1.加飾シート
本発明の加飾シート(保護フィルム付き)は、少なくとも、基材層と、表面保護層と、当該表面保護層から剥離可能な保護フィルム層と、アンチブロッキング層とがこの順に積層された加飾シートであって、表面保護層は、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されており、アンチブロッキング層の保護フィルム層とは反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、1〜10μmであることを特徴とする。
なお、本発明の加飾シートは、成形に供される際には、通常、保護フィルム層とアンチブロッキング層が表面保護層から剥離されている。当該加飾シートに保護フィルム層とアンチブロッキング層とが積層された加飾シートも、本発明においては、「加飾シート」と称する。本発明の加飾シートにおいて、保護フィルム層とアンチブロッキング層とが積層されていることを特に明示する場合には、「保護フィルム付き加飾シート」と称することがある。また、本明細書において、特に言及しない限り、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味し、他の類似する表記も同様の意である。また、本発明の加飾シートは、絵柄層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは少なくとも、基材層1と、表面保護層2と、当該表面保護層2から剥離可能な保護フィルム層3と、アンチブロッキング層4とがこの順に積層された積層構造を有する。
本発明の加飾シートにおいて、基材層1と表面保護層2の間には、各層同士の接着性を高める目的で、必要に応じてプライマー層5が設けられていてもよい。
また、基材層1と表面保護層2の間には、装飾性を付与する目的で、必要に応じて、絵柄層6を設けてもよい。プライマー層5を設ける場合には、基材層1とプライマー層5の間に絵柄層6を設ければよい。
また、基材層1と表面保護層2の間には、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、必要に応じて、隠蔽層(図示しない)が設けられていてもよい。プライマー層5を設ける場合であれば、当該隠蔽層は基材層1とプライマー層5の間に設ければよく、また、絵柄層6を設ける場合であれば、当該隠蔽層は、基材層1と絵柄層6の間に設ければよい。
更に、基材層1と表面保護層2の間には、耐傷付き性を向上させる目的で、必要に応じて、透明樹脂層7を設けてもよい。プライマー層5を設ける場合であれば、当該透明樹脂層7は、絵柄層6とプライマー層5の間に設ければよい。
更に、本発明の加飾シートにおいて、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂層との密着性を高めることを目的として、基材層1の裏面(表面保護層2とは反対側の面)には、必要に応じて、接着層(図示しない)が設けられてもよい。
本発明の加飾シートの積層構造の例として、基材層1/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4が順に積層された積層構造;基材層1/プライマー層5/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層6/プライマー層5/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層6/透明樹脂層7/プライマー層5/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4が順に積層された積層構造;接着層/基材層1/絵柄層6/透明樹脂層7/プライマー層5/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4が順に積層された積層構造等が挙げられる。
図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層1/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4が順に積層された加飾シートの略図的断面図を示す。図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層1/絵柄層6/透明樹脂層7/プライマー層5/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4が順に積層された加飾シートの略図的断面図を示す。
加飾シートの各層の組成
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)である。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。当該熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸エステル樹脂(以下「ASA樹脂」表記することもある)、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂及びアクリル樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。また、基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
加飾シートのブロッキングをより一層効果的に抑制する観点からは、基材層1の保護フィルム層とは反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)としては、好ましくは0.2T≧Ra≧0.005T(但し、Tは、前記基材層の厚み(μm)である)、より好ましくは0.05T≧Ra≧0.02Tが挙げられる。なお、本発明において、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:1994の規定に準拠した方法で測定した値である。
基材層1の曲げ弾性率については、特に制限されない。例えば、本発明の加飾シートをインサート成形法によって成形樹脂と一体化させる場合には、本発明の加飾シートにおける基材層1の25℃における曲げ弾性率が500〜4,000MPa、好ましくは750〜3,000MPaが挙げられる。ここで、25℃における曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定された値である。25℃における曲げ弾性率が500MPa以上であると、加飾シートは十分な剛性を備え、インサート成形法に供しても、表面特性と成形性がより一層良好になる。また、25℃における曲げ弾性率が3,000MPa以下であると、ロール トゥ ロールで製造する場合に十分な張力をかけることができ、たるみが発生し難くなるため、絵柄がずれることなく重ねて印刷することができ、所謂絵柄見当が良好となる。
基材層1は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層1を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、基材層1は公知の接着層を形成する等の処理を施してもよい。
更に、基材層1は、着色剤を用いて着色されていてもよく、着色されていなくてもよい。また、基材層1は、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれの態様であってもよい。基材層1に用いられる着色剤としては、特に制限されないが、好ましくは150℃以上の温度条件でも変色しない着色剤が挙げられ、具体的には、既存のドライカラー、ペーストカラー、マスターバッチ樹脂組成物等が挙げられる。
基材層1の厚みは、加飾シートの用途、成形樹脂と一体化させる成形法等に応じて適宜設定されるが、通常25〜1000μm程度、50〜700μm程度が挙げられる。より具体的には、本発明の加飾シートをインサート成形法に供する場合であれば、基材層1の厚みとして、通常50〜1000μm程度、好ましくは100〜700μm、更に好ましくは100〜500μmが挙げられる。また、本発明の加飾シートを射出成形同時加飾法に供する場合であれば、基材層1の厚みとして、通常25〜200μm、好ましくは50〜200μm、更に好ましくは70〜200μmが挙げられる。
[表面保護層2]
本発明の加飾シートにおいて、表面保護層2は、加飾樹脂成形品の耐薬品性、耐傷付き性などを高めるために設けられる層であり、加飾樹脂成形品の最表面に位置するようにして加飾シートに設けられる。
本発明において、表面保護層2は、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている。前述の通り、近年、光沢感の高い加飾シートは高級感を与えるため非常に好まれている。加飾シートの光沢感を高めるには、加飾シートの表面を平滑にする必要がある。ところが、加飾シートの表裏面が共に平滑な場合、製造・輸送上で加飾シートをロール状に巻き取る際に異物の巻き込みやブロッキングが生じやすく、傷やシワが生じる恐れがある。また、巻き取り時の滑りが悪く、蛇行してしまいやすい。このような問題は、ポリカーボネート(メタ)アクリレート等の三次元成形性に優れた軟質系の電離放射線硬化性樹脂を用いて表面保護層を用いた場合に特に顕著であり、生産安定性が低下する傾向にある。
これに対して、本発明の加飾シートにおいては、表面保護層2がポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されているため、良好な三次元成形性を備えており、さらに、当該表面保護層2の上には前記表面保護層2から剥離可能な保護フィルム層3と、アンチブロッキング層4とがこの順に積層されている。そして、アンチブロッキング層4が、本発明の加飾シートの平滑な表面を構成している。本発明の加飾シートにおいては、このような構成を備えていることにより、保護フィルム層3によって表面保護層2の平滑性が保持されており、かつ、保護フィルム層3の上に形成されたアンチブロッキング層4によって、加飾シートのブロッキングが好適に抑制されている。その結果、本発明の加飾シートは、三次元成形性を備えており、高い光沢感を加飾樹脂成形品に付与することができ、生産安定性に優れている。
本発明の加飾シートにおいては、加飾樹脂成形品に高い光沢感を付与する観点から、表面保護層2の保護フィルム層3側の表面の算術平均粗さ(Ra)としては、好ましくは0.010〜1.0μm程度、より好ましくは0.01〜0.5μm程度が挙げられる。なお、表面保護層2の算術平均粗さは、保護フィルム層3及びアンチブロッキング層4を剥離して表面保護層2を露出させた後に測定した値とする。さらに、当該表面は、鏡面調であることが特に好ましい。
<電離放射線硬化性樹脂>
表面保護層2の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層2の形成において好適に使用される。
表面保護層2は、電離放射線硬化性樹脂としてのポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されている。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。この(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。
上記のポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、あるいは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法などが挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端あるいは側鎖に2個以上、好ましくは2〜50個の、より好ましくは3〜50個の水酸基を有する重合体である。このポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法である。原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式 HO−R1−OHで表される。ここで、R1は、炭素数2〜20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらジオールは、それを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどのアルコール類を挙げることができる。さらに、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1〜5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。多価アルコールは、これらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
カルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。その具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル類、ホスゲン、あるいはクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのハロゲン化ギ酸エステル類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネートポリオールは、前記したジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。例えば、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比は、50:50〜99:1の範囲にあることが好ましく、また、カルボニル成分となる化合物(C)のジオール化合物(A)と多価アルコール(B)に対する仕込みモル比は、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して、0.2〜2当量であることが好ましい。
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して3以上、好ましくは3〜50、より好ましくは3〜20である。この範囲であると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64−1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3−181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートの分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。耐傷性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000以上50,000以下であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
電離放射線硬化性樹脂組成物においては、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、多官能(メタ)アクリレートと共に用いることが好ましい。すなわち、電離放射線硬化性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレートをさらに含むことが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能(メタ)アクリレートの質量比としては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=98:2〜50:50であることがより好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98:2より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して98質量%以下であると)、耐傷性がさらに向上する。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が50:50より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して50質量%以上となると)、三次元成形性がさらに向上する。好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5〜60:40である。
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ただし、硬化性の観点から3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでもよいが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
また、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。以上述べた多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能性(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
表面保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限されないが、三次元成形性や光沢感をより一層向上させる観点からは、好ましくは98〜50質量%程度、より好ましくは90〜65質量%程度が挙げられる。
<他の添加成分>
表面保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層2に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
<表面保護層2の厚み>
表面保護層2の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、例えば、1〜1000μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmが挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、耐傷性、耐候性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。更に、表面保護層2の硬化後の厚みが前記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な三次元形状に対して高い追従性を得ることができる。このように、本発明の加飾シートは表面保護層2の厚みを従来のものより厚くしても、十分に高い三次元成形性が得られることから、特に表面保護層2に高い膜厚を要求される部材、例えば車両外装部品等の加飾シートとして有用である。
<表面保護層2の形成>
表面保護層2の形成は、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、表面保護層2に隣接する層(例えば、保護フィルム層3、プライマー層5など)の表面上に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本発明においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、表面保護層2に隣接する層(例えば、保護フィルム層3、プライマー層5など)の表面上に、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層2を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、表面保護層2の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと表面保護層2の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、表面保護層2の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、表面保護層2の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED−UV)等が挙げられる。
かくして形成された表面保護層2には、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
[保護フィルム層3]
保護フィルム層3は、表面保護層2上に、表面保護層2と接面した状態で設けられる層であり、表面保護層2との界面から剥離可能な状態で積層されている。
保護フィルム層3を形成する素材は、特に制限されないが、通常は樹脂フィルムにより形成されている。樹脂フィルムとしては、特に制限されないが、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。また、樹脂フィルム以外では紙類のシートなどが挙げられる。これらの中でも平滑性が特に高いことから、好ましくはポリエチレンテレフタレート、より好ましくは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
前述の通り、加飾樹脂成形品の光沢感を高める観点からは、表面保護層4が鏡面調であるなど、表面平滑性が高いことが望ましい。例えば、前述のように、表面保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物を、平滑性の高い保護フィルム層3の表面上に塗布して、硬化させることにより、表面保護層2の保護フィルム層3側の表面の平滑性を、例えば鏡面調のように高めることができる。
保護フィルム層3の表面の算術平均粗さ(Ra)としては、好ましくは0.01〜1.0μm程度、より好ましくは0.01〜0.5μm程度が挙げられる。なお、保護フィルム層3の表面の平滑性を高くする場合、表面保護層2側に位置する表面の片面がこのような算術平均粗さ(Ra)を有していればよいが、両面がこのような算術平均粗さ(Ra)を有していてもよい。
保護フィルム層3の厚さとしては、特に制限されないが、好ましくは10〜100μm程度、より好ましくは25〜50μm程度が挙げられる。
[アンチブロッキング層4]
アンチブロッキング層4は、保護フィルム層3の上に積層されており、加飾シートのブロッキングを抑制するために設けられる層である。
本発明の加飾シートにおいては、アンチブロッキング層が、加飾シートの平滑な表面を構成しており、これにより、保護フィルム付き加飾シートのブロッキングが効果的に抑制されており、生産安定性に優れている。
本発明においては、アンチブロッキング層4の保護フィルム層3とは反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)は、1〜10μmの範囲にある。当該表面の算術平均粗さ(Ra)がこのような範囲にあることにより、保護フィルム付き加飾シートのブロッキングを効果的に抑制することができる。保護フィルム付き加飾シートのブロッキングをより一層効果的に抑制する観点からは、当該表面の算術平均粗さ(Ra)としては、好ましくは3〜8μm程度が挙げられる。
アンチブロッキング層4を形成する素材としては、特に制限されないが、例えば樹脂により形成される。アンチブロッキング層4を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれであってもよいが、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましい。
アンチブロッキング層4を形成する熱硬化性樹脂としては、ポリオール樹脂をイソシアネートにより架橋して得られる2液硬化型ウレタン樹脂を用いることが好ましい。ポリオール樹脂の具体例としては、アクリルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリカーボネートジオール;ポリエステルウレタンポリオール、アクリルウレタンポリオールなどのウレタンポリオール;ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィンポリオール;などが挙げられる。これらのポリオール樹脂の中でも、アクリルポリオールを用いることが特に好ましい。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。
アンチブロッキング層4を形成する電離放射線硬化性樹脂としては、[表面保護層2]の項目で説明したポリカーボネート(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能(メタ)アクリレートモノマーなどが使用でき、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いることが特に好ましい。
アンチブロッキング層4は、必要に応じて、アンチブロッキング剤を含んでいてもよい。アンチブロッキング剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、無機粒子、有機粒子などを使用することができる。無機粒子としては、特に制限されないが、例えば、シリカ粒子(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛粒子などの金属酸化物粒子が好ましく挙げられ、シリカ粒子及びアルミナ粒子が好ましく、特にシリカ粒子が好ましい。また、有機粒子としては、特に制限されないが、例えば、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、スチレンビーズ、メラミンビーズ、ウレタンアクリルビーズ、ポリエステルビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくはウレタンビーズ、ナイロンビーズ、アクリルビーズが挙げられる。アンチブロッキング剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
アンチブロッキング層4がアンチブロッキング剤を含む場合、その含有量としては、好ましくは1〜30質量%程度、より好ましくは5〜20質量%程度が挙げられる。
アンチブロッキング層4は、例えば、アンチブロッキング層4を構成する樹脂を保護フィルム層3の表面に塗工することにより形成することができる。塗工方法としては、特に制限されず、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式を用いることができる。また、アンチブロッキング層4を電離放射線硬化性樹脂により形成する場合、塗工後に電離放射線を照射することで架橋硬化することで形成できる。電離放射線を照射する条件については表面保護層2と同様である。
アンチブロッキング層4の厚さとしては、特に制限されないが、好ましくは0.1〜10μm程度、好ましくは1〜3μm程度が挙げられる。
[プライマー層5]
プライマー層5は、表面保護層2の延伸部に微細な割れや白化を生じ難くすること等を目的として、基材層1と表面保護層2との間、絵柄層6を設ける場合には絵柄層6と表面保護層2との間及び/又は基材層1と絵柄層6の間等に、必要に応じて設けられる層である。
表面保護層2とその下に位置する層との密着性を高める観点から、表面保護層2の直下にプライマー層5が設けられていることが好ましい。
プライマー層5を構成するプライマー組成物としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等をバインダー樹脂とするものが好ましく用いられ、これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、ウレタン樹脂とブチラール樹脂を混ぜて構成することも可能である。
架橋後の表面層との密着性、表面保護層2を積層後の相互作用の生じ難さ、物性、成形性の面から、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせることが好ましく、特にアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせて用いることが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8の範囲で調整することが好ましい。
プライマー層5の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.5〜20μm程度であり、好ましくは、1〜5μmが挙げられる。
プライマー層5は、プライマー組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法は、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
[絵柄層6]
絵柄層6は、加飾シートに装飾性を付与する目的で、基材層1と表面保護層2の間、プライマー層5を設ける場合は、基材層1とプライマー層5の間、又は隠蔽層を設ける場合は隠蔽層と表面保護層2の間等に、必要に応じて設けられる層である。
絵柄層6は、インキ組成物を用いて所望の絵柄を形成した層である。絵柄層6の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
インキ組成物に使用されるバインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキ組成物に使用される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
絵柄層6によって形成される模様についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよい。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
絵柄層6の厚みは、特に制限されないが、例えば1〜30μm、好ましくは1〜20μmが挙げられる。
[隠蔽層]
隠蔽層は、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層1と表面保護層2の間、プライマー層5を設ける場合であれば基材層1とプライマー層2の間、又は絵柄層6を設ける場合であれば基材層1と絵柄層6の間に、必要に応じて設けられる層である。
隠蔽層は、基材層が加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するために設けられるため、一般的には、不透明色の層として形成される。
隠蔽層は、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。隠蔽層を形成するインキ組成物は、後述する絵柄層に使用されるものから適宜選択して使用される。
隠蔽層は、通常、厚みが1〜20μm程度に設定され、所謂ベタ印刷層として形成されることが望ましい。
隠蔽層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等の通常の印刷方法;グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等の通常の塗布方法等によって形成される。
[透明樹脂層7]
透明樹脂層7は、耐薬品性や耐傷付き性を向上させる目的で、基材層1と表面保護層2の間、プライマー層5を設ける場合は基材層1とプライマー層5の間、絵柄層6を設ける場合は絵柄層6と表面保護層2の間、又は基材層1上にプライマー層5と絵柄層6をこの順に設ける場合はプライマー層5と絵柄層6の間等に、必要に応じて設けられる層である。透明樹脂層7は、インサート成形法によって成形樹脂と一体化される加飾シートにおいて、好適に設けられる層である。
透明樹脂層7を形成する樹脂成分としては、透明性、三次元成形性、形状安定性、耐薬品性等に応じて適宜選定されるが、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が使用される。これらの熱可塑性樹脂の中でも、耐薬品性、耐傷付き性等の観点から、好ましくは、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂;更に好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂;より好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられる。
透明樹脂層7は、接面する他の層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。これらの物理的又は化学的表面処理は、基材層に施される表面処理と同様である。
透明樹脂層7の厚みについては、特に制限されないが、例えば10〜200μm、好ましくは15〜150μmが挙げられる。
透明樹脂層7は、接着剤を介して積層させてもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介して積層させる場合、使用される接着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂等が挙げられる。また、接着剤を介さず積層させる場合には、押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の方法で行うことができる。
[接着層]
接着層(図示しない)は、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、基材層1の裏面(表面保護層2とは反対側の面)に、必要に応じて設けられる層である。
接着層には、加飾樹脂成形品に使用される成形樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。
接着層の形成に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、接着層の形成に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
加飾シートの製造方法
本発明の加飾シートは、例えば、以下の方法Aまたは方法Bにより好適に製造することができる。
<方法A>
方法Aにおいては、以下の工程A1〜A3を経て、少なくとも、基材層1/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4がこの順に積層された保護フィルム付き加飾シートが得られる。
保護フィルム層3の一方側の面にアンチブロッキング層4を積層する工程A1
保護フィルム層3の他方側の面に表面保護層2を積層する工程A2
表面保護層2側に基材層を1積層する工程A3
工程A3の後、保護フィルム層3及びアンチブロッキング層4を表面保護層4から剥離することにより、後述の成形に供する加飾シートとすることができる。加飾シートに、前述のプライマー層5、絵柄層6、透明樹脂層7などを積層する場合には、工程A2と工程A3との間に、これらの層を積層する工程を設ければよい。
本発明の加飾シートの製造方法において、方法Aを採用する場合、工程A1及び工程A2を行った後、工程A3で基材層1を積層する前に、表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4が積層された積層フィルムを一旦巻き取る場合がある。このような場合、表面保護層2がポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されているため、一般には、当該積層フィルムはブロッキングが生じやすいといえる。これに対して、本発明においては、当該積層フィルムにアンチブロッキング層4が積層されているため、基材層1を積層する前段階における積層フィルムのブロッキングについても、効果的に抑制することができ、この観点からも、生産安定性に優れている。
<方法B>
方法Bにおいては、以下の工程B1〜B3を経て、少なくとも、基材層1/表面保護層2/保護フィルム層3/アンチブロッキング層4がこの順に積層された保護フィルム付き加飾シートが得られる。
基材層1の上に、表面保護層2を積層する工程B1
表面保護層2の上に、保護フィルム層3を積層する工程B2
保護フィルム層3の上に、アンチブロッキング層4を積層する工程B3
工程B3の後、保護フィルム層3及びアンチブロッキング層4を表面保護層4から剥離することにより、後述の成形に供する加飾シートとすることができる。加飾シートに、前述のプライマー層5、絵柄層6、透明樹脂層7などを積層する場合には、工程B1と工程B2との間に、これらの層を積層する工程を設ければよい。
方法Aの第1A工程〜第3A工程、及び方法Bの第1B工程〜第3B工程において、各層の形成に使用される成分、厚み、各層の形成方法の具体的条件等については、前記各層の組成の欄で述べた通りである。
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シート(保護フィルム層3及びアンチブロッキング層4を剥離したもの)を成形樹脂層8と一体化させることにより成形されてなるものである。すなわち、保護フィルム層3及びアンチブロッキング層4を本発明の加飾シートの表面保護層2から剥離する工程と、当該加飾シートの表面保護層2側を成形樹脂層8に積層する工程とを備える方法により製造することができる。
本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層8、基材層1、及び表面保護層2がこの順に積層されてなる。前述のように、加飾シートに、プライマー層5、絵柄層6、透明樹脂層7が積層されている場合には、加飾樹脂成形品にもこれらの層が含まれる。図3及び図4に、本発明の加飾樹脂成形品の一態様について、その断面構造を示す。
本発明の加飾樹脂成形品は、例えば、本発明の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。本発明の加飾シートを各種射出成形法に供して加飾樹脂成形品を作製することによって、表面保護層の平滑性が維持されるので、三次元成形を行いつつ、高い光沢感を加飾樹脂成形品に付与することができる。従って、本発明の加飾樹脂成形品を構成する成形樹脂層8の好適な一例として、射出成形で形成された射出樹脂層が挙げられる。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。
インサート成形法では、先ず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートの基材層1側を一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを用いる場合であれば、通常100〜250℃程度、好ましくは130〜200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートの基材層1側を一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70〜130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
また、本発明の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの基材層1側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60〜200℃程度とすることができる。
本発明の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた成形樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
成形樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、成形樹脂として使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、高い光沢感を備えているため、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。なお、算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)は、それぞれ、JIS B 0601:1994の規定に準拠した方法で測定した値である。
[加飾シートの製造]
実施例1〜4及び比較例1〜5
実施例1〜4及び比較例1〜5の加飾シートを、それぞれ、以下の方法Aまたは方法Bにより製造した(表1を参照)。
<方法A>
保護フィルム層としての2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製 A4100 厚み50μm)の易接着面側に、後述の2液硬化型ウレタン樹脂組成物または電子線硬化性樹脂組成物を塗工して厚さ2μmのアンチブロッキング層を形成した。なお、アンチブロッキング層の形成に電子線硬化性樹脂組成物を用いた場合は、塗工後に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた。次に、保護フィルム層の未処理面側に後述の電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが10μmとなるようにグラビアリバースにて塗布し、未硬化樹脂層を積層した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、表面保護層を形成した。次に、表面保護層上にアクリル/ウレタン共重合体からなるプライマー層、アクリル/塩化ビニル−酢酸エチル共重合体からなる絵柄層形成用インキを用いて絵柄層を、それぞれ、グラビア印刷により順次積層した。次に、熱プレス機を用いて絵柄層上に厚み400μmのABS樹脂からなる基材層を積層し、保護フィルム付き加飾シートを得た。なお、比較例3では、アンチブロッキング層を設けなかった。
<方法B>
厚み400μmのABS樹脂からなる基材層にアクリル/塩化ビニル−酢酸エチル共重合体からなる絵柄層形成用インキを用いて絵柄層、アクリル/ウレタン共重合樹脂からなるプライマー層を、それぞれ、グラビア印刷により順次積層した。次に、プライマー層面側(表面側)にステンレス製鏡面板を接触させて熱プレス加工を行い、プライマー層面を平滑化した。次に、プライマー層上に、後述の電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが10μmとなるようにグラビアリバースにて塗布し、未硬化樹脂層を積層した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、表面保護層を形成した。また別途、保護フィルム層(易接着PET:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製 A4100 厚み50μm)、粘接着PE:ポリエチレン+アクリル系粘着剤(大王加工紙社製のFM−3800、厚み50μm)表1を参照)に、2液硬化型ウレタン樹脂組成物を塗工して、厚さ2μmのアンチブロッキング層を形成した。次に、保護フィルム層と、表面保護層とをラミネート機で貼りあわせて、保護フィルム付き加飾シートを得た。なお、比較例4,5では、アンチブロッキング層を設けなかった。さらに、比較例4では、プライマー層面を平滑化する際に基材層面側に算術平均粗さ(Ra)が40μmの梨地柄の入ったステンレス型金属板を接触させ、基材層の裏面にエンボス加工を施した。
アンチブロッキング層を形成する樹脂組成物の組成は、以下の通りである。
<2液硬化型ウレタン樹脂組成物>
・アクリルポリオール 100質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 10質量部
・アンチブロッキング剤(シリカゲル粒子) 表1に記載
<電子線硬化性樹脂組成物>
・2官能ポリカーボネートアクリレートオリゴマー 100質量部
・アンチブロッキング剤(アクリル樹脂粒子) 表1に記載
表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の組成は、以下の通りである。・2官能ポリカーボネートアクリレートオリゴマー 95質量部
・6官能ウレタンアクリレートオリゴマー 5質量部
[ブロッキング評価]
上記で得られた各保護フィルム付き加飾シートを、それぞれ5枚重ねて、荷重2kg/cm2、室温20℃、24時間の条件でブロッキング試験を行った。重ねた各加飾シートを剥離し、ブロッキング評価を以下の基準で行った。結果を表1に示す。
○:各加飾シート間が容易に剥がれ、ブロッキングがない。
△:各加飾シート間を剥離する際に、ブロッキングに基づく軽微な音がしたが、実使用上問題ない。
×:各加飾シート間が付着し、隣接する加飾シートの一方の基材層側に、他方側の保護フィルム層がとられる。
[加飾シートの外観評価]
上記でブロッキング評価を行った各保護フィルム付き加飾シートから保護層フィルム層を剥離し、表面保護層の表面状態を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:表面保護層の高い光沢感が保持されている。
△:表面保護層の高い光沢感が僅かに低下している。
×:表面保護層の高い光沢感が大きく低下している。
[真空成形後の外観評価]
上記でブロッキング評価を行った各保護フィルム付き加飾シートから保護フィルム層を剥離して加飾シートを得た。次に、加飾シートを赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させた。次いで、真空成形用型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率100%)、型の内部形状に沿うように成形した。真空成形後の加飾シートの表面保護層の表面状態を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:表面保護層の高い光沢感が保持されている。
△:表面保護層の高い光沢感が僅かに低下している。
×:表面保護層の高い光沢感が大きく低下している。
なお、表1において、易接着PETは、片面に易接着処理(他の片面は未処理)が施されたPETフィルムである。また、粘着PEは、片面に粘着塗工がなされたポリエチレンフィルムである。