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも射出樹脂層、基材層、プライマー層、及び表面保護層を順に有しており、当該表面保護層が、艶消し剤及び電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つプライマー層が疎水処理シリカ粒子を含有していることを特徴とする。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
上記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、上記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、上記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
基材として厚さ400μmのABS樹脂フィルムを用い、該フィルムの表面に、アクリル系樹脂組成物からなる印刷インキを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層(厚さ5μm)を形成した。次いで、絵柄層の表面にアクリル樹脂(アクリル酸エステルの単独重合体)からなるプライマー層をグラビアコートにより塗工した。プライマー層の厚さは3μmであった。次に、プライマー層の表面に、表1に示す組成の樹脂組成物を硬化後の厚さが10μmとなるようにグラビアコートにより塗工した。このプライマー層上の樹脂組成物に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して樹脂組成物を硬化させて、表面保護層を形成した。斯して、基材/絵柄層/プライマー層/表面保護層が順に積層された加飾シートを得た。
各実施例、比較例、参考例で得られた加飾シートについて、以下の示す方法で、成形性、耐薬品性、艶、表面性状を評価した。
加飾シートを2.5cm×9cmの大きさに裁断し、テンシロン万能試験機(高千穂精機株式会社)を用いて1000mm/分で試験片を引張り、表面保護層に亀裂が生じた時の伸度(%)を測定した。なお、当該伸度の測定は、160℃の恒温槽内で行った。
5cm×5cmの大きさに切断した各加飾シートに、以下に示す日焼け止め化粧料A又はBを0.5g均一に塗布し、その塗布部の全面を覆うようにガーゼを乗せ、更にガーゼの上にアルミ板を乗せた状態にして80℃で1時間放置した。その後、各加飾シートの表面から日焼け止め化粧料を拭き取り、各加飾シートの表面の外観を観察し、以下の判定基準に従って、耐薬品性を評価した。
(耐薬品性の判定基準)
◎:ガーゼ跡がほとんど見られない。
○:わずかにガーゼ跡が見られるが、表面の溶解は見られない。
×:表面全体にガーゼ跡が見られるが、溶解は見られない。
××:表面の溶解が見られる。
市販品の日焼け止め化粧料であり、次に示す成分を含有している:シクロペンタシロキサン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクタメチルトリシロキサン、ポリメチルシルセスキオキサン。
市販品の日焼け止め化粧料であり、次に示す成分を含有している: 1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3-プロパンジオン 3%、サリチル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル 10%、サリチル酸2-エチルヘキシル 5%、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル 10%。
各加飾シートの木目柄の導管部の3カ所について、JIS K 7105に準拠してグロスメーターを用いて、60°グロス値を測定し、その平均値を求めた。
各加飾シートの表面を手触りにて感触を確認し、以下の判定基準に従って、表面性状を評価した。
(表面性状の判定基準)
◎:表面が滑らかな手触りで、粒子のムラが感じられず良好である。
○:表面が滑らかな手触りで、わずかに粒子のムラが感じられる。
△:表面が僅かにざらつきがあり、わずかに粒子のムラが感じられる。
×:表面にざらつきがあり、顕著な粒子のムラが感じられる。
結果を表1及び2に示す。以上の結果から、表面層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600を下回る場合には、優れた耐薬品性が認められるものの、粒子の配合の有無に拘わらず成形性が著しく劣ることが確認された(比較例1−3、16及び17参照)。一方、表面層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600以上であって、表面層に有機又は無機粒子を配合していない場合には、優れた成形性が認められるものの、耐薬品性が著しく劣ることが確認された(比較例4、7及び8参照)。また、表面層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600以上であって、表面保護層にアクリルビーズ以外の有機又は無機粒子を配合した場合も、優れた成形性が認められるものの、耐薬品性が著しく劣っており、有機又は無機粒子の配合による耐薬品性の向上は認められなかった(比較例5、6、9−15参照)。これに対して、表面層を形成する硬化物の樹脂硬さ指数が4600以上であって、表面層にアクリルビーズを配合した場合には、優れた成形性と耐薬品性を兼ね備えることができていた。また、実施例1−15の加飾シートでは、いずれも、表面が滑らかでムラがなく、優れた表面性状であった。更に、表面保護層において、電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、平均粒子径が0.5〜3.0μmのアクリルビーズを15質量部以上配合した場合には、優れた艶消し効果が認められ、良好な低艶感が表出されていた(実施例1、3、5、8、及び12−15参照)。
樹脂
表面保護層は、下記に示すEB1〜EB/TP−2に、所定の配合粒子、添加剤を添加した樹脂組成物を用いて形成した。
(EB1、樹脂硬さ指数:4,760)
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):94質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):6質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):97質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):3質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):64.7質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;20,000):32.3質量部
4官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):3質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):100質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):60.8質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):39.2質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):37.72質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;20,000):18.86質量部
4官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):1.75質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):41.67質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):50質量部
熱可塑性樹脂:50質量部
2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000):41質量部
6官能シリコーン変性ウレタンアクリレート (重量平均分子量;6,000):31質量部
熱可塑性樹脂:28質量部
表面保護層に配合した各粒子は以下の通りである。
アクリル:架橋型アクリル製のビーズ
シリコーンゴム:架橋型シリコーンゴム
ウレタン:ウレタン樹脂製のビーズ(比重1.1〜1.2g/cm3、ガラス転移点-20〜-30℃)
ウレタン(分散):ウレタン樹脂製のビーズの分散性を向上させたもの
シリコーン:シリコーン製のビーズ
アクリル・シリコン:コア(アクリル)・シェル(シリコン)型ビーズ
シリカ:シリカ粒子(表面処理なし)
2 絵柄層
3 プライマー層
4 低艶模様層
5 表面保護層
6 低光沢領域
7 透明樹脂層
Claims (11)
- 基材層上に、少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、
前記表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、
前記樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総量100質量部当たり、電離放射線硬化性樹脂以外の他の樹脂が20質量部以下であり、
前記電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、前記アクリルビーズが15〜50質量部の割合で含まれ、且つ
前記硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする、加飾シート:
n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。 - 前記アクリルビーズの平均粒子径が0.1〜10μmである、請求項1に記載の加飾シート。
- 電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、前記アクリルビーズが15〜40質量部の割合で含まれる、請求項1又は2に記載の加飾シート。
- 前記電離放射線硬化性樹脂として、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートが、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜100000である、請求項4に記載の加飾シート。
- 前記電離放射線硬化性樹脂として、更にシリコーン変性ウレタンアクリレートを含む、請求項4又は5に記載の加飾シート。
- 前記シリコーン変性ウレタンアクリレートが、1分子当たりの官能基数が1〜10であり、且つ重量平均分子量が1000〜50000である、請求項6に記載の加飾シート。
- 基材層上に、プライマー層、絵柄層、及び表面保護層が順に積層されてなる、請求項1〜7のいずれかに記載の加飾シート。
- 少なくとも、射出樹脂層、基材層、及び表面保護層を順に有しており、
前記表面保護層が、アクリルビーズ及び電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されており、
前記樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総量100質量部当たり、電離放射線硬化性樹脂以外の他の樹脂が20質量部以下であり、
前記電離放射線硬化性樹脂100質量部当たり、前記アクリルビーズが15〜50質量部の割合で含まれ、且つ
前記硬化物が、下記式から算出される樹脂硬さ指数が4600以上であることを特徴とする、加飾樹脂成型品:
n:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の種類の数
Mi:各電離放射線硬化性樹脂の分子量
Xi:各電離放射線硬化性樹脂の官能基数
Yi:各電離放射線硬化性樹脂の樹脂硬さ指数
Zi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量の割合
Wi:表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の総質量を1とした場合に、当該樹脂組成物に含まれる各電離放射線硬化性樹脂の質量の割合。 - 下記工程を含む加飾樹脂成形品の製造方法:
請求項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。 - 下記工程を含む加飾樹脂成形品の製造方法:
請求項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
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