JP7007862B2 - 化学発光試薬組成物及び化学発光試薬キット - Google Patents
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Description
EIAの中でも、酵素と化学発光基質との反応による発光量を測定する化学発光酵素免疫測定法(Chemiluminescent Enzyme Immunoassay;CLEIAという)は、測定時間が短く、かつ、高感度であることから、HIV、HCV等のウイルス、その他生体内微量成分等を測定するために広く用いられている。
また、1,2-ジオキセタン誘導体を安定化させてCLEIAの測定感度を維持するために、1,2-ジオキセタン誘導体に糖を添加することにより安定化する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
熱安定性に優れた化学発光用材料として、1,2-ジオキセタン誘導体の溶液、並びに、カチオン性界面活性剤および蛍光性物質を含有する溶液、を有することを特徴とする、化学発光用材料が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
抗原等の検体中の測定対象成分を測定するに際して、反応温度等の影響を受けずに正確な測定を可能とする、検体中の測定対象成分の測定方法として、検体中の測定対象成分と、該測定対象成分に結合する第1抗体とを、脂肪酸アルカノールアミド存在下に反応させる測定方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
この点について発明者らが検討したところ、1,2-ジオキセタン誘導体をジエタノールアミン緩衝剤で希釈調製すると、1,2-ジオキセタン誘導体の分解が進むため、酵素と反応による発光量が保存日数に依存して急激に減少し、CLEIAの感度が低下する傾向がある。
そのため、1,2-ジオキセタン誘導体を含む溶液の長期保存した場合の更なる安定性の向上が求められている。
<1> 1,2-ジオキセタン誘導体と、
金属塩と、
N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、並びに、非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種と、
を含む、化学発光試薬組成物。
<2> 更に、化学発光増強剤を含む、<1>に記載の化学発光試薬組成物。
<3> 前記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載の化学発光試薬組成物。
<4> 前記1,2-ジオキセタン誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の化学発光試薬組成物。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の化学発光試薬組成物と、
酵素と、
を含む化学発光試薬キット。
なお、本明細書において、数値範囲における「~」は、「~」の前後の数値を含むことを意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
本発明の化学発光試薬組成物(以下、単に「試薬組成物」ともいう。)は、1,2-ジオキセタン誘導体と、金属塩と、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)(以下、「特定化合物」ともいう。)、並びに、非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種と、を少なくとも含む。
本発明の化学発光試薬組成物は、上記構成を有することで1,2-ジオキセタン誘導体の分解を抑制するので、長期保存安定性に優れる。そのため、長期保存後の本発明の試薬組成物を用いて化学発光酵素免疫測定法を行った場合であっても、測定対象成分を高感度に検出可能な程度の発光量が得られる。
以下、本発明の試薬組成物が含有する各成分の詳細について説明する。
本発明の試薬組成物は、1,2-ジオキセタン誘導体を含む。
1,2-ジオキセタン誘導体は化学発光基質であるので、酵素と反応(すなわち、酵素反応)して発光する。例えば、酵素標識物質等と結合した検出対象成分と、試薬組成物中の1,2-ジオキセタン誘導体と、を反応させて、1,2-ジオキセタン誘導体の分解により得られる発光量を測定することで、検出対象成分を定量又は検出することができる。
これらの中でも、反応性の観点から、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、塩素原子又は臭素原子であることがより好ましく、塩素原子であることが更に好ましい。
炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はイソプロピル基が挙げられる。
標識酵素との反応性の観点から、R2としては、直鎖の炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、直鎖の炭素数1又は2のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
本発明の試薬組成物は、金属塩を含む。酵素活性は、金属塩の存在下で高まるため、1,2-ジオキセタン誘導体と酵素との反応効率も高めることができる。
2価の金属元素としては、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、鉄、バリウム等が挙げられる。
2価の金属塩としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化鉄等が挙げられる。
これらの中でも、測定感度の観点から、金属塩としては、マグネシウム塩であることが好ましく、塩化亜鉛及び塩化マグネシウムの少なくとも一方であることがより好ましく、塩化マグネシウムであることが更に好ましい。
金属塩は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
本発明の試薬組成物は、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)(特定化合物)、並びに、非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む。
特定化合物は、1,2-ジオキセタン誘導体のジオキセタン構造部分に作用し、ジオキセタン構造の分解(ジオキセタン環の開環)の抑制に寄与すると推察される。
本発明の試薬組成物は、1,2-ジオキセタン誘導体と特定化合物とを含むことで、長期保存安定性に優れる。
特定化合物が、例えば、環構造などの疎水性を示す構造を有する場合、1,2-ジオキセタン誘導体のジオキセタン環の開環を更に抑制することが可能となる。
特定化合物のpHとしては、例えば、7~12の範囲であることが好ましく、8~11の範囲であることがより好ましい。
本発明の試薬組成物は、特定化合物及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方を含む。非イオン性界面活性剤は、構造中に疎水性領域と親水性領域とを有するので、1,2-ジオキセタン誘導体に作用し、1,2-ジオキセタン誘導体のジオキセタン構造部分の分解を抑制すると推察される。
本発明の試薬組成物は、1,2-ジオキセタン誘導体と非イオン性界面活性剤とを含むことで、長期保存安定性に優れる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルイミダゾリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪族アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
これらの中でも、長期保存安定性の観点から、ポリオキシエチレンアリールエーテルとしては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルの少なくとも一方であることが好ましい。
これらの中でも、長期保存安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が12~14であるポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。
本発明の試薬組成物は、更に化学発光増強剤(以下、「エンハンサー」と称する場合がある。)を含むことが好ましい。
本明細書において化学発光増強剤とは、1,2-ジオキセタン誘導体の化学発光を増強する作用をもつ化合物を示す。
1,2-ジオキセタン誘導体の化学発光の増強作用の有無は、例えば、化学発光増強剤を用いずに化学発光させた場合の発光強度と、化学発光増強剤を用いて化学発光させた場合の発光強度とを、それぞれ検出装置(発光光度計)で測定し、それぞれの発光強度の値を比較して確認することができる。
これらの中でも、化学発光増強剤としては、発光強度の観点から、4級アンモニウム塩ポリマーであることがより好ましく、検出感度の点から、ポリ(ベンジルトリブチル)アンモニウムクロリドを含む市販品である、Emerald-IITM(TROPIX社製)であることが好ましい。
本発明の試薬組成物は、必要に応じて、前記化合物以外のpH調整剤、保存安定性を確保するためにアジ化ナトリウム等の保存剤などの添加剤を適宜含有していてもよい。
1,2-ジオキセタン誘導体の分解による発光量は、酵素量、すなわち、検出対象成分と結合した酵素標識抗体の量に比例して増加するため、発光量を測定することにより、検出対象成分を定量することができる。
このときの反応温度としては、抗原と固相化抗体とが反応可能であれば特に制限はなく、例えば4℃~40℃であり、反応効率の観点から、好ましくは25℃~38℃である。
抗体は、例えば、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物、ニワトリ等の鳥類、ヒト等の動物種由来のものでもよく、特に制限されない。また、抗体としては、例えば、動物種由来の血清から、従来公知の方法により作製してもよく、あるいは市販の各種抗体を利用してもよく、特に制限されない
固相としては、例えば、磁性粒子、ビーズ、プレート等が挙げられる。後述のB/F分離を行いやすい観点から、固相化抗体としては、磁性粒子に固相化された抗体であることが好ましい。
固相化抗体は、従来公知の方法により固相化した固相化抗体を用いてもよく、又は、市販の固相化抗体を利用してもよい。
取り扱い易さ、入手し易さ等の観点から、酵素としては、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)又はアルカリフォスファターゼ(AP)であることが好ましい。
酵素標識する方法は、特に制限されず、例えば、従来公知の方法を用いて酵素標識してもよい。
B/F分離の方法としては、比重差を利用した遠心分離、溶解度差を利用して沈降法、磁気を利用した分離法等が挙げられる。
その際に、発光量の測定の開始点及び積算時間は任意であるが、発光量が安定し且つ発光量の濃度依存性の高い時間を選択することが好ましい。
例えば、測定開始点は、上記複合体と試薬組成物又は特定試薬とを混合した後、0~1時間、好ましくは0~30分、特に好ましくは0~15分であり、測定の積算時間は1秒~1分、好ましくは1秒~30秒、特に好ましくは1秒~10秒である。
本発明の化学発光試薬キットは、本発明の試薬組成物と、酵素と、を含む。
化学発光試薬キットは、本発明の試薬組成物を含むので、1,2-ジオキセタン誘導体の分解が抑制される。そのため、化学発光試薬キットは長期保存安定性に優れ、化学発光試薬キットを用いて化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を行った場合、検出対象成分を高感度に検出することができる。
<化学発光試薬溶液の調製>
最終濃度が10質量%となるように、化学発光基質溶液(商品名;CDP-StarTM Substrate(0.4mM Ready-To-Use) with Emerald-IITM Enhancer、 Size A、Tropix社製、製品番号:T2216)2mLを、0.1MのCHES緩衝剤(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸ナトリウム、pH9.5)及び1mMの塩化マグネシウムを含む緩衝剤(pH9.5)18mLに混合し、化学発光試薬溶液を調製した。
保存開始を0日目とし、0日目並びに保存開始後14日目及び28日目の化学発光試薬溶液をそれぞれ評価用試験液とした。この評価用試験液を化学発光基質として用いて、下記測定方法により甲状腺ホルモン(TSH)を測定し、長期保存安定性の評価を行った。
<CLEIAによる甲状腺ホルモン(TSH)の測定>
反応容器にTSH抗体を感作させた磁性微粒子を含む溶液(固相化抗体)50uLを移し、アルカリフォスファターゼ(ALP)で標識したTSH抗体(標識酵素抗体)を含む溶液を50μL添加した。
次いで、30μIU/mLのTSH抗原を含む標準液を50μL添加し、37℃で5分間反応させて、酵素標識抗体とTSH抗原と固相化抗体とを含む複合体を形成させた。
反応後、反応容器にTBST(Tris Buffered Saline with Tween 20;50mM Tris-HCl、150mM NaCl pH7.4、0.05% Tween20)を加えて洗浄した。洗浄を3回繰り返して、未反応の酵素標識抗体をB/F分離したのち、反応容器に化学発光基質として評価用試験液を155μL添加して、上記複合体と化学発光反応させた。
化学発光反応より得られる発光量を、プレートリーダー(製品名;マルチモードプレートリーダDTXシリーズ DTX 800、日本モレキュラーデバイス株式会社製)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
なお、保存開始0日目の化学発光試薬溶液を用いてTSHを測定したときの発光量を100%とした。
実施例1において、CHES緩衝剤を、表1に示す希釈液に変更した以外は実施例1と同様にして化学発光試薬溶液を調製し、同様の条件で28日間保存した。所定期間保存した化学発光試薬溶液を評価用試験液とし、この評価用試験液を化学発光基質として用いて、実施例1と同様の測定方法でTSHを測定し、長期保存安定性の評価を行った。結果を表1又は表2に示す。
・CHES緩衝剤(0.1M N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸ナトリウム、pH9.5)
・AMPD緩衝剤(0.1M 2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールpH9.5)
・CAPSO緩衝剤(0.1M N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸ナトリウム、pH9.5)
・DEA緩衝剤(ジエタノールアミン、pH9.5)
・Bicine緩衝剤(0.1M N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシンナトリウム、pH9.5)
・Tris緩衝剤(0.1M トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸、pH9.5)
・AMPSO緩衝剤(0.1M 3-[(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、pH9.5)
<化学発光試薬溶液の調製>
化学発光基質溶液(商品名;CDP-StarTM Substrate (0.4 mM Ready-To-Use) with Emerald-IITM Enhancer Size A、Tropix社製、製品番号:T2216)2mLを0.25mMのTriton-X405(非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン(40)オクチルフェニルエーテル)及び1mMの塩化マグネシウムを含む0.1M ジエタノールアミン緩衝剤(pH9.5)18mLを混合した溶液に溶解し、化学発光試薬溶液を調製した。
実施例4において、Triton-X405を、表2に示す希釈液に変更した以外は実施例4と同様にして化学発光試薬溶液を調製し、この評価用試験液を化学発光基質として用いて、実施例4と同様の測定方法でTSHを測定し、長期保存安定性の評価を行った。
なお、比較例5では、希釈液を添加せずに、1mMの塩化マグネシウムを含む0.1M ジエタノールアミン緩衝剤(pH9.5)に化学発光基質溶液を溶解させて、化学発光試薬溶液を調製した。結果を表3に示す。
・Triton-X405(ポリオキシエチレン(40)オクチルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)、0.25mM)
・Triton-X100(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)、0.25mM)
・ニューコール710(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル(ポリオキシエチレンアリールエーテル)、0.25mM、日本乳化剤株式会社製)
・エマルゲン705(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、0.25mM、花王株式会社製)
・PEG2000(ポリエチレングリコール、0.05質量%、平均重量分子量2000、商品名;ポリエチレングリコール#20,000、ナカライテスク株式会社製)
従って、本発明の試薬組成物は、長期保存安定性に優れることがわかる。
Claims (6)
- 1,2-ジオキセタン誘導体と、
金属塩と、
非イオン性界面活性剤と、
を含む、化学発光試薬組成物。 - 更に、化学発光増強剤を含む、請求項1に記載の化学発光試薬組成物。
- 前記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の化学発光試薬組成物。
- 前記金属塩は、マグネシウム塩である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の化学発光試薬組成物。
- 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の化学発光試薬組成物と、
酵素と、
を含む化学発光試薬キット。
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