前述の様に、長期耐久使用時における外添剤のトナーへの埋め込みを抑制する方法の一つとして、個数平均粒径の大きなシリカ微粒子や異形のシリカ微粒子を外添する方法がある。この様なシリカ微粒子は、個数平均粒径の小さなシリカ微粒子や球形のシリカ微粒子に比べて、一粒子当たりの表面積が大きく、トナーに埋め込まれる際の抵抗力が強い。このため、長期耐久時においても、外添剤のトナーへの埋め込みを抑制することが出来る。前述の様な個数平均粒径の大きなシリカ微粒子や異形のシリカ微粒子は表面積が大きいことから、トナー表層や外添剤との接触頻度が増加し、トナーとしての流動性が低下し、帯電不足による画質低下などの画像弊害が生じてしまう。
一方、高温高湿環境下などの苛酷環境における帯電能を向上させる方法としては、前述の通り、チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸塩の微粒子を用いる方法がある。これは、中抵抗体であるチタン酸塩の微粒子によって、摺擦時に生じる電荷をトナー表面上に、均一に拡散することで、トナーの帯電における立ち上がりを良くすることが出来る。また、チタン酸塩の微粒子は、一般に研磨剤として用いられており、低付着力であることから、大粒径であっても、トナーの流動性を向上させることができる。しかし、これらのチタン酸塩の微粒子は、長期耐久使用時において、現像器内の摺擦によって、トナー粒子から、チタン酸塩の微粒子が脱離し、現像器内の機能性部品へ付着する場合(以下、この現象を移行と記載する。)がある。このため、長期耐久使用時におけるトナーの帯電性が変動して、現像性やカブリ抑制が悪化しやすい傾向があった。
また、前述の個数平均粒径の大きなシリカ微粒子や異形のシリカ微粒子と、チタン酸塩の微粒子とを併用することで、個々の機能に加え、低温低湿、高温高湿の両環境下でも安定的に、電子写真画像形成装置の像保持体への付着物を研磨、除去する方法がある。しかし、前述の方法においても、課題がある。電子写真画像形成装置内における、現像工程などの工程において、トナー上の前述のシリカ微粒子とチタン酸塩の微粒子は異形状、もしくは、大粒径であるために、長期耐久使用時における、現像器内の摺擦によって、トナー粒子から移行する場合がある。このため、長期使用終盤のトナー帯電性が変動して、現像性やカブリ抑制が悪化しやすい傾向があった。また、複数種類の外添剤でトナーの表層を被覆することで、トナーの紙に対する溶け広がり(濡れ性)が低下し、トナーの定着性が低下してしまう。特に、ハーフトーン画像においては、紙の凹部に落ち込んだトナーの、無加圧時における溶け広がりが支配的となり、従来技術では、長期耐久使用時における、トナーの帯電性と、トナーの定着性を両立することは、困難であった。
そこで本発明者らは、シリカ微粒子とチタン酸塩の微粒子を外添したトナー粒子において、トナー粒子からのチタン酸塩の微粒子の移行を抑えるために、チタン酸塩の微粒子を小粒径化することを試みた。小径化することで、トナー表面への固着は強固になり、現像器内で繰り返し摺擦を受けても移行を抑えられると考えた。実際、チタン酸塩の微粒子を小粒径化することで、長期耐久使用時において現像器内で繰り返し摺擦を受けてもチタン酸塩微粒子の移行を抑えることができ、帯電性を維持することができるようになった。さらに、小径のチタン酸塩の微粒子と、特定の形状のシリカ微粒子とを組み合わせた場合のみ、シリカ微粒子の移行の抑制と、トナーの溶け広がりへの阻害が小さく、定着性を良化させることがわかった。
本発明者らは、この効果に関して、以下のような現象により発現していると考えている。第一の現象として、トナーに対して外添剤を固着させる外添工程において、シリカ微粒子に対して、小径のチタン酸塩の微粒子は、トナー表層との接触面積が小さい。このため、トナー表層へ固着させることが、シリカ微粒子よりも、容易であるため、シリカ微粒子よりも先にトナー表層上へ固着される。第二の現象として、トナー表層上で固着された小径のチタン酸塩の微粒子はシリカ微粒子に対してポジ極性の電荷を帯びる。このため、シリカ微粒子は、ポジに帯電された小径のチタン酸の塩微粒子に電気的に引き寄せられる。第三の現象として、引き寄せられたシリカ微粒子は、シリカ微粒子の持つ形状的特長である、くびれ部位に、小径のチタン酸塩の微粒子が組み合わされる様に、接触し、トナーに固着される。これは、シリカ微粒子と小径のチタン酸塩の微粒子が接点を持つ場合に、最も安定化する状態は、接点数が最も多くなり、粒子間の付着力が最大となる状態であると推定されためである。すなわち、シリカ微粒子のくびれ部位に、小径のチタン酸塩の微粒子が組み合わされる状態が最も、安定状態であるためであると考えられる。第四の現象として、上記の様なシリカ微粒子のくびれ部位に小径のチタン酸塩の微粒子が組み合わさって、トナーに固着されている場合、トナー粒子とシリカ微粒子間の空隙は、シリカ微粒子単体を用いた場合に比べ、小さくなる。このため、本発明においては、定着時に受ける熱を従来技術に比べて、効率よくトナー粒子へ伝えることが出来る。この現象により、本発明のトナーは従来技術のトナーに比べ、定着性がよくなったと考えられる。
さらに検討を重ねた結果、外添剤として特定の形状を持つシリカ微粒子と小径のチタン酸塩の微粒子を併用することで、長期耐久使用においてもカブリを良好なレベルで維持し、かつ、外添剤によるトナーの定着性の阻害を抑制できることを見出し、本発明に至った。
具体的には、本発明者らは、
トナー粒子及び外添剤を含有するトナーであって、該外添剤は、無機微粒子A及びシリカ微粒子Bを含有し、該無機微粒子Aは、第2族元素を有するチタン酸塩の微粒子であり、該チタン酸塩の微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)をDAとした際に、DAが10nm以上60nm以下であって、
該シリカ微粒子Bは、一次粒子の個数平均粒径(D1)をDBとした際に、DBが40nm以上300nm以下、稠密度が0.75以上0.93以下であり、
該無機微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径に対する該シリカ微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の比(DB/DA)が1.0以上20.0以下であり、
X線光電子分光分析(ESCA)による該トナー表面の観察において、測定される該無機微粒子Aに由来するTi元素の値をTie、該シリカ微粒子Bに由来するSi元素由来の値をSieとし、
蛍光X線元素分析(XRF)による該トナーの観察において、測定される該無機微粒子Aに由来するTi元素の値をTix、該シリカ微粒子Bに由来するSi元素由来の値をSixとしたときに、
下式で求められる実効Ti比が0.20以上0.60以下であることを特徴とするトナーを用いることで、長期耐久使用時においてもカブリ抑制を良好なレベルで維持できると共に、外添剤による定着性の阻害を抑制できることを見出した。
実効Ti比=(Tie/(Sie+Tie))/(Tix/(Six+Tix))
本発明に用いられる無機微粒子Aは、第2族元素を有するチタン酸塩の微粒子である。第2族元素とは、周期表の第2族に属する元素(典型元素)のことであり、第2族元素には、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムが含まれる。これらのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムはアルカリ土類金属とも呼ばれる。第2族元素を有するチタン酸塩の微粒子としては、チタン酸ベリリウム微粒子、チタン酸マグネシウム微粒子、チタン酸カルシウム微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子、チタン酸バリウム微粒子、チタン酸ラジウム微粒子が挙げられる。無機微粒子Aとして、第2族元素を有するチタン酸塩の微粒子を、一種単独で、又は二種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、帯電極性がシリカに対し、ポジであり、かつ、電荷をトナー表面に、拡散させやすい抵抗率で、さらに、トナーが規制部材などに融着した際に適度な硬度があって研磨効果も発揮できる観点から、チタン酸ストロンチウム微粒子が好ましい。
本発明に用いられる無機微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径(D1)が、10nm以上60nm以下である。一次粒子の個数平均粒径(D1)が、10nm以上60nm以下であることで、無機微粒子Aは、シリカ微粒子Bよりも先にトナー表層へ固着し、シリカ微粒子Bを引き付ける現象が発生することを見出した。無機微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径は、無機微粒子Aの原材料のモル比や製造条件を調整することで制御することができる。
本発明に用いられる無機微粒子Aの含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上2.5質量部以下であることが好ましい。無機微粒子Aの含有量が、上記範囲である場合、トナーとしての流動性と定着性の両立を図ることが出来る。
本発明に用いられるシリカ微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径(D1)は、40nm以上300nm以下であり、好ましくは80nm以上200nm以下である。さらに、無機微粒子Aの個数平均粒径(D1)をDA、シリカ微粒子Bの個数平均粒径(D1)をDBとした際に、DAに対するDBの比DB/DAは、1.0以上20.0以下である。上記の要件を同時に満たすことで、無機微粒子Aがシリカ微粒子Bの持つくびれ部位に組み合わさった際に、くびれ部位によって生じているトナー粒子との空隙を埋めることが出来る。
このことにより、定着プロセスにおいて、定着媒体から熱を効率よくトナー粒子へ伝えることが出来、シリカ微粒子Bによるトナーの溶け広がりの阻害を抑制することができる。
シリカ微粒子Bが有するくびれ部位の特徴を示す指標である稠密度は、0.75以上0.93以下であり、好ましくは0.80以上0.90以下である。稠密度とは外添剤を2次元画像へ投影した際の投影面積を、包絡線により囲まれた外添剤の面積で除算した指標であり、外添剤の投影面積を外添剤の凸面積で除した値である。凸面積とは対象の外添剤の輪郭を基に作成される包絡線で囲われた部分の面積である。稠密度は0より大きく1以下の値をとる量であり、値が小さいほど、くびれ部位が多い、もしくは大きい、入り組んだ形状となる。シリカ微粒子Bの稠密度が前述の範囲である場合、無機微粒子Aがシリカ微粒子Bの持つくびれ部位に組み合わさった際に、くびれ部位によって生じているトナー粒子との空隙を埋めることが出来る。このことにより、定着プロセスにおいて、定着媒体から熱を効率よくトナーへ伝えさせることが出来、シリカ微粒子Bによるトナーの溶け広がりの阻害を抑制することができる。より好ましくは、シリカ微粒子Bの稠密度の標準偏差は、0.05以上0.15以下である。これにより、無機微粒子Aがシリカ微粒子Bの持つくびれ部位に組み合わさった際に、くびれ部位によって生じているトナー粒子との空隙をさらに小さくすることが出来る。このことにより、定着プロセスにおいて、定着媒体から熱を効率よくトナーへ伝えさせる効果が高まり、シリカ微粒子Bによるトナーの溶け広がりの阻害をさらに抑制することができる。
本発明に用いられる無機微粒子Aとシリカ微粒子Bは、X線光電子分光分析(ESCA)によるトナー表面の観察において、測定される無機微粒子Aに由来するTi元素の値をTie、シリカ微粒子Bに由来するSi元素由来の値をSieとする。蛍光X線元素分析(XRF)によるトナーの観察において、測定される無機微粒子Aに由来するTi元素の値をTix、シリカ微粒子Bに由来するSi元素由来の値をSixとする。この際に、下式で求められる実効Ti比が0.20以上0.60以下、好ましくは0.26以上0.57以下であることで、シリカ微粒子のくびれ部にチタン酸塩の微粒子が組み合わさり、トナーの溶け広がりの阻害を抑制できる。即ち定着性の向上が可能であることを見出した。また、実効Ti比が、前記の範囲であることで、トナーの表面上に単独でチタン酸塩の微粒子が存在しており、トナーの流動性の向上にも効果があることを見出した。前述の実効Ti比は、無機微粒子Aとシリカ微粒子Bの材料種類、添加量の比、粒径の比などで制御することが出来る。
実効Ti比=(Tie/(Sie+Tie))/(Tix/(Six+Tix))
無機微粒子Aについて、チタン酸ストロンチウム微粒子を例に挙げて詳細に説明する。チタン酸ストロンチウム微粒子は代表的には、加圧容器を用いる水熱処理ではなく、常圧で反応させる常圧加熱反応法により、ペロブスカイト型チタン酸ストロンチウム微粒子を製造する。酸化チタン源としてチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を用い、またストロンチウム源として水溶性酸性化合物を用い、その混合液に60℃以上でアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理する方法で製造される。チタン酸ストロンチウム微粒子の形状を制御する方法として、乾式で機械的処理を施すこともできる。
常圧加熱反応法について説明する。酸化チタン源としてはチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を用いる。好ましくは、硫酸法で得られた、SO3含有量が1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下のメタチタン酸を塩酸でpHを0.8以上1.5以下に調整して解膠したものを用いることが好ましい。これにより、粒度分布が良好なチタン酸ストロンチウム系微細粒子を得ることができる。メタチタン酸中SO3含有量が1.0質量%を超えると、解膠が進みにくい。
ストロンチウム源としては、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウムなどを使用することができる。アルカリ水溶液としては、苛性アルカリを使用することができるが、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
前記製造方法において、得られるチタン酸ストロンチウム微粒子の粒子径に影響を及ぼす因子としては、酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合、反応初期の酸化チタン源濃度、アルカリ水溶液を添加するときの温度及び添加速度などが挙げられる。そして、目的の粒子径および粒度分布のチタン酸ストロンチウム微粒子を得るために適宜調整することができる。なお、反応過程に於ける炭酸ストロンチウムの生成を防ぐために窒素ガス雰囲気下で反応させる等、炭酸ガスの混入を防ぐことが好ましい。
反応時における酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合は、Sr/Tiのモル比で、好ましくは0.9以上1.4以下、より好ましくは1.05以上1.20以下である。ストロンチウム源は水への溶解度が高いのに対し酸化チタン源は水への溶解度が低いため、Sr/Tiモル比が1以下の場合、反応生成物はチタン酸ストロンチウムだけでなく未反応の酸化チタンが残存し易くなる。反応初期の酸化チタン源の濃度としては、TiO2として0.05mol/L以上1.3mol/L以下、好ましくは0.08mol/L以上1.0mol/L以下が適切である。反応初期の酸化チタン源の濃度を高くすることで、チタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子径を小さくすることができる。
アルカリ水溶液を添加するときの温度は、高いほど結晶性の良好な生成物が得られるが、100℃以上ではオートクレーブ等の圧力容器が必要であり、実用的には60℃以上100℃以下の範囲が適切である。また、アルカリ水溶液の添加速度は、添加速度が遅いほど大きな粒子径のチタン酸ストロンチウム微粒子が得られ、添加速度が速いほど小さな粒子径のチタン酸ストロンチウム微粒子が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込み原料に対し0.001当量/h以上1.2当量/h以下、好ましくは0.002当量/h以上1.1当量/h以下が適切であり、得ようとする粒子径に応じて適宜調整することができる。
続いて酸処理について説明する。酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合がSr/Tiのモル比で、1.0を超える場合、反応終了後に残存した未反応のストロンチウム源が空気中の炭酸ガスと反応して、炭酸ストロンチウムなどの不純物を生成してしまうため、粒度分布を悪化させる。また、表面に炭酸ストロンチウムなどの不純物が残存すると、疎水性を付与するための有機表面処理をする際に、不純物の影響で有機表面処理剤を均一に被覆することができない。したがって、アルカリ水溶液を添加した後、未反応のストロンチウム源を取り除くため酸処理を行う。
酸処理では、塩酸を用いてpH2.5以上7.0以下、より好ましくはpH4.5以上6.0以下に調整することが好ましい。酸としては、塩酸の他に硝酸、酢酸等を酸処理に用いることができる。しかし、硫酸を用いると、水の溶解度が低い硫酸ストロンチウムが発生するので好ましくない。
本発明のチタン酸ストロンチウム微粒子は、帯電調整や環境安定性の改良のため、無機酸化物やチタンカップリング剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル等の疎水化剤で表面被覆することができる。これらのカップリング剤にはアミノ基、フッ素などの官能基を導入しても良い。ただし、シリカ微粒子Bに対してネガ極性の帯電をする材料に関しては、チタン酸ストロンチウム微粒子表面に、ポジ帯電する部位が局在する様にする必要性がある。また、脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられ、脂肪酸であるステアリン酸などでも同様の効果が得られる。処理の方法は、処理する表面処理剤などを溶媒中に溶解、分散させ、その中にチタン酸ストロンチウム微粒子を添加し、撹拌しながら溶媒を除去して処理する湿式方法が挙げられる。また、カップリング剤、脂肪酸金属塩とチタン酸ストロンチウム微粒子を直接混合して撹拌しながら処理を行う乾式方法などが挙げられる。
本発明に用いられるシリカ微粒子Bは、シリカ(即ちSiO2)を主成分とする微粒子であり、結晶性でも非晶性でもよい。シリカ微粒子Bは、水ガラスやアルコキシシラン等のケイ素化合物を原料に製造された微粒子であってもよいし、石英を粉砕して得られる微粒子であってもよい。シリカ微粒子Bとして、具体的には、ゾルゲル法で作製されるシリカ微粒子(以下「ゾルゲルシリカ微粒子」)、水性コロイダルシリカ微粒子、アルコール性シリカ微粒子、気相法により得られるフュームドシリカ微粒子、溶融シリカ微粒子等が挙げられる。これらの中でも、前述の稠密度を持つ、形状に制御するには、ゾルゲルシリカ微粒子が好ましい。
シリカ微粒子Bは、疎水化処理剤により表面に疎水化処理が施されていることがよい。シリカ微粒子Bの疎水化処理は、例えば、シリカ微粒子を疎水化処理剤に浸漬したり、シリカ微粒子と疎水化処理剤とを混合し加熱する等の公知の方法により行う。疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物、アルコキシシラン、シリコーンオイル等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これら疎水化処理剤の中でも、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチル基を有する有機珪素化合物が好適である。
シリカ微粒子Bについて、ゾルゲルシリカ微粒子を例に挙げて詳細に説明する。ゾルゲルシリカ微粒子の製造方法は、2つの工程を有している。1つ目の工程が、アルコールを含む溶媒中に、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程(以下、「アルカリ触媒溶液準備工程」と称することがある)である。2つ目の工程は、前記アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランを供給すると共に、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して0.1mol以上0.4mol以下でアルカリ触媒を供給する工程(以下、「粒子生成工程」と称することがある)である。
つまり、この製造方法では、上記のアルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料のテトラアルコキシシランと、別途、触媒であるアルカリ触媒と、をそれぞれ上記関係で供給しつつ、テトラアルコキシシランを反応させて、シラン粒子を生成する方法である。
シリカ微粒子Bの製造方法では、上記手法により、粗大凝集物の発生が少なく、稠密度が前記の数値範囲となるシリカ微粒子が得られる。この理由は、定かではないが以下のように考えられる。アルカリ触媒は、触媒作用の他に、生成される核粒子の表面に配位し、核粒子の形状、分散安定性に寄与する。しかし、その量が上記範囲内であると、アルカリ触媒が核粒子の表面に偏在して付着する。これにより、核粒子の分散安定性は保持するものの、核粒子の表面張力及び化学的親和性に部分的な偏りが生じ、稠密度の低い核粒子が生成される。
そして、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給をそれぞれ続けていくと、テトラアルコキシシランの反応により、生成した核粒子が成長し、シラン粒子が得られる。ここで、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給を、その供給量を上記関係で維持しつつ行うことで、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、円形度の低い核粒子がその異形性を保ったまま粒子成長する。その結果、稠密度が上記数値範囲となるシリカ微粒子が生成されると考えられる。これは、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給量を上記関係とすることで、核粒子の分散を保持しつつ、核粒子表面における張力と化学的親和性の部分的な偏りが保持されることから、異形性を保ちながらの核粒子の成長が生じると考えられるためである。
シリカ微粒子Bの製造方法では、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給することで、テトラアルコキシシランの反応を生じさて、粒子生成を行っていることから、従来のゾルゲル法によるシリカ微粒子を製造する場合に比べ、総使用アルカリ触媒量が少なくなり、その結果、アルカリ触媒の除去工程の省略も実現される。これは、特に、高純度が求められる製品にシリカ微粒子を適用する場合に有利である。
次に、アルカリ触媒溶液準備工程について説明する。アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、これにアルカリ触媒を添加して、アルカリ触媒溶液を準備する。
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、また、必要に応じて水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の他の溶媒との混合溶媒であってもよい。
混合溶媒の場合、アルコールの他の溶媒に対する量は80質量%以上(好ましくは90質量%以上)であることがよい。なお、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
一方、アルカリ触媒としては、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが好ましい。
アルカリ触媒の濃度(含有量)は、0.6mol/L以上0.87mol/L以下が好ましく、より好ましくは0.63mol/L以上0.78mol/L以下であり、特に好ましくは0.66mol/L以上0.75mol/L以下である。アルカリ触媒の濃度が、0.6mol/L以上であれば、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が安定し、2次凝集物等の粗大凝集物の生成やゲル化状が抑えられ、粒度分布が良化する。一方、アルカリ触媒の濃度が、0.87mol/L以下であれば、生成した核粒子の安定性過大による真球状の核粒子の生成が抑えられ、平均円形度が0.90以下の異形状の核粒子を得やすい。なお、アルカリ触媒の濃度は、アルコール触媒溶液(アルカリ触媒+アルコールを含む溶媒)に対する濃度である。
粒子生成工程について説明する。粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給し、当該アルカリ触媒溶液中で、テトラアルコキシシランを反応(加水分解反応、縮合反応)させて、シリカ微粒子を生成する工程である。この粒子生成工程では、テトラアルコキシシランの供給初期に、テトラアルコキシシランを反応により、核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ微粒子が生成される。
アルカリ触媒溶液中に供給するテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられるが、反応速度の制御性や得られるシリカ微粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがよい。
テトラアルコキシシランの供給量は、アルカリ触媒溶液中のアルコールに対して、0. 002mol/(mol・min)以上0.0075mol/(mol・min)以下が好ましい。これは、アルカリ触媒溶液を準備する工程で用いたアルコール1molに対して、1分間当たり0.002mol以上0.0075mol以下の供給量でテトラアルコキシシランを供給することを意味する。
なお、シリカ微粒子Bの粒径については、製造条件にもよるが、粒子生成の反応に用いるテトラアルコキシシランの総供給量を、例えばシリカ微粒子分散液1Lに対し0.552mol以上とすることで、粒径が40nm以上の一次粒子が得られる。また、シリカ微粒子分散液1Lに対し4.4mol以下とすることで、粒径が300nm以下の一次粒子が得られる。
テトラアルコキシシランの供給量が、0.002mol/(mol・min)より少ないと、滴下されたテトラアルコキシシランと核粒子との接触確率をより下げることにはなる。しかし、テトラアルコキシシランの総供給量を滴下し終わるまでに長時間を要し、生産効率が悪くなってしまう。
テトラアルコキシシランの供給量が0.0075mol/(mol・min)以上であると、滴下されたテトラアルコキシシランと核粒子とが反応する前に、テトラアルコキシシラン同士の反応を生じさせることになると考えられる。そのため、核粒子へのテトラアルコキシシラン供給の偏在化を助長し、核粒子形成のバラツキをもたらすことから、粒径、形状分布の分布幅が拡大してしまう。テトラアルコキシシランの供給量は、0.002mol/(mol・min)以上0.006mol/(mol・min)以下がより好ましく、更に好ましくは、0.002mol/(mol・min)以上0.0045mol/(mol・min)以下である。
一方、アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒は、上記例示したものが挙げられる。この供給するアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることがよい。アルカリ触媒の供給量は、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して0.1mol以上0.4mol以下が好ましい。
アルカリ触媒の供給量が、0.1mol以上であると、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が安定し、2次凝集物等の粗大凝集物の生成やゲル化状抑えられ、粒度分布が良化する。一方、アルカリ触媒の供給量が、0.4mol以下であれば、生成した核粒子の安定性が過大にならないため、核粒子生成段階で円形度の低い核粒子が生成されても、その核粒子成長段階で核粒子が球状に成長することが抑えられ、稠密度の低いシリカ微粒子が得られる。
ここで、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給するが、この供給方法は、連続的して供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
以上の工程を経て、シリカ微粒子が得られる。この状態で、得られるシリカ微粒子は、分散液の状態で得られるが、そのままシリカ微粒子分散液として用いてもよいし、溶媒を除去してシリカ微粒子の粉体として取り出して用いてもよい。
シリカ微粒子分散液として用いる場合は、必要に応じて水やアルコールで希釈したり濃縮することによりシリカ微粒子固形分濃度の調整を行ってもよい。また、シリカ微粒子分散液は、その他のアルコール類、エステル類、ケトン類などの水溶性有機溶媒などに溶媒置換して用いてもよい。
シリカ微粒子分散液の溶媒除去方法としては、濾過、遠心分離、蒸留などにより溶媒を除去した後、真空乾燥機、棚段乾燥機などにより乾燥する方法、動層乾燥機、スプレードライヤーなどによりスラリーを直接乾燥する方法など、公知の方法が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは200℃以下である。200℃以下であるとシリカ微粒子表面に残存するシラノール基の縮合による一次粒子同士の結合や粗大粒子の発生が抑えられる。
乾燥されたシリカ微粒子は、必要に応じて解砕、篩分により、粗大粒子や凝集物の除去を行うことがよい。解砕方法は、特に限定されないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行う。篩分方法は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知のものにより行う。
上述の製造方法により得られるシリカ微粒子は、疎水化処理剤によりシリカ微粒子の表面を疎水化処理して用いていてもよい。疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
疎水化処理剤による疎水化処理が施された疎水性シリカ微粒子分散液を得る方法としては、以下のような方法が挙げられる。例えば、シリカ微粒子分散液に疎水化処理剤を必要量添加し、撹拌下において30℃以上80℃以下の温度範囲で反応させることで、シリカ微粒子に疎水化処理を施し、疎水性シリカ微粒子分散液を得る方法が挙げられる。この反応温度が30℃以上であることで疎水化反応が進行しやすく、80℃以下温度では疎水化処理剤の自己縮合による分散液のゲル化やシリカ微粒子同士の凝集などが起り難くなる。一方、粉体の疎水性シリカ微粒子を得る方法としては、上記方法で疎水性シリカ微粒子分散液を得た後、上記方法で乾燥して疎水性シリカ微粒子の粉体を得る方法、シリカ微粒子分散液を乾燥して親水性シリカ微粒子の粉体を得た後、疎水化処理剤を添加して疎水化処理を施し、疎水性シリカ微粒子の粉体を得る方法、疎水性シリカ微粒子分散液を得た後、乾燥して疎水性シリカ微粒子の粉体を得た後、更に疎水化処理剤を添加して疎水化処理を施し、疎水性シリカ微粒子の粉体を得る方法等が挙げられる。
ここで、粉体のシリカ微粒子を疎水化処理する方法としては、ヘンシェルミキサーや流動床などの処理槽内で粉体の親水性シリカ微粒子を撹拌し、そこに疎水化処理剤を加え、処理槽内を加熱することで疎水化処理剤をガス化して粉体のシリカ微粒子の表面のシラノール基と反応させる方法が挙げられる。
トナー粒子と外添剤を混合する外添装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)、ナウターミキサー、メカノハイブリッドなどが挙げられる。
本発明におけるトナー粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、懸濁重合法・界面重合法・分散重合法のような、親水性媒体中で直接トナーを製造する方法(以下、重合法とも称する)や粉砕法もしくは粉砕法により得られたトナーを熱球形化してもよい。その中でも、トナー粒子がほぼ球形に揃いやすく、帯電分布の均一に優れ、さらには軟化点の低い樹脂やシャープメルト性に優れた樹脂粒子を組み込みやすい乳化凝集法が好ましく用いられる。
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上8.0μm以下であることがより好ましい。
本発明に係わるトナー粒子に用いられる樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステルモノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)が挙げられる。その他、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれら非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、シャープメルト性を有し、かつ低分子量でも強度に優れるポリエステル樹脂が特に好ましい。
本発明に係わるトナー粒子には、着色剤を用いることができ、公知の有機顔料または染料、カーボンブラック、磁性粉体などが挙げられる。
シアン系の着色剤の例には、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が含まれる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が挙げられる。
マゼンタ系着色剤の例には、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが含まれる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254等が挙げられる。
イエロー系着色剤の例には、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物などが含まれる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、194等が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性粉体、あるいは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独または混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。本発明に用いる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナーへの分散性の点から選択される。
本発明のトナーの各種物性の測定方法について以下に説明する。
無機微粒子Aやシリカ微粒子B、およびトナー粒子の物性を測定する場合は、トナーから無機微粒子Aやシリカ微粒子Bと他の外添剤を分離して測定することができる。以下、各種物性の測定方法に関して、無機微粒子Aがチタン酸ストロンチウム微粒子である場合を例に、説明する。
トナーをメタノールに超音波分散させてチタン酸ストロンチウム微粒子や、シリカ微粒子、他の外添剤を外して、24時間静置する。遠心分離によりトナー粒子と、チタン酸ストロンチウム微粒子、シリカ微粒子、他の外添剤とを分離、回収し、十分に乾燥させることで、それぞれを単離することができる。
<無機微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径(D1)および、シリカ微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー表面に存在するチタン酸ストロンチウム微粒子、およびシリカ微粒子Bの存在個所は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)(SEM-EDX)による観察、及び元素分析によって特定することができる。例えば、2万倍の倍率下で観察と元素マッピングを連続した視野で行い、例えば、観察される粒子に対してTiとSrの両元素をマッピングしたとき、これをチタン酸ストロンチウムであると判断した。同様に、観察される粒子に対してSiの元素をマッピングしたとき、これをシリカ微粒子Bと判断した。
チタン酸ストロンチウム微粒子および、シリカ微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されるトナー粒子の表面のチタン酸ストロンチウム微粒子および、シリカ微粒子Bの画像から算出される。S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
・試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
・S-4800観察条件設定
チタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子および、シリカ微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は二次電子像と比べて粒子のチャージアップが少ないため、粒径を精度良く測定することができる。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PCSTEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を100000(100k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作をさらに2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナー粒子の表面上の少なくとも300個のチタン酸ストロンチウム微粒子について粒径を測定して、一次粒子の個数平均粒径(D1)を求める。ここで、チタン酸ストロンチウム微粒子は凝集塊として存在するものもあるため、一次粒子と確認できるものの最大径を求め、得られた最大径を算術平均することによって、チタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)を得る。また、シリカ微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径(D1)もチタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)と同じ要領で測定、算出を行い、シリカ微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径(D1)を得る。
<シリカ微粒子Bの稠密度の測定方法>
シリカ微粒子Bの稠密度の測定は、ポリカーボネート薄膜付着測定法を用いて行った。
ポリカーボネート薄膜付着測定法の各過程を図1に示す。図1において、基板12にトナーTを配置する方法として、目開き75μmのステンレスメッシュのふるい11を用いている。基板としては感光体の表層を模擬するため、50μmの厚みのアルミシートにポリカーボネートをトルエンに10質量%となる様に溶解して塗工液とした。この塗工液を、50番手のマイヤーバーを用いて上記アルミシートに塗工し、100℃で10分間乾燥させることで、アルミシート上にポリカーボネートの膜厚が10μmのシートを作製した。このシートを基板ホルダ13で保持した。基板は一辺が約3mmの正方形とした。ふるいにトナーを約10mg投入し、ふるいの直下20mmの距離に基板を配置した。ふるいから落下したトナーが効率よく基板に積層されるように、ふるいの開口は直径10mmとしている。ふるいを保持する枠体に、加速度5G相当となる、振幅1mm、デューティー比33%ののこぎり波形振動を5Hzでふるい面内方向に30秒印加し、基板にトナーを積層させた。
・トナーを配置した基板に振動を印加する工程
次に、トナーを積層した基板に加速度0.5G相当となる、振幅1mm、デューティー比33%ののこぎり波形振動を3Hzで基板の面内方向に20秒印加し、基板とトナーの接触を促進させた。
なお、ふるい、基板への振動印加の方法としては、振動の振幅や周波数、振動の方向は他の適切な条件を選択することもできる。また、ここでは基板にトナーを配置した後基板に振動を印加する方法を提示したが、基板にトナーを積層させる工程とトナーが積層した基板に振動を印加する工程を同時に行ってもよい。
・基板からトナーを除去する工程
振動印加後の基板に吸引手段14として、掃除機のノズル先端に接続した内径約5mmのエラストマー製の吸引口をトナー配置面と垂直となるように近づけ、基板に付着したトナーを除去する。トナーの残留程度を目視で確認しながら除去した。本実施の形態では吸引口端部と基板の距離を約1mm、吸引時間を約3秒とした。その時の吸引圧力を測定すると6kPaであった。
・基板に供給されたシリカ微粒子Bの形状を定量化する工程
トナー除去後に基板に残留する外添剤から、シリカ微粒子Bの形状を数値化するには走査型電子顕微鏡による観察と画像計測を用いた。まず、シリカ微粒子Bの存在箇所を特定するため、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)(SEM-EDX)による観察、元素マッピングを行う。観察、元素マッピングにおいては、100nm前後の外添剤を観察できる観察倍率を任意に選択できる。走観察倍率としては、シリカ微粒子Bの粒径によるが、例えば100nm前後であれば20000倍、加速電圧10kV、作動距離3mmの条件にて観察できる。20000倍における観察領域は約30μm×20μmの領域である。
観察により得られた画像はシリカ微粒子Bが高輝度に、基板が低輝度に表されているので、二値化により、視野内の外添剤の量を定量化することができる。二値化の条件は観察装置により適切に選択することができる。ここでは二値化には画像解析ソフトウェアImage J(開発元Wayne Rasband)を用い、背景輝度分布をSubtract Backgroundメニューから平坦化半径40ピクセルで除去した後、輝度閾値50で二値化した。
得られた二値化画像を、画像解析ソフトウェアImage Jで粒子解析することで、シリカ微粒子Bの稠密度を算出した。稠密度は、画像解析ソフトウェアImage Jにて稠密度はSolidityという名称で数値範囲の規定を行うことが可能である。
上記測定を二値化画像100枚について行い、その平均値をシリカ微粒子Bの稠密度とし、この際の標準偏差をシリカ微粒子Bの稠密度の標準偏差とした。
<実効Ti比の測定方法>
実効Ti比は、下式で示されるように、無機微粒子Aとシリカ微粒子Bが外添されたトナーを、X線光電子分光分析(ESCA)で測定した際のケイ素由来のピーク(Sie)とチタン由来のピーク(Tie)と、蛍光X線元素分析(XRF)で測定した際のシリコン由来のピーク(Six)とチタン由来のピーク(Tix)によって算出される。
実効Ti比=(Tie/(Sie+Tie))/(Tix/(Six+Tix))
このため、以下にX線光電子分光分析(ESCA)と蛍光X線元素分析(XRF)の測定方法について記載する。
・X線光電子分光分析(ESCA)の測定方法
トナー上のチタン酸ストロンチウム微粒子は、チタン原子量もしくは、ストロンチウム原子量から算出される。以下の説明に関しては、ストロンチウム原子量から算出する場合について、記載する。ESCAは、サンプル表面の深さ方向で数nm以下の領域の原子を検出する分析方法である。そのため有機無機複合微粒子の表面の原子を検出することが可能である。
サンプルホルダーとしては、装置付属の75mm角のプラテン(サンプル固定用の約1mm径のねじ穴が具備されている)を用いた。そのプラテンのネジ穴は貫通しているため、樹脂等で穴をふさぎ、深さ0.5mm程度の粉体測定用の凹部を作製する。その凹部に測定試料をスパチュラ等で詰め込み、すり切ることでサンプルを作製した。
ESCAの装置及び測定条件は、下記の通りである。
使用装置:アルバック-ファイ社製 Quantum 2000
分析方法:ナロー分析
測定条件:
X線源:Al-Kα
X線条件:100μ、25W、15kV
光電子取り込み角度:45°
PassEnergy:58.70eV
測定範囲:φ100μm
以上の条件より測定を行った。
解析方法は、まず炭素1s軌道のC-C結合に由来するピークを285eVに補正する。その後、100eV以上105eV以下にピークトップが検出されるストロンチウム2p軌道に由来するピーク面積から、アルバック-ファイ社提供の相対感度因子を用いることで、構成元素の総量に対するストロンチウムに由来するSr量を算出する。算出されたSr量から、チタン酸ストロンチウムに由来するTi元素量(Tix)を算出する。
無機微粒子Aがチタン酸ストロンチウムである場合について説明したが、無機微粒子Aがチタン酸ストロンチウムではない場合についても、第2族元素の元素量からTi元素量(Tix)を算出する。測定対象がシリカ微粒子Bである場合についても、同様に、測定装置に付属しているデータベースからSi元素量(Sie)を算出する。
・蛍光X線元素分析(XRF)の測定方法
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー粒子を約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
チタン酸ストロンチウム微粒子の場合、トナー上のチタン酸ストロンチウムは、チタン原子量もしくは、ストロンチウム原子量から算出される。無機微粒子Aがチタン酸ストロンチウムではない場合や、測定対象がシリカ微粒子Bである場合については、X線光電子分光分析(ESCA)の測定と同様に、測定装置に付属しているデータベースから無機微粒子Aやシリカ微粒子Bに含まれる金属種を特定し、その金属種に着目した解析を行う。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。実施例中で使用する部は特に断りのない限り質量基準である。
無機微粒子Aは以下のようにして作製した。また、無機微粒子A1~A5の物性を表1に示す。
<無機微粒子A1の製造例>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiO2として1.85モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0とし解膠処理を行った。
脱硫・解膠を行ったメタチタン酸をTiO2として1.88モルを採取し、3Lの反応容器に投入した。解膠メタチタン酸スラリーに、塩化ストロンチウム水溶液を、Sr/Tiモル比で1.15となるよう2.16モル添加した後、TiO2濃度1.039モル/Lに調整した。次に、撹拌混合しながら90℃に加温した後、10モル/L水酸化ナトリウム水溶液440mLを45分間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え20分撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、ろ過・分離後、120℃の大気中で8時間乾燥した。
続いて乾燥品300gを、乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン製 ノビルタNOB-130)に投入した。処理温度30℃、回転式処理ブレード90m/sで10分間処理を行った。さらに乾燥品にpH0.1となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した。
沈殿を含むスラリーを40℃に調整し、塩酸を加えpH2.5に調整した後、固形分に対して4.0質量%のn-オクチルトリエトキシシランを添加し10時間撹拌保持を続けた。5モル/L水酸化ナトリウム溶液を加えpH6.5に調整し1時間撹拌を続けた後、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し無機微粒子A1を得た。
<無機微粒子A2の製造例>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiO2として1.85モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0とし解膠処理を行った。
脱硫・解膠を行ったメタチタン酸をTiO2として1.88モルを採取し、3Lの反応容器に投入した。解膠メタチタン酸スラリーに、塩化ストロンチウム水溶液を、Sr/Tiモル比で1.25となるよう2.35モル添加した後、TiO2濃度1.015モル/Lに調整した。次に、撹拌混合しながら90℃に加温した後、10モル/L水酸化ナトリウム水溶液440mLを45分間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え20分撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、ろ過・分離後、120℃の大気中で8時間乾燥した。
続いて乾燥品300gを、乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン製 ノビルタNOB-130)に投入した。処理温度30℃、回転式処理ブレード90m/sで10分間処理を行った。
さらに乾燥品にpH0.1となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した。
沈殿を含むスラリーを40℃に調整し、塩酸を加えpH2.5に調整した後、固形分に対して4.0質量%のn-オクチルトリエトキシシランを添加し10時間撹拌保持を続けた。5モル/L水酸化ナトリウム溶液を加えpH6.5に調整し1時間撹拌を続けた後、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し無機微粒子A2を得た。
<無機微粒子A3の製造例>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiO2として1.85モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0とし解膠処理を行った。
脱硫・解膠を行ったメタチタン酸をTiO2として1.88モルを採取し、3Lの反応容器に投入した。解膠メタチタン酸スラリーに、塩化ストロンチウム水溶液を、Sr/Tiモル比で1.15となるよう2.16モル添加した後、TiO2濃度1.075モル/Lに調整した。次に、撹拌混合しながら90℃に加温した後、10モル/L水酸化ナトリウム水溶液440mLを45分間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え20分撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、ろ過・分離後、120℃の大気中で8時間乾燥した。
続いて乾燥品300gを、乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン製 ノビルタNOB-130)に投入した。処理温度30℃、回転式処理ブレード90m/sで10分間処理を行った。さらに乾燥品にpH0.1となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した。
沈殿を含むスラリーを40℃に調整し、塩酸を加えpH2.5に調整した後、固形分に対して4.0質量%のn-オクチルトリエトキシシランを添加し10時間撹拌保持を続けた。5モル/L水酸化ナトリウム溶液を加えpH6.5に調整し1時間撹拌を続けた後、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し無機微粒子A3を得た。
<無機微粒子A4の製造例>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiO2として1.85モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0とし解膠処理を行った。
脱硫・解膠を行ったメタチタン酸をTiO2として1.88モルを採取し、3Lの反応容器に投入した。解膠メタチタン酸スラリーに、塩化ストロンチウム水溶液を、Sr/Tiモル比で1.35となるよう2.54モル添加した後、TiO2濃度1.039モル/Lに調整した。次に、撹拌混合しながら100℃に加温した後、10モル/L水酸化ナトリウム水溶液440mLを45分間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え20分撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、ろ過・分離後、120℃の大気中で8時間乾燥した。
続いて乾燥品300gを、乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン製 ノビルタNOB-130)に投入した。処理温度30℃、回転式処理ブレード90m/sで10分間処理を行った。
さらに乾燥品にpH0.1となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した。
沈殿を含むスラリーを40℃に調整し、塩酸を加えpH2.5に調整した後、固形分に対して4.0質量%のn-オクチルトリエトキシシランを添加し10時間撹拌保持を続けた。5モル/L水酸化ナトリウム溶液を加えpH6.5に調整し1時間撹拌を続けた後、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し、無機微粒子A4を得た。
<無機微粒子A5の製造例>
0.92モル/LのNaOH水溶液を約90℃に保持し、40℃に加熱保持したTiCl4水溶液(TiCl4濃度が0.472モル/L)と、予め未溶解分を除去し約95℃に加熱保持したBaCl2/NaOH水溶液(BaCl2濃度が0.258モル/L、NaOH濃度が2.73モル/L)とを、反応容器内に連続的に供給した。混合水溶液の温度を約90℃で一定とし、2分間撹拌して粒子状のチタン酸バリウムを生成した。熟成後、デカンテーションを行って上澄みと沈殿物を分離し洗浄して固体反応物を回収した。回収した固体反応物を大気雰囲気下において100℃で加熱することにより乾燥した。さらに700℃に5分加熱して無機微粒子A5を得た。
シリカ微粒子Bは以下のようにして作製した。また、表2にシリカ微粒子B1~B13の製造条件、表3にシリカ微粒子B1~B13の物性を記す。
<シリカ微粒子B1の製造例>
・アルカリ触媒溶液(1)の調製
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール600部、10%アンモニア水88部を入れ、撹拌混合して、アルカリ触媒溶液(1)を得た。こときのアルカリ触媒溶液(1)のアンモニア触媒量:NH3量(NH3〔mol〕/(アンモニア水+メタノール)〔L〕)は、0.61mol/Lであった。
・シリカ微粒子懸濁液(1)の調製
アルカリ触媒溶液(1)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(1)を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)120部と、触媒(NH3)濃度が4.4%のアンモニア水80部とを、下記供給量で、同時に滴下を開始し、シリカ微粒子の懸濁液(シリカ微粒子懸濁液(1))を得た。
ここで、テトラメトキシシラン(TMOS)の供給量は、アルカリ触媒溶液(1)中のメタノール総mol数に対して、13g/min、すなわち、0.0046mol/(mol・min)とした。
また、4.4%アンモニア水の供給量は、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量(0.0855mol/min)に対して、4g/minとした。これは、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1molに対して0.29mol/minに相当する。
・シリカ微粒子の疎水化処理
シリカ微粒子懸濁液(1)200部(固形分13.985%)に、トリメチルシラン5.59部を添加して疎水化処理を行なった。その後、ホットプレートを用いて、65℃で加熱し、乾燥させることで、シリカ微粒子B1を生成した。
<シリカ微粒子B2~B13の製造例>
表2に示す以外は、シリカ微粒子B1と同様に、シリカ微粒子B2~13を作製した。また、シリカ微粒子B1~B13の各種物性に関して、表3に記載する。
以下に、本発明に使用するトナー粒子の製造例を示す。
<樹脂微粒子分散体1の製造例>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)0.15部、及びN,N-ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)3.15部を、イオン交換水(水系媒体)146.70部に溶解して分散媒体液を調製した。
この分散媒体液を350mLの耐圧丸底ステンレス容器に入れる。続いて「ポリエステル樹脂A」〔組成(モル比)/ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:テレフタル酸:フマル酸:トリメリット酸=25:25:26:20:4、数平均分子量(Mn):3,500、重量平均分子量(Mw):10,300、Mw/Mn:2.9、軟化点(Tm):96℃、ガラス転移開始温度(Tig):53℃、ガラス転移終了温度(Teg):58℃〕の粉砕物(粒径1~2mm)150部を投入し混合した。
次に、高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM-2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、115℃、0.18MPaに加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を300S-1とし30分間剪断分散した。
その後、50℃になるまで、300S-1の回転を維持しながら、2.0℃/分の冷却速度で冷却を行い、樹脂微粒子分散体1を得た。
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製:LA-950)を用いて測定された樹脂微粒子の体積分布基準のメジアン径(D50)は0.22μmであり、95%粒子径は0.27μmであった。
<着色剤微粒子分散体の製造例>
・シアン顔料 100.0部
(Pigment Blue 15:3、大日精化社製)
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK) 15.0部
・イオン交換水 885.0部
以上を混合及び溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業社製)を用いて約1時間分散して、着色剤を分散させてなる着色剤微粒子分散体(固形分濃度10質量%)を調製した。着色剤微粒子の体積分布基準のメジアン径は0.2μmであった。
<ワックス微粒子分散体の製造例>
・エステルワックス(ベヘン酸ベヘニル、融点75℃) 100.0部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK) 10.0部
・イオン交換水 880.0部
以上を撹拌装置付きの容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社製)を用い、循環させる。この際、ローター外径が3cm、クリアランスが0.3mmの剪断撹拌部位にて、ローター回転数330S-1、スクリーン回転数330S-1の条件にて撹拌し、60分間分散処理した。その後、ローター回転数17S-1、スクリーン回転数0S-1、冷却速度は毎分10℃の冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、ワックス微粒子分散体(固形分濃度10質量%)を得た。ワックス微粒子の体積分布基準のメジアン径は0.15μmであった。
<トナー粒子1の製造例>
・樹脂微粒子分散体1 40.0部
・着色剤微粒子分散体 10.0部
・ワックス微粒子分散体 20.0部
・1質量%塩化カルシウム水溶液 20.0部
・イオン交換水 110.0部
上記を、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて混合及び分散させた後、ウォーターバス中で45℃まで撹拌翼にて撹拌しながら加熱した。45℃で1時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.5μmである凝集粒子が形成されていることが確認された(凝集工程)。
5質量%クエン酸三ナトリウム水溶液40.0部を加えた後、撹拌を継続しながら85℃まで昇温して120分間保持し、融合したコア粒子を含有する水系分散体を得た(一次融合工程)。コア粒子の粒径を測定したところ、重量平均粒径(D4)は5.5μmであった。
次いで、撹拌を継続しながら、ウォーターバス内に水を入れ、コア粒子の水系分散体を25℃まで冷却した。
次いで、12.1部の樹脂微粒子分散体1を添加した。その後、10分間撹拌を行い、さらに2質量%塩化カルシウム水溶液60.0部を滴下し、35℃に昇温した。この状態で、随時、液を少量抽出し、2μmのマイクロフィルターに通し、ろ液が透明になるまで、35℃で撹拌を継続した。
ろ液が透明になり、コア粒子に樹脂微粒子が付着し、シェル付着体が形成されたのを確認後、シェル付着体の水系分散体を40℃に昇温して1時間撹拌する。その後、5質量%クエン酸三ナトリウム水溶液35.0部を添加し、65℃に昇温して3.0時間撹拌を行った(二次融合工程)。
その後、得られた液を25℃まで冷却した後、ろ過・固液分離した後、800部のイオン交換水を固形分に加え30分間撹拌洗浄した。その後、再びろ過・固液分離を行った。
以上のようにろ過と洗浄を、残留界面活性剤の影響を排除するため、ろ液の電気伝導度が150μS/cm以下となるまで繰り返した。
次に、得られた固形分を乾燥させることにより、トナー粒子1を得た。トナー粒子1の重量平均粒径(D4)は6.4μmであった。
<トナー1の製造例>
得られたトナー粒子1(100部)に対して、無機微粒子A1(1.2部)と、シリカ微粒子B1(2.5部)となる量で、FM10C(日本コークス工業株式会社製)によって外添混合した。
外添条件は、トナー粒子の仕込み量:1.8kg、回転数:60S-1、外添時間:10分で行った。
その後、目開き200μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。トナー1の物性は表4に示す。
<トナー2~17、及び、比較トナー1~9の製造例>
トナー1の製造例において、使用する無機微粒子Aの種類及び添加量、シリカ微粒子Bの種類及び添加量を表4の記載に変更した以外は、同様にしてトナー2~17、及び、比較トナー1~9を得た。トナー2~17、及び、比較トナー1~9の物性を表4に示す。
〔実施例1〕
トナー1について、下記評価方法を用い、下記基準で評価を行った。
<カブリの評価>
画像形成装置としては、市販のレーザービームプリンタHP Color LaserJet Enterprise M651n(HP製)を、1色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するように改造して評価を行った。使用した紙種はA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、坪量80g/m2)を用いた。長期耐久試験を想定して、印字率1%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定した。このモードで、計25000枚の画出し試験を実施し、その後白画像を出力して、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC-6DSを使用して測定した。一方、白画像形成前の転写紙についても同様に反射率を測定した。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。白画像出力前後の反射率から、下記式を用いてカブリを算出した。
カブリ(反射率)(%)=転写紙の反射率(%)-白画像の反射率(%)
なお、耐久評価は、通常環境に加えて、外添剤の埋め込みなどが発生しやすい、高温高湿環境(30.0℃/80%Rh)にて行った。また、カブリの判断基準は以下の通りである。評価結果を表5に記載する。
A:1.0%未満
B:1.0%以上3.0%未満
C:3.0%以上5.0%未満
D:5.0%以上
<こすり定着性の評価>
市販のレーザービームプリンタHP Color LaserJet Enterprise M651n(HP製)を、1色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するように改造して評価を行った。また、本来のプロセススピードよりも高速である500mm/sに改造して使用した。この装置を用いて、定着器の温度200℃にて、キヤノン社製GF-C104(A4、坪量104g/m2)に画像濃度が0.70となるようにハーフトーン画像を出力する。得られた画像を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率を測定した。濃度低下率が低いほど低温定着性が良好であることを示す。画像出力は全て定着装置が温まり難く、低温定着にはより困難な条件である低温低湿環境下(15℃/10%RH)で行った。
なお、こすり定着性の判断基準は以下の通りである。評価結果を表5に記載する。
A:濃度低下率 5.0%未満
B:濃度低下率 5.0%以上10.0%未満
C:濃度低下率 10.0%以上15.0%未満
D:濃度差 15.0%以上
〔実施例2~17および、比較例1~9〕
トナー2~17、比較トナー1~9について、実施例1と同様にして評価を行った結果を表5に示す。